説明

粒子分析装置

【課題】光ファイバーを用いて干渉縞の発生を抑制しつつ、スペックルノイズの発生をも抑制する。
【解決手段】本発明の粒子分析装置は、光を発する光源66と、複数本の光ファイバー70aからなり、前記光源からの光が入射されるとともに粒子を含む試料流に対して光を出射する光ファイバー束70と、光が照射された試料流中の粒子を撮像する撮像器65と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光が照射された試料流中の粒子を撮像する機能を備えた粒子分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、細胞等の粒子を含む試料液とシース液とによって試料流を形成するシースフローセルと、パルス光を出射するパルス光源と、パルス光源から出射されたパルス光が導入される光ファイバと、光ファイバから出射するパルス光を集光して試料流に照射するコンデンサレンズと、パルス光が照射された試料流中の粒子の投影像を撮像するビデオカメラとを備えた粒子分析装置が開示されている。
この粒子分析装置では、パルス光源から出射されたパルス光を光ファイバーに通すことによってコヒーレンシーを低下させ、回折縞(干渉縞)の少ない粒子画像を得ることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−74643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光ファイバを通ったパルス光で照明された粒子を撮像すると、その画像には、図9に示すようなスペックルノイズ(背景に白黒の斑点模様)が発生する場合がある。このスペックルノイズは、光ファイバー内におけるモード間のランダムな干渉や、光ファイバの内部の欠陥やコア径の歪み、温度変化によるコア径の膨張等が原因で発生する。
【0005】
本発明は、光ファイバーを用いて干渉縞の発生を抑制しつつ、スペックルノイズの発生をも抑制して、明瞭な粒子画像を撮像することができる粒子分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粒子分析装置は、光源と、複数本の光ファイバーからなり、前記光源からの光が入射されるとともに粒子を含む試料流に対して光を出射する光ファイバー束と、光が照射された試料流中の粒子を撮像する撮像器と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明の粒子分析装置は、試料流中の粒子に対して光ファイバーを通った光を照射しているので、光のコヒーレンシーを低下させて干渉縞の少ない粒子画像を撮像することができる。また、光ファイバー束を構成する各光ファイバーにおいてスペックルノイズが発生しても、各光ファイバーを束にすることによって、各スペックルノイズを重ね合わせて平滑化することができる。これにより、全体としてスペックルノイズが少ない明瞭な粒子画像を撮像することができる。
【0008】
前記光が入射される前記光ファイバー束の入射面は、当該光の入射形状に対応した形状に形成されていることが好ましい。
光ファイバー束は、複数本の光ファイバーを束ねることによって構成されているので、その束ね方(重ね合わせ方)を変えることによって、光の入射面や出射面の形状を光源側や試料流側の形状等の条件に合わせて自由に設定することができる。そして、例えば、光ファイバー束に入射する光の入射形状が細長い形状である場合には、これに対応するように、前記光ファイバー束を構成する複数本の光ファイバーを細長く配列することができる。
このような構成によって、光源から出射された光を効率よく光ファイバー束内に導入することができ、粒子の撮像に必要な光量を確保しやすくすることができる。
【0009】
また、前記光ファイバー束の入射面と出射面とは、互いに異なる形状に形成されていてもよい。
以上のように、光ファイバー束の入射面が光の入射形状に対応した形状とされていた場合でも、光ファイバー束の出射面の形状は、光の入射形状に影響されることはないので、光の出射先(試料流)の条件に合わせて適切に設定することができる。
【0010】
前記光ファイバー束の出射面は、略円形状又は略正多角形状に形成されているのが好ましい。光ファイバー束の出射面の形状が、例えば、細長い形状(楕円形状や長方形状等)であると、出射面に周方向の方向性が生じるため、試料流へ向けて出射面を配置するときに、出射面の周方向の向きを正確に設定する必要が生じるが、光ファイバー束の出射面の形状が略円形状又は略正方形状であると、出射面に周方向の方向性がほとんどなく、出射面の位置付けを容易に行うことができる。
【0011】
前記光ファイバー束から出射された光を集光させるレンズ系が設けられ、このレンズ系を経た光の焦点位置が、試料流の手前位置又は試料流を過ぎた位置に配置されていることが好ましい。
複数本の光ファイバーを束にした場合、レンズ系を経て光が結像する焦点の位置では、各光ファイバーの明るさの違いや光ファイバー間の隙間がそのまま転写され、照明ムラが発生しやすくなる。本発明では、光の焦点位置を試料流の手前位置又は試料流を過ぎた位置に配置することにより、このような照明ムラを防止することができる。
【0012】
本発明は、血球細胞や上皮細胞等、種々の粒子の分析装置に採用することができる。例えば、前記粒子は、子宮頸部から採取された上皮細胞であってもよく、この場合、子宮頸癌等の細胞の分析に粒子画像を役立てることができる。
【0013】
また、本発明の粒子分析装置は、粒子を含む試料をシース液によって包むことで試料流を形成するフローセルを備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光ファイバーを用いて干渉縞の発生を抑制しつつスペックルノイズの発生をも抑制し、明瞭な粒子画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る細胞分析装置の斜視説明図である。
【図2】図1に示される細胞分析装置の構成を示すブロック図である。
【図3】光学検出部の構成を示す図である。
【図4】レンズ系の側面図である。
【図5】レンズ系の平面図である。
【図6】光ファイバー束の断面図である。
【図7】(a)は、図6のA−A矢視図、(b)は図6のB−B矢示図である。
【図8】実施の形態に係る撮像部により撮像された背景画像である。
【図9】従来例に係る撮像部により撮像された背景画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の細胞分析装置及び細胞分析方法の実施の形態を詳細に説明する。
[細胞分析装置の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る細胞分析装置10の斜視説明図である。この細胞分析装置10は、患者から採取した細胞(粒子)を含む測定試料をフローセルに流し、このフローセルを流れる測定試料に光を照射し、測定試料中の細胞から生じる光(前方散乱光、側方蛍光等)を検出・分析することで、上記細胞に癌細胞や異型細胞(以下、これらを「異常細胞」ともいう)が含まれているか否かを判断するとともに、光が照射された細胞の画像を撮像するのに用いられる。具体的に、本実施形態の細胞分析装置10は、子宮頸部の上皮細胞を用いて子宮頸癌をスクリーニングするのに用いられる。
【0017】
細胞分析装置10は、試料の測定等を行う装置本体12と、この装置本体12に接続され、測定結果の分析等を行うシステム制御部13とを備えている。
図2に示すように、細胞分析装置10の装置本体12は、測定試料から細胞や核のサイズ等の情報を検出するための光学検出部3と、信号処理回路4と、測定制御部16と、モータ、アクチュエータ、バルブ等の駆動部17と、各種センサ18と、細胞の画像を撮像する撮像部26とを備えている。
【0018】
信号処理回路4は、光学検出部3の出力をプリアンプ(図示せず)により増幅したものに対して増幅処理やフィルタ処理等を行うアナログ信号処理回路と、アナログ信号処理回路の出力をデジタル信号に変換するA/Dコンバータと、デジタル信号に対して所定の波形処理を行うデジタル信号処理回路とを備えている。
【0019】
また、測定制御部16がセンサ18の信号を処理しつつ駆動部17の動作を制御することにより、測定試料の吸引や測定が行われる。子宮頸癌をスクリーニングする場合、測定試料としては、患者(被検者)の子宮頸部から採取した細胞(上皮細胞)に遠心(濃縮)、希釈(洗浄)、攪拌(タッピング)、PI染色等の公知の処理を施して調製されたものを用いることができる。調製された測定試料は試験管に収容され、装置本体12のピペット(図示せず)下方位置に設置され、ピペットにより吸引されてシース液とともにフローセルに供給され、フローセルにおいて試料流が形成される。上記PI染色は、色素を含んでいる蛍光染色液であるヨウ化プロピジウム(PI)により行われる。PI染色では核に選択的に染色が施されるため、核からの蛍光が検出可能となる。
【0020】
[測定制御部の構成]
測定制御部16は、マイクロプロセッサ20、記憶部21、I/Oコントローラ22、センサ信号処理部23、駆動部制御ドライバ24、及び外部通信コントローラ25等を備えている。記憶部21は、ROM、RAM等からなり、ROMには、駆動部17を制御するための制御プログラム、及び、制御プログラムの実行に必要なデータが格納されている。マイクロプロセッサ20は、制御プログラムをRAMにロードし、又はROMから直接実行することが可能である。
【0021】
マイクロプロセッサ20には、センサ18からの信号がセンサ信号処理部23及びI/Oコントローラ22を通じて伝達される。マイクロプロセッサ20は、制御プログラムを実行することにより、センサ18からの信号に応じて、I/Oコントローラ22及び駆動部制御ドライバ24を介して駆動部17を制御することができる。
【0022】
マイクロプロセッサ20が処理したデータや、マイクロプロセッサ20の処理に必要なデータは、外部通信コントローラ25を介してシステム制御部13等の外部の装置との間で送受信される。
【0023】
[システム制御部の構成]
図1に示すように、システム制御部13はパーソナルコンピュータ等からなり、本体27と、表示部28と、入力部29とから主に構成されている。本体27は、CPU、ROM、RAM、ハードディスク、読出装置、入出力インターフェース、画像出力インターフェース等を備えている。
【0024】
ハードディスクには、Windows(登録商標)等のオペレーティングシステムやアプリケーションプログラム、これらのプログラムの実行に用いるデータがインストールされ、これらのプログラムはCPUによって実行される。アプリケーションプログラムには、測定制御部16への測定オーダ(動作命令)の送信、装置本体12で測定した測定結果の受信及び処理、処理した分析結果の表示等を行うためのプログラムが含まれる。
【0025】
システム制御部13の入出力インターフェースは、装置本体12と接続されており、装置本体12との間でデータ等の送受信を行うことが可能である。また、システム制御部13の画像出力インターフェースは、LCD又はCRT等で構成された表示部28に接続されており、CPUから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部28に出力するように構成されている。
【0026】
[光学検出部及び撮像部の構成]
図3は、光学検出部3及び撮像部26の構成を示す図である。この光学検出部3は、半導体レーザからなる光源53を備え、この光源53から放射されたレーザ光は、レンズ系52を経てフローセル51を流れる測定試料(試料流)に集光する。このレーザ光により測定試料中の細胞から生じた前方散乱光は、対物レンズ54及びフィルタ56を経てフォトダイオード(第1検出器)55によって検出される。なお、レンズ系52は、コリメータレンズ、シリンダーレンズ、コンデンサレンズ等を含むレンズ群から構成されている。
【0027】
さらに、細胞から生じた側方蛍光及び側方散乱光は、フローセル51の側方に配置された対物レンズ56を経てダイクロイックミラー61に入射する。そして、このダイクロイックミラー61を反射した側方蛍光及び側方散乱光がダイクロイックミラー62に入射し、さらにダイクロイックミラー62を透過した側方蛍光がフィルタ63を経てフォトマルチプライヤ(第2検出器)59によって検出される。また、ダイクロイックミラー62を反射した側方散乱光は、フィルタ64を経てフォトマルチプライヤ(第3検出器)58によって検出される。
【0028】
フォトダイオード55、フォトマルチプライヤ58及びフォトマルチプライヤ59は、検出した光を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)を出力する。これらの信号は、図示しないプリアンプにより増幅された後、上述した信号処理回路4(図2参照)に送られる。
【0029】
図2に示すように、信号処理回路4では、フィルタ処理やA/D変換処理等の信号処理が施されて前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)及び側方蛍光データ(SFL)が取得される。また、測定制御部16では、これらデータを用いて各種特徴パラメータが取得される。この特徴パラメータは、例えば、前方散乱光の信号波形のパルス幅(FSCW)、前方散乱光の信号波形のピーク値(FSCP)、蛍光信号波形のピーク値(PEAK)、蛍光信号の差分積分値(DIV)、側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)、蛍光信号のパルスの面積(蛍光量)(SFLI)等である。
【0030】
以上の測定データ(光データ及び特徴パラメータ)は、マイクロプロセッサ20によって、外部通信コントローラ25を介して前述したシステム制御部13へ送られ、ハードディスクに記憶される。システム制御部13では、前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)、側方蛍光データ(SFL)及び特徴パラメータに基づいて、細胞が異常であるか否かの弁別が行われる。そして、システム制御部13のCPUは、異常細胞の弁別結果から所定の分析、例えば異常細胞比率の演算を行う。
【0031】
この異常細胞比率とは、分析対象となる細胞の中で異常細胞が占める割合であり、異常細胞の数Xと正常細胞の数Zとの関係で例えば次の式(1)で表される。
異常細胞比率:W=X/(X+Z)・・・(1)
異常細胞比率は分析結果としてシステム制御部13の表示部28に表示され、細胞検査士や医師による診断に供せられる。また、このときシステム制御部13のCPUは、横軸がパルス幅(FSCW)、縦軸がピーク値(FSCP)のFSCW−FSCPスキャッタグラム及び縦軸が蛍光信号波形の差分積分値(DIV)をピーク値(PEAK)で除した値(DIV/PEAK)、横軸が側方散乱光の信号波形のパルス幅(SSCW)の(DIV/PEAK)−SSCWスキャッタグラムなどを作成し、表示部28に表示する。
【0032】
また、本実施の形態の装置本体12には、光学検出部3に加えて撮像部26が設けられている。この撮像部26は、パルスレーザからなる光源66とCCDカメラ(撮像器)65とを備えており、光源66からのパルスレーザ光は、光ファイバー束70及びレンズ系60を経てフローセル51に入射し、さらに対物レンズ56及びダイクロイックミラー61を透過してカメラ65に結像する。
【0033】
光源66は、システム制御部13において弁別された異常細胞をカメラ65によって撮像するタイミングで発光する。本実施の形態の光源66は、波長λ=780nm、コヒーレンス長150μmのパルスレーザ光を発光し、フローセル51内を流速約13.3m/secで流れる粒子をブレなく撮像するために、発光時間が10nsec以下(例えば、約6.8nsec)とされている。
【0034】
図2に示すように、カメラ65によって撮像された異常細胞の画像は、マイクロプロセッサ20によって、外部通信コントローラ25を介してシステム制御部13へ送られる。そして、異常細胞の画像は、その細胞の前方散乱光データ(FSC)、側方散乱光データ(SSC)及び側方蛍光データ(SFL)に基づいて求められた特徴パラメータに対応づけてハードディスクに記憶される。
【0035】
(レンズ系及び光ファイバー束の構成)
次に、撮像部26におけるレンズ系60及び光ファイバー束70について詳細に説明する。図4は、レンズ系60の側面図、図5はレンズ系60の平面図、図6は、光ファイバー束70の断面図、図7(a)は、図6のA矢視図、図7(b)は図6のB矢示図である。
図5に示すように、光源66には複数本の光ファイバーを束ねた光ファイバー束70が接続されている。本実施の形態では、図7に示すように、7本の光ファイバー70aを束ねることによって1本の光ファイバー束70が形成されている。光源66から出射されたパルスレーザ光は、図6に示すように、コンデンサレンズ66aを介して光ファイバー束70の一端に入射し、光ファイバー束70の他端から出射される。なお、光ファイバー束70の入射側端部にはフェルール70bが設けられ、出射側端部にはコネクタ部70cが設けられている。
【0036】
図7(a)に示すように、光源66から出射されるパルスレーザ光は、横方向(フローセル51における試料流方向に直交する方向)に細長い形状とされ、コンデンサレンズ66aを経たパルスレーザ光も同様に、点線Lで示すように横方向に細長い形状とされ、かつ所定の開口数(NA)に調整されている。これに対して、光ファイバー束70の入射面71も横方向に細長く形成されており、具体的には、複数本の光ファイバー70aが横方向に一列に配列されている。このように、パルスレーザ光の入射形状に対応する形状に光ファイバー束70の入射面71を形成することによって、パルスレーザ光を効率よく光ファイバー束70に導入することができ、粒子の撮像に必要な光量を確保し易くすることができる。
【0037】
光ファイバー束70の出射面72は、図7(b)に示すように、複数本の光ファイバー70aを束ねることによって円形状乃至正六角形状とされ、周方向の方向性をほとんどもたない形状に形成されている。そのため、光ファイバー束70の出射面72をレンズ系60に向けて配置する際に、当該出射面72の周方向の向きを考慮する必要が無く、出射面72の位置付けを容易に行うことができる。
【0038】
本実施の形態の光ファイバー束70は、NA(開口数)0.2、コア径114μm、クラッド径125μm、長さ150mmのSI型マルチモード光ファイバーを束にしたバンドルファイバが用いられている。このSI型マルチモード光ファイバーは、この光路差が光源66によるパルスレーザ光のコヒーレンス長(約150μm)よりも十分に長いため、撮像画像における干渉縞の発生を好適に防止することができる。なお、光ファイバー束70における光ファイバー70aの本数や長さは、この実施の形態に限定されるものではなく、例えば、長さ100mm程の光ファイバー70aを10本程度束ねてもよい。
【0039】
図4及び図5に示すように、本実施の形態のレンズ系60は、両凸単レンズ60a、平凸シリンドリカルレンズ60b、両Rシリンドリカルレンズ60c、両R球面レンズ60d、両R球面シリンドリカルレンズ60eを含むレンズ群から構成されている。
図5に示すように、光ファイバー束70から出射されたパルスレーザ光を上方から見ると、光ファイバー束70から出射されて拡散するパルスレーザ光は、両凸単レンズ(コリメータレンズ)60aに入射して平行光に変化され、平凸シリンドリカルレンズ60bを屈折することなく通過し、両Rシリンドリカルレンズ60c、両R球面レンズ60d、及び両R球面シリンドリカルレンズ60eにより、フローセル51よりも後方の焦点位置Pで集光(結像)する。
【0040】
一方、図4に示すように、光ファイバー束70から出射されたパルスレーザ光を側面から見ると、光ファイバー束70から出射されて拡散するパルスレーザ光は、両凸単レンズ60aで平行光に変換され、平凸シリンドリカルレンズ60bで測定試料の流れ方向Fに収束された後に拡散し、両Rシリンドリカルレンズ60cを屈折することなく通過した後、両R球面レンズ60d及び両R球面シリンドリカルレンズ60eによってフローセル51よりも後方の焦点位置Pで集光(結像)する。そして、パルスレーザ光によって照射されたフローセル51中の試料流の細胞がカメラ65によって撮像される。
【0041】
以上のように、本実施の形態の細胞分析装置では、光源66とフローセル51との間の光路として複数本の光ファイバ70aからなる光ファイバー束70が用いられている。従来は、一本の光ファイバーが用いられていたので、この光ファイバー内におけるモード間のランダムな干渉や、光ファイバ70aの内部の欠陥やコア径の歪み、温度変化によるコア径の膨張等が原因で、撮像画像にスペックルノイズが発生する場合があったが、本実施の形態では、各光ファイバー70aにおいてスペックルノイズが発生したとしても、各光ファイバー70aが束となることによって、各スペックルノイズを重ね合わせて平滑化することができる。そのため、全体としてスペックルノイズを低減することができ、カメラ65によってノイズの少ない明瞭な粒子画像を撮像することができる。
【0042】
図8は、光ファイバー束を使用した本実施の形態の撮像部により撮像された背景画像であり、図9は、1本の光ファイバーを使用した従来の撮像部により撮像された背景画像である。従来は、図9に示すように、背景全体に細かい白黒の斑点模様、すなわちスペックルノイズが現れているのに対して、本実施の形態では、図8に示すように、白黒の斑点模様が少なくなり、スペックルノイズが低減されているのが解る。
【0043】
また、パルスレーザ光は、各光ファイバー70aを通過することによってコヒーレンシーが低下するので、干渉縞の発生も抑制することができる。
なお、フローセル51にパルスレーザ光を照射させるレンズ系60のNAは、φ5μm程度の粒子に対して干渉縞の可視度を十分に低下させるため、0.1以上、例えば0.155に設定するのが好ましい。
【0044】
本実施の形態の撮像部26では、複数本の光ファイバ70aからなる光ファイバー束70が用いられているので、各光ファイバー70aから出射されてレンズ系60を経たパルスレーザ光は、焦点位置Pにおいて、各光ファイバー70aの明るさの違いや各光ファイバー70aの隙間がそのまま転写される。したがって、この焦点位置Pで試料流にパルスレーザ光を照射すると照明ムラが発生しやすくなるという問題が生じる。そのため、本実施の形態では、レンズ系60を経たパルスレーザ光の焦点位置Pを試料流よりも後方にずらす(デフォーカスする)ことによって、試料流に照射されるパルスレーザ光による照明ムラの発生を防止している。
なお、各光ファイバー70aから出射されたパルスレーザ光の焦点位置Pは、試料流の手前に配置してもよく、これによっても同様の理由で照明ムラの発生を防止することができる。また、試料流と焦点位置Pとの距離L(図5参照)は、1.0〜2.0mm(例えば、1.6mm)とすることができ、試料流に照射する部分でのスポットサイズは細胞の径よりも十分に大きい寸法、例えば約2mmとすることができる。
【0045】
撮像部26によって撮像された画像データは、測定制御部16のマイクロプロセッサ20によって外部通信コントローラ25を介してシステム制御部13へ送られ、ハードディスクに記憶され、その後、分析結果とともに表示部28(図1参照)に表示される。撮像部26によって撮像された粒子画像は、干渉縞やスペックルノイズの少ない明瞭な画像となるので、使用者が目で見て細胞の形態を確認することにより、真に異常細胞であるか否かを適切に判断することができる。また、その判断を異常細胞比率等の分析結果に反映させてもよい。
【0046】
なお、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0047】
たとえば、光ファイバー束70を構成する光ファイバー70aの本数や、光ファイバー70aのコア径、長さ、NA等の仕様は適宜変更することができ、レンズ系60におけるレンズ群の構成についても適宜変更することが可能である。
また、上記実施の形態の細胞分析装置は、子宮頸部の上皮細胞を分析するものとされているが、これに限定されるものではなく、口腔細胞、膀胱や咽頭等他の上皮細胞、さらには血球細胞等、種々の細胞(粒子)を分析するために用いることができる。
【0048】
また、上記した実施の形態において、光源66として、パルス光を出射するパルスレーザ光源を用いている。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、光源66として、連続光を出射するレーザ光源を用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 細胞分析装置
12 装置本体
13 システム制御部
16 測定制御部
26 撮像部
60 レンズ系
65 カメラ(撮像器)
66 光源
70 光ファイバー束
70a 光ファイバー
71 光ファイバー束の入射面
72 光ファイバー束の出射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
複数本の光ファイバーからなり、前記光源からの光が入射されるとともに粒子を含む試料流に対して光を出射する光ファイバー束と、
光が照射された試料流中の粒子を撮像する撮像器と、を備えている粒子分析装置。
【請求項2】
前記光源からの光が入射される前記光ファイバー束の入射面が、当該光の入射形状に対応した形状に形成されている請求項1に記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記光ファイバー束を構成する複数本の光ファイバーが、細長い光の入射形状に合わせて細長く配列されている請求項2に記載の粒子分析装置。
【請求項4】
前記光ファイバー束の前記入射面と前記出射面とが異なる形状に形成されている請求項2又は3に記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記光ファイバー束の出射面が、略円形状又は略正多角形状に形成されている請求項4に記載の粒子分析装置。
【請求項6】
前記光ファイバー束から出射された光を集光させるレンズ系が設けられ、このレンズ系を経た光の焦点位置が、前記試料流の手前位置又は前記試料流を過ぎた位置に配置されている請求項1〜5のいずれかに記載の粒子分析装置。
【請求項7】
前記粒子が、子宮頸部から採取された上皮細胞である請求項1〜6のいずれかに記載の粒子分析装置。
【請求項8】
前記粒子を含む試料をシース液によって包むことで試料流を形成するフローセルをさらに備える請求項1〜7のいずれかに記載の粒子分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−95181(P2011−95181A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251377(P2009−251377)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】