説明

粘着シートとその製造方法、及び、製品の加工方法

【課題】 半導体ウエハ等の製品を加工する際に使用される粘着シートであり、加工中に半導体ウエハ等を汚染したり破損することがなく、粘着シートの残留応力による製品の反りを小さくすることができる粘着シートを提供すること。
【解決手段】 粘着シートは、25℃における引張弾性率が600MPa以上である基材の片面に、中間層と粘着剤層とをこの順に有し、中間層は25℃における引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下のアクリル系ポリマー層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートとその製造方法、並びにこの粘着シートを用いて製品を加工する方法に関し、特に、半導体ウエハ等の半導体製品や光学系製品等を精密加工する工程において、製品を保持したり、保護するために使用される粘着シートとその製造方法、並びに粘着シートを用いて製品を加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学産業や半導体産業等において、レンズ等の光学部品や半導体ウエハ等の半導体製品を精密加工する際にウエハ等の表面保護や破損防止のために粘着シートが使用される。
例えば半導体チップの製造工程においては、高純度シリコン単結晶等をスライスしてウエハとした後、ウエハ表面にIC等の所定の回路パターンをエッチング形成して集積回路を組み込み、次いでウエハ裏面を研削機により研削して、ウエハの厚さを100〜600μm程度まで薄くし、最後にダイシングしてチップ化することにより製造されている。半導体ウエハ自体が肉薄で脆く、また回路パターンには凹凸があるので、研削工程やダイシング工程への搬送時に外力が加わると破損しやすい。また、研磨加工工程において、生じた研磨屑を除去したり、研磨時に発生した熱を除去するために精製水によりウエハ裏面を洗浄しながら研磨処理を行っており、この研削水等によって汚染されることを防ぐ必要がある。そのために、回路パターン面等を保護し、半導体ウエハの破損を防止するために、回路パターン面に粘着シートを貼着して作業することが行われている。また、ダイシング時には、ウエハ裏面側に粘着シート類を貼り付けて、ウエハを接着固定した状態でダイシングし、形成されるチップをフィルム基材側よりニードルで突き上げてピックアップし、ダイパッド上に固定させている。ここで用いられる粘着シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の基材シートに粘着剤層を有する粘着シートが知られている。特開昭61−10242号公報には、ショアーD型硬度が40以下である基材シートの表面に粘着層を設けたシリコンウエハ加工用フィルムが開示されている。また、特開平9−253964号公報には、ウレタンアクリラート系オリゴマーと反応性希釈モノマーとを含む配合物を放射線硬化させてなる基材に、粘着層を設けた粘着テープが開示されている。特開昭61−260629号公報には、ショアーD型硬度が40以下である基材フィルムの一方の表面に、ショアーD型硬度が40よりも大きい補助フィルムが積層されており、基材フィルムの他方の表面に粘着剤層が設けられているシリコンウエハ加工用フィルムが開示されている。特開2002−69396号公報には、最外層として貯蔵弾性率(E’)が1×10〜1×10Paであり、厚みが10〜150μmである低弾性率フィルムと、内層として貯蔵弾性率(E’)が2×10〜1×1010Paであり、厚みが10〜150μmである高弾性率フィルムとを有する、少なくとも3層の基材フィルムから形成された半導体ウエハ保護用粘着フィルムが開示されている。特開2000−38556号公報には、融点が105℃以下のホットメルト層を有する半導体ウエハ保護用シートが開示されている。
【0003】
しかし、近年、回路パターン面の凹凸の高低差が大きくなっており、また、チップの小型化に伴い、半導体ウエハには厚みが100μm以下の薄型化が要求されるようになった。例えばPETのように剛性のある基材を用いた粘着シートでは、薄膜研削した後のウエハの反りに関しては抑制されるが、ウエハ表面の回路パターン面の凹凸に追従できず、粘着剤層とパターン面との間の接着が不十分となり、ウエハ加工時にシートの剥離が生じたり、パターン面へ研削水や異物が入り込んだりした。また、EVAのような軟質基材を用いた粘着シートでは、パターン面への追従性は問題ないが、基材の剛性が不足しているので、ウエハ研削後に反りが発生したり、ウエハの自重による撓みが生じた。そこで、剛性のある基材PETと軟質な基材EVAとを貼り合わせた基材が想定されるが、接着剤を介して機械的に貼着した場合には、貼り合わせの際に与えられる応力がフィルム内に残留し、基材がカールしてしまう。また、Tダイ法やカレンダー法等によって積層体を形成する場合には、厚手のフィルムを得ることが困難であり、製膜する際の熱収縮によってフィルム内に残留応力が発生してしまう。このように残留応力が発生した基材を用いた粘着シートでは、ウエハ研削時にウエハが破損したり、研削後にウエハに反りが生じたりするという問題があった。また、溶液塗布法により積層体を形成した場合には、溶剤の使用が環境問題を発生することもあり、さらにまた、厚手のフィルムを得るためには重ね塗りが必要であった。
【0004】
特開2004−107644号公報には特定のフィルムを積層した粘着シートが開示されており、これらの問題点に対して効果があることが示されている。
【0005】
ところで、このような目的で用いられる粘着シートは、粘着剤層を構成する粘着剤に起因する有機物や糊残り等のパーティクルによってウエハ等の被着体が汚染されないことが必要である。従来から粘着剤としては溶剤型のアクリル系粘着剤が用いられてきたが、溶剤型アクリル系粘着剤は有機溶媒中で合成されるため、塗工時の溶剤の揮発が環境的に問題があり、水分散型のアクリル系粘着剤への転換が図られている。しかしながら水分散型アクリル系粘着剤は、溶剤型のアクリル系粘着剤に比べ、乳化剤を使用するため低汚染性を達成することは困難であった。
【0006】
また、ウエハ表面の汚染物は、ワイヤーボンディングのシェア強度へ影響を与えることが知られている。すなわち半導体チップを製造する際に行われるワイヤーボンディングにおいては、ボールとパッド間の接着強度が高いことが要求されるが、ウエハ上のアルミ表面に付着した有機物やパーティクルは、金ワイヤーのアルミ表面への接着を阻害する要因となり、アルミ表面に多量の汚染物質が付着すると、ワイヤーボンディングシェア強度が低下するという問題が発生する。
【0007】
特に近年、半導体集積回路の高密度化及び高性能化等に伴い、半導体ウエハ及びそれから得られる半導体チップの回路面に対する汚染の管理が厳しくなってきている。そのため、ウエハ加工用粘着シートには従来に増してより低汚染性が求められるようになっている。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−10242号公報
【特許文献2】特開平9−253964号公報
【特許文献3】特開昭61−260629号公報
【特許文献4】特開2002−69396号公報
【特許文献5】特開2000−38556号公報
【特許文献6】特開2004−107644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明は、例えば研磨後の半導体ウエハが薄肉であっても、研削工程中にウエハが破損することなく、また半導体ウエハの撓みが小さく、さらには粘着シートの残留応力によるウエハの反りが小さく、しかも低汚染性を達成できる粘着シートとその製造方法、並びにその粘着シートを用いて半導体ウエハ等の製品を加工する加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の粘着シートは、25℃における引張弾性率が600MPa以上である基材の片面に、中間層と粘着剤層とをこの順に有し、前記中間層は25℃における引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下のアクリル系ポリマー層であることを特徴とする。
【0011】
ここで、前記アクリル系ポリマー層を形成するアクリル系ポリマーは、窒素含有モノマーを共重合により導入させたアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0012】
また、前記中間層は、ラジカル重合性モノマーを含む混合物を基材上に塗布し、放射線を照射して硬化させて形成されることができる。ここで、前記ラジカル重合性モノマーはアクリル系モノマーであることが好ましい。
【0013】
本発明の粘着シートは、前記基材の厚さ(t1)が10μm以上、200μm以下であり、前記中間層の厚さ(t2)が10μm以上、300μm以下であり、かつ、厚さの比(t1/t2)が0.1以上、10以下であることができる。
【0014】
また、本発明の粘着シートは前記粘着剤層の上に剥離用セパレータを有することができる。
【0015】
本発明の粘着シートの製造方法は、ラジカル重合性モノマーを含む混合物を、25℃における引張弾性率が600MPa以上である基材の一方の面に塗布し、放射線を照射して硬化させることにより、25℃における引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下であるアクリル系ポリマー層からなる中間層を形成し、該中間層の上に粘着剤層を形成することを特徴とする。
ここで、前記ラジカル重合性モノマーはアクリル系モノマーであることが好ましい。
【0016】
本発明の製品の加工方法は、上記いずれかの粘着シートを、精密加工される製品に貼着して保持及び/又は保護した状態で精密加工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、半導体製品や光学系製品等の製品を加工する際に、製品の破損等を防ぎ、製品に大きな反りを生じさせず、かつ、低汚染性を達成できる粘着シートを提供することができる。例えば、半導体ウエハに本発明の粘着シートを貼着し、半導体ウエハを薄膜研磨しても破損することがない。また、粘着シートの残留応力によるウエハの反りを小さくすることができるので、一般的に使用されている専用収納ケースに収納することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の粘着シートは、基材、中間層及び粘着剤層をこの順に有する粘着シートである。中間層はアクリル系ポリマーからなる層であり、引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下である。なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。
【0019】
本発明の粘着シートを構成する基材は、25℃における引張弾性率が600MPa以上であることが好ましい。基材の25℃における引張弾性率が600MPa以上であれば、厚みが100μm以下の半導体ウエハの反りを抑制することができる。
【0020】
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂のほか、熱硬化性樹脂等が使用される。中でもPETは、精密部品の加工に使用する場合には適度な固さを有しているので好適であり、さらにまた、品種の豊富さやコスト面からも有利であるので、好ましく使用される。基材の材料は、25℃における引張弾性率が上記範囲内であることを条件として選択されることが好ましいが、用途や必要に応じて設けられる粘着剤層の種類等に応じて、適宜決定することが好ましく、例えば紫外線硬化型粘着剤を設ける場合には、紫外線透過率の高い基材が好ましい。
【0021】
基材を構成する材料には、必要に応じて、通常使用される添加剤等を本発明の効果を阻害しない範囲内で使用することができる。例えば添加剤として、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0022】
基材は単層構成でもよいが、2層以上からなる積層体でもよい。基材が2層以上の積層体からなる場合には、構成する各層は同一組成の材料からなる層でも異なる組成の材料からなる層でもよい。ただし、積層体の場合には少なくとも一層の引張弾性率が上記範囲内であればよく、基材全体としての引張弾性率が上記範囲内であることが更に好ましい。
【0023】
本発明の粘着シートを構成する中間層はアクリル系ポリマー層である。また、中間層は、25℃における引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下であり、好ましくは2MPa以上、90MPa以下であり、更に好ましくは5MPa以上、80MPa以下である。中間層の25℃における引張弾性率が1MPa未満では、半導体ウエハ等の製品を研削加工する際に研削熱によって中間層の温度が上昇しやすくなり、中間層の温度が上昇すると弾性率の低下が生じて半導体ウエハ等の保持機能が低下し、半導体ウエハ等が破損することがある。一方、中間層の引張弾性率が100MPaを超えると、粘着シートの剛性が大きくなりすぎるので、半導体ウエハ等を研削加工する工程において半導体ウエハ等が破損することがあり、また、テープの剥離が困難となる。
【0024】
上記したように中間層はアクリル系ポリマー層であり、ウレタン系ポリマーは含まない。ウレタン系ポリマーはアクリルポリマーとの相溶性に劣るため、ウレタン系ポリマー成分が粘着剤層を通過して半導体ウエハ等の被着体表面まで移動し到達する(グルーミング)ことがある。したがって、ウレタン系ポリマーを中間層として有すると、被着体を汚染する原因となりやすい。
【0025】
中間層を形成するアクリル系ポリマーは、アクリル系モノマーを溶液重合、乳化重合、塊状重合等の公知の重合方法により重合させて形成することができる。
【0026】
本発明において中間層は、ラジカル重合性モノマーを主成分として含む混合物を基材上に塗布し、放射線を照射して硬化させることにより、形成してもよい。また、この混合物を基材上に塗布した後、さらにこの上に剥離処理されたセパレータ等を重ね、このセパレータの上から放射線を照射して硬化させて形成することもできる。ここで、ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するものが使用され、ビニル系モノマー等が使用されるが、反応性の点からは、アクリル系モノマーが好ましい。
【0027】
本発明に好ましく用いられるアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、等を挙げることができる。これらのエステルと共に、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するモノマーや、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するモノマーを用いることができる。
【0028】
また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸のモノまたはジエステル、及びその誘導体、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、イミドアクリレート、N−ビニルピロリドン、オリゴエステルアクリレート、ε−カプロラクトンアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロドデカトリエンアクリレート、メトキシエチルアクリレート等のモノマーを共重合してもよい。なお、これら共重合されるモノマーの種類や使用量は、複合フィルムの特性等を考慮して適宜決定される。
【0029】
本発明においては、必要に応じて、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能モノマーを架橋剤として用いてもよい。これらのモノマーも、本発明に係るラジカル重合性モノマーに含まれる。
【0030】
これらのラジカル重合性モノマーは、放射線等の光硬化時の重合性や、得られる高分子量体の特性を考慮して、種類、組合せ、使用量等が適宜決定される。
【0031】
本発明に用いられるアクリル系ポリマーとしては、窒素含有モノマーを共重合により導入させたものを含むことが好ましい。アクリル系ポリマーに窒素含有モノマーを共重合により導入すると、粘着剤層との投錨性が向上するので好ましい。窒素含有モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロイルピロリドン、(メタ)アクリロイルピペリジン、(メタ)アクリロイルピロリジン等を挙げることができる。
【0032】
中間層には、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。
【0033】
本発明においては、上述したように、例えば、ラジカル重合性モノマーを主成分とする混合物を基材上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射することにより、光硬化して中間層を形成することができる。なお、ラジカル中剛性モノマーを主成分とする混合物に光重合開始剤を配合したものに、紫外線等の放射線を照射して部分的に重合させて増粘させた後、基材上に塗布し、紫外線等を照射して中間層を形成してもよい。
【0034】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、基材上に塗布したラジカル重合性モノマーを主成分とする混合物の上に、剥離処理したシートをのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0035】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0036】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0037】
また、紫外線照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0038】
ラジカル重合性モノマーを主成分とする混合物には、光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル、アニソールメチルエーテル等の置換ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の置換アセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等の置換アルファーケトール、2−ナフタレンスルフォニルクロライド等の芳香族スルフォニルクロライド、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等の光活性オキシムが好ましく用いられる。
【0039】
本発明の粘着シートにおける基材と中間層の厚みは、目的等に応じて、適宜選択することができる。特に精密部品の加工用に用いる場合、基材の厚さ(t1)は10〜200μmであることが好ましく、更に好ましくは30〜200μm程度であり、中間層の厚さ(t2)は10〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは50〜250μm程度である。また、基材の中間層に対する厚さ比(t1/t2)は、t1/t2=0.1〜10であることが好ましい。
【0040】
本発明の粘着シートは、中間層の上に粘着剤層を有する。この粘着剤層は、半導体ウエハ等の製品を加工する際には適度な粘着力を有して確実に保持することができ、加工後には製品等に負荷をかけずに容易に剥離することができるような粘着力が必要である。このため、加工後に剥離する時の180度ピール粘着力は0.01N/20mm〜1N/20mmの範囲である粘着剤層であることが好ましい。
【0041】
かかる粘着剤層を構成する粘着剤組成としては特に限定されず、半導体ウエハ等の接着固定に使用される公知の粘着剤等を使用することができ、例えば、天然ゴムやスチレン系共重合体等のゴム系ポリマーをベースポリマーとするゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中では、半導体ウエハへの接着性、剥離後の半導体ウエハの超純水やアルコール等の有機溶剤による清浄洗浄性等の観点からは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。
【0042】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、へプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステル等のアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐状のアルキルエステル等)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステル等)の1種又は2種以上を単量体成分とし、これらを重合して得られたアクリル系ポリマー等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸エステルとはアクリル酸エステル及び/またはメタクリル酸エステルをいい、本発明において(メタ)の如く表示した場合には、全て同様の意味である。
【0043】
アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性等の改質を目的として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含むことができる。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェ−ト等のリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上を使用することができる。これら共重合可能なモノマーの使用量は、全モノマー成分の40重量%以下であることが好ましい。
【0044】
さらに、アクリル系ポリマーには、架橋させるために、多官能性モノマー等を含むことができる。このような多官能性モノマーとしては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上を使用することができる。多官能性モノマーの使用量は、粘着特性等の点から、全モノマー成分の30重量%以下であることが好ましい。
【0045】
アクリル系ポリマーを形成するための重合方法としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方法でもよい。粘着剤層は半導体ウエハ等の製品の貼着面を汚さないように、低分子量物質の含有量が小さいものが好ましい。この点から、アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは30万以上、さらに好ましくは40万〜300万程度である。
【0046】
また、アクリル系ポリマー等の数平均分子量を高めるために、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン系架橋剤等を添加してもよい。その使用量は、架橋すべきベースポリマーとのバランスにより、さらには、粘着剤としての使用用途によって適宜決定される。一般的には、ベースポリマー100重量部に対して、1〜5重量部程度配合することが好ましい。さらに、粘着剤には、必要により、上記成分の他に、従来公知の各種の粘着付与剤、老化防止剤等の添加剤を用いてもよい。
【0047】
本発明においては、粘着剤として放射線硬化型の粘着剤を用いることが好ましい。放射線硬化型の粘着剤は、例えば、粘着性物質に、放射線等を照射することによって硬化して低接着性物質を形成するオリゴマー成分を配合することにより得られる。放射線硬化型の粘着剤を用いて粘着剤層を形成すれば、シートの貼り付け時には、オリゴマー成分により粘着剤に塑性流動性が付与されるため容易に貼付することができ、シート剥離時には、放射線を照射すれば低接着性物質が形成されるため、半導体ウエハ等の製品から容易に剥離することができる。
【0048】
放射線硬化型粘着剤としては、分子内に炭素−炭素二重結合等の放射線硬化性の官能基を有し、かつ粘着性を示すものを使用することができる。例えば、一般的な粘着剤に放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型の放射線硬化型粘着剤や、ベースポリマーが、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖または主鎖中もしくは主鎖末端に有する内在型の放射線硬化型粘着剤等を使用することができる。なお、粘着剤層を硬化させるために使用される放射線としては、例えば、X線、電子線、紫外線等が挙げられ、取り扱いの容易さから紫外線を使用することが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0049】
添加型の放射線硬化型粘着剤を構成する一般的な粘着剤としては、上述のアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の感圧性粘着剤を使用することができる。
放射線硬化性の官能基を有するモノマーとしては、例えば、ウレタンオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また放射線硬化性のオリゴマー成分としては、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系等の種々のオリゴマーが挙げられ、その分子量が100〜30,000程度の範囲のものが適当である。放射線硬化性の官能基を有するモノマー成分やオリゴマー成分の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば、5〜500重量部であることが好ましく、さらに好ましくは40〜150重量部程度である。
【0050】
内在型の放射線硬化型粘着剤は、低重合成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤中を移動する事態は生じず、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる。
【0051】
内在型の放射線硬化型粘着剤においてはベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限されることなく使用することができる。このようなベースポリマーは、その基本骨格がアクリル系ポリマーであることが好ましい。ここで用いられるアクリル系ポリマーとしては、アクリル系粘着剤の説明において既に例示したアクリル系ポリマーと同一のものが挙げられる。
【0052】
基本骨格としてのアクリル系ポリマーへ、炭素−炭素二重結合を導入する方法としては、特に制限されず様々な方法を採用することができる。本発明においては、分子設計が容易になるので、炭素−炭素二重結合をアクリル系ポリマーの側鎖に導入して炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーを形成することが好ましい。具体的には、例えば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基と炭素−炭素二重結合とを有する化合物を、炭素−炭素二重結合の放射線硬化性を維持したまま縮合または付加反応させて、アクリル系ポリマーの側鎖に、炭素−炭素二重結合を導入することができる。
【0053】
アクリル系ポリマーに共重合されるモノマーの官能基と、この官能基と反応しうる官能基との組合せ例を以下に示す。例えば、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が挙げられる。これら官能基の組合せの中でもヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが、反応追跡の容易さから好適である。また、これら官能基の組合せにおいて、いずれの官能基が基本骨格のアクリル系ポリマーの側にあってもよいが、例えばヒドロキシル基とイソシアネート基の組合せでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、官能基と反応しうる官能基を含む化合物がイソシアネート基を有することが好ましい。この場合、イソシアネート基を有する前記化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネート等が挙げられる。また、官能基(ここでは、ヒドロキシル基)を有するアクリル系ポリマーとしては、既にアクリル系粘着剤の説明において例示したヒドロキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル系化合物、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル系化合物、ジエチレングリコールモノビニルエーテル系化合物等をアクリル系ポリマーに共重合したものが挙げられる。
【0054】
内在型の放射線硬化型粘着剤は、炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーを単独で使用することができるが、特性を悪化させない範囲内で、上述した放射線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合してもよい。放射線硬化性のオリゴマー成分等の配合量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して30重量部以下であり、好ましくは0〜10重量部の範囲である。
【0055】
前記放射線硬化型粘着剤には、紫外線等によって硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナート等が挙げられる。
【0056】
光重合開始剤の配合量は、粘着剤を構成するアクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、例えば1〜10重量部、好ましくは3〜5重量部程度である。
【0057】
本発明において粘着剤層は、上述の粘着剤を必要に応じて溶剤等を使用し、中間層上に直接塗布することにより形成してもよいし、粘着剤を剥離ライナー等に塗布して、予め粘着剤層を形成してから、この粘着剤層を中間層に貼り合わせて形成してもよい。
【0058】
また、粘着剤層の厚みについては、特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、通常は3〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがさらに好ましい。
【0059】
本発明の粘着シートは、例えば半導体ウエハ等の製品を加工する際の常法に従って用いられる。ここでは、半導体ウエハの裏面を研削加工する際に使用する例を示す。まず、テーブル上にIC回路等のパターン面が上になるように半導体ウエハを載置し、そのパターン面の上に、本発明の粘着シートを、その粘着剤層が接するように重ね、圧着ロール等の押圧手段によって押圧しながら貼付する。あるいは、加圧可能な容器(例えばオートクレーブ)内に、上記のように半導体ウエハと粘着シートとを重ねたものを置いた後、容器内を加圧して半導体ウエハと粘着シートとを貼着してもよいし、これに押圧手段を併用してもよい。また、真空チャンバー内で半導体ウエハと粘着シートとを貼着してもよいし、粘着シートの基材の融点以下の温度で加熱することにより貼着してもよい。
【0060】
半導体ウエハの裏面研磨加工方法としては、通常の研削方法を採用することができる。例えば、上記のようにして粘着シートを貼着した半導体ウエハの裏面を、研磨するための加工機として研削機(バックグラインド)、CMP(Chemical Mechanical Polishing)用パッド等を用いて所望の厚さになるまで研削を行う。放射線硬化型の粘着剤を使用して粘着剤層を形成した粘着シートを用いた場合には、研削が終了した時点で放射線等を照射し、粘着剤層の粘着力を低下させてから剥離する。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部は重量部を意味する。
(実施例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)65部、アクリル酸n−ブチル(BA)25部、アクリロイルモルホリン(ACMO)10部と、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(登録商標「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.3部とを投入し、窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより増粘させて、プレポリマーを含むシロップを作製した。
【0062】
次いで得られたシロップを、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、硬化後の厚みが100μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したPETフィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面に、高圧水銀ランプを用いて紫外線(照度163mW/cm、光量2100mJ/cm)を照射して硬化させて、PETフィルム上に中間層を形成した後、セパレータを除去した。なお、PETフィルムの25℃における引張弾性率は1000MPaであった。
【0063】
次に、アクリル酸n−ブチル(BA)100部と、アクリル酸(AA)3部とからなる配合物を酢酸エチル溶液中で共重合させて数平均分子量260,000のアクリル系共重合体ポリマーを得た。このアクリル系共重合体ポリマー100部に対して、更にポリイソシアネート系架橋剤2部、エポキシ系架橋剤2部を混合したものを、基材上に形成された中間層面上に塗布して厚さ30μmの粘着剤層を形成し、基材/中間層/粘着剤層の層構成を有する粘着シートを作製した。
【0064】
(実施例2)
実施例1において、表1に示すようにアクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチル(BA)70部と、アクリロイルモルホリン(ACMO)30部とを用い、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.5部を用いた以外は実施例1と同様にして基材上に中間層を形成した。次いで、実施例1と同様にして中間層上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0065】
(実施例3)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)60部、アクリル酸n−ブチル(BA)30部、アクリル酸(AA)10部を用いた以外は実施例1と同様にして基材上に中間層を形成した。次いで、実施例1と同様にして中間層上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0066】
(実施例4)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)70部、アクリル酸n−ブチル(BA)20部、アクリロイルモルホリン(ACMO)10部を用いた以外は実施例1と同様にして基材上に中間層を形成した。次いで、実施例1と同様にして中間層上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0067】
(実施例5)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)65部、アクリル酸n−ブチル(BA)25部、ジメチルアクリルアミド(DMAA)10部を用いた以外は実施例1と同様にして基材上に中間層を形成した。次いで、実施例1と同様にして中間層上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0068】
(実施例6)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)65部、アクリル酸n−ブチル(BA)25部、アクリロイルモルホリン(ACMO)10部を用い、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)3部を用いた以外は実施例1と同様にして基材上に中間層を形成した。次いで、実施例1と同様にして中間層上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0069】
(実施例7)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)65部、アクリル酸n−ブチル(BA)25部、アクリロイルモルホリン(ACMO)10部を用いて、厚さ150μmの中間層を形成した以外は実施例1と同様にして基材上に中間層を形成した。次いで、実施例1と同様にして中間層上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0070】
(比較例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)25部、アクリル酸n−ブチル(BA)10部、アクリル酸(AA)15部と、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)3部と、ポリオールとしてポリテトラメチレングリコール(PTMG)(三菱化学株式会社製、分子量650)35部と、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(登録商標「イルガキュア651」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.3部と、ウレタン反応触媒として、ジブチルすずジラウレート0.025部とを投入し、攪拌しながら、キシリレンジイソシアネート(XDI)15部を滴下し、65℃で2時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。なお、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.0であった。
【0071】
ウレタンポリマーとアクリル系モノマー混合物を、厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)上に、硬化後の厚みが100μmになるように塗布した。この上に、セパレータとして剥離処理したPETフィルム(厚み38μm)を重ねて被覆した後、この被覆したPETフィルム面に、高圧水銀ランプを用いて紫外線(照度163mW/cm、光量2100mJ/cm)を照射して硬化させて、PETフィルム上に中間層を形成した。この後、被覆した剥離処理済みPETフィルムを剥離して、基材/中間層の層構成の多層シートを得た。
【0072】
次に、アクリル酸n−ブチル(BA)100部と、アクリル酸(AA)3部とからなる配合物を酢酸エチル溶液中で共重合させて数平均分子量260,000のアクリル系共重合体ポリマーを得た。このアクリル系共重合体ポリマー100部に対して、更にポリイソシアネート系架橋剤2部、エポキシ系架橋剤2部を混合したものを、得られた多層シートの中間層面上に塗布して厚さ30μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0073】
(比較例2)
比較例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル(t−BA)20部、アクリル酸n−ブチル(BA)10部、アクリル酸(AA)10部を用い、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.1部を用い、ポリオールとして数平均分子量2000のポリプロピレングリコール(「PP−2000」、三洋化成工業(株)製)50部、ポリイソシアネートとしてキシリレンジイソシアネート(XDI)10部(NCO/OH=1.1)を用いた以外は比較例1と同様にして、多層シートを作製した。また、得られた多層シートを用い、比較例1と同様にして多層シートの中間層面上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0074】
(比較例3)
実施例1において、アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチル(BA)90部、アクリル酸(AA)10部を用い、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.1部を用いた以外は実施例1と同様にして、多層シートを作製した。また、得られた多層シートを用い、実施例1と同様にして多層シートの中間層面上に粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
【0075】
《評価試験》
(1)引張弾性率
得られた粘着シートを幅1cm×長さ1cmに切断し、中間層のみを長さ方向に引張速度50mm/minで引っ張った時のS−Sカーブから求められる初期弾性率を引張弾性率とした。
【0076】
(2)反り量、たるみ量、割れの評価
厚さ625μmの8インチのシリコンウエハを20枚用意し、これに得られた粘着シートを、日東精機(株)製の「DR−8500III」を用いて貼り合わせた後、ディスコ(株)製のシリコンウエハ研削機によって厚さ50μmになるまで研削を行った。これについて、下記に示す評価を行った。その結果を表1に示す。
【0077】
(i)反り量
研削した後のシリコンウエハを、粘着シートを貼着したままで、平板上に粘着シート面が上になるように静置した。平板から最も浮いているシリコンウエハ部分(通常はウエハ端部)の平板面からの距離を測定した。反り量の平均値を求めた。ただし、ウエハ20枚の測定値を平均した平均値で示す。反り量の平均値が5mm以下のものが好ましく、8mmを超えるものは不良である。
【0078】
(ii)たるみ量
研削した後のシリコンウエハを、粘着シートを貼着したままで、8インチウエハ収納用カセットにウエハ面を上にして収納した。自重によって湾曲したウエハについて、最も高い部分の位置と、最も垂れ下がって低い部分の位置との間の距離をたるみ量とした。ただし、ウエハ20枚の測定値を平均した平均値で示す。
【0079】
(iii)割れ
研削中にシリコンウエハに割れが発生した枚数をカウントした。ただし、ウエハの研削枚数は5枚で評価した。
【0080】
(3)汚染性の評価
得られた粘着シートを、シリコンウエハ(3〜4atomic%)に日東精機(株)製のテープ貼り合わせ機「DR8500」を用いて貼り付け(貼り付け圧力2MPa、貼り付け速度12m/分)、40℃中に1日放置後、粘着シートを日東精機(株)製のテープ剥離機「HR8500」を用いて剥離し(剥離速度12m/分、剥離角度180度)、ウエハ上に転写した有機物をアルバックファイ社製のESCA「Quantum 2000」を用いて測定した。まったく粘着シートを貼り付けていないウエハも同様に分析し、検出された炭素原子のatomic%の増加量により有機物の転写量を評価した。
【0081】
(4)投錨力
得られた粘着シートの粘着剤層面に、厚み50μmのPETテープを貼り合わせた後、粘着剤層と中間層との界面でT剥離(粘着シートとPETテープとの端部を180度逆方向に引張って粘着剤層と中間層との界面で引き剥がし、剥離した粘着シートとPETテープとのなす角度が約180度となるように剥がす剥離方法)し、そのときの剥離力を測定した。
【0082】
【表1】

【0083】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜7の粘着シートを使用して加工を行ったウエハは、反り量が5mm以下であり、たるみ量も10mm未満であり、後続する工程へ搬送する際に全く問題がなかった。また、実施例1〜7の粘着シートを使用して厚み50μmまでウエハの研磨加工を行っても1枚も割れが生じなかった。さらに、実施例1〜7の粘着シートは投錨力の評価で良好な結果が得られ、ウエハ等の被着体への糊残り等は生じないものであることが分かった。また、実施例1〜7の粘着シートはウエハへの汚染が少なく、低汚染性を実現できるものであることが分かった。
【0084】
一方、ウレタン成分を含む中間層を形成した比較例1及び2の粘着シートは、ウエハへの汚染が大きいことが分かった。また、引張弾性率が1MPa未満の中間層を有する比較例3の粘着シートは、反り量及びたるみ量が大きく、しかも割れが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の粘着シートは、半導体ウエハの裏面研削時やダイシング時に使用される半導体ウエハ加工用粘着シートとして好適に用いることができる。また、半導体チップの製造時に行われるワイヤーボンディングにおいてアルミ表面と金ワイヤー間で界面破壊することがなく、高いシェア強度を維持させることができる。さらに低汚染性であるという特徴を生かし、使用時又は使用終了後に粘着シートの剥離を伴うような各種用途、例えば、各種工業部材、特に半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレーム等の微細加工部品の製造の際に表面保護や破損防止のために使用する粘着シートとして幅広く使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における引張弾性率が600MPa以上である基材の片面に、中間層と粘着剤層とをこの順に有し、前記中間層は25℃における引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下のアクリル系ポリマー層であることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマー層を形成するアクリル系ポリマーが、窒素含有モノマーを共重合により導入させたアクリル系ポリマーを含むことを特徴とする請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
前記中間層が、ラジカル重合性モノマーを含む混合物を基材上に塗布し、放射線を照射して硬化させて形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着シート。
【請求項4】
前記ラジカル重合性モノマーがアクリル系モノマーであることを特徴とする請求項3記載の粘着シート。
【請求項5】
前記基材の厚さ(t1)が10μm以上、200μm以下であり、前記中間層の厚さ(t2)が10μm以上、300μm以下であり、かつ、厚さの比(t1/t2)が0.1以上、10以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層の上に剥離用セパレータを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の粘着シート。
【請求項7】
ラジカル重合性モノマーを含む混合物を、25℃における引張弾性率が600MPa以上である基材の一方の面に塗布し、放射線を照射して硬化させることにより、25℃における引張弾性率が1MPa以上、100MPa以下であるアクリル系ポリマー層からなる中間層を形成し、該中間層の上に粘着剤層を形成することを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項8】
前記ラジカル重合性モノマーがアクリル系モノマーであることを特徴とする請求項7記載の粘着シートの製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項記載の粘着シートを、精密加工される製品に貼着して保持及び/又は保護した状態で精密加工することを特徴とする製品の加工方法。

【公開番号】特開2006−232930(P2006−232930A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47505(P2005−47505)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】