説明

粗製核酸サンプルからの直接増幅のための方法

本教示は、核酸を増幅するための改良した方法、キット、および反応混合物に関する。いくつかの実施態様において、新規直接緩衝剤処方が提供され、それは最低限のサンプル精製で、粗製サンプルにおいて核酸を直接増幅することを可能にする。本教示は、以下の工程を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法を提供する:デオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;必要に応じてその粗製サンプルを5mMから25mMのNaOHとインキュベートする工程;その粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程;およびそのデオキシリボ核酸に対してPCRを行う工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、米国特許法第119条(e)項の下、2008年6月30日に出願された米国仮特許出願第61/077,113号の優先権利益を主張し、この米国仮特許出願の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本教示は、一般的に粗製サンプルから核酸を直接増幅する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(緒言)
DNAプロファイルの迅速および正確な検出は、法医学的ケースワークサンプル分析の重要な局面である。血液および口腔スワブのような粗製サンプルは、PCRに基づく短いタンデム反復(STR)タイピングのために使用されるポリメラーゼの活性を阻害し得る物質を含む。歴史的に、PCR増幅のような、下流の酵素的操作を行う前に、阻害剤を除去し、そしてDNAを精製することが必要であった。多くの種類のDNA単離および精製法およびキットが、市販で入手可能である。しかし、それらの使用は、続く分析のためのサンプルの調製に時間および費用がかかる
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
本教示は、以下の工程を含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法を提供する:デオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;必要に応じてその粗製サンプルを5mMから25mMのNaOHとインキュベートする工程;その粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程;およびそのデオキシリボ核酸に対してPCRを行う工程、ここでその直接緩衝剤は、少なくとも3%〜8%のグリセロール、0.2%〜0.9%の非イオン性界面活性剤、および1000〜3000μg/mlのBSAを含む。適当な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(Tween)、Tween20、Triton−X100等を含むがこれに限らない。
【0005】
本教示は、以下のものを含む、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法を提供する:デオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;必要に応じてその粗製サンプルを5mMから25mMのNaOHとインキュベートする工程;その粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程;およびその溶液に対してPCRを行う工程、ここでその直接緩衝剤は、少なくとも5つのPCRプライマーペア、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2〜0.9%のポリソルベート、1000〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む。
【0006】
いくつかの実施態様において、本教示は、以下の工程を含む、ヒトのアイデンティティーを決定する方法を提供する:ヒト由来のデオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;必要に応じてその粗製サンプルを5mMから25mMのNaOHとインキュベートする工程;その粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程であって、ここでその直接緩衝剤は、複数のプライマーペアを含み、ここで各プライマーペアは、短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接する、工程;その溶液に対してPCRを行って、複数のPCRアンプリコンを形成する工程;ここで各PCRアンプリコンは、確認可能なサイズを有する、工程;およびそのPCRアンプリコンのサイズを参照することによってヒトを同定する工程;ここでその直接緩衝剤はさらに、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%のポリソルベート、1000〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、以下の工程を含む、下流の酵素的操作のために核酸を調製する方法を含む:デオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;必要に応じてその粗製サンプルを5mMから25mMのNaOHとインキュベートする工程;その粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程;およびその溶液に対して下流の酵素的操作を行う工程、ここでその直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%のポリソルベート、1000〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施態様において、その下流の酵素的操作はPCRである。
【0008】
本教示はまた、遺伝的分析のためのキットを提供し、そのキットは、複数のプライマーペア(ここで各プライマーペアは、短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接する)、および直接緩衝剤を含み、ここでその直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%のポリソルベート、1000〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施態様において、上記で述べたようなキットは、細胞溶解のために、NaOHまたは他の強アルカリ性化合物、または他の薬剤を必要に応じて含み得る。
【0009】
他の実施態様は、直接緩衝剤および複数のプライマーペアを含む反応混合物であり、ここで各プライマーペアは、短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接し、そしてここでその直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%のポリソルベート、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む。いくつかの実施態様において、上記で述べたようなキットは、細胞溶解のために、NaOHまたは他の強アルカリ性化合物、または他の薬剤を必要に応じて含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
当業者は、下記で説明する図面は、説明目的のためのみであることを理解する。その図面は、本教示の範囲を制限することを決して意図しない。
【図1】図1は、血液サンプル由来のゲノムDNAのSTRプロファイルの電気泳動図である。
【図2−1】図2A−2Dは、FTA紙にスポットした4つの血液サンプルの失敗したSTRプロファイルの電気泳動図である。
【図2−2】図2A−2Dは、FTA紙にスポットした4つの血液サンプルの失敗したSTRプロファイルの電気泳動図である。
【図3】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図4】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図5】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図6】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図7】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図8】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図9】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図10】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図11】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【図12】図3Aから12Bまでは、その血液をFTA紙にスポットした10人の個人由来のSTRプロファイルの比較電気泳動図であり、そのパンチは、本明細書中の本教示の直接緩衝剤中にあり、そして「A」と示す。一方、「B」と示す電気泳動図は、Promegaによって販売されるPowerPlex16HS精製システムを用いて調製した、同じ10人の個人の血液のSTRプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
代表的な実施態様の説明
この出願において、単数形の使用は、他に特に明記しない限り、複数形を含む。この出願において、「a」または「an」という語は、他に特に明記しない限り、「少なくとも1つ」を意味する。この出願において、「または」の使用は、他に述べなければ、「および/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(include)」および「含まれる(included)」のような他の形式の使用は、制限しない。
【0012】
本明細書中で使用される段落の見出しは、組織化の目的のみのためであり、そして記載される内容を制限すると解釈されない。特許、特許出願、論文、書籍、および専門書を含むがこれに限らない、この出願において引用される、全ての文書、または文書の部分は、本明細書によって明確にあらゆる目的のためにその全体として参考文献に組み込まれる。1つまたは複数の組み込まれた文書が用語を定義し、それがこの出願における用語の定義と矛盾する場合、この出願が統制する。
【0013】
いくつかの定義
本明細書中で使用される場合、「粗製サンプル」という用語は、核酸を含むことが推測される、生物学的起源の標本を指し、それはそれらの核酸の単離または精製のための手順を経ていない。例えば、血液のサンプルは粗製サンプルである。粗製サンプル中の細胞を、必要に応じて溶解し得る。さらに、FTA紙(Whatmanから市販で入手可能)のような、溶解試薬を含む紙にスポットした血液のサンプルは、粗製サンプルである。頬細胞の口腔スワブは、粗製サンプルの別の例である。粗製サンプルは、血液、希釈した血液、紙上の血液、口腔スワブ、およびFTA紙のような、サンプル保存のための基質上の口腔スワブを含むがこれに限らない。当業者は、非常に多数の様々な他の粗製サンプルを認識し、その分析は本教示によって促進されるであろう。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「直接緩衝剤」という用語は、粗製サンプルを入れることができる緩衝剤を指す。その直接緩衝剤は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような、下流の酵素的操作を行うためのプライマーおよび酵素を含む。その直接緩衝剤は、いかなる核酸単離または精製の必要無しに、核酸の遊離、および直接緩衝剤中で直接の増幅を可能にする。実例となるPCRのサイクリング時間および温度を、Sambrookら、Molecular Cloning、第3版、1993において見出し得る。本教示は、PCRのための直接緩衝剤の使用に焦点を合わせるが、当業者は、本教示の直接緩衝剤を、他の型の下流の酵素的操作、例えば逆転写酵素を用いた逆転写、またはリガーゼを用いたオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイのための着手段階の手順として、容易に採用し得ることを認識する。
【0015】
本明細書中で使用される「下流」は、標的核酸に対して行われる方法および操作に関して使用される場合、核酸を細胞から遊離するための細胞の溶解を含むがこれに限らない、生物学的サンプルから核酸を遊離するための方法に続いて標的核酸サンプルに対して行われる方法および操作を指す。
【0016】
本明細書中で使用される「下流の酵素的操作」は、ポリメラーゼを用いたPCR、逆転写酵素を用いた逆転写、またはリガーゼを用いたオリゴヌクレオチドライゲーションアッセイを含むがこれに限らない、核酸サンプルに対して行われる手順を指す。
【0017】
本明細書中で使用される「強アルカリ性化合物」という用語は、NaOHを含むがこれに限らない。強アルカリ性化合物を、直接緩衝剤のいくつかの実施態様の添加の前に細胞を溶解するために使用し得る。
【0018】
本明細書中で使用される「ゲノムDNA」という用語は、非翻訳領域ならびに翻訳領域のDNA配列を含む、遺伝子または遺伝子のセグメントの染色体DNA配列を指す。ゲノムDNAはまた、細胞または染色体から直接単離されたDNAまたはそのようなDNAの全てまたは一部のクローニングされたコピーを指す。
【0019】
本明細書中で使用される「対立遺伝子」という用語は、遺伝子またはDNAのセグメントと関連する遺伝的変異、すなわち同じ遺伝子座を占める2つまたはそれを超える代替形式のDNA配列の1つを指す。
【0020】
本明細書中で使用される「遺伝子座」という用語は、染色体または核酸分子における特定の位置を指す。遺伝子座の対立遺伝子は、相同染色体の同じ部位に位置する。
【0021】
本明細書中で使用される「短いタンデム反復(STR)遺伝子座」という用語は、長さが3から7塩基対の短い反復性の配列エレメントを含む、ヒトゲノムの任意の領域を指す。
【0022】
本明細書中で使用される「短いタンデム反復(STR)を含むゲノム遺伝子座」という用語は、STR遺伝子座を指し、ここでゲノムDNAの特定の領域における反復配列エレメントの数(および配列の全体の長さ)は、対立遺伝子ごと、および個人ごとに異なる。
【0023】
本明細書中で使用される「増幅プライマー」および「プライマー」という用語は、オリゴヌクレオチドを指し、それは標的配列に隣接するRNAまたはDNA領域に、部位特異的にアニーリングし得、そしてプライマー伸長産物の合成が誘導される、適当な条件下で、例えばヌクレオチドおよびDNA依存性DNAポリメラーゼのような重合誘導薬剤の存在下で、そして適当な温度、pH、金属濃度、および塩濃度において、DNA合成の開始プライマーとして作用し得る。典型的には、PCR反応は、「上流」または「順方向」プライマーおよび「下流」または「逆方向」プライマーを含む、「プライマーペア」としても公知である、増幅プライマーのペアを用い、それは増幅されるRNAまたはDNAの領域の限界を決める。
【0024】
本明細書中で使用される「増幅する」という用語は、核酸の一部を、例えば広い範囲のプライマー伸長反応のいずれかを用いて複製する過程を指す。代表的なプライマー伸長反応は、PCRを含むがこれに限らない。特に明記しない限り、「増幅する」は単回の複製または算術的、対数的、または指数的増幅を指す。
【0025】
本明細書中で使用される「アンプリコン」および「PCRアンプリコン」という用語は、直線的または指数的のいずれかで、ポリヌクレオチド配列を増加させるための広い範囲の技術を指し、そして増幅反応の産物であり得る。アンプリコンは、二本鎖または一本鎖であり得、そして二本鎖増幅産物を変性することによって得られた分離した成分の鎖を含み得る。ある特定の実施態様において、1回の増幅サイクルのアンプリコンが、続く増幅サイクルの鋳型として働き得る。代表的な増幅技術は、PCRまたはプライマー伸長工程を採用するあらゆる他の方法を含むがこれに限らない。増幅の他の制限しない例は、リガーゼ検出反応(LDR)およびリガーゼ連鎖反応(LCR)を含むがこれに限らない。増幅方法は、熱サイクリングを含み得る、または等温で行い得る。様々な実施態様において、「増幅産物」という用語は、増幅反応のあらゆるサイクル数からの産物を含む。
【0026】
本明細書中で使用される「核酸配列」という用語は、核酸物質そのものを指し得、そして生化学的に特定の核酸、例えばDNAまたはRNA分子を特徴付ける、配列情報(すなわち、5つの塩基の文字、A、C、G、T、またはUから選択される文字の連続)に限定されない。
【0027】
本明細書中で使用される「ポリヌクレオチド」、「核酸」、または「オリゴヌクレオチド」という用語は、ヌクレオシド間結合によって連結した、デオキシリボ核酸、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、ポリアミド核酸等を含む、天然または修飾モノマーまたは結合の直鎖状ポリマーを指し、そしてワトソン−クリック型の塩基対形成のような、モノマー対モノマーの相互作用の通常のパターンによって、標的ポリヌクレオチドに特異的に結合する能力を有し、そして鋳型による反応において、別のオリゴヌクレオチドへライゲーションし得る。通常、モノマーはホスホジエステル結合またはそのアナログによって結合して、数個のモノマー単位、例えば3〜4個のモノマー単位から、数百のモノマー単位までの範囲のサイズのオリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチドのようなポリヌクレオチドを、「ATGCCTG」などの文字の配列によって表す場合はいつでも、他に示さなければ、そのヌクレオチドは左から右へ5’→3’の順であり、そして「A」はデオキシアデノシンを意味し、「C」はデオキシシチジンを意味し、「G」はデオキシグアノシンを意味し、そして「T」はデオキシチミジンを意味することが理解される。当該分野において標準であるように、文字A、C、G、およびTを、塩基自体、ヌクレオシド、または塩基を含むヌクレオチドを指すために使用し得る。天然に存在するポリヌクレオチドにおいて、ヌクレオシド間結合は、典型的にはホスホジエステル結合であり、そしてそのサブユニットは「ヌクレオチド」と呼ばれる。
【0028】
本明細書中で使用される「配列決定(sequence determination)」、「ヌクレオチド塩基配列を決定する」、「配列決定(sequencing)」、同定および同様の用語は、部分的および完全な配列情報の決定を含む。すなわち、その用語は、配列の比較、フィンガープリンティング、および標的ポリヌクレオチドについての同様のレベルの情報、および目的の領域内の標的ポリヌクレオチドの各ヌクレオシドの明白な同定および順序付けを含む。ある特定の実施態様において、「配列決定」は、単一ヌクレオチドの同定を含み、一方他の実施態様において、1超のヌクレオチドを同定する。ヌクレオシド、ヌクレオチド、および/または塩基の同定は、本明細書中で等価であると考えられる。ポリヌクレオチドに対する配列決定の実施は、典型的には完全に相補的なポリヌクレオチドの配列に関する等価な情報を生じ、そして従って完全に相補的なポリヌクレオチドに対して直接行った配列決定と等価であることに留意する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、オリゴヌクレオチドプローブに関して「複数」は、2つまたはそれを超えるオリゴヌクレオチドプローブのセットを含み、ここで通常標的ポリヌクレオチドの非可変性領域に特異的な、単一の「共通」オリゴヌクレオチドプローブ、および通常配列に対立遺伝子または突然変異の変異体を含む標的ポリヌクレオチドの領域に特異的な、1つまたは複数の「野生型」および/または「突然変異体」オリゴヌクレオチドプローブが存在し得る。
【0030】
本明細書中で使用される「核酸ポリメラーゼ」または「ポリメラーゼ」は、存在するポリヌクレオチドを鋳型として使用する、ポリヌクレオチドの合成を触媒する任意のポリペプチドを指す。
【0031】
本明細書中で使用される「DNAポリメラーゼ」は、存在するポリヌクレオチドを鋳型として使用する、DNAの合成を触媒する核酸ポリメラーゼを指す。
【0032】
詳細な説明
Tris−HCl、KCl、dNTP、BSA、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ、MgCl、および一本鎖結合タンパク質(SSB)、グリセロール、および非イオン性界面活性剤を含む、所望の直接緩衝剤の各成分の濃度をそれぞれ変えて、多数の実験を行った。これらの実験は、例えばフミン酸を、分析するのが困難な生物学的物質のサンプルに典型的に存在する阻害剤の代表として使用し、そして従って粗製サンプルの代用物を容易に産生するのに役立った。これらの実験の結果は、以下の処方が、サンプルを分析してSTR対立遺伝子を同定する場合に、高い品質の結果を生じるために特に有効であったことを示した。
【0033】
本教示は、3%〜8%のグリセロール、0.2%〜0.9%の非イオン性界面活性剤、および1200〜3000μg/mlのBSAを含む直接緩衝剤を含む。
【0034】
本教示は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%の非イオン性界面活性剤、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む直接緩衝剤を含む。
【0035】
いくつかの実施態様において、その非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(Tween、Tween20)、Triton−X100等であり得る。
【0036】
直接緩衝剤において使用される試薬は、容易に商業的供給業者から入手可能である。例えば、DNAポリメラーゼは、Applied Biosystemsから市販で入手可能である。適当なDNAポリメラーゼは、PolA、PolB、PolC、PolD、PolX、およびPolY DNAポリメラーゼおよびI型、II型、およびIII型DNAポリメラーゼを含む。一般的に、Taq、Pfu、VentTMDeepVentTM、9°NorthTMのような、熱安定性のDNAポリメラーゼをPCRにおいて使用する。DNAポリメラーゼを、続く処理、例えば加熱の前には不活性であるように修飾し得る;例えば米国特許第5,773,258号(化学修飾されたDNAポリメラーゼ)、米国特許第5,338,671号(抗体結合DNAポリメラーゼ)を参照のこと。DNAポリメラーゼは、当業者に公知である。DNAポリメラーゼは、DNAを鋳型として使用するDNA依存性ポリメラーゼ、またはRNAを鋳型として使用する、逆転写酵素のようなRNA依存性ポリメラーゼを含む。
【0037】
配列相同性に基づいて、細菌のDNAポリメラーゼを、7つの異なるファミリー:A、B、C、D、X、Y、およびRTに細分し得る。DNA依存性DNAポリメラーゼは、6つのファミリー(A、B、C、D、X、およびY)のうち1つに入り、ほとんどは3つのファミリー(A、B、およびC)のうちの1つに入る。例えばItoら(1991)Nucleic Acids Res.19:4045−4057;Braithwaiteら(1993)Nucleic Acids Res.21:787−802;Fileeら(2002)J.Mol.Evol.54:763−773;およびAlba(2001)Genome Biol.2:3002.1−3002.4を参照のこと。ある特定のDNAポリメラーゼは、一本鎖ポリペプチド(例えばある特定のファミリーAおよびBポリメラーゼ)、またはサブユニットのうち1つがポリメラーゼ活性を有する、多サブユニットの酵素(例えばある特定のファミリーCポリメラーゼ)であり得る。同上文献。融合タンパク質は、ファミリーA、B、C、D、X、またはYポリメラーゼから選択されたDNAポリメラーゼを含み得る。
【0038】
ファミリーAポリメラーゼ(「PolA」)は、複製ポリメラーゼおよび修復ポリメラーゼの両方を含む。このファミリーの複製メンバーは、T7DNAポリメラーゼおよび真核生物ミトコンドリアDNAポリメラーゼyを含む。修復ポリメラーゼには、E.coli DNA PolI、Thermus aquaticus PolI(Taq DNAポリメラーゼ)、およびBacillus stearothermophilus PolIが含まれる。除去修復およびラギング鎖合成の間に産生される岡崎フラグメントのプロセッシングは、修復ポリメラーゼによって行われる。ほとんどの熱安定性PolA酵素は、3’から5’のエキソヌクレアーゼ活性を有さないので、それらは新規に合成された核酸鎖のプルーフリーディングができず、そして従って高いエラー率を有する。
【0039】
ファミリーBポリメラーゼ(「PolB」)は、主な真核生物DNAポリメラーゼα、δ、ε、およびDNAポリメラーゼζも含む、実質的に複製ポリメラーゼである。PolBポリメラーゼはまた、いくつかの細菌およびバクテリオファージによってコードされるDNAポリメラーゼを含み、そのうち最もよく特徴付けられているのはT4、Phi29およびRB69バクテリオファージ由来のものである。PolB酵素は、リーディングおよびラギング鎖両方の合成に関与し、そしてプルーフリーディング活性を欠くDNAポリメラーゼαおよびζを除いて、多くが強力な3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するので、複製の間のその著しい正確性に留意すべきである。
【0040】
BSAは、様々な供給元から、例えばRocheのカタログ番号10711454001から市販で入手可能である。FTA紙は、Whatmanから市販で入手可能である。いくつかの実施態様において、FTA紙は、本明細書中で血痕を用いて使用される。例えば、WhatmanのBloodstain Card(カタログ番号WB100014)。
【0041】
いくつかの実施態様において、血液または口腔細胞を含むFTA紙を切って、生物学的材料を含む小さい領域、例えば直径0.5mmから1.2mm、または直径1.0〜1.5mm、または直径1.5〜2.0mmの円形パンチを除去する。
【0042】
いくつかの実施態様において、その紙を、PCR反応のための直接緩衝剤を含むPCR混合物へ直接入れる。いくつかの実施態様において、FTA紙を直接緩衝剤へ入れる前に、FTA紙の洗浄は必要でない。
【0043】
いくつかの実施態様において、細胞を最初に溶解しない場合、例えば非FTA紙を使用する場合、直接緩衝剤と混合し、そしてPCR反応を行う前に、5〜25mMのNaOH溶液を、非FTAとインキュベートする。他の実施態様において、その細胞を、NaOH以外の試薬へ曝露させることによって溶解し得る。
【0044】
いくつかの実施態様において、その直接緩衝剤はさらに、複数のPCRプライマーペアを含む。例えば、いくつかの実施態様において、その直接緩衝剤は、5個のプライマーペアを含む。いくつかの実施態様において、その直接緩衝剤は、10個のプライマーペアを含む。いくつかの実施態様において、その直接緩衝剤は、10個超のプライマーペアを含む。いくつかの実施態様において、その直接緩衝剤は、PCRプライマーペアを含まないが、PCRプライマーペアを別々の時間に加える。
【0045】
本方法のいくつかの実施態様は、PCRを実施する前のサンプル精製手順の必要性を排除する。同じプロトコールを、FTAカード上の血液サンプルおよび口腔細胞サンプルの両方に適用し得る。それに加えて、物理的なサンプル取り扱いが著しく減り、従ってこれはサンプル間の可能性のある交差汚染を予防し得、ならびにヒューマンエラーの可能性を排除し得る。いくつかの実施態様において、FTAカードからSTRプロファイルまでに必要な時間を、少なくとも11/2時間減らし得る。その方法は、法医学的市場で入手可能な現在の自動化装置と適合性である。DNAのFTAからの精製に関するコストを排除し得る。従来の標準的サンプル調製方法と比較した場合、完全なSTRプロファイルを得る成功率は匹敵する。
【0046】
図1に示すように、Applied Biosystems Identifiler HIDv.1 Kitともに直接使用したゲノムDNAのサンプルは、完全なSTRプロファイルを提供する。しかし、ディスクを洗浄して次のサンプル試験(例えば直接PCRによるSTRプロファイリング)に干渉する物質を除去しなまま、ゲノムDNAをFTAディスクパンチ(1.2mmのパンチ)にスポットされた血液から取った場合、STRプロファイルは、部分的または検出不能のいずれかである、図2A−2Dを参照のこと。
【0047】
特許請求される発明および他からの市販で利用可能な製品の間のさらなる比較データは、全ての場合において、特許請求される発明の直接緩衝剤は、1.2mmサイズのパンチを用いてFTA紙にスポットされた10個の血液サンプルのうち10個において、直接PCRによって完全なSTRプロファイルを提供することを明らかにする(具体的には、図3〜12、「A」と示された電気泳動図)。別のSTRキットによって、試験した10個のサンプルのうち4つのみにおいて、完全なSTRプロファイルが見られ(図3B、4B、7B、および8B)、部分的なSTRプロファイルが試験した10個のサンプルのうち5個において見られ(図5B〜7Bおよび9B〜10B)、そして1つのサンプルにおいてはSTRプロファイルが見られなかった(図6B)。
【実施例】
【0048】
最初の実施例において、血液をFTA紙(Whatman)にアプライし、そして空気乾燥した。0.5mmのディスクパンチをFTA紙から作成し、そして市販で入手可能なIdentifiler(登録商標) Human Identity Kit(Applied Biosystems)由来のPCRプライマーを含む直接緩衝剤中に置いた。次いでPCRを行った。
【0049】
2番目の実施例において、TE緩衝液(10mMのTris−Clおよび0.1mMのEDTA、pH8.0)を用いて、血液の100倍希釈物を作成した。希釈した血液の1μlを使用して、直接緩衝剤中でのPCRを設定した。
【0050】
3番目の実施例において、口腔スワブサンプルを採取し、そして500μlのTE緩衝液内に置いた。得られた懸濁液を97℃で5分間加熱した。得られた懸濁液の10μlを使用して、直接緩衝剤中でPCRを設定した。
【0051】
本教示のいくつかの実施態様による代表的なキット
本教示はまた、ある特定の方法の実施を促進するためにデザインされたキットを提供する。いくつかの実施態様において、キットは、その方法の実施において使用される2つまたはそれを超える成分を集めることによって、目的の方法の実施を促進するのに役立つ。いくつかの実施態様において、キットは、末端使用者による測定の必要性を最小限にするために、前もって測定した単位量にある成分を含み得る。いくつかの実施態様において、キットは、本教示の1つまたは複数の方法を実施するための説明書を含み得る。ある特定の実施態様において、そのキットの成分は、お互いに組み合わせて操作するために最適化される。
【0052】
本教示は、これらの代表的な実施態様および実験データに関して記載されたが、当業者は、これらの代表的な実施態様の多数のバリエーションおよび修飾が、過度の実験無しに可能であることを容易に理解する。全てのそのようなバリエーションおよび修飾は、本教示の範囲内である。
【0053】
従って、いくつかの実施態様において、本教示は以下のものを含むキットを提供する:複数のプライマーペア、ここで各プライマーペアは短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接する;および直接緩衝剤、ここでその直接緩衝剤は10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%の非イオン性界面活性剤、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼを含む
【0054】
そのようなキットを、例えばキャピラリー電気泳動を用いて分析された多型性マイクロサテライトの収集によって、例えばヒトなどの生物の同定において使用し得る。そのようなヒト同定を実施するための説明的な手順を、例えばApplied Biosystemsから市販で入手可能なIdentifiler HIDキット、および米国特許第6,221,598、6,479,235、5,843,660、および7,008,771号において見出し得る。いくつかの実施態様において、本教示によって提供されるキット、方法および反応混合物を、例えばDimsoskiおよびWooに対するWO05054515において見出されるように、分解サンプルのマルチプレックスPCRのための手順と共に使用し得る。
【0055】
いくつかの実施態様において、キット中の直接緩衝剤は、0.2%〜0.9%のポリソルベート、3%〜8%のグリセロール、1200〜3000μg/mlのBSAを含む。
【0056】
いくつかの実施態様において、キット中の直接緩衝剤はさらに、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%のポリソルベート、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼを含む。
【0057】
いくつかの実施態様において、そのキット中の直接緩衝剤はさらに(feature)、5mM〜25mMのNaOHを含む。いくつかの実施態様において、そのNaOHは、直接緩衝剤とは別のバイアルで供給される。
【0058】
特許、特許出願、論文、書籍、専門書、およびインターネットのウェブページを含むがこれに限らない、本出願において引用された全ての文献および同様の資料は、そのような文献および同様の資料の形態に関わらず、あらゆる目的のためにその全体として明確に参考文献に組み込まれる。2007年3月23日に出願された米国特許出願番号第60/896,668号、2007年5月17日に出願された米国特許出願番号第11/750,316号、および2008年3月24日に出願された米国特許出願番号第12/054,174号は、それらが含む全てに関して、その全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0059】
本教示は、様々な実施態様に関して記載されるが、本教示がそのような実施態様に制限されることを意図しない。対照的に、本教示は、当業者によって認識されるように、様々な代替物、修飾、および同等物を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う方法であって、該方法は:
デオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;
該粗製サンプルをNaOHと必要に応じてインキュベートする工程;
該粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程;および
該核酸を含む溶液に対してPCRを行う工程を含み、該直接緩衝剤は、少なくとも0.2%〜0.9%のポリソルベート、3%〜8%のグリセロール、および1000〜3000μg/mlのBSA
を含む、方法。
【請求項2】
前記直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、100〜350μMの各dNTP、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート20である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒトのアイデンティティーを決定する方法であって、該方法は:
ヒト由来のデオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;
該粗製サンプルをNaOHと必要に応じてインキュベートする工程;
該粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程であって、ここで該直接緩衝剤は、複数のプライマーペアを含み、ここで各プライマーペアは、短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接する、工程;
該核酸を含む溶液に対してPCRを行って、複数のPCRアンプリコンを形成する工程であって、ここで各PCRアンプリコンは、確認可能なサイズを有する、工程;および
該PCRアンプリコンのサイズを参照することによって該ヒトを同定する工程を含み、ここで該直接緩衝剤は、0.2%〜0.9%のポリソルベート、3%〜8%のグリセロール、および1000〜3000μg/mlのBSAをさらに含む、方法。
【請求項5】
前記直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、100〜350μMの各dNTP、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート20である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
核酸を調製する方法であって、該方法は:
デオキシリボ核酸を含む粗製サンプルを提供する工程;
該粗製サンプルをNaOHと必要に応じてインキュベートする工程;
該粗製サンプルを直接緩衝剤と混合して、核酸を含む溶液を形成する工程;
該溶液に対して下流の酵素的操作を行う工程を含み、該直接緩衝剤は、0.2%〜0.9%のポリソルベート、3%〜8%のグリセロール、および1000〜3000μg/mlのBSAを含む、方法。
【請求項8】
前記下流の酵素的操作はPCRである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、100〜350μMの各dNTP、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、100〜350μMの各dNTP、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート20である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
以下:
複数のプライマーペアであって、各プライマーペアは、短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接する、プライマーペア;および
0.2%〜0.9%のポリソルベート、3%〜8%のグリセロール、および1000〜3000μg/mlのBSAを含む、直接緩衝剤、
を含む、キット。
【請求項13】
前記直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、100〜350μMの各dNTP、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼをさらに含む、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記ポリソルベートは、ポリソルベート20である、請求項12に記載のキット。
【請求項15】
直接緩衝剤および複数のプライマーペアを含む反応混合物であって、
各プライマーペアは、短いタンデム反復(STR)を含む遺伝子座に隣接し、そして
該直接緩衝剤は、10〜50mMのTris−HCl(pH8.3)、30〜80mMのKCl、1.4〜2.4mMのMgCl、0.01%〜0.04%のアジ化ナトリウム、3%〜8%のグリセロール、100〜350μMの各dNTP、0.2%〜0.9%のポリソルベート20、1200〜3000μg/mlのBSA、および0.10〜0.35U/μlのDNAポリメラーゼを含む、反応混合物。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−526788(P2011−526788A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516834(P2011−516834)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/049323
【国際公開番号】WO2010/002938
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(511004586)ライフ テクノロジーズ コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】