説明

粒界拡散処理用塗布装置

【課題】NdFeB系焼結磁石の製造において粒界拡散処理を行う際に、RH粉末を焼結体の所定の面に、所定の厚さ、所定のパターンで、過不足なく均一に塗布することができ、自動化や多数の焼結体に対する塗布処理が容易な粒界拡散処理用塗布装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る粒界拡散処理用塗布装置は、ワークローダ10と、ワークローダ10よりも上側に設けられた印刷ヘッド20から成る。ワークローダ10は、横方向に移動可能なベース11と、ベース11に対して上下方向に移動可能なリフト12と、リフト12上に着脱可能に載置される桟13と、桟13上に着脱可能に載置されるトレイ14と、トレイ14の上面に設けられたサポータ15と、上下動可能な磁石クランプ16と、を有する。印刷ヘッド20は、透過部211が設けられたスクリーン21と、スクリーン21の上面に接しながら移動可能なスキージ22及び戻しスクレーパ23と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NdFeB(ネオジム・鉄・硼素)系焼結磁石の製造において粒界拡散処理を行う際、焼結体にRH(Dy及び/又はTb)又はRHの化合物の粉末を塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NdFeB(ネオジム・鉄・硼素)系の焼結磁石は、1982年に佐川(本願発明者)らによって見出されたものであるが、それまでの永久磁石をはるかに凌駕する特性を有し、Nd(希土類の一種)、鉄及び硼素という比較的豊富で廉価な原料から製造することができるという特長を有する。そのため、NdFeB系焼結磁石はハードディスク等のボイスコイルモータ、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用モータ、電動補助型自転車用モータ、産業用モータ、高級スピーカー、ヘッドホン、永久磁石式磁気共鳴診断装置等、様々な製品に使用されている。
【0003】
近年、環境問題への対応等で市場が急速に拡大し始めた自動車用途を中心に、100℃以上の環境温度で使用可能な薄形形状(磁化方向に対する磁石の厚さが小さい形状)のNdFeB系焼結磁石への期待が高まっている。しかしながら、NdFeB系焼結磁石は温度上昇による磁気特性の低下が大きく、100℃以上という環境温度では不可逆的減磁が生じやすいといった問題がある。この問題を避けるためには、保磁力HcJ(磁化曲線において、磁場Hを減少させていったときの磁化Jが0となる磁場Hの値)が所定の値(例えば15kOe≒1.2MA/m)以上のNdFeB系焼結磁石を製造する必要がある。これは保磁力が高いと減磁されにくく、不可逆的減磁も生じにくいためである。
【0004】
NdFeB系焼結磁石の保磁力を高める方法の1つとして、Ndの一部をRHで置換することが行われている(置換法)。しかしながら、置換法では、保磁力が高くなる一方で、残留磁束密度及び最大エネルギー積が低下してしまうという問題がある。
【0005】
これに対し、特許文献1には粒界拡散法を用いたNdFeB系焼結磁石の製造方法が記載されている。粒界拡散法とは、各粒子の結晶軸を一定の方向に配向させたNdFeB系合金粉末を所定の焼結温度で焼結して焼結体を作製した後、この焼結体の表面にRH又はRHの化合物の粉末(以下、「RH粉末」と称す)を塗布し、RHが拡散する温度で加熱する方法である。この拡散温度はもちろん焼結温度よりも低い。これにより、焼結体中に存在するNd2Fe14B結晶粒の粒界を通じてRHが焼結体内部に入り込み、結晶粒表面にRHが拡散する。粒界拡散法を用いると、高い保磁力が得られると共に、残留磁束密度及び最大エネルギー積の低下を抑制させることができる。また、置換法よりもレアメタルであるRHの使用量を少なくすることができ、焼結磁石の製造コストを低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2006/043348号公報
【特許文献2】特開2008-061333号公報
【特許文献3】特開2009-170541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したようにDy及びTbはレアメタルであり、供給量が少なく高価であることから、粒界拡散法による処理を行う際の焼結体へのRH粉末の塗布は必要最小限に留めることが求められる。例えば特許文献2には、モータや発電機などの回転機で使用されるNdFeB系焼結磁石を製造する際、焼結体の一部にのみRH粉末を塗布し、粒界拡散法により局所的に、必要な箇所のみ保磁力を高めることが記載されている。
【0008】
永久磁石を用いた回転機は、コイルと永久磁石が向かい合った構造を有しており、永久磁石の磁化の方向と逆向きの磁界をコイルから発生させることにより、回転軸を回転させる。回転機で使用される永久磁石は、通常、磁化方向の厚みが湾曲した形状を有しているが、このような形状の永久磁石は、コイルから磁化方向と逆方向の磁界が印加されたとき、厚みが薄い部分で減磁されやすくなり、駆動トルクが低下してしまう。
【0009】
特許文献2では、NdFeB系焼結磁石を製造する際、作製した焼結体の厚みが薄い部分にRH粉末を塗布し、粒界拡散法により部分的に保磁力を高めることで、全体の減磁の程度が同程度になるようにしている。このように磁石の使用用途や形状に基づいて、RH粉末の塗布パターンを変更することは、Dy及びTbの使用量を減らし、コストを削減することができるという点で有用である。
【0010】
また、RH粉末を均一に、必要とする量だけ塗布することも、Dy及びTbの使用量を削減するうえで重要である。さらに工業的な理由から、多数の焼結体に対して同時に塗布処理を行えるようにすること、自動化が容易であること、等も求められる。
【0011】
特許文献1及び2には、粒界拡散法による処理を行う際に焼結体の表面にRH粉末を塗布する方法として、水又は有機溶剤にRH粉末を分散させたスラリーの中に焼結体を浸漬させる方法(浸漬法)や、スラリーをスプレーで噴射にする方法(スプレー法)が記載されている。
【0012】
しかしながら、浸漬法ではRH粉末の使用量を調整することや、RH粉末を均一に塗布することが難しい。スプレー法はRH粉末の使用量の調整が比較的容易であるものの、RH粉末が塗布対象である焼結体以外の方向にも飛散して、歩留まりが低下するという問題がある。また、これらの方法は多数の焼結体に対して同時に、所定のパターンでRH粉末を塗布することが難しい。
【0013】
また、特許文献3には粒界拡散処理を行う際に、バレルペインティング法による塗布方法を用いることが記載されている。バレルペインティング法とは、被処理部材(ここでは「焼結体」)に、粘着物質が塗布された粘着層形成媒体を衝突させることにより被処理部材表面に粘着層を形成し、次に粘着層が形成された被処理部材に粉体(ここでは「RH粉末」)が付着した粉体皮膜形成媒体を衝突させることで被処理部材に粉体皮膜を形成する方法のことである。
【0014】
バレルペインティング法では、RH粉末を飛散させることなく、焼結体の全ての面に均一な粉末層を形成することができる。しかしながら、この方法では、RH粉末を焼結体の所定の面に、所定の厚さ、所定のパターンで塗布することが難しい。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、NdFeB系焼結磁石の製造において粒界拡散法による処理を行う際に、RH粉末を焼結体の所定の面に、所定の厚さ、所定のパターンで、過不足なく均一に塗布することができ、自動化や多数の焼結体に対する塗布処理が容易な粒界拡散処理用塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために成された本発明に係る粒界拡散処理用塗布装置は、
NdFeB系合金粉末の焼結体の表面に、RH(Dy又は/及びTb)又はRHの化合物の粉末をスラリー状にした塗布物を塗布する装置であって、
a) 前記焼結体を保持する焼結体保持手段と、
b) 前記焼結体の表面に塗布される塗布物のパターンに対応した、該塗布物を透過する透過部を有するスクリーンと、
c) 前記焼結体保持手段に保持された前記焼結体と前記スクリーンを接触させ、また、接触した該焼結体と該スクリーンを離すように、前記焼結体保持手段又は/及び該スクリーンを移動させる移動手段と、
d) 前記焼結体と前記スクリーンが接触した状態で、前記透過部を通して該焼結体の表面に前記塗布物を供給する塗布物供給手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記のスクリーンを用いた方法(以下、「スクリーン法」とする)は、以下の点から粒界拡散処理を行う際のRH粉末の塗布方法に適している。
・焼結体が多数個であっても、これらをスクリーンの下に平行に並べるだけで同時にRH粉末を塗布することができる。
・RH粉末を焼結体の所定の面に均一に塗布することができる。さらに塗布を複数回繰り返すことで、厚み(すなわちRH粉末の使用量)を調整することができる。
・焼結体の所定の領域に、所定のパターンで塗布する場合でも、このパターンに応じてスクリーンに透過部を設けるだけで良く、更に同じスクリーンを繰り返し用いることができる。
・焼結体の対向する2つの主面に塗布する場合でも、一方の主面をスクリーン側に向けて、スクリーン法により所定の厚さで粉末を塗布したあと、もう一方の主面をスクリーン側に向けて同様に塗布するだけでよい。
・自動化が容易である。
【0018】
このようにスクリーン法は、RH粉末の使用量を削減するという点においても、大量生産や自動化などといった工業的な点においても、優れた塗布方法であることが分かる。従って、本発明に係る塗布装置を用いることにより、希少且つ高価なRH粉末を無駄なく使用しつつ、容易に高保磁力のNdFeB系焼結磁石を製造すること可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る粒界拡散処理用塗布装置の一実施例を示す概略縦断面図。
【図2】本実施例の粒界拡散処理用塗布装置の一部であるトレイ(a)及び桟(b)の一例を示す平面図。
【図3】本実施例の粒界拡散処理用塗布装置による塗布処理の手順を示す図。
【図4】本実施例の粒界拡散処理用塗布装置の一部であるスクリーンの例を示す平面図。
【図5】本実施例においてNdFeB系合金粉末の焼結体の表面に塗布する塗布物のパターンの例を示す平面図。
【図6】本実施例においてNdFeB系合金粉末の焼結体の2つの主面に塗布する塗布物のパターンの例を示す縦断面図。
【図7】焼結体を載置するトレイの変形例を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1〜図7を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0021】
本実施例では、図1に示した粒界拡散処理用塗布装置を用いて、NdFeB系合金粉末の焼結体に対して粒界拡散処理を行うことにより、NdFeB系焼結磁石を製造する例を説明する。なお、本発明では焼結体を製造する方法は特に問わないが、例えば特開2006-019521号公報に記載の方法を用いることで、磁気特性の高い焼結体をニアネットシェイプで製造することができる。
【0022】
まず、図1及び図2を用いて、粒界拡散処理用塗布装置の構成を説明する。粒界拡散処理用塗布装置は大きく分けて、ワークローダ10と、ワークローダ10よりも上側に設けられた印刷ヘッド20から成る。ワークローダ10は、横方向に移動可能なベース11と、ベース11に対して上下方向に移動可能なリフト12と、リフト12上に着脱可能に載置される桟13と、桟13上に着脱可能に載置されるトレイ14と、トレイ14の上面に設けられたサポータ15と、上下動可能な磁石クランプ16と、を有する。印刷ヘッド20は、スクリーン21と、スクリーン21の上面に接しながら移動可能なスキージ22及び戻しスクレーパ23と、を有する。
【0023】
スクリーン21には透過部211が設けられており、本実施例ではこの透過部211を通して塗布物Rを焼結体Sの表面に塗布する。塗布物Rとしては、例えばRHの酸化物又はフッ化物の微粉末を有機溶剤に分散させてスラリー状にしたものを用いることができる。
【0024】
なお、スクリーン21にポリエステル製のものを用いると、塗布物Rを焼結体Sに塗布する際に焼結体Sの表面になじみやすくなるため、塗布の仕上がりを良くすることができる。一方、スクリーン21の耐久性を重視する場合には、例えばステンレス鋼製のものを用いることができる。
【0025】
トレイ14とサポータ15は、焼結体Sを載置して位置を固定するための治具である。トレイ14には、図2(a)に示すように、焼結体Sを収容するための孔141が縦に6個、横に4個設けられている。孔141の下面には支持部142が設けられており、焼結体Sはトレイ14の上面から各孔141に1個ずつ、支持部142に引っ掛けるようにして載置される。このトレイの上にサポータ15を載置することにより、焼結体Sの位置を固定する。なお、サポータ15は、焼結体Sとトレイ14との段差を埋めて、スクリーン21に傷がつかないようにするためのものである。また、焼結体Sに塗布物を塗布する際の邪魔にならないよう、サポータ15の厚みは、その上面がトレイ14に載置される焼結体Sの上面よりもわずか(0.1〜0.2mm程度)に下側になるように設定されている。
【0026】
桟13はトレイ14が撓むことを防ぐためのものであり、桟13上に載置されるトレイ14の孔141の位置に対応して開口131が設けられている(図2(b))。桟13の上面の四隅には第1凹部132が設けられ、第1凹部132の位置に対応して、トレイ14の下面の四隅に第1凸部143が設けられている。桟13の第1凹部132にトレイ14の第1凸部143を嵌め込むことにより、トレイ14は桟13の所定の位置に載置される。同様に、桟13の下面の四隅とリフト12の上面の四隅にはそれぞれ第2凸部133と第2凹部121が設けられており、第2凹部121に第2凸部133を嵌め込むことにより、桟13はリフト12の所定の位置に載置される。
【0027】
次に、図3を用いて本実施例の粒界拡散処理用塗布装置による塗布処理の手順を説明する。
まず、トレイ14の孔141に焼結体Sを1個ずつ載置し、サポータ15をトレイ14に被せた後、トレイ14を桟13上に固定する。そして、桟13の第2凸部133をリフト12の第2凹部121に嵌め込み、桟13をリフト12上に固定する(図3(a))。そして、磁石クランプ16を上昇させ、磁気吸引により焼結体Sを保持する。
【0028】
続いて、ベース11を印刷ヘッド20の直下に移動させ(図3(b))、焼結体Sの上面がスクリーン21の下面すれすれの位置に到達するまでリフト12を上昇させる(c)。そして、スクリーン21の上面に塗布物Rを載せ、スキージ22をスクリーン21の上面に接触させながら移動させる(c)。これにより、塗布物Rがスクリーン21の透過部211を透過し、焼結体Sの上面に塗布される。
【0029】
塗布物Rを焼結体Sの上面に塗布した後、リフト12を下降させる一方で、戻しスクレーパ23をスクリーン21の上面すれすれにスライドさせることにより、スクリーン21の上面全体に塗布物Rを分散させ、次の塗布に備える。塗布を終了する場合、スクリーン21の上面に残った塗布物Rは回収する(d)。回収した塗布物Rは高価なRHを含有しているため、再利用することによりコストを削減することができる。
【0030】
リフト12を下降させた後は、印刷ヘッド20から離れるようにベース11を移動させると共に、磁石クランプ16を下降させる(e)。焼結体Sの他の面にも塗布物Rを塗布する場合には、この後、その面を上に向けて焼結体Sをトレイ14上に載置し、ここまでに述べた工程を再度実行する。なお、NdFeB系焼結磁石の使用用途によっては、塗布面が一面のみであっても良い。
【0031】
焼結体Sへの塗布物Rの塗布が終了した後は、焼結体Sを加熱炉で加熱させる。これにより、塗布物中のRHを焼結体S中の粒界を通じて焼結体内部に拡散させることができるため、保磁力の高いNeFeB系焼結磁石を得ることができる。
【0032】
なお、透過部211のパターンとしては、図4に示すようなものを用いることができる。例えば図4(a)に示すスクリーン21を用いると、焼結体S上に塗布される塗布物Rのパターンは図5(a)のようになる。図5(a)は、焼結体Sの向かい合う2つの端部に塗布物Rを塗布した例である。例えば、モータなどの回転機に用いられる永久磁石は、始動時に回転方向の端部に磁化方向と逆向きの磁界が加わって減磁され経時的に出力が低下する傾向にある。このため、このような用途に用いられるNdFeB系焼結磁石を製造する場合、端部の保磁力を高めることが効果的である。
【0033】
また、スクリーン21として図4の(b)、(c)、(d)のものを用いた場合の塗布パターンはそれぞれ図5(b)、(c)、(d)のようになる。このように本実施例の塗布装置では、透過部211が異なるスクリーン21を磁石の用途に応じて変えるだけで、容易に様々なパターンで均一に塗布物Rを焼結体S上に塗布することができる。勿論、焼結体Sの全表面に塗布物Rを塗布することもできる。また、焼結体Sの塗布(印刷)面が平面以外であっても、塗布面の形状に合わせてスクリーンを加工することにより、容易に対応することができる。
【0034】
さらに、図4の(a)と(b)のスクリーンを順に使用することで、成分や比率等の異なる塗布物R1、R2を、図5(e)のようにそれぞれ別の領域に塗布することもできる。上記したように、モータなどでは端部の保磁力を特に向上させる必要があるが、端部の塗布物R1には保磁力向上の効果が高いTbを含有させ、中央部の塗布物R2にはTbよりも安価なDyを含有させることにより、コストの上昇をできるだけ抑えつつ全体の保磁力を向上させることができる。また、TbやDyの含有量をそれぞれの領域で変化させることもできる。同様に、図4の(c)と(d)のスクリーンを組み合わせることで、図5(f)のような塗布も可能である。
【0035】
なお、焼結体Sへの塗布を対向する2つの主面(面積が最大の面)で行った場合、塗布物Rがトレイ14に付着してしまうことがある。これを避けるためには、例えばまず図4(b)のスクリーンを用いて図5(b)のように一方の主面の塗布を行った後、焼結体Sをひっくり返し、図5(b)の塗布されていない部分をトレイ14の支持部142に引っ掛けて、もう一方の主面の塗布を行えば良い(図6)。このようにすることで、トレイ14に焼結体Sを載置したまま粒界拡散法の加熱を行うことができるため、NdFeB系焼結磁石を製造するうえで作業効率を向上させることが可能となる。
【0036】
また、それぞれの主面の全面に塗布物Rを塗布する場合、例えば図7のような尖形状の支持部142Aで焼結体Sを支持するようにしても良い。これにより、焼結体Sの塗布面とトレイ14Aとの接触箇所を小さくすることができるため、トレイ14Aに塗布物Rが付着することによる塗布物Rの無駄を削減することができる。また、塗布物Rを両面を塗布した後は、このトレイ14Aに焼結体Sを載置したまま加熱処理を行うこともできる。
【符号の説明】
【0037】
10…ワークローダ
11…ベース
12…リフト
121…第2凹部
13…桟
131…開口
132…第1凹部
133…第2凸部
14、14A…トレイ
141…孔
142、142A…支持部
143…第1凸部
15…サポータ
16…磁石クランプ
20…印刷ヘッド
21…スクリーン
211…透過部
22…スキージ
23…スクレーパ
R、R1、R2…塗布物
S…焼結体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NdFeB系合金粉末の焼結体の表面に、RH(Dy又は/及びTb)又はRHの化合物の粉末をスラリー状にした塗布物を塗布する装置であって、
a) 前記焼結体を保持する焼結体保持手段と、
b) 前記焼結体の表面に塗布される塗布物のパターンに対応した、該塗布物を透過する透過部を有するスクリーンと、
c) 前記焼結体保持手段に保持された前記焼結体と前記スクリーンを接触させ、また、接触した該焼結体と該スクリーンを離すように、前記焼結体保持手段又は/及び該スクリーンを移動させる移動手段と、
d) 前記焼結体と前記スクリーンが接触した状態で、前記透過部を通して該焼結体の表面に前記塗布物を供給する塗布物供給手段と、
を備えることを特徴とする粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項2】
前記焼結体への塗布物の塗布が、該焼結体の対向する2つの主面に対するものであり、一方の主面に塗布物を塗布した後、これらの主面の向きを逆にしてもう一方の主面に塗布物を塗布することを特徴とする請求項1に記載の粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項3】
前記焼結体保持手段が、前記焼結体の主面を支持する尖形状の支持部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項4】
前記焼結体への塗布物の塗布が、該焼結体の対向する2つの主面に対するものであり、一方の主面に塗布物を塗布しない非塗布領域を設け、これらの主面の向きを逆にしてもう一方の主面に塗布物を塗布する際に、前記焼結体保持手段がこの非塗布領域を保持することを特徴とする請求項1に記載の粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項5】
前記焼結体保持手段が、前記焼結体を載置する治具と、該焼結体を非接触に保持する磁石と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項6】
前記治具を前記焼結体保持手段から着脱可能にすることで、前記塗布物が塗布された焼結体を該治具ごと加熱処理することができるようにしていることを特徴とする請求項5に記載の粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項7】
前記塗布物が複数種類有り、それぞれを焼結体の表面の異なる領域に塗布することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粒界拡散処理用塗布装置。
【請求項8】
NdFeB系合金粉末の焼結体の表面に、RH(Dy又は/及びTb)又はRHの化合物の粉末をスラリー状にした塗布物を塗布し、前記焼結体を前記塗布物ごと加熱することにより、NdFeB系焼結磁石を製造する製造方法において、
前記塗布物を透過させることができる透過部が所定のパターンで設けられたスクリーンを用いることにより、該透過部を通して前記焼結体の表面に該塗布物を該パターンで塗布する
ことを特徴とするNdFeB系焼結磁石の製造方法。
【請求項9】
前記焼結体への塗布物の塗布が、該焼結体の対向する2つの主面に対するものであり、一方の主面に塗布物を塗布した後、これらの主面の向きを逆にしてもう一方の主面に塗布物を塗布することを特徴とする請求項8に記載のNdFeB系焼結磁石の製造方法。
【請求項10】
前記焼結体を載置する治具が、該焼結体の主面を尖形状の支持部により支持することを特徴とする請求項9に記載のNdFeB系焼結磁石の製造方法。
【請求項11】
前記焼結体への塗布物の塗布が、該焼結体の対向する2つの主面に対するものであり、一方の主面に塗布物を塗布しない非塗布領域を設け、これらの主面の向きを逆にしてもう一方の主面に塗布物を塗布する際に、焼結体を載置する治具がこの非塗布領域にのみ接触することを特徴とする請求項8に記載のNdFeB系焼結磁石の製造方法。
【請求項12】
前記焼結体に塗布物を塗布する際、前記治具に載置された焼結体を磁石により非接触に保持することを特徴とする請求項10又は11に記載のNdFeB系焼結磁石の製造方法。
【請求項13】
前記加熱が、前記治具ごと行われることを特徴とする請求項10〜12のいずれかに記載のNdFeB系焼結磁石の製造方法。
【請求項14】
前記塗布物が複数種類有り、それぞれを焼結体の表面の異なる領域に塗布することを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載のNdFeB系焼結磁石の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−233663(P2011−233663A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101787(P2010−101787)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(591044544)インターメタリックス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】