説明

粉砕機

【課題】構成をコンパクトにし、且つ、粉砕ロータの回転数調節或いは吸引風量調節を格別行う必要なく容易に粉砕粒度を調節できるところの粉砕機を提供すること。
【解決手段】本体1の内部において、粉砕ロータ2の回転軸3にセパレーター4を直接連結して回転自在に設け、前記セパレーター4の外周に沿って設ける略円筒状の分級体5又は前記セパレーター4を、前記回転軸3の軸線方向に相対的にスライド自在及び位置固定可能に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材チップ等(食品、樹脂、工業用原材料等)を微粉砕処理するところの粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
間伐材などをチップにし、燃料、燻製用材など、種々の目的に使用することが行われている。こうした木材チップの粉砕には、粉砕機が用いられる。
この種の粉砕機は、粉砕ロータ(ハンマ)を粉砕室内で回転させ、供給した木材チップに衝撃(ライナ)を与えて粉砕する所謂衝撃式粉砕機が多用されている。
この粉砕室内には、セパレーターと呼ばれる羽根状の回転部材(分級ロータ)が設けられ、これによって所定粒度の粉粉物のみが取り出されるよう構成されている。
この種の粉砕機としては、例えば、次の文献を挙げることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2008−296225。
【特許文献2】特開2007−209934。
【特許文献3】特開2002−233787。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術の粉砕機は、粉砕ロータの回転速度及び風量(吸引)の調節によって粒度を調節する構成とされているのが一般的である。
勿論、風量だけでなく、分級ロータの構成によっても、ここを通過できる粒度が異なることは言うまでもなく、両者の組み合わせで決定する。
【0005】
しかし、こうした粉砕ロータ(高速)と分級ロータ(低速)とは基本的にその回転数が異なるものであり(5倍ないし10倍)、従って、それぞれを軸支(二軸使用)し、個別に駆動する電動機が備えられるのが一般的である。この場合、同芯二軸とするか、別芯二軸の構成が採用されることになり、このような二重軸支、駆動構造は、コスト高を招く。
また、風量をも調節するところから、吸引ブロア側の制御も必要となる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑み、構成をコンパクトにし、且つ、粉砕ロータの回転数調節或いは吸引風量調節を格別行う必要なく容易に粉砕粒度を調節できるところの粉砕機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる粉砕機は、上記目的を達成するために、本体(1)の内部に粉砕ロータ(2)を回転自在に設け、粉砕用原材を前記本体(1)の内部に供給し、前記本体(1)を吸引ブロアに接続して粉砕した微粉を吸引排出するように構成された粉砕機であって、
前記本体(1)の内部において、前記粉砕ロータ(2)の回転軸(3)にセパレーター(4)を直接連結して回転自在に設け、
前記セパレーター(4)の外周に沿って設ける略円筒状の分級体(5)又は前記セパレーター(4)を、前記回転軸(3)の軸線方向にスライド自在及び位置固定可能に設け、
前記分級体(5)の相対的スライドによって前記セパレーター(4)を通過する粉砕粒度を調節できるように構成した、
ことを特徴とする。
【0008】
本発明において、粉砕用原材は、木材チップ、食品、工業原材料などであり、粉砕機に投入できる大きさに事前処理されたものである。
前記吸引ブロアは、従前に使用されているものでよく、粉砕機自体の構成要素ではない。
前記粉砕ロータは、ハンマを備えた従前タイプのロータを全て対象とする。
前記セパレーターは、分級ロータと呼ばれる多数の羽根を供えた回転体で構成される公知の構造のもの基本的に変わりない。
前記分級体は、略円筒状を呈するが、前記セパレーターの回転軌跡が、略サイ頭円錐形を呈する構造である場合には、これにフィットするサイ頭円錐形に構成されることになる。この場合、サイ頭円錐形が僅かな傾斜角度であれば、前記分級体をスライドさせる構成にしても、目的達成にセパレーターとの間の間隙は大きな問題ではない。
尚、本発明にかかる粉砕機は、上記回転軸が縦向きとなるように用いられるのは当然ながら、横向きとなるように設置されることも想定でき、本発明の権利範囲は、その設置形態に左右されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粉砕機によれば、粉砕ロータとセパレーターとを一軸の回転軸に連結することで、単一の電動機及び支軸構造にして構成をコンパクトにすることができ、且つ、前記分級体のスライド調節だけで、粉砕ロータの回転数調節或いは吸引風量調節を格別行う必要なく容易に粉砕粒度を調節できる効果を奏する。
本発明にかかるその他の利点は、以下の実施例の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1にかかる粉砕機の要部の縦断正面図である。
【図2】本発明の実施例2にかかる粉砕機の要部の縦断正面図である。
【図3】本発明の実施例2にかかる粉砕機の図2におけるA−A線矢視縦断図である。
【図4】本発明の実施例2にかかる粉砕機の図2におけるB−B線矢視縦断図である。
【図5】本発明の実施例2にかかる粉砕機の図2におけるC−C線矢視縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる粉砕機の実施例について、図面を参照して詳述する。
実施例1
図1は、本発明にかかる粉砕機の縦断正面図を示し、本体1の内部に粉砕ロータ2を回転自在に設け、粉砕用原材(ここでは木材チップ)を本体1の内部に供給し、前記本体1を吸引ブロアに接続して粉砕した微粉を、回転するセパレーター4を通して吸引排出するように構成された粉砕機であって、前記本体1の内部において、前記粉砕ロータ2の回転軸3にセパレーター4を直接連結して回転自在に設け、前記セパレーター4の外周に沿って設ける略円筒状の分級体5を前記回転軸3の軸線方向にスライド自在及び位置固定可能に設け、前記分級体5のスライドによって前記セパレーター4を通過する粉砕粒度を調節できるように構成している。
【0012】
前記本体1の構成について述べると、前記本体1が略円筒状に構成され、その円筒状の周壁部1Aに供給口1Bが設けられ、前記分級体5の一方を被覆するカバー6が設けられ、該カバー6に、吸引ブロアに接続される排出口1Cが設けられている。
前記供給口1Bは、前記本体1の内側に設けられた環状の還流路R1に連通されており、ここを通過して、前記本体1の内部へと木材チップが供給される。このように、前記本体1の内側には、所定の間隔を隔ててガイドリング10が設けられて前記本体1の内周との間に還流路R1が形成され、且つ、このガイドリング10と前記粉砕ロータ2との間にも間隙R2が設けられ、供給口1Bから供給された木材チップは、前記還流路R1を通ってガイドリング10の内側に至り、再び前記間隙R2を通って、粉砕ロータ2のハンマ2Aの破砕作用を受けるように構成されている。
【0013】
そして、前記回転軸3が前記本体1に片持ち支持で一対のベアリングを介して軸支されている。
具体的に説明すると、前記回転軸3の一端部には、プーリー3aが設けられ、ベルト伝達で図外の電動機によって駆動される。この回転軸3の他端部には、基端部側(ベアリング側)に、粉砕ロータ2がキー(又はコッタ)止めされている。そして、その回転軸3の他端部側(自由端側)に、セパレーター4が連接されてキー(又はコッタ)止めされ、且つ、ワッシャ4Aを介してボルト4Bで回り止め(抜け止め)されている。即ち、一軸に粉砕ロータ2とセパレーター4の両方が取り付けられているのである。
【0014】
前記粉砕ロータ2は、円盤状で、その周部の近傍に複数のハンマ2Aを所定の間隔で備えており、従来タイプの構造であって、本体1の内側のライナ2Bとによって破砕作用をなす。
前記セパレーター4は、やはり円盤状で、その周部の一面(上面)に、多数の羽根が所定の間隔で、前記回転軸3の軸線方向に沿って植設されている。この多数の羽根の所定間隔は、図外の吸引ブロアの風量と、前記分級体5のスライドによる通過風速とを考慮した設計とされている。
【0015】
前記分級体5の詳細について述べると、この円筒状の分級体5は、前記セパレーター4の外周に沿って、セパレーター4が回転可能な間隙を空けて設置されるもので、前記本体1に対してスライド可能で、且つ、位置固定可能である。
【0016】
この分級体5の位置調節構造として、この実施例1では、前記本体1の内周部1Cに摺動可能に挿入され、この本体1の上部に止め部材1Dを、Oリング1Eを介してボルト1Fで止め付けることで固定するようにしている。
従って、分級体5のスライド調節に際しては、ボルト1Fを外し、止め部材1Dを外してOリング1Eの圧縮状態を解除し、分級体5を上下の方向に、且つ、所要量変位(所要粉砕粒度との関係で)させるようにスライド移動させ、その後にOリング1Eをセットし、前記止め部材1Dを再び被せて、後に、止め部材1BによりOリング1Eを圧縮し、ボルト1Fによって位置固定することになる。
【0017】
(作用)
ここでは、粉砕用原材として木材チップを用い、これを前記本体1の周壁部1Aの供給口1Bからエアー輸送で内部に供給し(スクリュー搬送機でもよい)、ここで、粉砕ロータ2により破砕作用を加える。
【0018】
前記粉砕ロータ2で粉砕された木材チップは、吸引ブロア(図外)によって外部に排出されることになるが、この際、前記セパレーター4を通過しなければならない構成とされているのであり、本発明では、ここに円筒状の分級体5が介在され、粉砕された木材粉が所定回転のセパレーター4を通過できるものと、再び、粉砕ロータ2の側に還流されるものと区分け(分級)される。
【0019】
この粉砕機による粉砕分級は、次の方法によって成される。即ち、所定粒度に粉砕された木材チップは、前記セパレーター4に至ると、ここを通過するための間隙(面積)は、前記分級体5によって制限されおり、その間隙、即ち、通過面積が小さくなるようにスライド調節(下方)されていると、一定の吸引ブロワの風量であると、その通過風速が早くなり、セパレーター4の羽根で弾かれて戻されるエネルギーよりも吸引力が大となるため、大きな粒度の粉体(重量小)でも吸引可能となって、所定の分級がなされ、逆に、通過面積が大きくなるようにスライド調節(上方)されていると、一定の吸引ブロワの風量であると、その通過風速が遅くなり、大きな粒度の粉体(重量大)の場合は、セパレーター4の羽根で弾かれて戻されるエネルギーの方が吸引エネルギーよりも大となって、粉砕ロータ2の側に還流され、小さな粒度の粉体だけの吸引が可能となって、所定の分級がなされるのである。
【0020】
ここでは、セパレーター4と粉砕ロータ2とは同じ回転数であるが、上述の分級体5のスライド調節によって、分級を行うことが可能となるのである。
勿論、セパレーター4と粉砕ロータ2の回転数自体を変化させ、或いはブロアの吸引風量を変化させるような調節を付加することは、更に、分級作用のバリエーションを増やす上で有用であり、実施してもよい。
【実施例2】
【0021】
図2乃至図5に基づいて、実施例2について説明する。図2は、縦断正面図であり、図3は、図2におけるA−A線矢視図であり、図4は、図2におけるB−B線矢視図、図5は、図2におけるC−C線矢視図である。
【0022】
この実施例2の特徴は、ここでは、前記一本の回転軸3が前記本体1の一部と前記カバー6とで両持ち支持で軸支されている。具体的には、本体1の下部7と、上部のカバー6とに軸支部8,9を設けて、ベアリングで支持している。
【0023】
もう一つの特徴は、実施例1においては、分級体5が上下に摺動されたのに対し、ここでは、セパレーター4が、回転軸3に対して軸線方向にスライドでき、固定できる構成(パワーロック)とされている点である。
このような分級体5の相対的スライドの構成であっても、セパレーター4が分級体5に対して変位し、両者の間で形成される空隙(通過面積)が調整可能であり、実施例1と同じ作用が得られる。
【0024】
また、前記本体1の内側には、所定の間隔を隔ててガイドリング10が設けられて前記本体1の内周との間に還流路R1が形成され、且つ、このガイドリング10と前記粉砕ロータ2との間にも間隙R2が設けられ、供給口1Bから供給された木材チップは、前記還流路R1を通ってガイドリング10の内側に至り、再び前記間隙R2を通って、粉砕ロータ2のハンマ2Aの破砕作用を受けるように構成されている。
【0025】
破砕が進行して微粉となった木材チップは、前記分級体5とセパレーター4の変位とによって調節されたセパレーター4の空隙から、所定の分級状態で、吸引(吸引ブロワによる)されて外部に排出されるのである。
尚、この実施例では、約1000mm径の粉砕ロータ2として、セパレーター4は、約500mm径で、分級体5のスライド変位長さは、60乃至80mm(セパレーター4の羽根の長さが81mmとしている)を想定している。
この実施例のその他の構造について、上記実施例1と実質的に同一の部分については、その説明を援用し、ここでの説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明にかかる粉砕機は、既存の粉砕機の部分改造によっても実施可能であり、且つ、その分級調節のための操作が容易であるところから、種々の分級が要求される用途の原材料の粉砕に応用可能で、その適用範囲は広い。
【符号の説明】
【0027】
1:本体
1A:周壁部
1B:供給口
2:粉砕ロータ
3:回転軸
4:セパレーター
5:分級体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(1)の内部に粉砕ロータ(2)を回転自在に設け、粉砕用原材を前記本体(1)の内部に供給し、前記本体(1)を吸引ブロアに接続して粉砕した微粉を、回転するセパレーター(4)を通して吸引排出するように構成された粉砕機であって、
前記本体(1)の内部において、前記粉砕ロータ(2)の回転軸(3)にセパレーター(4)を直接連結して回転自在に設け、
前記セパレーター(4)の外周に沿って設ける略円筒状の分級体(5)又は前記セパレーター(4)を、前記回転軸(3)の軸線方向にスライド自在及び位置固定可能に設け、
前記分級体(5)の相対的スライドによって前記セパレーター(4)を通過する粉砕粒度を調節できるように構成した、
ことを特徴とする粉砕機。
【請求項2】
前記本体(1)が略円筒状に構成され、その円筒状の周壁部(1A)に供給口(1B)が設けられ、前記分級体(5)の一方を被覆するカバー(6)が設けられ、該カバー(6)に、吸引ブロアに接続される排出口(1C)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の破砕機。
【請求項3】
前記回転軸(3)が前記本体(1)に片持ち支持で軸支されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記回転軸(3)が前記本体(1)の一部と前記カバー(6)とで両持ち支持で軸支されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粉砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−115819(P2012−115819A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282323(P2010−282323)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(308030064)
【Fターム(参考)】