説明

粘着剤組成物、粘着剤および粘着シート

【課題】シーズニング処理を省略した場合であっても、初期粘着力が制御され、リワーク性や耐久性等に優れた粘着剤層を得るための粘着剤組成物等を提供する。
【構成】(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物等であって、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物を含有するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤および粘着シートに関する。特に、シーズニング処理を省略した場合であっても、初期粘着力が制御され、リワーク性に優れるとともに、所定環境下における耐久性にも優れた粘着剤層を構成するための粘着剤組成物、粘着剤およびそのような粘着剤を用いた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置の製造は、2枚のガラス板の間に液晶成分を挟持させた液晶セルの表面に対し、偏光板を積層させることにより行われている。
かかる偏光板の積層は、偏光板の片面に設けられた粘着剤層を、液晶セルの表面に対して当接させた後、押し付けることで行われており、所定の粘着特性や耐久性が要求されている。
一方、液晶セルに対して偏光板を積層する際に、貼合ミス等の理由によって再貼合する場合が生じるが、液晶セルに対する糊残りを防止して、所定のリワーク性を有することも要求されている。
【0003】
そこで、アクリル系ポリマーに対して、所定量の光硬化性成分(紫外線硬化成分)と、熱硬化成分と、モノマー型シランカップリング剤(アルコキシシラン部分が加水分解縮合されていないシランカップリング剤)と、を配合してなる感圧接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、アクリル系共重合体100質量部に対して、光硬化性成分としての活性エネルギー線硬化型化合物を1〜100質量部、および熱架橋成分としての架橋剤を0.01〜20質量部、を含有する粘着性材料が開示されている。
さらに、該粘着性材料の固形分100質量部に対して、モノマー型シランカップリング剤を0.001〜10質量部配合し、活性エネルギー線を照射してなる粘着剤が開示されており、該粘着剤は、偏光板を液晶セル等に耐久性よく接着でき、耐光漏れ性や、リワーク性に優れる旨が記載されている。
【0004】
また、液晶素子に対する糊残り性等を改善すべく、アクリル系ポリマーに対して、所定のポリマー型シランカップリング剤や架橋剤等を配合してなる液晶素子用感圧接着剤組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、(1)アクリル系ポリマー100重量部に対して、(2)無機物に対する官能基であるアルコキシ基、有機物に対する官能基であるエポキシ基、およびアクリル系ポリマーに対する官能基であるポリエーテル基等をそれぞれ有するポリマー型シランカップリング剤0.001〜4重量部と、(3)イソシアネート系架橋剤0.001〜10重量部と、を配合してなる液晶素子用感圧接着剤組成物である。
【0005】
さらに、偏光板の白抜け性等を向上させるべく、所定の複数のアクリル樹脂と、所定のシリコーンオリゴマーと、熱架橋剤と、を含む粘着剤やそれを用いた偏光板が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、(1)ブチルアクリレート等のモノマー成分に由来した重量平均分子量が100万〜200万の第1のアクリル樹脂と、(2)アクリル酸等の極性モノマー成分に由来した重量平均分子量が5万〜50万の第2のアクリル樹脂と、(3)所定のアルコキシシラン化合物に由来した構造単位を2〜100個含有するシリコーンオリゴマーと、(4)熱架橋剤と、を含んでなる粘着剤やそれを用いた偏光板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−235568号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特許第3498158号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2006−316256号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の粘着剤組成物は、熱架橋剤も含んでいることから、それを完結させるための長時間(7日程度)にわたるシーズニング処理が必要であった。
一方、該粘着剤組成物から単に熱架橋剤成分を除いた場合、凝集力不足に起因して粘着力が増大し、リワーク性が悪化したり、被着体に糊残りが生じる場合があるという問題が見られた。
【0008】
また、特許文献2の粘着剤組成物や特許文献3に開示された粘着剤組成物は、ポリマー型シランカップリング剤と反応させたり、凝集力を向上させるべく、熱架橋剤を配合したりしており、特許文献1と同様に、長時間にわたるシーズニング処理が必要であった。
また、それぞれ光硬化反応を利用しておらず、ポリマー型シランカップリング剤と、熱架橋剤との組み合わせを用いていることから、シーズニング処理を施した後であっても、初期粘着力が高くなりやすく、十分なリワーク性を得ることが困難になるという問題も見られた。
より具体的には、特許文献2の実施例に開示されているように、たとえ、7日間のシーズニング処理を施した場合であっても、初期粘着力(初期接着強度)の値が1500〜1900g/25mmと高すぎるという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明者等は、以上のような事情に鑑み、鋭意努力したところ、(B)成分である光硬化性成分を含む粘着剤組成物中に、(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物(オリゴマー型シランカップリング剤と称する場合もある。)を所定量配合することによって、シーズニング処理を省略しても、初期粘着力が所定範囲に制御され、光学フィルム等に適用した場合に、リワーク性に優れるとともに、耐久性試験においても良好な結果が得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明の目的は、シーズニング処理を省略した場合であっても、初期粘着力が制御され、リワーク性や耐久性等に優れた粘着剤層を得るための粘着剤組成物、粘着剤およびそのような粘着剤を用いた粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物であって、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物(オリゴマー型シランカップリング剤)を含有するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることを特徴とする粘着剤組成物が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、本発明の粘着剤組成物の配合によれば、(B)成分である光硬化性成分(活性エネルギー線硬化型化合物)と、(C)成分であるオリゴマー型シランカップリング剤と、を含んでいることから、活性エネルギー線を照射することにより、シーズニング処理を省略した場合であっても、初期粘着力が所定範囲に制御され、リワーク性に優れるとともに、耐久性にも優れた粘着剤を得ることができる。
また、本発明の粘着剤組成物であれば、(B)成分としての光硬化性成分を含んでいることから、得られる粘着剤の初期粘着力や高温、湿熱および高温・低温の間を変化する環境下における耐久性を、さらに好適な範囲に調節することができ、しかも、シーズニング期間を省略したり、もしくは短縮したりすることができる。
【0011】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、(C´)成分として、シランカップリング剤の非加水分解物(モノマー型シランカップリング剤と称する場合がある。)を含有するとともに、当該(C´)成分であるシランカップリング剤の非加水分解物の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように(C)成分と、(C´)成分とを併用することにより、粘着剤組成物から得られる粘着剤の初期粘着力を、より好適な範囲に調節することができるとともに、さらに優れた耐久性を得ることができる。
なお、(C)成分と、(C´)成分との併用であれば、(C´)成分単独使用で発生する初期粘着力が高くなりやすいという問題を解消できることが判明している。
【0012】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、(C)成分の含有量をT1とし、(C´)成分の含有量をT2としたときに、T1/T2の比率を0.01〜99の範囲内の値とすることが好ましい。
このように(C)成分および(C´)成分の配合比率を制御することにより、粘着剤組成物から得られる粘着剤の初期粘着力を、より好適な範囲に調節することができるとともに、さらに優れた耐久性を得ることができる。
【0013】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体が、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、の混合物であって、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来した構造部分および水酸基含有ビニル単量体に由来した構造部分を含むとともに、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来した構造部分およびカルボキシル基含有ビニル単量体に由来した構造部分を含むことが好ましい。
このように構成することにより、粘着剤組成物から得られる粘着剤の初期粘着力の制御がより良好になって、かつ、時間の経過とともに、粘着力が過度に変化するのを防止することができる。
【0014】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、(B)成分である光硬化性成分の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、1〜25重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように(B)成分の含有量を制御することにより、粘着剤組成物から得られる粘着剤の粘着力や貯蔵弾性率を、より好適な範囲に調節することができる。
【0015】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、(D)成分として帯電防止剤を含むとともに、当該帯電防止剤の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように帯電防止剤を含むことによって、例えば、リワーク時における静電気の発生を効果的に抑制することができる。
【0016】
また、本発明の粘着剤組成物を構成するにあたり、(D)成分である帯電防止剤の分散助剤を、さらに含むとともに、当該分散助剤が、アルキレングリコールジアルキルエーテルであって、(D)成分である帯電防止剤と、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の添加割合(モル比)を30:70〜70:30の範囲内の値とすることが好ましい。
このように、所定の分散助剤を用いた帯電防止剤を含むことによって、帯電防止剤の分散性が著しく向上し、比較的少量の配合であっても、静電気の発生を効果的に抑制することができる。
【0017】
さらに、本発明の別の態様は、粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着剤であって、下記工程(1)〜(3)を経て形成されることを特徴とする粘着剤である。
(1)(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物であって、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物を配合するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とする粘着剤組成物を準備する工程
(2)粘着剤組成物を、剥離フィルムに対して塗布する工程
(3)活性エネルギー線を50〜1000mJ/cm2の範囲内の照射量にて照射し、粘着剤を得る工程
すなわち、このように構成することにより、シーズニング処理を省略した場合であっても、リワーク性に優れるとともに、高温、湿熱および高温・低温の間を変化する環境下においても耐久性にも優れた粘着剤を得ることができる。
【0018】
また、本発明のさらに別の態様は、基材上に、上述した粘着剤を含む粘着剤層を備えてなる粘着シートである。
すなわち、このように構成することにより、シーズニング処理を省略した場合であっても、リワーク性に優れるとともに、所定環境下においても耐久性にも優れた粘着シートを得ることができる。
【0019】
また、本発明の粘着シートを構成するにあたり、基材が、光学フィルム基材であるとともに、当該光学フィルム基材の少なくとも一方に、粘着剤層を備えることが好ましい。
このように構成することにより、シーズニング処理を省略した場合であっても、リワーク性に優れるとともに、所定環境下においても耐久性にも優れた光学フィルム基材を有する粘着シートを得ることができる。
なお、本発明においては、剥離フィルムも基材の一種として定義されるが、光学フィルム基材等との混同を防ぐ観点から、光学フィルム基材等を「基材」と称する一方で、剥離フィルムについては、敢えて「基材」と称せず、単に剥離フィルムと称する場合がある。
【0020】
また、本発明の粘着シートを構成するにあたり、基材が、剥離フィルムであるとともに、粘着剤層における当該剥離フィルムの反対面に対し、別の剥離フィルムを積層してなることが好ましい。
このように構成することにより、シーズニング処理を省略した場合であっても、リワーク性に優れるとともに、所定環境下においても耐久性にも優れた光学フィルム基材を有する粘着シートを得ることができる一方で、粘着シートの取り扱い性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、シランカップリング剤の含有量と、粘着力と、の関係を説明するために供する図である。
【図2】図2は、塗工経時時間と、初期粘着力と、の関係を説明するために供する図である。
【図3】図3(a)〜(d)は、粘着剤組成物等の使用態様、および粘着シートの製造方法を説明するために供する概略図である。
【図4】図4は、粘着剤組成物等の使用態様を説明するために供する別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態は、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物であって、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物(オリゴマー型シランカップリング剤)を含有するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることを特徴とする粘着剤組成物である。
以下、本発明の第1の実施形態を、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0023】
1.(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体
(1)種類
まず、本発明において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの両方を意味する。
本発明における(メタ)アクリル酸エステル重合体の構成単位としての(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルを使用することが好ましい。
この理由は、(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数が20よりも大きな値となると、側鎖同士が配向・結晶化することにより、得られる組成物の粘着性が失われる場合があるためである。一方、かかるアルキル基の炭素数が小さいと、貯蔵弾性率が大きくなって、逆に耐久性が不十分になる場合がある。
このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチルおよび(メタ)アクリル酸ステアリル等の少なくとも一種に由来したものが挙げられる。
なお、粘着剤とした場合の貯蔵弾性率をより好適な範囲に調節する観点からは、(メタ)アクリル酸エステルにおけるアルキル基の炭素数を、2〜18の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜12の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0024】
また、分子内に官能基を有するビニル単量体を使用することも好ましい。
例えば、官能基として水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基の少なくとも1種を含むことが好ましく、具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸などが挙げられる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲であれば、炭素数が20より大きなアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の単量体を使用することも可能である。
【0025】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体において、共重合する際の単量体成分の全体量に対して、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合量を70〜99.5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合量が70重量%未満の値になると、他の共重合成分との相溶性が低下して、光学物性や耐久性が低下しやすくなる場合があるためである。
一方、かかる(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合量が99.5重量%を超えると、シランカップリング剤等の助剤との間の相互作用が弱くなり、耐久性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体において、それぞれ共重合する際の単量体成分の全体量に対して、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合量を80〜99重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、90〜98.5重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステルとは、例えば、(メタ)アクリル酸メチルのように、分子内に水酸基、カルボキシル基、アミノ基およびアミド基を有さない(メタ)アクリル酸エステルを意味する。
また、上述した共重合比は、各構成単位である単量体の仕込み量から算出される理論値を示す。
また、共重合形態については特に制限されるものではなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0026】
また、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体が、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、の混合物であって、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来した構造部分および水酸基含有ビニル単量体に由来した構造部分を含むとともに、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来した構造部分およびカルボキシル基含有ビニル単量体に由来した構造部分を含むことが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、粘着剤組成物から得られる粘着剤の初期粘着力の制御がより良好になって、かつ、耐久性により優れたものとすることができるためである。
すなわち、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、を併用することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体中の水酸基およびカルボキシル基により、オリゴマー型シランカップリング剤の反応性およびオリゴマー型シランカップリング剤の加水分解速度の制御が容易となって、全体的に粘着特性を安定させることができるためである。
【0027】
また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体における分子内に水酸基を有するビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0028】
また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体において、それを共重合する際の単量体成分の全体量に対して、水酸基含有ビニル単量体の配合量を0.5〜20重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、水酸基含有ビニル単量体の配合量が0.5重量%未満の値になると、オリゴマー型シランカップリング剤の加水分解速度を好適な範囲に調節するといったような添加効果を発現させることが困難となる場合があるためである。
一方、水酸基含有ビニル単量体の配合量が20重量%を超えると、相対的に、アルキル基の炭素数が1〜20の範囲内の値である(メタ)アクリル酸エステル単量体の配合量が減少し、共重合成分間の相溶性が低下して、得られた粘着剤における光学物性や耐久性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体を共重合する際の単量体成分の全体量に対して、水酸基含有ビニル単量体の配合量を1〜10重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜8重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体における分子内にカルボキシル基を有するビニル単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体において、それを共重合する際の単量体成分の全体量に対して、カルボキシル基含有ビニル単量体の配合量を1〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、カルボキシル基含有ビニル単量体の配合量が1重量%未満の値になると、耐久性向上といったような添加効果を発現しない場合があるためである。
一方、カルボキシル基含有ビニル単量体の配合量が30重量%を超えると、得られた粘着剤における光学物性やリワーク性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体を共重合する際の単量体成分の全体量に対して、カルボキシル基含有ビニル単量体の配合量を2〜10重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜8重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0031】
また、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体において、上述した単量体以外の共重合成分を、所定量の範囲で含有させることも好ましい。
例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
なお、上述した単量体以外の共重合成分を含有させる場合、その配合量を、それぞれ第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体を共重合する際の単量体成分の全体量に対して、0.01〜10重量%とすることが好ましい。
【0032】
(2)配合比
また、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成する第1および第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体の配合比に関して、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体/第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体で表わされる配合比(重量基準)を99/1〜60/40の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合比が、99/1よりも大きくなると、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体の添加効果が発現しない場合があるためである。
一方、かかる配合比が、60/40よりも小さくなると、リワーク性や光学特性等が低下する場合があるためである。
したがって、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するにあたり、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体/第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体で表わされる配合比(重量基準)を96/4〜80/20の範囲内の値とすることがより好ましく、93/7〜88/12の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0033】
(3)重量平均分子量
また、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成する(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量を、10万〜220万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が10万未満の値となると、耐久性が不十分となる場合があるためである。
一方、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量が220万を超えた値となると、粘度増大等による加工適性の低下を抑制することが困難になり、ひいては、帯電防止性が低下する場合があるためである。
したがって、(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量を、50万〜200万の範囲内の値とすることがより好ましく、100万〜180万の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算による平均分子量として、測定することができる。
【0034】
2.(B)成分としての光硬化性成分
また、本発明の粘着剤組成物は、(B)成分としての光硬化性成分を含むことを特徴とする。
この理由は、かかる光硬化性成分を含むことにより、光硬化させて粘着剤とした際の粘着力や貯蔵弾性率を、さらに好適な範囲に調節することができ、しかも、シーズニング期間を省略、もしくは短縮させることができるためである。
したがって、(B)成分である光硬化性成分と、(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物(オリゴマー型シランカップリング剤)等との組み合わせによって、図1に示す特性曲線Aに示されるように、初期粘着力を所定範囲内の値に制御し、かつ、図2に示す特性曲線Aに示されるように、塗工経時による粘着特性の変化が少なくなり、結果として、シーズニング処理を省略した場合であっても、優れたリワーク性や耐久性を得ることができる。
【0035】
(1)種類
かかる光硬化性成分としては、例えば、重量平均分子量が1000未満である多官能(メタ)アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマー、および(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアクリレート系ポリマー(以下、「アクリレートアダクトポリマー」と称する場合がある。)等が好適に用いられる。
【0036】
また、かかる重量平均分子量が1000未満である多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、2官能から6官能まで種々の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを用いることができる。
より具体的には、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートのジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどの2官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型、例えば、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能型多官能(メタ)アクリレート系モノマー等の一種単独または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0037】
また、このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、骨格構造に環状構造、例えば、炭素環式構造および複素環式構造あるいはいずれか一方の環状構造を有することが好ましい。
このような多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌレート構造を有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーや、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどが好適である。
これらのうち、特に、イソシアヌレート構造を有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。
なお、多官能(メタ)アクリレート系モノマーの分子量(計算値)は、通常1000未満程度である。
【0038】
また、アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量(GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート粒子換算値)を50,000以下の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量平均分子量であれば、多官能(メタ)アクリレート系モノマーとの相溶性が良好となるばかりか、光硬化性成分として、所定の光硬化反応速度が得られるためである。
したがって、アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量を1,000〜50,000の範囲内の値とすることがより好ましく、3,000〜40,000の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0039】
そして、このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系などが挙げられる。
ここで、ポリエステルアクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
また、エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応させ、エステル化することにより得ることができる。さらにまた、このエポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレートオリゴマーも用いることができる。
また、ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができ、ポリオールアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0040】
また、アクリレートアダクトポリマーとしては、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体において説明した(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に官能基を有するモノマーとの重合体を用い、該重合体の官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基および該官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
そして、このようなアクリレートアダクトポリマーの重量平均分子量(GPC法で測定した標準スチレン粒子換算値)を、通常、50万〜200万の範囲内の値とすることが好ましい。
【0041】
(2)含有量
また、(B)成分である光硬化性成分の含有量としては、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、1〜25重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、光硬化性成分の含有量が1重量部未満の値となると、粘着剤とした際の粘着力や貯蔵弾性率を、向上させることが困難になるためである。
一方、光硬化性成分の含有量が25重量部を超えた値となると、その他の成分と相分離して、粘着剤とした際の光学的特性を維持することが困難となり、光学フィルム基材への適用が困難になる場合があるためである。
したがって、光硬化性成分の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、紫外線硬化等の場合には、より迅速かつ確実に硬化させるために、光硬化性成分の含有量とともに、後述する光重合開始剤の含有量を考慮するものとする。
【0042】
(3)光重合開始剤
また、(B)成分である光硬化性成分を紫外線等で硬化させるには、反応開始のために光重合開始剤を添加することが好ましい。
かかる光重合開始剤としては、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0043】
また、このような光重合開始剤の含有量を、光硬化性成分100重量部に対して、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる光重合開始剤の含有量が1重量部未満の値となると、粘着剤とした際に、適度な架橋密度が得られなくなる場合があるためである。
一方、かかる光重合開始剤の含有量が30重量部を超えると、粘着剤中に配合した際に、光重合開始剤がブリードしやすくなったり、物性が低下しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、光重合開始剤の含有量を、光硬化性成分100重量部に対して、5〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、7.5〜15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0044】
3.(C)成分としてのシランカップリング剤の加水分解縮合物
(1)種類
また、本発明の粘着剤組成物に、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物(オリゴマー型シランカップリング剤)を含有させることを特徴とする。
すなわち、かかるシランカップリング剤の加水分解縮合物は、粘着剤組成物中に配合されることによって、例えば、液晶セル等のガラスからなる対象物と、偏光フィルム等の光学フィルム基材と、の密着性を効果的に向上させることに寄与する。
また、このような(C)成分であるオリゴマー型シランカップリング剤であれば、(B)成分である光硬化性成分等との組み合わせによって、図1に示す特性曲線Aに示されるように、初期粘着力を所定範囲内の値に制御し、かつ、図2に示す特性曲線Aに示されるように、塗工経時による粘着特性の変化が少なくなって、結果として、優れたリワーク性や耐久性を得ることができる。
【0045】
ここで、かかるシランカップリング剤の加水分解縮合物としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1つ有する有機ケイ素化合物の加水分解縮合物であって、粘着剤組成物との相溶性がよく、かつ、光透過性を有するものであることが好ましい。
より具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン等の加水分解縮合物を用いることが好ましい。
中でも、特に好ましいシランカップリング剤の加水分解縮合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン−テトラメトキシシランコポリマー等が挙げられ。
【0046】
また、かかるシランカップリング剤の加水分解縮合物は、構造単位としての有機ケイ素化合物を、2〜100の重合度で重合してなることが好ましい。
この理由は、かかる重合度が2未満、すなわちモノマー型シランカップリング剤となると、粘着剤における初期粘着力が大きくなって、十分なリワーク性を得ることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる重合度が100を超えた値となると、粘着剤における被着物への密着性が低下するためである。
したがって、シランカップリング剤の加水分解縮合物の重合度を、3〜50の範囲内の値とすることがより好ましく、5〜20の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
さらに、シランカップリング剤の加水分解縮合物の重量平均分子量としては、通常5,000〜50,000であり、好ましくは800〜10,000であり、特に好ましくは1,000〜5,000である。
【0047】
(2)含有量
また、(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量が、0.001重量部未満の値になると、偏光板等と、液晶セル等と、の密着性を向上させる効果を十分に発揮させることが困難となる場合があるためである。一方、かかるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量が、10重量部を超えた値になると、粘着性および耐久性が低下する場合があるためである。
したがって、シランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0048】
次いで、(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量に関して、図1を参照して、粘着剤組成物から形成された粘着剤層(光硬化後)のガラス表面への貼付1日後の初期粘着力に対する影響を説明する。
図1の横軸には、(A)成分100重量部に対するシランカップリング剤の含有量(重量部)を採って示してあり、縦軸に、実施例6等に準拠した配合組成の粘着剤(光硬化後)の初期粘着力(N/25mm)を採って示してある。
そして、特性曲線Aは、オリゴマー型シランカップリング剤を配合した粘着剤組成物から形成された粘着剤層の初期粘着力を示すラインであり、特性曲線Bは、モノマー型シランカップリング剤を配合した粘着剤組成物から形成された粘着剤層の初期粘着力を示すラインである。
【0049】
かかる特性曲線Aが示すように、オリゴマー型シランカップリング剤の含有量が多いほど、粘着剤層の初期粘着力が低下し、所定範囲内の値(例えば、0.05〜5.0N/25mm)に制御されていることが理解される。
それに対し、特性曲線Bが示すように、モノマー型シランカップリング剤を配合した場合、含有量にかかわらず、粘着剤層の初期粘着力が高い値(例えば、20N/25mm前後)となっていることが理解される。
したがって、粘着剤層の初期粘着力を所定範囲内の値に制御し、優れたリワーク性を発揮するためには、オリゴマー型シランカップリング剤を所定量配合することが有効であることが理解される。
【0050】
一方、特性曲線A´は、オリゴマー型シランカップリング剤を配合した粘着剤組成物から形成された粘着剤層における硝子表面への貼付後14日経過した後の粘着力(14日経過後粘着力)を示すラインであり、特性曲線B´は、モノマー型シランカップリング剤を配合した粘着剤組成物における貼付後14日経過した後の粘着力(14日経過後粘着力)を示すラインである。
そして、かかる特性曲線A´が示すように、オリゴマー型シランカップリング剤の含有量が多いほど、粘着剤組成物(光硬化後)における14日経過後粘着力も低下し、所定範囲内の値(例えば、0.05〜5.0N/25mm)に制御されており、初期粘着力の傾向とほとんど変化しないことが理解される。
それに対して、特性曲線B´が示すように、モノマー型シランカップリング剤を配合した場合、含有量の増加にともなって、粘着剤組成物(光硬化後)の14日経過後粘着力も増加してしまい、高い値(例えば、20〜45N/25mm)となっていることが理解される。
したがって、粘着剤組成物(光硬化後)の14日経過後粘着力についても、所定範囲内の値に制御するためには、オリゴマー型シランカップリング剤を所定量配合することが有効であることが理解される。
【0051】
(3)塗工経時時間との関係
次いで、図2を参照して、粘着剤組成物から形成された粘着剤層(光硬化後)における塗工経時時間と、粘着剤組成物から形成された粘着剤層のガラス表面への貼付1日後の初期粘着力との関係を説明する。すなわち、粘着剤組成物を光硬化させて、粘着剤を構成した、実際に、被着体に対して使用するまでの時間である塗工経時時間の相違によって、粘着力(初期粘着力)が変化することが知られている。
そこで、本願発明の粘着剤組成物から形成された粘着剤層の場合、塗工経時時間の相違によって、初期粘着力の値がどのように変化するかが問題となるが、図2の横軸には、粘着剤組成物から形成された粘着剤層(光硬化後)における塗工経時時間(日)を採って示してあり、縦軸に、かかる粘着剤組成物から形成された粘着剤層の初期粘着力(N/25mm)を示してある。
そして、特性曲線Aは、オリゴマー型シランカップリング剤および光硬化性成分を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層(実施例6相当)の初期粘着力を示すラインであり、特性曲線Bは、モノマー型シランカップリング剤および光硬化性成分を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層(比較例2相当)の初期粘着力を示すラインであり、特性曲線Cは、オリゴマー型シランカップリング剤およびモノマー型シランカップリング剤、並びに、光硬化性成分を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層(実施例2相当)の初期粘着力を示すラインである。
【0052】
かかる特性曲線Aが示すように、オリゴマー型シランカップリング剤および光硬化性成分を含む粘着剤層の場合、塗工経時時間によらず、初期粘着力の値が安定化し、所定範囲内の値(例えば、0.05〜5.0N/25mm)に制御されていることが理解される。
それに対して、特性曲線Bが示すように、モノマー型シランカップリング剤および光硬化性成分を含む粘着剤組成物の場合、塗工経時時間によらず、初期粘着力の値が高い(例えば、30N/25mm前後)ことが理解される。
また、特性曲線Cが示すように、オリゴマー型シランカップリング剤およびモノマー型シランカップリング剤、並びに、光硬化性成分を含む粘着剤層の場合であれば、特性曲線Aの場合よりも初期粘着力を僅かに増加させつつも、所定範囲内の値(例えば、6.0N/25mm前後)に制御できることが理解される。
したがって、塗工経時時間にかかわらず、粘着剤組成物(光硬化後)の初期粘着力を所定範囲内の値に制御し、優れたリワーク性を発揮するためには、オリゴマー型シランカップリング剤および光硬化性成分を含む粘着剤組成物の構成とすることが有効であることが理解される。
また、モノマー型シランカップリング剤を用いる場合であっても、オリゴマー型シランカップリング剤と併用することで、塗工経時時間にかかわらず、優れたリワーク性を発揮できることが理解される。
【0053】
一方、特性曲線A´は、オリゴマー型シランカップリング剤、光硬化性成分および熱硬化性成分(以下、熱架橋剤と称する場合もある。)を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層(実施例15相当)の初期粘着力を示すラインであり、特性曲線B´は、モノマー型シランカップリング剤、光硬化性成分および熱硬化性成分を含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層(比較例6相当)の初期粘着力を示すラインである。
なお、特性曲線A´およびB´に相当する粘着剤組成物における熱硬化性成分の含有量は、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、2.5重量部である。
【0054】
まず、特性曲線B´が示すように、モノマー型シランカップリング剤、光硬化性成分および熱硬化性成分を含む粘着剤層の場合、塗工経過時間によって初期粘着力の値が大きく変化することが理解される。例えば、塗工経時時間が1日の場合の初期粘着力は、20N/25mm以上であるが、塗工経時時間が3日になると、初期粘着力は、10N/25mm程度となり、塗工経時時間が7、14日になると、初期粘着力は、2.0N/25mm程度となっている。
また、特性曲線A´が示すように、オリゴマー型シランカップリング剤、光硬化性成分および熱硬化性成分を含む粘着剤層の場合であっても、塗工経時時間によって、初期粘着力の値が低下する傾向が見られる。
しかしながら、特性曲線A´の場合、特性曲線B´の場合と比較して、塗工経時時間による、初期粘着力低下割合が非常に小さいことが理解される。
より具体的には、例えば、塗工経時時間が1日の時点での初期粘着力が6.0N/25mm前後であるのが、塗工経時時間が14日経った時点であっても、2.0N/25mm前後にまでしか低下していない。
したがって、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、例えば、2.5重量部程度の割合で熱硬化性成分を含有させた場合、事実上、モノマー型シランカップリング剤を用いることはできないのに対し、オリゴマー型シランカップリング剤であれば、使用する余地があることが理解される。
よって、特性曲線A〜CおよびA´〜B´からは、塗工経時時間によらず、優れたリワーク性を得るためには、オリゴマー型シランカップリング剤を用いることが必要であり、かつ、その場合、所定の範囲内であれば、熱硬化性成分を含有させてもよいことが理解される。
【0055】
4.(C´)成分としてのシランカップリング剤の非加水分解物
(1)種類
また、(C)成分としてのシランカップリング剤の加水分解縮合物と併用して、(C´)成分としてのシランカップリング剤の非加水分解物(以下、モノマー型シランカップリング剤、あるいは、シランカップリング剤の非加水分解縮合物と称する場合もある。)を添加使用することも好ましい。
この理由は、シランカップリング剤の加水分解縮合物と、シランカップリング剤の非加水分解物と、を併用することによって、(C´)成分単独使用で発生する初期粘着力が高くなりやすいという問題を解消できるためである。
すなわち、粘着剤組成物においてモノマー型シランカップリング剤を単独使用した場合には、図2の特性曲線Bに示されるように、塗工経時時間にかかわらず、高い初期粘着力となることが判明している。それに対して、図2の特性曲線Cに示されるように、(C)成分と、(C´)成分との併用によって、粘着剤組成物における初期粘着力を所定範囲内の値にさらにきめ細かく制御することができる。
さらに、シランカップリング剤の加水分解縮合物と、シランカップリング剤の非加水分解物と、を併用することによって、さらに優れた耐久性を得ることができる。
なお、シランカップリング剤の非加水分解物の種類としては、例えば、上述したシランカップリング剤の加水分解縮合物の構造単位として挙げた有機ケイ素化合物等が好適に用いられる。
【0056】
(2)含有量1
また、(C´)成分であるシランカップリング剤の非加水分解物の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるシランカップリング剤の非加水分解物の含有量が、0.001重量部未満の値になると、偏光板等と、液晶セル等と、の密着性向上効果が不十分になる場合があるためである。
一方、かかるシランカップリング剤の非加水分解物の含有量が、10重量部を超えた値になると、リワーク性が悪化する場合があるためである。
したがって、シランカップリング剤の非加水分解物の含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0057】
(3)含有量2
また、(C´)成分であるシランカップリング剤の非加水分解物の含有量を、(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の配合量を考慮して定めることが好ましい。
すなわち、シランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量をT1とし、シランカップリング剤の非加水分解物の含有量をT2としたときに、T1/T2で表わされる配合比率を0.01〜99の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合比率T1/T2が0.01未満の値になると、リワーク性が悪化する場合があるためである。一方、かかる配合比率T1/T2が99を超えた値になると、シランカップリング剤の非加水分解物による耐久性向上等の効果を十分に発揮できない場合があるためである。
したがって、かかる配合比率T1/T2を0.1〜10の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜5の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0058】
5.D成分としての帯電防止剤
(1)種類
本発明の粘着剤組成物は、(D)成分として、帯電防止剤をさらに含むことが好ましい。
そして、かかる帯電防止剤の種類は特に制限されるものでないが、例えば、フッ素含有スルホニルイミド塩をさらに含むことが好ましい。
この理由は、フッ素含有スルホニルイミド塩であれば、安価であるばかりか、優れた帯電防止性を、長期間にわたって有効に発揮させることができるためである。特に、高温環境下に長時間曝された場合であっても、ブリードを抑制するとともに、粘着力や耐久性の低下についても有効に防止することができるためである。
また、フッ素含有スルホニルイミド塩の種類として、より具体的には、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が好ましい。
この理由は、これらのフッ素含有スルホニルイミド塩であれば、ブリードがさらに少ないばかりか、比較的少量であっても、優れた帯電防止性を発揮するためである。
したがって、かかるフッ素含有スルホニルイミド塩を(メタ)アクリル酸エステル重合体に対して含有させることにより、硬化させてフィルム貼合用の粘着剤として構成した際に、被着体からフィルムを剥離させた場合であっても、静電気の発生を効果的に抑制できるためである。
なお、これらのフッ素含有スルホニルイミド塩に対して、他のアルカリ金属塩を併用してもよい。
その場合には、他のアルカリ金属塩の含有量を、フッ素含有スルホニルイミド塩の100重量部に対して、0.1〜80重量部の範囲内の値とすることが好ましく、1〜50重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0059】
(2)含有量
また、(D)成分である帯電防止剤の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜15重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる帯電防止剤の含有量をかかる範囲とすることにより、上述した静電気の発生を効果的に抑制できる一方で、粘着力および耐久性についても、安定的に維持することができるためである。
すなわち、帯電防止剤の含有量が0.05重量部未満の値となると、粘着剤組成物に対する帯電防止性の付与が不十分になって、静電気の発生を安定的に抑制することが困難になる場合があるためである。
一方、帯電防止剤の含有量が15重量部を超えた値となると、粘着力や所定条件下における耐久性が過度に低下する場合があるためである。
したがって、帯電防止剤の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜6重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0060】
(3)分散助剤
また、粘着剤組成物中への帯電防止剤の分散性を高め、さらに、帯電防止剤の電離状態を高める観点から、分散助剤を併用することが好ましい、分散助剤は、予め帯電防止剤と混合してから粘着剤組成物の他の成分中に添加してもよいし、帯電防止剤と分散助剤とを別個に粘着剤組成物の他の成分中に添加してもよい。
また、当該分散助剤が、アルキレングリコールジアルキルエーテルであることが好ましい。
この理由は、アルキレングリコールジアルキルエーテルであれば、帯電防止剤における金属イオンと錯体を形成することにより、帯電防止性を発揮するのに好適な電離状態を有効に作り出し、かつ維持することができるためである。
また、アルキレングリコールジアルキルエーテルであれば、帯電防止剤と、(メタ)アクリル酸エステル重合体等と、の間の相溶性を向上させることもできるためである。
【0061】
また、アルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位数を、2〜10の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる繰り返し単位数が2〜10の範囲外の値となると、帯電防止剤におけるリチウムイオンやカリウムイオン等を、安定的にキレートすることが困難となる場合があるためである。
したがって、アルキレングリコールジアルキルエーテルにおけるオキシアルキレン鎖の繰り返し単位数を、3〜8の範囲内の値とすることがより好ましく、4〜6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、アルキレングリコールジアルキルエーテルの両末端において、酸素原子と結合するアルキル基は、通常、炭素数1〜6であり、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。
【0062】
また、アルキレングリコールジアルキルエーテルの具体例としては、オクタエチレングリコールジブチルエーテル、オクタエチレングリコールジエチルエーテル、オクタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジブチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジエチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のいずれか1つ、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。
また、これらの中でも、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが特に好ましい。
【0063】
また、帯電防止剤と、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の混合割合(モル比)を、30:70〜70:30の範囲内の割合とすることが好ましい。
この理由は、かかる混合割合が30:70未満の値となると、粘着剤組成物中における帯電防止剤の絶対量が不足して、その帯電防止性を十分に発揮させることが困難になったり、アルキレングリコールジアルキルエーテルが、粘着剤からブリードしやすくなったりする場合があるためである。
一方、かかる混合割合が70:30を超えた値となると、粘着剤組成物中において、帯電防止剤の電離状態が不十分になったり、分散性が過度に低下したりする場合があるためである。
したがって、帯電防止剤と、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の混合割合(モル比)を、40:60〜60:40の範囲内の割合とすることがより好ましく、45:55〜55:45の範囲内の割合とすることがさらに好ましい。
【0064】
(4)合計含有量
また、帯電防止剤と、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の合計含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対し、1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる合計含有量、すなわち、帯電防止剤の含有量が1重量部未満の値となると、帯電防止性を十分に発揮させることが困難になる場合があるためである。
一方、かかる合計含有量が30重量部を超えた値となると、帯電防止剤が析出しやすくなったり、耐久性が過度に低下したり、アルキレングリコールジアルキルエーテルがブリードしやすくなったりする場合があるためである。
したがって、帯電防止剤と、アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の合計含有量を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対し、2〜20重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、3〜14重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0065】
6.希釈溶剤
本発明の粘着剤組成物において、各成分の分散性を改善したり、剥離フィルム等に粘着剤組成物を塗布する際に、適切な粘度に調整したりする観点から、溶剤を使用することができる。
かかる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が好ましく、溶剤を加えた際の粘着剤組成物の濃度は、5〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0066】
7.添加剤
他の添加剤として、粘着剤組成物中に、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、高屈折化剤、拡散剤等を含有させることも好ましい。
また、その場合、添加剤の種類にもよるが、その含有を、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.1〜20重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
また、本発明の粘着剤組成物は、熱架橋剤を含まないことが好ましいが、本発明の粘着剤組成物としての作用効果が得られる限り、熱架橋剤を少量含んでもよい。
より具体的には、シーズニングを省略した場合であっても、塗工後経時時間によらず、安定的な初期粘着力を得る観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.01〜3重量部の範囲内の値とすることが好ましく、0.01〜1.5重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜0.1重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0067】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態は、粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着剤であって、下記工程(1)〜(3)を経て形成されることを特徴とする粘着剤である。
(1)(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物であって、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物を配合するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とする粘着剤組成物を準備する工程
(2)粘着剤組成物を、剥離フィルムに対して塗布する工程
(3)活性エネルギー線を50〜1000mJ/cm2の範囲内の照射量にて照射し、粘着剤を得る工程
以下、本発明の第2の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0068】
1.工程(1)(粘着剤組成物の準備工程)
工程(1)は、(A)成分としての、所定の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、(B)成分としての光硬化性成分と、(C)成分としてのシランカップリング剤の加水分解縮合物を0.001〜10重量部の範囲で含む粘着剤組成物を準備する工程である。
すなわち、かかる粘着剤組成物であれば、初期粘着力が制御されるとともに、所定環境下においても優れた耐久性を発揮させることができるためである。
なお、かかる粘着剤組成物の具体的な内容については、第1の実施形態において説明したため、省略する。

【0069】
2.工程(2)(粘着剤組成物の塗布工程)
工程(2)は、図3(a)に示すように、粘着剤組成物を、剥離フィルム2に対して塗布して塗布層1を形成する工程である。
かかる剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキッド樹脂等の剥離剤を塗布して、剥離層を設けたものが挙げられる。
なお、かかる剥離フィルムの厚さは、通常20〜150μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0070】
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、溶剤を加えた粘着剤組成物を塗布して塗布層(塗膜)を形成した後、乾燥させることが好ましい。
このとき、塗布層の厚さは、乾燥時において1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
また、乾燥条件としては、通常50〜150℃で、10秒〜10分の範囲内とすることが好ましい。
この理由は、塗布層の厚さが薄すぎると、十分な粘着特性が得られない場合があり、逆に、厚すぎると、残留溶剤が問題となる場合があるためである。
【0071】
3.工程(3)(塗布層の硬化工程)
工程(3)は、粘着剤組成物の塗布層を光硬化させて、粘着剤層とする工程である。
すなわち、図3(b)に示すように、剥離フィルム2上で乾燥させた状態の塗布層1の表面に対し、光学フィルム基材等の基材101を積層させた状態で光硬化させて、粘着剤層10とすることが好ましい。
光硬化工程は、粘着剤組成物に含まれる光硬化成分、例えば、多官能(メタ)アクリレート系モノマー等を硬化させる工程である。
より具体的には、図3(c)に示すように、活性エネルギー線を照射し、剥離フィルム2に対して塗布された塗布層1を光硬化し、粘着剤層10とする工程である。
そして、活性エネルギー線の照射は、粘着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、乾燥させ、基材を積層させた後、遅滞なく行うことが好ましい。この理由は、経時により剥離フィルム上に形成された粘着剤組成物の塗布層中において、光硬化成分が他の成分と相分離する場合があるためである。
ここで、かかる活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。
また、紫外線であれば、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ等により得ることができ、電子線であれば、電子線加速器等によって得ることができる。
【0072】
また、活性エネルギー線を50〜1000mJ/cm2の範囲内で照射することが好ましい。
この理由は、活性エネルギー線の照射量が50mJ/cm2未満の値となると、光硬化成分同士の反応を十分に行わせることが困難となって、所望の粘着剤特性を得ることが困難となる場合があるためである。一方、活性エネルギー線の照射量が1000mJ/cm2を超えた値となると、粘着剤や基材を破壊する恐れがあるためである。
したがって、粘着剤組成物に対し、100〜700mJ/cm2の活性エネルギー線を照射することがより好ましく、120〜500mJ/cm2の活性エネルギー線を照射することがさらに好ましい。
【0073】
4.粘着剤特性
(1)貯蔵弾性率
また、粘着剤層(活性エネルギー線照射直後)の、23℃における貯蔵弾性率G´を0.01〜0.8MPaの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる貯蔵弾性率G´を所定範囲内の値とすることにより、耐久性を、より効果的に向上させることができるためである。
すなわち、かかる貯蔵弾性率G´が0.01MPa未満の値となると、所定環境下における耐久性を、十分に向上させることが困難になる場合があるためである。一方、かかる貯蔵弾性率G´が0.8MPaを超えた値となると、所望の粘着力等を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、23℃における粘着剤層(活性エネルギー線照射直後)の貯蔵弾性率G´を0.05〜0.75MPaの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.7MPaの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、粘着剤層(活性エネルギー線照射直後)の貯蔵弾性率G´の測定方法としては、例えば、JIS K7244−6に準拠して、ねじり剪断法を用いて、下記条件にて、試験片の貯蔵弾性率G´を測定することができる。
測定装置:レオメトリック(株)製、自動的粘弾性測定装置 DYNAMIC ANALYZER RDAII
周波数:1Hz
温度:23℃
【0074】
(2)初期粘着力
また、粘着剤層の初期粘着力(硝子表面への貼付1日後の剥離力をいう。)を0.1〜20N/25mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる初期粘着力が0.1N/25mm未満の値となると、耐久性が不十分になる場合があるためである。一方、かかる初期粘着力が20N/25mmを超えた値となると、リワーク性が低下する場合があるためである。
したがって、粘着剤層の初期粘着力を0.5〜18N/25mmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜10N/25mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、初期粘着力の測定方法については、実施例において記載する。
【0075】
(3)表面抵抗率
また、粘着剤層の表面抵抗率を1×107〜1×1012Ω/□の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる表面抵抗率が1×107Ω/□未満の値となると、耐久性や光学物性が悪化する場合があるためである。
一方、かかる表面抵抗率が1×1012Ω/□を超えた値となると、被着体からフィルムを剥離した際に、静電気の発生を安定的に抑制することが困難となる場合があるためである。
したがって、粘着剤層の表面抵抗率を、5×107〜5×1011Ω/□の範囲内の値とすることがより好ましく、1×108〜1×1011Ω/□の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、表面抵抗率の測定方法については、実施例において記載する。
【0076】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態は、基材上に、第2の実施形態としての粘着剤を含む粘着剤層を備えてなる粘着シートである。
以下、本発明の第3の実施形態を、第1および第2の実施形態と異なる点を中心に、図1を参照しつつ、具体的に説明する。
【0077】
1.基材
本発明においては、基材が、光学フィルム基材であるとともに、当該光学フィルム基材の少なくとも一方に、第2の実施形態において記載した粘着剤を含む粘着剤層を備えることが好ましい。
図1に示すように、本発明の粘着シート100における基材101としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、液晶ポリマー、シクロオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、脂環式構造含有重合体、芳香族系重合体等の光学フィルム基材が好ましく挙げられる。
また、用途の面から説明すれば、偏光板、偏光層保護フィルム、視野角拡大フィルム、防眩フィルム、位相差板等、液晶ディスプレイ等に用いられる光学フィルム基材が好ましい。
例えば、本発明によれば、基材を偏光板とした場合であっても、光漏れの発生を効果的に抑制できるという利点を得ることができる。
また、本発明によれば、偏光子等へも良好に密着できることから、偏光板の原料であるヨウ素含有のポリビニルアルコール樹脂を延伸して作製された偏光子自体も、本発明の粘着シート100における基材101となり得る。さらに、偏光子の片面が、トリアセチルセルロースやポリエチレンテレフタレート等の保護フィルムで覆われた偏光子等も同様に対象となる。
なお、基材を偏光板とした場合の粘着シートを、粘着剤層付き偏光板と呼ぶことがある。
【0078】
また、基材の厚さとしては特に制約はないが、通常1〜1000μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、基材の厚さが1μm未満となると、機械的強度や取り扱い性が過度に低下したり、均一な厚さに形成することが困難となったりする場合があるためである。一方、かかる基材の厚さが1000μmを超えると、取り扱い性が過度に低下したり、経済的に不利益となったりする場合があるためである。
したがって、基材の厚さを5〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜200μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、基材が剥離フィルムの場合には、通常20〜150μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0079】
また、基材101の塗布層が形成される面側に表面処理を施してあることも好ましい。
このような表面処理としては、例えば、プライマー処理、コロナ処理、火炎処理などが挙げられるが、特に、プライマー処理であることが好ましい。
この理由は、このようなプライマー層を形成した基材を用いることにより、基材に対する粘着剤層の密着性をさらに向上させることができるためである。
なお、このようなプライマー層を構成する材料としては、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースニトレート、およびそれらの組み合わせ)、ポリアクリル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエステル、ポリビニルアセタール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
また、プライマー層の厚さについても、特に限定されないが、通常、0.05μm〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0080】
2.粘着剤層
また、本実施形態の粘着シート100における粘着剤層10は、第2の実施形態として記載した特定の粘着剤からなる粘着剤層とすることを特徴とする。
なお、かかる粘着剤の具体的な内容については、既に第2の実施形態において説明したのと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0081】
また、粘着剤層10の厚さを1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、粘着剤層の厚さをかかる範囲とすることにより、所望の粘着力および貯蔵弾性率等の粘着剤特性を、より安定的に発揮させることができるためである。すなわち、かかる厚さが1μm未満の値となると、所望の粘着力を発現しにくくなり、浮き剥れ等の不具合が生じやすくなる場合があるためである。
一方、かかる厚さが100μmを超えた値となると、被着体汚染や糊残りなどの不具合が生じやすくなる場合があるためである。
したがって、粘着剤層の厚さを5〜70μmの範囲内の値とすることがより好ましく、10〜50μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0082】
また、光学フィルム基材等の基材に対する粘着剤層の形成方法としては、図1(a)〜(c)に示すように、剥離フィルム2上において形成された塗布層1における剥離フィルム2の無い側の表面を、直接、光学フィルム基材等の基材101に対して密着させることにより積層させ、その後、光硬化させて、光学フィルム基材等の基材を有する粘着シート100aを得ることが好ましい。
また、このとき、活性エネルギー線の照射は、光学フィルム基材等の基材を傷めない観点から、剥離フィルム側から行うことが好ましい。
あるいは、剥離フィルム上に塗布した粘着剤組成物を、先に光硬化させ、粘着剤層とした後、光学フィルム基材等の基材に対して積層させてもよい。
【0083】
また、基材が、剥離フィルムであるとともに、粘着剤層における当該剥離フィルムの反対面に対し、別の剥離フィルムを積層してなることも好ましい。
すなわち、図4に示すように、剥離フィルム2の上に粘着剤組成物の塗布層1を乾燥させた後、さらに別の剥離フィルム2を、粘着剤組成物の塗布層1上に積層させ、第2の実施形態におけるのと同様の条件で光硬化することにより、2つの剥離フィルム2の剥離層側が、それぞれ粘着剤層10と接するようにして挟持された粘着シート100bも好ましい。
また、かかる態様の粘着シート100bは、剥離フィルム2上の粘着剤組成物の塗布層1を乾燥および光硬化させた後に、さらに別の剥離フィルム2を、形成された粘着剤層10上に積層させることで、2つの剥離フィルム2に挟持された粘着シートであってもよい。
また、2つの剥離フィルムのうちの一方における剥離力が、他の一方における剥離力と異なることが好ましい。
この理由は、剥離力が異なることにより、得られた粘着シートを使用するに際し、粘着剤層を傷つけることなく、一方の剥離フィルムを剥がすことができるためである。
また、かかる態様の粘着シートは、一方の剥離フィルムを剥離して、現れた粘着剤層を、光学フィルム基材等の基材に対して密着させて貼合することにより、光学フィルム基材等の基材を有する粘着シートを得ることができる。
このとき、所望により、粘着剤層面あるいは光学フィルム基材等の基材面を、コロナ処理、プラズマ処理およびケン化処理等の表面処理を行うことができる。
かかる態様は、粘着剤の製造と、かかる粘着剤の使用とが、別の場所で行われる等の理由により、粘着剤のみを輸送しなければならない場合等に必要とされる。
また、かかる態様であれば、酸素等による光硬化の阻害反応を最小限に抑えることができる。
なお、得られた光学フィルムを被着体に貼合する方法としては、図1(c)〜(d)に示すように、まず、粘着剤層10に積層してある剥離フィルム2を剥離し、次いで、現れた粘着剤層10の表面を、被着体に対して密着させることにより貼合することが好ましい。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0085】
[実施例1]
1.粘着剤組成物の調整
表1に示すように、(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、(C)成分としてのシランカップリング剤の加水分解縮合物と、(C´)成分としてのシランカップリング剤とから、実施例1の粘着剤組成物を調製した。
【0086】
(1)(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合
まず、単量体として、アクリル酸ブチル(BA)98.5重量部と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)1.5重量部とを用い、常法である溶液重合法(溶媒:酢酸エチル)に従って重合し、重量平均分子量170万の(メタ)アクリル酸エステル重合体((メタ)アクリル酸エステル重合体1と称する場合がある。)の溶液を得た。
なお、得られたアクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(以下、GPC法と略記する。)にて測定した。
すなわち、まず、ポリスチレンを用いて検量線を作成した。以降、重量平均分子量は、ポリスチレン換算値で表す。次いで、(メタ)アクリル酸エステル重合体等の測定対象の濃度が1重量%のテトラヒドロフラン(THF)溶液を準備し、東ソー(株)製、GEL PER MEATION CHROMATOGRAPH HLC−8020(TSKGEL GMHXL、TSKGEL GMHXL、TSKGEL G2000HXLからなる3連カラム)にて40℃、THF溶媒、1ml/分の条件にて重量平均分子量を測定した。そして、ガードカラムとして、東ソー(株)製、TSK GUARD COLUMNを使用した。
【0087】
(2)光硬化性成分の配合
次いで、(A)成分の上記アクリル酸エステル重合体溶液の固形分100重量部に対して、(B)成分の光硬化性成分(光重合開始剤を含む)として、紫外線硬化性樹脂(トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、東亜合成(株)製、商品名:アロニックスM−315、以下、M−315と称する場合がある。)を20重量部、光重合開始剤(ベンゾフェノンと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの混合物(重量比:1:1)、チバ・スペシャリティケミカル社製、商品名:イルガキュア500)を2重量部の割合でそれぞれ配合した。
【0088】
(3)シランカップリング剤の加水分解縮合物の配合
次いで、(A)成分の上記(メタ)アクリル酸エステル重合体溶液の固形分100重量部に対して、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物として、オリゴマー型シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランコポリマー(信越化学(株)製、X−41−1053)を0.08重量部の割合で配合した。
【0089】
(4)シランカップリング剤の配合
最後に、(A)成分の上記(メタ)アクリル酸エステル重合体溶液の固形分100重量部に対して、(C´)成分のシランカップリング剤として、モノマー型シランカップリング剤である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製、KBM403)を0.08重量部の割合で配合し、実施例1の粘着剤組成物とした。
【0090】
2.粘着剤組成物の塗布
次いで、剥離フィルムとしての厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム(リンテック(株)製、SP−PET3811)の剥離層上に、トルエンを加えて固形分が15重量%になるように希釈した粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmになるように、ナイフ式塗工機で塗布した。
次いで、90℃、1分間の加熱条件で、乾燥処理を施した後、厚さ180μmの偏光板にラミネートし、偏光板/粘着剤組成物/剥離フィルムという積層体を得た。
【0091】
3.粘着剤組成物の硬化(粘着剤層の形成)
次いで、前記積層体の剥離フィルム側から、紫外線(UV)を下記条件で照射して、粘着剤組成物を光硬化させ、粘着シート(粘着剤層付き偏光板)を得た。
ランプ:高圧水銀ランプ(アイグラフィックス(株)製)
光量:300mJ/cm2
照度:300mW/cm2
UV光量および照度計:UVF−PFA1(アイグラフィックス(株)製)
【0092】
4.評価
(1)粘着力
光硬化(上記紫外線照射)を行った直後に被着体へ貼合してから1日後および14日後における粘着剤層付き偏光板における粘着力をそれぞれ測定した。
すなわち、裁断装置(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた粘着剤層付き偏光板を幅25mm×長さ100mmの大きさに裁断して、測定サンプルとした。
次いで、得られた測定サンプルから剥離フィルムを剥離した後、無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合した。
次いで、測定サンプルが貼合された無アルカリガラスを、オートクレーブ(栗原製作所(株)製)に投入し、0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧した後、23℃、50%RHの条件下に、1日の間、放置した。
次いで、測定サンプルにつき、引っ張り試験機(オリエンテック(株)製、テンシロン)を用いて、下記条件にて、初期粘着力を測定した。
剥離速度:300mm/分
剥離角度:180°
一方、同様にして、測定サンプルを無アルカリガラスへ貼合した後、23℃、50%RHの条件下に、14日(336時間)放置した場合の粘着力の測定を行った。
それぞれ得られた結果を表2に示す。
また、後述する実施例2、実施例6比較例1、比較例6および実施例15については、さらに、光硬化後の粘着剤層付き偏光板を、23℃、相対湿度50%RHで所定期間(3、5、7および14日)放置後、無アルカリガラスと貼合した後、23℃相対湿度50%RHで1日放置してから、上記の内容と同様に粘着力を測定した。得られた結果を表3に示す。
【0093】
(2)耐久性
以下の条件下における粘着剤層付き偏光板の耐久性を評価した。
すなわち、裁断装置(荻野製作所(株)製、スーパーカッター)を用いて、得られた粘着剤層付き偏光板を233mm×309mmの大きさに切断して測定サンプルとした。
次いで、得られた測定サンプルから剥離フィルムを剥離した後、無アルカリガラス(コーニング(株)製、イーグルXG)に貼合した。
次いで、測定サンプルが貼合された無アルカリガラスを、オートクレーブ(栗原製作所(株)製)に投入し、0.5MPa、50℃、20分の条件で加圧した後、80℃かつ乾燥条件下、60℃かつ相対湿度90%RHの条件下、およびヒートショック条件(−35℃(1時間)/70℃(1時間))の各条件下に投入後、120時間放置した。
次いで、測定サンプルの状態について、10倍ルーペを用いて観察を行い、下記基準に沿って、耐久性を評価した。得られた結果を表2に示す。
◎:サンプルにおいて、発泡、スジ、剥がれ等の欠陥がいずれも発生していない。
○:サンプルの4辺(外周端部から0.6mm以上)において、発泡、スジ、剥がれ等の欠陥が発生していない。
△:サンプルの4辺(外周端部から0.6mm以上)において、発泡、スジ、剥がれ等の欠陥が発生している。但し、外周端部から1.0mm以上においては、発泡、スジ、剥がれ等の欠陥が発生していない。
×:サンプルの4辺(外周端部から1.0mm以上)において、発泡、スジ、剥がれ等の欠陥が発生している。
【0094】
[実施例2〜3]
実施例2〜3では、(B)成分の光硬化性成分(M−315)および光重合開始剤の含有量の影響を検討した。
すなわち、実施例2においては、それぞれ15重量部および1.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
また、実施例3においては、それぞれ5重量部および0.5重量部としたこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0095】
[実施例4]
実施例4では、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体の種類の影響を検討した。
すなわち、実施例1で重合した(メタ)アクリル酸エステル重合体1を90重量部と、下記(メタ)アクリル酸エステル重合体2を10重量部とからなる混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
((メタ)アクリル酸エステル重合体2の重合)
単量体として、アクリル酸ブチル(BA)95重量%と、アクリル酸(AA)5重量%とを用い、常法である溶液重合法(溶媒:酢酸エチル)に従って重合し、重量平均分子量170万の(メタ)アクリル酸エステル重合体2を得た。
なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体2の重量平均分子量についても、上記のGPC法にて測定し、約170万であることを確認した。
【0096】
[実施例5]
実施例5では、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体の種類および(B)成分の光硬化性成分の含有量の影響を検討した。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステル重合体1の代わりに、実施例4で重合した(メタ)アクリル酸エステル重合体2を100重量部用いるとともに、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合でそれぞれ配合したこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0097】
[実施例6]
実施例6では、(B)成分の光硬化性成分および(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量の影響、並びに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を併用しない影響を検討した。
すなわち、(A)成分のアクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部、および(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤(X−41−1053)を0.16重量部の割合で配合するとともに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0098】
[実施例7]
実施例7では、(B)成分の光硬化性成分および(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物の種類の影響、並びに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を併用しない影響を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部、および(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランの加水分解縮合物(信越化学(株)製、X−41−1059A)を0.16重量部の割合で配合するとともに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0099】
[実施例8]
実施例8では、(B)成分の光硬化性成分および(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量の影響、並びに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を併用しない影響を検討した。
すなわち、(A)成分のアクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部、および(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤(X−41−1053)を0.04重量部の割合で配合するとともに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0100】
[実施例9]
実施例9では、(B)成分の光硬化性成分の含有量の影響および(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を併用しない影響を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合で配合するとともに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0101】
[実施例10]
実施例10では、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物の種類および含有量の影響、並びに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を併用しない影響を検討した。
すなわち、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランーテトラエトキシシランの加水分解縮合物(信越化学(株)製、X−41−1810)を0.16重量部の割合で配合するとともに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0102】
[実施例11]
実施例11では、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物の種類の影響を検討した。
すなわち、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤として、3−アミノプロピルトリメトキシシラン−テトラエトキシシランの加水分解縮合物(信越化学(株)製、X−40−2651)を0.08重量部の割合で配合した以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0103】
[実施例12]
実施例12では、(B)成分の光硬化性成分の含有量の影響および(D)成分としての帯電防止剤の影響を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を5重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を0.5重量部の割合で配合するとともに、(D)成分の帯電防止剤として、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTSFIと称する場合がある。)と、分散助剤として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TGR)とを、等モル配合したものを3.0重量部配合した以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
なお、粘着剤層の表面抵抗率は、1.01×1010Ω/□であった。
【0104】
[実施例13〜14]
実施例13〜14では、(B)成分の光硬化性成分の含有量、光重合開始剤の含有量、(C)成分としてのシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量、および(C´)成分としてのシランカップリング剤の含有量、の影響を検討した。
すなわち、実施例13においては、それぞれ15重量部、1.5重量部、0.04重量部、および0.12重量部とした以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
一方、実施例13においては、それぞれ15重量部、1.5重量部、0.12重量部、および0.04重量部とした以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0105】
[実施例15]
実施例15では、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を含有し、熱架橋剤を含有し、モノマー型シランカップリング剤を含有しない配合の影響等を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部、熱架橋剤(コロネートL−45)を2.5重量部、および(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤(X−41−1053)を0.16重量部、を配合し、(C’)成分を配合しなかった以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0106】
[比較例1]
比較例1では、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を用いない影響および(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤の含有量の影響を検討した。
すなわち、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤を用いないとともに、(C´)成分の含有量を0.16重量部とした以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0107】
[比較例2]
比較例2では、(B)成分の光硬化性成分の含有量の影響および(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を用いない影響、並びに(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤の含有量の影響を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を35重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を3.5重量部の割合で配合するとともに、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤を用いず、さらに、(C´)成分の含有量を0.16重量部とした以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0108】
[比較例3]
比較例3では、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体の種類の影響、(B)成分の光硬化性成分の含有量の影響、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を用いない影響、並びに(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤の含有量の影響を検討した。
すなわち、実施例1で重合した(メタ)アクリル酸エステル重合体1を90重量部と、実施例4で重合した(メタ)アクリル酸エステル重合体2を10重量部とからなる混合物100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合で配合するとともに、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤を用いず、さらに、(C´)成分の含有量を0.16重量部とした以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0109】
[比較例4]
比較例4では、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体の種類の影響、(B)成分の光硬化性成分の含有量の影響、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を用いない影響、並びに(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤の含有量の影響を検討した。
すなわち、実施例4で重合した(メタ)アクリル酸エステル重合体2を100重量部用い、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合で配合するとともに、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤を用いず、さらに、(C´)成分の含有量を0.16重量部とした以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0110】
[比較例5]
比較例5では、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体の種類、光硬化性成分の含有量、並びに、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物および(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いない影響を検討した。
すなわち、アクリル酸エステル重合体1の代わりに、実施例4で重合した(メタ)アクリル酸エステル重合体2を100重量部用い、紫外線硬化樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合でそれぞれ配合するとともに、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物および(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤を用いなかった以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0111】
[比較例6]
比較例6では、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を用いない影響、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤の含有量の影響、および熱架橋剤の配合の影響等を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化性樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合で配合するとともに、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤を用いないとともに、(C´)成分の含有量を0.16重量部とし、さらに、熱架橋剤として、コロネートL−45(イソシアネート系架橋剤)を2.5重量部配合したこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0112】
[比較例7〜10]
比較例7〜10では、(C)成分のシランカップリング剤の加水分解縮合物を配合せず、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤の配合量の影響等を検討した。
すなわち、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、紫外線硬化樹脂(M−315)を15重量部、光重合開始剤(イルガキュア500)を1.5重量部の割合で配合し、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤を用いないとともに、(C´)成分のモノマー型シランカップリング剤(KBM403)の含有量を、比較例7では0重量部、比較例8では0.04重量部、比較例9では0.08重量部、および比較例10では0.16重量部、を配合したこと以外は、実施例1と同様に、粘着剤層付き偏光板を作製して、評価した。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0116】
以上、詳述したように、本発明によれば、(A)成分の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分の光硬化性成分と、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤と、を所定割合で配合することによって、シーズニング処理を省略した場合であっても、初期粘着力が所定範囲に制御されるとともに、耐久性やリワーク性にも優れた粘着剤組成物等が得られるようになった。
また、(C)成分のオリゴマー型シランカップリング剤と、(C´)成分としてのモノマー型シランカップリング剤と、を併用することによって、(C´)成分単独使用で発生する初期粘着力が高くなりやすいという問題を解消し、粘着剤組成物の初期粘着力を、より好適な範囲に調節することができるようになった。
したがって、本発明の粘着剤組成物等は、液晶表示装置、プラズマ表示装置、有機エレクトロルミネッセンス装置、無機エレクトロルミネッセンス装置等の光学フィルムを始めとした各種フィルムの高品質化に、著しく寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0117】
1:粘着剤組成物の塗布層、2:剥離フィルム、10:粘着剤(層)、100:粘着シート、101:基材、200:被着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物であって、
(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物を配合するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、前記(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤組成物中に、(C´)成分として、シランカップリング剤の非加水分解物を含有するとともに、当該(C´)成分であるシランカップリング剤の非加水分解物の含有量を、前記(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分の含有量をT1とし、前記(C´)成分の含有量をT2としたときに、T1/T2の比率を0.01〜99の範囲内の値とすることを特徴とする請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体が、第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体と、の混合物であって、
前記第1の(メタ)アクリル酸エステル重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来した構造部分および水酸基含有ビニル単量体に由来した構造部分を含むとともに、
前記第2の(メタ)アクリル酸エステル重合体が、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来した構造部分およびカルボキシル基含有ビニル単量体に由来した構造部分を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分である光硬化性成分の含有量を、前記(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、1〜25重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
(D)成分として帯電防止剤を含むとともに、当該帯電防止剤の含有量を、前記(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.05〜15重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記(D)成分である帯電防止剤の分散助剤を、さらに含むとともに、当該分散助剤が、アルキレングリコールジアルキルエーテルであって、前記(D)成分である帯電防止剤と、前記アルキレングリコールジアルキルエーテルと、の添加割合(モル比)を30:70〜70:30の範囲内の値とすることを特徴とする請求項6に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
粘着剤組成物を光硬化させてなる粘着剤であって、下記工程(1)〜(3)を経て形成されることを特徴とする粘着剤。
(1)(A)成分としての(メタ)アクリル酸エステル重合体と、(B)成分としての光硬化性成分と、を含む粘着剤組成物であって、(C)成分として、シランカップリング剤の加水分解縮合物を配合するとともに、当該(C)成分であるシランカップリング剤の加水分解縮合物の含有量を、前記(A)成分である(メタ)アクリル酸エステル重合体100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とする粘着剤組成物を準備する工程
(2)前記粘着剤組成物を、剥離フィルムに対して塗布する工程
(3)活性エネルギー線を50〜1000mJ/cm2の範囲内の照射量にて照射し、粘着剤を得る工程
【請求項9】
基材上に、請求項8に記載の粘着剤を含む粘着剤層を備えてなる粘着シート。
【請求項10】
前記基材が、光学フィルム基材であるとともに、当該光学フィルム基材の少なくとも一方に、前記粘着剤層を備えることを特徴とする請求項9に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記基材が、剥離フィルムであるとともに、前記粘着剤層における当該剥離フィルムの反対面に対し、別の剥離フィルムを積層してなることを特徴とする請求項9に記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−190302(P2011−190302A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55420(P2010−55420)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】