説明

粉粒体の粉砕装置

【課題】従来の粉粒体の粉砕装置は多くのエネルギーを必要とし、油分が混入する虞があり、また、安全性にも問題があり、装置やその運転に大きな費用がかかってしまうというのでこれを解決する。
【解決手段】円筒状の胴部1と、その胴部1の上方開口に着脱可能に接続されたフィルター室3と、前記胴部1の下方開口に着脱可能に接続可能とされたコーン部2とから成る真空容器Vを有し、前記フィルター室3の一部に排気管6と吸気管から分岐され、逆洗弁17を介在した分岐管16とを気密に接続し、前記コーン部2の先端に吸気管と接続されているエアあるいはガスの噴射ノズル15を備えるとともに、前記フィルター室3の天面から回転軸21を気密に真空容器V内に挿通し、その回転軸21の先端にコーン部2の内壁面と沿う複数のレーキ23を備えていることとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粉粒体の粉砕装置に関し、単位重量あたりの表面積を増加させ、即ち、微細化させて化学反応速度を速めたり、薬剤として人体への吸収効果を促進させる等のあらゆる技術分野の粉粒体の乾式粉砕装置であって、特に卓上に載置することも可能として企業や大学等の研究室で手軽に使用することができるようにした粉粒体の粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の粉砕装置として、いわゆるジェットミルが知られている。このジェットミルは円筒状の粉砕槽を有し、その粉砕槽の内壁面に接線方向に沿った噴射方向を持つ複数のノズルで高圧力や高圧エアを噴出させ、高速の旋回流を発生させて、粉砕槽内に投入されている原料の粉粒体を粉砕槽の内壁面あるいは粉粒体同士で摩擦もしくは衝突させて、原料の粉粒体を微細に粉砕していく構造となっている。
【0003】
また、ジェットミルの構造とは別に、減圧式でアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを循環させる構造のものも開示されている。
【0004】
しかしながら、高圧エア、高圧ガスを使用する構造では、高圧を得るため大型のコンプレッサが必要となり、多大なエネルギーを消費する。また、コンプレッサから発生する微量の油ミストを完全に除去することは極めて困難で、コンタミネーションの問題を生じる。さらに、アルゴンガスや窒素ガスの不活性ガスを使用することとなると、多量のガス量を消費することとなり、コストが増大してしまう。
【0005】
また、多量のガスを使用することとなると、粉体とガスの分離に大型のサイクロンやバグフィルターを使用する必要が生じ、粉体の回収率が低下してしまい、かつ、粉砕作業後の残存粉体の清掃にも多大の労力を要する。
【0006】
そして、高圧のエアやガスを扱うことは安全上の問題を生じ、その高圧エアやガスが供給される装置についても耐圧試験が不可欠となり、製造認可が必要となる等の付随的なコストも増大してしまう。加えて、粉塵爆発の可能性も残される。
【0007】
さらに、不活性ガスを循環させる構造の場合には、循環ポンプの回転時の騒音が大きく、通常の環境にあっては使用が困難であり、循環ポンプ内における軸シールが完全ではないので、潤滑油が混入してしまう。また、循環ポンプは大型でコスト高であるため、企業や大学の研究室における実験用としては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−42441号公報
【特許文献2】特開2003−47884号公報
【特許文献3】特開2006−205084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする問題点は、従来の粉粒体の粉砕装置は多くのエネルギーを必要とし、油分が混入する虞があり、また、安全性にも問題があり、装置やその運転に大きな費用がかかってしまうという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した問題点を解決するために、本発明に係る粉粒体の粉砕装置は円筒状の胴部と、その胴部の上方開口に着脱可能に接続されたフィルター室と、前記胴部の下方開口に着脱可能に接続可能とされたコーン部とから成る真空容器を有し、前記フィルター室の一部に排気管と吸気管から分岐され、逆洗弁を介在した分岐管とを気密に接続し、前記コーン部の先端に吸気管と接続されているエアあるいはガスの噴射ノズルを備えるとともに、前記フィルター室の天面から回転軸を気密に真空容器内に挿通し、その回転軸の先端にコーン部の内壁面と沿う複数のレーキを備えていることを特徴とし、前記したフィルター室に設けられるフィルターは、円筒状の交換可能なものとし、そのフィルターの内面は前記した真空容器の内部と対応し、外面は排気管及び逆洗弁を介在した分岐管と対応していることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る粉粒体の粉砕装置は、前記したレーキは回転軸の下端とアームを介して連結されていることを特徴とし、前記したレーキは板状とされ、合成樹脂をはじめとする軟性を保有した素材で成形されていることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係る粉粒体の粉砕装置は、前記した排気管は排気用の真空ポンプと接続され、その真空ポンプからは大気中への排気管が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る粉粒体の粉砕装置は上記のように構成されている。そのため、駆動馬力が少なく、複雑な部品や構造がなく安価となり、消費するエネルギーも小さくて済むのでランニングコストも安価となる。また、高圧のエアやガスを使用することがないので安全性が確保され、油分が混入してしまうことも一切ない。そして、装置がコンパクトとなり、分解組立が容易であるから清掃の手間も少なく、企業や大学の研究室でも卓上に載置して使用することも可能となり、手軽な実験装置として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る粉粒体の粉砕装置を示す構造図である。
【図2】レーキ部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例1】
【0016】
次に、本発明の好ましい実施の一例を図1及び図2を参照して説明する。これらの図にあって図中Vは真空容器を示している。この真空容器Vは円筒状をした胴部1を有しており、この胴部1は上部開口と下部開口に各々フランジ1a、1bを一体に形成している。
【0017】
この胴部1の上面開口縁のフランジ1aにはフィルター室3がその下部のフランジで一体的に接合されているもので、このフィルター室3は上面が閉塞され、胴部1と同径の円筒状のものとなっている。また、胴部1の下面開口縁のフランジ1bにはコーン部2が、その上部のフランジで一体的に接合されている。このコーン部2の下端にはエアAの噴入口が形成されている。
【0018】
また、この真空容器Vには特に図示しない複数の継ぎ手や覗き窓、計測機器用の開口部等が設けられている。
【0019】
さらに、図中20は真空容器Vの上方に配される減速機付きモータであり、この減速機付きモータ20には回転軸21が接続されており、この回転軸21はフィルター室3の天面中央から気密シール部を通って真空容器V内に挿通されている。この回転軸21の少なくとも先端は断面が四角、三角あるいは多角形、あるいはキーを備えた構成とされている。
【0020】
この回転軸21の先端にはレーキ支持部材24が着脱可能に嵌着されている。このレーキ支持部材24は中心位置に円柱部を有しており、この円柱部に上下方向に回転軸21の先端と密に嵌合する透孔24aが形成されているもので、この透孔24aの断面形状は回転体21の先端形状と合うような形状、本実施例では四角形をしているが、回転軸21の先端がキーを備えている場合、そのキーが嵌まるキー溝を有するものとなる。
【0021】
レーキ支持部材24の中心円筒部の外周面には放射状に、本実施例では120度ピッチで三つのアーム部22、22‥が一体に設けられている。この各アーム部22、22‥の先端には各々板状としたレーキ23がその鋭角とされる外縁をコーン部2の内壁面と沿う角度で、その略中心位置でビスやピン等の止着要素で回動可能に備えられている。この構成とすることで、コーン部2の母線角度に応じてレーキ23の角度も自在に調整できる。
【0022】
また、前記したレーキ23、23‥はコーン部2の内壁面を損傷することがないよう、合成樹脂をはじめとする軟性を保有した素材によって成形されており、前記した減速機付きモータ20の駆動により、回転軸21から回転力が伝達され、コーン部2の内壁面に沿って回転するものとなっている。そして、組立状態でレーキ23、23‥がコーン部2の内面と当接状態となるためレーキ支持部材24が回転軸21の先端から抜け落ちてしまうことはない。
【0023】
一方、図中19はフィルターを示し、このフィルター19は布や紙製のものを用い、交換可能としてある。このフィルター19は円筒状をしており、この内面側は真空容器Vの内部と対応し、外側は後述する排気管4や逆洗弁17を介在させたエアの分岐管18と対応する。
【0024】
また、前記したフィルター19はフィルター室3の下方で内方に延設されたフランジと天面間において位置決め支持されるものとなっている。
【0025】
さらに、図中4は気密にフィルター室3の側壁と接続され、内部に連通される気密排気管であり、この気密排気管4は排気弁5を介して排気真空ポンプ7を有する排気管6と連結されている。排気真空ポンプ7には大気への排気管8が接続されている。
【0026】
そして、図中9はエアベンドを示しており、10はエアベンド9から吸引された空気を濾過するエアフィルターを示している。このエアフィルター10の二次側には吸気管11が連結されている。この吸気管11には分岐管16が設けられ、この分岐管16は逆洗弁17、および機密分岐管18を介在させて、気密にフィルター室3の側壁と接続される。
【0027】
また、吸気管11の本管部13には吸気弁14が配され、この吸気弁14に続けてエアの噴射ノズル15がコーン部2の下端に形成されているエアの墳入口に対し設けられている。
【0028】
本実施例に係る粉粒体の粉砕装置は上記のように構成されている。ここで、その使用方法、作用を説明する。まず、対象となる粉砕材料(試料)を真空容器Vに形成される開口部(窓、扉)から投入し、コーン部2内に貯留しておく。この段階で排気弁5、吸気弁14、逆洗弁17の各弁はすべて閉としておく。
【0029】
ここで、排気真空ポンプ7を駆動させ、排気弁5を開とすると、全体の系、特に真空容器V内からゆっくりと残留空気が排気され、徐々に真空容器V内の空気圧が低下していく。そして、空気圧が系の到達真空圧力、即ち、目標値まで達した状態で、吸気弁14を開とすると、負圧作用によって空気がエアベンド9から吸引され、吸気管11、本管部13を通ったエアAが噴射ノズル15から、コーン部2内に下方から噴射されて、コーン部2に貯留されている粉砕材料を上方に吹き飛ばし、この時に粉砕材料同士の衝突により、粉砕がなされる。
【0030】
上記で、上方へ吹き飛ばされた粉砕材料は真空容器V内で反転して下降してくる。一部の粉体は噴射ノズル15からの噴射エアの気流に乗って上昇するが、圧力が低いために重力沈降による分離作用により、真空容器Vの下方へ移動し、コーン部2の内壁面に付着する。
【0031】
このコーン部2の内壁面に付着した粉体は回転軸21によって回転されるレーキ23、23‥によって掻き取られ、コーン部2の中央、即ち、噴射ノズル15の上方へ移行され、再びこの噴射ノズル15の噴射エアによって再び吹き飛ばされ再び粉砕作用がなされる。
【0032】
また、間欠的に、吸気弁14を閉とし、この時逆洗弁17を開とすることで、分岐管16を通り、逆洗弁17を介してエアが気密分岐管18からフィルター室3内に供給されるので、フィルター19に付着した粉体はフィルター19から離脱される。この時の逆洗時間は数秒程度の短時間でよく、この逆洗後、約一分程度、吸気弁14も逆洗弁17も閉として、粉体がコーン部2に下降するのを待ち、再びコーン部2に下降した粉体に対して粉砕作業を行なう。上記した運転を繰り返して継続することで粉粒体の粉砕を行ない、微細な粉体を得ることができる。尚、本発明の実施にあってエアに代えて、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスを使用することも勿論可能である。
【0033】
本発明に係る粉粒体の粉砕装置は上記のように構成され、使用される部品点数も非常に少なく、エアやガスの流れもワンパス状態となるため、必要とするエネルギーも小さくて済み、小型で安価のものとなる。また、高圧や粉塵爆発にたいして安全性の高いものとなる。そして、分解組立も容易で粉砕された材料の取り出しや清掃も手軽なものとなり、フィルターの交換も簡単に実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る粉粒体の粉砕装置は上述のように構成されている。この装置は単に一種類の原料を粉砕するのみでなく、複数種の原料を混在させた、化学品や薬品等を粉砕しながら攪拌するための装置としても十分に応用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 胴部
1a フランジ
1b フランジ
2 コーン部
3 フィルター室
4 気密排気管
5 排気弁
6 排気管
7 排気真空ポンプ
8 大気への排気管
9 エアベンド
10 エアフィルター
11 分岐管
13 本管部
14 吸気弁
15 噴射ノズル
16 分岐管
17 逆洗弁
18 気密分岐管
19 フィルター
20 減速機付きモータ
21 回転軸
22 アーム部
23 レーキ
24 レーキ支持部材
24a 透孔
A エア
V 真空容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の胴部と、その胴部の上方開口に着脱可能に接続されたフィルター室と、前記胴部の下方開口に着脱可能に接続可能とされたコーン部とから成る真空容器を有し、前記フィルター室の一部に排気管と吸気管から分岐され、逆洗弁を介在した分岐管とを気密に接続し、前記コーン部の先端に吸気管と接続されているエアあるいはガスの噴射ノズルを備えるとともに、前記フィルター室の天面から回転軸を気密に真空容器内に挿通し、その回転軸の先端にコーン部の内壁面と沿う複数のレーキを備えていることを特徴とする粉粒体の粉砕装置。
【請求項2】
前記したフィルター室に設けられるフィルターは、円筒状の交換可能なものとし、そのフィルターの内面は前記した真空容器の内部と対応し、外面は排気管及び逆洗弁を介在した分岐管と対応していることを特徴とする請求項1に記載の粉粒体の粉砕装置。
【請求項3】
前記したレーキは回転軸の下端とアームを介して連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉粒体の粉砕装置。
【請求項4】
前記したレーキは板状とされ、合成樹脂をはじめとする軟性を保有した素材で成形されていることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の粉粒体の粉砕装置。
【請求項5】
前記した排気管は排気用の真空ポンプと接続され、その真空ポンプからは大気中への排気管が設けられていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の粉粒体の粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−172869(P2010−172869A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21113(P2009−21113)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(505035792)
【Fターム(参考)】