説明

粘度指数向上剤及び潤滑油組成物

【課題】粘度指数向上効果が高く、かつ耐金属疲労性及び耐金属磨耗性に優れた粘度指数向上剤を提供する。
【解決手段】炭素数1〜36のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル(a)並びに水酸基含有単量体(b1)、カルボキシル基含有単量体(b2)、リン酸エステル基含有単量体(b3)、ホスホノ基含有単量体(b4)、アミノ基含有単量体(b5)、アミド基含有単量体(b6)、チオール基含有単量体(b7)及びスルホン酸基含有構成単位(b8)からなる群から選ばれる1種以上の単量体(b)を必須構成単量体としてなり、単量体(b)の平均側鎖長(sb)と単量体(a)の平均側鎖長(sa)の比[(sb)/(sa)]が0.1〜12.0である共重合体(A)を含有してなる粘度指数向上剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤及び潤滑油組成物に関する。更に詳しくは、(メタ)アクリル酸アルキル及び極性基含有単量体を必須構成単量体としてなる共重合体からなる粘度指数向上剤及び前記粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性の向上がより一層要求されてきており、潤滑油に求められる性能もより高度なものになっている。特に潤滑油の低粘度化は粘性抵抗低減による省燃費化の有効な手段の一つである。潤滑油を低粘度化するには低粘度の基油を用いるのが有効な方法であるが、単純な低粘度化は耐金属疲労性や耐金属摩耗性を悪化させるため、低粘度の基油と高粘度の基油をブレンドすることにより、耐金属疲労性を改善させることが提案されている(特許文献1)。しかしながら、低粘度の基油と高粘度の基油のブレンドによっても、潤滑油の耐金属疲労性や耐金属摩耗性の向上効果は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−113391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粘度指数向上効果が高く、かつ耐金属疲労性及び耐金属磨耗性に優れた粘度指数向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、炭素数1〜3
6のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル(a)並びに水酸基含有単量体(b
1)、カルボキシル基含有単量体(b2)、リン酸エステル基含有単量体(b3)、ホスホノ基含有単量体(b4)、アミノ基含有単量体(b5)、アミド基含有単量体(6)、チオール基含有単量体(b7)及びスルホン酸基含有構成単位(b8)からなる群から選ばれる1種以上の単量体(b)を必須構成単量体としてなり、単量体(b)の平均側鎖長(sb)と単量体(a)の平均側鎖長(sa)の比[(sb)/(sa)]が0.1〜12.0である共重合体(A)を含有してなる粘度指数向上剤;10〜90重量%の前記粘度指数向上剤及び10〜90重量%の希釈剤を含有してなる粘度指数向上剤組成物;基油と、前記粘度指数向上剤又は粘度指数向上剤組成物とを含有し、基油が100℃で2〜5mm2/sの動粘度を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を1〜30重量%含有してなる潤滑油組成物;である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果が高く、かつ耐金属疲労性及び耐金属磨
耗性に優れる、といった効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粘度指数向上剤は、炭素数1〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸
アルキル(a)並びに水酸基含有単量体(b1)、カルボキシル基含有単量体(b2)、リン酸エステル基含有単量体(b3)、ホスホノ基含有単量体(b4)、アミノ基含有単量体(b5)、アミド基含有単量体(b6)、チオール基含有単量体(b7)及びスルホン酸基含有構成単位(b8)からなる群から選ばれる1種以上の単量体(b)を必須構成単量体としてなり、単量体(b)の平均側鎖長(sb)と単量体(a)の平均側鎖長(sa)の比[(sb)/(sa)]が0.1〜12.0である共重合体(A)を含有してなる。
【0008】
本発明における炭素数1〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル(a
)としては、炭素数1〜36の直鎖又は分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられるが、粘度指数向上効果、耐金属疲労性及び耐金属磨耗性の観点から、(a)のアルキル基の炭素数の違いにより分類した以下の(a1)〜(a4)の1種以上を併用するのが好ましい。なお、本発明における「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0009】
(a1):炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;
アルキル基として直鎖又は分岐のものが含まれる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル及び(メタ)アクリル酸−t−ブチル等が挙げられる。(a1)のうち、粘度指数向上効果、耐金属疲労性及び耐金属磨耗性の観点から好ましいのは、(メタ)アクリル酸メチルである。
【0010】
(a2):炭素数5〜17のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;
アルキル基としては直鎖又は分岐のものが含まれる。具体的には、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸イソへプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−n−イソオクチル、(メタ)アクリル酸−n−デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸−n−ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル、(メタ)アクリル酸−n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸イソテトラデシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸−2−メチルペンタデシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプタデシル及び(メタ)アクリル酸イソヘプタデシル等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上効果、耐金属疲労性及び耐金属磨耗性の観点から好ましいのは、アルキル基が炭素数7〜17の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルであり、更に好ましいのは炭素数10〜17の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル、特に好ましいのは炭素数12〜17の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルである。
【0011】
(a3):炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;具体的には、(メタ)アクリル酸−n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸−n−ノナデシル、(メタ)アクリル酸−n−イコシル、(メタ)アクリル酸−n−ドコシル及び(メタ)アクリル酸−n−テトラコシル等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、炭素数18〜20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルであり、更に好ましいのは(メタ)アクリル酸−n−オクタデシルである。
【0012】
(a4):炭素数18〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;
(a4)の炭素数18〜36の分岐アルキル基としては、以下の基が挙げられる。
(a41)炭素数14〜15のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−アルキル(炭素数2〜18)−ヘキサデシル基(例えば1−オクチルヘキサデシル基等)及び2−アルキル(炭素数1〜16)−オクタデシル基(例えば2−エチルオクタデシル基、2−テトラデシルオクタデシル基及び2−ヘキサデシルオクタデシル基等);
(a42)炭素数12〜13のポリメチレン基を有する基:
例えば、1−アルキル(炭素数4〜20)−テトラデシル基(例えば1−ヘキシルテトラデシル基、1−デシルテトラデシル基及び1−ウンデシルトリデシル基等)及び2−アルキル(炭素数2〜18)−ヘキサデシル基(例えば2−エチルヘキサデシル基及び2−ドデシルヘキサデシル基等);
(a43)炭素数9〜11のポリメチレン基を有する基:
例えば1−アルキル(炭素数6〜22)−ドデシル基(例えば1−オクチルドデシル基等)、2−アルキル(炭素数6〜22)−ドデシル基(例えば2−ヘキシルドデシル基及び2−オクチルドデシル基等)及び2−アルキル(炭素数4〜20)−テトラデシル基(例えば2−ヘキシルテトラデシル基及び2−デシルテトラデシル基等);
(a44)炭素数5〜8のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−アルキル(炭素数8〜24)−デシル基(例えば2−オクチルデシル基等)及び2,4−ジアルキル(炭素数4〜23)−デシル基(例えば2,4−ジブチル−デシル基等);
(a45)炭素数1〜4のポリメチレン基を有する基:
例えば、2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシル基及び2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基等;
(a46)分岐アルキル基の2個又はそれ以上の混合物:
例えば、プロピレンオリゴマー(6〜11量体)、エチレン/プロピレンオリゴマー(モル比16/1〜1/11)、イソブテンオリゴマー(5〜8量体)及び炭素数5〜17のα−オレフィンオリゴマー(2〜6量体)等に対応するオキソアルコールのアルキル残基。2−イソオクチルイソドデシル基{「ファインオキソコール2000」[日産化学工業(株)製]の水酸基を除いた残基}、2−イソウンデシルイソペンタデシル基{「ファインオキソコール2600」[日産化学工業(株)製]の水酸基を除いた残基}。
【0013】
前記(a41)〜(a46)のアルキル基のうちで好ましいのは、(a43)及び(a
44)であり、更に好ましいのは2−直鎖アルキル(炭素数8〜10)−直鎖アルキル(炭素数12〜14)基である。
【0014】
(a4)の具体例としては、(メタ)アクリル酸−2−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸−2−デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸−1−オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸−2−ヘキシルドデシル、(メタ)アクリル酸−2−ヘキシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸−1−ヘキシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸−1−デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸−1−ウンデシルトリデシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキサデシル及び(メタ)アクリル酸−2−ドデシルヘキサデシル等が挙げられる。
【0015】
(a)が(a1)〜(a4)からなる群から選ばれる1種以上である場合の(a1)〜(a4)それぞれの含有率は以下の通りである。(a1)は、(a)の重量に基づき、粘度指数向上効果の観点から好ましくは0〜50重量%であり、更に好ましくは10〜40重量%である。(a2)は、(a)の重量に基づき、粘度指数向上効果の観点から好ましくは0〜90重量%であり、更に好ましくは0〜50重量%である。(a3)は、(a)の重量に基づき、粘度指数向上効果の観点から好ましくは0〜50重量%であり、更に好ましくは0〜30重量%である。(a4)は、(a)の重量に基づき、粘度指数向上効果の観点から好ましくは0〜90重量%であり、更に好ましくは0〜70重量%である。
【0016】
本発明における単量体(b)としては、水酸基含有単量体(b1)、カルボキシル基含有単量体(b2)、リン酸エステル基含有単量体(b3)、ホスホノ基含有単量体(b4)、アミノ基含有単量体(b5)、アミド基含有単量体(b6)、チオール基含有単量体(b7)及びスルホン酸基含有単量体(b8)からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0017】
水酸基含有単量体(b1)としては、以下の(b11)〜(b16)が挙げられる。
(b11)水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル:
(b111)一般式(2)で示される(メタ)アクリル酸エステル;
CH=C(R)−COO−(AO)−H (1)
式中、Rは水素原子又はメチル基、AOは炭素数2〜8のオキシアルキレン基、rは1〜20(好ましくは1〜10)の数であり、具体的には、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエトキシエチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート[一般式(1)におけるr=2〜20である化合物]、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート[一般式(1)におけるr=2〜20である化合物]及びポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート[一般式(1)におけるr=2〜20である化合物]等が挙げられる。
(b112)3〜8個の水酸基を含有する多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;
3〜8価アルコール(例えばグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、蔗糖及びメチルグルコシド等)と(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられ具体的には、(メタ)アクリル酸のグリセリンモノ−又はジエステル、(メタ)アクリル酸のトリメチロールプロパンモノ−又はジエステル及び(メタ)アクリル酸の蔗糖エステル等が挙げられる。
(b12)炭素数2〜12のアルケノール;
ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)及び炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、(イソ)プロペニルアルコール、クロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、1−ブテン−4−オール、1−オクテノール、1−ウンデセノール及び1−ドデセノール等]。
(b13)炭素数4〜12のアルケンジオール;
2−ブテン−1,4−ジオール等。
(b14)炭素数3〜12のアルケニル基を有する水酸基含有アルケニルエーテル;
例えばヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜12)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び(b112)で例示した3〜8価アルコールのアルケニル(炭素数3〜12)エーテル[トリメチロールプロパンモノ−又はジ−(メタ)アリルエーテル及び蔗糖(メタ)アリルエーテル等]。
(b15)水酸基含有芳香族単量体;
o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン等。
(b16)(b11)〜(b15)の(ポリ)オキシアルキレンエーテル;
(b11)〜(b15)の単量体が有する水酸基のうちの少なくとも1個が−O−(AO)−Hで置換された単量体[ただし、AO及びrは一般式(1)におけるAO及びrと同様である。]。
【0018】
(b1)のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは(b11)、(b12)、(b14)、(b15)及び(b16)であり、更に好ましいのは(b11)であり、特に好ましいのは(b111)であり、最も好ましいのはポリエチレングリコールモノメタクリレート[一般式(1)におけるr=2〜20である化合物]である。
【0019】
カルボキシル基含有単量体(b2)としては、以下の(b21)〜(b23)が挙げられる。
(b21)不飽和モノカルボン酸[メタクリル酸、アクリル酸、(イソ)クロトン酸及びシンナミック酸等]。
(b22)不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸等]
(b23)不飽和ジカルボン酸のモノ(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノエチルエステル、フマル酸モノメチルエステル及びイタコン酸モノエチルエステル等]。
【0020】
リン酸エステル基含有単量体(b3)としては、リン酸モノアルケニル(炭素数2〜12)エステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]、(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜12)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート等]、ポリ(n=2〜20)オキシエチレンモノ(メタ)アクリル酸エステルのリン酸エステル、リン酸ビニルモノアルキル(炭素数1〜24)エステル[リン酸ビニルモノメチルエステル及びリン酸ビニルモノエチルエステル等]、リン酸ビニルジアルキル(炭素数1〜24)エステル[リン酸ビニルジメチルエステル及びリン酸ビニルジエチルエステル等]及び(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜12)リン酸エステルのアルキル(炭素数1〜24)エステル[(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数1〜12)リン酸エステルのモノメチルエステル等]等が挙げられる。
【0021】
ホスホノ基含有単量体(b4)としては、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2〜4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2〜12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0022】
アミノ基含有単量体(b5)としては、以下の(b51)〜(b53)が挙げられる。
(b51)1級アミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸アミノアルキル(炭素数1〜8)[(メタ)アクリル酸アミノエチル及び(メタ)アクリル酸アミノプロピル等]、(メタ)アクリルアミド[N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド等]及びモノアルケニルアミン[モノアリルアミン等]等。
(b52)2級アミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸−N−アルキル(炭素数1〜6)アミノアルキル(炭素数2〜6)エステル[(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸−N−エチルアミノエチルエステル及び(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチルエステル等]、複素環アミノ基含有ビニル単量体[(メタ)アクリル酸モルホリノエチル、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びN−ビニルピロール等]及びジアリルアミン等が挙げられる。
(b53)3級アミノ基含有単量体;
(メタ)アクリル酸−N−ジアルキル(炭素数1〜8)アミノアルキル(炭素数2〜6)エステル[(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチルエステル及び(メタ)アクリル酸−N,N−ジ−t−ブチルアミノエチルエステル等]等が挙げられる。
【0023】
アミド基含有単量体(b6)としては、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド[N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド及びN−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等]及びN,N−ジアルキル(炭素数1〜6)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド及びN,N−ジ−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等]等が挙げられる。
【0024】
チオール基含有単量体(b7)としては、アリルメルカプタン及び(メタ)アクリル酸−2−メルカプトエチル等が挙げられる。
【0025】
スルホン酸含有単量体(b8)としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸及び2−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0026】
本発明における単量体(a)及び単量体(b)の平均側鎖長とは、各単量体の側鎖長を、各単量体(a)、(b)単位のモル分率に基づいて算出平均したものを意味する。ここで、単量体の側鎖長とは、単量体単位の水素原子と主鎖原子を除いた、主鎖から側鎖方向に数えて最も長い分子鎖における水素原子以外の原子の数の和を意味する。以下に、メタクリル酸−2−デシルテトラデシル、メタクリル酸メチル、HEMA及びメタクリル酸の側鎖長を例示する。
【0027】
2−デシルテトラデシルメタクリレートの側鎖長:16(左肩の数字参照)
【0028】
【化1】

【0029】
メタクリル酸メチルの側鎖長:3(左肩の数字参照)
【0030】
【化2】

【0031】
HEMAの側鎖長:5(左肩の数字参照)
【0032】
【化3】

【0033】
メタクリル酸の側鎖長:2(左肩の数字参照)
【0034】
【化4】

【0035】
メタクリル酸−2−デシルテトラデシル(a4)/メタクリル酸メチル(a1)/HE
MA(b1)/メタクリル酸(b3)=40/50/6/4(モル比)の共重合体(A)
における、単量体(a)、単量体(b)の平均側鎖長の算出例を以下に示す。
単量体(a4):単量体(a4)のモル比=40/50=44.4:55.6
単量体(a)の平均側鎖長(as)=16×0.444+3×0.556=8.77
単量体(b1):単量体(b3)のモル比=6/4=60:40
単量体(b)の平均側鎖長(bs)=5×0.60+2×0.40=3.80
【0036】
本発明における単量体(b)の平均側鎖長(sb)と単量体(a)の平均側鎖長(sa)の比[(sb)/(sa)]は通常0.1〜12.0であり、好ましくは0.4〜8.0、更に好ましくは0.7〜5.0である。[(sb)/(sa)]が0.1より小さいと、共重合体(A)における単量体(a)単位が占める部分が多くなり、共重合体(A)が有する単量体(b)単位による金属表面への吸着効率が悪くなり、耐金属疲労性及び耐金属摩耗性が低下する。12.0を超えると、粘度指数向上効果が著しく低下するため好ましくない。
【0037】
本発明における共重合体(A)は、構成単量体として、(a)及び(b)以外に、更に1種以上のその他の単量体(c)を含有してもよい。
【0038】
その他の単量体(c)としては、不飽和炭化水素(炭素数2〜20)(エチレン、プロピレン、イソブテン、ブテン、ジイソブチレン、ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン及びスチレン等)、アルキル(炭素数1〜10)又はアリール(炭素数6〜8)ビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)、エポキシ基含有不飽和単量体[(メタ)アクリル酸グリシジルエステル及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等]、ハロゲン原子含有不飽和単量体(塩化ビニル及び塩化ビニリデン等)、アルキル(炭素数1〜10)アルケニル(炭素数2〜10)エーテル[メチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル及びメチル(イソ)プロペニルエーテル等]、アルケニルカルボキシレート{アルケニル(炭素数2〜10)カルボキシレート(炭素数1〜20)[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル及びn−オクタン酸ビニル等(好ましいのは酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル)]等}、(b5)以外の窒素原子含有不飽和単量体{第4級アンモニウム塩基含有単量体[前記アミノ基含有単量体(b5)の4級化によって得られる第4級アンモニウム塩等]}及びニトリル基又はニトロ基含有単量体[(メタ)アクリロニトリル及びニトロスチレン等]及び不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びシトラコン酸等)ジアルキル(炭素数1〜40)エステル(マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、イタコン酸ジメチル及びイタコン酸ジエチル等)等]が挙げられる。
【0039】
共重合体(A)は、粘度指数向上効果、耐金属疲労性及び耐金属磨耗性の観点から、(A)の重量に基づいて、下記の表1に示した重量%の構成単量体を含有するのが好ましい。以下において%は、特に限定しない限り重量%を表す。
【0040】
【表1】

【0041】
共重合体(A)の重量平均分子量(以下、Mwと略記する。)は、好ましくは5,000〜800,000である。Mwは、ポリスチレンを標準としたゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。Mwが5,000以上であれば粘度指数向上効果が向上し、800,000以下であれば耐金属疲労性及び耐金属磨耗性が更に良好となる。更に共重合体(A)のMwの好ましい範囲は、潤滑油組成物の用途によっても異なり、下記の表2に記載の範囲である。共重合体(A)のMwは、重合時の温度、単量体濃度(溶媒濃度)、触媒量又は連鎖移動剤量等の重合条件を調整することにより調整可能である。
【0042】
【表2】

* : オートマチックトランスミッション油
** : ベルト−コンティニュアスリーバリュアブルトランスミッション油
*** : マニュアルトランスミッション油
【0043】
本発明における共重合体(A)は、油溶性であることが好ましい。ここで油溶性とは、25℃の鉱物油100部(「YUBASE2」SKコーポレーション製)に、少なくとも0.5部の(A)が透明に溶解することを意味する。
【0044】
本発明における共重合体(A)は、酸化鉄への吸着試験における、下記式(1)で定義
される吸着INDEXが好ましくは1.5以上であり、更に好ましくは2以上、特に好ま
しくは2.5以上である。吸着INDEXが1.5以上であれば、耐金属疲労性が向上す
る。吸着INDEXとは、共重合体(A)の酸化鉄への吸着性を表しており、共重合体(A)が高分子であることから、吸着前後の共重合体溶液の粘度変化によって金属表面に吸着された共重合体の量の尺度とすることができると考えられる。吸着INDEXが大きいほど金属表面近傍での共重合体(A)の濃度が高くなり、局部的に粘度が上がるため、油膜厚が向上し耐金属疲労性が向上すると考えられる。
【0045】
【数1】

【0046】
吸着試験前後の40℃動粘度は、以下の方法で測定したものである。
(1)基油[「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製、100℃動粘度:2.3mm2/s。40℃動粘度:8.06mm2/s]180部に、共重合体(A)20部を添加し、均一になるまで撹拌して評価油を調製する。
(2)評価油の40℃での動粘度(吸着試験前40℃動粘度)をJIS−K−2283の方法で測定する。
(3)評価油100部に酸化鉄(2価及び3価の混合物)(アルドリッチ社製の試薬、平均粒子径:5μm以下)10部を加え、80℃で2時間撹拌後ろ紙でろ過し、ろ液の40℃での動粘度(吸着試験後40℃動粘度)を測定する。
(4)前記式(1)で吸着INDEXを小数点以下1桁まで算出する。
【0047】
<計算例>
吸着前40℃動粘度=10.68mm2/s、
吸着後40℃動粘度=10.61mm2/s、
基油[「ダイアナフレシアW−8」出光興産(株)製の40℃動粘度=8.06mm2
s];
【0048】
【数2】

【0049】
吸着INDEXは、共重合体(A)を構成する単量体(a1)及び/又は(b)の比
率を増やすことにより上げることができ、比率を減らすことにより下げることができる。
【0050】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができる。例えば前記の単量体(a)及び単量体(b)を、溶媒中で重合触媒存在下にラジカル重合することにより得られる。
【0051】
溶媒としては、芳香族系溶媒(例えばトルエン、キシレン及び炭素数9〜10のアルキルベンゼン等)、炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びオクタン等)、炭素数3〜8のアルコール系溶媒(2−プロパノール、1−ブタノール及び2−ブタノール等)、ケトン系溶媒(メチルエチルケトン等)、エステル油及び鉱物油等が使用できる。これらのうち、共重合体(A)の溶解性の観点から好ましいのはアルコール系溶媒であり、更に好ましいのは2−プロパノールである。
【0052】
重合触媒としては、アゾ系触媒[例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(以下、AMBNと略記する。)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、ADVNと略記する。)及びジメチル2,2−アゾビスイソブチレート等]、過酸化物系触媒[例えばt−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ベンゾイルパーオキシド、クミルパーオキシド及びラウリルパーオキシド等]が使用できる。更に必要により、連鎖移動剤[例えば炭素数2〜20のアルキルメルカプタン等]を使用することもできる。
【0053】
ラジカル重合の重合温度は、通常50〜140℃であり、好ましくは60〜120℃である。
共重合体(A)は、前記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により得ることもできる。更に、共重合体の重合様式としては、ランダム付加重合又は交互共重合のいずれでもよく、また、グラフト共重合又はブロック共重合のいずれでもよい。
【0054】
本発明の粘度指数向上剤組成物は、10〜90重量%の本発明の粘度指数向上剤及び10〜90重量%の希釈剤を含有してなる。粘度指数向上剤をそのまま基油に添加するよりも、粘度指数向上剤組成物を添加する方が基油に溶解し易いという点で好ましい。粘度指数向上剤組成物としては、共重合体(A)を溶液重合で製造して得られた溶液状のもの、及び希釈剤中に共重合体(A)を溶解して得られるもの等が挙げられる。
【0055】
希釈剤としては、脂肪族系溶剤[炭素数6〜18の脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、オクタン、デカリン及び灯油等)]、芳香族系溶剤{例えば炭素数7〜15の芳香族系溶剤[トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族系混合溶剤(トリメチルベンゼン及びエチルトルエン等の混合物)及び炭素数10〜11の芳香族系混合溶剤等]等}、鉱物油(例えば溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油)並びに合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]等が挙げられる。これらのうち、粘度指数向上剤の溶解性の観点から好ましいのは鉱物油及び合成潤滑油であり、更に好ましいのは鉱物油である。
【0056】
粘度指数向上剤組成物において、粘度指数向上剤、希釈剤の含有率は以下の通りである。粘度指数向上剤の含有率は、粘度指数向上剤組成物の重量に基づき、ハンドリング性の観点から好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは20〜85重量%、特に好ましくは25〜80重量%である。希釈剤の含有率は、粘度指数向上剤組成物の重量に基づき、ハンドリング性の観点から好ましくは10〜90重量%、更に好ましくは15〜80重量%、特に好ましくは20〜75重量%である。
【0057】
本発明の潤滑油組成物は、基油と、本発明の粘度指数向上剤又は粘度指数向上剤組成物
とを含有し、基油が100℃で2〜5mm2/sの動粘度を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を0.1〜30重量%含有してなる。
【0058】
基油としては、鉱物油(溶剤精製油、パラフィン油、イソパラフィンを含有する高粘度指数油、イソパラフィンの水素化分解による高粘度指数油及びナフテン油等)、合成潤滑油[炭化水素系合成潤滑油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油等)及びエステル系合成潤滑油等]及びこれらの混合物が挙げられる。これらのうち好ましいのは鉱物油である。
【0059】
基油の100℃での動粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて異なるが、通常2〜5mm2/sであり、好ましくは2〜4.5mm2/sである。基油の動粘度が2mm/s未満であると油膜切れを生じて焼きつけを起こし易い。5mm2/sを超えると粘度指数が低下し粘性抵抗が増加する。また、基油の引火点は、通常160℃以上、好ましくは180℃以上、更に好ましくは190℃以上、特に好ましくは200℃以上である。引火点が160℃未満の基油を使用すると、潤滑油組成物の引火点が低くなり、火災の危険性が高く、安全に使用できない。
【0060】
基油の粘度指数は、好ましくは80以上、更に好ましくは100以上、特に好ましくは
105〜180、最も好ましくは120〜180である。このような基油を使用すると、
粘度指数が更に高くなり省燃費性が良好となる。
【0061】
基油の曇点(JIS K2269−1993年)は、好ましくは−5℃以下であり、更
に好ましくは−15℃〜−60℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出
量が少なく低温粘度が低くなる。
【0062】
潤滑油組成物の重量に基づく共重合体(A)の含有量は、通常1〜30重量%であり、
潤滑油組成物の用途に応じて、表3に示した好ましい範囲がある。
【0063】
【表3】

【0064】
本発明の潤滑油組成物は、更に、共重合体(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルを構成単量体とする(共)重合体(B)を含有してもよい。(B)としては、炭素数1〜36のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル等が挙げられる。
【0065】
(B)の構成単量体である(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、12〜16の平均炭素数(以下、Cavと略記する。)を有することが好ましい。更に(B)は、(B)の重量に基づき、構成単量体として(メタ)アクリル酸直鎖アルキルを70〜100重量%含有し、(メタ)アクリル酸分岐アルキルを0〜30重量%含有することが好ましい。
【0066】
(B)の具体例としては、メタクリル酸−n−ドデシル(以下、DDMと略記する。)/メタクリル酸−2−オクチルドデシル(以下、ODMと略記する。)(60〜90重量%/10〜40重量%、Cav=12.5〜14.0)共重合体、DDM/メタクリル酸−n−ヘキサデシル(以下、HDMと略記する。)(50〜90重量%/10〜50重量%、Cav=12.3〜13.8)共重合体、DDM/メタクリル酸n−テトラデシル(以下、TDMと略記する。)(30〜90重量%/10〜70重量%、Cav=12.2〜13.4)共重合体、アクリル酸−n−ドデシル(以下、DDAと略記する。)/DDM(10〜40重量%/90〜60重量%、Cav=12)共重合体、及びDDM/TDM/HDM/メタクリル酸メチル(以下、MMAと略記する。)(20〜45重量%/20〜45重量%/0〜20重量%/0.2〜20重量%、Cav=8.1〜13.5)共重合体等が挙げられる。
【0067】
(B)のMwは、粘度指数向上効果、耐金属疲労性及び耐金属磨耗性の観点から、好ましくは10,000〜500,000であり、更に好ましくは15,000〜370,000である。
【0068】
(B)は(A)と同様の方法で製造でき、(A)と同様の組成物(希釈剤による希釈物)の形態で使用できる。
【0069】
本発明の潤滑油組成物は、(A)及び(B)をそれぞれ別々に基油に溶解して製造してもよく、また(A)及び(B)の混合物を基油に溶解して製造することもできる。
【0070】
(B)の添加量は、潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは0〜20重量%であり、
更に好ましくは0.1〜5重量%、特に好ましくは0.1〜1重量%である。
【0071】
本発明における潤滑油組成物は、更に1種以上の各種添加剤を含有してもよい。
【0072】
添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキル
ベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス−又はモノ−ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮
合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミ
ン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオ
カーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(6)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ−又はジ−スルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化
合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(7)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(8)抗乳化剤:
第4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェ
ート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)等;
(9)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4−チオジアゾリル−2,5−
ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0073】
これらの添加剤(1)〜(9)は、潤滑油組成物の重量に基づいて、以下の表4記載の
量を使用することができる。
【0074】
【表4】

【0075】
添加剤の総添加量は、潤滑油組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以下であ
り、更に好ましくは10〜20重量%である。
【0076】
本発明の潤滑油組成物の40℃、100℃での動粘度は、潤滑油組成物の用途に応じて
表5に示した好ましい範囲がある。潤滑油組成物の動粘度が下限以上であれば、漏れや焼
き付きを起こしにくくなり、上限以下であれば、粘性抵抗が少なくなり、エネルギーロス
を起こし難い。本発明の潤滑油組成物は、従来の潤滑油組成物に比べ、動粘度が低く、更
に低速での油膜厚が厚いため、耐金属疲労性及び省燃費性に優れる。
【0077】
【表5】

【0078】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、マニュアルトランスミッション油(以下、MTFと略記する。)、変速機油[オートマチックトランスミッション油(以下、ATFと略記する。)及びベルト−CVT油等]、トラクション油(トロイダル−CVT油等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油等に好適に用いられる。これらのうち好ましいのは、ギヤ油、MTF、変速機油、トラクション油及びエンジン油であり、更に好ましいのはデファレンシャル油、MTF、ATF、ベルト−CVT油及びエンジン油であり、特に好ましいのはデファレンシャル油、MTF、ATF及びベルト−CVT油である。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において特に定めない限り、部は質量部を示す。
【0080】
<実施例1> 粘度指数向上剤組成物の作製;
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素吹き込み管を備えた反応容器に、イソプロピルアルコール(以下、IPAと略記する。)43部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、表6に記載の単量体を合計100部、ドデシルメルカプタン(以下、DMと略記する。)1.42部及びラジカル重合開始剤としてのADVN0.5部を仕込み、20℃で撹拌混合して単量体溶液を調製し滴下ロートに仕込んだ。反応容器の気相部の窒素置換を行った後、密閉下85℃で1時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、120℃で2時間IPAを減圧(−0.099MPa)留去し、「YUBASE2」53.8部を加え、1時間撹拌して共重合体を均一に溶解し、粘度指数向上剤組成物(X−1)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A)のMw、単量体(b)の平均側鎖長(sb)、単量体(a)の平均側鎖長(sa)及び平均側鎖長比[(sb)/(sa)]を表6に示す。
【0081】
<実施例2〜4及び比較例1> 粘度指数向上剤組成物の作製;
表6に記載の単量体に変更した以外は実施例1と同様にして、粘度指数向上剤組成物(X−2)〜(X−4)及び(X’−1)を得た。得られた粘度指数向上剤組成物中の共重合体(A)のMw、単量体(b)の平均側鎖長(sb)、単量体(a)の平均側鎖長(sa)及び平均側鎖長比[(sb)/(sa)]を表6に示す。
【0082】
共重合体(A)のMwは、GPCにより以下の条件で測定した。
<GPCによる共重合体(A)のMwの測定方法>
装置 : HLC−802A[東ソー(株)製]
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0083】
【表6】

【0084】
表6の単量体(a)、(b)は以下の通りである。
MMA:メタクリル酸メチル
nDM:メタクリル酸−n−ドデシル
DTM:メタクリル酸−2−デシルテトラデシル
HEMA:メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル
4HBMA:メタクリル酸−4−ヒドロキシ−n−ブチル
PEG4.5MA:ポリエチレングリコールモノメタクリレート[一般式(1)におけるR=メチル基、AO=オキシエチレン基、r=4.5である化合物]
PEG8MA:ポリエチレングリコールモノメタクリレート[一般式(1)におけるR=メチル基、AO=オキシエチレン基、r=8である化合物]
【0085】
<実施例5〜8、比較例2> 潤滑油組成物の作製;
実施例1〜4及び比較例1で得られた粘度指数向上剤組成物(X−1)〜(X−4)、(X’−1)を、それぞれ100℃動粘度が5.00mm2/sになるようにYUBASE3(SKコーポレーション製、100℃動粘度:3.02mm2/s、40℃動粘度:12.04mm2/s、粘度指数:106)に混合溶解して潤滑油組成物(Y−1)〜(Y−4)及び(Y’−1)を作製した。これらの潤滑油組成物について、以下の方法で粘度指数及び摩擦係数を測定し、耐金属疲労性、耐金属摩耗性を評価した。結果を表7に示す。
【0086】
<潤滑油組成物の粘度指数の測定方法>
JIS−K−2283の方法で測定した。
【0087】
<潤滑油組成物の耐金属疲労性の評価方法>
粘度指数向上剤組成物(X−1)〜(X−4)及び(X’−1)それぞれ10部を「ダイアナフレシアW−8」(出光興産(株)製、100℃動粘度:2.30mm2/s、40℃動粘度:8.06mm2/s)90部に混合溶解して、潤滑油組成物を調製後、前記方法で吸着INDEXを算出し、耐金属疲労性を評価した。吸着INDEXが大きいほど耐金属疲労性に優れることを表す。
【0088】
<潤滑油組成物の耐金属摩耗性の評価方法>
粘度指数向上剤組成物(X−1)〜(X−4)及び(X’−1)を、80℃動粘度が6.28mm2/sになるように、YUBASE3(SKコーポレーション製、100℃動粘度:3.02mm2/s、40℃動粘度:12.04mm2/s、粘度指数:106)にそれぞれ混合溶解し、潤滑油組成物を調製した。HFRRにより、以下の条件で潤滑油組成物の動摩擦係数及び摩耗痕径を測定した。耐金属摩耗性は、動摩擦係数及び摩耗痕径の測定結果を用いて評価した。動摩擦係数が小さいほど、また摩耗痕径が小さいほど、耐金属摩耗性に優れることを表す。
[動摩擦係数及び磨耗痕径の測定条件]
装置:潤滑性摩耗試験機「HFRR」(PCS社製)
摩耗痕径:ボールの摩耗痕の縦と横の直径の平均値
ボール:直径6mm
ディスク:直径10mm×厚さ3mm
荷重:600g
ストローク幅:1mm
振動数:50Hz
試験温度:80℃
試験時間:75分間
【0089】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の潤滑油組成物は、輸送用機器用及び各種工作機器用等の駆動系潤滑油[ギア油(マニュアルトランスミッション油及びデファレンシャル油等)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油及びトロイダルCVT油等)]、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油及びショックアブソーバー油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用等)として好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1〜36のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリル酸エステル(a)並びに水酸基含有単量体(b1)、カルボキシル基含有単量体(b2)、リン酸エステル基含有単量体(b3)、ホスホノ基含有単量体(b4)、アミノ基含有単量体(b5)、アミド基含有単量体(b6)、チオール基含有単量体(b7)及びスルホン酸基含有構成単位(b8)からなる群から選ばれる1種以上の単量体(b)を必須構成単量体としてなり、単量体(b)の平均側鎖長(sb)と単量体(a)の平均側鎖長(sa)の比[(sb)/(sa)]が0.1〜12.0である共重合体(A)を含有してなる粘度指数向上剤。
【請求項2】
前記共重合体(A)が、(A)の重量に基づいて、構成単量体として(a)を88〜99重量%、(b)を1〜12重量%含有してなる共重合体である請求項1記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
前記(a)が、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル(a1)、炭素数5〜17のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル(a2)、炭素数18〜24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル(a3)及び炭素数18〜36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル(a4)からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が5,000〜800,000である請求項1〜3いずれか記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
前記共重合体(A)が油溶性である請求項1〜4いずれか記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
10〜90重量%の請求項1〜5いずれか記載の粘度指数向上剤及び10〜90重量%
の希釈剤を含有してなる粘度指数向上剤組成物。
【請求項7】
基油と、請求項1〜5いずれか記載の粘度指数向上剤又は請求項6の粘度指数向上剤組成物とを含有し、基油が100℃で2〜5mm2/sの動粘度を有し、潤滑油組成物の重量に基づいて共重合体(A)を1〜30重量%含有してなる潤滑油組成物。
【請求項8】
100℃での動粘度が2〜10mm2/sかつ40℃の動粘度が13〜45mm2/sである請求項7記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物の用途が、ギヤ油、変速機油、トラクション油、作動油又はエンジン油である請求項8記載の潤滑油組成物。


【公開番号】特開2011−127029(P2011−127029A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287896(P2009−287896)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】