説明

粒子状吸水性樹脂の分級方法

不飽和単量体を重合することにより含水ゲル状架橋重合体となし、さらに乾燥、粉砕することにより得られた粒子状吸水性樹脂から、異なる複数の分級工程を組み合わせて微粉を除去する。これにより、生産設備を大型化した場合でも、目的とする粒径範囲の粒子状吸水性樹脂を、低コストで高い生産性を確保しながら効率的に得ることができる粒子状吸水性樹脂の分級方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状吸水性樹脂の分級方法に関するものである。さらに詳しくは、目的とする粒径範囲の粒子状吸水性樹脂を、低コストで高い生産性を確保しながら効率的に得ることができる粒子状吸水性樹脂の分級方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、紙オムツや生理用ナプキン、成人用失禁製品等の衛生用品、土壌用保水剤等の各種用途に幅広く利用され、大量に生産および消費されている。近年、特に紙オムツや生理用ナプキン、成人用失禁製品等の衛生用品用途では、製品の薄型化のために吸水性樹脂の使用量を増やし、パルプ繊維の使用量を減らす傾向にある。よって、吸水性樹脂には、加圧下吸収倍率の大きいものが望まれている。一方、衛生用品1枚当りの吸水性樹脂の使用量が多くなるために、低コストの吸水性樹脂が望まれている。
【0003】
一般に、吸水性樹脂は、不飽和単量体を水溶液重合することにより含水ゲル状重合体を得て、これを乾燥および粉砕して粉末状態として提供される。上記含水ゲル状重合体は、塊状または含水ゲル粒子の凝集体として得られ、通常は、ニーダーやミートチョッパー等の粉砕機を用いて粗粉砕される。そして、この粗粉砕された含水ゲルは、固形分95重量%程度まで乾燥された後、その目的や用途に合う粒子径になるように粉砕機で粉砕される。特に、紙オムツ等の衛生材料を薄型化する場合、その吸収体のパフォーマンスを最大限に高めるためには、毛管吸引力及び液透過性の性能を併せ持つ吸水性樹脂を使用することが必要である。そのためには、粒子状吸水性樹脂の質量平均粒子径を234〜394μmとし、対数標準偏差によって表される粒径分布を特定の範囲に制御することが重要であると知られている(例えば、特開2004−261797号公報参照)。
【0004】
しかしながら、乾燥後の粉砕工程では、目的とする粒径範囲の大きさの粒子以外に、目的とする粒径範囲外の粒子も付随的に発生する。例えば、150μmよりも小さい微粒子や、106μmよりも小さい超微粒子等のいわゆる微粉が粒子状吸水性樹脂に含まれると、粒子状吸水性樹脂の液透過性が低下したり、加圧下吸収倍率が低下する等の性能低下を招くため好ましくない。しかし、上記のような微粒子に近い粒径の範囲に質量平均粒子径をもつような粉砕を行うと、必然的に150μm以下で存在する微粒子の発生量も増加すると考えられる。従って、この比較的多量に発生した微粉を分級により取り除く必要がある。
【0005】
そこで、この粉砕された粒子状吸水性樹脂は、分級機で篩分けされて、例えば、上記のような質量平均粒子径と粒径分布とを有する粒子に調整される。ここで、一般に、分級方法としては、スクリーンと重力とを用いる分級方法(篩分けによる分級方法)、空気流と浮力とを用いる分級方法(風力による分級方法)等がある。例えば、300μm以下の微粒子の分級には、風力による分級方法が適していると言われている(特許文献1)。
【0006】
また、通常、上記分級により除去された微粉は、歩留まり低下を防ぐために、造粒等によって、より大きな粒子に再生されて生産ラインへ回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−156299号公報(1999年6月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、吸水性樹脂の生産設備は、需要増大及び低コスト化のために、大型化されて連続生産されるようになってきた。それに伴い、多量の吸水性樹脂粒子を連続的に分級する必要性が生じてきた。しかしながら、上記従来の分級方法を単純に採用するだけでは、以下のような問題点を有することが判明した。
【0009】
上記の風力による分級方法においては、多量の粒子を分級するためには非常に大きな装置が必要になってしまうため、コストが高くなるという問題点を有している。一方、篩分けによる分級方法は、風力による分級方法と比較して、装置はコンパクトになるが、小さな粒子の分級には比較的効率が悪くなる。よって、装置の大型化には、やはり問題点を有する。
【0010】
例えば、少量生産において、150μm未満の微粉を円形篩分け機で分級する場合には、目開き150μmの篩網で時間をかけて篩うか、または、目開き150μmよりも若干大きい目開きの篩網を用いて短時間に効率よく篩う。しかし、大量生産時において、円形篩網を有する篩分け装置を大型化すると、網面積に対する外周固定点が減少することによる強度低下、処理量に対する篩網の強度(線径)不足、篩網の目詰まり防止のためのタッピングボールの影響を受けやすくなること等のため、短時間で篩網破れが発生する。その結果、篩網由来の金属異物が生産ライン中に混入してしまうという問題点を有する。
【0011】
そこで、篩網上での粒子の滞留時間を短くすれば、篩網上の粒子重量が減少し、篩網破れの問題は減少する。しかし、この方法では、篩網上の粒子中に、微粉が篩われきれずに多く残留してしまい、製品としての粒子状吸水性樹脂の性能が低下してしまうという問題点を有する。
【0012】
上記問題点を解決するためには、例えば、目開き180μmの篩網を用いる分級を行うことができる。これにより、線径が太くなるため篩網の強度が向上し、かつ、分級効率が向上する。その結果、粒子の篩網上での滞留時間を短くすることができる。しかし、この方法では、篩網を通過した微粉中に、本来分離する必要のない150μm以上の粒子が比較的多量に含まれてしまう。その結果、微粉の回収率が増加して、コストが高くなるという問題点を有する。さらに、微粉の回収方法によっては、製品としての粒子状吸水性樹脂の性能が大幅に低下してしまうという問題点を有する。
【0013】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、生産設備を大型化した場合でも、目的とする粒径範囲の粒子状吸水性樹脂を、低コストで高い生産性を確保しながら効率的に得ることができる粒子状吸水性樹脂の分級方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記課題を解決するために、不飽和単量体を重合することにより含水ゲル状架橋重合体となし、さらに乾燥、粉砕することにより得られた粒子状吸水性樹脂から、異なる複数の分級工程を組み合わせて微粉を除去することを特徴としている。
【0015】
上記の発明によれば、異なる複数の分級工程を組み合わせて微粉を除去するので、1つの分級工程で分級された粒子状吸水性樹脂を、他の分級工程で、さらに分級することになり、分級工程を経るにつれて分級する粒子状吸水性樹脂の量が徐々に少なくなる。これにより、生産設備を大型化した場合でも、分級工程を経るにつれて生産設備を徐々に小型化することができる。その結果、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、異なる複数の分級工程全体として、コストを低くすることができる。さらに、生産設備を大型化した場合には、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、分級工程全体として、高い生産性を確保することができる。
【0016】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記分級工程の組合せが、第1篩網と重力とを用いる第1分級工程と、第2篩網と気流とを用いる第2分級工程とを含み、上記第1分級工程で分級された上記第1篩網を通過した粒子状吸水性樹脂を、上記第2分級工程で、さらに分級することにより微粉を除去することが好ましい。
【0017】
上記の発明によれば、上記第1分級工程で分級された上記第1篩網を通過した粒子状吸水性樹脂を、上記第2分級工程で、さらに分級することにより微粉を除去するので、上記第2分級工程では、上記第1分級工程よりも、分級する粒子状吸水性樹脂の量が少なくなる。これにより、生産設備を大型化した場合でも、上記第2分級工程では、分級する粒子状吸水性樹脂の量が少なくて済む。その結果、上記第2分級工程では、生産設備を大型化する必要がなく、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1分級工程および上記第2分級工程全体として、コストを低くすることができる。さらに、上記第1分級工程では、生産設備を大型化しているので、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、分級工程全体として、高い生産性を確保することができる。
【0018】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、1ライン当たり500kg/hr以上の生産量で連続生産する粒子状吸水性樹脂の製造ラインに組み込まれることが好ましい。
【0019】
生産設備が大型になるほど、従来の分級方法では問題が顕著になる。よって、生産設備が大型化した場合には、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、高い効果を奏する。
【0020】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第2分級工程には、第2篩網を備えた風力分級機を用いることが好ましい。
【0021】
これにより、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、篩網と気流とを用いる分級を、確実に行うことができる。
【0022】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1篩網の目開きが、150μm以上、300μm以下の範囲内であることが好ましい。また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第2篩網の目開きが、106μm以上、180μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0023】
これにより、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、目的とする粒径範囲の粒子状吸水性樹脂を、効率的に得ることができる。
【0024】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1篩網の目開きと、上記第2篩網の目開きとの差が、30μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0025】
これにより、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、狭い粒径分布の粒子状吸水性樹脂を得ることができる。
【0026】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂から、粒径180μm未満の粒子を分級し、その後の上記第2分級工程では、上記粒径180μm未満の粒子から、粒径106μm以上の粒子を分級することが好ましい。
【0027】
これにより、上記第1分級工程では、目開き180μmの第1篩網を用いることができる。その結果、第1篩網は目詰まりを生じることがなく、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、分級の効率がよくなる。さらに、その後の上記第2分級工程では、目開き106μmの第2篩網を用いることができる。その結果、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、106μmよりも小さい超微粒子を分級することができる。よって、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、超微粒子の回収率が減少し、高い生産性を確保することができる。
【0028】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂から、粒径180μm未満の粒子を分級し、その後の上記第2分級工程では、上記粒径180μm未満の粒子から、粒径150μm以上の粒子を分級することが好ましい。
【0029】
これにより、上記第2分級工程では、目開き150μmの第2篩網を用いることができる。その結果、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、150μmよりも小さい微粒子を分級することができる。よって、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、微粒子の回収率が減少し、高い生産性を確保することができる。
【0030】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂が篩網を通過する前の領域と、粒子状吸水性樹脂が篩網を通過した後の領域との間に、10mmHO以上の差圧を設けて微粉を除去することが好ましい。
【0031】
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、10mmHO以上の差圧により、確実に微粉を除去することができる。
【0032】
本発明の他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分分かるであろう。また、本発明の利点は、添付図面を参照した次の説明によって明白になるであろう。
【発明の効果】
【0033】
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、以上のように、不飽和単量体を重合することにより含水ゲル状架橋重合体となし、さらに乾燥、粉砕することにより得られた粒子状吸水性樹脂から、異なる複数の分級工程を組み合わせて微粉を除去する方法である。
【0034】
それゆえ、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、生産設備を大型化した場合でも、目的とする粒径範囲の粒子状吸水性樹脂を、低コストで高い生産性を確保しながら効率的に得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施し得るものである。なお、本明細書において、「質量」と「重量」とは同義であるものとする。また、「粒径」と「粒子径」とは同義であるものとする。
【0036】
本発明に係る粒子状吸水性樹脂の分級方法は、不飽和単量体を重合することにより含水ゲル状架橋重合体となし、さらに乾燥、粉砕することにより得られた粒子状吸水性樹脂から、異なる複数の分級工程を組み合わせて微粉を除去する。また、本発明に係る粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記分級工程の組合せが、第1篩網と重力とを用いる第1分級工程と、第2篩網と気流とを用いる第2分級工程とを含み、上記第1分級工程で分級された上記第1篩網を通過した粒子状吸水性樹脂を、上記第2分級工程で、さらに分級することにより微粉を除去することが好ましい。なお、上記第1分級工程と上記第2分級工程とは連続して行うのが好ましいが、上記第1分級工程により分級された粒子状吸水性樹脂の粒径が変化しなければ、上記第1分級工程と上記第2分級工程との間に、粒子状吸水性樹脂の処理工程が存在しても、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
(I)粒子状吸水性樹脂
<粒子状>
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られた粒子状吸水性樹脂は、粒子状を有する吸水性樹脂である。ここで、粒子状とは、球形状、楕円体状、ウインナ−ソーセージ状、または、球形状若しくは楕円体状の粒子が凝集した造粒物の形状等が挙げられる。さらに、単量体水溶液を重合して得られる含水ゲル状重合体の破砕物に由来する形状である不定形破砕状やその造粒物の形状が挙げられる。好ましくは球形状または楕円体状であり、より好ましくは球形状粒子の造粒物の形状、楕円体状粒子の造粒物の形状、または、単量体水溶液を重合して得られる含水ゲル状重合体の破砕物に由来する形状である不定形破砕状やその造粒物の形状であり、特に好ましくは上記不定形破砕状やその造粒物の形状である。
【0038】
<吸水性樹脂>
本発明では、粒子状吸水性樹脂として、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を架橋重合した吸水性樹脂(架橋重合した構造である吸水性樹脂であれば良く、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を重合後に、架橋剤ないし重合時の自己架橋により架橋反応して得られる吸水性樹脂でもよい)を粒子状にしたものが用いられる。
【0039】
吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性、水不溶性の架橋重合体のことである。ここで、水膨潤性の吸水性樹脂とは、イオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは50倍から1000倍という多量の水を吸収するものを指す。また、水不溶性の吸水性樹脂とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは50重量%以下(下限0%)、より好ましくは25重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下、特に好ましくは15重量%以下、最も好ましくは10重量%以下のものを指す。
【0040】
また、上記架橋重合体とは、良好な吸収特性を得るために、不飽和単量体を重合することによって得られる重合体の内部に架橋構造(以下、「内部架橋構造」という)を有する重合体をいう。さらに、上記吸水性樹脂は、該吸水性樹脂表面近傍に架橋構造を形成する表面架橋処理が施されていてもよく、該表面架橋処理が施されていなくてもよい。このうち、優れた吸収特性を得るためには、表面架橋処理が施されていることが好ましい。
【0041】
上記の架橋重合体からなる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体またはその中和物、カルボキシメチルセルロース架橋体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、カチオン性モノマーの架橋体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸とアクリル酸の架橋体、架橋イソブチレン−(無水)マレイン酸共重合体等の1種または2種以上を挙げることができる。その中でも、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする不飽和単量体を重合および架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体を用いることが好ましい。
【0042】
上記の架橋重合体からなる吸水性樹脂は、不飽和単量体を重合および架橋することによって得られ、必要に応じて表面架橋処理が施される。以下、吸水性樹脂の製造に用いられる不飽和単量体、架橋性単量体(内部架橋剤)、重合開始剤、吸水性樹脂の製造方法について説明する。
【0043】
<不飽和単量体>
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法に用いられる不飽和単量体としては、所望する架橋重合体を得ることができる不飽和単量体を用いればよい。
【0044】
例えば上記架橋重合体が、アクリル酸部分中和物重合体である場合には、不飽和単量体として、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分として使用すればよく、該アクリル酸および/またはその塩と共に、アクリル酸および/またはその塩以外の他の不飽和単量体を共重合成分として用いてもよい。これにより、最終的に得られる吸水性樹脂に対し、吸水特性以外に、抗菌や消臭等の別の特性を付与することができると共に、吸水性樹脂をより一層安価に得ることができる。
【0045】
上記他の不飽和単量体としては、例えば、β−アクリロイルオキシプロピオン酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸等の酸基含有単体及びこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アルキルアミン塩;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水可溶性または水不溶性の不飽和単量体等を挙げることができる。これら単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を適宜混合して用いてもよい。本発明の不飽和単量体としては、上記不飽和単量体を共重合成分とするものも含まれる。
【0046】
なお、上記不飽和単量体及び他の不飽和単量体として、酸基を含有する不飽和単量体を用いる場合には、該不飽和単量体の塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、好ましくはアルカリ金属塩を用いればよい。その中で、得られる吸水性樹脂の性能、不飽和単量体の塩の工業的な入手の容易さ、安全性等の点から、ナトリウム塩やカリウム塩を少なくとも必須に用いることが好ましい。
【0047】
上記アクリル酸(塩)以外の他の不飽和単量体を併用する場合には、吸水性樹脂を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、好ましくは0〜30モル%、より好ましくは0〜10モル%、さらに好ましくは0〜5モル%の割合で用いる。言い換えれば、吸水性樹脂を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、主成分としてのアクリル酸及びその塩のモル数は、好ましくは70〜100モル%であり、より好ましくは90〜100モル%であり、さらに好ましくは95〜100モル%であればよい。
【0048】
また、アクリル酸等の酸基含有不飽和単量体は、物性面及びpH面から中性前後が好ましく、酸基が中和されることが好ましい。酸基の中和率(全酸基中の中和された酸基のモル%)は、通常20〜100モル%、好ましくは30〜95モル%、より好ましく40〜80モル%である。酸基の中和は単量体で行ってもよいし、重合体で行ってもよいし、それらを併用してもよい。
【0049】
<架橋性単量体(内部架橋剤)>
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法に用いられる粒子状吸水性樹脂は、内部架橋構造を有する架橋重合体である。ここで、吸水性樹脂が水不溶性及び水膨潤性を有していれば、内部架橋構造を有していると考えることができる。そのため、吸水性樹脂の内部架橋構造は、内部架橋剤である架橋性単量体を用いずに、不飽和単量体の自己架橋によって得られるものであってもよい。ただし、好ましくは上記の不飽和単量体と架橋性単量体とを共重合または反応させて得られるものがよい。ここで、内部架橋剤である架橋性単量体とは、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有するものである。
【0050】
上記内部架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0051】
上記内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、上記内部架橋剤は、反応系に一括して添加してもよく、分割して添加してもよい。1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる粒子状吸水性樹脂の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する架橋性単量体を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0052】
上記内部架橋剤の使用量は、吸水性樹脂の良好な物性を得る観点から、上記の吸水性樹脂を得るために用いる不飽和単量体の総モル数(架橋剤は除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内である。上記内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%を超える場合には、吸水性樹脂の十分な吸収特性が得られない可能性があるため、好ましくない。
【0053】
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記不飽和単量体の重合前、重合途中あるいは重合後、または、中和後に反応系に添加すればよい。
【0054】
<重合開始剤>
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法に用いられる粒子状吸水性樹脂を得るために上記の不飽和単量体を重合する際には、重合開始剤を使用するとよい。使用される重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。
【0055】
上記重合開始剤の使用量は、物性面から、吸水性樹脂を得るために用いる全ての不飽和単量体の総モル数に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.01〜0.1モル%である。上記重合開始剤が0.001モル%未満の場合には、未反応の残存不飽和単量体が多くなり、好ましくない。一方、重合開始剤が2モル%を超える場合には、重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0056】
<重合方法>
本発明に用いられる粒子状吸水性樹脂を得るために上記の各単量体(不飽和単量体、他の不飽和単量体、架橋性単量体)を重合するに際しては、水溶液重合や逆相懸濁重合、バルク重合、沈殿重合等を行うことが可能である。中でも、吸水性樹脂の性能や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0057】
上記の各単量体を水溶液として重合する場合の該水溶液(以下、「単量体水溶液」という)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体によって決まり、特に限定されるものではない。ただし、通常10〜80重量%、好ましくは10〜70重量%の範囲内、さらに好ましくは20〜60重量%の範囲内である。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用される溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0058】
上記の重合を開始させる際には、上記重合開始剤を使用して重合を開始させることができる。また、上記重合開始剤の他にも、紫外線や電子線、γ線等の活性エネルギー線を単独あるいは重合開始剤と共に用いてもよい。上記重合反応における反応温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、重合中の下限〜上限温度で、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。反応温度が上記の範囲をはずれると、得られる吸水性樹脂の残存単量体の増加や、過度の自己架橋反応の進行により、吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0059】
なお、逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に、粒子状に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号等の米国特許に記載されている。
【0060】
一方、水溶液重合は、分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号等の米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号等の欧州特許に記載されている。これら米国特許や欧州特許に例示の単量体や重合開始剤等も本発明に適用できる。
【0061】
<乾燥処理>
上記重合方法によって単量体を重合して得られる重合体は、通常、含水ゲル状架橋重合体であり、必要に応じて乾燥処理や粉砕が行われる。
【0062】
また、乾燥処理方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、目的の含水率となるように種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。乾燥処理を熱風乾燥にて行う場合には、通常60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃の温度範囲(熱風温度)で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率及び乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるよう選択される。例えば、乾燥時間は、1分〜5時間の範囲内で適宜選択すればよい。
【0063】
本発明に用いることのできる粒子状吸水性樹脂の含水率(粒子状吸水性樹脂中に含まれる水分量で規定/180℃で3時間の乾燥減量を測定し、該減量を、乾燥前の吸水性樹脂に対する比率で表わしたもの)は、好ましくは1〜15重量%、さらに好ましくは1〜9重量%である。含水率が高くなってしまうと、流動性が悪くなり製造に支障をきたすばかりか、吸水性樹脂が粉砕できなくなり、特定の粒径分布に制御できなくなってしまうおそれがある。
【0064】
なお、上記逆相懸濁重合による重合方法を用いた場合には、通常、重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体を、例えばヘキサン等炭化水素の有機溶媒中に分散させた状態で共沸脱水し、重合体の含水率を40重量%以下(下限0重量%、好ましくは5重量%)、好ましくは30重量%以下とした後に、デカンテーションあるいは蒸発により有機溶媒と分離し、必要に応じて乾燥処理することができる。
【0065】
<粉砕>
上記の方法で得られた粒子状や粉末状や粒子状乾燥物凝集体は、粉砕機によって粉砕される。粉砕されることにより粒子状吸水性樹脂が得られる。粉砕機は特に限定されないが、例えばロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、フラッシュミル等が用いられる。この中でも、粒径分布を制御するためには、ロールミルが好ましい。粒径分布を制御するために、連続して2回以上粉砕してもよく、3回以上粉砕することが好ましい。2回以上粉砕する場合には、それぞれの粉砕機は同じであっても、異なっていてもよい。また、違う種類の粉砕機を組み合わせて用いることも可能である。
【0066】
<粒子状吸水性樹脂に添加されるその他の物質>
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法に用いられる粒子状吸水性樹脂は、重合中または重合後に、表面架橋剤、通液性向上剤、滑剤等が添加混合されうる。重合後に添加混合する場合には、乾燥前、乾燥後または粉砕後に添加混合することができる。また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法に用いられる粒子状吸水性樹脂は、吸水性樹脂の特性を阻害しない限り、他の物質を添加してもよい。他の物質を添加する方法としては、特に限定されるものではない。
【0067】
(II)第1篩網と重力とを用いる第1分級工程
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、第1篩網と重力とを用いる第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂から、粒径180μm未満の粒子を分級することが好ましい。また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1篩網の目開きが、好ましくは150μm以上300μm以下の範囲である。ただし、ここでいう篩網の目開きは、便宜上、一般的によく用いられているJIS試験(JIS Z 8801)用篩網の規格表に記載されている公称目開きの数値のことを指している。これらの範囲から外れると目的の粒径分布が得られないおそれがある。また、目的の粒径が、分級効率90重量%以上で得られることが好ましい。
【0068】
ここで、第1篩網とは、第1分級工程で用いる篩網のことをいう。また、篩網と重力とを用いる分級としては、例えば、振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モータ式、電磁式、円型振動式等)による分級、面内運動篩(水平運動式、水平円−直線運動式、3次元円運動式等)による分級等が挙げられる。
【0069】
分級とは、広義には、粒径、形状、化学成分、色、密度、放射性、磁性、静電特性等によって物質を分類する操作をいう。また、狭義には、同じ密度を有する粒子を、粒径によって、2つまたはそれ以上の粒子群に分ける操作をいう。
【0070】
第1篩網と重力とを用いる第1分級工程は、篩分け装置を用いて行うことができる。本発明に用いられる篩分け装置は、篩網を有するものであれば特に限定されない。例えば、バイブレーティングスクリーンやシフタに分類されるものが挙げられる。バイブレーティングスクリーンには、傾斜形、ローヘッド(Low−head)形、ハムマー(Hum−mer)、レーブン(Rhewum)、タイロック(Ty−Rock)、ジャイレックス(Gyrex)、および楕円振動(Eliptex)等がある。また、シフタには、レシプロ(Reciprocating)形、Exolon−grader、Traversator−sieb、Sauer−meyer、ジャイレトリーシフタ(Gyratory)、ジャイロシフタ、およびローテックススクリーン(Ro−tex)等がある。これらは、(1)網面の運動形状:円、楕円、直線、円弧、擬似楕円、スパイラル、(2)振動方式:自由振動、強制振動、(3)駆動方法:偏心軸、不平衡重錘、電磁石、インパクト、(4)網面の傾斜:水平式、傾斜式、(5)設置方法:床置式、吊り下げ式、等によって細分類されている。その中でも、アルガイヤ社(Allgaier Co.)のタンブラシフタ(Tumbler−Screening machines)のように、ラジアル傾斜(中央から周辺に材料を分散させる篩網の傾斜)やタンジェンシャル傾斜(篩網上の排出スピードをコントロールする篩網の傾斜)の組み合わせにより、篩網面を螺旋状に動かす篩分け装置は、細かい粒子の分級に非常に有効である。
【0071】
篩分け装置は、加熱した状態および/または保温した状態で用いること、30℃〜100℃の温度範囲で用いること、あるいは粒子状吸水性樹脂の温度に対し20℃よりも低くない温度で用いることが好ましい。つまり、篩分け装置の粒子状吸水性樹脂と接触する部分、特に篩網面の側壁の温度を粒子状吸水性樹脂の凝集が起きない程度に調節することにより、粒子状吸水性樹脂中の凝集を抑えられる。これにより、篩網面の目詰まりを有効に防止することができ、分級効率および分級能力の低下を防止できる。また、篩網面を通過した粒子状吸水性樹脂が、篩分け装置の内面側壁に付着し、さらには大きな凝集物を形成し、篩分け装置の振動によって該凝集物が剥がれ落ち、製品に混入するということを防止できる。ここで、篩網ではなく、篩網を固定している型枠の側壁の温度を加熱および/または保温等することが好ましく、分級の最終篩網を固定している型枠の側壁の温度を加熱および/または保温等することが特に好ましい。
【0072】
ここで、「加熱」とは、積極的に熱を与えることを指す。したがって、「加熱した状態」には、(1)初期状態において篩分け装置に熱を与えて一定温度まで昇温し、その後は熱を与えない場合、(2)初期状態だけでなく恒常的に篩分け装置に熱を与える場合等が含まれる。一方、本発明における「保温」とは、熱は与えないで熱を逃しにくくすること、すなわち温度を下がりにくくすることを指す。したがって、「保温した状態」とは、熱を与えることなく、断熱材を篩分け装置に巻き付ける等して熱を逃げにくくするような場合を指す。本発明においては、「加熱した状態」かつ「保温した状態」としてもよく、熱を積極的に与えながら、断熱材を併用する等してもよい。
【0073】
篩分け装置は、好ましくは30〜100℃程度、より好ましくは40〜90℃の温度範囲で用いる。温度が30℃未満では、本発明の効果が得られない。
【0074】
篩分け装置は、粒子状吸水性樹脂の温度に対し20℃よりも低くない温度で用いることが好ましい。より好ましくは10℃よりも低くない温度である。工業的規模で粒子状吸水性樹脂を取り扱う際に、流動性を確保するため、粒子状吸水性樹脂を室温以上の温度、好ましくは40〜100℃程度、より好ましくは50〜80℃程度に加温する場合がある。粒子状吸水性樹脂の温度に対し篩分け装置の温度が20℃よりも低い場合には、加温された状態にある粒子状吸水性樹脂が篩分け装置で冷却されるため、篩網面の目詰まりが生じることがある。また、篩分け装置の内面側壁に付着し、さらには大きな凝集物を形成し、篩分け装置の振動によって該凝集物が剥がれ落ち、製品に混入するということが生じることがある。
【0075】
なお、重力と篩網とを用いる分級において、粒子状吸水性樹脂が篩網を通過する前の領域と、粒子状吸水性樹脂が篩網を通過した後の領域との間に、10mmHO以上の差圧を設けて微粉を除去してもよい。
【0076】
(III)第2篩網と気流とを用いる第2分級工程
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、第2篩網と気流とを用いる第2分級工程では、上記粒径180μm未満の粒子から、粒径106μm以上の粒子を分級することが好ましく、粒径150μm以上の粒子を分級することがより好ましい。
【0077】
また、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第2篩網の目開きが、好ましくは106μm以上、180μm以下の範囲である。これらの範囲から外れると目的の粒径分布が得られないおそれがある。ただし、ここでいう篩網の目開きは、便宜上、一般的によく用いられているJIS試験(JIS Z 8801)用篩網の規格表に記載されている公称目開きの数値のことを指している。そのため、任意に線径や織り方等を変更して、実質の目開きが多少前後したとしても差し支えない。すなわち、上記第1篩網の目開きと、上記第2篩網の目開きとの差を調整することが重要であり、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、上記第1篩網の目開きと、上記第2篩網の目開きとの差が、30μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましい。
【0078】
ここで、第2篩網とは、第2分級工程で用いる篩網のことをいう。気流は、粒子状吸水性樹脂を、第2篩網に向かって移動させる。そして、上記気流は、第2篩網を通過する粒子状吸水性樹脂と、第2篩網を通過しない粒子状吸水性樹脂とに分級する。なお、気流が、粒子状吸水性樹脂を第2篩網に向かって移動させることができれば、気流の方向は、特に限定されない。また、気流としては、空気流、窒素ガス流またはこれらの混合ガス流等が挙げられ、露点以下で用いられることが好ましい。気流量としては、粉体を移動させることができれば特に限定されず、重力方向もしくは水平方向といった粉体の移動方向、または、粉体が有する流動特性に応じて、任意に気流量(いわゆる風速)を調整することが好ましい。
【0079】
第2篩網と気流とを用いる第2分級工程は、風力分級機を用いて行うことが好ましいが、上記タンブラシフタといった重力と篩網とを利用する揺動式篩機を用いることもできる。この場合には、篩網上部から下部に向かう気流の流れを形成し、篩網下部には回転するノズルアームを設置し、該ノズルアームからエアー(いわゆる逆洗エアー)を噴射することで、篩網の目を洗浄する。上記エアーは、断続的または連続的に噴射してもよい。さらに、篩網(スクリーン)を洗浄するために、回転ブラシ、スクレパーおよび超音波のうちの1種以上を用いることも可能である。本発明に用いられる風力分級機は、篩網を有するものであれば特に限定されない。例えば、ハイボルター等が挙げられる。また、このような風力分級機の篩網面に超音波振動を与えることにより、さらに分級効率を高めることができる。上記風力分級機は、ケーシングの温度が、好ましくは30℃以上、100℃以下の範囲内である。特に、第2篩網と気流とを用いる第2分級工程で使用される風力分級機には、篩網の洗浄機構としてエアー(いわゆる逆洗エアー)を利用した洗浄機構を有することが好ましい。これにより、篩にかけられている粒子状吸水性樹脂が、仮に吸湿等により多少粘着性を有した状態で分級されたとしても、効率よく篩網の目を洗浄することができる。
【0080】
第2篩網と気流とを用いる第2分級工程に用いることができる風力分級機について、ハイボルターを例にして、以下に説明する。
【0081】
上記風力分級機では、粉体(粒子状吸水性樹脂)が混入した空気流(気流)が、スクリーン(篩網)、ケーシング、サイクロン等の微粉体分離収集装置を通過する。その際、空気(気体)だけが、微粉体分離収集装置よりも下流側に設けた吸引ブロワーの排気口から排出される。つまり、粉体(粒子状吸水性樹脂)中の微粉体(粒子状吸水性樹脂)のみを混入した空気流(気流)が、スクリーン(篩網)を通過し、ケーシングに到達する。その後、ケーシングを通過した微粉体(粒子状吸水性樹脂)は、微粉体分離収集装置で収集される。そして、空気(気体)のみが微粉体分離収集装置を通過し、吸引ブロワーに到達する。
【0082】
ここで、ケーシング内には、ケーシング内壁面用エアブラシを設け、ケーシングに回転可能に支承された回転軸に半径方向に延びる中空管を固定し、この中空管のケーシング内面に対向する面に微細幅のスリットを設けている。そして、上記回転軸と共に中空管を回転させながら、上記スリットから空気流(気流)を吹き出させる構成になっている。
【0083】
具体的には、粉体(粒子状吸水性樹脂)中の微粉体(粒子状吸水性樹脂)のみを混入した空気流(気流)が、スクリーン(篩網)を通過し、ケーシングに到達する。つまり、粉体(粒子状吸水性樹脂)中の微粉体(粒子状吸水性樹脂)以外の粉体は、スクリーン(篩網)により分級される。その後、空気流(気流)に混入して流れる微粉体(粒子状吸水性樹脂)がケーシングに到達すると、衝突するケーシング内の面は、ケーシング内壁面と上記中空管である。しかし、中空管の表面積は極めて小さく、しかも曲面であって、この曲面に沿って空気(気体)が流れる。よって、上記中空管の表面に微粉体(粒子状吸水性樹脂)が衝突しても、付着および滞留して成長することはない。また、ケーシング内面には微粉体(粒子状吸水性樹脂)が付着する場合がある。その際には、ケーシング内に回転するエアブラシを設置することで、付着した微粉体(粒子状吸水性樹脂)はケーシング内壁面から速やかに吹き飛ばされ、ケーシング内の空気流(気流)によって吐出口から排出される。吐出口から排出された微粉体(粒子状吸水性樹脂)と空気(気体)との混合体は、その下流に位置するサイクロン等の微粉体分離収集装置に流入し、ここで微粉体(粒子状吸水性樹脂)が分離収集される。微粉体(粒子状吸水性樹脂)が分離された空気流(気流)は、微粉体分離収集装置の下流に配置された集塵器、吸引ブロワー、消音器を経て大気に放出される。スクリーンの背後には回転するノズルアームからなるエアブラシが設置され、回転するノズルアームからスクリーンにエアーを噴射し、エアーによってスクリーン(篩網)の目詰まりを掃除する。上記エアーは、断続的または連続的に噴射してもよい。さらに、スクリーン(篩網)を洗浄するために、回転ブラシ、スクレパーおよび超音波のうちの1種以上を用いることも可能である。
【0084】
したがって、ケーシング内壁面に微粉体(粒子状吸水性樹脂)が付着および滞留し、それが成長して所定粒径以上の粉体(粒子状吸水性樹脂)が空気流(気流)に混入するという現象は生じない。また、スクリーン(篩網)のエアブラシを構成する中空管と、ケーシング内壁面用エアブラシを構成する中空管とを同一中空管によって構成しても、特に問題はない。また、スクリーン(篩網)に吹き付ける空気流(気流)の流速と、ケーシング内壁面に吹き付ける空気流(気流)の流速とを同じにする必要はない。むしろ、スクリーン(篩網)のメッシュが微細であるほど、ケーシング内壁面に吹き付ける空気流(気流)の流速よりも、スクリーン(篩網)に吹き付ける空気流(気流)の流速を大きくすることが望ましい。また、粉体供給が自然落下の場合には、ケーシング内壁面に吹き付ける空気流(減圧)のみを使用することが望ましい。また、ケーシング内壁面に対するエアブラシによる掃除の頻度よりも、スクリーン(篩網)に対するエアブラシによる掃除の頻度を高めることが望ましい。
【0085】
また、本発明の篩分け装置は、上記分級により除去された粒子から、造粒等によって、より大きな粒子または粒子状凝集物を再生し、粒子状吸水性樹脂として用いることを可能とする造粒工程を含んでもよい。造粒工程では、いわゆる微粉を再生する公知の技術が使用可能である。例えば、温水と吸水性樹脂の微粉を混合し乾燥する方法(米国特許6228930号)、吸水性樹脂の微粉を単量体水溶液と混合し重合する方法(米国特許5264495号)、吸水性樹脂の微粉に水を加え特定の面圧以上で造粒する方法(欧州特許844270号)、吸水性樹脂の微粉を十分に湿潤させ非晶質のゲルを形成し乾燥および粉砕する方法(米国特許4950692号)、吸水性樹脂の微粉と重合ゲルを混合する方法(米国特許5478879号)等を用いることが可能である。好ましくは、温水と吸水性樹脂の微粉を混合し乾燥する方法が用いられる。また、造粒工程で得られた粒子状吸水性樹脂は、そのまま本発明で用いることのできる粒子状吸水性樹脂粒子としてもよいし、上記粉砕および/または分級工程に戻してもよい。目的とする粒子状吸水性樹脂粒子を得るためには、粉砕および/または分級工程に戻すことが好ましい。このように再生された粒子状吸水性樹脂は、実質的に多孔質構造を有する。造粒工程によって再生し回収される粒子状吸水性樹脂の割合は、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%の範囲である。同一の製造工程内に限定して再生するならば、前記割合は、上記分級により除去される粒子の量に依存する。回収率の増加は、生産性低下、コスト高の要因となり好ましくない。また、造粒工程によって再生された粒子状吸水性樹脂は、再生されていないものと比べて表面積が大きいため、毛管吸引力の性能的には有利となろう。
【0086】
(IV)本発明に係る粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られた粒子状吸水性樹脂等
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、好ましくは1ライン当たり500kg/hr以上、より好ましくは1ライン当たり1000kg/hr以上、特に好ましくは1ライン当たり1500kg/hr以上の生産量で連続生産する製造ラインを用いて製造した粒子状吸水性樹脂を分級する。つまり、生産設備が大型になるほど、従来の分級方法では問題が顕著になるので、本発明の効果が高くなる。
【0087】
本発明に係る粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られた粒子状吸水性樹脂は、以下の特徴および特性を有している。
【0088】
<発塵量>
本発明に係る粒子状吸水性樹脂の分級方法では、吸水性樹脂の性能に悪影響を及ぼす150μm未満の微粉を効率よく分級することができるのに加え、篩網と気流とを用いた分級方法を実施することで、篩網を通過せずに得られる粒子状吸水性樹脂中に45μm未満の微粒子、特に20μm未満の超微粒子、さらには10μm未満の超微粒子といった、篩網を用いた粒径分布測定方法では測定できないような大きさの発塵性の微粒子が、気流を用いない分級方法で得られるものに比べて有意義に減少することも期待できる。
【0089】
<粒子状吸水性樹脂の質量平均粒子径(D50)、粒径分布(σζ)>
質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報等にあるように、一定目開きの標準篩で、粒子全体の50重量%に対応する標準篩の粒径のことである。
【0090】
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られる粒子状吸水性樹脂は、必要に応じて、無機粉末や親水性有機溶媒等によって造粒されてなる。そのため、粒子状吸水性樹脂は、粒子状吸水性樹脂の質量に対して、好ましくは150μm以上850μm未満の粒子が90重量%以上(上限100%)含まれており、より好ましくは150μm以上850μm未満の粒子が95重量%以上含まれており、さらに好ましくは150μm以上850μm未満の粒子が98重量%以上含まれている。
【0091】
粒子状吸水性樹脂の粒径は、目的やその必要に応じて不溶性微粒子や親水性溶媒、好ましくは水を添加混合してさらに造粒して調整してもよい。粒径の調整は、逆相縣濁重合のように粒子状で分散重合及び分散乾燥させて調整してもよいが、水溶液重合の場合等、通常は乾燥後に粉砕及び分級されて、必要により微粉を造粒等によりリサイクルさせることで、特定の粒径に調整される。
【0092】
(V)吸収体および/または吸収性物品
本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られる粒子状吸水性樹脂は、吸水を目的とした用途に用いられ、吸収体や吸収性物品として広く使用されるが、特に、尿や血液等の体液を吸収するための衛生材料として好適に用いられる。
【0093】
具体的には、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られる粒子状吸水性樹脂に表面架橋剤を添加して表面架橋処理し、その後、通液性向上剤、界面活性剤、滑剤等の他の物質を添加することにより、粒子状吸水剤を製造する。そして、この粒子状吸水剤を用いて、吸収体や吸収性物品を製造する。なお、他の物質を添加する方法としては、特に限定されるものではない。
【0094】
ここで、上記吸収体とは、粒子状吸水剤と親水性繊維とを主成分して成型された吸収剤のことである。上記吸収体は、粒子状吸水剤と親水性繊維とを用いて、例えば、フィルム状、筒状、シート状に成型され、製造される。上記吸収体は、粒子状吸水剤と親水性繊維との合計質量に対する粒子状吸水剤の含有量(コア濃度)が、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%、さらに好ましくは40〜100重量%の範囲である。上記吸収体は、粒子状吸水剤のコア濃度が高いほど、吸収体や紙おむつ等の作製時における粒子状吸水剤の吸収特性低下効果が顕著に表れてくるものとなる。また、上記吸収体は、厚みが0.1〜5mmの薄型であることが好ましい。
【0095】
上記吸収性物品とは、上記吸収体、液透過性を有する表面シート、及び液不透過性を有する背面シートを備える吸収性物品である。上記吸収性物品の製造方法は、まず、例えば繊維材料と粒子状吸水剤とをブレンドないしサンドイッチすることで吸収体(吸収コア)を作製する。次に、上記吸収体を、液透過性を有する表面シートと液不透過性を有する背面シートとでサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、特に大人用紙オムツや生理用ナプキンとされる。上記吸収体は、密度0.06〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cmの範囲に圧縮成型されて用いられる。なお、用いられる繊維材料としては、親水性繊維、例えば粉砕された木材パルプ、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示できる。好ましくは、それらをエアレイドしたものである。
【0096】
上記吸水性物品は、優れた吸収特性を示すものである。このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられる。ただし、それらに限定されるものではない。上記吸水性物品は、吸収性物品の中に存在する粒子状吸水剤の優れた吸収特性により、戻り量も少なく、ドライ感が著しく、装着している本人および介護の人々の負担を大きく低減することができる。
【0097】
(VI)その他
このように、本発明に係る粒子状吸水性樹脂の分級方法は、例えば、粒子状吸水性樹脂から、重力と篩網とによる分級により所望の粒径未満の粒子(微粉)を分級効率70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上で分級した後、さらに、この分級された粒子から、該粒子中に含まれる所望の粒径以上の粒子を、篩網を有する風力分級機を用いて分級するという構成を有しているものであれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0099】
〔粒子状吸水性樹脂の重合、乾燥および粉砕工程〕
2本のシグマ型ブレードを備えたニーダーに、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸および水からなるモノマー濃度38重量%、中和率70mol%のモノマー水溶液を調整した。そして、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(平均エチレングリコールユニット数9)を、上記モノマーに対して0.03mol%となるように溶解させた。
【0100】
次に、上記モノマー水溶液に窒素ガスを吹き込み、該モノマー水溶液中の溶存酸素を低減させると共に、上記ニーダー内全体を窒素置換した。引き続き、2本のシグマ型ブレードを回転させながら、重合開始剤としての過硫酸ナトリウムを、上記モノマーに対して0.12g/molとなるように添加した。また、L−アスコルビン酸を、上記モノマーに対して0.005g/molとなるように添加した。そして、上記ニーダー内で攪拌下にて重合を行い、約40分後に、平均粒径2mmの親水性架橋重合体を得た。
【0101】
得られた親水性架橋重合体を、熱風乾燥機にて170℃で60分間乾燥した。そして、この乾燥した親水性架橋重合体を、ロールミル粉砕機にて粉砕し、分級用粉砕粒子を得た。
【0102】
〔粒子状吸水性樹脂の分級工程〕
粒子状吸水性樹脂の分級工程は、実施例1および比較例1,2のように行った。
【0103】
〔実施例1〕
<粒子状吸水性樹脂の第1分級工程>
得られた分級用粉砕粒子を、目開き850μmの篩網と目開き180μmの篩網とを重ねた篩分け装置(商品名:「タンブラシフタTSM−1600」、Allgaier Co.製)を用いて、供給量800kg/hrにて分級した。そして、目開き850μmの篩網を通過し目開き180μmの篩網を通過しなかった粒子状吸水性樹脂(A)、および、目開き180μmの篩網を通過した粒子状吸水性樹脂(B)を分級した。このとき、得られた粒子状吸水性樹脂(A)と粒子状吸水性樹脂(B)との比率は、粒子状吸水性樹脂(A)が80重量%、粒子状吸水性樹脂(B)が20重量%であった。また、粒子状吸水性樹脂(B)は、含水量5%、重量平均粒径105μm、粒径106μm未満の微粉の割合が50.5%であった。ここで、上記篩分け装置の測定条件を表2に示した。
【0104】
<粒子状吸水性樹脂の第2分級工程>
約40℃の粒子状吸水性樹脂(B)を、目開き106μmの篩網を有する風力分級機(商品名:「ハイボルターMR−300S」、東洋ハイテック株式会社製)を用いて、供給量113kg/hrにて分級した。そして、粒径106μm未満の微粉を取り除くことで、目開き106μmの篩網を通過しなかった粒子状吸水性樹脂(C)を分級した。このとき、得られた粒子状吸水性樹脂(C)と取り除かれた微粉との比率は、粒子状吸水性樹脂(C)が53.8重量%、微粉が46.2重量%であった。ここで、上記風力分級機の測定条件を表2に示した。
【0105】
続いて、粒子状吸水性樹脂(A)および粒子状吸水性樹脂(C)を8:2の比率でブレンドして、熱処理用粒子状吸水性樹脂(D)を得た。なお、実施例1において、8時間の分級操作中に、篩網の目詰まりは見られなかった。
【0106】
そして、得られた粒子状吸水性樹脂(A)〜(D)の篩網の上に残留する割合、および、篩網を通過する割合を測定した結果を表1に示した。
【0107】
〔実施例2〕
<粒子状吸水性樹脂の第1分級工程>
得られた分級用粉砕粒子を、目開き850μmの篩網と目開き300μmの篩網とを重ねた篩分け装置(商品名:「タンブラシフタTSM−1600」、Allgaier Co.製)を用いて、供給量800kg/hrにて分級した。そして、目開き850μmの篩網を通過し目開き300μmの篩網を通過しなかった粒子状吸水性樹脂(E)、および、目開き300μmの篩網を通過した粒子状吸水性樹脂(F)を分級した。このとき、得られた粒子状吸水性樹脂(E)と粒子状吸水性樹脂(F)との比率は、粒子状吸水性樹脂(E)が70重量%、粒子状吸水性樹脂(F)が30重量%であった。また、粒子状吸水性樹脂(F)は、含水量5%、重量平均粒径140μm、粒径150μm未満の微粉の割合が53.3%であった。ここで、上記篩分け装置の測定条件を表4に示した。
【0108】
<粒子状吸水性樹脂の第2分級工程>
約40℃の粒子状吸水性樹脂(F)を、目開き150μmの篩網を有する風力分級機(商品名:「ハイボルターMR−300S」、東洋ハイテック株式会社製)を用いて、供給量113kg/hrにて分級した。そして、粒径150μm未満の微粉を取り除くことで、目開き150μmの篩網を通過しなかった粒子状吸水性樹脂(G)を分級した。このとき、得られた粒子状吸水性樹脂(G)と取り除かれた微粉との比率は、粒子状吸水性樹脂(G)が48.5重量%、微粉が51.5重量%であった。ここで、上記風力分級機の測定条件を表4に示した。
【0109】
続いて、粒子状吸水性樹脂(E)および粒子状吸水性樹脂(G)を7:3の比率でブレンドして、熱処理用粒子状吸水性樹脂(H)を得た。
【0110】
そして、得られた粒子状吸水性樹脂(E)〜(H)の篩網の上に残留する割合、および、篩網を通過する割合を測定した結果を表3に示した。
【0111】
〔比較例1〕
得られた分級用粉砕粒子を、目開き850μmの篩網を有する篩分け装置を用いて、供給量800kg/hrにて分級した。そして、比較材としての、熱処理用粒子状吸水性樹脂(1)を得た。
【0112】
そして、得られた粒子状吸水性樹脂(1)の篩網の上に残留する割合、および、篩網を通過する割合を測定した結果を表1に示した。
【0113】
〔比較例2〕
得られた分級用粉砕粒子を、目開き850μmの篩網と目開き106μmの篩網とを重ねた篩分け装置を用いて、供給量800kg/hrにて分級した。しかし、1時間後に篩網が破れ、熱処理用粒子状吸水性樹脂を得ることができなかった。
【0114】
表1は、実施例1および比較例1,2において測定した粒子状吸水性樹脂の篩網上に残留する割合、および、篩網を通過する割合の評価結果をまとめたものである。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示したように、実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の粒子状吸水性樹脂(D)では、比較例1の粒子状吸水性樹脂(1)と比べて、目開き106μmの篩網を通過する、いわゆる微粉の割合が小さいという結果になった。つまり、第1篩網と重力とを用いる第1分級工程と、第2篩網と気流とを用いる第2分級工程とを含み、上記第1分級工程で分級された粒子状吸水性樹脂を、上記第2分級工程で、さらに分級することにより、目的とする粒径範囲の粒子状吸水性樹脂を効率的に得ることができるということが明らかになった。
【0117】
また、表2は、実施例1および比較例1,2における篩分け装置および風力分級機の測定条件をまとめたものである。
【0118】
【表2】

【0119】
表3は、実施例2において測定した粒子状吸水性樹脂の篩網上に残留する割合、および、篩網を通過する割合の評価結果をまとめたものである。
【0120】
【表3】

【0121】
また、表4は、実施例2における篩分け装置および風力分級機の測定条件をまとめたものである。
【0122】
【表4】

【0123】
発明の詳細な説明の項においてなされた具体的な実施形態または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する請求の範囲内において、いろいろと変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上のように、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法は、吸水特性等の効果を低減することなく、粒子状吸水性樹脂を分級するものである。このため、本発明の粒子状吸水性樹脂の分級方法により得られた粒子状吸水性樹脂は、優れた吸収特性等を示すものである。このような粒子状吸水性樹脂は、例えば、近年成長の著しい大人用紙オムツ、子供用オムツ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料用吸収剤として、凝集剤、凝結剤、土壌改良剤、土壌安定剤、増粘剤等に好適に用いられる水溶性重合体として、あるいは農園芸用分野、土木業分野において保水剤、脱水剤等として広く利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和単量体を重合することにより含水ゲル状架橋重合体となし、さらに乾燥、粉砕することにより得られた粒子状吸水性樹脂から、異なる複数の分級工程を組み合わせて微粉を除去することを特徴とする粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項2】
上記分級工程の組合せが、第1篩網と重力とを用いる第1分級工程と、第2篩網と気流とを用いる第2分級工程とを含み、上記第1分級工程で分級された上記第1篩網を通過した粒子状吸水性樹脂を、上記第2分級工程で、さらに分級することにより微粉を除去することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項3】
上記分級方法は、1ライン当たり500kg/hr以上の生産量で連続生産する粒子状吸水性樹脂の製造ラインに組み込まれることを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項4】
上記第2分級工程には、第2篩網を備えた風力分級機を用いることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項5】
上記第1篩網の目開きが、150μm以上、300μm以下の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項6】
上記第2篩網の目開きが、106μm以上、180μm以下の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項7】
上記第1篩網の目開きと、上記第2篩網の目開きとの差が、30μm以上、200μm以下の範囲内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第6項のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項8】
上記第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂から、粒径180μm未満の粒子を分級し、その後の上記第2分級工程では、上記粒径180μm未満の粒子から、粒径106μm以上の粒子を分級することを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項9】
上記第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂から、粒径180μm未満の粒子を分級し、その後の上記第2分級工程では、上記粒径180μm未満の粒子から、粒径150μm以上の粒子を分級することを特徴とする請求の範囲第1項〜第8項のいずれか1項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。
【請求項10】
上記第1分級工程では、粒子状吸水性樹脂が篩網を通過する前の領域と、粒子状吸水性樹脂が篩網を通過した後の領域との間に、10mmHO以上の差圧を設けて微粉を除去することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の粒子状吸水性樹脂の分級方法。

【公表番号】特表2010−522779(P2010−522779A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538938(P2009−538938)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【国際出願番号】PCT/JP2008/056255
【国際公開番号】WO2008/123477
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】