説明

精錬用浸漬ランス装置

【課題】ランス機能を適正に発揮でき、しかも浸漬ランスの交換を短時間で迅速に行うことができる精錬用浸漬ランス装置を提供する。
【解決手段】2重管構造の浸漬ランス1の基端部とランスホルダ2の先端部に各々フランジ3,4を設け、両フランジ3,4をボルト5で締結した接続部を有するとともに、該接続部に冷却水を供給してボルト5を直接または間接に冷却する冷却手段6を備える。浸漬ランス1とランスホルダ2との接続部がボルト止めであるため、浸漬ランス1の交換を短時間で迅速に行うことができ、一方で、接続部を構成するボルト5は冷却手段6により冷却されるため、接続部のシール性が損なわれることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に溶銑予備処理において使用される精錬用浸漬ランス装置に関するもので、詳細には、2重管構造の浸漬ランスとランスホルダとの接続構造に特徴を有する浸漬ランス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混銑車による溶銑予備処理では、気体酸素単体を浸漬ランスから10Nm/min以上吹込み、脱Siを行ってその発熱を溶銑温度に着熱させる方法が採られる場合がある。この場合、浸漬ランス先端の溶損を防止するため、浸漬ランスを2重管構造とし、冷却用の炭化水素系ガスを内管と外管との間を通じてランス先端部に流すようにしている。これは、炭化水素系ガスが分解する際の吸熱反応を利用してランス先端部を冷却し、溶損を抑えるものである。このような2重管構造の浸漬ランスは、例えば、特許文献1に示されている。
【0003】
2重管構造の浸漬ランスの重量は150kgを超えるため、ランスホルダとの接続構造は、その重量に耐え且つシール性が十分に確保される必要があり、このため従来では、浸漬ランスとランスホルダの端部どうしを溶接により接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−254889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、溶接による接続では、鉄管部分を全周溶接することが必要であるため、溶接時間を含め浸漬ランスの交換に30分程度もかかってしまう。このため、混銑車を用いる溶銑予備処理設備のダウンタイム増加や作業負荷増大という大きな問題を生じていた。
【0006】
したがって本発明の目的は、主に溶銑予備処理において使用される精錬用浸漬ランス装置であって、ランス機能を適正に発揮でき、しかも浸漬ランスの交換を短時間で迅速に行うことができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題解決するための本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]2重管構造の浸漬ランス(1)と、該浸漬ランス(1)を保持するランスホルダ(2)を備えた精錬用浸漬ランス装置において、浸漬ランス(1)の基端部とランスホルダ(2)の先端部に各々フランジ(3),(4)を設け、両フランジ(3),(4)をボルト(5)で締結した接続部を有するとともに、該接続部に冷却水を供給してボルト(5)を直接または間接に冷却する冷却手段(6)を備えることを特徴とする精錬用浸漬ランス装置。
[2]上記[1]の浸漬ランス装置において、冷却手段(6)がボルト(5)に冷却水を直接供給する冷却水ノズル(60)であることを特徴とする精錬用浸漬ランス装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の精錬用浸漬ランス装置は、浸漬ランスとランスホルダとがボルト止めにより接続される構造であるため、浸漬ランスの交換を短時間で迅速に行うことができ、一方で、接続部を構成するボルトは冷却手段により冷却されるため、ボルトが熱膨張して接続部のシール性が損なわれるようなことがなく、このためランス機能を適正に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の精錬用浸漬ランス装置の一実施形態を示すもので、浸漬ランスとランスホルダとの接続部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の精錬用浸漬ランス装置の一実施形態を示すもので、浸漬ランスとランスホルダとの接続部の縦断面図である。
図において、1は2重管構造の浸漬ランス、2はこの浸漬ランス1を保持するランスホルダ2である。
【0011】
前記浸漬ランス1は、内管7と外管8とからなり、内管7内が気体酸素流路aを、内管7と外管8との間が炭化水素系ガス流路bを、それぞれ構成している。この浸漬ランス1の基端部近傍には、前記炭化水素系ガス流路bに連通するガス配管9が接続され、このガス配管9を通じて炭化水素系ガス流路b内にLPGなどの炭化水素系ガスが供給される。なお、12は外管8の外側に設けられる耐火物層である。
前記ランスホルダ2は、前記浸漬ランス1の気体酸素流路aに連通すべき気体酸素流路cを有する。このランスホルダ2は水冷式であり、外周部に冷却水流路dを有する。
【0012】
浸漬ランス1の基端部(外管8の端部)とランスホルダ2の先端部には、それぞれボルト締結用のフランジ3,4が設けられ、両フランジ3,4を複数のボルト5(ボルト・ナット)で締結することにより、浸漬ランス1とランスホルダ2が接続Xされている。このようなボルト止めによる接続方式とすることにより、浸漬ランス1の交換を短時間で行うことが可能となる。
前記ボルト5の数は特に制限はないが、例えば、フランジ3,4のサイズが80A〜200Aであれば、一般には6〜12本程度が適当である。
【0013】
しかし、このような接続方式だけでは、ボルト5が熱膨張することにより接続部Xのシール性が確保できない。このため本発明では、接続部Xに冷却水を供給してボルト5を直接または間接に冷却する冷却手段6を設ける。
本実施形態では、冷却手段6がボルト5に冷却水を直接供給する冷却水ノズル60で構成されている。この冷却水ノズル60には、配管61を通じて冷却水が供給される。
【0014】
なお、冷却手段6としては、例えば、フランジ3,4内に溝を設け、そこに冷却水を流すことによりボルト5を間接的に冷却するような構成としてもよい。
また、フランジ3,4の補強のために、フランジ3と浸漬ランス1の外管8との間、フランジ4とランスホルダ2の本体(鉄管)との間には、ぞれぞれ補強リブ10,11が設けられている。
【0015】
以上のような本発明の浸漬ランス装置では、浸漬ランス1とランスホルダ2との接続部Xを構成する締結用のボルト5が冷却手段6で冷却されるため、ボルト5の熱膨張が抑えられ、接続部Xのシール性を適正に維持することができる。一方、ランスホルダ2に対する浸漬ランス1の交換は、接続部Xがボルト止めであるため、短時間で迅速に行うことができる。具体的には、浸漬ランスの交換時間は、浸漬ランス1とランスホルダ2とを溶接で接続していた従来法では平均30分程度であったものが、平均9分程度で済み、ダウンタイムを大幅に削減することができる。したがって、例えば、混銑車の入替時間が十数分であるとすると、その時間内に浸漬ランスの交換作業を終えることができ、ダウンタイムをなくすことができる。
【0016】
本発明の浸漬ランス装置は、混銑車による溶銑予備処理に限定されるものではなく、他の精錬容器(例えば、溶銑鍋)を用いた溶銑予備処理にも適用できる。また、浸漬ランスを通じて装入される物資にも特別な制限はなく、例えば、ガスとともに粉体を装入してもよい。また、溶銑予備処理以外の金属精錬に用いてもよい。
【符号の説明】
【0017】
1 浸漬ランス
2 ランスホルダ
3,4 フランジ
5 ボルト
6 冷却手段
7 内管
8 外管
9 ガス配管
10,11 補強リブ
12 耐火物層
60 冷却水ノズル
61 配管
a 気体酸素流路
b 炭化水素系ガス流路
c 気体酸素流路
d 冷却水流路
X 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重管構造の浸漬ランス(1)と、該浸漬ランス(1)を保持するランスホルダ(2)を備えた精錬用浸漬ランス装置において、
浸漬ランス(1)の基端部とランスホルダ(2)の先端部に各々フランジ(3),(4)を設け、両フランジ(3),(4)をボルト(5)で締結した接続部を有するとともに、該接続部に冷却水を供給してボルト(5)を直接または間接に冷却する冷却手段(6)を備えることを特徴とする精錬用浸漬ランス装置。
【請求項2】
冷却手段(6)がボルト(5)に冷却水を直接供給する冷却水ノズル(60)であることを特徴とする請求項1に記載の精錬用浸漬ランス装置。

【図1】
image rotate