説明

糊塗布装置

【課題】 ローラー方式の糊塗布装置において、凹凸のある、あるいは表面の強度が低い被塗布媒体であっても、安定した塗布状態が得られる糊塗布装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の糊塗布装置は糊供給ローラー31と糊版ローラー32と糊版ローラー32上に凸状に形成された糊版13とを持ち、糊供給ローラー31上の糊の移動速度と糊版13の表面の移動速度の間には僅かな差が生じるように設定されており、糊供給ローラー31上の糊が糊版13に移行する際に、両者のズレにより糊溜り35が生じるため、糊版13上の糊が媒体18に移行する際に、いち早く媒体18に接触するため、これが導入となり、媒体18への確実な塗布が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製袋、製函などの紙加工の分野で用いられる糊塗布技術に関し、特に凹凸のあるような被接着対象物に対する糊塗布に有効な糊塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙は、袋、封筒、箱、帳票など様々な形態に加工され、日常生活の多岐にわたる分野で用いられている。このような紙加工品の多くは糊付けにより組み立てられており、低コスト、大量生産のため、紙加工のための機械も多様なものが用いられる。その中で糊塗布は紙加工にあっては基本となる技術であるが、特に量産のための紙加工機械ではローラー方式の糊塗布装置が多用されている。
【0003】
ローラー方式の糊塗布装置は、第1のローラーの表面に延ばした糊を、第2のローラーの糊版に移し取り、これをさらに紙などの対象物(被塗布媒体)に転写する、といった構造を持つ。
【0004】
このように、ローラー方式の糊塗布装置は、構造が簡単であり、しかも連続して供給される被塗布媒体に対して効率的に糊を塗布できることが特徴として挙げられる。さらに、糊版の形状により糊塗布のパターンを自在に設定できるので、多様な形状の品目に迅速に対応できるのが大きな特徴である。また、通常は、糊が対象物(被塗布媒体)に均一に塗布されるよう工夫されている。
【0005】
特許文献1は、ローラー方式の糊塗布装置における糊供給の安定化のための発明であり、糊供給の制御装置について述べている。
特許文献2は、ローラー方式の塗布を、糊以外かつ紙以外に適用したものであるが、一様な塗布を実現する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−170295号公報
【特許文献2】特開平9−38551号公報
【0007】
ところが、ローラー方式の糊塗布装置は、糊版と被塗布媒体の接触圧により糊を移行させるので、被塗布媒体の表面に凹凸があったり、強度の低いものである場合は、十分な接触圧がかけられず、糊版と被塗布媒体の接触が不完全になり安定した塗布状態が得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記のように凹凸のある被塗布媒体であっても安定した塗布状態が得られる糊塗布装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の糊塗布装置は、糊溜りから糊をかき上げる糊供給ローラーと、糊を塗布する領域の形状に凸状に形成された糊版を外周上に設けた糊版ローラーを持ち、前記糊供給ローラーの回転によりかき上げた糊を前記糊版上に移し、さらに糊版上の糊を媒体に転写する糊塗布装置において、前記糊供給ローラーと前記糊版ローラーとが相反する回転方向となるローラー駆動部を有し、前記ローラー駆動部は、前記糊供給ローラーの周速と糊版ローラーの周速とに速度差を生ぜしめる周速調整機構を有することを特徴とする。
【0010】
また、前記糊版が前記糊版上の糊を前記媒体に転写する際に、前記糊版の移動速度および移動方向が、前記媒体の移動方向および移動速度と同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の糊塗布装置によれば、糊版に糊を移行させる際に、前記糊供給ローラーの周速と糊版ローラーの周速に速度差を設けることで糊溜りが形成されることにより、糊版から被塗布媒体への糊の移行がより確実になるため、凹凸を持つ表面や強度の低い表面に塗布することができ、広範な被塗布媒体への糊塗布が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のローラー方式の糊塗布装置の構成を示す図
【図2】ローラー方式による糊塗布状態を示す図
【図3】本発明の糊塗布装置による糊塗布状態を示す図
【図4】本発明の糊塗布装置を示す図
【図5】差動機構を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<従来のローラー方式の糊塗布装置の構成>
図1は、従来のローラー方式の糊塗布装置の基本構成を表わす。
図1(a)に示すように、糊供給ローラー11は連続して回転する円筒形状の回転体であり(図例では時計回りに回転)、外周の一部が糊パン16内の糊15に浸されている。糊供給ローラー11の回転に伴ない、糊15がかき上げられ、ドクター15により余分な糊が落とされ、略一定な膜厚に均される。なお、糊パン16とは糊15を溜める容器である。
【0014】
糊版ローラー12は、円筒形状の回転体であり、周上に糊版13を持つ。糊版13は糊を塗布する形状に成型されており、糊版ローラー12の回転(図例では反時計方向)とともに糊供給ローラー11に接し、糊供給ローラー11上の糊を移し取る。図1(b)は、糊供給ローラー11上の糊が糊版13に移行する様子を表わす。
さらに、糊版13は、糊版ローラー12と同期して同方向に動く被塗布媒体(媒体18)に接し、糊17を媒体18に移行させる。図1(c)は、糊版13の糊が媒体18に移行する様子を表わす。
【0015】
このようにして媒体18に塗布された糊17の態様を図2に示す。
図2は、糊17が、媒体18上に、所定の形状で、均一な膜厚で転写されていることを表わす。
また、糊供給ローラー11上の糊が糊版13に安定的に移行するよう、通常は、糊供給ローラー11の周速と糊版13の表面速度は等しくなるよう設定され、また、糊版13の糊が糊版13に安定的に移行するよう、通常は、糊版13の表面速度と媒体18の移動速度は等しくなるよう設定されている。
【0016】
図3は、本発明の糊塗布装置による糊塗布の態様を示す図であり、図3(a)は糊供給ローラー31上の糊が糊版13に移行する様子を表わし、図3(b)は、媒体18に塗布された糊の態様を表わす。
図3(a)に示すように、本発明の糊塗布装置による糊塗布では、糊供給ローラー31上の糊が糊版13に移行する際に、糊溜り35が形成される。
さらに、糊版13上の糊が媒体18に転写されると、図3(b)に示すように、媒体18には、平坦に塗布された糊37とともに、膨らみを持つ糊溜り35が形成される。この糊溜り35を形成するところが本発明の糊塗布装置の特色である。
【0017】
図3(a)における糊溜り35は、平坦な糊37より高く盛り上っており、糊版13上の糊が媒体18に移行する際に、いち早く媒体18に接触するため、これが導入となり、媒体18への確実な塗布が実現できる。これにより、糊版13と媒体18との間の押圧を従来の方式より弱めることができるため、媒体18の表面がエンボスなどで凹凸があっても、また、媒体18の表面の強度が低いものであっても、ローラー方式での糊塗布が可能となる。
同様に、媒体18に塗布された糊溜り35は、平坦に塗布された糊37より高く盛り上っているため、媒体18と糊付けされる他の媒体の表面に凹凸や強度不足があっても、安定した接着が得られる。
【0018】
糊溜り35は、図3(a)に示すように、糊供給ローラー31上の糊が糊版13に移行する時点で形成される。このとき、糊供給ローラー31上の糊の移動速度と糊版13の表面の移動速度の間には僅かな差が生じるように設定されており、両者のズレにより糊溜り35が生じる。すなわち、糊供給ローラー31上の糊の移動速度をV1、糊版13の表面の移動速度をV2とすると、
V1<V2 または V1>V2
の関係にある。なお、図3(a)の例は、V1<V2の場合であり、このとき、糊溜り35は糊版13の移動方向の前側に形成される。
【0019】
<本発明の糊塗布装置の構成>
図4は、本発明の糊塗布装置の構成例を示す斜視図である。
糊塗布装置1は、糊供給ローラー31、糊版ローラー32を持ち、糊供給ローラー31により糊パン16からかき上げた糊を、糊版ローラー32の糊版13に移し、さらに媒体18に転写することは図1の構成と同様である。
図4に示す本発明の糊塗布装置1では、糊供給ローラー31、糊版ローラー32は、それぞれギアを介して駆動されており、糊供給ローラー31は、糊供給ローラーギア46を介してギアA45aにより、また、糊版ローラー32は、糊版ローラーギア47を介してギアB45bにより回転力を伝達されている。
【0020】
本発明の糊塗布装置1は、Aギア45aとBギア45bの間に周速調整機構41が設けられている。
周速調整機構41には、調整用モーター42が付帯しており、周速調整機構41は、調整用モーター42が静止の状態ではAギア45aとBギア45bの回転速度は等しく、調整用モーター42が回転した場合は、この回転に応じてAギア45aとBギア45bの間に回転速度の差が生じるよう構成された機械的機構である。このような機構としては、自動車に用いられることで知られる差動ギアがある。
【0021】
<差動ギア>
ここで図5を用いて差動ギアの説明を加える。
差動ギア5は、3つの入出力軸と遊星ギアを組み合わせて構成される。
差動ギア5の入出力軸のうち、対となる2つの軸、A軸56aおよびB軸56bはそれぞれaギア55a、bギア55bを持ち、cギア57a、dギア57bと噛み合っている。なお、cギア57a、dギア57bは遊星ギアであり、フレーム51に固定された軸を芯にして回転する。
フレーム51と一体となったeギア52はfギア53と噛み合い、fギア53はM軸54に回転力を伝える。
【0022】
自動車の場合は、M軸54がエンジンユニットに繋がり回転力を得る。まずM軸54からeギア52に伝達された回転力は、フレーム51を経て、遊星ギアであるcギア57a、dギア57bを介して伝達され、aギア55a、bギア55bが回転することによりA軸56a、B軸56b(すなわちタイヤ)を駆動する。このとき、cギア57a、dギア57bが不回転(自転しない)の状態であれば、A軸56a、B軸56bは同方向に等速で回転する。A軸56a、B軸56bに回転差が生じると、遊星ギア(cギア57a、dギア57b)が回転差に応じて回転(自転)する。
なお、図示のaギア55a、bギア55b、cギア57a、dギア57b、eギア52、fギア53はベベルギアであり、噛み合うギアの軸は互いに直交関係をなす。
【0023】
<本発明の糊塗布装置の作用>
図4の糊塗布装置について説明を続ける。
糊塗布装置1の周速調整機構41に、図5に示す作動ギアを適用した場合、図5におけるA軸56a、B軸56bが糊塗布装置1のAギア45a、Bギア45bの軸に対応し、M軸54に相当する軸に調整用モーター42が繋がる。
【0024】
例えば、原動(図示せず)からの駆動によりBギア45bが回転し、調整用モーター42が不回転の場合、周速調整機構41内の遊星ギアが自転し、ギアA45aの軸はBギア45bの軸と逆方向に等速で回転する。このとき、糊供給ローラーギア46と糊版ローラーギア47は互いに相反する方向に回転するので、糊供給ローラー11上の糊の移動方向と糊版13の表面の移動方向は同一となり、糊の移行は円滑に行われる。
【0025】
一方、Bギア45bが回転し、調整用モーター42も回転する場合、周速調整機構41内では、図5のフレーム51に相当する部分が回転し、Aギア45aの軸とBギア45bの軸との間には調整用モーター42の回転速度に応じた回転速度の差が生じるため、糊供給ローラー11上の糊の移動速度と糊版13の表面の移動速度との差から糊溜り35が得られる。
調整用モーター42が一定速度で回転していれば、前記移動速度の差は一定であり、安定した糊溜り35が得られる。
【0026】
なお、前記移動速度の差は微小であるので、調整用モーター42は減速機構を内蔵したギアドモーターが好適である。
また、糊版13が媒体18と所定の位置で接するよう、搬送部48と糊版ローラー32は同期する必要があるため、糊版ローラー32の回転力は搬送部48の動力と同一の原動から得ることが望ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 糊塗布装置
5 差動ギア
10 プリントデータ生成装置
11 糊供給ローラー
12 糊版ローラー
13 糊版
14 ドクター
15 糊
16 糊パン
18 媒体
31 糊供給ローラー
32 糊版ローラー
35 糊溜り
41 周速調整機構
42 調整用モーター
45a Aギア
45b Bギア
46 糊供給ローラーギア
47 糊版ローラーギア
48 搬送部
48a 搬送用フック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糊溜りから糊をかき上げる糊供給ローラーと、糊を塗布する領域の形状に凸状に形成された糊版を外周上に設けた糊版ローラーを有し、前記糊供給ローラーの回転によりかき上げた糊を前記糊版上に移し、さらに糊版上の糊を媒体に転写する糊塗布装置において、
前記糊供給ローラーと前記糊版ローラーとが相反する回転方向となるローラー駆動部を有し、
前記ローラー駆動部は、前記糊供給ローラーの周速と糊版ローラーの周速とに速度差を生ぜしめる周速調整機構を有することを特徴とする糊塗布装置。
【請求項2】
前記糊版が前記糊版上の糊を前記媒体に転写する際に、前記糊版の移動速度および移動方向が、前記媒体の移動方向および移動速度と同一であることを特徴とする請求項1記載の糊塗布装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−103187(P2013−103187A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249556(P2011−249556)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】