説明

粒子スラリーから大型粒子を選択的に除去するためのフィルタ

スラリー中に所望のより小さい粒子を残留させながらスラリーの粒度分布の高粒度テールを除去するための方法。この方法には、第1および第2の側面を有し、1000nm未満の平均数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を有するファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されている濾材を提供するステップが関与する。次にファブリックの1つの面に対しスラリー流が供給される。この流れは、前記濾材の第1の側面に対して、0.1ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットと0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットとを含む多数の粒度を有する。このスラリー流は、前記濾材を通してその第2の側面まで通過させられ、こうしてスラリー中のより大きい粒子の少なくとも一部分が前記濾材の第1の側面上に保持される。第1の粒子セットに対するファブリックの濾過効率は0.05未満であり、第2の粒子セットに対する濾過効率は0.8超である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には、大型粒子および小型粒子を含むスラリーから大型サイズの粒子画分を分離するためのフィルタに関し、詳細には化学機械研磨(CMP)用スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一般的大量生産においては、何百もの同一の「集積」回路トレースが、やがては何百もの同一のダイまたはチップに切断される単一の半導体ウエハー上に、数層にわたりフォトリソグラフィによって画像形成される。ダイ層の各々の内部で、回路トレースは、絶縁材料により次の層から絶縁される。絶縁層が平滑な表面トポグラフィを有するものとして提供されることが望ましい。この点において、比較的粗な表面トポグラフィは結果として、その後に被着された層による被覆度を低くし、層間に空隙を形成させるかもしれない。半導体ダイ内の回路密度が増大し続けるにつれて、このような欠陥は一切許容不能となり、回路を動作不能にするかまたはその性能が最適レベルを下回るものにするかもしれない。
【0003】
実質的に欠陥の無いダイの生産に必要とされる比較的高い平担度を達成するためには、化学機械研磨(CMP)プロセスがさらに一般的になってきている。このようなプロセスには、機械研磨または研削と組合せてウエハー表面を化学的にエッチングするステップが関与する。この組合わされた化学的および機械的作用により、材料を制御された形で除去することが可能となる。CMPは、制御された温度、圧力および化学組成条件下で、半導体ウエハーを回転式研磨表面に対し保持するか、またはその他の形で研磨表面との関係においてウエハーを保持することによって達成される。比較的軟質で多孔質の材料で形成された平面パッドであってよい研磨表面は、化学的反応性をもち研磨性の水性スラリーで湿潤化される。酸性でも塩基性でもよいこの水性スラリーは典型的に、研磨粒子;遷移金属キレート化塩または酸化剤などの反応性化学作用物質、そして溶剤、緩衝剤および不動態化剤などのアジュバントを含む。スラリーの内部で、塩またはその他の作用物質が化学エッチング作用を提供し、研磨粒子は研磨用パッドと共働して機械的研磨作用を提供する。基本的CMPプロセスは、米国特許第5,709,593号;5,707,274号;5,705,435号;5,700,383号;5,665,201号;5,658,185号;5,655,954号;5,650,039号;5,645,682号;5,643,406号;5,643,053号;5,637,185号;5,618,227号;5,607,718号;5,607,341号;5,597,443号;5,407,526号;5,395,801号;5,314,843号;5,232,875号および5,084,071号明細書中にさらに詳細に記述されている。
【0004】
米国特許第5,516,346号;5,318,927号;5,264,010号;5,209,816号;4,954,142号明細書中でさらに詳細に記述されているCMP用のスラリーは、酸化物すなわちセラミックかまたは金属研磨粒子のいずれかのタイプのものであってよい。一般的な酸化物タイプの粒子としては、シリカ(SiO2)、セリア(CeO2)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si34)、酸化鉄(Fe23)、アルミナ(Al23)などが含まれ、一般的金属粒子としてはタングステンおよび銅が含まれる。スラリーの平均研磨粒子粒度は、酸化物スラリーについては約0.02〜0.3μmという低いものであり得る。
【0005】
凝集および空気曝露による乾燥の結果としてと同時に平担化プロセス自体の間に、より大きい粒子がスラリー内部で発生するかもしれない。金属タイプのスラリーは一般に酸化物タイプのものよりもさらに凝集しやすいが、スラリーの組成および周囲条件に応じていずれのタイプのスラリーにおいても問題が存在するかもしれない。凝集した粒子が万一CMPスラリー内部に同伴された場合には、平担化中のウエハー表面に対する有意な損傷が結果としてもたらされる可能性がある。その上、低い欠陥率および高いウエハー歩留まりを達成するためには、連続するウエハー基板の各々を実質的に類似した条件下で研磨しなければならないということは公知である。
【0006】
CMPプロセス流は、残留するスラリーから既定の限界よりも大きいサイズの凝集粒子を分離するため、ユースポイントにおいて濾過することができる。当初は、約0.3〜0.65μmの粒子保持率を有する位相反転または2軸延伸タイプのものであってよい従来の膜エレメントを利用するフィルタが提案された。しかしながら使用中、このようなタイプの膜フィルタは、微粒子をほぼ瞬間的に取込み、まもなくCMPプロセスにとって許容不可能なものと判断された。従来の膜フィルタ濾材の特性は、米国特許第5,449,917号;4,863,604号;4,795,559号;4,791,144号;4,770,785号;4,728,394号および3,852,134号明細書中にさらに詳しく記載されている。
【0007】
CMPプロセス内においてより大きな成果を上げてきた代替的なフィルタエレメントは、ランダムな方向性をもつウェブなどの繊維質濾材を利用する。実際、表面タイプの濾過に依存する膜とは異なり、これらの繊維質濾材は蛇行経路、深層タイプの濾過機序を用いる。しかしながら、耐用年数を延長するためには、繊維質濾材は、例えば絶対保持率が約40〜100μmまたは公称保持率が5〜30μmである比較的開放した透過性構造を有するものとして選択されなければならない。このような保持率は、ケーク形成そして究極的にはフィルタエレメントの早期遮断をひき起こしうる0.5〜2μmの範囲内の粒子を実質的に全く保持しないことを保証している。欠点としては、構造がより開放され透過性が増せば増すほど、実際、大きいサイズの粒子の通過を幾分か可能にし、こうして平担化中の基板が損傷を受ける可能性がある。すなわち、一般に繊維質濾材はその特徴として、粒度の低下に応じて漸進的に減少する保持プロフィールを示し、このことは、膜またはその他の表面タイプの濾材が示すより鋭い粒度カットオフと対照的である。深層タイプおよびその他の濾材は、さらに、米国特許第5,637,271号;5,225,014号;5,130,134号;4,225,642号および4,025,679号明細書中で記述されている。
【0008】
表面濾過膜に匹敵する粒子保持プロフィールを示すものの深層濾過濾材の耐用年数により近い耐用年数をもつフィルタエレメント、詳細には、直径0.1ミクロン前後の粒子を通すものの、約0.5ミクロンを上回る粒子の効率の良い除去を可能にする粒度対濾過効率曲線に向かう急激な区分を有する保持プロフィールを有するものが所望されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の濾材および比較用試料についての粒度対濾過効率のプロットを示す。
【図2】本発明の濾材の再生能力を例証するプロットを示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
スラリー中により小さい粒子を残留させながらスラリーの粒度分布の高粒度テールを除去するための方法において、
(i) 第1および第2の側面を有し、ファブリックの厚み寸法をその間で画定する第1および第2の表面を有するファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を提供するステップと;
(ii) 前記濾材の第1の側面に対して、0.2ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットと0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットとを含む多数の粒度を有するスラリー流を供給するステップと;
(iii) 前記濾材を通してその第2の側面までスラリー流を通過させ、こうしてスラリー中のより大きい粒子の少なくとも一部分が前記濾材の第1の側面上に保持されるステップと、
を含む方法であって、
第1の粒子セットに対するファブリックの濾過効率が0.01未満であり、第2の粒子セットに対する濾過効率が0.8超である方法。
【0011】
方法の一実施形態において、ポリマー繊維はナノウェブを形成する。好ましくは、前記ステップ(i)のポリマー繊維は、200〜1000nmそしてより好ましくは150〜600nmの数平均繊維径を有する。ポリマー繊維はさらに、エレクトロスピニング法、エレクトロブロー法、スパンボンディング法およびメルトブロー法からなる群から選択されたプロセスによって製造されてもよい。
【0012】
方法のさらなる実施形態において、粒子は、セラミクス、金属または金属酸化物材料またはそれらの混合物からなる群から選択された材料を含む。
【0013】
方法のさらなる実施形態において、ステップ(i)の前記ファブリックの厚み寸法は、約150〜200μmであってよい。
【0014】
その上さらなる実施形態において、ステップ(i)の前記ファブリックは、前記ファブリックのカレンダ加工前の第1の細孔サイズに比べて約20〜50%だけ前記ファブリックの細孔サイズを削減するのに有効な形でカレンダ加工されている。
【0015】
さらなる実施形態において、ステップ(i)の前記ファブリックの細孔サイズは、約0.5〜10μmである。
【0016】
本発明は同様に、スラリー中により小さい粒子を残留させながらスラリーの粒度分布の高粒度テールを除去するための方法において、
(i) 第1および第2の側面を有し、ファブリックの厚み寸法をその間で画定する第1および第2の表面を有するファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の平均数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を提供するステップと;
(ii) 前記濾材の第1の側面に対して、0.2ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットと0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットとを含む多数の粒度を有するスラリー流を供給するステップと;
(iii) 前記濾材を通してその第2の側面までスラリー流を通過させ、こうしてスラリー中のより大きい粒子の少なくとも一部分が前記濾材の第1の側面上に保持されるステップと;
(iv) ファブリックを横断する圧力降下が415kPaである場合にファブリックを通るスラリー流を停止させるステップと;
(v) 背圧が約3kPa未満で持続時間が5秒未満であるスラリー流とは反対の方向に、ファブリックを横断する流体背圧を適用するステップと;
(vi) 当初の方向でのファブリックを通るスラリーの流れを再開させるステップと、
を含む方法であって、
第1の粒子セットに対するファブリックの濾過効率と第2の粒子セットに対するファブリックの濾過効率の比が0.01未満であり、第1の粒子セットに対するファブリックの濾過効率が1%未満であり、ステップ(vi)の後のファブリックを横断する圧力降下が、ステップ(iii)で流れが開始したときの圧力降下より25%以下の割合しか高くならない方法にも向けられている。
【0017】
本発明は同様に、スラリー中により小さい粒子を残留させながらスラリーから大きい粒度のテールを除去するための装置にも向けられている。この装置は、第1および第2の側面を有し、ファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の平均数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を含み、ここで、0.1ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットに対するファブリックの濾過効率は0.05未満であり、0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットに対する前記濾過効率は0.8超である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される「ナノファイバ」という用語は、約1000nm未満、さらには約800nm未満、さらには約50nm〜500nm、そしてさらには約100〜400nmまたさらには150〜600nmの数平均直径または横断面を有する繊維を意味する。本明細書中で使用される直径という用語は、非円形の最大横断面を含む。
【0019】
「不織(布)」という用語は、多数のランダムに分布した繊維を含むウェブを意味する。繊維は一般に互いにボンディングされているかまたはいない可能性がある。繊維はステープルファイバまたは連続繊維であり得る。繊維は、異なる繊維の組合せとしてかまたは各々異なる材料で構成された類似の繊維の組合せとして、単一の材料または多数の材料を含むことができる。「ナノウェブ」はナノファイバを含む不織ウェブである。本明細書中で使用されている「ナノウェブ」という用語は、「ナノファイバウェブ」という用語と同義である。
【0020】
例証を目的として、本発明の濾材は、化学機械研磨(CMP)スラリーと流体連通状態でカップリングされてよい、従来のカートリッジフィルターアセンブリの内部のフィルタエレメントとしてのその使用に関連して、記述される。このようなタイプのアセンブリおよびその製造については、同一出願人による米国特許第5,154,827号明細書内、および米国特許第4,056,476号;4,104,170号;4,663,041号;5,154,827号;および5,543,047号明細書中の他の箇所にさらに詳しく記載されている。しかしながら、本発明の態様は、一体形濾材、ハウジング、付属品などを有するカプセルなどのその他のフィルタアセンブリ内でも有用であるかもしれないということがわかる。したがって、このようなその他の利用分野における使用は、明示的に本発明の範囲内に入るとみなされるべきである。
【0021】
本発明は、ナノウェブを含む濾材を通してスラリーを通過させるステップを含む、スラリーから大きい粒子を濾過するための方向に向けられている。具体的には、一実施形態において、この方法は、
(i) 第1および第2の側面を有し、ファブリックの厚み寸法をその間で画定する第1および第2の表面を有するファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の平均数平均繊維径を有するナノファイバを含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を提供するステップと;
(ii) 前記濾材の第1の側面に対して、0.2ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットと0.45ミクロン超の最大個別寸法を有する粒子の第2のセットとを含む多数の粒度を有するスラリー流を供給するステップと;
(iii) 前記濾材を通してその第2の側面までスラリー流を通過させ、こうしてスラリー中のより大きい粒子の少なくとも一部分が前記濾材の第1の側面上に保持されるステップと、を含み、
第1の粒子セットに対するファブリックの濾過効率は0.01未満であり、第2の粒子セットに対する濾過効率は0.8超である。
【0022】
CMPスラリー中で、最大数の粒子が第1の粒子セットに属し、これらは典型的には0.1ミクロン未満である。しかしながら、本発明はこの状況に限定されず、特許請求の範囲に適合するあらゆる任意の粒度分布を本発明の方法によって濾過することができる。
【0023】
紡糸された状態のナノウェブは主としてまたは専ら、有利には従来のエレクトロスピニング法またはエレクトロブロー法といったエレクトロスピニング法と同様、メルトブロー法またはその他のこのような適切なプロセスにより生産されたナノファイバを含んでいる。従来のエレクトロスピニング法は、ナノファイバおよび不織マットを製造するため溶解状態のポリマーに対し高電圧が印加される、全体が参照により本明細書に援用されている米国特許第4,127,706号明細書中で例証された技術である。しかしながら、エレクトロスピニングプロセスにおける合計処理量は過度に低いため、より重い秤量のウェブを形成する上で商業的に実現可能ではない。
【0024】
「エレクトロブロー法」プロセスは、全体が参照により本明細書に援用されている国際公開第03/080905号パンフレット中で開示されている。ポリマーおよび溶剤を含むポリマー溶液流が、貯蔵タンクから紡糸口金内部の一連の紡糸ノズルまで補給され、これに高電圧が印加され、これを通してポリマー溶液が放出される。その間、加熱されていてよい圧縮空気が、紡糸ノズルの側面内または紡糸ノズルの周囲に配置された空気ノズルから出される。この空気は一般に、吹込み気体流として下方に向けられ、この気体流が、新たに出されたポリマー溶液を包み前送りし、繊維質ウェブの形成を助け、このウェブは、真空チャンバ上の接地された多孔質収集ベルトの上に収集される。エレクトロブロープロセスは、比較的短時間で、約1gsm超の秤量さらには約40gsm以上という高い秤量で業務用のサイズおよび数量のナノウェブの形成を可能にする。
【0025】
基体上に紡糸されたナノファイバウェブを収集し組合せるため収集装置上に基体またはスクリムを配置して、組合せ繊維ウェブが高性能フィルタ、ワイパーなどとして使用されるようにすることができる。基体の例としては、さまざまな不織布、例えばメルトブローン不織布、ニードルパンチまたはスパンレース不織布、織布、編布、紙などが含まれてよく、ナノファイバ層を基体上に追加できるかぎり、制限なく使用可能である。不織布は、スパンボンド繊維、ドライレイドまたはウェットレイド繊維、セルロース繊維、メルトブローン繊維、ガラス繊維またはその配合物を含むことができる。
【0026】
本発明のナノウェブを形成する上で使用可能なポリマー材料は、特に限定されず、付加ポリマーおよび縮合ポリマー材料の両方、例えばポリアセタール、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン類、セルロースエーテルおよびエステル、ポリアルキレンスルフィド、ポリアリーレンオキシド、ポリスルホン、変性ポリスルホンポリマー、およびその混合物を含む。これらの包括的部類内に入る好ましい材料としては、架橋形態および非架橋形態でさまざまな加水分解度(87%〜99.5%)のポリ(塩化ビニル)、ポリメチルメタクリレート(およびその他のアクリル樹脂)、ポリスチレン、およびそれらのコポリマー(ABAタイプのブロックコポリマーを含む)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリビニルアルコールが含まれる。好ましい付加ポリマーは、ガラス質となる傾向をもつ(室温より高いTg)。これは、ポリ塩化ビニルおよびポリメチルメタクリレート、ポリスチレンポリマー組成物又はアロイについてあてはまり、あるいはポリフッ化ビニリデンおよびポリビニルアルコール材料については結晶化度が低い。ポリアミド縮合ポリマーの1つの好ましい部類は、ナイロン材料、例えばナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン6,6−6,10などである。本発明のポリマーナノウェブがメルトブロー法により形成される場合、ポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブチレン、ポリエステル類、例えばポリ(エチレンテレフタレート)およびポリアミド類、例えば以上で列挙したナイロンポリマーを含めた、ナノファイバへとメルトブロー可能なあらゆる熱可塑性ポリマーを使用することができる。
【0027】
繊維ポリマーのTgを低減させるために、上述のさまざまなポリマーに対して、当該技術分野で公知の可塑化剤を添加することが有利であり得る。適切な可塑化剤は、エレクトロスピニングまたはエレクトロブローすべきポリマーならびに、ナノウェブが導入される特定の最終用途によって左右される。例えば、ナイロンポリマーは水さらにはエレクトロスピニングまたはエレクトロブロープロセスの残留溶剤で可塑化され得る。ポリマーTgを低下させる上で有用であり得る当該技術分野で公知のその他の可塑化剤としては、脂肪族グリコール類、芳香族スルファノミド類、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジウンデシルフタレート、ジドデカニルフタレート、およびジフェニルフタレートからなる群から選択されたものを含めた(ただしこれらに限定されない)フタレートエステル類などが含まれるが、これらに限定されない。参照により本明細書に援用されているGeorge Wypych編のHandbook of Plasticizers,2004 Chemtec Publishingは、本発明において使用可能なその他のポリマーと可塑化剤の組合せを開示している。
【0028】
有利には、本発明の濾材の保持プロフィールは、例えばロールミルなどの加熱された回転ロールの間で圧縮することなど、任意にはファブリックシートをカレンダ加工することによって具体的な利用分野に合わせて調整されてよい。熱可塑性ファブリックシートについては、ロールを樹脂の融点より低い温度に維持してよい。本明細書中で「融点」という用語は、形状安定した結晶質またはガラス状固体相から、一般に分子間鎖回転を示すものとして特徴づけされてよい流動性のある液体、半液体またはほかの粘性の相またはメルトへの遷移が材料内で確認されている温度または温度範囲を含むよう、その最も広い意味合いで用いられている。
【0029】
本発明の濾材のために企図されている樹脂は、示差走査熱量計(DSC)または示差熱分析法(DTA)を用いて決定される約150〜280℃のピーク融点を示す。明確に定義された溶融ピークを有さない非晶質またはその他の熱可塑性樹脂については、融点という用語は、ガラス転移点または軟化点と互換的に用いられる。
【0030】
こうして、CMPスラリー内での使用に特に適合させられた独特の特性収束を提供する濾材が記述される。このような濾材は予想外に、表面濾過膜に匹敵する粒子保持プロフィールを示すが、深層濾過濾材の耐用年数に近い耐用年数を有する。
【0031】
本発明は同様に、以上の実施形態のいずれかにおいて説明された、濾材のバックパルシングステップを含む方法にも向けられている。本発明の濾材は、膜を横断した圧力降下を、非常に低い背圧の適用により濾過の開始時点でその当初の初期値に非常に近い値まで削減することができるという望ましい特徴を有する。したがって、本発明の方法は、同様に、ファブリックを横断する圧力降下が415kPaである場合にファブリックを通るスラリー流を停止させるステップと;背圧が約3kPa未満で持続時間が5秒未満であるスラリー流とは反対の方向に、ファブリックを横断する流体背圧を適用するステップと;次に当初の方向でのファブリックを通るスラリーの流れを再開させるステップと、を含んでいてもよい。スラリー流を再開した後のファブリックを横断する圧力降下は、流れが当初開始したときの圧力降下より25%以下の割合しか高くならないものである。
【実施例】
【0032】
国際公開第03/080905号パンフレット中に記載されている通りのエレクトロブロー法により、蟻酸中のポリアミド−6,6の24%溶液を紡糸した。実施例1のための数平均繊維径は約420nmであった。実施例1中の紡糸された状態の濾材を、支持体としてのスパンボンド濾材の2枚のスクリムの間で同時プリーティングした。プリーティングされた濾材を、およそ7平方フィートの濾材表面積を有する標準的な222 10インチのカートリッジへと変換した。
【0033】
実施例2のための濾材を、実施例1からカレンダ加工した。巻出しから2本ロールカレンダーニップへとナノファイバシートを送出すことにより、実施例1のナノファイバシートをカレンダ加工した。ニップに先立ちシートを展延するための装置を用いて、ニップに入る時点で平担なしわの無いシートを維持した。硬質ロールは、直径16.04インチ(40.74cm)の鋼製ロールであり、軟質ロールは、約78のショアD硬度と約20.67インチ(52.50cm)の直径を有するコットン−ウール複合ロールであった。濾材を、150℃まで加熱された鋼製ロールを用いて、45フィート/分のライン速度でカレンダ加工した。ニップ圧は916.2PLIである。次に濾材をスパンボンド濾材の2つの支持スクリムと共に標準的222 10インチのフィルタカートリッジ内へと同時プリーティングした。
【0034】
比較用フィルタを試験した。フィルタはPall Corporation(East Hills,NY)から入手した。Pall Corp.のNXAシリーズフィルターは、カートリッジに対する剛性構造的網状組織を生産するために細かい繊維マトリクス内部にCo−Located Large Diameter繊維を一体化するCoLD繊維メルトブロー技術を用いて製造される。
【0035】
Syton(登録商標)HT50CMPスラリーは、DuPont Air Products Nanomaterials LLC(Tempe,AZ)から入手した。受入れたままの固体50%スラリーを0.1ミクロン濾過した脱イオン水と混合することにより、タンク内で固体10%スラリー380リットルを調製した。未濾過粒子計数および固体%の測定のためスラリー試料を収集した。その後、貯蔵タンク、Levitronix LLC(Waltham,MA)BPS−4遠心ポンプシステム、流量計、10インチのフィルタカートリッジを収納する10インチフィルタハウジングおよびフィルタハウジングの直前および直後にある圧力センサーで構成された閉ループ濾過システムを用いて、19L/分の流速でスラリーを濾過した。スラリーの試料を20分後に(フィルタ内を380リットルが通過)、粒子計数および固体%測定のために収集し、濾過試験を終結させた。Mettler Toledo(Columbus,OH)HR83P水分分析器を用いて固体%について未濾過試料および濾過済み試料を測定した。Particle Measuring Systems Inc.(Boulder,CO)Liquilaz SO2およびLiquilaz SO5液体光学粒子計数器を用いて粒子計数について未濾過試料および濾過済み試料を測定した。粒子計数を行うため、粒子計数センサーにおける最終濃度が固体0.000075%(希釈係数13333.3)に至るまで0.1ミクロン濾過された脱イオン水で、固体10%スラリーを希釈させた。
【0036】
0.01ミクロンに対応する粒子「ビン」サイズ内部で濾材に衝突した粒子濃度に対する濾材を通過した粒子数濃度の比率から、所与の粒度での濾過効率を計算した。濾材を通過した固体重量パーセントを濾材に衝突した固体重量パーセントで除したものから、全体的効率を計算した。
【0037】
表1は、ナノウェブ構造および比較用メルトブローン構造により濾過された試料の固体含有率を示している。フィルタによりコロイド懸濁液から除去された実際の固体は、およそ0.02%という低いものであり、これはわずか0.2%前後の濾過効率に対応する。
【0038】
【表1】

【0039】
図1は、0.01ミクロンビン内に分離された粒子についての粒度に対する分別濾過効率の結果を示す。0.2ミクロン前後未満の直径の粒子については、メルトブローンおよびナノウェブベースのフィルタの両方が、ゼロに近い効率を有する。ただし、ナノウェブベースのフィルタは、粒度が増大することから所望されるより急な曲線を有し、これはメルトブローンベースの構造では得ることのできないものである。
【0040】
表1および図1は、ナノウェブ試料が、主にさらに小さい0.2ミクロン以下の粒子で構成された合計粒子計数の少なくとも99.98%前後をなおも通過させる一方で、より大きい所望されない粒子についてナノウェブ試料が有する高い濾過効率を裏づけている。
【0041】
ナノウェブベースの濾材の再生能力は、図2に示されている。
【0042】
Syton(登録商標)HT50CMPスラリーは、DuPont Air Products Nanomaterials LLC(Tempe,AZ)から入手した。受入れたままの固体50%スラリーを0.1ミクロン濾過した脱イオン水と混合することにより、タンク内で固体10%スラリー380リットルを調製した。その後、貯蔵タンク、Levitronix LLC(Waltham,MA)BPS−4遠心ポンプシステム、流量計、10インチのフィルタカートリッジを収納する10インチフィルタハウジングおよびフィルタハウジングの直前および直後にある圧力センサーで構成された閉ループ濾過システムを用いて、19L/分の流速でスラリーを濾過した。流量を19L/分に維持し、その間フィルタハウジングの前後にある圧力センサーの間の差分を時間の一関数として記録した。一回目の反復を60分後(フィルタ内を1140リットルが通過)に終結させ、これはおよそ415kPaの最大ポンプ出力圧力とも一致していた。10インチフィルタハウジングの上面は貯蔵タンク内のレベルよりおよそ1フィート上にあったことから、高さの差に起因してポンプが停止した時点でフィルタハウジングの入口で負の3kPaバックパルス圧力が発生した。フィルタハウジングの入口における負の圧力を、ポンプの停止後5秒未満以内に除去し、固体%を測定する目的でフィルタハウジングの入口区分の底面から試料を収集した。バックパルスが発生した時にフィルタカートリッジから移動したあらゆる汚染物質を除去する上で一助となるように、フィルタハウジングの底面からおよそ100mlの追加分をドレンした。ポンプを再始動させ、再び流量を19L/分に維持し、その間圧力センサー間の差分を時間の一関数として記録した。さらに60分の経過後、2回目の反復を終結させた。固体%の測定のためフィルタハウジングの入口区分の底面から試料を収集した。フィルタハウジングの底面からおよそ100mlの追加分をドレンした。19L/分に流量を維持した状態でポンプを再始動させ、その間圧力センサー間の差分を時間の一関数として記録した。さらに20分後に3回目の反復を終結させた。固体%の測定のためフィルタハウジングの入口区分の底面から試料を収集した。フィルタハウジングの底面から収集した試料を、Mettler Toledo(Columbus OH)HR83P水分分析器を用いて固体%について測定した。
【0043】
本明細書で関与している教示から逸脱することなく本発明に一定の変更を加えてよいということが予想されることから、以上の記述中に含まれている全ての事柄は、限定的な意味で解釈されるのではなく一例として解釈されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー中により小さい粒子を残留させながらスラリーの粒度分布の高粒度テールを除去するための方法において、
(i) 第1および第2の側面を有し、ファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の平均数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を提供するステップと;
(ii) 前記濾材の前記第1の側面に対して、0.1ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットと0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットとを含む多数の粒度を有するスラリー流を供給するステップと;
(iii) 前記濾材を通してその前記第2の側面までスラリー流を通過させ、こうして前記スラリー中の前記より大きい粒子の少なくとも一部分が前記濾材の前記第1の側面上に保持されるステップと、
を含み、
前記第1の粒子セットに対する前記ファブリックの濾過効率が0.05未満であり、前記第2の粒子セットに対する濾過効率が0.8超である、方法。
【請求項2】
前記ポリマー繊維がナノウェブを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー繊維が、エレクトロスピニング法、エレクトロブロー法、スパンボンディング法およびメルトブロー法からなる群から選択されたプロセスによって製造される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子が、セラミクス、金属または金属酸化物材料またはそれらの混合物からなる群から選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(i)の前記ファブリックの厚み寸法が約150〜200μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)の前記ファブリックの前記ポリマー繊維が150nm〜600nmの数平均繊維径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(i)の前記ファブリックが、前記ファブリックのカレンダ加工の前の第1の細孔サイズに比べて約20〜50%だけ前記ファブリックの細孔サイズを削減するのに有効な形でカレンダ加工されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(i)の前記ファブリックの前記細孔サイズが約0.5〜10μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
スラリー中により小さい粒子を残留させながらスラリーの粒度分布の高粒度テールを除去するための方法において、
(i) 第1および第2の側面を有し、ファブリックの厚み寸法をその間で画定する第1および第2の表面を有する前記ファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の平均数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を提供するステップと;
(ii) 前記濾材の前記第1の側面に対して、0.2ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットと0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットとを含む多数の粒度を有するスラリー流を供給するステップと;
(iii) 前記濾材を通してその前記第2の側面までスラリー流を通過させ、こうして前記スラリー中の前記より大きい粒子の少なくとも一部分が前記濾材の前記第1の側面上に保持されるステップと;
(iv) 前記ファブリックを横断する圧力降下が415kPaである場合にファブリックを通るスラリー流を停止させるステップと;
(v) 背圧が約3kPa未満で持続時間が300秒未満である前記スラリー流とは反対の方向に、前記ファブリックを横断する前記流体背圧を適用するステップと;
(vi) 当初の方向での前記ファブリックを通る前記スラリー流を再開させるステップと、
を含み、
前記第1の粒子セットに対する前記ファブリックの濾過効率が0.01未満であり、前記第2の粒子セットに対する濾過効率が0.8超であり、ステップ(vi)の後の前記ファブリックを横断する圧力降下が、ステップ(iii)で前記流れが開始したときの圧力降下より25%以下の割合しか高くならない、方法。
【請求項10】
第1および第2の側面を有し、ファブリックの少なくとも1枚のシートで形成されており、前記ファブリックが1000nm未満の平均数平均繊維径を有するポリマー繊維を含む少なくとも1つの層を含んでいる濾材を含む、スラリー中により小さい粒子を残留させながらスラリーから大粒度テールを除去するための装置において、0.1ミクロン未満の最大寸法を有する第1の粒子セットに対する前記ファブリックの濾過効率が0.05未満であり、0.45ミクロン超の最大個別寸法を有するより大きい粒子の第2のセットに対する濾過効率が0.8超である、装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−511428(P2012−511428A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540856(P2011−540856)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/067272
【国際公開番号】WO2010/077718
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】