説明

粘着剤組成物および表面保護粘着フィルム

【課題】被着体と表面保護粘着フィルムとの積層体から、打ち抜き加工によって打ち抜き片が得られたときでも、表面保護粘着フィルムの端部を被着体から容易に剥がすことができる粘着剤及び表面保護粘着フィルムの提供。
【解決手段】芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロックAと、共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックBを含む共重合体(カップリング剤残基を含んでよい)またはその水素添加物を含有し、前記重合体の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(A+B))は、30〜50重量%であり、重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比(A:B)が5:95〜25:75の範囲内であり、さらにイミン系化合物及び脂肪酸アミドの少なくとも一方を含有することを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および表面保護粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打ち抜き刃型を用いて表面保護フィルムが貼り付けられた状態の光学フィルムの長尺状のシートを打ち抜くことで、光学部品を製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学デバイス、金属板、塗装した金属板、樹脂板、ガラス板等、種々の部材(以下、「被着体」と称する)の表面を保護するために、フィルム状の基材の一方面に粘着剤層が積層されてなる表面保護粘着フィルム(一般に、プロテクトテープ、マスキングテープ、または表面保護シートなどと称される場合もある。)が用いられることがある。なお、表面保護粘着フィルムを被着体から剥がす時は、表面保護粘着フィルムの端部をつかんで引っ張ることで表面保護粘着フィルムは被着体から剥がされる。
被着体上に表面保護粘着フィルムが貼り付けられた積層体に対して上述の打ち抜きが行われた場合、打ち抜きによって得られた積層片の端部では、打ち抜き刃型で押されることで、表面保護粘着シートと部材とが強固に接着される。その結果、端部を被着体から剥がすことが困難となることがある。
光学部材には、プリズムシートや拡散フィルムなどのように、表面が凹凸形状になっているものがある。特に、このような凹凸を有する部材に対して表面保護粘着シートが貼り付けられるときは、打ち抜きによって、凹凸内に表面保護粘着シートの粘着剤が入り込み、特に端部の引き剥がしが困難となる。
本発明の課題は、被着体と表面保護粘着フィルムとの積層体を打ち抜いて得られた打ち抜き片であっても、表面保護粘着フィルムの端部をつかんで引っ張ることにより表面保護粘着フィルムを被着体から容易に剥がすことができる表面保護粘着フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粘着剤組成物は、
重合体(ii):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は前記と同意義を表す。)もしくは一般式(A−B)x−Y(式中、xは1以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物
を含有し、
又は、
重合体(i):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体(I)またはその水素添加物と、
前記重合体(ii)と、を含有し、
前記重合体(i)および前記重合体(ii)の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(A+B))は、30〜50重量%であり、
前記重合体(i)および前記重合体(ii)にそれぞれ含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比(A:B)が5:95〜25:75の範囲内であり、
さらに、
イミン系化合物及び脂肪酸アミドの少なくとも一方を含有する。
重合体ブロックA:
芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
重合体ブロックB:
共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロック
【発明の効果】
【0006】
本発明の表面保護粘着フィルムによれば、被着体と表面保護粘着フィルムとの積層体を打ち抜いて得られた打ち抜き片であっても、表面保護粘着フィルムの端部をつかんで引っ張ることにより表面保護粘着フィルムを被着体から容易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一態様の表面保護粘着フィルムが適用されるプリズムシートの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の表面保護粘着フィルムがプリズムシートに貼付された積層体の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本明細書中の記号の定義>
本明細書において数値範囲を表すために用いられる記号「〜」は、特に記載の無い限り、当該数値範囲がその両端の数値を含むことを意図して用いられる。
本明細書において、用語「芳香族アルケニル化合物単位含有率」等において用いられる重合体の繰り返し単位の「含有率」とは、繰り返し単位が由来するモノマーに換算した重量比、すなわち、前記重合体を形成するための全モノマーの重量に対する、前記繰り返し単位が由来するモノマーの重量の比(重量%)、すなわち重合体の芳香族アルケニル化合物含量[alkenyl aromatic compound content]を意味する。ここで、「前記重合体を形成するための全モノマーの重量」は、前記重合体の重量に近似する。また、同様に、本明細書において、重合体ブロックの繰り返し単位の「含有率」とは、繰り返し単位が由来するモノマーに換算した重量比、すなわち、前記重合体ブロックを形成するための全モノマーの重量に対する、前記繰り返し単位が由来するモノマーの重量の比(重量%)を意味する。ここで、「前記重合体ブロックを形成するための全モノマーの重量」は、前記重合体ブロックの重量に近似する。
本明細書において、「ビニル結合の含有率」は、赤外吸収スペクトル法を用い、モレロ法により算出した1,2−ビニル結合および3,4−ビニル結合の総含有率を意味する。
【0009】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、下記重合体(ii)を含有する。粘着剤組成物は、下記重合体(i)をさらに含有してもよい。本明細書中、「重合体(i)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体(I)またはその水素添加物である。
本明細書中、「重合体(ii)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は前記と同意義を表す。)もしくは一般式(A−B)x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)
で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物である。
なお、本明細書中、前記重合体(i)と前記重合体(ii)とからなる組成物を、単に「共重合体組成物」と称する場合がある。
【0010】
本発明の粘着剤組成物において、前記重合体(i)および前記重合体(ii)の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率は、30〜50重量%であり、
前記重合体(i)と前記重合体(ii)に含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比が5:95〜25:75の範囲内である。
【0011】
本明細書中、「重合体ブロックA」は、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。
【0012】
本明細書中、「重合体ブロックB」は、共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロックである。
粘着剤組成物は、イミン系化合物及び脂肪酸アミドの少なくとも一方を含有する。これによって、表面保護粘着フィルムとして充分な粘着力が得られると共に、表面保護粘着フィルムの端部を被着体から剥がし易くなる。すなわち、表面保護粘着フィルムを被着体から剥がす時に表面保護粘着フィルムの端部が被着体から容易に剥がせるようになるため、引き剥がす際に端部がつかみやすくなり、表面保護粘着フィルムを被着体から剥がすことができる端部を探しあてる必要が無く、直ちに引き剥がすことができる。したがって、打ち抜きによって表面保護粘着フィルムと被着体とが強く圧着されたとしても、表面保護粘着フィルムの端部が被着体と強く接着してしまうことで被着体から表面保護粘着フィルムが剥がしにくくなるという現象の発生を抑えることができる。
イミン系化合物の含有量は、前記重合体(i)および前記重合体(ii)の合計重量100重量部に対して、0.2重量部以上であることが好ましく、1.5重量部以下であることが好ましい。
イミン系化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン等が挙げられる。市販品としては、例えば、日本触媒社製の「エポミン20」等が挙げられる。
脂肪酸アミドの含有量は、前記重合体(i)および前記重合体(ii)の合計重量100重量部に対して、0.15重量部以上であることが好ましく、3.5重量部以下であることが好ましい。
脂肪酸アミドとしては、例えば、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、およびヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸脂肪族ビスアミド;ならびにm−キシリレンビスステアリン酸アミド、およびN−N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の飽和脂肪酸芳香族ビスアミドが好ましい。飽和脂肪酸脂肪族ビスアミドのなかでは、エチレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。また、飽和脂肪酸芳香族ビスアミドのなかでは、m−キシリレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。これらの飽和脂肪酸ビスアミドは単独で用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イミン系化合物及び/又は脂肪酸アミドの含有量が少なすぎると表面保護粘着フィルムの端部が被着体から剥がしづらくなる。また、イミン系化合物及び/又は脂肪酸アミドの含有量が多すぎると表面保護粘着フィルムの被着体への粘着力の安定性が低下することがあったり、粘着剤に含まれる一部の成分が被着体に付着し被着体を汚染したりすることがある。
【0013】
<重合体ブロックA>
上述のように、「重合体ブロックA」は、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。
【0014】
「芳香族アルケニル化合物単位」とは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位である。「芳香族アルケニル化合物」としては、例えば、スチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N−ジェチル−p−アミノエチルスチレンおよびビニルピリジン等を挙げることができる。中でも、原料が工業的に入手し易いという理由から、「芳香族アルケニル化合物単位」はスチレン単位であることが好ましい。
【0015】
「重合体ブロックA」は、芳香族アルケニル化合物単位を主たる繰り返し単位として構成されている必要がある。具体的には、その芳香族アルケニル化合物単位含有率は、80重量%以上である。芳香族アルケニル化合物単位含有率を80重量%以上と高くすることにより、粘着剤組成物の熱可塑性を向上させることができ、粘着剤組成物のリサイクルがより容易になるという利点がある。20重量%未満の範囲で含まれていてもよい芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位としては、芳香族アルケニル化合物と共重合可能な化合物に由来する繰り返し単位、例えば、共役ジエン化合物や(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰り返し単位を挙げることができる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが、芳香族アルケニル化合物との共重合性が高いという理由から好ましい。
【0016】
<重合体ブロックB>
上述のように、「重合体ブロックB」は、共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロックである。
【0017】
「重合体ブロックB」を構成する「共役ジエン化合物単位」とは、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位である。「共役ジエン化合物」としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエン、4,5−ジエチルー1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、ミルセンおよびクロロプレン等を挙げることができる。中でも、重合反応性が高く、原料が工業的に入手し易いという理由から、「共役ジエン化合物単位」は1,3−ブタジエン単位およびイソプレン単位の群から選択される少なくとも1種の繰り返し単位であることが好ましい。
【0018】
「重合体ブロックB」は、共役ジエン化合物単位を主たる繰り返し単位として構成されている必要がある。本発明の効果を発揮させる観点から、共役ジエン化合物単位含有率が65〜90重量%の範囲内であることが好ましい。
【0019】
また、「重合体ブロックB」は、本発明の効果を得る観点から、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%の範囲内である必要があり、13〜33重量%の範囲内であることが好ましく、16〜30重量%の範囲内であることがより好ましい。芳香族アルケニル化合物単位含有率が10重量%未満では、展開性が重く、ハンドリング性が悪くなることがある。一方、35重量%を超えると、粘着剤組成物の柔軟性が劣り、表面保護粘着フィルムに重要な、十分な粘着力を確保できないことがある。
なお、「重合体ブロックB」は、本発明の効果を妨げない範囲において、共役ジエン化合物単位、および芳香族アルケニル化合物単位以外の繰り返し単位も含んでいてもよい。
【0020】
また、「重合体ブロックB」は、本発明の効果を発揮させる観点から、ビニル結合含有率が50〜90%の範囲内であることが好ましく、60〜80%の範囲内であることがより好ましい。また、ビニル結合含有率を50%以上とすることにより、タックと粘着力のバランスに優れた粘着剤組成物を構成することができるという利点がある。
【0021】
<共重合体(I)>
「共重合体(I)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体である。
【0022】
「n」が1〜3の整数を表すことから、明らかなように、「式[A−B]nで表される構造」としては、例えば、A−B、A−B−A−B、およびA−B−A−B−A−Bで表されるの構造が挙げられる。これらのブロック共重合体においては、AおよびBは、それぞれ繰り返しにおいて同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0023】
[A−B]nで示される構造において、重合体ブロックBの効果を確実に発揮させる観点から、末端の重合体ブロックBは共重合体全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。なお、一部の共重合体(I)の末端が−Aの構造を有していても、末端の重合体ブロックAの含有率が共重合体(I)全体の2重量%未満である場合には、末端が重合体ブロックBであるのと同様の効果を発揮させることができる。すなわち、前記構造は実質的に末端が重合体ブロックBであるとみなすことができる。
【0024】
nは1〜3の整数であることが必要である。nをこの範囲内とすることにより、工業的
な生産性が良好となる。なお、粘着力および材料強度を向上させるという観点から、nが1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。すなわち、「一般式[A−B]nで示される構造を有する共重合体」としては、一般式A−Bで示される構造を有するブロック共重合体が特に好ましい。
【0025】
共重合体(I)またはその水素添加物(重合体(i))は、芳香族アルケニル化合物単位含有率が30〜50重量の範囲内であることが好ましく、33〜45重量%であることがより好ましい。芳香族アルケニル化合物単位含有率をこの範囲内とすることにより、適度な保持力と、被着体表面の凹凸への追随性を兼ね備え、かつ展開性に優れた粘着剤組成物を構成することが可能となる。
【0026】
重合体(i)の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量が3万〜50万であることが好ましく、8万〜30万であることが更に好ましく、10万〜20万であることが特に好ましい。重量平均分子量を3万〜50万の範囲とすることで、重合体(i)、ひいては重合体(i)と共重合体(II)またはその水素添加物(重合体(ii))とからなる共重合体組成物の工業的な生産を容易なものとすることができる。重量平均分子量が3万未満であると、ポリマーを脱溶媒、乾燥させる工程において製造設備等にポリマーが付着してしまい、重合体(i)の工業的生産が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が50万以上であると、溶剤への溶解性や熱溶融性が悪くなり、粘着体への加工が困難になる場合がある。
【0027】
共重合体(I)の水素添加物は、優れた耐熱性および耐候性が得られることから
、共役ジエンモノマーに由来する二重結合が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、水素添加により不飽和結合が飽和結合に水素添加された水素添加物であることが好ましい。
。なお、本明細書中、水素添加の比率(水素添加率)は、四塩化炭素を溶媒として用い、270MHz、H−NMRスペクトルから算出した水素添加率を意味する。
重合体(i)は、単独(1種)であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0028】
<共重合体(II)>
「共重合体(II)」は、下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は前記と同意義を表す。)もしくは一般式(A−B)x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)
で表される構造を有する共重合体である。
【0029】
前記一般式から明らかなように、共重合体(II)は、その全ての分子末端に重合体ブロックAを有する。
末端の重合体ブロックAは共重合体(II)全体の2重量%以上を占めていることが好ましい。重合体ブロックAの効果を確実に発揮させるためである。なお、一部の共重合体(II)の末端が−Bの構造を有していても、末端の重合体ブロックBの含有率が共重合体(II)全体の2重量%未満である場合には、末端が重合体ブロックAであるのと同様の効果を発揮させることができる。すなわち、前記構造は実質的に末端が重合体ブロックAであるとみなすことができる。
【0030】
一般式(A−B)x−Y(式中、xは2以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体は、言い換えれば、共重合体(I)がYによってカップリングした構造を有する。従って、(A−B)x−Yの場合、同じ反応釜で、(I)、(II)の混合物を合成することが出来るため、工業的な観点から、(A−B)x−Yの方が好ましい。xが3以上である場合、当該共重合体は、いわゆる星形重合体である。xは、当該共重合体製造時における副反応を抑制し、当該共重合体の物性を制御する観点からは、好ましくは2〜4である。
【0031】
また、共重合体(II)またはその水素添加物(重合体(ii))も重合体(i)と同様の理由から、芳香族アルケニル化合物単位含有率が30〜50重量の範囲内であることが好ましく、33〜45重量%であることがより好ましい。
【0032】
重合体(ii)は、優れた耐熱性および耐候性が得られることから、共役ジエンモノマーに由来する二重結合が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、水素添加により不飽和結合が飽和結合に水素添加された水素添加物であることが好ましい。
【0033】
重合体(ii)の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量が5万〜50万であることが好ましく、5万〜30万であることがより好ましい。重量平均分子量を5万〜50万の範囲とすることで、重合体(ii)、ひいては重合体(i)と重合体(ii)とからなる共重合体組成物の工業的な生産を容易なものとすることができる。重量平均分子量が3万未満であると、ポリマーを脱溶媒、乾燥させる工程において製造設備等にポリマーが付着してしまい、共重合体(II)またはその水素添加物の工業的生産が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が50万以上であると、溶剤への溶解性や熱溶融性が悪くなり、粘着体への加工が困難になる場合がある。
重合体(ii)は、単独(1種)であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0034】
<共重合体組成物>
上述のように、本発明の粘着剤組成物は、重合体(ii)を構成成分として含有するか、または重合体(i)と重合体(ii)とからなる共重合体組成物を構成成分として含有する。この共重合体組成物において、重合体(i)と重合体(ii)との重量比は、90:10〜0:100の範囲内であることが好ましい。重合体(i)を含ませることにより、被着体の表面から粘着剤層が浮き上がり、フィルムが剥離してしまう不具合(浮き)を有効に防止することができるという好ましい効果を発揮させることができる。一方、重合体(i)と重合体(ii)との総量100重量部中、重合体(ii)を10重量部以上含ませることにより、被着体の表面からフィルムを剥離させる際に、被着体の表面に粘着剤が残存して被着体の表面を汚染してしまう不具合(糊残り)を有効に防止することができるという好ましい効果を発揮させることができる。
粘着剤層の浮きや糊残りをより確実に防止するという観点から、重合体(i)と重合体(ii)との重量比は50:50〜15:85の範囲内であることが好ましい。
【0035】
本発明の効果を奏する観点から、前記重合体(i)と前記重合体(ii)に含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比が5:95〜25:75の範囲内であることが必要である。また、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの総量100重量部中、重合体ブロックAを5重量部以上含ませることにより、形成される粘着剤層に適度な保持力を付与することが可能となるという好ましい効果を発揮させることができる。一方、重合体ブロックAと重合体ブロックBとの総量100重量部中、重合体ブロックBを75重量部以上含ませることにより、形成される粘着剤層が被着体表面の凹凸に対して良好な追随性を示すため、被着体表面を確実に保護することが可能となるという好ましい効果を発揮させることができる。重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比は5:95〜25:75の範囲内であることが好ましく、7:93〜23:77の範囲内であることが更に好ましく、10:90〜21:79の範囲内であることが特に好ましい。
【0036】
<表面保護粘着フィルム>
本発明の表面保護粘着フィルムは、基材層と、前記で説明した本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層と、を有する。
好ましくは、当該粘着剤層は、当該基材層の一方の表面上に積層されている。
【0037】
<基材層>
当該基材層として好ましくは、ポリオレフィン基材層である。
当該「ポリオレフィン」としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−n−ブチルアクリレート共重合体、およびポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー)等が挙げられる。
これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、「ポリオレフィン」は、置換基を有するポリオレフィンであってもよく、ポリオレフィン以外の樹脂が添加されていてもよい。さらに、表面保護粘着フィルムの製造過程で生じた、ポリオレフィン基材層の端材や表面保護粘着フィルムの端材が添加されていてもよい。
基材層は、単層でもよいし、組成の異なる2種以上の多層構造を有している層であってもよい。
基材層は、表面保護粘着フィルムの用途等によって、その厚さを適宜調整することができる。通常、10〜100μm程度の厚さに設定することが適している。
【0038】
<粘着剤層>
前記粘着剤層は、本発明の粘着剤組成物からなる。当該粘着剤組成物は、前記重合体(ii)又は前記重合体(ii)および前記重合体(i)に加えて、必要に応じて、粘着付与剤、スチレン系ブロック相補強剤、軟化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、粘着昂進防止剤、オレフィン系樹脂、シリコーン系ポリマー、液状アクリル系共重合体、リン酸エステル系化合物等の公知の添加剤を適宜含有してもよい。
【0039】
本発明で用いられる粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テルぺン−フェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物などの、一般に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用することができる。粘着付与剤の軟化点が、90〜140℃のものを用いることがより好ましい。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、剥離性および耐候性などを高めるに、水添系の粘着付与剤を用いることがより好ましい。また、オレフィン樹脂とのブレンド物として市販されている粘着付与剤を用いてもよい。
【0040】
本発明での粘着付与剤とは、芳香族アルケニルブロック共重合体中の共役ジエン系またはその水素添加されたソフトセグメントであるゴム層に対して相溶し、粘着力をコントロールできるものを意味する。
なお、「相溶」とは、共重合体組成物に粘着付与剤を配合することにより得られる配合物のtanδピーク温度が、共重合体組成物のtanδピーク温度とは異なる値になる状態のことをいう。なお、本明細書中、「tanδピーク温度」とは、tanδの最大となる温度を意味する。
【0041】
スチレン系ブロック相補強剤は、粘着剤層の粘着昂進を抑制するために用いられる。スチレン系ブロック相補強剤は、芳香族アルケニルブロック共重合体が形成する海島構造の島相を補強する剤であり、芳香族アルケニルブロック共重合体からなるドメインに相溶する性質を有する。
本発明で用いられるスチレン系ブロック相補強剤としては、例えば、モノマー単位として、スチレンおよびα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、クロロメチルスチレン、tert−ブチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン系化合物が挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。つまり、スチレン系ブロック相補強剤は、これらモノマーを重合することによって得ることができる。2種以上のモノマーからなる共重合体の場合は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。なかでも、スチレン系ブロック相補強剤は、100℃程度以上の軟化点を有するものが好ましく、150℃以上がより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル社製、商品名「ENDEX155」(軟化点155℃)、「ENDEX160」(軟化点160℃)等が好適に使用される。
当該スチレン系ブロック相補強剤の使用量は、芳香族アルケニルブロック共重合体100重量部に対して、40重量部以下が好ましく、30重量部以下がより好ましい。また、スチレン系ブロック相補強剤の使用量は、好ましくは1重量部以上である。
【0042】
軟化剤は、通例、粘着力の向上に有効である。軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液体ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン、液状のロジン系樹脂またはこれらの水添物などの一般的に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用することができる。これらの軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
具体的な市販品としては、荒川化学社製、商品名「スーパーエステルL」、「スーパーエステルA18」、出光興産社製、商品名「ダイアナプロセスオイル」等が好適に使用される。
【0043】
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、リン系等の通常使用されるものが挙げられる。
光安定化剤としては、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等が挙げられる。
【0044】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
粘着昂進防止剤としては、大豆油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード251」等)、トール油変性アルキド樹脂(例えば、荒川化学工業社製、商品名「アラキード6300」等)などが挙げられる。
これらの添加剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
粘着剤層の厚さは特に制限されないが、例えば、通常0.5〜50μm程度、好ましくは1〜40μm、さらに好ましくは2〜30μmである。
【0046】
ここで、粘着付与剤としては、前記で例示したものなどを用いることができる。
粘着付与剤は、表面保護粘着フィルムを被着体から剥離する際の糊残りを防止できる量で使用することが適している。例えば、プリズムシート用の表面保護粘着フィルムとして使用する場合には、粘着剤組成物における粘着付与剤の含有量は、ゴム系樹脂成分[前記重合体(ii)、または前記重合体(i)および前記重合体(ii)(以下、これらをまとめて、芳香族アルケニルブロック共重合体と称する場合がある。)]100重量部に対し、好ましくは20重量部以上であり、より好ましくは20〜50重量部であり、さらに好ましくは25〜40重量部である。
粘着剤付与剤の含有量が20重量部以上であることで、帯電防止処理が施されている光学フィルムに対して、十分な初期粘着力を得ることができる。また、粘着剤付与剤の含有量が50重量部以下であることで、糊残りの発生が抑制される。
【0047】
軟化剤は、表面保護粘着フィルムを被着体から剥離する際の糊残りを抑制できる量で使用することが好ましい。例えば、プリズムシート用の表面保護粘着フィルムとして使用する場合には、粘着剤組成物における軟化剤の含有量は、芳香族アルケニルブロック共重合体100重量部に対し、2〜10重量が好ましく、より好ましくは3〜8重量部である。
軟化剤の含有量が2重量部以上であることで、帯電防止処理が施されている光学フィルムに対しても、十分な初期粘着力が得られる。10重量部以下であることで、展開力が重くならず、糊残りの発生が抑制される。
表面保護粘着フィルムは、粘着剤層中に、前記重合体(ii)、または前記重合体(i)および前記重合体(ii)に加えて、特定の割合で粘着付与剤と軟化剤とを含有することにより、特に帯電防止処理が施されている光学フィルムに対して、初期粘着力を確保しつつ、展開性に優れ、被着体に対する糊残りを抑制することができる。
【0048】
<シート積層体>
上述の表面保護粘着フィルムは、シート積層体に適用可能である。
シート積層体とは、表面保護粘着フィルムと、表面保護粘着フィルムが貼り付けられた他のシートと、を備える。他のシートとしては、プリズムシート等の光学フィルムが用いられる。シート積層体において、表面保護粘着フィルムが貼り付けられる他のシートは、シート表面に帯電防止処理が施されていてもよい。
【0049】
「帯電防止処理が施された」とは、帯電防止剤を含有することを包含する。帯電防止剤は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、アシロイルアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムナイトレート、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムサルフェート、セチルモルホリニウムメトサルフェートのような陽イオン系界面活性剤や、直鎖アルキルリン酸カリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸カリウム塩、アルカンスルフォン酸塩のような陰イオン系界面活性剤、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)−N−アルキルアミン、その脂肪酸エステル誘導体、多価アルコール脂肪酸部分エステル類のような非イオン系界面活性剤などを使用することができる。これらの帯電防止剤の配合比は、所望とする特性に合わせて適宜決められる。例えば、他のシートがその表面にコーティング層を有する場合、つまり表面保護粘着フィルムの粘着剤層がコーティング層に接着される場合、コーティング層の主成分であるバインダー樹脂100重量部あたりの帯電防止剤の含有量は、通常0.1〜10重量部程度である。
【0050】
シート積層体において、複数の表面保護粘着フィルムと他のシートとが交互に積層されていてもよい。特に、シート積層体は、表面保護粘着フィルムが他のシートに貼り付けられた状態で巻かれた、巻回体であってもよい。
【0051】
本発明の表面保護粘着フィルムが適用されるプリズムシートのレンズ部は、実質的に3角柱からなるプリズム形状を有する。本明細書中、このようなプリズム形状のレンズ部を有する面をプリズム面と称する。より具体的には、図1に示すように、プリズムシート1は、平坦なシート部2の一方面に複数本の三角柱状のレンズ部3が一体化された構造を有する。レンズ部3は、実質的に三角柱の形状を有する。そして、三角柱の各稜線が平行となるように、複数のレンズ部3が密接して並設されている。このプリズム形状のレンズ部3の外表面が本発明の表面保護粘着フィルムにより保護される。
【0052】
例えば、図2に断面図で示すように、プリズムシート1のレンズ部3が設けられている部分に、第1の表面保護粘着フィルム4(本発明の表面保護粘着フィルム)が貼付される。第1の表面保護粘着フィルム4は、基材層5と、基材層5の一方面に設けられた粘着剤層6とを有し、粘着剤層6側から、プリズムシート1の上記複数のレンズ部3が設けられている側に貼付される。従って、本発明の表面保護粘着フィルムは、三角柱状のレンズ部3の複数の頂部3aに接するように貼付される。また、この三角柱のレンズ部3の横断面形状は三角形であるが、この三角形は、好ましくはシートに固定されている側面を底辺とした二等辺三角形である。
【0053】
一方、プリズムシート1の、レンズ部3が設けられている側とは反対側の平坦な面には、所望により、第2の表面保護粘着フィルム7が貼付される。
【0054】
なお、3角柱のプリズム形状における側面とは、3角柱の長さ方向に延びる3つの側面をいうものとする。
【0055】
本発明の表面保護粘着フィルムが適用される好適なプリズムシートにおいては、実質的に3角柱の複数のプリズムにおいて、隣り合うプリズムの距離、すなわち、プリズムのピッチは10〜1000μm程度であることが好ましく、より好ましくは10〜500μmであり、さらに好ましくは10〜60μmであり、本発明の表面保護粘着フィルムは微細なプリズムピッチを持つ被着体に対して適している。
また、シート積層体は、打ち抜きによって成形されていてもよい。つまり、表面保護粘着フィルム側又は被着体である他のシート側から積層体に打ち抜き刃を押し付けることで、積層体を所望の形状(例えば長尺状)に打ち抜いて、所望の形状及び大きさの積層体(便宜上、打ち抜かれた後の積層体を「積層片」と称する)を得ることができる。こうして得られた積層片では、表面保護粘着フィルムの端部が被着体に強く接着する。被着体がプリズムシート等の凹凸を有するシートである場合は、その凹凸内に表面保護粘着フィルムの粘着剤層が入り込み、表面保護粘着フィルムと被着体とがさらに強固に接着される。
しかしながら、本実施形態の表面保護粘着フィルムによれば、被着体に表面保護粘着フィルムの端部が強固に接着することなく被着体から容易に剥離することができる。その結果、作業者は、剥離された端部をつかんで引っ張ることにより、表面保護粘着フィルム全体を被着体から剥がすことができる。
【0056】
<製造方法>
本発明の粘着剤組成物は、例えば、共重合体(I)および共重合体(II)をそれぞれブロック重合により合成し、これらを所定の質量比でブレンドした後に、所望により水素添加を行って、共重合体(I)またはその水素添加物、および共重合体(I)またはその水素添加物の混合物を得、および所望により配合される添加剤を慣用の方法で混合することによって製造される。
【0057】
水素添加触媒としては、元素周期表Ib、IVb、Vb、VIb、VIIb、VIII族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を挙げることができ、より具体的には、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Rh、Ruなどのメタロセン系化合物、pd、Ni、Pt、Rh、Ruなどの金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土、塩基性活性炭などの担体に担持させた担持型不均一系触媒を挙げることができる。
【0058】
なお、メタロセン系化合物の具体例としては、シクロペンタジェニル環(Cp環)またはCp環上の水素をアルキル基で置換した配位子を二つ有するKaminsky(カミンスキー)触媒、ansa(アンサ)型メタロセン触媒、非架橋ハーフメタロセン触媒、架橋ハーフメタロセン触媒等を挙げることができる。
【0059】
具体的な例を挙げると、特開平1−275605号公報、特開平5−271326号公報、特開平5−271325号公報、特開平5−222115号公報、特開平11−292924号公報、特開2000−37632号公報、特開昭59−133203号公報、特開昭63−5401号公報、特開昭62−218403号公報、特開平7−90017号公報、特公昭43−19960号公報、特公昭47−40473号公報に記載の触媒を挙げることができる。これら各種の触媒は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
別法として、共重合体(II)が前記一般式(A−B)x−Y(式中の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する場合、本発明の粘着剤組成物は、以下のような方法(カップリング法)によって、製造してもよい。カップリング法は、共重合体(I)またはその水素添加物(重合体(i))と共重合体(II)またはその水素添加物(重合体(ii))を1ポットで合成することができるため製造工程が簡素であり、製造コストが低廉で、カップリング剤の種類や量により、重合体(i)と重合体(ii)との比率を制御することができる等の点において好ましい。
【0061】
カップリング法は、
第1工程:[A−B]の構造を有する共重合体をブロック重合により合成する工程と、
第2工程:前記[A−B]の構造を有する共重合体の一部を、カップリング剤Y−Z(但し、「Y」はカップリング剤残基、「Z」は脱離基、「X」は2以上の整数を示す。)によりカップリングさせ、{[A−B]−Y}の構造を有する共重合体を合成する工程と、
水素添加物を得る場合には、更に、
第3工程:前記[A−B]の構造を有する共重合体及び前記{[A−B]−Y}の構造を有する共重合体に水素添加することにより、それぞれ水素化された共重合体(I)と共重合体(II)とからなる共重合体組成物を得る工程と
を備える。
【0062】
「カップリング剤」としては、例えば、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジブロモエタン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン等のハロゲン化合物;エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸等のカルボニル化合物、ジビニルベンゼン等のポリビニル化合物;ポリイソシアネート;等を挙げることができる。中でも、工業的に入手し易く、反応性も高いという理由から、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラクロロシランが好ましい。
【0063】
本発明の表面保護粘着フィルムは、例えば、押出成形によって基材シート(基材層)を製造した後、前記粘着剤組成物を溶融または溶解させた液体を基材シートに塗布または噴霧する方法、あるいは、インフレーション法により得られた基材シートと粘着シートを貼り合わせる方法、あるいは多層マニホールドを備えたTダイを用いて基材原料と前記粘着剤組成物を共押出する方法により製造できる。なかでも、基材層と粘着剤層が密着した多層シートが得られるので共押出により製造する方法が好ましい。なお、本発明の粘着剤組成物を溶融または溶解させた液体もまた、本発明の粘着剤組成物に包含される。
【0064】
<適用>
本発明の粘着剤組成物は、表面保護粘着フィルムの粘着剤層に好ましく適用される。また、表面保護粘着フィルムは、光学板、プリズムシート、および拡散フィルム等の凹凸のある被着体にも好適に用いることができるが、これに限定されるものではなく、例えば、表面が平滑なシートの表面保護にも使用することができる。
被着体となるシートを構成する材料としては、特に限定されないが、透光性を有する樹脂、例えばアクリル系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の表面保護粘着フィルムを、実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(共重合体組成物の合成)
重合体ブロックA
窒素置換された反応容器に、脱気・脱水されたシクロヘキサン500質量部、スチレン20質量部及びテトラヒドロフラン5質量部を仕込み、重合開始温度の40℃にてn−ブチルリチウム0.13質量部を添加して、昇温重合を行った。
重合体ブロックB
重合体Aの重合転化率が略100%に達した後、反応液を15℃に冷却し、次いで、1,3−ブタジエン70質量部およびスチレン10質量部を加え、更に昇温重合を行った。
【0067】
重合転化率がほぼ100%に達した後、カップリング剤としてメチルジクロロシラン0.06質量部を加え、カップリング反応を行った。カップリング反応が完結した後、水素ガスを0.4MPa−Gaugeの圧力で供給しながら10分間放置した。一部取り出したポリマーは、ビニル含有率64%、重量平均分子量約11万、カップリング率60%であった。
【0068】
その後、反応容器内に、ジエチルアルミニウムクロライド0.03質量部及びビス(シクロペンタジエニル)チタニウムフルフリルオキシクロライド0.06質量部を加え、撹拌した。水素ガス供給圧0.7MPa−Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、重合体(i)と重合体(ii)からなる共重合体組成物を得た。
共重合体組成物の特性を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
なお、「St(A+B)」、「St(B)」、「St(A)」、および「St(b)」は、それぞれ次のように定義される数値を表す。当該定義において、「全重合体」とは、重合体(i)および重合体(ii)の全体を意味する。
「St(A+B)」は、全重合体の芳香族アルケニル化合物単位含有率であり、次式で表される数値を意味する。なお、これは、下記「St(B)」と下記「St(A)」との和に等しい。
式:
St(A+B)=(全重合体中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/(全重合体中の全単量体単位重量)×100(重量%)
「St(B)」は、次式で表される数値を意味する。
式:
St(B)=(全重合体ブロックB中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/(全重合体中の全単量体単位重量)×100(重量%)
「St(A)」は、次式で表される数値を意味する。
式:
St(A)=(全重合体ブロックA中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/(全重合体中の全単量体単位重量)×100(重量%)
「St(b)」は、重合体ブロックBの芳香族アルケニル化合物単位含有率であり、次式で表される数値を意味する。
式:
St(b)=(全重合体ブロックB中の芳香族アルケニル化合物単位重量)/(全重合体ブロックB中の全単量体単位重量)×100(重量%)
また、表1中、「A:B」は、重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比を表す。
また、表1中、「(i):(ii)」は、重合体(i)と重合体(ii)の重量比を表す。
また、表1中、「共役ジエン含有率」は、重合体ブロックBの共役ジエン単位含有率を表す。
また、表1中、「ビニル結合含有率」は、重合体ブロックBのビニル結合の含有率を表す。
【0071】
(実施例1〜6、比較例1〜5)
100重量部の共重合体組成物に、粘着付与剤として20重量部の「アルコンP100」(荒川化学工業社製)と、スチレン系ブロック相補強剤として20重量部の「ENDEX155」(イーストマンケミカル社製)と、表2に示す量のポリエチレンイミン(「エポミンRP20」、日本触媒社製)及びエチレンビスステアリン酸アミド(「アルフローHF50」、日油社製)と、を添加することで、粘着剤組成物を得た。
【0072】
基材にはポリプロピレン(「J715M」、プライムポリマー社製)を用い、Tダイ法により基材と各粘着剤組成物を共押出成形することで、34μmの厚みの基材層と6μmの厚みの粘着剤層とが積層一体化された、実施例1〜6および比較例1〜5の表面保護粘着フィルムを成形した。
【0073】
凹凸を有するプリズムシート(「BEF3」、住友3M社製)に表面保護粘着フィルムを貼り付けることで、積層体を得た。
【0074】
(評価)
表面保護粘着フィルムについて、「とっかかり」及び「汚染性」を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
<判定基準>
とっかかり(表面保護フィルムの端部をつかんで引っ張り被着体から剥がす際の表面保護フィルムの端部の剥がしやすさ)
正方形の打ち抜き刃によって、表面保護粘着フィルム側から積層体を打ち抜くことで、正方形の積層片を得た。積層片を3つ用意してそれぞれの積層片について次の試験を行った。積層片の一辺から表面保護粘着フィルムを親指を使ってつかみ引き剥がすことを5回試みた。なお、表面保護フィルムをつかむ場所は毎回変えた。用意した3つの積層片のうち5回とも表面保護粘着フィルムを引き剥がすことに成功した積層片の数(成功した数)によって、以下のように評価した。
◎(優): 成功した数 3
○(良): 成功した数 2
×(不良): 成功した数 1またはゼロ
汚染性(被着体への粘着剤の一部の成分の付着(糊残り))
積層片を3つ用意してそれぞれの積層片について次の試験を行った。積層片を80℃で3日間養生した後、表面保護フィルムを剥がした。次いでバックライトで照らしたプリズムシートの凹凸面(プリズム面)を目視により観察し糊残りの有無を評価した。

◎(優):3つの積層片の全てについて表面に糊残りが観察されなかった
○(良):2つの積層片には糊残りが観察されなかったが1つの積層片には表面に糊残りが観察された
×(不良):3つの積層片のいずれについても表面に糊残りが観察された
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の粘着剤組成物は、プリズムシート、拡散フィルム等の表面保護粘着フィルムの粘着剤層に好適に用いられる。本発明の表面保護粘着フィルムは、プリズムシート、拡散フィルム等の表面保護に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0078】
1 プリズムシート
2 シート部
3 レンズ部(プリズム)
3a レンズ部の頂部(プリズム頂角)
4 第1の表面保護粘着フィルム
5 基材層
6 粘着剤層
7 第2の表面保護粘着フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(ii):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式A−B−A(式中の記号は前記と同意義を表す。)もしくは一般式(A−B)x−Y(式中、xは1以上の整数を表し、Yはカップリング剤残基を、その他の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体(II)またはその水素添加物
を含有し、
又は、
重合体(i):下記重合体ブロックAおよび下記重合体ブロックBを含み、一般式[A−B]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1〜3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体(I)またはその水素添加物と、
前記重合体(ii)と、を含有し、
前記重合体(i)および前記重合体(ii)の全体の芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(A+B))は、30〜50重量%であり、
前記重合体(i)および前記重合体(ii)にそれぞれ含まれる重合体ブロックAの総量と重合体ブロックBの総量との重量比(A:B)が5:95〜25:75の範囲内であり、
さらに、
イミン系化合物及び脂肪酸アミドの少なくとも一方を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
重合体ブロックA:
芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位を主体とする重合体ブロック
重合体ブロックB:
共役ジエン単位と芳香族アルケニル化合物単位がランダムに含まれる芳香族アルケニル−共役ジエン共重合体ブロックであって、芳香族アルケニル化合物単位含有率(St(b))が10〜35重量%である重合体ブロック
【請求項2】
前記重合体(i)および前記重合体(ii)の合計重量100重量部に対して、前記イミン系化合物の含有量は0.2〜1.5重量部である、
請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記脂肪酸アミドの含有量は0.15〜3.5重量部である、
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
基材層と、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層と、を有する表面保護粘着フィルム。
【請求項5】
前記基材層はポリオレフィン基材層であり、
前記粘着剤組成物は、粘着付与剤およびスチレン系ブロック相補強剤を更に含有し、
前記重合体(i)、前記重合体(ii)およびスチレン系ブロック相補強剤中の芳香族アルケニル化合物単位重量の、前記粘着剤層の重量に対する割合(芳香族アルケニル化合物単位含有率)は、20〜50重量%である、
請求項4に記載の表面保護粘着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−117013(P2012−117013A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270497(P2010−270497)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】