説明

精紡機に設けられた集束装置を備えたドラフト機構

【課題】付加的な監視手段の使用なしに、集束装置における吸込み作用が低下または欠如した場合に、更なる糸形成が自動的に中断されるような装置を提供する。
【解決手段】綾振り装置20と、後続の集束装置とが設けられていて、集束手段9が吸込みゾーンSZを備えており、該吸込みゾーンに続いて撚り止めローラ14aが設けられており、該撚り止めローラが、挟持部を形成する円筒状の区分ZAを有しており、該区分ZAにそれぞれ撚り止めローラの両端部に向かって突出した区分K1,K2が続いており、該突出した区分の直径が、端部に向かって連続的に減少しており、円筒状の区分ZAの幅bが、吸込みゾーンSZの幅sよりも大きく、綾振りストロークcの両反転点U1,U2の少なくともいずれか一方が、円筒状の区分ZAの外側で、かつ突出した区分K1,K2の内側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精紡機に設けられたドラフト機構であって、前置された、つまり上流側に設置された綾振り装置が設けられていて、該綾振り装置を介して繊維材料が、該繊維材料の搬送方向に対して側方に行われる綾振り運動によって当該ドラフト機構に供給されるようになっており、さらに後続の集束装置が設けられていて、該集束装置が、負圧で負荷された、つまり負圧をかけられた循環する集束手段を有しており、該集束手段が、吸込みゾーンを備えており、該吸込みゾーンに、ドラフト機構から送出された繊維材料が、吸込み空気流の作用を受けて引き寄せられるようになっており、さらに該吸込みゾーンが、集束手段の周面に分配されたパーフォレーション、つまり複数の穿孔を備えており、吸込みゾーンに続いて、撚りを形成する装置から集束手段への撚りの逆行を阻止するための撚り止めローラ(Drehungssperrwalze)が設けられており、該撚り止めローラが、前記集束手段と共に挟持部を形成しており、該挟持部から繊維材料が、後続の、撚りを形成する装置に供給されるようになっている形式のドラフト機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許第4448021号明細書に基づき、精紡機のドラフト機構装置が公知である。このドラフト機構装置は集束装置を備えている。この場合、ドラフト機構の出口ローラ対のボトムローラは吸込みドラム(集束手段)として形成されている。この吸込みドラムには、プレッシャローラと、後続の撚り止めローラ(ツイストブロックローラ)とが載着されており、吸込みドラムはこれらのローラと共にそれぞれ1つの挟持部を形成している。プレッシャローラと撚り止めローラとの間には、ドラフトされた繊維材料のための集束範囲が設けられている。この集束範囲の上方には、変向シールドの形のシールド部が設けられている。吸込みドラムに印加された負圧の影響を受けて、ドラフト機構から送出された、ドラフトされた繊維材料は吸込みドラムの中央範囲へ向かって吸引される。この中央範囲において吸込みドラムは循環するパーフォレーション(穿孔)を備えている。中央範囲へ向かって吸引されるときに、繊維材料は集束され、この場合、外側へ向かって突き出していた繊維は吸込み空気流の作用を受けて一緒に取り込まれて結束される。ドラフト機構装置への進入前に、繊維材料は綾振り装置を通って案内される。この綾振り装置を介して繊維材料は、ドラフト機構装置を通って案内される間、その搬送方向に対して直交する横方向に綾振りされる。綾振りによって、ドラフト機構の、被膜を備えたプレッシャローラの摩耗が低減される。
【0003】
綾振り運動により、集束装置の表面への、ドラフトされた繊維材料の送出部は時間的な経過において連続的に変化する。このときに、綾振り運動の軌道は、繊維材料の搬送方向に対して直交する横方向で見て、集束範囲の両側に延在する。撚り止めローラの挟持点に続いて、後続の、撚りを形成する装置(加撚装置)の影響を受けて、いわゆる「精紡三角領域(Spinndreieck)」が形成される。
【0004】
公開されている刊行物であるドイツ連邦共和国特許第10227463号明細書、欧州特許出願公開第0924323号明細書および欧州特許出願公開第0947614号明細書に基づき公知の構成では、やはり撚り止めローラを有する集束装置が、ドラフト機構装置に直接に続いて配置されている。本発明における構成は、このような構成にも関する。
【0005】
集束装置における吸込み作用が故障により欠如するか、またはこの吸込み作用が減じられると、相応して集束作用は悪化するか、または完全に消失し、これにより糸の毛羽は増大する。この場合、集束装置の内部で、たとえば集束装置の吸込みインサート(たとえば吸込みドラム)の内部で、吸い込まれたフライ(風綿)やその他の汚れの堆積に基づいて閉塞が生じる危険がある。このような閉塞は集束面における吸込み出力の減少または消失を招き、ひいては糸品質の悪化を招く。それゆえに、吸込み出力の低下を監視し、かつ相応する紡出部を停止させるための相応する手段をリリースするための装置が提案されている。
【0006】
このような装置は、たとえば欧州特許出願公開第1352999号明細書に開示されており、この場合、吸込み空気流を監視するために、旋回可能な別個のフラップが取り付けられている。このフラップは、パーフォレーションを備えた循環するエプロンに対向して位置しており、吸込み空気流の故障が生じるやいなや、このフラップはその位置を変化させる。この位置変化は、相応して設けられたプローブにより検出されるか、または視覚により検出され得る。このようなフラップを用いると、たしかに、吸込み空気流の的確な監視を実施することが可能となるが、しかしこのようなフラップの取付けは、特に集束範囲が空気ガイドエレメントによって覆われている場合には、集束装置の範囲に一般には存在してない付加的な所要スペースを必要とする。さらに、付加的に運動させられる複数の部分が必要とされ、これらの部分はやはり汚れ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第4448021号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第10227463号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0924323号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0947614号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1352999号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、公知の解決手段の不都合を回避し、そして付加的な監視手段の使用なしに、集束装置もしくは集束手段における吸込み作用が低下または欠如した場合に、更なる糸形成が自動的に中断されるような装置を提供することである。
【0009】
また、異常のない集束装置における集束過程の間には、集束に不都合な影響を与える恐れのある空気流が発生しないことが有利である。すなわち、集束範囲を通って案内される繊維材料には、主として、搬送方向に対して直交する横方向に向けられた空気流が作用することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭で述べた形式のドラフト機構において、撚り止めローラの回転軸線の方向で見て、撚り止めローラが、挟持部を形成する円筒状の区分を有しており、該円筒状の区分にそれぞれ撚り止めローラの両端部に向かって突出した区分が続いており、該突出した区分の直径が、端部に向かって段階的または連続的に減少しており、撚り止めローラの前記円筒状の区分の幅が、吸込みゾーンの幅よりも大きく形成されていて、繊維材料の搬送方向で見て、綾振りストロークの両反転点の少なくともいずれか一方の反転点が、撚り止めローラの前記円筒状の区分の外側でかつ前記円筒状の区分に続いた前記突出した区分の内側に位置しているようにした。
【発明の効果】
【0011】
「撚り止めローラ」とは、後続の、撚りを形成する装置の作用を受けて出口側に「精紡三角領域(Spinndreieck)」が形成される「ローラ」であり、撚りを形成する装置から集束手段への撚りの逆行(伝播)を阻止するために働く。撚りを形成する装置は、たとえばリング/トラベラ組合せから成っていてよい。この場合、撚りを付与された繊維材料(糸)はスピンドルに巻き取られてコップを形成する。撚り止めローラに続いて形成される、撚りを付与された繊維材料(糸)は、ドラフト機構の出口ローラ対の挟持部と、撚り止めローラの挟持部との間の集束ゾーンの範囲に位置する繊維材料よりも著しく高い粘着力を有している。本発明はこの事情を利用するものである。すなわち、撚り止めローラの、繊維材料のための挟持部を形成する円筒状の中央部分の幅は、繊維材料の綾振り運動に関連して、綾振り運動の部分区分の間、ドラフト機構の出口ローラ対からの繊維材料の送出方向が、撚り止めローラの円筒状の中央部分の外側に延びるように寸法設定されている。すなわち、綾振り運動の両反転点の少なくとも一方の反転点は、繊維材料の搬送方向で見て、撚り止めローラの円筒状の中央部分の外側でかつこの円筒状の中央部分に続いた区分の内側に位置する。
【0012】
故障のないスムーズな運転の間、かけられた吸込み流の作用を受けて、ドラフト機構の出口ローラ対から送出された繊維材料は、吸込みゾーンに向かって移動させられて、この吸込みゾーンにおいて集束される。綾振り運動によってドラフト機構の出口ローラ対における繊維材料の送出部と吸込みゾーンとが重なり合った場合にのみ、吸込み空気流による繊維材料の側方移動は行われない。撚り止めローラの円筒状の中央部分に側方で続いた、段階的または連続的に直径を減径された区分により、一方では、この範囲に集束手段との挟持部が形成されなくなることが保証され、他方では吸込み範囲がこれらの区分によってほぼ隔離されたままとなる。これによって、吸込み作用により、繊維材料の搬送方向とは逆方向に向けられた空気流が発生しなくなることが保証される。吸込みゾーンの幅は、集束手段の周面に配置された複数のパーフォレーションもしくは穿孔により規定される。これらのパーフォレーションは、集束手段の内部に配置された吸込みインサートの相応する幅を有する吸込みスリットに接続されている。一般に、吸込みスリットの幅は吸込みゾーンの幅に相当している。吸込みスリットはドラフト機構の出口ローラ対と撚り止めローラの挟持部との間の範囲に配置されていて、種々の横断面および構成を有していてよい。吸込み作用が欠如している場合にドラフト機構の出口ローラ対からの繊維材料の送出部が、搬送方向で見て、撚り止めローラの円筒状の中央部分の範囲の外に位置すると、この繊維材料はもはや側方に移動されなくなり、円筒状の中央部分に続いた先細りになった区分の範囲に進入する。この先細りになった区分は、集束手段と共に挟持部を形成しない。これによって、撚りを付与された糸を負荷する引張力は、ドラフト機構の出口ローラ対の挟持点と撚り止めローラとの間の範囲における繊維材料の加撚されていない区分にも作用する。しかし、繊維材料のこの加撚されていない区分は、加撚された糸よりも著しく小さな粘着力を有するので、前記引張力の作用に基づき、この区分における繊維材料の裂断が生じる。ドラフト機構から突出した、裂断された端部は次いで、各ドラフト機構に設けられた吸込み装置によって捕捉されかつ吸い込まれる。これによって、この紡出部における圧縮されていない糸または部分的にしか圧縮されていない糸の生産は中断される。巻取り装置への誤った糸供給はセンサにより検出され、視覚的または電気的な信号を介して、オペレータに報知され得る。
【0013】
撚り止めローラの円筒状の中央区分の幅が、綾振り運動のストロークよりも小さく形成されていることが提案される。これによって、撚り止めローラの円筒状の中央区分に関して綾振り範囲を、繊維材料の搬送方向で見て、両側における綾振り運動の反転点が円筒状の中央区分の外側に位置するように設定することが可能となる。
【0014】
さらに、撚り止めローラの前記円筒状の区分が6〜10mmであることが提案される。綾振り運動が前記円筒状の区分の両端部を越えて行われる場合は、前記円筒状の区分は綾振り運動のストロークよりも小さく形成されていなければならない。撚り止めローラの前記円筒状の区分の両側に続いた区分は円錐状に形成されていてよい。これらの円錐状の区分はそれぞれ撚り止めローラの端部に向かって先細りになっている。これによって、撚り止めローラに続いた範囲に対する集束範囲の隔離をほぼ維持することができる。これにより、集束範囲における望ましくない空気流を回避することができる。円錐部の先細り角度もしくは円錐頂角は1〜20゜であってよい。
【0015】
撚り止めローラの前記円筒状の中央区分に両側で、該円筒状の中央区分よりも小さな直径を有する少なくとも1つの円筒状の区分が続いている構成も考えられる。円筒状の中央区分に続いた外側の区分は、各端部に向かって段階的に減径された複数の円筒状の部分区分から成っていてよい。
【0016】
本発明のさらに別の利点は、以下に説明する実施形態に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】集束装置を備えたリング精紡機のドラフト機構装置の概略的な側面図である。
【図1a】図1に示した集束装置を備えたドラフト機構装置の別の実施形態を示す概略図である。
【図2】図1の「X」で示した方向から見た図である。
【図3】図2に示したドラフト機構装置において本発明により形成された撚り止めローラを使用した実施形態を示す図である。
【図4】図3に示した撚り止めローラの別の実施形態を示す図である。
【図4a】図4に示した撚り止めローラの別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0019】
図1には、図示されていない精紡機(リング精紡機)のドラフト機構装置1(相並んで配置された多数のドラフト機構アッセンブリのドラフト機構装置)が示されている。この場合、このドラフト機構装置1(以降、簡単に「ドラフト機構」と呼ぶ)は本実施形態では3つのローラ対から成っている。これらのローラ対は入口ローラ対2,3と、この入口ローラ対2,3に後置された、つまり入口ローラ対2,3の下流側に設置されたセンタローラ対5,6とから形成される。給糸ボビンSから引き出された粗糸F(ロービング)は変向部10と、後続の綾振り装置20とを介してドラフト機構1に、入口ローラ対2,3の挟持線Zを越えて供給される。特に図1の「X」の方向から見た図2の平面図から判るように、綾振り装置20は、反転点U1,U2内に綾振りストロークcを有する側方の綾振り運動を実施する。この綾振り運動は搬送方向FSに対して直交する横方向に向けられている。綾振り装置20は駆動装置(図示しない)に結合されている。綾振りにより、ドラフト機構ローラの耐用年数、特にゴム被膜を備えたプレッシャローラの耐用年数は高められる。
【0020】
センタローラ対5,6の回転数は、入口ローラ対2,3の回転数に比べて軽度に高められており、これによりこれらのローラ対の間で粗糸Fの前ドラフトが行われる。センタローラ対5,6を巡って、それぞれエプロン11,12が巻き掛けられて案内される。エプロン11,12はそれぞれクレドル(図示しない)を巡って図示の位置に保持される。センタローラ対5,6の間の挟持線Z1から進出した後に、前ドラフトによってドラフトされた粗糸Fは、エプロン11,12にアシストされて出口ローラ対8,9の挟持点Z2へ移送される。出口ローラ対8,9は、センタローラ対5,6よりも著しく高い速度を有しており、この場合、挟持点Z1と挟持点Z2との間で粗糸Fの主ドラフトが行われる。一般に、ボトム側のローラ3,6,9は直接に駆動装置(図示しない)に結合されており、トップ側のローラ2,5,8は圧力負荷を受けてボトム側のローラ3,6,9に載着されていて、これらのボトム側のローラ3,6,9によって摩擦により駆動される。
【0021】
出口ローラ9は本実施形態では、駆動される吸込みローラとして形成されている。この吸込みローラの中央範囲は、全周にわたって延びる複数のパーフォレーション(穿孔)もしくは開口Oを備えている(特に図1のX方向で見た図2の平面図から判る)。概略的に図示されているように、吸込みローラ9の内部には、定位置に固定された吸込みユニット50が設けられている。この吸込みユニット50は、吸込みローラ9の内面IFに向かい合って位置する側に、概略的に図示した吸込み開口、たとえば吸込みスリット51を有しており、この吸込みスリット51は集束範囲Vに沿って延びていて、管路(図示しない)を介して負圧源に接続されている。集束範囲Vの上方には、周面AFに対して間隔を置いて、空気ガイドエレメント16が取り付けられており、これにより、最適な集束過程のために必要となる側方の空気供給が保証される。このことは、図2に矢印により概略的に示されている。集束過程および必要となる空気案内に関する詳細は、公開されたドイツ連邦共和国特許出願公開第4448021号明細書に記載されている。
【0022】
吸込みゾーンSZもしくは集束範囲(「繊維圧縮部」とも呼ばれる)に続いて配置された、吸込みローラ9と共に挟持線Dを形成するツイストロックローラ、すなわち撚りの伝播を阻止するための撚り止めローラ14により、ドラフトされかつ集束された繊維材料は、後続の、撚りを形成する装置(加撚装置)40に供給される。撚り止めローラ14により、この撚り止めローラ14に後続する周辺範囲に対する吸込みゾーンSZの集束範囲Vの隔離が行われる。これによって、前記周辺範囲から吸込みスリット51を介して空気が直接に吸い込まれることは回避される。このように空気が撚り止めローラ14の下流側の周辺範囲から吸い込まれると、繊維材料の搬送方向FKとは反対方向の空気流が生ぜしめられてしまう。このような逆方向に向けられた空気流は集束過程に不都合な影響を与えてしまう。したがって、撚り止めローラを変える場合や調整する場合には、公知の解決手段と同様に同じく逆向きの空気流が発生しないように注意しなければならない。
【0023】
図1aに示した概略的な部分図には、集束装置を備えたドラフト機構1の別の実施形態が示されている。この実施形態では、同じく、以下に図3および図4につき説明するような撚り止めローラ14a,14bの本発明における構成が使用され得る。この場合、吸込みインサートもしくは吸込みユニット50を備えた吸込みローラ9が、ドラフト機構1の出口ローラ対9a,8に続いて配置されている。吸込みローラ9の駆動力は出口ボトムローラ9aから取り出すことができる。撚り止めローラ14は押圧力を持って吸込みローラ9に載着されていて、挟持線Dを形成する。図示の吸込みローラ9の代わりに、たとえばドイツ連邦共和国特許出願公開第102006033388号明細書に開示されているような循環するエプロン(図示しない)が使用される場合にも、本発明における撚り止めローラ14a,14bの構成が使用可能となる。
【0024】
図2に示した二重矢印から判るように、綾振り装置20を介して挟持線Zに供給された繊維材料Fは運転中に規定の時間インターバル(たとえば1〜5分間)を置いて変向点U1,U2の間を搬送方向FSに対して直交する横方向に移動させられる。この場合、搬送方向FSに対して直交する横方向で見て、綾振りストロークcと幅sを有する吸込みゾーンSZとは中心で互いに整合するように位置調整されている。繊維材料Fの供給部が、たとえば両変向点のうちの一方の変向点U1またはU2の範囲に位置していると、繊維材料Fは、破線で示した軌道から判るように、この位置でドラフト機構1を通って挟持線Z2にまで案内される。
【0025】
出口ローラ対8,9の挟持線Z2を通過した後に、繊維材料Fは、吸込みゾーンSZの範囲で吸込みスリット51を介して発生させられる吸込み空気流(矢印で示す)の作用範囲に進入する。周面AFと空気ガイドエレメント16との間の吸込み空気流の影響を受けて、挟持線Z2から進出した繊維材料Fは吸込みスリット51もしくは吸込みゾーンSZに向かう方向に変向される。
【0026】
引き続き、繊維材料Fはパーフォレーションを備えた外面AFに沿って、吸込みゾーンSZに設けられた吸込みスリット51の上方で撚り止めローラ14の挟持部Dにまで案内され、それと同時に集束される。次いで、挟持部Dから繊維材料は後続の、撚りを形成する装置40へ移送される。吸込み空気が故障等により欠如すると、繊維材料Fはもはや吸込みスリット51もしくは吸込みゾーンSZへ向かって変向されなくなり、挟持線Z2から進出した際に占めていた位置をそのまま維持する。すなわち、繊維材料Fはこの場合には、方向変化なしにかつ集束なしに、周面AFに沿って撚り止めローラ14の挟持部Dにまで移送され、この撚り止めローラ14から繊維材料Fは後続の、撚りを形成する装置40に供給される。吸込み空気の欠如を検出するための付加的な監視装置が設けられていない場合、この紡出部では、悪い品質を有する糸が生産されてしまう。このことを阻止するために、この構成では、各紡出部に付加的な監視装置が据え付けられなければならない。
【0027】
撚りを形成する装置40は本実施形態では、リング26を有しており、このリング26は、昇降運動させられるリングレール25に取り付けられている。リング26に沿ってトラベラ27が周回走行する。リング26の中央には、駆動装置(図示しない)に結合されたスピンドル29が配置されており、このスピンドル29は、概略的に図示された軸受け31を介して精紡機に回転可能に支承されている。スピンドル29には、巻き管30が差し被されている。この巻き管30には、形成された糸FKが巻き付けられて、コップ24を形成する。挟持線Dから送出された繊維材料Fは糸ガイド28を介してトラベラ27に供給される。前記リング/トラベラの組合せにより、挟持線Dから送出された繊維材料Fは加撚され、これにより繊維材料Fはその強度を得ると共に、加撚された糸として巻き取られる。挟持線Dと糸ガイド28との間の経路には、センサ33が設けられていてよい。このセンサ33を介して糸の存在を監視することができる。センサ33は本実施形態では、線路34を介して中央制御部STに接続されている。この中央制御部STは信号を評価して、オペレータのために相応する表示または警告信号をリリースすることができる。
【0028】
吸込みローラ9および撚り止めローラ14の送出範囲には、吸込み管18が設けられている。この吸込み管18は概略的に図示された吸込み源22に接続されている。ドラフト機構1と、撚りを形成する装置40との間で糸切れが発生するやいなや、ドラフト機構1から導出された、中断された端部は、吸込み管18内にかけられた負圧によって捕捉されて吸い込まれる。紡出部に場合によっては生じた不都合が取り除かれた後に、糸はマニュアル式にまたは自動式に再びトラベラ27に手繰り込まれて、引き続き行われる巻取り過程のために巻き管30もしくは部分的に巻成されたコップに再び供給され得る。もちろん、糸監視の多数の別の構成が知られている。
【0029】
以下に、図3および図4に示した実施形態つき、本発明の構成を詳しく説明する。
【0030】
図3および図4には、それぞれ綾振り運動と相まって撚り止めローラの本発明における構成を使用する、図2に相応する実施形態が示されている。
【0031】
図3に示した実施形態では、搬送方向に対して直交する横方向で見て、綾振りストロークcと、幅sを有する吸込みゾーンSZとが、(図2の実施形態と同様に)中心で互いに整合するように位置調整されている。すなわち、綾振りストロークcと吸込みゾーンSZの幅sとは、中心軸線Mに対して対称的に延びており、この中心軸線Mは本実施形態では吸込みスリット51の対称軸線をも成している。撚り止めローラ14aは、中心軸線Mに対して対称的に配置された、幅bを有する円筒状の真ん中の中央部分ZAを有している。したがって、円筒状の中央部分ZAは、搬送方向FSに対して直交する横方向で見て、幅s(たとえば1〜3mm)を有する吸込みゾーンSZの吸込みスリット51もしくは集束範囲Vに対して中心で整合するように配置されている。この場合、幅b(6〜10mm)は幅sよりも大きく形成されており、これによって、吸込みゾーンSZの集束範囲Vから挟持線Dへ送出された繊維材料Fは確実にかつ完全に挟持される。繊維材料Fの供給部が綾振り運動の間、綾振り範囲h1またはh2内に位置していると、吸込みスリット51における吸込み作用の低下時または欠如時に繊維材料Fはもはや吸込みスリット51へ向かって変向されたり、引き寄せられたりしなくなる。すなわち、繊維材料Fは方向変化なしにかつ集束されずに撚り止めローラ14aに到達し、そしてこの撚り止めローラ14aにおいて円筒状の中央部分ZAの脇を通って案内される。このことは図3の実施形態では一点鎖線により示されており、この場合、繊維材料Fの供給部は綾振り運動の変向点U1の範囲に位置している。
【0032】
撚り止めローラ14aは円筒状の中央部分ZAの両側でそれぞれ、外方に向かって角度αだけ先細りになった円錐部K1,K2を備えているので、円錐部K1,K2の範囲では撚り止めローラ14aと吸込みローラ9との間に、もはや挟持線Dは生じなくなる。円筒状の中央部分ZAから円錐部K1,K2への移行部には、まだ小さな挟持作用が存在するが、しかしこの挟持作用は、繊維材料Fが円筒状の中央部分ZAから遠ざかるにつれて徐々に減少する。撚り止めローラ14aによる挟持作用が消失することにより、撚りを付与された糸FKに存在する引張力は、繊維材料Fの、ドラフト機構1の出口ローラ9,8と撚り止めローラ14aとの間に位置する区分へ伝達される。しかし、この区分は撚りを付与されていないか、または僅かな撚りしか付与されておらず、それゆえに撚りを付与された糸FKよりも著しく小さな付着力もしくは粘着力しか有していない。これにより、円筒状の中央部分ZAによる挟持作用の前記消失時に、ドラフト機構1の出口ローラ9,8と撚り止めローラ14aとの間の範囲で繊維材料Fの裂断が生じる。
【0033】
図1に概略的に図示されているように、ドラフト機構1から突出する方の端部は吸込み管18によって捕捉されて吸い込まれる。ドラフト機構1は引き続きなお作動するので、あとから供給される、後続の集束されていない繊維材料も吸込み管18によって吸い込まれて、負圧源22の作用を受けて捕集部(図示しない)に供給される。撚りを形成する装置40を起点とする、他方の裂断された端部は、なおコップに巻き取られる。
【0034】
センサ33を介して、糸FKの不在が検出されて、制御部STに伝送される。次いで、制御部STを介してスクリーン上の表示により、または視覚的または音響的な手段を介して、相応する紡出部における中断が報知され得る。制御部は次いで、紡出部の再修復のための相応する手段を導入することができる。
【0035】
綾振り運動と相まった撚り止めローラ14aの本発明により提案された構成により、付加的な監視手段を使用する必要なしに、糸製造のセルフ作動式の自動的な中断が生ぜしめられる。撚り止めローラの円筒状の中央部分ZAの幅bはできるだけ小さな寸法に保持され、これによって吸込み作用の中断時に繊維材料Fの供給部は綾振り運動によってできるだけ迅速に範囲h1,h2に進入するようになる。これらの範囲h1,h2では、撚り止めローラによる挟持作用が解消されていて、自動的な裂断が行われる。
【0036】
円筒状の中央部分ZAに円錐部K1,K2を続けることにより、撚り止めローラ14aに続いた周辺部に対する集束範囲Vもしくは吸込みゾーンSZの隔離はほぼ維持される。
【0037】
図4には、図3に示した実施形態における機能経過とほぼ同様の機能経過を有する別の実施形態が示されている。図3に示した円錐部K1,K2の代わりに、図4に示した実施形態では、直径の減径された円筒状の区分Z5,Z6が続いており、これらの円筒状の区分Z5,Z6は、中央部分ZAの直径dよりも小さな直径d1を有している。さらに、これらの円筒状の区分Z5,Z6には、さらに別の減径された円筒状の区分Z4,Z7が続いている。これらの区分Z4,Z7の直径d2は前記区分Z5,Z6の直径d1よりも小さく形成されている。これによって同じく、繊維材料Fが中央部分ZAの幅bの範囲の外に位置する場合に(本実施形態では範囲h3)、撚り止めローラ14bによって繊維材料Fに挟持作用が加えられなくなることが保証される。図3に示した実施形態とは異なり、図4に示した実施形態では、綾振りストロークc1が中心軸線Mに対して対称的に配置されているのではなく、片側に図面で見て左側へ向かってずらされている。このような片側へのずらしは、たとえば集束範囲の相応する構成に帰因し得る。このような構成は、たとえば公開されているドイツ連邦共和国特許第4448021号明細書の図4に示されている。
【0038】
さらに図4aには、図4の部分図が示されている。この場合、使用される撚り止めローラ14cでは、円筒状の中央部分ZAの両側に続いている、直径の減径された2つの円筒状の区分Z5,Z4;Z6,Z7の代わりに、それぞれ1つの円筒状の区分Z8;Z9しか続いていない。この円筒状の区分Z8,Z9は、それぞれ減径された直径d4を有している。すなわち、区分Z8,Z9の直径d4は中央部分ZAの直径dよりも小さく形成されている。その他の構成要素は図4に示した前記構成要素に相当しているので、これらの構成要素については詳しい説明を省略する。
【0039】
標準運転時では、繊維材料Fが吸込み作用によって片側で吸込みスリット51の方向にずらされ、かつ集束される(矢印参照)。吸込み作用が欠如して、繊維材料Fが綾振り中に範囲h3に進入すると、撚り止めローラ14bによる挟持作用は消滅し、これにより既に前で説明した裂断および後続の手段が生じる(図3に示した実施形態の説明参照)。撚り止めローラ14bの構成によっても、集束範囲Vは撚り止めローラに続いた周辺部に対して十分に隔離されているので、望ましくない空気逆流は生じない。撚り止めローラ14bの円筒状の中央部分ZAに続いて2つよりも多い段階状の段付け部を設けることもできる。
【符号の説明】
【0040】
1 ドラフト機構
2,3 入口ローラ対
5,6 センタローラ対
8,9 出口ローラ対
10 変向部
11,12 エプロン
14,14a,14b,14c 撚り止めローラ
16 空気ガイドエレメント
18 吸込み管
20 綾振り装置
22 吸込み源
24 コップ
25 リングレール
26 リング
27 トラベラ
28 糸ガイド
29 スピンドル
30 巻き管
31 軸受け
33 センサ
34 線路
40 撚りを形成する装置
50 吸込みユニット
51 吸込みスリット
S 給糸ボビン
F 繊維材料
c,c1 綾振りストローク
U1,U2 反転点
FS 搬送方向
Z,Z1,Z2 挟持線
D 挟持線
O 開口
V 集束範囲
SZ 吸込みゾーン
ST 制御部
M 中心軸線
ZA 中央部分
K1,K2 円錐部
Z4,Z5,Z6,Z7 区分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機に設けられたドラフト機構(1)であって、前置された綾振り装置(20)が設けられていて、該綾振り装置(20)を介して繊維材料(F)が、該繊維材料(F)の搬送方向(FS)に対して側方に行われる綾振り運動(c,c1)によって当該ドラフト機構に供給されるようになっており、さらに後続の集束装置(9,16,50)が設けられていて、該集束装置が、負圧をかけられた循環する集束手段(9)を有しており、該集束手段(9)が、吸込みゾーン(SZ)を備えており、該吸込みゾーン(SZ)に、当該ドラフト機構から送出された繊維材料が、吸込み空気流の作用を受けて引き寄せられるようになっており、さらに該吸込みゾーン(SZ)が、集束手段(9)の周面(AF)に分配されたパーフォレーション(O)を備えており、吸込みゾーン(SZ)に続いて撚り止めローラ(14,14a,14b,14c)が設けられており、該撚り止めローラが、前記集束手段(9)と共に挟持部(D)を形成しており、該挟持部(D)から繊維材料が、後続の、撚りを形成する装置(40)に供給されるようになっている形式のドラフト機構において、撚り止めローラ(14a,14b)の回転軸線(14)の方向で見て、撚り止めローラが、挟持部を形成する円筒状の区分(ZA)を有しており、該円筒状の区分(ZA)にそれぞれ撚り止めローラの両端部に向かって突出した区分(K1,K2;Z4,Z5,Z6,Z7;Z8,Z9)が続いており、該突出した区分の直径が、端部に向かって段階的または連続的に減少しており、撚り止めローラの前記円筒状の区分(ZA)の幅(b)が、吸込みゾーン(SZ)の幅(s)よりも大きく形成されていて、繊維材料(F)の搬送方向(FS)で見て、綾振りストローク(c、c1)の両反転点(U1,U2)の少なくともいずれか一方の反転点が、撚り止めローラの前記円筒状の区分(ZA)の外側でかつ前記円筒状の区分(ZA)に続いた前記突出した区分(K1,K2;Z4,Z5,Z6,Z7;Z8,Z9)の内側に位置していることを特徴とする、精紡機のドラフト機構。
【請求項2】
撚り止めローラ(14a,14b,14c)の前記円筒状の区分(ZA)の幅(b)が、綾振り運動の綾振りストローク(c)よりも小さく形成されている、請求項1記載のドラフト機構。
【請求項3】
撚り止めローラ(14a,14b,14c)の前記円筒状の区分(ZA)が6〜10mmである、請求項1または2記載のドラフト機構。
【請求項4】
撚り止めローラ(14a)が、前記円筒状の区分(ZA)の両側に続いた、円錐状に延びる区分(K1,K2)を備えており、該円錐状の区分(K1,K2)が、それぞれ撚り止めローラの端部に向かって先細りになっている、請求項1から3までのいずれか1項記載のドラフト機構。
【請求項5】
前記円錐状の区分の先細り角度が1〜20゜である、請求項4記載のドラフト機構。
【請求項6】
撚り止めローラ(14b,14c)の前記円筒状の中央区分(ZA)に両側で、該円筒状の中央区分(ZA)よりも小さな直径(d1,d2,d4)を有する少なくとも1つの円筒状の区分(Z4,Z5,Z6,Z7;Z8,Z9)が続いている、請求項1から3までのいずれか1項記載のドラフト機構。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の、集束装置(9,16,50)を備えたドラフト機構(1)において使用するための撚り止めローラ。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載のドラフト機構と集束装置(9,16,50)とを備えた精紡機。

【図1】
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【図1a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【公開番号】特開2012−197550(P2012−197550A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−63434(P2012−63434)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】