説明

糖ペプチド抗生物質A40926を生合成する遺伝子およびタンパク質

本発明は、抗生物質の分野、より具体的には、糖ペプチド抗生物質A40926の合成経路をコードする核酸分子の単離に関する。A40926産生に関与する遺伝子産物の機能が開示される。本発明は、A40926産生をコードする新規生合成遺伝子、コードされたポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えベクター、該ベクターで形質導入された宿主細胞、およびA40926、その前駆体、その誘導体、またはA40926またはその前駆体とは異なる修飾された糖ペプチドを産生する方法を含む、該形質導入された宿主細胞を用いて糖ペプチドを産生する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
放線菌は、構造上異なりかつ生物学的に活性な二次代謝産物(多くが、商業用用途(例えば、抗生物質)を見出されている)を産生する能力についてよく知られている。重要な代謝産物は、ストレプトマイセス亜種(Streptomyces spp.)(最も詳細に研究されている)だけでなく、あまり知られていない放線菌属によっても産生される:例えば、現在、リファマイシン、テイコプラニン、およびエリスロマイシンが、それぞれアミコラトプシス(Amycolatopsis)種、アクチノプラネス(Actinoplanes)種、およびサッカロポリスポラ(Saccharopolyspora)種により産業上製造されている。二次代謝産物の生合成を支配している遺伝因子は、代謝産物の合成、調節、および抵抗性に必要な遺伝子全てを含有する遺伝子群に組織化されている。
【0002】
多くの異なる二次代謝物は、類似の酵素が介入する、共通の生合成経路を有している。このことは、ポリケチド(Katz and McDaniel 1999)、非リボソーム合成ペプチド(non-ribosomally synthesized peptide)(Marahiel 1997)、およびデオキシ糖(Rodriguez et al. 2000)について完全に示されている。しかしながら、この類似性にもかかわらず、ある微生物での特定の二次代謝物の合成に関与する遺伝子群の組織化を、演繹的に定義することはできない。事実、非常に類似する二次代謝物の合成は、対応する産生株が同属にないとき、別に組織化された群により支配され得る。この種の例は、マクロライド系抗生物質間で見出すことができる(Katz and McDaniel 1999)。さらに産生株内の所望の群の同定は、放線菌において、同じ経路の酵素を特定する複数群の存在により複雑になる。このことは、ポリケチド(例えば、Ruan et al. 1997)およびペプチド(例えば、Sosio et al. 2000a)について示され、遺伝子配列決定により確かめられている(Omura et al. 2001;Bentley et al. 2002)。結論として、既に知られているものと比較して、新たな群の組織化、ヌクレオチド配列、または同一性の程度を演繹的に理解することはできない。
【0003】
糖ペプチドは、その作用機序(Parenti and Cavalleri 1989)によりダルバヘプチド(dalbaheptide)としても知られ、細菌細胞壁の架橋結合と干渉し、現在臨床上用いられているバンコマイシンおよびテイコプラニンと干渉する、重要な種の抗生物質である。これらは大抵、生命を脅かす感染症の処置において最終選択となる抗生物質である。他方、腸球菌での糖ペプチドに対する耐性の出現、およびこの高レベルの耐性が結局メチシリン耐性黄色ブドウ球菌において拡大し得るという恐れが、この種の第2世代薬物の探索を促している。有望な結果が、改善した活性、拡大した抗細菌スペクトル、または良好な薬物動態を有する半合成誘導体の開発により、得られている(Malabarba and Ciabatti 2001)。
【0004】
ゆえに、天然に存在する化合物の操作により、改良した糖ペプチドを得る可能性および有用性が存在する。しかしながら、糖ペプチドは構造上複雑な分子であり、化学的性質へのアクセスしやすさは、該分子の数カ所の位置に制限されている。例えば、糖は糖ペプチドから化学的に容易に取り除かれ、対応するアグリコンが生成され得る一方、化学的手段により、異なる糖を特定位置に位置選択性に結合させることは、非常に困難である。糖ペプチドの塩素化の程度が抗菌活性に影響することが示されている。同様に、糖ペプチドの芳香環の化学的脱塩素化は、容易に達成され得るが、構造中の所望の環の選択的ハロゲン化は、比較的複雑である。最後の例として、テイコプラニンファミリーの糖ペプチドは、位置4のアリールアミノ酸と結合したグルコサミンと結合したアシル鎖を含有しているが、バンコマイシン類の化合物は含有していない。化学的または生体内変換(Lancini and Cavalleri 1997)のいずれかによる糖ペプチドのアシル化および脱アシル化が報告されているが、これは通常、全体的に低収率となる。上記に照らし、化学的手段により生成することが困難であるか、または不可能な誘導体を得るために、糖ペプチド形成においてこれらの工程を再指向するのに有用な遺伝子および酵素を有することが望まれる。このことは、塩素化の程度が糖ペプチドの生物学的活性に影響すること、ならびに改良した誘導体が、糖ペプチドのグリコシル化またはアシル化パターンを変化させることにより、得られ得ること(Malabarba and Ciabatti 2001)が示されているため、特に適切である。化学的性質についての主な制限の1つは、ペプチド骨格に存在するアミノ酸の種類または順序を変えることである。化学的には、比較的低収率でアミノ酸1および3にのみ介入することが可能であると示されている(Malabarba et al. 1997)。従って、正確に操作された株での発酵過程により新規糖ペプチド誘導体を直接設計する一般的な方法が、大変望まれている。
【0005】
興味をそそる代わりとなる方法は、天然に存在する糖ペプチドの生合成過程を操作することにより、改良した抗生物質を創出することである。この種の例は報告されている。実際、バンコマイシンおよびクロロエレモマイシン(chloroeremomycin)遺伝子群から糖転移酵素が発現した後にインビトロおよびインビボの両方で糖ペプチドアグリコンを選択的にグリコシル化することが可能である(Solenberg et al. 1997;Loosey et al. 2001)。しかしながら、上記の酵素のうち、所望の位置にグルコサミン残基を結合させることが可能なものはない。同様に、バルヒマイシン(balhimycin)産生アミコラトプシス・メディテッラネイ(A. mediterranei)の選択された遺伝子の不活性化により、バルヒマイシン誘導体が得られる(Pelzer et al. 1999)。しかしながら、テイコプラニンファミリーの糖ペプチド産生株についてのかかる実験は記載されていない。
【0006】
抗生物質A40926は、糖ペプチドのテイコプラニンファミリーに属する(Parenti and Cavalleri 1989)。これは、密接に関連する分子の複合体からなり、そのコア構造は、アミノ酸1〜3、2〜4、および4〜6間のエーテル結合、およびアミノ酸5〜7間のC−C結合により決定される強固な足場を有するヘプタペプチド骨格に最構成され得る。加えて、2個の糖残基および2個の塩素原子が該分子に存在する。A40926複合体の構成要素の構造は、以下に示される式
【化1】

(ここで、Rは、ファクターAを有する[C−C12]アルキル(R=n−デシル)、ファクターBを有する[C−C12]アルキル(R=9−メチルデシル)、およびファクターB(R=n−ウンデシル)を有する[C−C12]アルキルを表し、これらが主な構成要素である)により、表される。
【0007】
もともとアクチノマヅラ種(ATCC39727)として知られていた産生株は、最近、ノノムリア種(Nonomuria sp.)(ATCC39727)として再分類された(Zhang et al. 1998)。固有の抗菌活性を示すことに加えて、A40926はまた、半合成糖ペプチドダルババンシンの前駆体である(もともとBI397またはMDL 62397として知られていた;Malabarba and Ciabatti 2001)。それゆえ、A40926の構造を操作し、その収率を増加させるさらなる手段が、大変望まれている。しかしながら、ノノムリア属の他のメンバー由来の上記の群の例は存在しない。それゆえ、ノノムリアでのA40926の生成、およびその調節に必要な遺伝子はまた、産生過程を最適化するのに有用であり得る。
【0008】
最近、糖ペプチドのクロロエレモマイシン(van Wageningen et al. 1998)、バルヒマイシン(Pelzer et al. 1999)、コンプレスタチン(complestatin)(Chiu et al. 2001)、およびA47934(Pootoolal et al. 2002)の生成に関与する遺伝子群が明らかにされた。それぞれ、cep、bal、com、およびstaと呼ばれるこれらの群は、それぞれ、アミコラトプシス・オリエンタリス(Amycolatopsis orientalis)、アミコラトプシス・メディテッラネイ(Amycolatopsis mediterranei)、ストレプトマイセス・ラベンジュレ(Streptomyces lavendulae)、およびストレプトマイセス・トヨカネシス(Streptomyces toyocaensis)から得られたものである。これらの群は、糖ペプチド経路を操作するのに有用ないくつかの遺伝子を提供してきた。しかしながら、ある種の工程は、上記群により行われることはできない。例えば、利用可能な遺伝子群は、糖の酸化状態を変化させるか、脂肪酸鎖を結合させるか、あるいはアミノ酸3の芳香族部分に塩素原子もたらす能力のある官能基をコードしていない。これらの官能基は全て、本発明において記載されている。
【0009】
抗生物質を製造する産業上の過程の設計は、比較的成功しており、1L当たり数gのレベルに至る抗生物質タイターを有する巨大サイズの発酵を生じる。これは、主に経験的な試行錯誤に従い達成され、論理的な基盤を欠いている。従って、新たな方法の開発、および現行技術の改良は、依然時間を必要とし、不安定で、一貫性なく機能し、そして非所望の副産物を蓄積する細菌群を生じ得る。ここ数年、理論的方法が適用され、ストレプトマイセス亜種により産生される抗生物質のレベルが十分に増加している。これは大抵、対象の遺伝子群に存在する鍵となる調節エレメントの操作、または経路の律速段階の過剰発現を含んでいる。それゆえ、かかる群関連調節因子または合成の律速段階をコードする遺伝子は、収率を改善する有効な手段であり得る。しかしながら、放線菌で今までに同定された群関連調節因子は、いくつかの異なるタンパク質ファミリーに属する(Chater and Bibb 1997)。1つのファミリー内でさえ、配列同一性の相当なバリエーションが存在する。それゆえ、群関連調節因子の存在、性質、数、および配列は、他の群(たとえ関連する抗生物質を特定するものであっても)との比較により推定されることはできない。例えば、チロシン遺伝子群は、4個の異なる調節因子をコードしているが、このうち、関連するマクロライド系抗生物質であるエリスロマイシンを特定する群において見出されるものはない(Bate et al. 1999)。同様に、生合成経路の律速段階の性質および論拠は、演繹的に確立されることはできない。
【0010】
発明の概要
本発明は、微生物での糖ペプチドA40926の生合成に必要な単離ポリヌクレオチドのセットを提供する。本発明の1つの態様において、ポリヌクレオチド分子は、ノノムリア種(ATCC39727)から単離されたdbv遺伝子群を表し、A40926生成に必要なポリペプチドをコードする37個のORFからなる、連続DNA配列(配列番号:1)から選択される。該37個のORFによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2から38において提供される。
【0011】
本発明は、
a)A40926の合成に必要なポリペプチドをコードするdbv遺伝子群(配列番号:1);
b)dbv遺伝子群自体のヌクレオチド配列以外であって、dbv遺伝子群(配列番号:1)によりコードされるのと同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
c)配列番号:2から38のポリペプチドをコードする、dbv ORF1から37の任意のヌクレオチド配列;
d)該ORF以外のヌクレオチド配列以外であって、dbvの ORF1から37のいずれかによりコードされるのと同じポリペプチド(配列番号:2から38)をコードするヌクレオチド配列;
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。
【0012】
本発明のさらなる目的は、
e)配列番号:4から5、7から11、19から21、23から24、30から31、および37で特定されるポリペプチドをコードする、dbv ORF3から4、6から10、18から20、22から23、29から30、および36のいずれかのヌクレオチド配列;
f)該dbv ORFのヌクレオチド配列以外であって、dbv ORF3から4、6から10、18から20、22から23、29から30、および36のいずれかによりコードされるのと同じポリペプチド(配列番号:4から5、7から11、19から21、23から24、30から31、および37)をコードするヌクレオチド配列;
g)dbv ORF3、6から9、18から20、22から23、29から30、および36のいずれかによりコードされるポリペプチド(配列番号:4、7から10、19から21、23から24、30から31、および37)とアミノ酸配列が、少なくとも80%、好ましくは、86%、より好ましくは、90%、最も好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
h)dbv ORF4および10のいずれかによりコードされるポリペプチド(配列番号:5および11)とアミノ酸配列が、少なくとも87%、好ましくは、90%、より好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供することである。
【0013】
1つの実施態様において、本発明の単離核酸は、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含み、これは、A40926の4−ヒドロキシフェニルグリシン(HPG)残基の合成に必要なポリペプチドをコードする。別の実施態様において、核酸は、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含み、これは、A40926の3,5−ジヒドロキシフェニルグリシン(DPG)残基の合成に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、核酸は、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含み、これは、A40926のヘプタペプチド骨格の合成に必要なポリペプチドをコードする。別の実施態様によると、本発明の核酸において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せが提供され、これは、A40926のアミノ酸3および6の芳香族残基の塩素化に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含む核酸が提供され、これは、A40926のアミノ酸6のチロシン残基のβ−ヒドロキシル化に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含む核酸が提供され、これは、A40926の位置2および4、4および6、1および3、および5および7のアミノ酸の芳香族残基の架橋結合に必要なポリペプチドをコードする。別の実施態様によると、本発明の核酸において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せが提供され、これは、N−アシルグルクロンアミン残基の付加および形成に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含む核酸が提供され、これは、マンノシル残基の結合に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含む核酸が提供され、これは、A40926のN−メチル化に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様によると、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含む核酸が提供され、これは、A40926の輸送およびA40926の抵抗性に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるORFの組合せを含む核酸が提供され、これは、dbv遺伝子群の発現の調節に必要なポリペプチドをコードする。なお別の実施態様において、ORF1ないし37(配列番号:2から38)から選択されるORFの発現レベルを増強する、配列番号:1から選択される1以上のDNAセグメントを含む核酸が提供される。
【0014】
当業者は、本発明は、A40926の生合成経路のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を提供し、また、かかるポリペプチドに由来するフラグメントをコードするヌクレオチドを提供することを理解する。加えて、当業者は、遺伝暗号が縮重するため、配列番号:2から38において特定される同じポリペプチドが、ORF1から37の天然変異体または人工変異体、すなわち、ORF1から37により特定されるゲノムヌクレオチド配列以外だが、同じポリペプチドをコードするヌクレオチドによりコードされ得ることを理解する。さらに、天然に存在する変異体または人工的に製造された変異体は、配列番号:2から38において特定されるペプチドを生じ、該変異体が、上記の原型ポリペプチドと同じ機能を有するが、フォールディングまたは触媒機能に必須でないアミノ酸のアミノ酸の付加、欠失、または置換、または必須アミノ酸の保存的置換を含有することも理解される。
【0015】
当業者はまた、本発明が、A40926の生合成に必要な群全体のヌクレオチド配列を提供し、該群に存在する遺伝子の発現に必要なヌクレオチド配列も提供することを理解する。かかる調節配列は、プロモーター配列およびエンハンサー配列、アンチセンス配列、転写ターミネーター配列およびアンチターミネーター配列を含むが、これらに限らない。これらの配列は、dbv遺伝子群に存在する遺伝子の発現を調節するのに有用である。該ヌクレオチドを単独で、あるいは他のヌクレオチド配列と融合して有する細胞も、本発明の範囲にある。
【0016】
1つの態様において、本発明は、N−アシル−グルコサミン残基の糖ペプチド抗生物質前駆体のコア構造との結合に有用なORF9ポリペプチド(配列番号:10)、または該ポリペプチドの天然に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む単離核酸を提供する。別の態様において、本発明は、脂肪酸残基の糖ペプチド抗生物質前駆体のコア構造との結合に有用なORF23ポリペプチド(配列番号:24)、または該ポリペプチドの天然に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。なお別の態様において、本発明は、糖ペプチド抗生物質前駆体に結合した糖部分の酸化に有用なORF29ポリペプチド(配列番号:30)、または該ポリペプチドの天然に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。別の態様において、本発明は、コアの糖ポリペプチド抗生物質前駆体のβ−ヒドロキシチロシンおよびDPG残基の塩素化に有用なORF10ポリペプチド(配列番号:11)、または該ポリペプチドの天然に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。別の態様において、本発明は、マンノシル残基の糖ペプチド抗生物質前駆体のコア構造との結合に有用なORF20ポリペプチド(配列番号:21)、または該ポリペプチドの天然に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、細胞からの糖ペプチド抗生物質または糖ペプチド抗生物質前駆体の輸送、および抵抗性の付与に有用なORF7、18、19、24、および35によりコードされるポリペプチド(配列番号:8、19、20、25、および36)、または該ポリペプチドの天然または人工的に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。別の態様において、本発明は、糖ペプチド抗生物質または糖ペプチド抗生物質前駆体産生株に抵抗性を付与するのに有用なORF7ポリペプチド(配列番号:8)、または該ポリペプチドの天然または人工的に存在する変異体または誘導体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。別の態様において、本発明は、糖ペプチド抗生物質前駆体の収率を増加させるのに有用なORF3、4、6、22、および36ポリペプチド(配列番号:4、5、7、23、および37)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0018】
1つの実施態様において、本発明は、ORF1ないし37(配列番号:2から38)のいずれかから選択される少なくとも1個のORFを特定するヌクレオチド配列の追加(extra)コピーを有する、糖ペプチド産生株を提供する。1つの好ましい実施態様において、かかる糖ペプチド産生株は、アクチノマイセス(Actinomycetales)目に属する任意の株である。なお別の好ましい実施態様において、かかる糖ペプチド産生株は、ノノムリア属のメンバーである。1つのさらなる態様において、本発明は、配列番号:1において特定されるヌクレオチド配列に1以上のバリエーションを含有するノノムリア株を提供し、かかるバリエーションは、ORF1ないし37(配列番号:2から38)のうち1個以上の発現を増加あるいは減少させる。
【0019】
1つの好ましい実施態様において、本発明は、別の細胞によるA40926、1つ以上のその前駆体または誘導体の産生に有用な1以上のベクター上に担持された、配列番号:1、またはその一部分により特定されるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。1つの好ましい実施態様において、該ヌクレオチド配列またはその一部分は、1つのベクター上に担持されている。なお別の好ましい実施態様において、かかるベクターは、細菌の人工染色体である。なお別の態様において、該細菌の人工染色体は、ESACベクター(WO99/63674に記載)である。別の好ましい実施態様において、本発明は、配列番号:1により特定される遺伝子群を含有するノノムリア種(ATCC39727)以外の組換え放線菌株を提供し、該遺伝子群は、該組換え放線菌株の染色体に組み込まれたESACベクターにの担持されている。
【0020】
1つの態様において、本発明は、A40926の産生を増加させる方法を提供し、該方法は、次の工程:(1)組換えDNAベクターで生合成経路によりA40926またはA40926前駆体を産生する微生物を形質導入すること(該ベクターは、該経路を律速する活性をコードする、ORF1ないし37(配列番号:2ないし38)のいずれかから選択されたDNA配列を含む);(2)該ベクターで形質導入された該微生物を、細胞増殖、該遺伝子の発現、および該抗生物質または抗生物質前駆体の産生に適した条件下で培養することを含む。
【0021】
別の態様において、本発明は、A40926の誘導体を産生する方法を提供し、該方法は、次の工程:(1)適当なベクターに、配列番号;1により定義されるヌクレオチド配列から選択されたセグメントをクローニングすること(該セグメントは、ORF1ないし37(配列番号:2ないし38)の1つの少なくとも一部分を含有し、該ORFは、回避することが望まれる生合成段階を触媒するポリペプチドをコードする);(2)該ORFを、該ポリペプチドの活性に必須のアミノ酸について特定する1個以上のコドンを取り除くかあるいは置換することにより不活性化すること;(3)該組換えDNAベクターで生合成経路によりA40926またはA40926前駆体を産生する微生物を形質導入すること;(4)得られた形質導入体を該DNA配列が変異コピーにより置き換えられ、従って破壊された遺伝子を生じるものについてスクリーニングすること;次に、(5)該変異体細胞を、細胞増殖、該経路の発現、および該経路の類似体の産生に適した条件下で培養することを含む。
【0022】
なお別の態様において、本発明は、新規糖ペプチドを産生する方法を提供し、該方法は、次の工程:(1)組換えDNAベクターで、生合成経路によりA40926またはその前駆体とは異なる糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を産生する微生物を形質導入すること(該ベクターは、ORF1ないし37(配列番号:2ないし38)から選択された1個以上のORFを含み、該糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を修飾する1以上のポリペプチドの発現をコードする);(2)該ベクターで形質導入された該微生物を、細胞増殖、該遺伝子の発現、および該抗生物質または抗生物質前駆体の産生に適した条件下で培養することを含む。
【0023】
この方法を行うのに適した糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を産生する微生物の例は、ストレプトマイセス属、アミコラトプシス属、アクチノプラネス属、ノノムリア属などに属する株である。
【0024】
なお別の態様において、本発明は、新規糖ペプチドを産生するさらなる方法を提供し、該方法は、次の工程:(1)組換えDNAベクターで微生物を形質導入すること(該ベクターは、糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を修飾する1以上のポリペプチド(活性なポリペプチド)をコードする、ORF1ないし37(配列番号:2ないし38)から選択される1個以上のORFを含み、そして該微生物は、糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を産生せず、かつ導入されたORFを効率的に発現できるものから選択される);(2)該微生物の細胞抽出物または細胞分画を活性なポリペプチドの存在に適した条件下で調製すること(該細胞抽出物または細胞分画は、少なくとも該活性なポリペプチドを含有する);(3)糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を該細胞抽出物または細胞分画に添加し、次に該混合物を該活性なポリペプチドが該糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を修飾できる条件下でインキュベーションすることを含む。
【0025】
この方法を行うのに適した微生物の例は、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)種、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)種、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)種、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)種などに属する株である。
【0026】
本発明のさらなる態様は、
a)dbv ORF1から37(配列番号:2ないし38)のいずれかによりコードされるORFポリペプチド、またはdbv ORF1から37(配列番号:2ないし38)のいずれか、好ましくは、dbv ORF3から4、6から10、18から20、22から23、29から30(配列番号:4から5、7から11、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれか1つによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が同一のポリペプチド;
b)dbv ORF3、6から9、18から20、22から23、29から30、および36(配列番号:4、7から10、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれかによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が、少なくとも80%、好ましくは、86%、より好ましくは、90%、最も好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチド;
c)dbv ORF4から10(配列番号:5から11)のいずれかによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が、少なくとも87%、好ましくは、90%、より好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチド、
から選択されるA40926の生合成経路に関与するポリペプチド配列を含む単離ポリペプチドを含む。
【0027】
定義
用語「単離核酸」は、ゲノムDNAまたは相補DNA(cDNA)のいずれかとしてのDNA分子を意味し、これは、天然および合成起源の1本鎖または2本鎖であり得る。この用語はまた、天然または合成起源のRNA分子を意味する。
【0028】
用語「ヌクレオチド配列」は、本明細書に開示されるORFの全長または一部分の配列、および遺伝子間領域を意味する。配列表に示される本発明のヌクレオチド配列のいずれか1つは、(a)コード配列、(b)(a)の転写からもたらされるRNA分子、(c)同一ポリペプチドをコードするために遺伝暗号の縮重を用いるコード配列、または(d)プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、およびアンチターミネーター配列を含有する遺伝子間領域である。
【0029】
用語「遺伝子群(gene cluster)」、「群(cluster)」、および「生合成群(biosynthesis cluster)」は全て、二次代謝産物の合成に必要な遺伝子全てを含有する微生物のゲノムの連続セグメントを示す。
【0030】
用語「dbv」は、ノノムリア種(ATCC39727)におけるA40926生合成に関与する遺伝因子を意味する。
【0031】
用語「ORF」は、1つのポリペプチドをコードするゲノムヌクレオチド配列を意味する。本発明において、用語ORFは「遺伝子」と同意語である。
【0032】
用語「ORFポリペプチド」は、ORFによりコードされるポリペプチドを意味する。
用語「dbv ORF」は、dbv遺伝子群内に含まれるORFを意味する。
【0033】
用語「NRPS」は、二次代謝産物のオリゴペプチド骨格へのアミノ酸の取込みに関与する触媒活性体の複合体である、非リボソームペプチド合成酵素を意味する。機能的なNRPSは、オリゴペプチドへの1個以上のアミノ酸の取込みを触媒するものである。
【0034】
用語「NRPSモジュール」、または「モジュール」は、オリゴペプチドに対する1個のアミノ酸の活性化、取込み、および修飾を指揮するNRPSのセグメントを意味する。
用語「NRPS遺伝子」は、NRPSをコードする遺伝子を意味する。
【0035】
用語「二次代謝産物」は、遺伝子群により特定される遺伝子セットの発現により、微生物により産生される生物活性物質を意味する。
【0036】
用語「産生宿主」は、二次代謝産物の生成が、ドナー生物に由来する遺伝子群により指揮されるている微生物である。
【0037】
用語「ESAC」は、「エシェリキア・コリ−ストレプトマイセス人工染色体」、すなわち、エシェリキア・コリ宿主において巨大なDNAインサートを有し、維持し、かつ放線菌産生宿主において導入され、維持され得る組換えベクターを示す。ESACの例は、WO99/67374において示されている。
【0038】
図面の簡単な説明
図1 ノノムリア種(ATCC39727)の染色体に由来する単離DNAセグメント
太線は、配列番号:1において記載されるセグメントを示す。該単離DNAセグメントを有するコスミドを、11A5、7F3、7E9、1B1、7A2、11B9、および7C7と命名する。
【0039】
図2 dbv群の遺伝子の組織化
それぞれのORFは、矢印および表1の番号で示されている。向きは、図1と同じである。目盛りの数字は、配列座標(kb)を示す。
【0040】
発明の詳細な説明
A.ノノムリア由来のdbv遺伝子
A40926は、ノノムリア種(ATCC39727)により産生される、密接に関連する糖ペプチド抗生物質の複合体である。本発明は、A40926の生合成のための遺伝子群の核酸配列および特徴決定を提供する。A40926遺伝子群の物理的な組織化は、フランキングDNA配列と共に図1(ノノムリア種(ATCC39727)のゲノム由来の90kbゲノムセグメントの物理的なマップをかかるセグメントを定義するコスミドのセットと共に示す)で報告されている。dbv群と呼ばれる、A40926生合成を支配するDNAセグメントの遺伝子の組織化は、図2において示され、そしてそのヌクレオチド配列は配列番号:1として報告されている。
【0041】
群の正確な境界は、他の糖ペプチド群との比較により、そしてその遺伝子産物の機能から確立され得る。それ故、左端(図1)にdbv群が、HPGの合成に関与する酵素HmoS(配列番号:2)をコードするdbv ORF1により区切られている。右端には、dbv群が、配列番号:1のヌクレオチド71065から71138にまたがるtRNA遺伝子の3’末端と類似する、attL部位のレムナントにより区切られている。dbv群は、約71,100塩基対にまたがり、ORF1ないしORF37と呼ばれる37個のORFを含有する。配列番号:1の連続ヌクレオチド配列(71138塩基対)は、配列番号:2から38に挙げられる37個の推定タンパク質をコードする。ORF1(配列番号:2)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド1140から40を翻訳したものから推定される、366個のアミノ酸を表す。ORF2(配列番号:3)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド2329から1259を翻訳したものから推定される、356個のアミノ酸を表す。ORF3(配列番号:4)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド5161から2558を翻訳したものから推定される、867個のアミノ酸を表す。ORF4(配列番号:5)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド6231から5266を翻訳したものから推定される、321個のアミノ酸を表す。ORF5(配列番号:6)は、配列番号:1のヌクレオチド7185から8292を翻訳したものから推定される、369個のアミノ酸を表す。ORF6(配列番号:7)は、配列番号:1のヌクレオチド8320から8973を翻訳したものから推定される、217個のアミノ酸を表す。ORF7(配列番号:8)は、配列番号:1のヌクレオチド9069から9659を翻訳したものから推定される、196個のアミノ酸を表す。ORF8(配列番号:9)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド10667から9708を翻訳したものから推定される、319個のアミノ酸を表す。ORF9(配列番号:10)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド11896から10670を翻訳したものから推定される、408個のアミノ酸を表す。ORF10(配列番号:11)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド13419から11950を翻訳したものから推定される、489個のアミノ酸を表す。ORF11(配列番号:12)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド14741から13479を翻訳したものから推定される、420個のアミノ酸を表す。ORF12(配列番号:13)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド16019から14823を翻訳したものから推定される、398個のアミノ酸を表す。ORF13(配列番号:14)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド17163から16009を翻訳したものから推定される、384個のアミノ酸を表す。ORF14(配列番号:15)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド18366から17185を翻訳したものから推定される、393個のアミノ酸を表す。ORF15(配列番号:16)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド18671から18462を翻訳したものから推定される、69個のアミノ酸を表す。ORF16(配列番号:17)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド24259から18668を翻訳したものから推定される、1863個のアミノ酸を表す。ORF17(配列番号:18)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド36529から24278を翻訳したものから推定される、4083個のアミノ酸を表す。ORF18(配列番号:19)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド39021から36760を翻訳したものから推定される、753個のアミノ酸を表す。ORF19(配列番号:20)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド39851から39152を翻訳したものから推定される、232個のアミノ酸を表す。ORF20(配列番号:21)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド41732から40125を翻訳したものから推定される、535個のアミノ酸を表す。ORF21(配列番号:22)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド42584から41772を翻訳したものから推定される、270個のアミノ酸を表す。ORF22(配列番号:23)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド44130から42868を翻訳したものから推定される、420個のアミノ酸を表す。ORF23(配列番号:24)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド46355から44226を翻訳したものから推定される、709個のアミノ酸を表す。ORF24(配列番号:25)は、配列番号:1のヌクレオチド46632から48578を翻訳したものから推定される、648個のアミノ酸を表す。ORF25(配列番号:26)は、配列番号:1のヌクレオチド48575から54868を翻訳したものから推定される、2097個のアミノ酸を表す。ORF26(配列番号:27)は、配列番号:1のヌクレオチド54865から58056を翻訳したものから推定される、1063個のアミノ酸を表す。ORF27(配列番号:28)は、配列番号:1のヌクレオチオ58152から58985を翻訳したものから推定される、277個のアミノ酸を表す。ORF28(配列番号:29)は、配列番号:1のヌクレオチド59046から60641を翻訳したものから推定される、531個のアミノ酸を表す。ORF29(配列番号:30)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド62445から60874を翻訳したものから推定される、523個のアミノ酸を表す。ORF30(配列番号:31)は、配列番号:1のヌクレオチド62887から63312を翻訳したものから推定される、141個のアミノ酸配列を表す。ORF31(配列番号:32)は、配列番号:1のヌクレオチド63469から64587を翻訳したものから推定される、372個のアミノ酸を表す。ORF32(配列番号:33)は、配列番号:1のヌクレオチド64599から65240を翻訳したものから推定される、213個のアミノ酸を表す。ORF33(配列番号:34)は、配列番号:1のヌクレオチド65237から66541を翻訳したものから推定される、434個のアミノ酸を表す。ORF34(配列番号:35)は、配列番号:1のヌクレオチド66538から67335を翻訳したものから推定される、265個のアミノ酸を表す。ORF35(配列番号:36)は、配列番号:1のヌクレオチド67332から68618を翻訳したものから推定される、428個のアミノ酸を表す。ORF36(配列番号:37)は、配列番号:1の相補鎖のヌクレオチド69423から68685を翻訳したものから推定される、251個のアミノ酸を表す。ORF37(配列番号:38)は、配列番号:1のヌクレオチド69608から70894を翻訳したものから推定される、428個のアミノ酸を表す。
【0042】
dbv群は、他の糖ペプチド群のものとは実質的に異なる、組織化を示す。5つのbalcepcomsta、およびdbv群間の比較を表1に概説する。
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】


+記号は、他の記載の糖ペプチド遺伝子群におけるオルソログの存在を示す。
オルソログが他の糖ペプチド遺伝子群において存在しない場合、GeneBankでのBlast検索の結果を報告する。
他の糖ペプチド群の存在、およびGeneBankでのBlast検索の結果の組合せに基づき推定したdbv ORFの機能。
この列は、他の糖ペプチド遺伝子群、およびそれが源を発する群由来の配列同一性のパーセンテージを報告する。
最高値を有するGeneBankエントリーの受託番号
Blast検索から得た確率の値
前の列に由来するGeneBankエントリーの生物および推定機能。略語は、S.,ストレプトマイセス;M.,メソリゾビウム(Mesorhizobium);A.,アミコラプトシス。
Blast検索により報告される保存ドメイン
他の糖ペプチド群に存在するが、高い同一性を有する配列がデータベース上の別の箇所に存在する。
【0045】
実際、NRPSの7個のモジュールをコードする遺伝子は、12kbセグメントにより分けられた、2つの不一致の翻訳領域として組織化されている(図2)。これは、NRPS遺伝子の7個のモジュールが、コンパクトな領域に存在し、全て同じ向きに翻訳される、bal、cep、com、およびsta群の組織化とは対照的である。さらに、bal、cep、com、およびsta群において、1個のORF以外の全ORFが、同じ向きに翻訳される一方、37個のdbv ORFのうち22個のみが、ある向きに翻訳され、残る15個は、反対向きに翻訳される。このことは、dbv群の翻訳上の複雑さを示している。
【0046】
dbv群はまた、bal、cep、com、およびsta群において相同性が見られないいくつかのORFの存在により、特徴付けられる。これらは、dbv ORF3、6ないし8、18ないし20、22、23、29、30、および36(配列番号:4、7ないし9、19ないし21、23、24、30、31、および37)を含む。5つのbal、cep、com、sta、およびdbv群間の比較は、表1に概説されている。要するに、本明細書に記載のdbv群の遺伝子の組織化は、他の糖ペプチドの合成に関与する他の群のものと実質的に異なる。それゆえこれは、かかかる遺伝子の組織化を有する群の第1の例を表している。
【0047】
B.dv遺伝子の役割
本発明は、特に、A40926のヘプタペプチド前駆体の合成に関与するNRPSをコードするDNA配列を開示する。dbv NRPSは4つのポリペプチドからなり、それぞれが1から3個のモジュールを含有している。これらは、dbv ORF16、ORF17、ORF25、そしてORF26(配列番号:17、18、26、そして27)と呼ばれている。NRPSによるペプチド合成は、モジュラーシステムにより行われ、ここで、ローディングモジュールが、一連の伸長モジュールに続いている。NRPSにおいて、それぞれの伸長モジュールは、少なくとも3個のドメイン:基質認識および活性化に関与する、アデニル化(A)ドメイン;チオエステルアミノ酸および伸長ペプチドとして共有結合する、チオール化(T)ドメイン;およびペプチド結合形成を触媒する、縮合(C)ドメインの存在により特徴付けられる。最後のモジュールは、これらのコアドメインに加え、完成したペプチドのNRPSとのエステル結合を加水分解する、チオエステラーゼ(Te)ドメインを含有する。いくつかのモジュールは、D型にエピマー化(E)ドメインの作用により、L−アミノ酸を転換する。dbv NRPSは、7個のモジュール、計7個のAドメイン、7個のTドメイン、6個のCドメイン、3個のEドメイン、および1個のTeドメインからなる。特に、dbv ORF26(配列番号:27)は、NRPSモジュール1および2をコードし、ドメインA−T−C−A−E−Tの配列を特定し、A40926のヘプタペプチドコアでのHPGおよびTyr残基(最初の2つのアミノ酸)の取込みに必要とされ;dbv ORF25(配列番号:26)は、NRPSモジュール3をコードし、ドメインC−A−Tの配列を特定し、DPG残基の取込みに関与し;dbv ORF17(配列番号:18)は、NRPSモジュール4ないし6をコードし、ドメインC−A−E−T−C−A−E−T−C−A−Tの配列を特定し、A40926ヘプタペプチドコアでの2個のHPGおよびTyr残基の取込みに関与し;そしてdbv ORF16(配列番号:17)は、NRPSモジュール7をコードし、ドメインC−A−T−C−T−Te(Cは、機能未知の非典型的な凝結を示す)の配列を特定し、最後のDPG残基の取込み、およびA40926のヘプタペプチド前駆体の放出に必要とされる。
【0048】
dbv群に存在する他の遺伝子は、A40926の産生の増加、または新規代謝産物の合成に有用な新規遺伝因子を表す。これらの中で、dbv ORF9(配列番号:10)は、N−アシル−グルコサミン残基をヘプタペプチド(式I)の位置4のHPG残基のフェノール性ヒドロキシルと結合させる糖転移酵素をコードする。この遺伝子は、クローニングされ、N−アシル−グルコサミン残基を他の糖ペプチドアグリコンに結合させることができる活性酵素を生じる、異種性宿主において発現させられ得る。代わりに、dbv ORF9は、産生株において不活性化され、A40926アグリコンが生成される。このアグリコンは、化学的手段(Malabarba and Ciabatti 2001)により得られるが、化学反応の介入を必要とすることなく、単一の発酵過程によりこれを産生することが望まれ得る。
【0049】
本発明の他のなお好ましい核酸分子は、A40926のアミノ酸3およびアミノ酸6での塩素(chorine)原子の付加に関与するハロゲナーゼをコードするdbv ORF10(配列番号:11)を含む。dbv ORF10は、cep、com、sta、およびbal群に存在するハロゲン化酵素遺伝子と異なる、新規遺伝因子を表す。事実、A40926の塩素化パターンは、これらの糖ペプチドの中でもむしろ独特である。この遺伝子はクローニングされ、糖ペプチドの芳香族残基3および6を塩素化することができる活性酵素を生じるように、異種性宿主において発現され得る。
【0050】
本発明の他のなお好ましい核酸分子は、アミノ酸4でのグルコサミン残基の脂肪酸によるN−アシル化に関与する、アシルトランスフェラーゼをコードするdbv ORF23(配列番号:24)を含む。dbv ORF23は、cep、com、sta、およびbal群の存在しない、新規遺伝因子を表す。この遺伝子はクローニングされ、異なる糖ペプチドの糖部分をN−アシル化することができる活性酵素を生じるように、異種性宿主において発現され得る。
【0051】
本発明の他のなお好ましい核酸分子は、A40926のアミノ酸4に結合したD−グルコサミンのアミノグルクロン酸に対する酸化に関与する、ヘキソースオキシダーゼをコードするdbv ORF29(配列番号:30)を含む。dbv ORF29は、cep、com、sta、およびbal群の存在しない、新規遺伝因子を表す。この遺伝子はクローニングされ、糖ペプチドに結合したD−グルコサミン残基を酸化することができる活性酵素を生じるように、異種性宿主において発現され得る。
【0052】
本発明の他のなお好ましい核酸分子は、NRPS由来の異常な中間体ペプチドの加水分解に関与する、チオエステラーゼをコードするdbv ORF36(配列番号:37)を含む。NRPSとは異なるポリペプチドとして存在する他のチオエステラーゼ(Kotowska et al. 2002)と同様に、dbv ORF36産物は、さらにヘプタペプチドに処理されることのないNRPSの全チオエステルを加水分解することにより、A40926の生合成に有効なNRPSの維持に関与する。従って、これは、cep、sta、com、およびbal群にはない、新規遺伝因子を表している。この遺伝子はクローニングされ、生成産物の収率を増加させるために別の糖ペプチド産生株において発現され得る。宿主株は、アクチノマイセス目、ストレプトスポランギアセア(Streptosporangiaceae)科、ミクロモノスポラセア(Micromonosporaceae)科、シュードノカルディアセア(Pseudonocardiaceae)科、およびストレプトマイセス(Streptomycetaceae)科、ノノムリア属、アクチノプラネス属、アミコラプトシス属、ストレプトマイセス属などに属する株を含むが、これらに限らない。
【0053】
本発明の他のなお好ましい核酸分子は、マンノシル残基をアミノ酸7と結合させるのに関与する、マンノシルトランスフェラーゼをコードするdbv ORF20(配列番号:21)を含む。従って、これは、cep、sta、com、およびbal群には存在しない、新規遺伝因子を表している。この遺伝子はクローニングされ、アミノ酸7と結合しているマンノシル残基を有する糖ペプチドを生じるために別の糖ペプチド産生株において発現され得る。代わりに、dbv ORF20は、産生株において不活性化され、脱マンノシル−A40926が生成される。この化合物を、他の手段(Lancini and Cavalleri 1997)によって得ることができるが、単一の発酵過程によりこれを産生することが望まれ得る。
【0054】
dbv群はまた、非タンパク新生アミノ酸HPGおよびDPGの合成に関与する、多数の遺伝子を含む。前者の合成のために、dbv ORF1、2、5、および37(配列番号:2、3、6、および38)産生が必要とされる。DPGの合成は、ORF37(配列番号:38)に加えて、dbv ORF31から34(配列番号:32から35)の関与を必要とする。これらの役割は、表1に概説されている。HPGおよびDPGは、非タンパク新生アミノ酸であるため、NRPSによるヘプタペプチドの合成は、その有効性に依存する。結果として、これらの酵素の活性は、糖ペプチド生合成における律速段階となる。従って、糖ペプチドの収率の増加は、これらのORFの発現を増加させることにより得られ得る。これらの遺伝子は、個々、またはこれらの任意の組合せでA40926の収率を増加させるためにA40926産生株において過剰発現され得る。
【0055】
dbv群はまた、糖ペプチド中間体または完成産物の細胞質外への輸送、および産生細胞への抵抗性の付与に関与する、多数の遺伝子を含む。これらの遺伝子は、dbv ORF7、18から19、24、および35(配列番号:8、19から20、25、および36)を含む。dbv ORF7は、生成中のペプチドグリカンから末端のD−アラニン部分を除去するのに関与するカルボキシペプチダーゼをコードする。これは、cep、com、sta、およびbal群には存在しない、新規遺伝因子を表す。dbv ORF18から19、および24は、A40926またはその中間体のATP依存性排出に関与する、ABC型トランスポーター(van Veen and Konings 1998)をコードする。dbv ORF35は、タンパク質勾配に逆らったA40926またはその中間体の輸送に関与する、Na/Kイオン−アンチポーターをコードする。これらの遺伝子はクローニングされ、個別にまたはそれらとの任意の組合せで、生成産物の収率を増加させるために別の糖ペプチド産生株において発現され得る。宿主株は、アクチノマイセス目、ストレプトスポランギアセア科、ミクロモノスポラセア科、シュードノカルディアセア科、およびストレプトマイセス科、ノノムリア属、アクチノプラネス属、アミコラトプシス属、ストレプトマイセス属などに属する株を含むが、これらに限らない。代わりに、これらの遺伝子は、個別にまたはこれらとの任意の組合せでA40926の収率を増加させるためにA40926産生株において過剰発現され得る。
【0056】
dbv群はまた、A40926産生中に生合成および抵抗性遺伝子の発現を直接的または間接的に活性化するのに関与する、多数の調節遺伝子を含む。これらの遺伝子は、dbv ORF3、4、6、および22(配列番号:4、5、7、および23)を含む。dbv ORF3は、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)由来の遺伝子群に存在するポジティブレギュレーターであるHygR(Ruan et al. 1997)と密接に関連する。これは、cep、com、bal、およびsta群には存在しない、新規遺伝因子を表している。dbv ORF4は、他の糖ペプチド群に存在する同様のレギュレーターと密接に関連する。dbv ORF6および22は、一体となって、2つの成分のシグナル伝達系をコードする。これら4つの遺伝子はクローニングされ、個別にまたはこれらとの任意の組合せで、生成産物の収率を増加させるために別の糖ペプチド産生株において発現され得る。宿主株は、アクチノマイセス目、ストレプトスポランギアセア科、ミクロモノスポラセア科、シュードノカルディアセア科、およびストレプトマイセス科、ノノムリア属、アクチノプラネス属、アミコラトプシス属、ストレプトマイセス属などを含むが、これらに限らない。代わりに、これらの遺伝子は、個別にまたはこれらとの任意の組合せで、A40926の収率を増加させるためにA40926産生株において過剰発現され得る。
【0057】
C.dbv群の使用
本発明はまた、完全なA40926分子、その前駆体のいずれか、またはその誘導体の発現のための核酸を提供する。かかる核酸は、A40926のアセンブリを指揮するのに十分なポリペプチドをコードするORFを含む、単離遺伝子群を含む。1例として、完全なdbv群(配列番号:1)は、適当なベクターに導入され、これを用いて、所望の産生宿主が形質導入される。1つの態様において、このDNAセグメントは、長いDNAセグメントを有することができる適当なベクターに導入される。かかるベクターの例は、細菌人工染色体(BAC)ベクターまたはESACベクターの様な特定の誘導体を含むが、これらに限らない(Shizuya et al. 1992; Ioannou et al. 1994; Sosio et al. 2000b)。別の態様において、dbv群は、2つの別々のセグメントとして2つの異なるベクターにクローニングされ、所望の産生宿主において適合可能になる。なお別の態様において、dbv群は、3つのセグメントに再分割され、それぞれが、別々の適合ベクターにクローニングされる。1、2、または3つのベクターシステムの使用例が、文献(例えば、Xue et al. 1999)に記載されている。
【0058】
dbv群が、1つまたはそれ以上のベクターに適当にクローニングされると、それは、多数の適当な産生宿主に導入され、ここで、糖ペプチド抗生物質の産生が、天然の宿主においてより非常に効率的に生じ得る。好ましい宿主細胞は、放線菌遺伝子を効果的に発現できる種または株のものである。かかる宿主は、アクチノマイセス、ストレプトスポランギアセア、ミクロモノスポラセア、シュードノカルディアセア、およびストレプトマイセス、ノノムリア、アクチノプラネス、アミコラトプシス、およびストレプトマイセスなどを含むが、これらに限らない。代わりに、1つまたはそれ以上の適当なベクターにクローニングされたdbv群の第2コピーが、A40926産生株に導入され、ここで、dbv遺伝子の第2コピーがA40926の収率を増加させる。
【0059】
十分に特徴付けられた宿主細胞に産生能力を受け渡すことは、冒頭の最適化および開発の過程のいくつかの部分:産生株での天然産物のタイターが、より有効に増加され得ること;天然産物の精製が、活性と干渉する可能性のある既知のバックグランドで行われ得ること;複合体の組成が、より有効に調節され得ること;天然産物の変化した誘導体が、発酵条件の操作により、あるいは経路工学により、より有効に産生され得ることを実質的に改善できる。
【0060】
代わりに、生合成遺伝子群は、修飾され、宿主細胞に挿入され、多種多様な代謝産物を合成または化学的に修飾するために用いられ得る(例えば、オープンリィーディングフレームが、再配列され、修飾され、そして他の糖ペプチド合成遺伝子群と組み合わされ得る)。
【0061】
本明細書において提供される情報を用いて、A40926核酸のクローニングおよび発現は、日常的およびよく知られた方法を用いて行われ得る。
【0062】
別の可能性のある使用において、dbv遺伝子群由来の選択されたORFは、日常的な分子生物学的技術を用いて、単離され、不活性化される。ノノムリア種(ATCC39727)染色体において該ORFとフランクするDNAセグメントを含有する適当なベクターにクローニングされた変異型ORFは、該ノノムリア株に導入され、2度の二重交差混合現象である相同組換えにより、産生株での該ORFの不活性化を生じる。この産生株は、有効な方法でのA40926の前駆体または誘導体の産生に有用である。
【0063】
別の可能性のある使用において、dbv遺伝子群由来の選択されたORFが単離され、所望のプロモーターの調節下に置かれる。適当なベクターにクローニングされた、操作されたORFは、次に、上記オリジナルのORFを置き換えることにより、または該ORFのさらなるコピーとして、ノノムリア種(ATCC39727)に導入される。この産生株は、A40926分子、その前駆体または誘導体の産生の決定因子であるORFの発現レベルを増加あるいは減少させるのに有用である。
【0064】
実施例
以下の実施例は、A40926遺伝子群が同定された原理および方法論、および全dbv遺伝子が同定され、分析された原理および方法論を説明するものである。これらの実施例は、本発明の原理および方法論を説明するものであって、その範囲を制限することを意味するものではない。
【0065】
一般的方法
特に示さない限り、細菌株およびクローニングベクターは全て、公的なコレクションまたは商業用供給源から得ることができる。分子生物学の標準的方法を用いている(例えば、Sambrook et al. 1989;Kieser et al. 2000)。ノノムリアをHTアガー(Kieser et al. 2000)、およびRare3培地(10g/l グルコース、4g/l 酵母エキス、10g/l 麦芽エキス、2g/l ペプトン、2g/l MgCl、0.5% グリセロール)にて増殖させた。糖ペプチドを公開された方法(Lancini and Cavalleri, 1997)に従い単離する。配列分析を、Wisconsinパッケージ(バージョン9.1)(Accelrys)のプログラムを用いて行う。データベース検索を、公開サイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/index.htmlおよびhttp://www.ebi.ac.uk/fasta33)のBlastまたはFastaプログラムにより行う。
【0066】
実施例1−A40926生合成遺伝子の単離
ゲノムライブラリーを、コスミドベクターSupercos(Stratagene, La Jolla, CA 92037)においてノノムリア(ATCC39727)由来のDNAにより作成する。ノノムリア(ATCC39727)由来の全DNAを、フラグメントサイズを40kbの範囲に最適化するためにSau3AIで部分的に切断した。部分的に切断したDNAを、アルカリホスファターゼ処理し、BamHIであらかじめ切断したSupercosにライゲーションした。ライゲーション混合物を、インビトロでパッケージングし、これを用いて、エシェリキア・コリXL1Blue細胞にトランスフェクションした。得られたコスミドライブラリーを、アミコラトプシス・メディテッラネイDSM5908ゲノムDNAを鋳型として用いた、bal群由来セグメントのPCR増幅から得た2つのプローブでのハイブリダイゼーションにより、スクリーニングした。これらのプローブは、オリゴ5’−ATGCGCGTGTTGATCTCG−3’(配列番号:39)および5’−CGGCTGACCGCGGCGAAC−3’(配列番号:40)での増幅から得た、bgtfA;およびオリゴ5’−CGTGGGGGTG GATGTATCGA−3’(配列番号:41)および5’−TCACCATTGGATCAGCG−3’(配列番号:42)での増幅から得た、dpgAであった。全てのオリゴを、受託番号Y16952でGenBankに蓄積された配列から設計した。さらなるハイブリダイゼーションを、オリゴヌクレオチドPep8(Sosio et al. 2000a)により行った。これらのプローブのうち1つ以上にポジティブなコスミドを単離し、制限酵素で物理的に位置決定した。かかる実験より、図1で報告したコスミドを同定した。従って、ノノムリア種(ATCC39727)のゲノムから同定したセグメントは、抗生物質A40926の合成に関与するdbv遺伝子群を含有している。
【0067】
上記の実施例は、dbv群を単離できる原理および方法論を説明するものである。dbv群を種々のベクターにクローニングできることは当業者にとって当然のことであろう。しかしながら、72kbの大きさであるdbv群を与える、好ましいベクターは、λベクター、コスミドベクター、およびBACベクターの様な長いインサートを有することができるものであるということを、当業者は理解する。他のプローブを用いて、かかるライブラリーからdbv群を同定できることを、当業者は理解する。配列番号:1で報告した配列より、任意のフラグメントを、ノノムリア種(ATCC39727)DNAからPCR増幅でき、これを用いて、かかるDNAで作成したライブラリーをスクリーニングできる。該ライブラリーから1またはそれ以上のクローンを同定することができ、これは、配列番号:1でカバーされる任意のセグメントを含んでいる。さらに、cep、bal、com、およびsta群に由来するものの様な異種性プローブの使用により、表1で提供する情報を用いて、dbv群を同定することも可能である。代わりに、二次代謝産物の合成を指揮する他の遺伝子群は、異種性ハイブリダイゼーションを可能にするためにdbv遺伝子と十分に関連する遺伝子を含有する。これらのバリエーションは全て、本発明の範囲にある。
【0068】
実施例2−A40926遺伝子群の配列分析
実施例1で記載のように同定したdbv群を、ショットガンアプローチにより配列決定した。dbv群の配列を配列番号:1として本明細書において提供する。得られたDNA配列を、Codonpreference[GCG,(Genetic Computer group, Madison, WI 53711)バージョン9.1]により分析し、適当なコード配列を同定した。次に、この方法で同定したそれぞれのコード配列を、プログラムTfasta(GCG,バージョン9.1)を用いてbal、cep、com、およびsta群との比較により分析した。これらの群のいずれにおいても一致を同定しないコード配列を、次に、プログラムBlastを利用してGenBankに対して、またはFastaを用いてSwissProtに対して検索した。最後に、それぞれのORFの正確な開始コドンを、プログラムPileup(GCG,バージョン9.1)による関連配列の複数アラインメントにより、あるいは上流のリボソーム結合部位の検索により、確立した。合計37個のORF(dbv ORF1ないしdbv ORF37と呼ぶ)を同定する。これらの分析の結果を表1で概説し、配列番号:2ないし配列番号:38として配列表において本明細書で提供している。詳細は、以下に示す。
【0069】
2A.特定したアミノ酸HPGおよびDPGの合成
dbv群によりコードされる7つのタンパク質が、特定したアミノ酸HPGおよびDPGの合成に関与する。すなわち、ORF1およびORF2(配列番号:2および3)は、A40926生成に必要なHPG残基の合成に関与し、これらは、それぞれp−ヒドロキシマンデル酸オキシダーゼ、およびp−ヒドロキシマンデル酸合成酵素をコードしている。これらのORFの相同体を、他の糖ペプチド群(表1)において見出し、その役割を実験で確立した(Li et al. 2001; Hubbard et al. 2000)。ORF31から34(配列番号:32から35)は、A40926生成に必要なDPG残基の合成に関与している。これらのORFの相同体を、DPG残基を含有するヘプタペプチドの合成を指揮する他の糖ペプチド(表1)において見出し、対応する遺伝子産物の関与を、実験で決定した(Pfeifer et al. 2001; Chen et al. 2001)。ORF37(配列番号:38)は、それぞれ、HPGおよびDPGを生じるために、p−ヒドロキシフェニルグリオキシレートおよび3,5−ジヒドロキシフェニルグリオキシレートの両方のアミノ基転移に必要なアミノトランスフェラーゼをコードする。この役割を実験で確立(Pfeifer et al. 2001; Hubbard et al. 2000)し、これは、アミノドナーとして好ましくはチロシンを利用する(Hubbard et al. 2000)。この反応は、p−ヒドロキシフェニルピルビン酸塩を生成し、次に、ORF2(配列番号:2)の遺伝子産物の作用により、p−ヒドロキシマンデル酸塩に転換できる。
【0070】
HPGおよびDPGの合成に直接的に関与する他のORFも、dbv群において見出し、ORF5およびORF30(配列番号:6および31)と命名する。ORF5(配列番号:6)は、ORF2(配列番号:3)産生の基質である、p−ヒドロキシフェニルピルビン酸塩の合成に関与する、プレフェン酸デヒドロゲナーゼをコードする。それゆえ、このORFは、チロシンをHPGに転換するサイクルを刺激する酵素をコードする。それゆえ、このORFの発現レベルは、A40926生成のためHPGの十分なレベルを提供するのに重要である。ORF30(配列番号:31)は、ストレプトマイセス・コエリカラー由来のNP_626911.1により表される最も一致する細菌ゲノム配列から同定した機能未知の推定ポリペプチドと非常に類似するポリペプチド(表1)をコードする。しかしながら、これらのタンパク質は全て、4−ヒドロキシベンゾイル−CoAチオエステラーゼ(Benning et al. 1998)の典型的な転換ドメインを表す。従って、ORF30(配列番号:31)産物は、この小ポリケチドの合成中にDPGまたはその前駆体の1つの放出を促進するようである。ORF30(配列番号:31)は、dbv群(表1)に固有である。
【0071】
2B.A40926のヘプタペプチド前駆体の合成
ORF16、17、25、および26(配列番号:17、18、26、および27)によりコードされる4つのタンパク質は、A40926のヘプタペプチドコアの合成に関与する。これらの全てが、他のNRPSとの有意な類似性を示す。他のNRPS系でのアラインメントに基づき、これら4個のORFによりコードされるタンパク質の推定ドメイン組成および特異性を表2において報告する。
【0072】
表2.dbv NRPSのドメイン組成および役割
【表4】

【0073】
dbv NRPS遺伝子の特定の役割の指定を、dbv群でのその遺伝子座により推定することはできない。事実、報告した糖ペプチド群全てについて、現在までに、モジュールの遺伝指令と、対応するアミノ酸をポリペプチドに取り込んだ指令との共直線性は存在するが、そのNRPS遺伝子を別々に翻訳するので、これはdbv群(図2)の場合ではない。しかしながら、その役割および特異性を、次の知見:
i)ORF16(配列番号:17)により特定されるタンパク質のドメイン組成、およびそれがチオエステラーゼドメインで終結するという事実が、DPG残基およびヘプタペプチドの最後のペプチド結合の形成の認識、次に、酵素結合チオエステルの分解(表2)における役割と最も一致すること;
ii)ORF17(配列番号:18)のモジュール組織化およびドメイン組成は、ヘプタペプチドのアミノ酸4から6の認識、そしてその取込みに必要とされるモジュール4から6を含有するポリペプチドと最も一致すること(これは、他の糖ペプチドNRPS系(van Wageningen et al 1998; Pelzer et al. 1999; Chiu et al. 2001; Pootoolal et al. 2002)で見られる);
iii)ORF25(配列番号:26)産物のドメイン認識は、このORFが2つのモジュールだがたった1つのCドメインをコードする(表2)ので、ヘプタペプチド合成の開始、および第1のペプチド結合形成の触媒でのその役割と一致すること;
iv)ORF26(配列番号:27)のドメインの組織化は、このモジュールがEドメイン(モジュール2、4、および5の役割により必要とされる)を含有せず、かつそれぞれCドメインおよびTeドメインの存在または不存在(表2)が、このORFがそれぞれモジュール1および7をコードすることを除外するので、ヘプタペプチドの第3のアミノ酸の認識および取込みに関与するモジュール3を含有するこのポリペプチドと一致すること、
に基づき推定できる。
【0074】
A40926のヘプタペプチド前駆体の合成に直接関与する他のORFも、dbv群で見られ、ORF15およびORF36(配列番号:16および37)と命名する。ORF15(配列番号:16)は、機能未知の短いペプチドをコードする。この遺伝子産物の相同体を、NRPS系をコードする多くの群で見られる。ORF36(配列番号:37)は、NRPSまたはポリケチド合成酵素遺伝子を含有する他の群によりしばしばコードされるタンパク質である、II型チオエステラーゼをコードする。これらのチオエステラーゼの推定の役割は、NRPS系およびPKS系が、酵素と共有結合した異常な中間体を取り除くことにより作動することで有効性を増強することである(Heathcote et al. 2001)。このタンパク質のオルソログを、他の既知の糖ペプチド群はコードしない(表1)。
【0075】
2C.ヘプタペプチドでの芳香族残基の架橋結合
ORF11ないし14(配列番号:12ないし15)によりコードされる4つのタンパク質は、A40926ヘプタペプチド前駆体の芳香族残基と共に結合する、架橋結合反応に関与する。これらの4つのタンパク質は、P450モノオキシゲナーゼとの有意な相同性を示す(表1)。他の糖ペプチド群で見られるP450モノオキシゲナーゼとの同一性のレベル、およびbal群に存在する遺伝子によりコードされるP450モノオキシゲナーゼの推定される役割(Bischoff et al. 2001)に基づき、次の予測をすることができる。すなわち、ORF14(配列番号:15)産物は、アミノ酸2および4の芳香族残基の架橋結合に関与するようであり;ORF12(配列番号:13)産物は、アミノ酸4および6の芳香族残基の架橋結合に関与するようであり;そしてORF11(配列番号:12)産物は、アミノ酸5および7の芳香族残基の架橋結合に関与するようである。ORF13(配列番号:14)のオルソログは、bal、cep、およびcom群には存在しないが、sta群では見られる(表1)。A40926様のA47934構造は、アミノ酸1および3の芳香族残基間にさらなる架橋結合を含有するので、ORF13(配列番号:14)産物は、この架橋結合反応に関与するようである。
【0076】
2D.芳香族残基のβ−ヒトドロキシチロシンの生成および塩素化
ORF10およびORF28(配列番号:11および29)によりコードされる2つのタンパク質は、ヘプタペプチドにおいてアミノ酸6として存在するチロシン残基へのβ−ヒドロキシ基の付加、およびアミノ酸2および6の芳香族残基の塩素化に関与する。他の糖ペプチド群において見られるハロゲン化酵素をコードする遺伝子との同一性のレベル、およびbal群に存在するハロゲン化酵素遺伝子の予測される役割(Puk et al. 2002)に基づき、ORF10(配列番号:11)産物は、アミノ酸3および6の芳香族残基への塩素原子の導入に関与するようである。ORF28(配列番号:29)産物は、非ヘム鉄ジオキシゲナーゼの典型的なモチーフを含有するタンパク質ファミリーと非常に関連する。かかるタンパク質の1つは、sta群から推定され(Pootoolal et al. 2002)、チロシンのβ−ヒドロキシル化に関与すると示唆される。このヒドロキシ化反応の正確なタイミングは、現在分かっていない。それは、ヘプタペプチドへのアミノ酸6の取込み(これは、バンヒマイシンの合成において起こる)前に生じ得る(Bischoff et al. 2001);それは、ヘプタペプチド合成中、あるいはヘプタペプチド骨格の完成後生じ得る。
【0077】
2E.糖の付加および修飾、およびN−メチル化
ORF9、20、23、27、および29(配列番号:10、21、24、18、および30)によりコードされる5つのタンパク質は、A40926合成の後期段階のいくつかに関与する。これらの推定される役割は次のとおりである。ORF9(配列番号:10)は、他の糖ペプチド群によりコードされるタンパク質と非常に関連し、これは、位置4に存在するアミノ酸残基の芳香環のp−ヒドロキシル基への糖の結合に関与する(Solenberg et al. 1997)。特に、ORF9(配列番号:10)は、A40926アグリコンへのN−アシル−グルコサミン残基の結合に関与する糖転移酵素をコードする。かかる特異性を有する他の糖転移酵素のうち、記載の他の糖ペプチド群によりコードされるものはない。
【0078】
ORF20(配列番号:21)の相同体は、他の記載の糖ペプチド群においては見られない。このタンパク質は、タンパク質マンノシルトランスフェラーゼファミリーの典型的なモチーフを含有している(表1)。さらに、このORFの相同体を、ストレプトマイセス・コエリカラーのゲノム(表1)、ならびに抗生物質ラモプラニン(ramoplanin)(WO0231155)の合成を特定するアクチノプラネス亜種群において同定した。ラモプラニンは、ペプチドコアと結合したマンノシル残基を含有するので、これらのデータは全て、アミノ酸7のヒドロキシル基とのマンノシル残基の結合におけるORF20(配列番号:21)の役割を指摘するものである。この推定の役割を以下の実施例4においても示す。
【0079】
ORF23(配列番号:24)の相同体は、記載の糖ペプチド群において見られない。このタンパク質は、アシルトランスフェラーゼファミリー3の典型的なモチーフを含有する(表1)。A40926は、アミノ糖残基のNH基と結合したアシル残基を含有するので、このORF産物は、A40926前駆体のアシル化に直接的または間接的に関与するようであり、A40926複合体を特徴付ける化合物ファミリーを生じる。
【0080】
ORF27(配列番号:28)の相同体は、bal、およびcep群において見られる(表1)。cep群由来のORF27の相同体は、クロロエレモマイシンの中間体の末端のロイシン残基のN−メチル化に関与することを示した。HPG残基は、A40926のN−末端に存在する。結論として、ORF27(配列番号:28)産物は、糖ペプチド前駆体でのHPG残基のN−メチル化を触媒するようであり、従って、他の記載のメチルトランスフェラーゼとは異なる特異性が付与される。
【0081】
ORF29(配列番号:30)の相同体は、他の記載の糖ペプチド群において見られない(表1)。このタンパク質は、FAD結合の典型的なモチーフを含有し、ヘキソースオキシダーゼとかなりの一致を示す(表1)。A40926は、アミノ酸4と結合したグルクロンアミン残基を含有するので、ORF29(配列番号:30)によりコードされるタンパク質は、グルコサミン残基の酸化に関与するようである。このタンパク質はまた、細胞質から分泌されたタンパク質の典型的な推定シグナルペプチド配列を含有するので、酸化は、糖ペプチドコアと結合したグルコサミン残基を基質として用いて、細胞質外で生じるようである。
【0082】
2F.輸送および抵抗性
ORF7、18、19、24、および35(配列番号:8、19、20、25、および36)によりコードされる5つのタンパク質は、A40926、またはその前駆体のいくつかの細胞質外への輸送、および産生株への抵抗性の付与に関与する。その推定される役割は次のとおりである。
【0083】
ORF7(配列番号:8)の相同体は、他の記載糖ペプチド群において見られない。このタンパク質は、カルボキシペプチダーゼのVanYファミリーの典型的なモチーフを含有する(表1)。このファミリーは、いくつかのバンコマイシン耐性腸球菌でよく研究されている。これは、発生期のペプチドグリカンのペンタペプチドのいくつかから末端のアラニル残基を除去するのに関与し、従って、その分子標的と結合する糖ペプチドの範囲を減少される(Evers et al. 1996)。それゆえ、ORF7(配列番号:8)は、産生株ノノムリア種(ATCC38727)においてA40926にあるレベルの抵抗性を付与するのに関与するようである。
【0084】
ORF24およびORF35(配列番号:25および36)の相同体は、他の糖ペプチド群に存在する(表1)。これらは、それぞれABC型膜貫通型輸送体およびイオン依存性膜貫通型輸送体をコードすると予測される。従って、これらは、A40926またはその前駆体のいくつかの輸送または区画化に関与するようである。ORF18およびORF19(配列番号:19および20)の相同体は、他の記載の糖ペプチド群において見られない(表1)。これらは、さらなるABC型輸送体をコードすると推定され、このうちORF18(配列番号:19)のみが、膜貫通型タンパク質であると推定される。従って、これらは、A40926またはその前駆体のいくつかの輸送または区画化に関与するようである。
【0085】
2G.調節
ORF3、4、および22(配列番号:4、5、7、および23)によりコードされる4つのタンパク質は、1またはそれ以上のdbv遺伝子の発現の調節に関与する。ORF3(配列番号:4)の相同体は、他の記載の糖ペプチド群において見られない。このタンパク質は、LuxRファミリーのポジティブレギュレーターの典型的なモチーフを含有し、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス由来のPKS群において見られる1つのポジティブレギュレーターと最も関連する(Ruan et al. 1997)。ORF4(配列番号:5)の相同体は、他の糖ペプチド群において存在(表1)し、ポジティブ転写レギュレーターのLysR型ファミリーに属する。それゆえ、ORF3および4(配列番号:4および5)は、1またはそれ以上のdbv遺伝子の発現に必要とされるようである。ORF6およびORF22(配列番号:7および23)は、細菌の2成分のシグナル伝達系の2つのメンバーをコードする。前者のタンパク質は、ストレプトマイセス・コエリカラーCutRタンパク質で見出された最も一致する応答レギュレーターであるようである(表1)。後者のタンパク質は、ストレプトマイセス・ヒグロスコピカス由来の推定センサータンパク質キナーゼと最も関連する膜貫通型ヒスチジンキナーゼであるようである(表1)。それゆえ、ORF6および22(配列番号:23)は、dbv群での1またはそれ以上の遺伝子の発現の引き金となるシグナルの検出に関与するようである。
【0086】
実施例3−ESACベクターにおけるdbv群の単離
実施例2で提供の情報を用いて、dbv群を、次の様にESACベクターにおいて単離した。ゲノムライブラリーを、pPAC−S1ベクター(Sosio et al. 2000b)においてノノムリア(ATCC39727)由来DNAにより作成した。ノノムリア(ATCC39727)由来DNAを、アガロースプラグ(Sosio et al. 2000b;WO99/67374記載)に埋め込んで調製し、100〜200kbの範囲にフラグメントサイズを最適化するためにSau3AIで部分的に切断した。生じたDNAフラグメントを、PFGEゲルにて簡単に泳動し、アガロースゲルから回収し、遊離させた(Sosio et al. 2000b;WO99/67374に記載)。ベクター調製、ライゲーション、およびエシェリキア・コリDH10Bコンピテント細胞のエレクトロポレーションを含む次の工程を、記載(Sosio et al. 2000b;WO99/67374)のように行った。得られたコロニーをナイロンフィルターに移して分析し、ノノムリア(ATCC39727)ゲノムDNAからPCR増幅した2つのプローブでのハイブリダイゼーションによりスクリーニングした。プローブAを、オリゴ5’−TCAGGAGACGAACCCCGC−3’(配列番号:43)および5’−GTGCACGAAAGTCCCGTC−3’(配列番号:44)を用いて;そしてプローブBを、5’−ATGGACTCCCACGTTCTC−3’(配列番号:45)および5’−TCAGGGGAGACATGCGGT−3’(配列番号:46)を用いて得た。これらの配列は全て、配列番号:1に由来するものである。次に、これらのプローブ全てに対してポジティブのESACクローンを単離し、EcoRIおよびEcoRVでの切断により物理的に位置決定した。かかる実験の1つから、約84kbのインサートを含有するESACクローンNmES1を単離し、NmES1は、完全なdbv群(配列番号:1)を含み、これを約5kb、配列番号:1のヌクレオチド1の5’方向、そして約8kb、配列番号:1のヌクレオチド71138の3’方向に拡大する。
【0087】
上記の実施例は、dbv群をESACベクターにおいて得ることができる、原理および方法論を説明するものである。ベクターpPAC−S1は、この目的で用い得るESACベクターのただ1例であることは、当業者は理解するであろう。完全なdbv遺伝子群のクローニング、および適当な放線菌宿主への移行に有用な他のベクターは、記載(Sosio et al. 2000b;WO99/67374)されている。さらに、部分的な切断、フラグメントの分離および回収、ベクター調製、ライゲーション、およびエシェリキア・コリ細胞の形質導入を含む(これらに限らない)、ノノムリア種(ATCC39727)DNAの長いインサートライブラリーを調製する他の方法はまた、本発明の範囲にある。dbv群の境界を配列番号:1において確立すると、上記のプローブAおよびB以外の任意のプローブまたはプローブの組合せを用いて、インサートが完全なdbv群に及ぶクローンを同定するためにノノムリア種(ATCC39727)により作成したライブラリーをスクリーニングできることを、当業者は理解するであろう。代わりに、配列番号:1および表1においてい提供した情報により、他の有用なプローブを、異種性ハイブリダイゼーションを可能とするdbv遺伝子と有意に関連する遺伝子を含有する他の遺伝子群から得ることができる。これらすべてのバリエーションが、本発明の範囲にある。
【0088】
実施例4−遺伝子の置き換えによるA40926の操作
実施例2において提供した情報を用いて、ORF20のインフレーム欠失を、次の様に行った。フラグメントAを、オリゴ5’−TTTTGAATTCTCAGGCGATCCGTCCGTCT−3’(配列番号:47)および5’−TTTTCTAGAGCCCGGACACCCGGGGGCTGA−3’(配列番号:48)による;そしてフラグメントBを、オリゴ5’−TTTTCTAGAAGTCATGGTGATGTGCGACAT−3’(配列番号:49)および5’−TTTTAAGCTTATGTTGCAGGACGCCGACCG−3’(配列番号:50)による増幅により得た。次に、フラグメントAをEcoRIおよびXbaIで、フラグメントBをXbaIおよびHindIIIで切断し、両者を、あらかじめEcoRIおよびHindIIIで切断したpSET152(Bierman et al. 1992)にライゲーションした。EcoRIおよびHindIIIエシェリキア・コリDH5a細胞の形質導入後、得られたプラスミド(pSM4と命名)を、EcoRIおよびHindIIIでの切断後の4kbおよび1.5kbのフラグメントの存在により認識した。アリコートのpSM4を、エシェリキア・コリET12567(pUB307)(Kieser et al. 2000)細胞に移行し、SM4株を得た。次に、LBで一晩培養したものからの約10CFUのSM4細胞を、約80時間Rare3培地で増殖させた、約10CFUのノノムリア(ATCC39727)と混合した。得られた混合物をHTプレートに広げ、次に、28℃で約20時間インキュベーションした。軽く水で洗浄し、過剰なエシェリキア・コリ細胞を除去した後、プレートを、ナリジクス酸 200mgおよび15mg/ml アプラマイシン含有ソフトアガー 3mlで覆った。28℃で3〜5週間さらにインキュベーションした後、ノノムリア外結合体を、新しいアプラマイシン含有培地に画線した。かかる外結合体(ex-conjugate)の1つ(SS18株と命名)をさらに処理した。次に、SS18株をアプラマイシンを含まないHT培地にて何度か継代して増殖させ、適当な希釈物をアプラマイシンを含まないHTアガーに蒔いた。次に、個々のクローンを、オリゴ5’−TTTTGAATTCTCAGGCGATCCGTCCGTCT−3’(配列番号:47)および5’−TTTTAAGCTTATGTTGCAGGACGCCGACCG−3’(配列番号:50)を用いて、PCRにて分析した。ORF20欠失対立遺伝子を含有するコロニーを、1.5kbのバンドの存在により認識した。かかるコロニーの1つ(SSM18と命名)をHT培地にて増殖させ、脱マンノシルA40926の生成を、信頼できるスタンダード(Malabarba and Ciabatti 2001)との比較により確認した。
【0089】
上記の実施例は、配列番号:2から38により特定されるもののいずれかから選択したORFを、A40926産生株ノノムリア種(ATCC39727)において変異コピーにより置き換えることができる、原理および方法論を説明したものである。ORF20(配列番号:21)が、配列番号:1により特定される群でのインフレームの欠失を創出する方法論の1例にすぎないことを当業者は理解するだろう。当業者はまた、インフレーム欠失は変異を創出する1つの方法であって、インフレームシフト変異を含む(これに限らない)他の方法、挿入、および部位指定変異を用いて、配列番号:2から38により特定されるORFのいずれかにおいて無変異体を創出できることを理解する。当業者はまた、配列番号:1により特定されるORFのいずれかにおいて変異を創出する確立された方法があるので、これらと同じ方法論を適用して、これらと同じORFの発現レベルを変化させることができることを理解する。このことがいかにして成され得るかの例は、ノノムリア種(ATCC39727)ゲノムの任意の位置への複数コピーの該ORFの組み込み、該ORFの発現を調節するプロモーターにおける変化、アンチセンスRNAまたはその発現に干渉する転写ターミネーターの除去を含むが、これらに限らない。
【0090】
最後に、ノノムリア種(ATCC39727)に変異型対立遺伝子を導入するのに有用なベクター、宿主およびレシピエント株の接合および培養条件、外結合体およびその誘導体の選択方法およびスクリーニング方法におけるバリエーションは全て、本発明の範囲にある。
【0091】
参考文献
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【配列表】











































































































































【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)A40926(配列番号:1)の合成に必要なポリペプチドをコードするdbv遺伝子群;
b)dbv遺伝子群のヌクレオチド配列以外であって、dbv遺伝子群(配列番号:1)によりコードされるのと同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
c)配列番号:2から38のポリペプチドをコードする、dbv ORF1から37の任意のヌクレオチド配列;
d)該ORFのヌクレオチド配列以外であって、dbv ORF1から37(配列番号;2から38)のいずれかによりコードされるのと同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、単離核酸。
【請求項2】
e)dbv ORF3から4、6から10、18から20、22から23、29から30、および36(配列番号:4から5、7から11、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれかのヌクレオチド配列;
f)該ORFのヌクレオチド配列以外であって、dbv ORF3から4、6から10、18から20、22から23、29から30、および36(配列番号:4から5、7から11、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれかによりコードされるのと同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
g)dbv ORF3、6から9、18から20、22から23、29から30、および36(配列番号:4、7から10、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれかによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が、少なくとも80%、好ましくは、86%、より好ましくは、90%、最も好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
h)dbv ORF4および10(配列番号:5および11)のいずれかによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が、少なくとも87%、好ましくは、90%、より好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列;
からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の単離核酸。
【請求項3】
dbv ORF1、2、5、および37(配列番号:2、3、6、および38)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926の4−ヒドロキシ−フェニルグリシン残基の合成に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項4】
dbv ORF30から34、および37(配列番号:31から35、および38)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列から、なるA40926の3,5−ジヒドロキシ−フェニルグリシン残基の合成に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項5】
dbv ORF16、17、25、26,および36(配列番号:17から18、26から27、および37)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926のヘプタペプチド骨格の合成に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項6】
dbv ORF10(配列番号:11)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926のアミノ酸3および6の芳香族残基の塩素化に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項7】
dbv ORF28(配列番号:29)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926のアミノ酸6のチロシン残基のβ−ヒドロキシル化に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項8】
dbv ORF11から14(配列番号:12から15)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926の位置2および4、4および6、1および3、および5および7のアミノ酸の芳香族残基の架橋結合に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項9】
ORF9、23、および29(配列番号:10、24、および30)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926のN−アシルグルクロンアミン残基の付加および生成に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項10】
dbv ORF20(配列番号:21)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926のマンノシル残基の結合に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項11】
dbv ORF27(配列番号:28)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、A40926のN−メチル化に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項12】
A40926またはその前駆体のいくつかの細胞質外への輸送、およびA40926に抵抗性を、dbv ORF7、18、19、24、および35(配列番号:8、19から20、25、および36)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、産生株に付与するのに必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項13】
dbv ORF3、4、6、および22(配列番号:4、5、7、および23)、または該ORFのヌクレオチド配列以外であって、同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列からなる、dbv遺伝子群のうち1またはそれ以上の遺伝子の発現の調節に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の組合せを含む、請求項2記載の単離核酸。
【請求項14】
インフレームの欠失が、マンノシル残基の結合に必要とされるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に導入されている、A40926の合成に必要とされるポリペプチドをコードするdbv遺伝子群からなるヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の単離核酸。
【請求項15】
dbv ORF1から37(配列番号:2から38)、または該dbv ORFのヌクレオチド配列以外であって、該dbv ORFによりコードされるのと同じポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のうち少なくとも1つの少なくとも1個の追加コピーを有するヌクレオチド配列を含む、請求項1記載の単離核酸。
【請求項16】
ヌクレオチド配列がDNA配列である、請求項1から15のいずれか記載の単離核酸。
【請求項17】
請求項1から15のいずれかで定義されたDNA配列を含む、組換えDNAベクター。
【請求項18】
ESACベクターである、請求項17に記載の組換えベクター。
【請求項19】
請求項17または18のいずれか記載のベクターで形質導入された宿主細胞。
【請求項20】
アクチノマイセス(Actinomycetales)目、好ましくは、ストレプトスポランギアセア(Streptosporangiaceae)科、ミクロモノスポラセア(Micromonosporaceae)科、シュードノカルディアセア(Pseudonocardiaceae)科、またはストレプトマイセス(Streptomycetaceae)科、より好ましくは、ノノムリア(Nonomureae)属、アクチノプラネス(Actinoplanes)属、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などに属する、請求項19に記載の形質導入された宿主細胞。
【請求項21】
生合成経路によりA40926またはその前駆体を産生する能力のある微生物によるA40926の産生を増加させる方法であって、
a)請求項17記載の組換えDNAベクターで、生合成経路によりA40926またはA40926前駆体を産生する微生物を形質導入すること、ここで、該DNAベクターは該経路の律速である活性の発現をコードする;
b)該ベクターで形質導入された該微生物を、細胞増殖、該遺伝子の発現、および該抗生物質または抗生物質前駆体の産生に適した条件下で培養すること、
を含む方法。
【請求項22】
ゲノムのA40926合成遺伝子が、請求項15記載のヌクレオチド配列の挿入により修飾されている、A40926または前駆体、またはそれらの誘導体を産生する形質導入された微生物。
【請求項23】
請求項22記載の形質導入されたA40926産生微生物を培養することを含む、A40926または前駆体、またはそれらの誘導体を産生する方法。
【請求項24】
dbv ORF1から37(配列番号:2から38)から選択されるA40926生合成遺伝子の少なくとも1つが破壊されている、ゲノムにA40926生合成遺伝子を有する、形質導入されたA40926産生微生物。
【請求項25】
破壊されている生合成遺伝子が、マンノシル残基の結合に関与する遺伝子である、請求項24記載の形質導入された微生物。
【請求項26】
請求項24記載の形質導入されたA40926産生微生物を含む、A40926前駆体または誘導体を産生する方法。
【請求項27】
A40926またはその前駆体とは異なる糖ペプチドを産生する方法であって、
a)(i)組換えDNAベクターで、生合成経路によりA40926またはその前駆体と異なる糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を産生する微生物を形質導入すること、該ベクターまたはその一部分質は、該糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を修飾する1またはそれ以上のポリペプチドの発現をコードする、請求項1から13のいずれか記載の1またはそれ以上のヌクレオチド配列を含み;次に
(ii)該ベクターで形質導入された該微生物を、細胞増殖、該遺伝子の発現、および該抗生物質または抗生物質前駆体の産生に適した条件下で培養すること;
あるいは、
b)(i)組換えDNAベクターで微生物を形質導入すること、該ベクターは、糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を修飾する1またはそれ以上のポリペプチドをコードする、請求項1から13のいずれか記載の1またはそれ以上のヌクレオチド配列を含み、該微生物は、糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を産生せず、かつ導入されたヌクレオチド配列を効率的に発現できるものから選択され;
(ii)該微生物の細胞抽出物または細胞分画を、活性なポリペプチドの存在に適した条件下で調製すること、該細胞抽出物または細胞分画は、少なくとも該活性なポリペプチドを含有する;次に、
(iii)糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を該細胞抽出物または細胞分画に添加し、次に該混合物を該活性なポリペプチドが糖ペプチドまたは糖ペプチド前駆体を修飾できる条件下でインキュベーションすること、
を含む方法。
【請求項28】
a)dbv ORF1から37(配列番号:2ないし38)のいずれかによりコードされるORFポリペプチド、またはdbv ORF1から37(配列番号:2ないし38)のいずれか、好ましくは、dbv ORF3から4、6から10、18から20、22から23、29から30(配列番号:4から5、7から11、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれか1個によりコードされるORFポリペプチドとアミノ酸配列が同一のポリペプチド;
b)dbv ORF3、6から9、18から20、22から23、29から30、および36(配列番号:4、7から10、19から21、23から24、30から31、および37)のいずれかによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が、少なくとも80%、好ましくは、86%、より好ましくは、90%、最も好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチド;および
c)dbv ORF4および10(配列番号:5および11)のいずれかによりコードされるポリペプチドとアミノ酸配列が、少なくとも87%、好ましくは、90%、より好ましくは、95%またはそれ以上同一のポリペプチド、
から選択されるA40926の生合成経路に関与するポリペプチド配列を含む、単離ポリペプチド。
【請求項29】
請求項3から16のいずれか記載の核酸のいずれかによりコードされるポリペプチドから選択されるA40926の生合成経路に関与するポリペプチドを含む、単離ポリペプチド。

【公表番号】特表2006−516885(P2006−516885A)
【公表日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−545854(P2004−545854)
【出願日】平成15年10月15日(2003.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011398
【国際公開番号】WO2004/038025
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(504464380)ビキュロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】VICURON PHARMACEUTICALS INC.
【Fターム(参考)】