説明

粒子製造方法

【課題】プラズマ処理において、粒子状形成物が、表面にダメージ(表面欠陥)を与えられても修復され、プラズマエネルギー付加後の急冷により粒子状形成物がアモルファス、多結晶に形成されることがなく、また、粒子状形成物の形成の際や、粒子状形成物の捕集の際にも、粒子状形成物が凝集や集合体となってしまうことがなく、粒状性、結晶性に優れた粒子を製造する粒子製造方法を提供する。
【解決手段】原料前駆体粒子をキャリアガス2により反応部へ導入し、前記反応部にてプラズマエネルギー、及び熱エネルギーをこの順に付与して粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機半導体用等に有用な粒子を製造する粒子製造方法に関し、詳しくは、粒子状形成物の凝集を軽減させ、結晶性が高い、粒子を製造する粒子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(微)粒子化結晶化した粒子の作製、そのためのプラズマ処理、熱処理については、従来から種々広く知られている。
【0003】
例えば、キャリアガス、原料ガスを反応部へ流し込むと同時にプラズマ処理(プラズマCVD)を行い基板上へ原料を吹き付け、その後に、熱処理を施すことで結晶化した薄膜を得る方法が記載されている(例えば、特許文献1参照)。この技術は粒子作製を意図したものではないが、プラズマ処理により基板上にアモルファス、または多結晶状態の薄膜を形成し、次いで形成した薄膜を基板ごと加熱処理することで、結晶化を促進させるとの技術が記載されている。しかしながら、形成物が堆積した状態で加熱を行っているため、形成物が凝集してしまっている可能性が高い。
【0004】
また、プラズマ処理により形成した形成物を、欠陥の低減、結晶化の促進を目的として、バッチ処理により熱処理を行っている技術が開示されている(例えば、特許文献2、3参照)。しかしながら、プラズマ処理において形成物は、プラズマの付加エネルギーの高さやプラズマの性質である電離現象により発生したイオンなどが表面層に衝突することで表面にダメージ(表面欠陥)を与えられることや、プラズマエネルギー付加後の急冷により形成物がアモルファス、多結晶に形成される可能性があるなどの問題があり、結晶性の高い粒子状形成物の形成が望まれていた。
【0005】
一方、プラズマ処理による粒子状形成物の作製において、公知例に記載されるようなサイクロンや物体吸着、容器へ直接投入させる等の粒子状形成物の捕集方法では、粒子状形成物が凝集や集合体となってしまうという問題があり、凝集や集合体化しない粒子状形成物の作製の手法が望まれていた。
【特許文献1】特開2004−249157号公報
【特許文献2】特開2005−39089号公報
【特許文献3】特開平9−328681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、プラズマ処理において、粒子状形成物が、表面にダメージ(表面欠陥)を与えられても修復され、プラズマエネルギー付加後の急冷により粒子状形成物がアモルファス、多結晶に形成されることがなく、また、粒子状形成物の形成の際や、粒子状形成物の捕集の際にも、粒子状形成物が凝集や集合体となってしまうことがなく、粒状性、結晶性に優れた粒子を製造する粒子製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、プラズマ処理と熱処理を組み合わせることで、プラズマ処理により粒子内核の高い結晶性を実現しえること、また、プラズマ処理により生じた表面欠陥、さらにプラズマ処理後の急冷によるアモルファス化、多結晶化を熱処理工程を一連の流れで行うことにより防止しえること、これら一連の流れは、キャリアガス、反応ガスにより反応部への粒子状形成物の導入中に行われる工程であること、さらに形成した粒子状形成物は液中で捕集することで粒子状形成物の凝集を抑制できること、を見出し、本発明を達成しえたものである。
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0009】
1.原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入し、前記反応部にてプラズマエネルギー、及び熱エネルギーをこの順に付与して粒子を製造することを特徴とする粒子製造方法。
【0010】
2.前記原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入する際、前記原料前駆体粒子を噴霧させ、キャリアガスにより反応部へ導入することを特徴とする1に記載の粒子製造方法。
【0011】
3.前記粒子が液中で捕集されることを特徴とする1または2のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【0012】
4.前記原料前駆体粒子は、II−VI族、III−V族またはIV族の無機半導体であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【0013】
5.前記キャリアガスは、Ar、Ne、Xe、Kr、N2、O2、H2、NH3から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする1〜4のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【0014】
6前記キャリアガスは、不活性ガスであるAr、Ne、Xe、Krから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする5に記載の粒子製造方法。
【0015】
7.前記粒子の平均粒径が0.1nm以上1000nm以下であることを特徴とする1〜6のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【0016】
8.前記粒子の平均粒径が0.1nm以上100nm以下であることを特徴とする7に記載の粒子製造方法。
【0017】
9.前記粒子の平均粒径が0.1nm以上10nm以下である、ことを特徴とする8に記載の粒子製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プラズマ処理において、粒子状形成物が、表面にダメージ(表面欠陥)を与えられても修復され、プラズマエネルギー付加後の急冷により粒子状形成物がアモルファス、多結晶に形成されることがなく、また、粒子状形成物の形成の際や、粒子状形成物の捕集の際にも、粒子状形成物が凝集や集合体となってしまうことがなく、粒状性、結晶性に優れた粒子を製造する粒子製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
本発明の粒子製造方法は、原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入し、反応部にてプラズマエネルギー、及び熱エネルギーをこの順に付与して粒子を製造することを特徴とする。
【0021】
《原料前駆体粒子》
本発明において、原料前駆体粒子とは、半導体、金属、導電体などの単体、もしくは塩、もしくはイオンを表す。特に、本発明の粒子製造方法は、半導体Si、Ge、InN、InPなどに好ましく適用される。本発明の目的とした粒子状形成物(本発明の粒子)の結晶性向上、または凝集防止が半導体の高輝度化に有効的であるからである。
【0022】
本発明に係る原料前駆体粒子としては、II−VI族、III−V族またはIV族の無機半導体であることが好ましい。
【0023】
例えば、半導体Si、Ge、SiGe、HgS、InN、InP、GaAs、AlSb、CdSe、AlAs、GaP、ZnTe、CdTe、InAs、PbS、等が好ましいものとして挙げられる。より好ましくはSi、Ge、SiGe、InN、InP、HgS、InAs、PbS等が挙げられる。
【0024】
《キャリアガス》
本発明において、キャリアガスとしては、全ての気体である物質であることを特徴とする。例えば、キャリアガスは、Ar、Ne、Xe、Kr、N2、O2、H2、NH3等が好ましいものとして挙げられる。
【0025】
特には、不活性ガスが好ましく、不活性ガスとしれ知られており、多分野で広く使用されている。例えば、Ar、Ne、Xe、Kr等があげられる。
【0026】
中でも、キャリアガスとしてはArがより好ましい。Arは非常に安定した物質であり、不活性ガスとして好適であり広く知られている。
【0027】
《原料前駆体粒子の導入》
本発明において、原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入する方法としては、種々知られており、とくに限定はされないが、噴霧器により噴霧微粒子を形成する方法、抵抗加熱で微粒子を形成する方法、アーク放電等により微粒子を形成する方法、プラズマ放射により微粒子を形成する方法等が挙げられる。好ましくは、噴霧器により噴霧微粒子を形成することである。
【0028】
本発明において、原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入するに際して、原料前駆体粒子は微粒子として導入されるのが好ましく、好ましくは粒径0.1〜100nm、さらには0.1〜10nm、の微粒子として導入されるのがより好ましい。
【0029】
《プラズマエネルギーの付与》
本発明において、反応部においてのプラズマエネルギーの付与方法としては、原料前駆体粒子がキャリアガス、反応ガスにより反応部へ導入された際に、反応管の外部から高周波電磁場発生装置により高周波をかけることで反応管内部のガスをプラズマ化させ、原料前駆体粒子にエネルギー付与を行うことが好ましい。
【0030】
高周波電磁場発生装置の高周波電圧は、高エネルギーを発生させることで、粒子の微粒子化、結晶化を促進させる点から50〜700eVであることが好ましい。より粒子の微粒子化、結晶化を促進させる点から200〜700eVであることががより好ましく、更により粒子の微粒子化、結晶化を促進させる点から400〜700eVであることがが更により好ましい。
【0031】
《熱エネルギーの付与》
本発明において、反応部においての熱エネルギーの付与方法としては、プラズマ処理反応部の上部(プラズマ処理反応部の次ぎ)に位置する電気炉に、温度制御が可能な複数の(好ましくは4つの)ヒーターを設け、実験で所望する温度パターン設定により、反応管の外部から熱エネルギー付与を行うことが好ましい。
【0032】
電気炉の加熱温度は、結晶化を促進させる点から200〜1600℃であることが好ましい。より結晶化の促進を促進させる点から500〜1600℃であることがより好ましく、更により結晶化を促進させる点から1000〜1600℃であることが更により好ましい。
【0033】
本発明においては、プラズマエネルギー付与処理、及び熱エネルギー付与処理をこの順に付与して粒子を製造することにより、プラズマ付与処理により、粒子状形成物が、プラズマの付加エネルギーの高さやプラズマの性質である電離現象により発生したイオンなどが表面層に衝突することで表面に与えられたダメージ(表面欠陥)を熱エネルギー付与処理により修復することができ、かつ、プラズマエネルギー付加後の急冷により粒子状形成物がアモルファス、多結晶に形成されてしまうのを、熱エネルギー付与処理により防止し優れた結晶性にすることができる。
【0034】
《形成した粒子の捕集》
形成した粒子の捕集には、公知例に記載のようなサイクロンや物体吸着、容器へ直接投入捕集、等、種種の方法が挙げられるが、本発明の粒子製造方法においては、粒子が液中で捕集されることが好ましい。
【0035】
形成された粒子状形成物である粒子を液中に捕集することにより、粒子状形成物が凝集することを好適に防止することができ、凝集や集合体化しない粒子として好適に製造することができる。
【0036】
本発明において、形成された粒子状形成物である粒子を液中に捕集する液としては、液体であるもの全てに該当するが、中でも、純水、有機溶媒、界面活性剤、ジェル状のもの、マイクロ(ナノ)バブル水、その他粒子同士の凝集がより抑制できるような液体等が挙げられる。
【0037】
好ましくは、純水、界面活性剤、マイクロ(ナノ)バブル水等が挙げられる。
【0038】
《本発明の粒子》
本発明の粒子製造方法により製造された本発明の粒子は、半導体、金属、導電体などの単体を表す。特に、本発明の粒子は、半導体Si、Ge、InN、InPなどであることが好ましい。本発明の目的とした粒子状形成物(本発明の粒子)の結晶性向上、または凝集防止が半導体の高輝度化に有効的であるからである。
【0039】
また、本発明の粒子製造方法により製造された本発明の粒子の平均粒径は、0.1nm以上1000nm以下であることが好ましく、0.1nm以上100nm以下であることがより好ましく、0.1nm以上10nm以下であることがさらにより好ましい。平均粒径が、0.1nm以上であることにより、クラスターではなく、ナノ粒子としての効果が奏されて好ましく、かつ、1000nm以下であることにより、比表面積の増大、それによる高活性状態、極微小粒子では結晶場の変化によるバンドギャップの増大等の効果が奏されて好ましい。
【0040】
0.1nm以上1000nm以下であることにより凝集防止しえて、これを用いて作製された半導体の高輝度化に非常に有効であり好ましい。
【0041】
本発明の粒子の平均粒径は、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA−EX150:日機装社製)を用いて、得られた試料の濃度を適当な値にし、粒子の特性(屈折率、密度、球の形状など)を初期データとして指定することにより、粒度分布が解析値として求められることができる。
【0042】
本発明の粒子製造方法により製造された本発明の粒子の結晶性の評価の方法としては、粒子の試料について、X’Pert PRO MPD(PANalytical社製)を用いてX線回折(X−ray diffraction)測定を行い、第一ピーク(最大のピーク)についてバックグランドと第一ピーク(最大のピーク)の最高値との差の半分の値を読み取り、該半分の値でのピーク幅の長さに相当する2θの角度を半値幅(度(°))として求め、粒子の結晶性を示す指標とすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0044】
実施例1
以下の実施例においては、図1に示す本発明に係る粒子を製造する製造装置を用いた。
【0045】
図1において、1は噴霧器、2はキャリアガス、3は反応ガス、4はガス注入口、5は高周波コイル、6は高周波電磁場発生装置、7は電気炉、8は捕集器、9は排気を示す。
【0046】
《粒子1(比較)の作製》
(電気炉処理+噴霧)
原料前駆体として非晶質Si粒子(液相法により形成された粒子であり、粒径が0.1〜10nmであることを特徴としている)を用い、加熱温度1500℃の設定で電気炉のみの熱エネルギー付与を行った。キャリアガスは不活性ガスのアルゴンを用い、ガス流量は1300ml/minとした。
【0047】
噴霧器(OMRON社製ネブライザー)を用いて超音波振動によって噴霧された原料を、アルゴンガスにより電気炉部に導入し、液(純水)中で試料捕獲できる捕集器(水中捕集用のガラス瓶の中に100mlの純水を入れ、その捕集機を2つ連結させた状態)で捕集した。
【0048】
その捕集された粒子をXRD測定で結晶性の分析を行った結果、半値幅がおよそ5〜9degという結果を得た。また、原料が凝集されたか確認するため粒径分布を測定した結果、およそ100〜1500nmという結果を得た。この試料を、粒子1(比較)とする。
【0049】
《粒子2(比較)の作製》
(プラズマ処理+噴霧)
原料前駆体に非晶質Si粒子(前掲)を用い、高周波電圧を300eVの設定でプラズマによるエネルギー付与を行った。キャリアガスは不活性ガスのアルゴンを用い、ガス流量は1300ml/minとした。
【0050】
噴霧器により噴霧された原料を、アルゴンガスにより電気炉部に導入し、液(純水)中で試料捕獲できる捕集器(前掲)で捕集した。
【0051】
その捕集された粒子をXRD測定で結晶性の分析を行った結果、半値幅がおよそ2〜6degという結果を得た。また、原料が凝集されたか確認するため粒径分布を測定した結果、およそ10〜1000nmという結果を得た。この試料を、粒子2(比較)とする。
【0052】
《粒子3(本発明)の作製》
(プラズマ放電+電気炉処理+噴霧)
原料前駆体に非晶質Si粒子(前掲)を用い、高周波電磁場発生装置の高周波電圧を300eV、加熱温度1500℃の設定で、プラズマ、および熱によるエネルギー付与を行った。キャリアガスは不活性ガスのアルゴンを用い、ガス流量は1300ml/minとした。
【0053】
噴霧器により噴霧された原料を、アルゴンガスによりプラズマ放電部、電気炉部に導入し、液(純水)中で試料捕獲できる捕集器(前掲)で捕集した。
【0054】
その捕集された粒子をXRD測定で結晶性の分析を行った結果、半値幅がおよそ0.5〜4degという結果を得た。また、原料が凝集されたか確認するため粒径分布を測定した結果、およそ1〜600nmという結果を得た。この試料を、粒子3(本発明)とする。
【0055】
《粒子4(本発明)の作製》
(プラズマ放電+電気炉処理+抵抗加熱法)
原料前駆体に非晶質Si粒子(前掲)を用い、高周波電磁場発生装置の高周波電圧を300eV、加熱温度1500℃の設定で、プラズマ、および熱によるエネルギー付与を行った。キャリアガスは不活性ガスのアルゴンを用い、ガス流量は1300ml/minとした。
【0056】
抵抗加熱により微粒子を形成する(抵抗となる部分が坩堝状に形成されており、その中に微粒子の原料となる固体を入れる。そこへ電流を流すことにより抵抗が加熱し始め原料となる固体が沸点を超えて気化し始める。この気化した原料液滴が冷却されることにより微粒子が形成される)。その粒子化された原料を、アルゴンガスによりプラズマ放電部、電気炉部に導入し、液(純水)中で試料捕獲できる捕集器で捕集した。
【0057】
その捕集された粒子をXRD測定で結晶性の分析を行った結果、半値幅がおよそ1〜5degという結果を得た。また、原料が凝集されたか確認するため粒径分布を測定した結果、1〜800nmという結果を得た。この試料を、粒子4(本発明)とする。
【0058】
《粒子5(本発明)の作製(プラズマと熱の順序が逆の場合)》
原料前駆体に非晶質Si粒子(前掲)を用い、高周波電磁場発生装置の高周波電圧を300eV、加熱温度1500℃の設定で、熱、およびプラズマの順にエネルギー付与を行った。キャリアガスは不活性ガスのアルゴンを用い、ガス流量は1300ml/minとした。
【0059】
噴霧器により噴霧された原料を、アルゴンガスによりプラズマ放電部、電気炉部に導入し、液(純水)中で試料捕獲できる捕集器(前掲)で捕集した。
【0060】
その捕集された粒子をXRD測定で結晶性の分析を行った結果、半値幅がおよそ1〜5degという結果を得た。また、原料が凝集されたか確認するため粒径分布を測定した結果、およそ5〜750nmという結果を得た。この試料を、粒子5(本発明)とする。
【0061】
《粒子6(本発明)の作製(捕集部が水中捕集でない場合)》
原料前駆体に非晶質Si粒子(前掲)を用い、高周波電磁場発生装置の高周波電圧を300eV、加熱温度1500℃の設定で、プラズマ、および熱によるエネルギー付与を行った。キャリアガスは不活性ガスのアルゴンを用い、ガス流量は1300ml/minとした。
【0062】
噴霧器により噴霧された原料を、アルゴンガスによりプラズマ放電部、電気炉部に導入し、捕集器として何も入っていない空き瓶を用いて捕集した。
【0063】
その捕集された粒子をXRD測定で結晶性の分析を行った結果、半値幅がおよそ0.5〜4degという結果を得た。また、原料が凝集されたか確認するため粒径分布を測定した結果、およそ5〜750nmという結果を得た。この試料を、粒子6(本発明)とする。
【0064】
《評価方法》
〈粒子の結晶性(半値幅)〉
粒子の試料について、X’Pert PRO MPD(PANalytical社製)を用いてX線回折(X−ray diffraction)測定を行い、第一ピーク(最大のピーク)についてバックグランドと第一ピーク(最大のピーク)の最高値との差の半分の値を読み取り、該半分の値でのピーク幅の長さに相当する2θの角度を半値幅(度(°))として求め、粒子の結晶性を示す指標として示す。
【0065】
半値幅が小さいほど、粒子の結晶性が優れていることを示す。
【0066】
半値幅が2以下であれば実用可である。
【0067】
〈粒子の凝集(粒径分布)〉
粒径分布は、粒径分布の最小値と最大値を示す。
【0068】
粒子の試料について、捕集器から得られた試料をそのまま用いて、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA−EX150:日機装社製)を用いて、屈折率や密度、球の形状などの粒子の初期データを設定して粒径を測定して粒径分布値(nm)(最も存在確立が高い粒子径からどの程度離れているか)を測定し、「粒子の凝集」を示す指標として示す。
【0069】
粒径分布値が小さいほど、単分散の粒子であり、凝集が起こっていないことを示す。
【0070】
粒径分布値が±5nmであれば実用可である。
【0071】
〈粒子の平均粒径〉
粒子の試料について、捕集器から得られた試料をそのまま使用し、ナノトラック粒度分布測定装置(UPA−EX150:日機装社製)を用いて、屈折率や密度、球の形状などの粒子の初期データを設定して粒径を測定して平均粒径(nm)を求めた。
【0072】
以上の結果を、表2に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
表1、表2、から明らかなように、熱エネルギー付与のみの場合(比較の粒子1)、または、プラズマによるエネルギー付与のみの場合(比較の粒子2)、と比べて、熱、およびプラズマの両者を兼ね備えて付与した場合(本発明の粒子1、2)には非常に優れた結果が得られることがあきらかである。以上のことから、エネルギー付与の手法において、熱、およびプラズマの両者を兼ね備えた本発明の手法が、高い結晶性が得られ、凝集が少なく優れていることがわかる。
【0076】
さらには、本発明の粒子1と本発明の粒子2とを比較すると、噴霧による原料供給の手法の方が、抵抗加熱による原料供給の手法よりも、粒径分布が狭く、凝集が少ないことが分かる。このことから、原料供給法(原料を微粒子化して供給する方法)としては、粒子の高い結晶性の実現と凝集の軽減の観点から、噴霧法の方が優れていることが分かる。
【0077】
本発明により、プラズマ処理においても、形成物が、表面にダメージ(表面欠陥)を与えられることがなく、プラズマエネルギー付加後の急冷により形成物がアモルファス、多結晶に形成されることがなく、また、試料形成の際や、形成物捕集の際に、形成物が凝集や集合体となってしまうことがなく粒子を製造する粒子製造方法を提供できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の粒子製造方法に用いられる粒子製造装置の一例をしめす図である。
【符号の説明】
【0079】
1 噴霧器
2 キャリアガス
3 反応ガス
4 ガス注入口
5 高周波コイル
6 高周波電磁場発生装置
8 捕集器
7 電気炉
9 排気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入し、前記反応部にてプラズマエネルギー、及び熱エネルギーをこの順に付与して粒子を製造することを特徴とする粒子製造方法。
【請求項2】
前記原料前駆体粒子をキャリアガスにより反応部へ導入する際、前記原料前駆体粒子を噴霧させ、キャリアガスにより反応部へ導入することを特徴とする請求項1に記載の粒子製造方法。
【請求項3】
前記粒子が液中で捕集されることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【請求項4】
前記原料前駆体粒子は、II−VI族、III−V族またはIV族の無機半導体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【請求項5】
前記キャリアガスは、Ar、Ne、Xe、Kr、N2、O2、H2、NH3から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【請求項6】
前記キャリアガスは、不活性ガスであるAr、Ne、Xe、Krから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の粒子製造方法。
【請求項7】
前記粒子の平均粒径が0.1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子製造方法。
【請求項8】
前記粒子の平均粒径が0.1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項7に記載の粒子製造方法。
【請求項9】
前記粒子の平均粒径が0.1nm以上10nm以下である、ことを特徴とする請求項8に記載の粒子製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−97039(P2009−97039A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269873(P2007−269873)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】