説明

粒状エラストマー重合体の検査方法および検査装置

【課題】粒状エラストマー重合体、特に、脱水・乾燥処理後の粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を検出するための検査方法において、水分を含有する粒状エラストマー重合体を、効率良く、しかも高精度に検出可能な検査方法を提供すること。
【解決手段】粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を検出するための検査方法であって、前記粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射する工程と、マイクロ波を照射した前記粒状エラストマー重合体の温度を測定する工程と、を有する粒状エラストマー重合体の検査方法を提供する。好ましくは、前記粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射することにより、前記粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を加熱し、加熱された水分を含有する前記粒状エラストマー重合体を、温度測定により検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状エラストマー重合体、特に、脱水・乾燥処理後の粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を検出するための検査方法および検査装置に係り、さらに詳しくは、水分を多く含有する粒状エラストマー重合体を、効率良く、しかも高精度に検出可能な検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ゴム等のエラストマー重合体は、医療分野、民生分野、自動車分野、電気・電子分野など様々な分野で用いられており、たとえば、合成ゴムは次のような工程を経て製造される。すなわち、まず、原料となる各種モノマーを用い、乳化重合や溶液重合などにより重合反応を行う。この場合において、乳化重合で重合反応を行った場合には、重合体ラテックスが得られ、一方、溶液重合で重合反応を行った場合には、セメント状のゴム溶液が得られる。
【0003】
そして、乳化重合により得られる重合体ラテックスであれば、塩化カルシウムなどの凝固剤と水とからなる凝固液により、クラム状のゴム状重合体を凝固させ、凝固させたクラム状のゴム状重合体を、十分に水洗し、次いで、スクイザー、バンドドライヤーなどを用いて脱水・乾燥し、乾燥状態のクラム状(粒状)のゴム状重合体とされる。そして、最後にベーラーなどにより圧縮され、直方体のベールに成形される。
【0004】
また、重合反応を溶液重合にて行う場合においても、得られるセメント状のゴム溶液を温水中でスチームストリッピングして、重合溶媒を除去してクラム状のゴム状重合体を得る以外は、重合反応を乳化重合にて行う場合と同様にして製造される。
【0005】
このように合成ゴム等のエラストマー重合体は、一般的に水と接触する工程を経て製造されるため、乾燥後の粒状エラストマー重合体には、脱水・乾燥工程により除去しきれなかった水分が多く含有されていることがあり、このような含有水分の存在は、ベール状のゴム状重合体においてウエットスポットの発生など外観上の不具合が生じたり、各種ゴム成形品に成形する際に不具合を生じさせる場合がある。そのため、エラストマー重合体の製造工程においては、乾燥後の粒状エラストマー重合体において、含有水分の有無を検査することが望ましい。
【0006】
このようなエラストマー重合体の製造工程における、乾燥後の粒状エラストマー重合体の含有水分の有無の検査方法としては、例えば合成ゴムの場合、クラム状のゴム状重合体を直方体のベールに成形した後に、ベール化されたゴム状重合体について、目視によりウエットスポットの有無を判定するなどして水分の有無を確認するという方法が採用されている。しかしながら、このような目視による検査方法では、ベール化されたゴム状重合体内部に水分が取り込まれている場合には、水分が含まれていることが確認し難いため、結果として検出精度に劣るという問題があった。
【0007】
一方で、水分含有率の測定方法として、赤外線水分計を用いる方法が知られている。この赤外線を用いた測定法は、水分子による赤外線の吸収帯を利用して、2〜3種類の波長の赤外線を被測定物に照射し、その反射光の吸光度変化から水を測定するものである。この方法によると、赤外線を利用するので非破壊的であり、しかも瞬時に水分含有率を測定することができる。しかしながら、この方法では、精度よく測定できる被測定物は、同一な面形状を再現可能なもの、具体的には均一な微粉末や液体など一部のものに限られるという問題があった。そのため、粒状エラストマー重合体の水分を測定する際に、赤外線水分計を用いる方法を適用しても、粒状エラストマー重合体の面形状は一定でなく、照射する赤外線の反射光の反射方向が一定にならず、さらに、周囲に散乱してしまうため、安定した測定は困難であった。
【0008】
これに対して、たとえば、特許文献1では、平滑面を有する赤外線透過透明板を用いて、ゴムを押圧しながら、透明板を介して試料ゴムに赤外線を照射することにより、上記問題の解決を図っている。しかしながら、この特許文献1の方法では、赤外線透過透明板による押圧が必要となることから、工程が複雑になるという課題があった。
【0009】
【特許文献1】特開2004−20192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、粒状エラストマー重合体、特に、脱水・乾燥処理後の粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を検出するための検査方法において、水分を多く含有する粒状エラストマー重合体を、効率良く、しかも高精度に検出可能な検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意検討を行ったところ、脱水・乾燥処理後の粒状エラストマー重合体に、マイクロ波を照射し、次いで、マイクロ波を照射した粒状エラストマー重合体の温度を測定する方法を採用することにより、水分を多く含有する粒状エラストマー重合体を、効率良く、しかも高精度に検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を検出するための検査方法であって、
前記粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射する工程と、
マイクロ波を照射した前記粒状エラストマー重合体の温度を測定する工程と、を有する粒状エラストマー重合体の検査方法が提供される。
【0013】
本発明の検査方法において、好ましくは、前記粒状エラストマー重合体に対してマイクロ波を照射することにより、前記粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を加熱し、加熱された水分を含有する前記粒状エラストマー重合体を、温度測定により検出する。
【0014】
粒状エラストマー重合体が水分を含有している場合には、マイクロ波の照射により、その含有されている水分がマイクロ波を吸収し、これにより温度上昇を引き起こすこととなる。そこで、本発明の検査方法は、この上昇した温度を検出し、その結果に基づき、粒状エラストマー重合体中における含有水分を検出するものである。すなわち、マイクロ波を照射しても、水分を実質的に含有していない粒状エラストマー重合体は、マイクロ波を殆ど吸収しないため、その温度はほとんど上昇しないのに対し、水分を含有する粒状エラストマー重合体は、含有水分がマイクロ波を吸収し分子運動するため、その温度が上昇することとなる。そして、本発明の検査方法は、マイクロ波照射後の温度上昇の有無を検出し、その結果に基づき、含有水分の有無を検査するものである。
【0015】
本発明の検査方法においては、前記粒状エラストマー重合体が、脱水・乾燥工程を経た後の粒状エラストマー重合体であることが好ましい。
また、本発明の検査方法においては、前記粒状エラストマー重合体の温度測定を赤外線サーモグラフィで行うことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明によれば、粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射するためのマイクロ波照射装置と、マイクロ波を照射した前記粒状エラストマー重合体の温度を測定するための温度測定装置と、を有する粒状エラストマー重合体の検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査方法は、粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射し、これにより、粒状エラストマー重合体に含有される水分を分子運動させ、その結果としての温度上昇を検出することにより、粒状エラストマー重合体中における含有水分の有無を検査するものである。すなわち、マイクロ波の照射により、粒状エラストマー重合体中に水分が含有されている場合には、その温度が上昇する一方で、実質的に水分が含有されていない場合には、その温度は殆ど上昇しないこととなる。そして、本発明の検査方法では、この温度上昇の有無により含有水分の有無を検査するものである。
【0018】
特に、本発明の検査方法によれば、マイクロ波を用いているため、目視による検査では検出することが困難であった粒状エラストマー重合体内部に含有されている水分も有効に検出できる。そのため、効率的に、しかも高精度に測定を行うことができる。加えて、本発明の検査方法は、マイクロ波の照射の結果生じる、反射や透過を利用するという方法を採用するものではないため、粒状エラストマー重合体の外観形状や凹凸の有無に関係なく、高精度な測定が可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は本発明の検査方法の一実施形態(クラム状のゴム状重合体)に係る検査装置の概略図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る検査装置は、マイクロ波照射装置2と、赤外線サーモグラフィ4とを有し、ベルトコンベア6により連続的に送られてくるクラム状のゴム状重合体8に、マイクロ波照射装置2によりマイクロ波を照射し、マイクロ波を照射したクラム状のゴム重合体8の温度を、赤外線サーモグラフィ4により測定できるようになっている。
【0021】
本実施形態においては、マイクロ波照射装置2によりマイクロ波が照射されたクラム状のゴム状重合体8が、水分を含有するものである場合には、マイクロ波の照射によりその温度が上昇することとなり、一方で、実質的に水分を含有しないものであれば、マイクロ波を照射しても、その温度は上昇しないこととなる。そして、マイクロ波照射後のクラム状のゴム重合体8の温度を、赤外線サーモグラフィ4で測定することにより、マイクロ波照射後のクラム状のゴム重合体8の温度上昇の有無に基づき、水分の含有の有無を検出できるものである。そして、水分を多く含有しており、これにより温度が上昇したクラム状のゴム重合体8を「不良品」とし、一方、実質的に水分を含有しておらず、温度が上昇しなかったクラム状のゴム重合体8を「良品」として、それぞれ検出する。なお、水分を多く含有しており不良品として検出されたクラム状のゴム重合体8は、通常、水分を除去するために、再度、乾燥させられることとなる。そして、通常、不良品とされるクラム状のゴム状重合体8の水分含有率は5重量%以上であり、このようなクラム状のゴム状重合体8が混入したままベーラーなどにより圧縮され、ベール状のゴム状重合体になるとウエットスポットなどの不具合が発生し易い。
【0022】
マイクロ波照射装置2は、図示省略のマイクロ波発振機により発生させたマイクロ波を、クラム状のゴム状重合体8に照射するための装置である。本実施形態においては、マイクロ波照射装置2により、クラム状のゴム状重合体8に照射するマイクロ波としては、好ましくは波長が1m(周波数:300MHz)〜1mm(周波数:300GHz)の電磁波であり、波長が60cm(周波数:500MHz)〜1.5mm(周波数:200GHz)の範囲のものがより好ましく、30cm(周波数:1GHz)〜3cm(周波数:10GHz)の範囲のものが特に好ましい。なお、マイクロ波照射装置2により照射するマイクロ波は、マグネトロン式のマイクロ波発振機により発生させたものであっても良いし、クライストロン式又はジャイロトロン式のマイクロ波発振機により発生させたものであっても良い。
【0023】
また、マイクロ波照射装置2により照射されるマイクロ波は、マイクロ波発振機の出力を調整することにより制御することができる。本実施形態においては、出力は、好ましくは200W〜500kWの範囲とすることが好ましく、より好ましくは300W〜10kWの範囲とする。出力が低すぎると、クラム状のゴム状重合体8中に含まれる水分が加熱され難くなり、水分を含有するクラム状のゴム状重合体8の温度上昇が不十分となったり、あるいは温度上昇が十分であっても、温度上昇に要する時間が長くなりすぎてしまうおそれがある。一方、出力が高すぎると、クラム状のゴム状重合体8が劣化してしまう場合がある。
【0024】
クラム状のゴム状重合体8に対するマイクロ波の照射時間は、用いるゴムの種類や、マイクロ波照射装置2の出力に応じて適宜選択すれば良いが、好ましくは0.1〜200秒、より好ましくは0.2〜100秒である。マイクロ波の照射時間が短すぎると、クラム状のゴム状重合体8中に含まれる水分が加熱され難くなり、水分を含有するクラム状のゴム状重合体8の温度上昇が不十分となるおそれがある。一方、長すぎると、検査工程における検査効率が低下し、生産性に劣る結果となったり、あるいは、ゴム状重合体8が劣化してしまう場合がある。
【0025】
クラム状のゴム状重合体8に対してマイクロ波を照射する際における照射時間を調整する方法としては、たとえば、ゴム状重合体8がベルトコンベア6上のマイクロ波照射部分において、一定時間停止するようにベルトコンベア6を制御する方法が挙げられる。あるいは、ゴム状重合体8を、マイクロ波照射部分に一定時間停止させる方法に代えて、ゴム状重合体8が、ベルトコンベア6上のマイクロ波照射部分を、一定時間掛けて通過するような速度となるようにベルトコンベア6によるゴム状重合体8の送り速度を調整する方法を採用しても良い。
【0026】
なお、本実施形態においては、上記マイクロ波の波長、照射出力および照射時間の各条件は、用いるゴム状重合体8の種類によっても異なり、上記範囲において適宜調整すれば良いが、マイクロ波照射後における、実質的に水分を含有しないゴム状重合体8(良品)の温度と、水分を多く含有するゴム状重合体8(不良品)との間の温度差が、好ましくは0.1〜50℃となるような条件、さらに好ましくは1〜30℃となるような条件、特に好ましくは5〜30℃となるような条件とすることが好ましい。
また、予め、マイクロ波照射量を変量した際の、ゴム状重合体の水分含有率と温度上昇度の関係を把握しておくことが好ましい。
【0027】
そして、本実施形態では、図1に示すように、マイクロ波照射装置2によりマイクロ波が照射されたゴム状重合体8の温度は、赤外線サーモグラフィ4により測定できるようになっている。この赤外線サーモグラフィ4は、マイクロ波照射後のゴム状重合体8から放射される赤外線放射エネルギーを検出し、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度を画像化して、図示省略の表示装置に表示し得る装置である。
【0028】
本実施形態においては、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度を赤外線サーモグラフィで測定し、これを画像化することにより、マイクロ波照射後のゴム状重合体8を、水分の含有の有無を検出することができるものである。なお、測定の結果得られた画像データを表示するための表示装置(図示省略)は、測定試料の温度に対応して、それぞれ異なる色で表示されるように設定しておき、これにより、ゴム状重合体8の温度の相違が視認できるようなものとすることが好ましい。すなわち、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度上昇の有無に応じて、異なる色で表示されるようにしておき、これによりマイクロ波照射後のゴム状重合体8における含有水分の有無を視認できるようなものとすることが好ましい。
【0029】
なお、ゴム状重合体8全体に水分が含有されている場合には、マイクロ波の照射により、ゴム状重合体8全体の温度が上昇することとなるが、その一方で、ゴム状重合体8の一部に水分が含有されている場合には、ゴム状重合体8全体ではなく、その水分が含有されている部分付近の温度が上昇することとなる。本実施形態に係る検査方法によれば、ゴム状重合体8全体の温度を測定することにより、いずれにしてもゴム状重合体8の温度上昇(一部である場合も、全体である場合も)を検出することができ、これに基づき、水分の含有の有無を検出することができる。そのため、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度を測定する温度測定装置としては、ゴム状重合体8全体の温度を測定できるものが好ましい。
【0030】
また、赤外線サーモグラフィ4による測定は、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度を測定する態様としても良いし、あるいは、マイクロ波照射時に同時に行っても良い。
【0031】
さらに、本実施形態においては、赤外線サーモグラフィ4により測定されたゴム状重合体8の温度の画像データに基づき、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の測定温度が所定の温度以上となったものを自動的に検出し、そして、検出されたゴム状重合体8を不良品として回収するような機構を有するものとしても良い。このような機構を採用することにより、検査効率の向上が可能となる。
【0032】
本発明の検査方法において、検査の対象となる粒状エラストマー重合体の重合体は、特に限定されず、医療分野、民生分野、自動車分野、電気・電子分野など様々な分野において広く一般的に用いられているエラストマー重合体が挙げられる。このようなエラストマー重合体としては、たとえば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマーゴム、シリコーンゴムおよび多硫化ゴム等のゴム状重合体;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマー;などが挙げられる。また、これらのエラストマー重合体としては、溶液重合で合成されるもの、乳化重合で合成されるもののいずれであっても良いが、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴムおよびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が特に好ましい。
なお、粒状エラストマー重合体としては、クラム状であってもペレット状であっても良い。粒状エラストマー重合体の平均最大径は、好ましくは0.1〜30cm、さらに好ましくは0.1〜10cm、特に好ましくは0.2〜5cmである。なお、平均最大径は、粒状エラストマー重合体100個につき、その最大径を測定し、単純平均して求めた値である。
【0033】
本発明の検査方法に用いる粒状エラストマー重合体の重合体としては、上記のエラストマー重合体のなかでも、比較的に極性の低いエラストマー重合体が好ましい。本発明の検査方法は、粒状エラストマー重合体に含有される水分をマイクロ波によって加熱するという方法を採用するため、比較的に極性が低く、マイクロ波を吸収し難いエラストマー重合体の方が、エラストマー重合体自体がマイクロ波により加熱されにくいためである。すなわち、比較的に極性が低いエラストマー重合体は、マイクロ波を照射した際における、水分を含有する粒状エラストマー重合体と、水分を実質的に含有しない粒状エラストマー重合体との間の温度の差が比較的に大きくなり易いため、このようなエラストマー重合体を用いた場合に本発明の作用効果が大きくなり、特に好ましい。
なお、極性が低いエラストマー重合体としては、極性基を含有する単量体単位含有量が10重量%以下の重合体が好ましく、5重量%以下の重合体がより好ましく、0重量%の重合体がさらに好ましい。また、該極性基としてはニトリル基、ハロゲン基、アミノ基、ヒドロキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0034】
また、本発明の検査方法の対象とする粒状エラストマー重合体としては、スクイザー、バンドドライヤーなどを用いて脱水・乾燥し、乾燥状態とされたクラム状のエラストマー重合体や、さらにペレタイザーによってペレット状にされたエラストマー重合体であることが好ましい。そして、乾燥工程後の未成形のクラムを用いても良いし、また、所定形状に裁断されたクラムを用いても良い。本発明の検査方法は、マイクロ波の照射の結果生じる、反射や透過を利用するという方法を採用するものではないため、粒状エラストマー重合体の外観形状や凹凸の有無に関係なく、高精度な測定が可能であり、検査の対象とする粒状エラストマー重合体としては、乾燥後の粒状エラストマー重合体であれば、いかなる態様のものであっても良い。
【0035】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
たとえば、上述した実施形態(クラム状のゴム状重合体)では、赤外線サーモグラフィ4によりマイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度を測定する態様を例示したが、マイクロ波照射後のゴム状重合体8の温度を測定できるような方法であれば赤外線サーモグラフィ4を用いる方法以外でも良く、特に限定されず、種々の方法や装置を用いることができる。
【0036】
また、上述した実施形態では、ゴム状重合体8へのマイクロ波をベルトコンベア6に対して上方から照射する態様を例示したが、マイクロ波の照射方向は特に限定されず、ゴム状重合体8にマイクロ波が照射されるような方向であれば、いずれの方向から照射しても良い。
【0037】
さらに、上述した実施形態では、ゴム状重合体8をベルトコンベア6で移送し、連続的に測定できるような態様を例示したが、バッチ式にてマイクロ波の照射および温度測定を行うような態様としても良い。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0039】
まず、図1に示すゴム状重合体8に対応するクラム状合成ゴムとして、脱水・乾燥処理後のクラム状スチレン−ブタジエンゴムを準備した。その平均最大径は2.5cmであり、水分含有量は0.3重量%であった。次いで、この乾燥状態(良好な乾燥状態)のクラム状スチレン−ブタジエンゴム100重量部に対して、10重量部の水を含浸させ、含水状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムを調製した。
【0040】
次いで、複数の乾燥状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムおよび複数の含水状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムに対して、マイクロ波発振機の出力630W、周波数2.45GHz、照射時間90秒の条件でマイクロ波を照射した。そして、マイクロ波照射後の乾燥状態および含水状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムについて、サーモグラフィにより、その温度を測定した。
【0041】
その結果、乾燥状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムは、いずれも、6.1〜18.8℃の範囲内であり、その一方で、含水状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムは、いずれも、29.5〜41.2℃の範囲であった。すなわち、マイクロ波の照射により、乾燥状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴムはほとんど加熱されない一方で、含水状態のクラム状スチレン−ブタジエンゴム試料は加熱され、その温度が上昇する結果となることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は本発明の検査方法の一実施形態に係る検査装置の概略図である。
【符号の説明】
【0043】
2… マイクロ波照射装置
4… 赤外線サーモグラフィ
6… ベルトコンベア
8… クラム状のゴム状重合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を検出するための検査方法であって、
前記粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射する工程と、
マイクロ波を照射した前記粒状エラストマー重合体の温度を測定する工程と、を有する粒状エラストマー重合体の検査方法。
【請求項2】
前記粒状エラストマー重合体に対してマイクロ波を照射することにより、前記粒状エラストマー重合体中に含有されている水分を加熱し、
加熱された水分を含有する前記粒状エラストマー重合体を、温度測定により検出する請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記粒状エラストマー重合体が、脱水・乾燥工程を経た後の粒状エラストマー重合体である請求項1または2に記載の検査方法。
【請求項4】
前記粒状エラストマー重合体の温度測定を赤外線サーモグラフィで行う請求項1〜3のいずれかに記載の検査方法。
【請求項5】
粒状エラストマー重合体にマイクロ波を照射するためのマイクロ波照射装置と、
マイクロ波を照射した前記粒状エラストマー重合体の温度を測定するための温度測定装置と、を有する粒状エラストマー重合体の検査装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−31099(P2009−31099A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194624(P2007−194624)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】