説明

粉粒分離装置、乾燥機、粒体供給装置、成形システム及び粒体成形方法

【課題】 常に一定の効率で粒体から微粉を除去できる粉粒分離装置、これを用いた乾燥機、粒体供給装置、成形システム及び粒体成形方法を提供する。
【解決手段】 清掃室20の上部に設置された清掃室20よりも断面積が狭い成形材料輸送管17を介して清掃室20に樹脂ペレットが導入され、清掃室20内で微粉とペレットとに分離する粉粒分離装置であって、輸送管の内壁面に付着した微粉の粒子を除去する清掃用ブラシ28を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成型品及びその成形方法に関し、例えば、レーザ方式のデジタル複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ装置などの光学走査系やビデオカメラなどの光学機器に適用されるプラスチック成型品、特に、高精度な鏡面を有する厚肉・偏肉形状のプラスチック成型品又はプラスチックミラーなどのプラスチック成型品を成型する際に使用する乾燥機の清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ方式のデジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ装置の光書き込みユニットには、レーザビームの結像及び各種補正機能を有する矩形状のレンズやミラーなどの光学素子が用いられている。
【0003】
従来、これらの光学素子は、特許文献1の「光学素子成形用型、その製造方法及び光学素子の製造方法」に開示される発明によって製造される光学素子のようにガラスを材料とするものであったが、近年は製品のコストダウンの要求に伴って、プラスチック製へと変化している。
【0004】
また、複数の機能を最小限の素子で賄うために、その光学面も球面のみならず複雑な非球面形状で形成されるようになってきている。
【0005】
プラスチック成形品は、部品と略同一形状に形成された金型のキャビティ内に樹脂母材を挿入したり、溶融樹脂を噴出充填することにより、低コストで大量に生産できるため、光学素子も主にこの方法で製造されている。
【0006】
プラスチック成形時の発熱量は、乾燥物(樹脂)の大きさによって変化する。乾燥物(樹脂)のサイズがペレット状(例えば、直径2mm、高さ5mmの円柱状)だとシリンダの隙間で発生する剪断発熱量は多く、乾燥物(樹脂)が粉末状だと剪断発熱量は少なくなる。すなわち、乾燥物(樹脂)の粒径が大きいほど剪断発熱量が多い。
【0007】
このため、ペレット状の乾燥物と粉末状の乾燥物とが混在する場合には、乾燥物の間で粘度差が生じ、溶融された乾燥物が半溶融状態の乾燥物の周囲に回り込むようにして表面欠陥が発生する恐れがある。
【0008】
さらに、粉末状乾燥物がペレット状乾燥物に付着してペレット状乾燥物が剪断発熱・溶融する際に受けた位置がスクリューの後部寄りであれば、半溶融状態でキャビティ内へ射出されて、溶融乾燥物が半溶融乾燥物の周囲に回り込み、表面欠陥が発生するおそれもある。
【0009】
このような状態で成形加工された表面欠陥のレンズを組み立て、転写すると、画像不良の原因となるため、精密部品を成形する場合には、ペレットから微粉を除去する必要がある。
【0010】
上記のような光学素子としてのプラスチック成形品は、精密製品であるため、材料乾燥時においても十分な除湿と微粉の除去とを行う必要がある。
【0011】
図4に、従来技術による乾燥機の構成を示す。
従来の乾燥機による乾燥の手順について説明する。まず、材料予備タンク8へ被乾燥物を投入する。材料予備タンク8へ投入された被乾燥物は、輸送経路を巡り乾燥機輸送管9へ吸引される。乾燥機輸送管9に吸引された被乾燥物に付着している微粉は僅かではあるが、乾燥機輸送管9において除去され、輸送経路3を介して微粉収容ダクト2へ回収される。
乾燥機7内で乾燥された被乾燥物は経路6を介して成形器上に設置されたホッパ管へと輸送される。ここで、被乾燥物に対して乾燥気体(空気や不活性ガス(窒素など))が送り込まれ、被乾燥物に付着している微粉は再度除去される。微粉が除去された悲観層物は、成形機のシリンダ内に送り込まれる。
成形機上のホッパから吸引される微粉は僅かであるが、搬送経路4を介して微粉収容ダクト1へ回収される。
【0012】
しかし、上記構成においては、材料輸送管9やホッパーの内壁面に微粉が付着してペレットの輸送効率が低下してしまうことがあった。
【0013】
このような問題を解決するための従来技術としては、特許文献2に開示される「乾燥機及びその乾燥方法」がある。
【特許文献1】特開平7−157319号公報
【特許文献2】特許第2529048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献2に開示される発明は、乾燥機本体と排気管との境にフィルタを設けることによって微粉を除去している。このため、フィルタの目詰まりによる除去効率の低下や、フィルタ交換に伴う作業効率の低下は避けられないという問題があった。
【0015】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、常に一定の効率で粒体から微粉を除去できる粉粒分離装置、これを用いた乾燥機、粒体供給装置、成形システム及び粒体成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、装置本体の上部に設置された該装置本体よりも断面積が狭い輸送管を介して装置本体に粉粒体が導入され、該装置本体内で粉体と粒体とに分離する粉粒分離装置であって、輸送管の内壁面に付着した粉体の粒子を除去する管内清掃手段を有することを特徴とする粉粒分離装置を提供するものである。管内清掃手段の動作で排気管の穴の塞がりなどが防止され、結果として粉粒分離の効率が上昇する。
【0017】
上記本発明の第1の態様においては、管内清掃手段は、ブラシ状部材であることが好ましい。ブラシ状の部材を用いることにより、管内の清掃を確実に行うことができ、残留する微粉の量も大幅に減少する。また、管内清掃手段は、輸送管内に配置され、該輸送管の内壁面から不燃ガスを噴射することが好ましい。清掃時に流出する空気の成分に不燃(窒素や炭酸)ガスを流し込むことにより、酸化を嫌う粒体の変色や焼けを防止できる。また、装置本体と輸送管との間に仕切弁を有することが好ましい。清掃箇所と粉粒分離箇所との間に仕切弁を設けることにより、後段の装置への微粉の流入を防止できる。よって、粒体を成形機へ供給する場合には、成形物の品質安定及び向上を図れる。
【0018】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、本発明の第1の態様の上記のいずれかの構成に係る粉粒分離装置を備え、粉体を分離した粒体を乾燥させることを特徴とする乾燥機を提供するものである。
【0019】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第3の態様として、粒体を成形する成形機に該粒体を供給するホッパとして本発明の第1の態様の上記のいずれかの構成に係る粉粒分離装置を備え、粉体と分離した粒体を成形機に供給することを特徴とする粒体供給装置を提供するものである。
【0020】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第4の態様として、上記本発明の第2の態様に係る乾燥機によって乾燥させられた粒体が上記本発明の第3の態様に係る粉体供給装置へ導入され、該粉体供給装置によって成形機へ供給されることを特徴とする成形システムを提供するものである。
【0021】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第5の態様として、上記本発明の第2の態様に係る乾燥機を用いて粉体を乾燥させる第1工程において乾燥させた粒体を、容器本発明の第3の態様に係る粒体供給装置を用いた第2工程において成形機に供給することを特徴とする粒体成形方法を提供するものである。粉粒の分離を繰り返し実行することにより、輸送管やホッパ管への微粉の付着が大幅に減少し、高品質の成形品を安定して得られる。本発明の第5の態様においては、粒体を成形機へ導入するごとに第1工程及び第2工程を実行することが好ましい。粒体を新たに導入する度に微粉を除去することにより、外部へ排出される微粉が少なくなり、また、微粉を確実に回収できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれは、常に一定の効率で粒体から微粉を除去できる粉粒分離装置、これを用いた乾燥機、粒体供給装置、成形システム及び粒体成形方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の好適な実施の形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る粒体成形システムの構成を示す。また、図2に、被乾燥物導入時の粉粒分離装置の要部を示す。また、図3に、清掃時の粉粒分離装置の要部を示す。
この粒体成形システムは、微粉回収ダクト12、予備材料タンク16、乾燥機15、及び成形機100を有する。微粉回収ダクト12は、不図示の負圧発生器に接続されており、負圧により微粉を吸引する。予備材料タンク16は、成形材料である樹脂ペレットが貯蔵される容器である。乾燥機15は、成形材料である樹脂ペレットを乾燥させる装置である。成形機100は、樹脂ペレットを所定形状に成形する装置である。
【0024】
乾燥機15は、清掃室20、ブラシ収納室21、上ダンパー11a及び下ダンパー11bからなる粉粒分離装置を備えている。清掃室22は被乾燥物輸送経路18を介して予備材料タンク16と連結されており、被乾燥物である樹脂ペレットが供給される。また、ブラシ収納室21及び清掃室22は、微粉回収経路14を介して微粉回収ダクト12と連結されている。清掃室21の上側は上ダンパー11aが、下側には下ダンパー11bがそれぞれ配置されており、ブラシ収納室21と清掃室22との間及び清掃室22と乾燥機15との間はそれぞれ開閉可能となっている。
【0025】
成形機100は、清掃室19、ブラシ収納室20、上ダンパー10a及び下ダンパー10bからなる粉粒分離装置を備えている。清掃室19は成形材料輸送経路17を介して乾燥機15と連結されており、成形材料である乾燥済み樹脂ペレットが供給される。また、ブラシ収納室19及び清掃室20は、微粉回収経路13を介して微粉回収ダクト12と連結されている。清掃室19の上側は上ダンパー10aが、下側には下ダンパー10bがそれぞれ配置されており、ブラシ収納室19と清掃室20との間及び清掃室20と成形機100との間はそれぞれ開閉可能となっている。
【0026】
成形機100に乾燥済みの粒体を供給する際の動作について説明する。
注入口30から乾燥物(乾燥済みの樹脂ペレット)が供給される間は、上ダンパー10aと下ダンパー10bとは閉じている。この時、上部ブラシ収容室19においては、清掃用ブラシ28はモータ27によって回転運動を行う。これにより、清掃用ブラシ28に付着した微粉は、開放されている配管13aによってブラシ収納室19から除去される。ブラシ収納室19から吸い出された微粉は、配管13を介して微粉収容容器12に回収される。
【0027】
乾燥済み樹脂ペレットが清掃室20に供給され終えると、上ダンパー10aが開放され、清掃用ブラシ28は清掃室20へ降下し、モータ27によって回転運動を行い、清掃室20の清掃を開始する。
この時、注入口30から気体(例えば、空気などの不燃ガス)を流し込み、樹脂ペレットの酸化を防ぐ。
【0028】
設定時間での清掃作業終了後、配管13bを開放して、清掃用ブラシ28に付着した微粉を除去する。清掃用ブラシ28から除去された微粉は、配管13を介して微粉収容容器12へと回収される。
【0029】
上ダンパー10aと微粉排出口13bとが閉鎖され、微粉の混入が無くなったら、下ダンパー10bを開放し、成形機シリンダ内に被乾燥物を輸送する。
【0030】
上記の説明は、成形機へ繋がるホッパー管上に設けられたブラシ収納室19及び清掃室20を例として行ったが、材料乾燥機15上に設けられたブラシ収納室21及び清掃室22に関しても同様の動作を行うことは言うまでもない。
【0031】
このように、本実施形態にかかる乾燥機は、配管の中に付着して残っている微粉を除去できる。このため、ペレット状の被乾燥物に微粉が混入する恐れはない。
【0032】
なお、上記各実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれに限定されることはない。
例えば、上記実施形態においては、円柱状のブラシを回転させることによって管内の微粉を除去する構成を説明したが、これはあくまでも一例であり、上記実施形態と異なる形状のブラシを用いてもよい。また、管内の微粉を除去できるのであれば、必ずしもブラシ状の部材でなくても良い。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の好適な実施の形態にかかる樹脂成形システムの構成を示す図である。
【図2】粉粒分離装置の構成を示す図である。
【図3】粉粒分離装置の構成を示す図である。
【図4】従来の樹脂成形システムの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ホッパー管からの微粉回収専用容器
2 材料乾燥機輸送管からの微粉回収専用容器
3、4、5 微粉搬送経路
6 乾燥物搬送経路
7 材料乾燥機
8 予備材料タンク
9 乾燥機への材料輸送管
10a、11a 上ダンパー
10b、11b 下ダンパー
12 微粉回収ダクト
13、14 微粉回収経路
15 材料乾燥機
16 予備材料タンク
17 成形材料輸送経路
18 被乾燥物輸送経路
19、21 ブラシ収納室
20、22 清掃室
27 モータ
28 清掃用ブラシ
30 注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体の上部に設置された該装置本体よりも断面積が狭い輸送管を介して前記装置本体に粉粒体が導入され、該装置本体内で粉体と粒体とに分離する粉粒分離装置であって、
前記輸送管の内壁面に付着した前記粉体の粒子を除去する管内清掃手段を有することを特徴とする粉粒分離装置。
【請求項2】
前記管内清掃手段は、ブラシ状部材であることを特徴とする請求項1記載の粉粒分離装置。
【請求項3】
前記管内清掃手段は、前記輸送管内に配置され、該輸送管の内壁面から不燃ガスを噴射することを特徴とする請求項1又は2記載の粉粒分離装置。
【請求項4】
前記装置本体と前記輸送管との間に仕切弁を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の粉粒分離装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の粉粒分離装置を備え、前記粉体を分離した前記粒体を乾燥させることを特徴とする乾燥機。
【請求項6】
前記粒体を成形する成形機に該粒体を供給するホッパとして請求項1から4のいずれか1項記載の粉粒分離装置を備え、前記粉体と分離した前記粒体を前記成形機に供給することを特徴とする粒体供給装置。
【請求項7】
請求項5記載の乾燥機によって乾燥させられた粒体が請求項6記載の粉体供給装置へ導入され、該粉体供給装置によって成形機へ供給されることを特徴とする成形システム。
【請求項8】
請求項5記載の乾燥機を用いて粉体を乾燥させる第1工程において乾燥させた粒体を請求項6記載の粒体供給装置を用いた第2工程において前記成形機に供給することを特徴とする粒体成形方法。
【請求項9】
前記粒体を前記成形機へ導入するごとに前記第1工程及び前記第2工程を実行することを特徴とする請求項8記載の粒体成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−122870(P2006−122870A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317833(P2004−317833)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】