説明

粒状骨材及びその製造方法並びに粒状骨材を用いた路面施工方法

【課題】透水性及び保水性に優れた路面の施工に好適な粒状骨材及びその製造方法、並びに粒状骨材を用いた路面施工方法を提案する。
【解決手段】粒状骨材を、砕石粉とこれに配合された固化剤を主成分とする粒状体で構成する。係る構成によれば、砕石粉の性状は安定しているので、砕石粉で構成された製品としての粒状骨材もその性状が安定し、信頼性の高い粒状骨材を提供できる。また、粒状骨材が粒状体で構成であることから、その取扱が容易であり、例えば、この粒状骨材を敷き詰めて路面を形成する場合にはその施工が容易であり、また粒状骨材を袋詰めして販売する場合にはその流通過程での取り扱いが容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、透水性及び保水性に優れた路面の施工に好適な粒状骨材及びこの粒状骨材を用いた路面施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に夏場の電力不足という社会情勢を反映して、夏場のヒートアイランド現象の緩和を目的として、各種の路面形成用骨材とか、これを用いた路面施工方法等が種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に示されるものは、高分子土壌改良材を用いた土壌改良方法であって、土壌にセメント系固化材を混合攪拌するとともに、ここに高分子土壌改良材として高分子化合物を含む水溶液を散布し、該高分子土壌改良材が有する団粒化作用によって土壌を団粒化する。そして、この団粒化された土壌を路盤上に敷き均し、団粒化によって生じた団粒間の隙間によって透水性、通気性、保水性を確保するとしている。
【0004】
また、特許文献2に示されるものは、特許文献1に示されるような土壌改良方法を路面の舗装構造に適用したものであって、路床上に形成された下層路盤の上に、団粒化された土材でなる透水性保水層と、透水性表層を形成し、路面降雨等を透水性保水層及び透水性表層側に透過させて排水する。一方、透水し切れなかった余剰水は、これを上記透水性保水層及び透水性表層の団粒間隙間に保水する。この団粒間隙間に保水された水は、路面温度の上昇に伴って順次気化し、その気化熱で路面の表面温度を下げることから、ヒートアイランド現象の緩和が図れる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2002−13102号公報
【特許文献2】 特開2005−180166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような従来の土壌改良方法とか、該土壌改良方法を適用した路面の舗装構造では、ある程度のヒートアイランド現象の緩和効果は得られるものの、それ以上の飛躍的効果は得られない。即ち、確かに土壌の団粒化による団粒間隙間は透水路あるいは保水空間として機能し得るものの、その大きさには限界があり、従って、例えば、ヒートアイランド現象の緩和効果をさらに高めようとすれば、舗装厚さを、路面耐久性の観点から設定される厚さ以上に厚くして団粒間隙間の拡大を図ることが必要となるなど、コスト的にも実現性が低いものである。
【0007】
そこで本願発明では、透水性及び保水性に優れた路面の施工に好適な粒状骨材及びその製造方法を提案するとともに、併せて、上記粒状骨材を用いたヒートアイランド現象の緩和効果の高い路面施工方法を提案することを目的としてなされたものである。
【0008】
なお、本願発明における「路面」は、車とか人が通る道路面が含まれることは勿論であるが、これに限定されるものではなく、例えば、庭の地面、運動場の地面など、地表に露出している地面全般を含む広い概念である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0010】
本願の第1の発明に係る粒状骨材は、砕石粉とこれに配合された固化剤を主成分とする粒状体で構成されていることを特徴としている。
【0011】
本願の第2の発明では、上記粒状体が粒径1〜数mmであって、上記砕石粉が粒径1〜数μmの粉粒子で構成されるとともに、該粉粒子相互間には50〜数100nmの孔径をもつ微細孔が形成されていることを特徴としている。
【0012】
本願の第3の発明に係る粒状骨材の製造方法は、砕石粉と固化剤を配合して配合体を得る配合工程と、上記配合体を加水混練するとともに造粒加工により所定粒径の粒状体を得る混練造粒工程と、上記粒状体に水熱処理を施して粒状骨材を得る処理工程を備えたことを特徴としている。
【0013】
本願の第4の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る粒状骨材を用いて路面を施工するに際して、上記粒状骨材に固化剤を配合して路盤上に敷き均し、水を散布して固化養生して路面を形成することを特徴としている。
【0014】
本願の第5の発明では、上記第1、第2又は第3の発明に係る粒状骨材を用いて路面を施工するに際して、上記粒状骨材を路盤上に敷き均して路面を形成することを特徴としている。
【0015】
本願の第6の発明では、上記第4又は第5の発明に係る路面施工方法において、上記粒状骨材に、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒を添加することを特徴としている。
【0016】
本願の第7の発明では、上記第4又は第5の発明に係る路面施工方法において、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が添加されていない第1の粒状骨材と、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が添加されている第2の粒状骨材を用い、路盤上に第1の粒状骨材を所定厚さに敷き均して基礎部を形成したのち、該基礎部の上に上記第2の粒状骨材を所定厚さに敷き均して表層部を形成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0018】
(a)本願の第1の発明
(a−1) 粒状骨材が、例えば、砕石粉とこれに配合された固化剤を主成分とする粒状体で構成されているところ、この砕石粉は、例えば土質材に比してその性状が安定していることから、該砕石粉で構成された製品としての粒状骨材もその性状が安定し、信頼性の高い粒状骨材を提供できる。
【0019】
(a−2) 粒状骨材が粒状体で構成されていることから、その取扱が容易であり、例えば、この粒状骨材を敷き詰めて路面を形成する場合にはその施工が容易であり、また粒状骨材を袋詰めして販売する場合にはその流通過程での取り扱いが容易である。
【0020】
(a−3) 上記粒状骨材の主原料である砕石粉は、砕石工場における砕石工程の副産物として得られるものであることから、例えば、コンクリート等の建築廃材を回収し、これを破砕して粒状骨材の主原料を得るような場合に比して、そのコストを低く抑えることができ、延いては粒状骨材をより安価に提供することができる。
【0021】
(b)本願の第2の発明
(b−1) 上記粒状骨材は、これを構成する上記粒状体が粒径1〜数mmであって、上記砕石粉が粒径1〜数μmの粉粒子で構成されるとともに、該粉粒子相互間には50〜数100nmの孔径をもつ微細孔が形成されているので、例えば、上記粒状骨材を敷き詰めて路面を形成した場合、該粒状骨材相互間の比較的大きな隙間に加えて、該粒状骨材を構成する上記粉粒子相互間の微細孔が、透水路及び保水部として機能する。従って、例えば、従来の舗装構造のように粒子間隙間のみが透水路及び保水路として機能する場合に比して、透水性及び保水性が高く、延いてはヒートアイランド現象の緩和効果の高い路面を提供できる。
【0022】
(b−2) 上記粉粒子相互間に形成される微細孔が50〜数100nmの孔径をもつのに対して、水の分子径は0.38nm程度であって上記微細孔の孔径に比して十分に小さいため、該微細孔は透水路及び保水部として有効に機能し、上記(b−1)に記載の効果が確実となる。
【0023】
(c)本願の第3の発明
(c−1) 上記粒状骨材は、砕石粉と固化剤を配合して配合体を得る配合工程と、上記配合体を加水混練するとともに造粒加工により所定粒径の粒状体を得る混練造粒工程と、上記粒状体に水熱処理を施して粒状骨材を得る処理工程を経て製造されるものであって、特にその主原料である砕石粉は、砕石工場における砕石工程の副産物として得られるものであることから、所要品質の砕石粉を、安価に、且つ安定的に得ることができ、その結果、高品質の粒状骨材を安価に提供できる。
【0024】
(c−2) 配合体を加水混練し、造粒加工によって粒状体を得るものであって、該粒状体の粒径を容易に変更設定することができ、その結果、粒状骨材の用途に最適な粒径の粒状骨材を得ることができ、延いては粒状骨材の使用上の利便性が高められる。
【0025】
(c−3) 上記粒状体に水熱処理を施して粒状骨材を得ることから、この処理工程を経て製造される粒状骨材は、硬度が高く耐摩耗性に優れ、従って、この粒状骨材を用いて施工された路面は高い耐久性を保持することとなり、延いては路面管理のランニングコストの低減が促進される。
【0026】
(c−4) 上記粒状骨材は、水熱処理が施されることで無菌化されているため、例えば、遊園地の路面とか花壇培地等の子供が接する可能性の高い施設を、この粒状骨材を用いて作ることで、その安全性が高められる。
【0027】
(d)本願の第4の発明
上記粒状骨材を用いて固化路面を施工するに際しては、上記粒状骨材に固化剤を配合して路盤上に敷き均し、水を散布して固化養生すればよく、例えば、従来のように固化剤の他に、土壌改良剤の配合を必要とする場合に比して、路面形成作業の迅速簡略化及び低コスト化が図られる。
【0028】
(e)本願の第5の発明
上記粒状骨材を用いて非固化路面を施工するに際しては、単に、上記粒状骨材を路盤上に敷き均して路面を形成すればよく、その施工が極めて容易であり、その低コスト化が促進される。
【0029】
(f)本願の第6の発明
上記粒状骨材を用いて路面を施工するに際して、上記粒状骨材に、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒を添加するようにしている。
【0030】
(f−1) 従って、例えば、粒状骨材に顔料を添加する場合、その顔料色を選択し、異なる色の顔料が添加された複数種類の粒状骨材を適宜組み合わせて路面を施工することで、従来の無機質な色合いをもつ路面ではなく、意匠性に優れた癒し効果のある路面を得ることができ、延いては住環境の改善にも寄与できるものである。なお、この顔料の添加は、粒状骨材への顔料の配合、粒状骨材の表面への顔料の塗着、粒状骨材の内部への顔料の含浸、その他のあらゆる添加形体で実施できる。
【0031】
(f−2)また、粒状骨材に光触媒を配合し、この光触媒が配合された粒状骨材を用いて路面を施工する場合には、光触媒の効用、即ち、抗菌性、防カビ性、防草性、汚れの分解能、大気浄化能等によって、環境改善効果の高い路面を得ることができる。なお、この光触媒の添加は、粒状骨材への光触媒の配合、粒状骨材の表面への光触媒の塗着、粒状骨材の内部への光触媒の含浸、その他のあらゆる添加形体で実施できる。
【0032】
(g)本願の第7の発明
顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が添加配合されていない第1の粒状骨材と、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が添加配合されている第2の粒状骨材を用いて路面を施工する場合、路盤上に第1の粒状骨材を所定厚さに敷き均して基礎部を形成したのち、該基礎部の上に上記第2の粒状骨材を所定厚さに敷き均して表層部を形成することで、長期の使用によって路面の表層部の摩滅が進行したとしても、この摩滅量が表層部の厚さ範囲内である限り、常に上記表層部には顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が存在し、特に光触媒においては太陽光の照射によってその機能が維持されることから、顔料の色合いに基づく路面の意匠性、光触媒の機能による環境改善効果が維持され、例えば、顔料とか光触媒が路面の表面近くにしか存在せず、該路面の軽度の磨耗によって路面の色合いとか光触媒の機能が損なわれるような場合に比して、路面の耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 本願発明の実施の形態に係る粒状骨材の概念図である。
【図2】 粒状骨材を用いて施工された二層構造をもつ固化路面の断面説明図である。
【図3】 粒状骨材を用いて施工された単層構造をもつ固化路面の断面説明図である。
【図4】 粒状骨材相互間の結合状態説明図である。
【図5】 粒状骨材を用いて施工された二層構造をもつ非固化路面の断面説明図である。
【図6】 粒状骨材を用いて施工された単層構造をもつ非固化路面の断面説明図である。
【図7】 粒状骨材の製造工程の説明図である。
【図8】 粒状骨材を用いた路面施工の施工工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本願発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【0035】
図1には、本願発明の実施形態に係る粒状骨材1を、概念的に拡大図示している。この粒状骨材1は、図7に示す製造工程によって製造されるものであり、図7を参照してこれを説明する。
【0036】
図7に示すように、上記粒状骨材1は配合工程と混練造粒工程と処理工程を経て製造される。
【0037】
「配合工程」
配合工程は、素材原料である砕石粉と固化剤を所定割合で配合して配合体を得る工程である(図7のステップS1)。
【0038】
ここで、砕石粉としては、粒径が1〜数μmの粉粒子2の集合体が採用される。粉粒子2の粒径が1μm以下であると、粉粒子2相互間に形成される粒子間隙間3(図1参照)が小さくなり過ぎて該粒子間隙間3の透水機能が阻害されるおそれがある。また、粉粒子2の粒径が数μm以上であると、上記粒子間隙間3が大きくなり毛細管現象による保水性に影響を及ぼすおそれがある。これらを勘案して、粒径が1〜数μm程度の粉粒子2を主体とする砕石粉を選択したものである。
【0039】
また、固化剤としては、セメント系固化剤とかペーパスラッジ系固化剤が採用可能であるが、この実施形態では固化強度を考慮して、セメント系固化剤を採用している。
【0040】
なお、砕石粉と固化剤の配合比率は、砕石粉の固化強度に影響を与えるものであって、主として砕石粉を固化して得られる粒状骨材1の用途を勘案して設定される。この実施形態では、上記粒状骨材1を路面施工に用いることから粒状骨材1の耐摩耗性が重要であることから、砕石粉の100Wt%に対して、セメント系固化剤と混和剤等を15〜40Wt%に設定している。
【0041】
「混練造粒工程」
混練造粒工程は、図7のステップS2〜S4に示すように、配合工程において砕石粉と固化剤を所定の配合比率で配合してなる配合体を、加水混練してスラーリ状とする(ステップS2)とともに、これを造粒機(図示省略)に投入して所要粒径の粒状に成形して(ステップS3)、粒状体5を得る(ステップS4)。
【0042】
この混練造粒工程で得られる上記粒状体5は、図1に示すように、無数の砕石粉粒子2が固化剤によって結合され粒状に成形されたものであって、各粉粒子2相互間には上述した粒子間隙間3が無数に形成されている。
【0043】
なお、この粒状体5の粒径は、この粒状体5を次述の処理工程で水熱処理して得られる粒状骨材1の粒径(即ち、加熱収縮後の粒径)が1mm〜数mm程度となるように設定される。
【0044】
「処理工程」
処理工程では、混練造粒工程で得られた上記粒状体5を、オートクレーブ等の水熱処理装置に投入し、ここで水熱処理によって改質乾燥させ、その強度を高めるとともに無菌化する(ステップS5)。これによって、製品としての粒状骨材1が得られる(ステップS6)。
【0045】
この粒状骨材1は、図1に示すように、水熱処理前の上記粒状体5の形体を維持しているが、その粒径は上記粒状体5の粒径よりも小さく、1mm〜数mm程度であることは既述のとおりである。この粒状骨材1の粒径は、これが1mm以下であると粒状骨材1を用いて施工された路面が鏡面化してその摩擦抵抗が小さくなり過ぎる一方、数mm以上であると路面上における粒状骨材1の露出度合いが大きくなって、該粒状骨材1が路面から剥がれるとか早期に磨耗することで、路面の耐久性が阻害される恐れがある。そのため、この実施形態では、上記粒状骨材1の粒径を1mm〜数mm程度に設定したものである。尤も、この粒状骨材1の粒径は固定的なものではなく、該粒状骨材1の用途等に応じて適宜変更設定し得るものである。
【0046】
「路面の施工」
続いて、上記粒状骨材1を用いて各種の路面を施工する場合について、それぞれ説明する。なお、ここで言う「路面」は道路面のみを指すのではなく、広く地面全般を指すことは既述のとおりである。
【0047】
上記粒状骨材1を用いた路面施工の種類としては、この実施形態では以下の4パターンを想定している。
【0048】
即ち、路面施工の形態を、大きく、固化路面(例えば、道路の舗装路面)の施工と、非固化路面(例えば、庭の植栽地面とか観賞用地面)の施工に分ける。さらに、これら各路面施工において、上記粒状骨材1に顔料とか光触媒を添加する施工と、これらを添加せずに粒状骨材1のみを用いる施工に分ける。
【0049】
従って、施工パターンとしては、固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加する施工(第1の施工パターン)と、固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加しない施工(第2の施工パターン)と、非固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加する施工(第3の施工パターン)と、非固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加しない施工(第4の施工パターン)の四つとなる。
【0050】
「第1の施工パターン」
第1の施工パターンは、固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加する施工であって、図2に示すように、路盤側の基礎部X1と該基礎部X1の上側に位置する表層部X2の二層構造としている。この施工作業を図8に基づいて説明する。
【0051】
この第1の施工パターンでは、固化路面の施工であるので(ステップS21)、まず、粒状骨材1に固化剤を配合する(ステップS22)。ここで、固化剤としてはセメント系固化剤を採用し、粒状骨材1に対する配合比率は適宜設定可能である。
【0052】
次に、この第1の世故パターンでは、粒状骨材1に顔料又は光触媒、又はこれら双方を、添加するので(ステップS23)、特に高価な光触媒の使用量を抑えながら高い効果を得るべく、路面Xを二層構造とする。即ち、ステップS25において、路盤上に粒状骨材1のみを所定厚さに敷き均して基礎部X1を形成する(図2参照)。続いて、ステップS26において、粒状骨材1に顔料又は光触媒、又はこれら双方を添加し、これを上記基礎部X1の上に敷き均して表層部X2を形成する(図2参照)。
【0053】
しかる後、転圧し(ステップS27)、さらにその転圧面の表面側から水を散布して養生し、これを固化させる(ステップS28)。この施工作業によって、図2に示すように、粒状骨材1のみを用いた基礎部X1と、粒状骨材1に顔料又は光触媒、又はこれら双方を、添加したものを用いた表層部X2からなる上下二層構造の路面Xが得られる。
【0054】
ここで、図4に、結合固化された粒状骨材1相互間の状態を示している。各粒状骨材1は、固化剤層12によって結合されるが、その結合は表面張力によって各粒状骨材1相互の近接部分に集中し、その結果、各粒状骨材1相互間には骨材間隙間11が形成されることになる。また、上記粒状骨材1には、図1に示すように、無数の粒子間隙間3が形成されていることは既述のとおりである。そして、この粒状骨材1内部の粒子間隙間3と、側粒状骨材1相互間の骨材間隙間11は、共に透水路及び保水部として機能し得るものである。
【0055】
従って、路面X上の雨水等は、上記粒子間隙間3及び骨材間隙間11を通ってスムーズに路盤側に透水し、これによって路面Xの透水性が確保される。一方、上記粒子間隙間3及び骨材間隙間11は、保水部としても機能するものであり、ここに保水された水は、路面温度の上昇に伴って次第に気化し、その気化熱によって路面温度及び路面近傍の環境温度を低下させる。この結果、路面温度の過度の上昇に起因するヒートアイランド現象が抑制され、それだけ住環境の改善効果が得られることになる。なお、この路面Xの保水性は、例えば、従来のように、土壌の団粒化による団粒間隙間のみが透水路あるいは保水部として機能する構造の場合に比して、上記粒子間隙間3が透水路及び保水部として機能する分だけ、高いものとなる。
【0056】
一方、上記顔料は、必要に応じて適宜の色彩を選択することができる。そして、異なる色の顔料が配合された複数種類の粒状骨材を適宜組み合わせて路面を施工することで、従来の無機質な色合いをもつ路面ではなく、意匠性に優れた癒し効果のある路面を得ることができ、延いては住環境の改善にも寄与できるものである。
【0057】
また、上記光触媒としては、二酸化チタンとか二酸化タングステンが用いられるが、ここでは、二酸化チタンを採用している。この二酸化チタンには、大気浄化、脱臭、浄水、抗菌、防汚という極めて有用な機能があるため、この光触媒を粒状骨材1に配合し、これを用いて路面Xを施工することで、施工された路面Xは、大気浄化性、脱臭性、抗菌性、防カビ性等に優れた路面となり、生活環境の改善という面において多大な貢献をなす。
【0058】
また、上述のように、上記光触媒として、二酸化チタンの他に、二酸化タングステンも用いられるが、この二酸化タングステンには、二酸化チタンのように紫外線の照射を必ずしも必要とせず、例えば、蛍光灯の光等の可視光線下においても光触媒機能を発揮するという特有の性状がある。このため、例えば、施工路面Xの使用環境等の条件に合わせて、二酸化チタンと二酸化タングステンをそれぞれ単独で、あるいはこれらを混合状態で用いることで、必要とする光触媒機能を最大限有効に活用することができる。
【0059】
さらに、光触媒ではないが、抗菌性を有する銀、銅等の金属とか、抗菌性と防カビ性を有する有機化合物を配合することも有効である。
【0060】
「第2の施工パターン」
第2の施工パターンは、固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加しない施工であって、路面Xを二層構造とする必要が無く、従って、図3に示すように、路盤上に粒状骨材1を敷き均して施工される。即ち、図8に示すように、この第2の施工パターンは固化路面の施工であるので(ステップS21)、まず、粒状骨材1に固化剤を配合する(ステップS22)。
【0061】
次に、粒状骨材1に顔料等を添加しないので(ステップS23)、そのままステップS24へ移行し、路盤上に粒状骨材1のみを所定厚さに敷き均す。しかる後、これを転圧し(ステップS27)、さらにその転圧面の表面側から水を散布して養生し、これを固化させる(ステップS28)。この施工作業によって、図3に示すように、粒状骨材1のみを用いた単層構造の路面Xが得られる。
【0062】
この第2の施工パターンで施工された路面Xにおいては、上記顔料の添加による効果、及び光触媒の添加による効果を除いて、上記第1の施工パターンの場合と同様の作用効果が得られるものである。
【0063】
「第3の施工パターン」
第3の施工パターンは、非固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加する施工であって、図5に示すように、路盤側の基礎部Y1と該基礎部Y1の上側に位置する表層部Y2の二層構造としている。この施工作業を図8に基づいて説明する。
【0064】
この第3の施工パターンでは、非固化路面の施工であるので(ステップS21)、粒状骨材1に固化剤を配合することなく、そのままステップS31に移行する。そして、この第3の施工パターンでは、粒状骨材1に顔料又は光触媒、又はこれら双方を、添加するので、特に高価な光触媒の使用量を抑えながら高い効果を得るべく、路面Yを二層構造とする。
【0065】
即ち、ステップS33において、路盤上に粒状骨材1のみを所定厚さに敷き均して基礎部Y1を形成する(図5参照)。続いて、ステップS34において、粒状骨材1に顔料又は光触媒、又はこれら双方を添加し、これを上記基礎部Y1の上に敷き均して表層部Y2を形成する(図5参照)。以上で、第3の施工パターンによる路面Yが得られる。
【0066】
なお、顔料の色彩も、光触媒の機能も、紫外線への暴露期間の増大に伴って次第に劣化し、例えば、顔料にあっては色褪せが生じるとか、光触媒にあっては抗菌性が低下する等の負の現象を招来することは避けられない。係る場合、第3の施工パターンで施工された路面Yでは、その表層部Y2に、顔料又は光触媒、又はこれら双方が添加された粒状骨材1が所定厚さで存在し、且つこの粒状骨材1が固化されていない自由状態であることから、例えば、所定期間の経過後に、表層部Y2の表面寄りの粒状骨材1(即ち、紫外線への暴露によって色彩とか光触媒機能が劣化した粒状骨材1)と裏面寄り(基礎部Y1寄り)の粒状骨材1(即ち、紫外線への暴露による劣化が少ない粒状骨材1)を入れ替えることで、路面Yの色彩を回復させ、あるいは光触媒の機能を回復させることができ、延いては路面Yの耐久性の向上が期待できる。
【0067】
また、この第3の施工パターンで施工された路面Yにおいては、路面は固化路面か非固化路面かの違いがあるのみで、その他の作用効果は上記第1の施工パターンの場合と同様である。
【0068】
「第4の施工パターン」
第4の施工パターンは、非固化路面で且つ顔料とか光触媒を添加しない施工であって、路面Xを二層構造とする必要が無く、従って、図6に示すように、路盤上に粒状骨材1を敷き均して施工される。即ち、図8に示すように、この第4の施工パターンは非固化路面の施工であるので(ステップS21)、粒状骨材1に固化剤を配合することなく、そのままステップS31からステップS32に移行し、路盤上に粒状骨材1のみを所定厚さに敷き均す。この施工作業によって、図6に示すように、粒状骨材1のみを用いた単層構造の路面Xが得られる。
【0069】
この第4の施工パターンで施工された路面Yにおいては、上記顔料の添加による効果、及び光触媒の添加による効果を除いて、上記第3の施工パターンの場合と同様の作用効果が得られるものである。
【符号の説明】
【0070】
1 ・・粒状骨材
2 ・・粉粒子
3 ・・粒子間隙間
4 ・・添加剤
11 ・・骨材間隙間
12 ・・固化剤層
X ・・固化路面
X1 ・・基礎部X
X2 ・・表層部
Y ・・非固化路面
Y1 ・・基礎部
Y2 ・・表層部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕石粉とこれに配合された固化剤を主成分とする粒状体で構成されていることを特徴とする粒状骨材。
【請求項2】
請求項1において、
上記粒状体が粒径1〜数mmであって、上記砕石粉が粒径1〜数μmの粉粒子で構成されるとともに、該粉粒子相互間には50〜数100nmの孔径をもつ微細孔が形成されていることを特徴とする粒状骨材。
【請求項3】
砕石粉と固化剤を配合して配合体を得る配合工程と、上記配合体を加水混練するとともに造粒加工により所定粒径の粒状体を得る混練造粒工程と、上記粒状体に水熱処理を施して粒状骨材を得る処理工程を備えたことを特徴とする粒状骨材の製造方法。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の粒状骨材を用いた路面施工方法であって、
上記粒状骨材に固化剤を配合して路盤上に敷き均し、水を散布して固化養生して路面を形成することを特徴とする路面施工方法。
【請求項5】
請求項1,2又は3に記載の粒状骨材1を用いた路面施工方法であって、
上記粒状骨材を路盤上に敷き均して路面を形成することを特徴とする路面施工方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、
上記粒状骨材に、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒を添加することを特徴とする路面施工方法。
【請求項7】
又は5において、
顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が添加されていない第1の粒状骨材と、顔料又は光触媒又は顔料と光触媒が添加されている第2の粒状骨材を用い、
路盤上に第1の粒状骨材を所定厚さに敷き均して基礎部を形成したのち、該基礎部の上に上記第2の粒状骨材を所定厚さに敷き均して表層部を形成することを特徴とする路面施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−23428(P2013−23428A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174352(P2011−174352)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(507217453)多和砕石工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】