説明

粒子状ポリシロキサン化合物およびそれを含む難燃性樹脂組成物

【課題】ハロゲン、リン、窒素等の原子を実質的に含有せず、高い難燃化効果を広い成形条件で安定的に発現するポリシロキサン化合物、及びこれを用いて難燃化された難燃性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】重量平均分子量が300,000以上であり、少なくともSiO4/2単位を85モル%以上含むポリシロキサン化合物であって、反応温度20乃至70℃、酸触媒量0.05乃至1.5重量%の条件により、水系で乳化剤を用いて体積平均粒子径が0.01〜5μmの粒子状に合成されることを特徴とする、粒子状ポリシロキサン化合物、並びにそれを含有する難燃性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン、リン、窒素等の原子を含有せず、かつ高度な難燃性能を発揮する新規な粒子状ポリシロキサン化合物、並びにそれを含有する難燃性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
難燃性樹脂組成物は、火災に対する安全性を確保するため、電気電子分野、建材分野など種々の分野に利用されている。これら樹脂組成物は一般に、塩素系や臭素系などのハロゲン系化合物を難燃剤として用いていたが、近年のヨーロッパを中心とした環境問題に関する関心の高まりから、リン系難燃剤が種々検討されている。しかしながら、リン系難燃剤である燐酸エステル系化合物、赤燐などを用いて難燃化した場合には、押出・成形加工時に臭気が発生したり、機械的特性や熱的特性に悪影響を及ぼしたりする問題があるため、ハロゲン系化合物やリン系化合物に代わる難燃剤が各種検討されている。
【0003】
ハロゲンやリンを含まない難燃剤としては、シリコーン化合物が知られている。例えば、非シリコーンポリマーを、RSiO3/2単位主体のシルセスキオキサン樹脂により難燃化した樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、RSiO1/2単位(M単位)とSiO4/2単位(Q単位)からなり単位当たり0.3〜4単位のM単位の平均比をもつMQシリコーン樹脂とシリコーンおよび第IIA族金属塩により難燃化した熱可塑性プラスチック組成物(例えば、特許文献2参照)が開示されている。また、芳香環を含有する非シリコーン樹脂をRSiO3/2単位(T単位)及びRSiO2/2単位(D単位)を有するシリコーン樹脂により難燃化した樹脂組成物も開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に示されたシリコーン樹脂では、ポリカーボネートに対する大きな難燃性改良効果を示すことが開示されている。さらに、芳香環を有するRSiO2/2単位とSiO4/2単位からなる特定分子量のDQシリコーン(例えば、特許文献4参照)もポリカーボネート等の難燃性を向上させることが開示されている。
【0004】
しかしながら、これらのシリコーン系難燃剤はポリカーボネート等の特定の樹脂に対してしか大きな難燃効果をもたなかったり、成形条件によって難燃性が大きく変動したりする課題を残していた。
【特許文献1】特開昭54−36365号公報
【特許文献2】特公平3−48947号公報
【特許文献3】特開平10−139964号公報
【特許文献4】特開2001−316671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ハロゲン、リン、窒素等の原子を実質的に含有せず、高い難燃化効果を広い成形条件で安定的に発現できる粒子状ポリシロキサン化合物、並びにそれを含有する難燃性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定条件下で粒子状に合成された特定のポリシロキサン化合物を用いると高度に難燃化された難燃性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1は、重量平均分子量が300,000以上であり、少なくともSiO4/2単位を85モル%以上含むポリシロキサン化合物であって、反応温度20乃至70℃、酸触媒量0.05乃至1.5重量%の条件により、水系で乳化剤を用いて体積平均粒子径が0.01〜5μmの粒子状に合成されることを特徴とする、粒子状ポリシロキサン化合物に関する。
【0008】
本発明の第2は、前記のポリシロキサン化合物と樹脂を含有することを特徴とする、難燃性樹脂組成物に関する。
【0009】
好ましい実施態様は、樹脂100重量部に対して、ポリシロキサン化合物0.1〜50重量部を含有することを特徴とする、前記の難燃性樹脂組成物に関する。
【0010】
好ましい実施態様は、前記樹脂が、芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、N−芳香族置換マレイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、および、これらのうちの少なくとも2種からなるポリマーアロイ、からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、前記いずれかに記載の難燃性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
水系で乳化剤を用いて特定条件により合成され、特定の粒子径と重量平均分子量をもち、85モル%以上のSiO4/2単位を有する本願発明の粒子状ポリシロキサン化合物は、広い成形条件下で、樹脂に対し、安定的に高い難燃性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、重量平均分子量が300,000以上であり、少なくともSiO4/2単位を85モル%以上含むポリシロキサン化合物であって、反応温度20乃至70℃、酸触媒量0.05乃至1.5重量%の条件により、水系で乳化剤を用いて体積平均粒子径が0.01〜5μmの粒子状に合成される粒子状ポリシロキサン化合物を用いて高度に難燃化された難燃性樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
本発明のポリシロキサン化合物は、その構成単位として、少なくともSiO4/2単位を85モル%以上含むものであり、その他の構成単位としては、RSiO1/2単位、RSiO2/2単位、およびRSiO3/2単位(前記式中、いずれもRはSiに結合可能な有機基を示し、複数のRがある場合は同一であっても、異なっていてもよい)から選ばれる1以上の単位を合計で15モル%以下含んでいても良いものである。前記ポリシロキサン化合物中のSiO4/2単位は、好ましくは90モル%以上、更には95モル%以上であることがより好ましく、その上限は100モル%である。ポリシロキサン化合物中のSiO4/2単位が85モル%より小さくなると、本発明のポリシロキサン化合物を含有する樹脂組成物から得られる最終成形体の難燃性が十分でない場合がある。なお、ポリシロキサン化合物中に含まれるRSiO1/2単位、RSiO2/2単位、若しくはRSiO3/2単位は、合計で10モル%以下、更には5モル%以下であることが好ましく、その下限は0モル%である。
【0014】
本発明のポリシロキサン化合物は、水系で乳化剤を用いることにより特定条件下で体積平均粒子径0.01〜5μmの粒子状に合成されるものである。
【0015】
本発明では、例えば、酸触媒を含む20〜70℃の水に、乳化剤、SiO4/2単位および必要に応じてRSiO1/2単位、RSiO2/2単位若しくはRSiO3/2単位の原料と水の混合物をラインミキサーやホモジナイザーで乳化した乳化液を連続的に加えることにより、粒子状のポリシロキサン化合物を得ることができる。ポリシロキサン化合物の安定性のために、水系におけるポリシロキサン化合物の合成において、小粒子径のシードポリマーを酸触媒と水の混合液に少量加えてもよい。
【0016】
前記のSiO4/2単位の原料としては、例えば、四塩化ケイ素、テトラアルコキシシラン、水ガラスおよび金属ケイ酸塩からなる群などより選択されうる。テトラアルコキシシランの具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、およびそれらの縮合物などが挙げられる。
【0017】
前記のRSiO2/2単位の原料としては、RSiX(式中、Rは、上記と同じ基を表す。Xは、同一又は異なってもよく、ハロゲン、水酸基、または、水酸基の脱水縮合物を表す。)や、直鎖状、分岐状または環状構造を有するオルガノシロキサンが例示されうる。RSiO2/2単位のRは、炭素数1乃至4のアルキル基及び炭素数6乃至24の芳香族基からなることが好ましく、原料の具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、エチルフェニルジエトキシシランなど、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンなどを挙げることができる。
【0018】
前記のRSiO3/2単位のRは、炭素数1乃至4のアルキル基及び炭素数6乃至24の芳香族基からなることが好ましく、原料としては、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシランなどを挙げることができる。
【0019】
本発明のRSiO1/2単位のRは、炭素数1乃至4のアルキル基及び炭素数6乃至24の芳香族基からなることが好ましく、原料の具体例としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0020】
本発明における乳化剤としては、アニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤が好適に使用されうる。アニオン系乳化剤の具体例としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸カリウムなどが挙げられるが、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましく用いられる。ノニオン系乳化剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやポリオキシエチレンラウリルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
本発明に用いることのできる酸触媒は、例えば、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの中では、シロキサンの乳化安定性に優れる観点から、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。前記酸触媒の量は、本発明のポリシロキサン化合物を構成するSiO4/2単位、並びにRSiO1/2単位、RSiO2/2単位、およびRSiO3/2単位から選ばれる単位を有するシロキサン原料の重量と酸触媒の重量の総和に対して、0.05乃至1.5重量%の範囲で使用することが必要であり、好ましくは0.1乃至0.75重量%の範囲である。前記酸触媒量が0.05重量%未満であると縮合反応が進まずポリシロキサンが得られない場合がある。逆に酸触媒量が1.5重量%を超えると、ポリシロキサン化合物を含有する樹脂組成物から得られる最終成形体の難燃性が十分でない場合がある。
【0022】
本発明のポリシロキサン化合物の合成のための反応温度は、20乃至70℃であることが必要であり、40乃至60℃の範囲であることがより好ましい。反応温度が20℃より低いと反応時間が長くなるため生産性が低下する傾向がある。逆に、反応温度が70℃を超えるとポリシロキサン化合物を含有する樹脂組成物から得られる最終成形体の難燃性が十分でない場合がある。
【0023】
本発明のポリシロキサン化合物の合成において、乳化液に加えることのできるシードポリマーは通常の乳化重合でも得ることができるが、合成法は特に限定されるものではない。シードポリマーは、例えば、アクリル酸ブチルゴムやブタジエン系ゴム等のゴム成分であっても良く、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸ブチル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等の硬質重合体でも問題ない。中でも、本発明のポリシロキサン化合物の粒子径分布を狭くするという観点から、分子量は低く粒子径が小さいシードポリマーを用いることが好ましい。上記シードポリマーの粒子径については、目的とする最終粒子径に応じて適宜設定することができるが、通常は、体積平均粒子径で0.01〜0.1μmの範囲に設定するのが好ましい。
【0024】
本発明のポリシロキサン化合物は粒子状に合成されるものであるが、その体積平均粒子径は、最終成形体の難燃性の観点から、0.01〜5μmの範囲であることが好ましく、さらには0.05〜2μmの範囲であることがより好ましい。体積平均粒子径は、例えば、リード&ノースラップインスツルメント(LEED&NORTHRUP INSTRUMENTS)社製のMICROTRAC UPAを用いることにより測定することができる。なお、上記粒子状については、得られるポリシロキサン化合物が粒子状態である限り特に制限はなく、必ずしも真球状である必要はない。
【0025】
本発明により得られるポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、成形条件に左右されない安定した難燃性を発現する観点から、30万以上から、溶剤に溶けない無限大となるような範囲に設定することが好ましい。なお、溶剤に溶ける場合の本発明のポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
【0026】
本発明により得られるラテックス状のポリシロキサン化合物から、最終的に粉体のポリシロキサン化合物として分離する方法としては特に限定無く、例えば、ラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固し、NaOH水溶液等を用いて中和した後、脱水、水洗し、乾燥する方法などが挙げられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。さらに必要に応じて、ポリシロキサン化合物をメタノール等の有機溶剤で洗浄することもできる。
【0027】
本発明のポリシロキサン化合物は、樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部添加することで所期の目的を達成することができる。ポリシロキサン化合物の添加量が0.1重量部未満では難燃性の改善効果が得られない場合があり、逆に50重量部を超えると、表面性や成形加工性等が悪化する傾向がある。本発明のポリシロキサン化合物の添加量は、好ましくは0.3〜30重量部であり、より好ましくは0.5〜20重量部である。したがって、例えば、10重量部以下という極少量の使用であっても難燃性の効果を発揮することが可能である。なお、本発明に係るポリシロキサン化合物と、他の公知の各種難燃剤とを組み合わせて使用することにより、さらに高度な難燃性を得ることができるが、その際には上記使用量に限定されず、さらに少量の添加量でも難燃性組成物を得ることが可能である。
【0028】
本発明の難燃性樹脂組成物で用いられる樹脂としては特に限定されず、難燃剤を混合することが可能な各種高分子化合物を用いることができる。樹脂は熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよく、また合成樹脂であっても自然界に存在する樹脂であっても良い。
【0029】
前記樹脂の中でも、本発明のポリシロキサン化合物を用いて難燃化させることが容易であることから、樹脂として芳香族系樹脂を用いるのが好ましい。芳香族系樹脂とは、分子内に少なくとも1個以上の芳香環を有する樹脂を示す。芳香族系樹脂の中でも、芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、N−芳香族置換マレイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、および、これらのうちの少なくとも2種からなるポリマーアロイ、からなる群より選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。これらの樹脂を単独で用いてもよく、これら以外の他の各種樹脂とのアロイとして用いてもよい。
【0030】
本発明の難燃性樹脂組成物には、さらに難燃性を高めるために、フッ素系樹脂、本発明で用いられるポリシロキサン化合物以外の珪素含有重合体、等を用いることができる。
【0031】
フッ素系樹脂とは樹脂中にフッ素原子を有する樹脂である。具体的には、ポリモノフルオロエチレン、ポリジフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体などを挙げることができる。また、得られた成形品の難燃性などの物性を損なわない程度で必要に応じ、該フッ素樹脂の製造に用いる単量体と、共重合可能な他の単量体とを共重合してえられた共重合体を用いてもよい。これらのフッ素系樹脂は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いられうる。フッ素系樹脂の重量平均分子量は、100万〜2000万が好ましく、さらに好ましくは200万〜1000万である。これらフッ素系樹脂の製造方法に関しては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合などの通常公知の方法を用いることができる。
【0032】
本発明で用いられるポリシロキサン化合物以外の珪素含有重合体とは、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン、等のジオルガノシロキサン化合物、トリメチルシルヘミオキサン,トリフェニルシルヘミオキサン、等のオルガノシルヘミオキサン化合物、及びこれらを重合して得られる共重合体、ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン、ポリシラン、ポリカルボシラン、ポリシラザン、珪素−ホウ素共重合体、珪素−金属共重合体、等が挙げられる。分子中の一部がエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、エーテル、等により置換された変性珪素重合体も用いることができる。
【0033】
フッ素系樹脂、珪素含有重合体の添加量は、他の特性(耐薬品性,耐熱性など)を損なわない限り制限はないが、樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、さらに好ましくは0.03〜8重量部、特に好ましいのは0.05〜6重量部である。添加量が0.01重量部未満では、難燃性向上効果が小さくなり、10重量部を越えると成形性などが低下する場合がある。
【0034】
また本発明の難燃性樹脂組成物をより高性能にするため、フェノール系安定剤、チオエーテル系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤を1種または2種類以上併せて使用することが好ましい。さらに必要に応じて、通常良く知られた、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等の添加剤を1種または2種類以上併せて使用することができる。ただし、これら添加剤として、ポリシロキサン化合物の分解や反応を促進するものを用いると、得られた組成物の難燃性が低下するため、このようなものを用いるのは好ましくない。
【0035】
更に本発明の難燃性樹脂組成物は、本発明の特性(難燃性等)を損なわない範囲で強化充填剤を組み合わせることにより、強化材料としてもよい。すなわち、強化充填剤を添加することで、更に耐熱性や機械的強度等の向上を図ることができる。このような強化充填剤としては特に限定されず、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維等の繊維状充填剤;ガラスビーズ、ガラスフレーク;タルク、マイカ、カオリン、ワラストナイト、スメクタイト、珪藻土等のケイ酸塩化合物;炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。なかでも、ケイ酸塩化合物及び繊維状充填剤が好ましい。
【0036】
本発明の難燃性樹脂組成物を製造するための方法としては特に限定されない。例えば、上述したような成分を必要に応じて乾燥させた後、単軸、二軸等の押出機のような溶融混練機にて、溶融混練する方法等により製造することができる。また、配合剤が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて二軸押出機に途中添加して製造することもできる。
【0037】
本発明の難燃性樹脂組成物の成形加工法としては特に限定されず、一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形等を利用することができる。
【0038】
本発明の難燃性樹脂組成物は、種々の用途に好適に使用することができる。好ましい用途としては、家電、OA機器部品、自動車部品等の射出成形品、ブロー成形品、押出成形品、発泡成形品等が挙げられる。
【実施例】
【0039】
本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。なお、以下の実施例および比較例における測定および試験はつぎのように行った。
【0040】
[体積平均粒子径]
シードポリマー、ポリシロキサン粒子の体積平均粒子径をラテックスの状態で測定した。測定装置として、リード&ノースラップインスツルメント(LEED&NORTHRUP INSTRUMENTS)社製のMICROTRAC UPAを用いて、光散乱法により体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0041】
[ポリシロキサン化合物の重量平均分子量]
ポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、GPC測定データよりポリスチレン標準試料で作成した検量線を用いて換算した。
【0042】
[難燃性]
1/16インチバーを用い、UL94 V試験に準じて評価した。
【0043】
(実施例1〜4と比較例1〜3)
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水400重量部(種々の希釈水も含む水の総量)およびドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(SDBS)8重量部(固形分)をとり混合した後50℃に昇温し、液温が50℃に達した後、窒素置換を行った。その後、ブチルアクリレート10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部の混合液を加えた。30分後、硫酸第一鉄(FeSO・7HO)0.002重量部、エチレンジアミンテトラアセティックアシッド・2Na塩0.005重量部、ホルムアルデヒドスルフォキシル酸ソーダ0.2重量部を加えてさらに1時間重合させた。その後ブチルアクリレート90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.1重量部の混合液を3時間かけて連続追加した。2時間の後重合を行い、シードラテックス(シード1)を得た。このラテックスの体積平均粒子径は0.04μmであった。
【0044】
撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、単量体追加口、温度計を備えた5口フラスコに、水500重量部(種々の希釈水も含む水の総量)、シードラテックス(シード1)を2重量部(固形分)およびドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)を表1に示す量(固形分)混合した後、表1に示す温度に昇温し、窒素置換を行った。その後、別途純水100重量部、SDBS(固形分)、テトラエトキシシラン(TEOS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、多摩化学工業製エチルシリケート40(テトラエトキシシランの5量体相当)の表1に示す量の混合物をホモジナイザーにより7000rpmで5分間撹拌して得た乳化液を3時間かけて連続添加した。添加終了後、2時間撹拌を続けた後、25℃に冷却して20時間放置し、ラテックス状のポリシロキサン化合物を得た。このポリシロキサン化合物粒子の体積平均粒子径と重量平均分子量を表1に示した。なお、粒子径が明らかに複数の分布を有する広いものについては幅をもたせて表記した。
【0045】
つづいて、ラテックス状ポリシロキサン化合物を純水で希釈し、固形分濃度を約5重量%にした後、25重量%塩化カルシウム水溶液5重量部(固形分)を添加して、凝固スラリーを得た。凝固スラリーを2.5重量%NaOH水溶液によりpH=7に中和した。この凝固スラリーを脱水し、10倍量のメタノールと混合・撹拌した後、再び乾燥させてポリシロキサン化合物の粉体を得た。
【0046】
つぎにポリカーボネート樹脂(出光石油化学株式会社製 タフロンFN1900A)および上記ポリシロキサン化合物の粉体を用いて表1に示す組成で配合した。なお滴下防止剤としてポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業株式会社製 ポリフロンFA−500)0.3重量部を用い、安定剤としてリン系酸化防止剤(旭電化株式会社製 アデカスタブPEP36)0.3重量部とフェノール系安定剤(ICIジャパン社製 トパノールCA)0.3重量部の混合物を用いた。
【0047】
得られた配合物を2軸押出機(日本製鋼社製TEX44SS)で270℃にて溶融混錬し、ペレットを製造した。得られたペレットをシリンダー温度280℃に設定した株式会社ファナック(FANUC)製のFAS100B射出成形機で1/16インチの難燃性評価用試験片を作成した。得られた試験片を用いて前記評価方法に従って評価した。成形体の難燃性の結果を表1に示す。
【0048】
(比較例4)
ポリカーボネート樹脂との配合においてポリシロキサン化合物の粉体を無添加にする以外は実施例1と同様に配合・成形・評価を行い、その結果を表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
水系で乳化剤を用いて本発明に規定する条件で合成され、特定の粒子径と重量平均分子量をもち、85モル%以上のSiO4/2単位を有する本願発明のポリシロキサン化合物は、樹脂に高い難燃性を付与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が300,000以上であり、少なくともSiO4/2単位を85モル%以上含むポリシロキサン化合物であって、反応温度20乃至70℃、酸触媒量0.05乃至1.5重量%の条件により、水系で乳化剤を用いて体積平均粒子径が0.01〜5μmの粒子状に合成されることを特徴とする、粒子状ポリシロキサン化合物。
【請求項2】
請求項1記載のポリシロキサン化合物と樹脂を含有することを特徴とする、難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂100重量部に対して、ポリシロキサン化合物0.1〜50重量部を含有することを特徴とする、請求項2記載の難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂が、芳香族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ビニル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、N−芳香族置換マレイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、および、これらのうちの少なくとも2種からなるポリマーアロイ、からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2または3に記載の難燃性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−119527(P2007−119527A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310048(P2005−310048)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】