説明

粘着剤用シリコーン組成物及び該組成物から得られる粘着テープ

【課題】金属等の被着体上に貼って、250℃以上の高温に曝された場合でも、糊残りを起こさず、且つ、変色を発生することなく、きれいに剥離することが可能な粘着テープ及び該粘着テープの粘着層を構成するシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)と(B)とを反応させて得られる混合物、(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン(B)R13SiO0.5単位およびSiO2単位を有するポリオルガノシロキサン(C)SiH基を有するポリオルガノシロキサン、(D)制御剤、及び(E)白金系触媒を含む粘着剤用シリコーン組成物であって、(1)該組成物で、粘着テープを調製し、(2)該粘着テープをステンレス鋼表面に圧着した後、次いで、(3)該粘着テープをステンレス鋼から剥がした場合に、該ステンレス鋼表面上に該シリコーン組成物由来の残存物が観察されないことを特徴とする粘着剤用シリコーン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤用シリコーン組成物及び該組成物からなる粘着層を有する粘着テープに関する。詳細には、組成物が所定の2種類のポリオルガノシロキサンの反応物を含み、該組成物を粘着層とする粘着テープは、ステンレス鋼等の被着体上に貼って250〜300℃に加熱した後に剥離しても、該被着体上に該組成物由来の物質を残さない。
【背景技術】
【0002】
シリコーン粘着剤を使用した粘着テープや粘着ラベルは、シリコーン粘着剤層が耐熱性、耐寒性、耐候性、電気絶縁性及び耐薬品性に優れることから、他の粘着剤、たとえば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、及びエポキシ系粘着剤では変質又は劣化してしまうような厳しい環境下で使用されている。
【0003】
そのような環境の1つとして、250℃以上の加熱に曝される環境がある。例えば、半導体部品のリフロー工程や樹脂封止工程におけるマスキング、部品の仮固定用途である。近年、従来よりも高温での加熱処理が行われるようになり、シリコーン粘着剤の耐熱性も向上させる必要が生じている。
【0004】
例えば、電子部品実装における鉛フリーハンダの実用化に伴い、リフロー温度が従来よりも高温となり、リフロー炉内でのピーク温度が280℃に達することもある。斯かる高温下においても粘着剤が剥がれてはならず、さらに、処理終了後には、被着体上に汚染物質を何ら残すことなく、剥がせることが必要である。
【0005】
しかし、従来のシリコーン粘着剤を用いた粘着テープでは、150〜200℃の高温の履歴を受けた後に剥離された場合、被着体に粘着剤が残留したり、粘着テープの基材から粘着剤層が金属部分に移行したりすることがあった。本発明において、このような現象を糊残りという。
【0006】
斯かる糊残りをなくすために、粘着テープのシリコーン系バインダーに酸化防止剤を配合することが知られている(特許文献1)。
【0007】
また、付加反応硬化型の粘着剤用シリコーン組成物にフェノール系酸化防止剤を配合することによって、銅などの金属上に粘着テープの形態で施与して150〜250℃に加熱した後であっても、糊残り無く剥離可能である粘着剤用シリコーン組成物が知られている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら上記の各シリコーン粘着剤を250℃以上の高温に曝すと、酸化防止剤が劣化して糊残り防止効果が得られなくなる。また、被着体が銅や銅合金、鉄などの金属である場合、金属表面が酸化されて、シリコーン粘着剤とより強固に結合して、糊残りが発生することがある。
【0009】
発明者らは、高温に曝されても糊残りを起こさない粘着剤用シリコーン組成物を見出し、特許出願した(特願2004-112273)。
【0010】
しかし、上記組成物を用いた場合、金属表面の変色が観察される場合がある。該変色は、被着体金属の表面が平滑な場合によく見られ、特に、金属がステンレス鋼の場合に発生しやすい。本発明において、斯かる変色を「しみ」という。該しみは、外観上問題となり、解決が必要とされている。
【0011】
【特許文献1】特開2001−345415号公報
【特許文献2】特開2003−96429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属等の被着体上に貼りつけて250℃以上の高温に曝された場合でも、糊残りを起こさず、且つ、被着体上にしみを発生することなく、きれいに剥離することが可能な粘着テープ及び該テープを与える粘着剤用シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明は、
下記(A)と(B)とを反応させて得られる混合物、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン、
(B)R13SiO0.5単位およびSiO2単位を有するポリオルガノシロキサン(但しR1は互いに異なっていてよい、炭素数1〜10の1価炭化水素基)
(C)SiH基を有するポリオルガノシロキサン、
(D)制御剤、及び
(E)白金系触媒
を含む粘着剤用シリコーン組成物であって、
(1)該組成物を、基材上に塗布した後110℃〜140℃で1〜3分加熱して粘着テープを調製し、
(2)該粘着テープの粘着面側をステンレス鋼表面に圧着した後、最高温度250℃〜300℃で、少なくとも10分間加熱し、次いで、
(3)室温まで冷却した後、該粘着テープを手動によりステンレス鋼から剥がして、ステンレス鋼表面を目視観察した場合に、該ステンレス鋼表面上に該シリコーン組成物由来の残存物が観察されないことを特徴とする粘着剤用シリコーン組成物である。
【0014】
また、本発明は、基材と、該基材上に施与された粘着層からなる粘着テープにおいて、該粘着層が、上記本発明の粘着剤用シリコーン組成物を含むことを特徴とする粘着テープである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘着剤用シリコーン組成物を使用すれば、250℃以上に加熱された後であっても、糊残り無く且つしみの発生も無く、剥離可能である粘着テープが得られる。該粘着テープは、金属特にプリント基板の回線保護のマスキングテープ用として有用である。また、従来のものより粘着力が小さいため、剥離が容易な、又、幅広の粘着テープやシートとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明のシリコーン組成物は、
下記(A)と(B)とを反応させて得られる混合物、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン、
(B)R13SiO0.5単位およびSiO2単位を有するポリオルガノシロキサン(但しR1は互いに異なっていてよい、炭素数1〜10の1価炭化水素基)、
(C)SiH基を有するポリオルガノシロキサン、
(D)制御剤、及び
(E)白金系触媒、
を含む。以下、各成分について説明する。
【0017】
ポリオルガノシロキサン(A)は1分子中に少なくとも2つアルケニル基を有し、好ましくはポリオルガノシロキサン(A)100g中に、0.0015〜0.06モル、より好ましくは、0.002〜0.0モル、最も好ましくは0.002〜0.04モル含む。アルケニル基が1分子中に2つ未満であると、ポリシロキサンの網目構造が形成されない。
【0018】
ポリオルガノシロキサン(A)は、下記式で示されるもののいずれか又はこれらの混合物であることが好ましい。
R1(3-a)XaSiO-(R1XSiO)m-(R12SiO)n-SiR1(3-a)Xa

R12(HO)SiO-(R1XSiO)m+2-(R12SiO)n-SiR12(OH)

(式中、R1は互いに異なっていてよい、脂肪族の不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、Xはアルケニル基含有有機基であり、aは0〜3の整数、好ましくは1、mは0以上、nは100以上の数であり、aとmは同時に0にならない。また、m+nはこのポリジオルガノシロキサンの25℃における粘度を500mPa・s以上とする数である。)
【0019】
上式において、R1としては、炭素数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基などが例示され、なかでもメチル基及びフェニル基が好ましい。
【0020】
Xのアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のものが好ましく、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、シクロヘキセニルエチル基、及びビニルオキシプロピル基などが例示され、なかでも、工業的にはビニル基が好ましい。
【0021】
ポリオルガノシロキサン(A)の性状はオイル状もしくは生ゴム状であってよい。ポリオルガノシロキサン(A)の粘度は、25℃において、オイル状のものであれば1000mPa・s以上、特に10、000mPa・s以上が好ましい。粘度が前記下限値未満では、均一な塗工が困難となり、又、硬化性が高くなり過ぎて、架橋密度が上がるため粘着力が発現しない場合がある。また、生ゴム状のものであれば、30%の濃度となるようにトルエンで溶解したときの粘度が100、000mPa・s以下が好ましい。粘度が該値を越えると、組成物の撹拌が困難になる。なお、(A)成分は、2種以上のポリオルガノシロキサンの混合物であってもよい。
【0022】
ポリオルガノシロキサン(B)は、R13SiO0.5単位(R1は前記)およびSiO2単位を含有し、好ましくはR13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が0.6〜1.7、より好ましくは0.7〜1.0である。R13SiO0.5単位/SiO2単位のモル比が前記範囲外であると、粘着力、タック、又は保持力が低下することがある。
【0023】
ポリオルガノシロキサン(B)は、OH基を含有していてもよく、OH基含有量は4.0質量%以下のものが好ましい。OH基が4.0質量%を超えるものは粘着剤の硬化性が低下する理由により好ましくない。また、本発明の特性を損なわない範囲で、R1SiO1.5単位及び/又はR12SiO単位を含有してもよい。ポリオルガノシロキサン(B)は、2種以上のオルガノシロキサンの混合物であってもよく、該2種以上のものが縮合された形態であってもよい。
【0024】
本発明の組成物は、上記ポリオルガノシロキサン(A)と(B)とを所定の反応に付して得られる反応混合物として含むことを特徴とする。反応を行うには、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、オクタン、エチルベンゼンなどの溶剤に溶解した(A)と(B)の混合物を塩基性触媒の存在下で、好ましくは80〜150℃の温度で2〜24時間、加熱する。該反応においては、主として(B)と(B)の反応物、及び(A)と(B)の縮合物が生成する。斯かる縮合物とすることによって、糊残りやしみの主原因であるとされている低分子量のポリオルガノシロキサンが高分子状となり、該低分子量物の高温化での移行が防止されるものと考えられる。
【0025】
前記有機溶剤としては、ルエン、キシレン、などの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィン、などの脂肪族炭化水素系溶剤、工業用ガソリン、石油ベンジン、ナフサソルベント、などの炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、などのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、2−メトキシエチルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、などの複官能性溶剤、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシロキシ)シラン、などのシロキサン系溶剤、またはこれらの混合溶剤、などがあげられる。工業的にはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、イソパラフィンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、またはこれらの混合物が好ましい。
【0026】
塩基性触媒としては、(A)と(B)との縮合反応を進行させるものであれば、公知のものを使用することができるが、粘着剤組成物内に残存した場合にアルケニル基とHiS基との付加反応を阻害するものであってなはらない。
【0027】
該塩基性触媒としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、などの炭酸水素塩、ナトリウムメトキシド、カリウムブトキシドなどの金属アルコキシド、ブチルリチウムなどの有機金属、カリウムシラノレート、アンモニアガス、アンモニア水、メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、などの窒素化合物、などがあげられる。アンモニアガス、アンモニア水が好ましい。
【0028】
反応温度は、上述のように80〜150℃とすることができ、通常は、先に述べた有機溶剤の還流温度で行うことができる。反応時間は、糊残りが観察されないようにするのに十分な時間であればよく、典型的には、1時間から24時間、より典型的には2時間から10時間である。
【0029】
さらに、反応終了後、必要に応じて、塩基性触媒を中和する中和剤を添加しても良い。中和剤としては、塩化水素、二酸化炭素などの酸性ガス、酢酸、オクチル酸、クエン酸などの有機酸、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、などがあげられる。
【0030】
上記反応における(A)/(B)の混合重量比は、20/95〜80/5、好ましくは30/70〜70/30である。(A)成分のポリオルガノシロキサンの配合比が前記範囲外であると、組成物の粘着力が不充分となる。
【0031】
上記反応物に適宜、溶媒を追加して約40℃まで冷却した後、下記(C)〜(E)を配合して、本発明の組成物とする。
SiH基を有するポリオルガノシロキサン(C)は、ポリオルガノシロキサン(A)及びその反応物中のアルケニル基と反応して架橋構造を形成する。ポリオルガノシロキサン(C)は、1分子中にSiH基を少なくとも3個以上有することが好ましい。(C)の分子構造は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0032】
ポリオルガノシロキサン(C)は、SiH基を含むシロキサン単位に加えて、SiH基を含まないシロキサン単位とを含む。好ましくは、(SiH基を含むシロキサン単位/SiH基を含まないシロキサン単位)のモル比が、5/5〜9/1、より好ましくは6/4〜8/2である。
【0033】
SiH基を含むシロキサン単位と、SiH基を含まないシロキサン単位とを含むポリオルガノシロキサン(C)の好ましいものは、下記式で表されるポリオルガノシロキサン(C)のいずれか、又は、混合物である。

(R1は前記の炭化水素と同様であり、bは0または1、xは1以上の整数、但しbが0のときは、xは3以上の整数であり、yは1以上の整数であり、また、sは3以上の整数、tは1以上の整数であり、好ましくは8≧s+t≧3の整数を示す。)
上記ポリオルガノシロキサンは、y又はtが1以上の整数であり、SiH基を含むシロキサン単位に加えて、SiH基を含まないシロキサン単位を含む。これらの単位は、ブロックとして含まれていても、ランダムに含まれていてもよい。ポリオルガノシロキサン(C)が、SiH基を含有するシロキサン単位のみで構成されていると、250℃を超える高温の熱履歴を与えた場合、糊残り評価において、非常に軽度な「糊残り」とも言い得る「粘着剤の痕跡」が認められる場合がある。
【0034】
このオルガノポリシロキサン(C)の25℃における粘度は、1〜5、000mPa・sであることが好ましく、5〜500mPa・sがさらに好ましい。
【0035】
オルガノポリシロキサン(C)の使用量は、(A)成分中のアルケニル基モル数に対する(C)成分中のSiH基のモル数比、即ち、(C)成分中のSiH基のモル数/(A)成分中のアルケニル基モル数、が0.1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは3〜15の範囲である。
(C)成分が前記下限値未満の量では架橋が不十分となり、これに伴い、粘着力の上昇、保持力の低下、又は糊残りの増加を来す場合がある。一方、前記上限値を超えると架橋密度が高くなり十分な粘着力及びタックが得られないことがある。また、前記上限値を超えると、組成物の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0036】
制御剤(D)は、粘着剤用シリコーン組成物が、加熱硬化される前に増粘やゲル化をおこさないようにするために添加するものである。例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられる。好ましくは、1−エチニルシクロヘキサノール、1,1,ジメチル−1―トリメチルシロキシ−エチンなどが使用される。
【0037】
(D)の配合量は、反応させる前の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0〜8.0質量部の範囲であればよく、特に0.05〜2.0質量部が好ましい。前記上限値を超えて添加すると、硬化が阻害される場合がある。
【0038】
白金系触媒(E)としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物などが例示され、なかでも、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物が好ましく、商品名CAT−PL−50T(信越化学工業製)で市販されている。
【0039】
(E)成分の添加量は、反応前の(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対し、白金分として1〜5,000ppm、好ましくは5〜2,000ppmである。添加量が前記下限値未満では硬化性が低下して架橋密度が不十分となり、粘着力の上昇、保持力の低下、糊残りの増加を来すことがある。一方、前記上限値を超えると、組成物の使用可能時間が短くなる場合があり、また触媒は高価であるので、経済的にも不利である。
【0040】
上記(A)と(B)との反応混合物、(C)、(D)及び(E)を含む本発明のシリコーン組成物は、下記評価方法(以降、「糊残り性評価方法」と言う場合がある)、
(1)シリコーン組成物を、硬化後の厚みが28〜32μmになるように基材テープ上に塗布した後110℃〜140℃で1〜3分加熱して粘着テープを調製し、
(2)該粘着テープの粘着面側をステンレス鋼表面に圧着した後、最高温度250℃〜300℃で、少なくとも10分間加熱し、次いで、
(3)室温まで冷却した後、該テープを手動によりステンレス鋼から剥がして、ステンレス鋼表面を目視観察する、
において、ステンレス鋼表面上にシリコーン組成物由来の残存物が何も観察されないことを特徴とする。該評価法は、実際の半導体部品製造工程、特にリフロー工程、を反映する。ステップ(1)において、市販の基材テープ、例えばポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート等ポリマーテープ、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔テープ、和紙、合成紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙テープ、布、ガラス繊維製のテープを使用することができ、糊残りの有無は外基材テープの種類には依存しない。ステップ(2)において、工程における特性要求に応じて、最高温度及び最高温度の維持時間を適宜調整すれば、顧客ニーズに応える組成物を製造するための評価基準となる。また、ステンレス鋼以外の金属、例えば、銅、アルミニウム、金メッキ付き銅、及び銅合金等、のいずれかを使用することができる。ステップ(3)の観察は、機器分析法によることも可能であるが、発明者らが検討したところ、目視観察で残渣が認められなければ、部品の後処理において何ら問題を生じなかった。
【0041】
好ましくは、本発明のシリコーン組成物は、上記ステップ(1)において基材テープとして25mm巾のポリイミドテープを使用して調製された粘着テープを、室温で18〜22時間放置後に、25℃において、引張り試験機を用いて、300mm/分の引張り速度で測定した該テープの180度剥離が、0.05〜4N/25mm、より好ましくは0.05〜3N/25mmである。本剥離強度は、室温での粘着性の指標となり、後述の実施例で示すように、剥離強度が前記下限値未満であると、被着体に粘着せず、前記上限値を超えると、糊残りを生じる。但し、180度剥離は、基材の弾性に依存するので、テープの用途に応じて、適宜選定することが好ましい。
【0042】
さらに、本発明のシリコーン組成物は、しみの発生が無い。しみの発生機構については明かではないが、上述したように、低分子量物の移行が原因の一つであると考えられる。しみは、被着体金属の表面が平滑な場合、特に、金属がステンレス鋼の場合に発生しやすく、さらに、被着体と粘着剤層との間に気泡が在って粘着剤層が被着体から浮いた部分にしみが多く観察されることが分かった。そこで、本発明では、しみ発生の試験を鏡面研磨されたステンレス鋼を用い、粘着剤が該ステンレス鋼から浮いた部分ができるようにして、試験した。その詳細については、後述する。
【0043】
本発明の粘着剤用シリコーン組成物には、耐熱性を改善する目的で(F)ヒンダードアミン化合物を添加しても良い。(F)ヒンダードアミン化合物は分子中に下式の構造を有するものが好ましい。
【0044】
【化1】

ここで、Rは互いに異なっていてよい、炭素数1〜6の1価炭化水素基であり、例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基などのアリール基などであり、特にメチル基が好ましい。
【0045】
上記構造を含むヒンダードアミン化合物の例を以下に示す。
【化2】

【化3】

【0046】
(F)の配合量は、反応前の(A)と(B)の合計100質量部に対して0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部である。配合量が前記下限値未満では糊残り性改良の効果が小さく、前記上限値を越えると粘着性が損なわれることがある。(F)として、2種以上のアミン化合物を併用してもよい。
【0047】
上記ヒンダードアミン化合物(F)に代えて、又は、加えて、更に耐熱性を改善する目的で(G)成分のフェノール系酸化防止剤を添加してもよい。フェノール系酸化防止剤(G)としては、特に分子中に下式の構造を有するものが好ましい。
【0048】
【化4】

【0049】
上記構造を有するフェノール系酸化防止剤の例を以下に示す。
【化5】

【0050】
【化6】

(mは0以上、nは1以上の整数)
【0051】
(G)の添加量は反応前の(A)と(B)の合計100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。配合量が、前記下限値未満では高温履歴を受けた場合の糊残り防止効果が十分発揮されず、前記上限値超では、粘着特性を阻害することがある。
【0052】
本発明の粘着剤用シリコーン組成物には、上記各成分以外に任意成分を添加することができる。例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のポリオルガノシロキサン、さらに、フェノール系、キノン系、チオエーテル系などの酸化防止剤、トリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤、リン酸エステル系、ハロゲン系、アンチモン系などの難燃剤、カチオン活性剤、アニオン活性剤、非イオン系活性剤などの帯電防止剤、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィンなどの脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料などが使用される。
【0053】
上記のように配合された粘着剤用シリコーン組成物は、種々の基材に塗工し、所定の条件にて硬化させることにより粘着剤層とすることができる。基材としては、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルム、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、和紙、合成紙、ポリエチレンラミネート紙などの紙、布、ガラス繊維、これらのうちの複数を積層してなる複合基材が挙げられる。
【0054】
基材と粘着層の密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された基材を用いてもよい。
【0055】
塗工方法は、公知の塗工方式を用いて塗工すればよく、コンマコーター、リップコーター、ロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、キスコーター、グラビアコーター、スクリーン塗工、浸漬塗工、キャスト塗工などが挙げられる。また、塗工量は用途に応じて設定されるが、典型的には、硬化したあとの粘着剤層の厚みとして2〜200μm、マスキングテープ用途には、5〜50μmである。
【0056】
塗布された組成物の硬化条件は塗工量等に応じて適宜調整されるが、典型的には80〜130℃で30秒〜3分である。
【0057】
上記のように基材に直接塗工して粘着テープを製造してもよいし、剥離コーティングが施された剥離性フィルムや剥離紙に塗工して硬化を行った後、基材を貼り合わせて粘着層を転写することによって粘着テープを製造してもよい。
【0058】
本発明の粘着剤用シリコーン組成物を用いて製造した粘着テープの被着体は特に限定されない。例えば、ステンレス、銅、鉄、などの金属、これらの表面がメッキ処理や防錆処理された金属、ガラス、陶磁器、セラミックス、ポリテトラフロロエチレン、ポリイミド、エポキシ、ノボラック樹脂などの樹脂、さらにこれらのうちの複数が複合された複合材上に粘着させることができる。
[実施例]
【0059】
以下、実施例と比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。以下において、部数は質量部数であり、Meはメチル基、Viはビニル基を表す。
【0060】
各例で調製した組成物を、下記の糊残り性評価法及び粘着力評価法に従い評価した。
糊残り性
粘着剤用シリコーン組成物溶液を、厚み25μm、幅25mmのポリイミドフィルムに硬化後の厚みが30μmとなるようにアプリケータを用いて塗工した後、130℃、1分の条件で加熱して硬化させ、粘着テープを作成した。この粘着テープを金属板(研磨したステンレス板)に貼りつけ、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを、該テープ基材上で1往復させることにより該テープを圧着した後、金属板を280℃の恒温槽中で放置した。表1に示す所定時間後に金属板を取り出し、室温まで冷やした後、粘着テープを手で剥がして、金属板の表面に粘着剤由来の物質が残留するかどうかを目視観察した。糊残りなく剥離できたものをA、一部糊残りするものをB、ほぼ全面が糊残りするものをCとした。
【0061】
しみ発生の有無
糊残り性試験と同様の方法で、粘着テープを作成した。この粘着テープを金属板1(鏡面仕上げを施したステンレス板)に貼りつけた。金属板上にあらかじめ厚み1mmの、金属板2(鏡面仕上げステンレス鋼、25mm幅)を金属板1と直交させて設置し、高さ1mmの段差を作成した。粘着テープの粘着面側を、金属板1及び2の表面上に、金属板2を跨いで、前記段差部分に気泡が残るようにして貼り付け、重さ2kgのゴム層で被覆されたローラーを、該テープ基材上で1往復させることにより該テープを圧着した後、金属板1を280℃の恒温槽中で放置した。表1に示す所定時間後に金属板1を取り出し、室温まで冷やした後、粘着テープを手で剥がして、金属板1と金属板2の境目表面に変色が発生するかどうかを目視観察した。変色が発生しなかったものをA、発生したものをB、糊残りにより判別出来なかったものをCとした。
【0062】
粘着力
糊残り性評価と同様の方法で粘着テープを作成し、同様の方法によりステンレス板に圧着した。室温で約20時間放置した後、25℃において、引っ張り試験機を用いて300mm/分の引張り速度で180゜の角度でテープをステンレス板から引き剥がすのに要する力(N/25mm)を測定した。
【実施例1】
【0063】
30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、およびトルエン23.3部からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この反応混合物(100部)に、下式で表されるSiH基を1分子中に3つ以上有するポリオルガノシロキサン(C)1.25部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
Me3SiO−[MeHSiO]45−[Me2SiO]17−SiMe3
得られた混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0064】
[参考例1]
30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、およびトルエン23.3部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液(100部)に、下式で表されるSiH基を1分子中に3つ以上有するポリオルガノシロキサン1.25部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
Me3SiO−[MeHSiO]45−[Me2SiO]17−SiMe3
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【実施例2】
【0065】
30%トルエン溶液での粘度が21500mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.02モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、及びトルエン(23.3部)からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン3.67部と、エチニルシクロヘキサノール(0.1部)を添加し混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0066】
[参考例2]
30%トルエン溶液での粘度が21500mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.02モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、およびトルエン23.3部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン3.67部と、エチニルシクロヘキサノール(0.1部)を添加し混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【実施例3】
【0067】
30%トルエン溶液での粘度が24000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.04モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、及びトルエン23.3部からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン7.34部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加し混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0068】
[参考例3]
30%トルエン溶液での粘度が24000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.04モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、及びトルエン23.3部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン7.34部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加し混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【実施例4】
【0069】
30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン60部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液67部、及びトルエン40部からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン1.87部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0070】
[参考例4]
30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン60部、Me3SiO0.5単位及びSiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液67部、及びトルエン40部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン1.87部と、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部と、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【実施例5】
【0071】
実施例1の粘着剤用シリコーン組成物溶液に、さらに次式のヒンダードアミン化合物I(旭電化社製 アデカスタブLA57)0.2部を添加して混合した。
【化7】

得られた混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0072】
[参考例5]
参考例1の粘着剤用シリコーン組成物溶液に、上式のヒンダードアミン化合物I(旭電化社製 アデカスタブLA57)0.2部を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【実施例6】
【0073】
実施例1の粘着剤用シリコーン組成物溶液に、さらに次式のフェノール系酸化防止剤III(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、IRGANOX 1330)(0.5部)を添加した粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【化8】

上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0074】
[参考例6]
参考例1の粘着剤用シリコーン組成物溶液に、上式のフェノール系酸化防止剤III(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、IRGANOX 1330)(0.5部)を添加した粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0075】
[比較例1]
30%トルエン溶液での粘度が粘度が20000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.0014モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、トルエン23.3部からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン0.28部、エチニルシクロヘキサノール(0.1部)を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0076】
[比較例2]
30%トルエン溶液での粘度が粘度が20000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.0014モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、トルエン23.3部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液(100部)に、実施例1で使用したポリオルガノシロキサン0.28部、エチニルシクロヘキサノール(0.1部)を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0077】
[比較例3]
30%トルエン溶液での粘度が24000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液100部、トルエン23.3部からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、次式の架橋剤0.87部、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
Me3SiO−[MeHSiO]40−SiMe3
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0078】
[比較例4]
30%トルエン溶液での粘度が24000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40部、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液 100部、トルエン23.3部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液に(100部)に、次式の架橋剤0.87部、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
Me3SiO−[MeHSiO]40−SiMe3
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0079】
[比較例5]
30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン60部、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液 67部、トルエン40部からなる溶液に、28%アンモニア水(0.5部)を添加し室温で6時間撹拌した。その後、還流させながら4時間加熱してアンモニアガスと水を留去したのち放冷し、留出したトルエン量に相当するトルエンを加えた。この生成物(100部)に、比較例2で使用した架橋剤1.31部、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。
【0080】
[比較例6]
30%トルエン溶液での粘度が27000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMe2Vi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン60部、Me3SiO0.5単位、SiO2単位からなるポリシロキサン(Me3SiO0.5単位/SiO2単位=0.80)の60%トルエン溶液 67部、トルエン40部からなる混合溶液を作成した。この混合溶液に(100部)に、比較例2で使用した架橋剤1.31部、エチニルシクロヘキサノール0.1部を添加して混合した。
上記の混合物(シロキサン分60%)100部にトルエン50部、白金触媒CAT−PL−50T(信越化学工業社製)0.5部を添加してさらに混合し、シロキサン分約40%の粘着剤用シリコーン組成物溶液を調製した。

上記各シリコーン粘着剤の評価結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0082】
表1から分かるように、本発明の粘着剤用シリコーン組成物から得られた粘着層は、280℃もの高温に10分以上曝された後であっても、被着体に糊を残すことこなく、且つ、しみを発生させることなく、きれいに剥離される。従って、本発明の組成物から得られる粘着テープは、250℃以上のリフロー工程等において、マスクテープ又は仮止めテープとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)と(B)とを反応させて得られる混合物、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオルガノシロキサン、
(B)R13SiO0.5単位およびSiO2単位を有するポリオルガノシロキサン(但しR1は互いに異なっていてよい、炭素数1〜10の1価炭化水素基)
(C)SiH基を有するポリオルガノシロキサン、
(D)制御剤、及び
(E)白金系触媒
を含む粘着剤用シリコーン組成物であって、
(1)該組成物を、基材上に塗布した後110℃〜140℃で1〜3分加熱して粘着テープを調製し、
(2)該粘着テープの粘着面側をステンレス鋼表面に圧着した後、最高温度250℃〜300℃で、少なくとも10分間加熱し、次いで、
(3)室温まで冷却した後、該粘着テープを手動によりステンレス鋼から剥がして、ステンレス鋼表面を目視観察した場合に、該ステンレス鋼表面上に該シリコーン組成物由来の残存物が観察されないことを特徴とする粘着剤用シリコーン組成物。
【請求項2】
前記反応が、有機溶剤中でアルカリ性触媒存在下、80〜150℃の温度で2〜24時間行われることを特徴とする請求項1記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
前記工程(1)において、基材として25mm巾のポリイミドテープを使用して調製した粘着テープを、室温で18〜22時間放置後に、25℃において引張り試験機を用いて、300mm/分の引張り速度で測定した該テープの室温でのステンレス鋼に対する180度剥離が0.05〜4N/25mmである、ことを特徴とする請求項1または2記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
前記粘着剤用シリコーン組成物が、
下記(A)と(B)とを反応させて得られる混合物、
アルケニル基含有量が0.0015〜0.06モル/100gのポリオルガノシロキサン(A)20〜95質量部、
SiO2単位モル数に対するR13SiO0.5単位モル数の比が0.6〜1.7のポリオルガノシロキサン(B)80〜5質量部、
1分子中にSiH基を3個以上含有するポリオルガノシロキサン(C)を、ポリオルガノシロキサン(A)のアルケニル基モル数に対して、SiH基モル数の比が0.5〜20となる量、
制御剤(D)を、反応前の(A)と(B)の合計100質量部に対して0〜8.0質量部、及び
白金系触媒(E)を、反応前の(A)と(B)の合計100質量部に対して白金分として1〜5000ppmとなる量、
含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
ポリオルガノシロキサン(A)のアルケニル基含有量が0.002〜0.04モル/100gである、請求項4記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
ポリオルガノシロキサン(C)が、(A)のアルケニル基モル数に対するSiH基モル数の比が3〜15となる量で含まれることを特徴とする請求項4又は5記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
ポリオルガノシロキサン(C)が、下記式で表されるポリオルガノシロキサンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の粘着剤用シリコーン組成物。

(式中、R1は互いに異なっていてよい、脂肪族不飽和結合を含まない1価炭化水素基であり、bは0または1であり、xは1以上の整数、但しbが0のときは3以上の整数であり、yは1以上の整数であり、sは2以上の整数であり、及び、tは1以上の整数である)
【請求項8】
反応前の(A)と(B)の合計100質量部に対して0.01〜1質量部の(F)ヒンダードアミン化合物を、および/または、反応前の(A)と(B)の合計100質量部に対して0.1〜10質量部の(G)フェノール系酸化防止剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
基材と、該基材上に施与された粘着層からなる粘着テープにおいて、該粘着層が、請求項1〜8のいずれか1項記載の粘着剤用シリコーン組成物を含むことを特徴とする粘着テープ。

【公開番号】特開2006−213810(P2006−213810A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27644(P2005−27644)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】