説明

糖不含有パイナップル抽出物、及びその製造方法、並びにその用途

【課題】優れた作用を有し、安全性、環境性、及び生産性に優れた、糖不含有パイナップル抽出物、及びその製造方法、並びにラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、毛乳頭細胞増殖促進剤、飲食品、皮膚外用剤、及び育毛剤の提供。
【解決手段】パイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られ、ブドウ糖、及び果糖を含有しない糖不含有パイナップル抽出物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖不含有パイナップル抽出物、及びその製造方法、並びにラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、毛乳頭細胞増殖促進剤、飲食品、皮膚外用剤、及び育毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮、基底膜、及び真皮から構成されている。真皮は、線維芽細胞と、該細胞から分泌されるコラーゲン(膠原線維)、エラスチン(弾性線維)、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックスとにより構成されている。基底膜は、表皮と真皮との境界部に存在し、表皮と真皮とを繋ぎ止めるだけでなく、皮膚機能の維持に重要な役割を果たしている(非特許文献1参照)。若い皮膚においては、これら皮膚組織の相互作用が恒常性を保つことによって、水分保持力、柔軟性、弾力性等が確保され、外見的にも張りや艶があってみずみずしい状態に維持される。
ところが、紫外線、著しい空気の乾燥、過度の皮膚洗浄、ストレス、喫煙等の外的因子の影響を受けたり、加齢が進んだりすると、細胞外マトリックスの主要構成成分であるコラーゲンの分解や変質が生じたり、線維芽細胞の増殖が遅くなったり、或いは基底膜の主要構成成分であるラミニン−5が分解や変質を起こして基底膜構造が破壊されたりする(非特許文献2参照)。また、天然保湿因子であるヒアルロン酸の産生量の低下を引き起こす。その結果、皮膚の保湿機能や弾力性が低下し、角質の異常剥離が起こり、シワ、くすみ、きめの消失、弾力性の低下等の老化症状を呈するようになる。
【0003】
したがって、ラミニン−5の産生、及びヒアルロン酸の産生を促進することにより皮膚の老化を防止乃至改善することができると考えられる。そこで、ラミニン−5産生促進作用、及びヒアルロン酸産生促進作用を有する物質を、安全性の高い天然物から入手することが望まれている。
これまで、ラミニン−5産生促進作用を有するものとしては、例えば、カッコン抽出物、カンゾウ抽出物又はそのフラボノイド画分、ヒオウギ抽出物、ジタノキ抽出物、イボツヅラフジ抽出物、コロハ抽出物、乳清抽出物(以上、特許文献1参照)、オノニス抽出物、メリロート抽出物、モヤシ抽出物、アズキ抽出物(以上、特許文献2参照)、大豆抽出物(特許文献3参照)などが報告されている。また、ヒアルロン酸産生促進作用を有する物質を天然物から抽出することが試みられている(非特許文献3参照)。
【0004】
一方、炎症性の疾患、例えば、接触性皮膚炎(かぶれ)、乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れを伴う各種皮膚疾患等の原因及び発症機構は多種多様である。その原因として、ヒアルロニダーゼ活性によるものが知られている。
体組織への親和性を保つヒアルロン酸塩は、含水系の中では紫外線、酵素等によって分解され、分子量の低下に伴って保水効果も減少する。また、ヒアルロン酸は細胞間組織として存在し、血管透過性とも関与している。更に、ヒアルロニダーゼは肥満細胞中にあって活性化により、肥満細胞からの脱顆粒に関与していると考えられている。したがって、ヒアルロン酸の加水分解酵素であるヒアルロニダーゼの活性を阻害することにより、ヒアルロン酸の安定化を図り、肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの放出を防止し、保湿の強化及び抗炎症が期待できる。
このようなヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有する生薬としては、例えば、オスベッキア属植物の抽出物(特許文献4参照)、藤茶抽出物(特許文献5参照)、ローズマリー、タイム抽出物及びメリッサ抽出物(特許文献6参照)などが報告されている。
【0005】
また、表皮は、角化細胞の分裂とその後の分化により、常に新しい角質細胞を作り出すことで、外界からの種々の刺激から皮膚を守る防御機能を有する。特に、角化細胞の分化過程において、有棘層から顆粒層にかけてインボルクリン等のタンパク質が発現し、酵素トランスグルタミナーゼ−1の作用によって架橋され、角化細胞を包み込む不溶性の細胞膜様構造体であるコーニファイドエンベロープ(CE)を形成し、角質細胞の細胞骨格及び構造の安定性に寄与する。
しかし、様々な要因で表皮におけるトランスグルタミナーゼ−1の産生量が減少すると、コーニファイドエンベロープ(CE)形成が不完全な状態となり、角化が正常に行われなくなる。その結果、角質バリア機能及び皮膚の保湿機能が低下し、肌荒れや乾燥肌等の皮膚症状を呈するようになると考えられる。
このようなことから、角化細胞の表皮におけるトランスグルタミナーゼ−1の産生を高め、コーニファイドエンベロープの形成を促進して角化を正常化することによれば、乾燥や紫外線等の外部刺激に伴う皮膚バリア機能の低下を抑制し、肌の乾燥や肌荒れなど、様々な皮膚症状を予防乃至改善することができると考えられる。
【0006】
皮膚においてメラニンは、紫外線から生体を保護する役目も果たしているが、過剰生成や不均一な蓄積は、皮膚の黒化乃至シミの原因となる。一般に、メラニンは色素細胞の中で生合成される酵素チロシナーゼの働きによって、チロシンからドーパ、ドーパからドーパキノンに変化し、次いで、5,6−ジヒドロキシインドフェノール等の中間体を経て形成される。したがって、皮膚の色黒(皮膚色素沈着症)を予防乃至改善するため、即ち美白のためには、メラニンの産生を抑制すること、或いは既に産生したメラニンを淡色漂白することが有効であると考えられる。このような背景から、メラニン産生を抑制して美白効果を導く物質の開発が盛んに行われるようになってきている。
【0007】
毛髪の成長は、成長期、退行期、休止期からなる周期的なヘアサイクル(毛周期)に従って成長及び脱落を繰り返している。このヘアサイクルのうち、休止期から成長期へかけての新たな毛包が形成されるステージが、発毛に最も重要であると考えられている。そして、このステージにおける毛包上皮系細胞の増殖乃至分化に重要な役割を果たしているのが、毛乳頭細胞であると考えられている。毛乳頭細胞は、毛根近傍にある外毛根鞘細胞とマトリックス細胞とからなる毛包上皮系細胞の内側にあって、基底膜に包まれている毛根の根幹部分に位置する細胞であり、毛包上皮系細胞へ働きかけてその増殖を促すなど、毛髪への分化に重要な役割を担っている(非特許文献4参照)。
【0008】
一方、パイナップル果実搾汁液乃至パイナップル果実抽出物を美白、美肌成分として含有する皮膚外用剤が報告されている(特許文献7参照)。
【0009】
しかしながら、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有する天然系の各種製剤に対する需要者の要望は極めて強く、未だ十分満足し得るものが提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−137767号公報
【特許文献2】特開2003−137768号公報
【特許文献3】特開2004−217618号公報
【特許文献4】特開2003−055242号公報
【特許文献5】特開2003−012532号公報
【特許文献6】特開平8−333267号公報
【特許文献7】特開2002−275081号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Marinkovich MP et al., J. Cell. Biol. 1992 199:695−703
【非特許文献2】Lavker et al., J. Invest. Dermatol. 1979 73: 59−66
【非特許文献3】「フレグランスジャーナル」 1992年、No.11,p43
【非特許文献4】「Trends Genet」,1992年,第8巻,p.56−61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有する糖不含有パイナップル抽出物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたラミニン−5産生促進作用を有し、安全性の高いラミニン−5産生促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有し、安全性の高い表皮ヒアルロン酸産生促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有し、安全性の高いヒアルロニダーゼ活性阻害剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有し、安全性の高いトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れたメラニン産生抑制作用を有し、安全性の高いメラニン産生抑制剤を提供することを目的とする。また、本発明は、優れた毛乳頭細胞増殖作用を有し、安全性の高い毛乳頭細胞増殖促進剤を提供することを目的とする。また、本発明は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする飲食品、皮膚外用剤、及び育毛剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、パイナップルの可食部を溶媒により抽出することにより得られるパイナップル抽出物が、優れたラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用を有することから、前記パイナップル抽出物が、ラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤、並びに飲食品、皮膚外用剤、及び育毛剤としての用途に適することを見出した。
【0014】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> パイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られ、ブドウ糖、及び果糖を含有しないことを特徴とする糖不含有パイナップル抽出物である。
<2> パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出することにより得られる前記<1>に記載の糖不含有パイナップル抽出物である。
<3> 溶媒が、70体積%〜100体積%エタノール水溶液である前記<1>から<2>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物である。
<4> パイナップル可食部を溶媒により抽出し、ブドウ糖、及び果糖を除去することを特徴とする糖不含有パイナップル抽出物の製造方法である。
<5> パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出する前記<4>に記載の糖不含有パイナップル抽出物の製造方法である。
<6> 溶媒が、70体積%〜100体積%エタノール水溶液である前記<4>から<5>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物の製造方法である。
<7> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするラミニン−5産生促進剤である。
<8> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする表皮ヒアルロン酸産生促進剤である。
<9> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするヒアルロニダーゼ活性阻害剤である。
<10> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤である。
<11> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするメラニン産生抑制剤である。
<12> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする毛乳頭細胞増殖促進剤である。
<13> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする飲食品である。
<14> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤である。
<15> 前記<1>から<3>のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする育毛剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の糖不含有パイナップル抽出物、及びその製造方法によると、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有する糖不含有パイナップル抽出物、及びその製造方法を提供することができる。
本発明のラミニン−5産生促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたラミニン−5産生促進作用を有し、安全性の高いラミニン−5産生促進剤を提供することができる。
本発明の表皮ヒアルロン酸産生促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れた表皮ヒアルロン酸産生促進作用を有し、安全性の高い表皮ヒアルロン酸産生促進剤を提供することができる。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を有し、安全性の高いヒアルロニダーゼ活性阻害剤を提供することができる。
本発明のトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有し、安全性の高いトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤を提供することができる。
本発明のメラニン産生抑制剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れたメラニン産生抑制作用を有し、安全性の高いメラニン産生抑制剤を提供することができる。
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤によると、従来における諸問題を解決することができ、優れた毛乳頭細胞増殖作用を有し、安全性の高い毛乳頭細胞増殖促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(パイナップル)
パイナップル(Pinapple)は、パイナップル科アナナス属に属する多年生の植物で、学名:Ananas comosus(L.)Merr.乃至Ananas sativus Schultであり、中国では鳳梨とも呼ばれている。果実は大角形で多肉、黄色く熟し芳香を放ち、食用として用いられる。パイナップルの産地は、米国、フィリピン、マレーシア、ブラジル、オースラリアなどを主としているが、本発明に用いられる抽出物を得るにあたっては、その種類や産地は特に限定されない。
【0017】
(糖不含有パイナップル抽出物糖、及び不含有パイナップル抽出物の製造方法)
本発明の糖不含有パイナップル抽出物は、抽出原料としてのパイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られる。該糖不含有パイナップル抽出物は、ブドウ糖、及び果糖を含有しないことを必要とする。
本発明の糖不含有パイナップル抽出物の製造方法は、パイナップル可食部を溶媒により抽出し、ブドウ糖、及び果糖を除去することを含み、更に必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0018】
前記糖不含有パイナップル抽出物の抽出原料としては、果肉、果芯部(芯)などのパイナップル可食部であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、パイナップル可食部の圧搾後の残渣、即ち、パイナップル果汁を採取した後に残留した繊維質(パイナップルパルプ)が特に好ましい。
前記抽出原料は、採取後、洗浄して乾燥し、粉砕したものを用いることが好ましい。ここで、乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を使用して行ってもよい。
【0019】
前記糖不含有パイナップル抽出物は、前記パイナップル可食部を、前記溶媒に投入し、室温乃至溶媒の沸点以下の温度で任意の装置を用いて抽出することにより容易に得ることができる。
【0020】
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール;ヘキサン;低級脂肪族アルコール、低級脂肪族ケトン、多価アルコールなどの親水性有機溶媒と水との混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、親水性有機溶媒と水との混合溶媒が好ましい。前記親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、メタノール、エタノール、プロパノール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールなどが好ましく、エタノールがより好ましい。
水と親水性有機溶媒との混合溶媒において、前記親水性有機溶媒として低級アルコールを用いる場合、前記低級脂肪族アルコールの前記混合溶媒における含有量としては、10体積%〜100体積%が好ましく、70体積%〜100体積%がより好ましく、90体積%が特に好ましい。前記親水性有機溶媒として低級脂肪族ケトンを用いる場合、前記低級脂肪族ケトンの前記混合溶媒における含有量としては、10体積%〜80体積%が好ましい。前記親水性有機溶媒として多価アルコールを用いる場合、前記多価アルコールの前記混合溶媒における含有量としては、10体積%〜90体積%が好ましい。
【0021】
前記糖不含有パイナップル抽出物の抽出方法としては、前記パイナップル可食部に含まれる脂溶性成分を前記溶媒に溶出させることが可能であれば、特に限定されるものではなく、常法に従って行うことができる。また、抽出処理の際には、特殊な抽出方法を採用する必要はなく、室温乃至還流加熱下において任意の装置を使用することができる。
具体的には、前記糖不含有パイナップル抽出物の抽出方法としては、例えば、エタノール水溶液などの前記溶媒を満たした処理槽に、パイナップル可食部を圧搾した後の残渣(パイナップルパルプ)などの前記抽出原料を投入し、必要に応じて適宜攪拌しながら、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過して脂溶性成分を溶出した後、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、さらに同様の濾過処理を行い、得られた中間抽出物を水で洗浄してブドウ糖、及び果糖などの糖質を除くことによって、目的とする糖不含有パイナップル抽出物を得る方法が挙げられる。
この際、抽出条件は、前記抽出原料などに応じて適宜調整し得るが、前記抽出溶媒量は、前記抽出原料としてのパイナップル可食部に対して5倍量〜20倍量(質量比)が好ましく、抽出時間は1時間〜3時間が好ましく、抽出温度は常温〜95℃が好ましい。
【0022】
なお、得られた前記糖不含有パイナップル抽出物は、前記糖不含有パイナップル抽出物の希釈物、濃縮物、乾燥物、粗精製物、精製物などを得るために、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製などの処理を施してもよい。
また、得られた前記糖不含有パイナップル抽出物は、そのままでもラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、毛乳頭細胞増殖促進剤のいずれかとして使用することができるが、利用しやすい点で、前記濃縮液、前記乾燥物が好ましい。前記乾燥物を得るに当たって、吸湿性を改善するためにデキストリン、シクロデキストリンなどのキャリアーを加えてもよい。
【0023】
<<不含有成分>>
本発明において、「糖不含有」の「糖」とは、ブドウ糖、及び果糖を意味する。また、「不含有」、「糖を含有しない」、「糖を除去する」とは、各糖の前記糖不含有パイナップル抽出物に対する含有量が、0.5質量%以下であることを意味するが、0.2質量%以下が好ましい。
前記ブドウ糖、及び果糖の含有量は、例えば、グルコース/フルクトース分析キット(F−キット(グルコース/フルクトース)、株式会社J.K.インターナショナル製)を用い、キット添付のプロトコールに従って測定することができる。なお、被験試料としては、前記糖不含有パイナップル抽出物を50体積%エタノール水溶液に、サンプル濃度5体積%になるように溶解したものを用いることができる。
【0024】
(ラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、毛乳頭細胞増殖促進剤)
本発明のラミニン−5産生促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明の表皮ヒアルロン酸産生促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明のメラニン産生抑制剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0025】
本発明のラミニン−5産生促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記ラミニン−5産生促進剤中の前記糖不含有パイナップル抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
本発明の表皮ヒアルロン酸産生促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記表皮ヒアルロン酸産生促進剤中の前記糖不含有パイナップル抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記ヒアルロニダーゼ活性阻害剤中の前記糖不含有パイナップル抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
本発明のトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤中の前記糖不含有パイナップル抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
本発明のメラニン産生抑制剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記メラニン産生抑制剤中の前記糖不含有パイナップル抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0030】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物のみからなるものであってもよいし、その他の成分を含むものであってもよい。
前記毛乳頭細胞増殖促進剤中の前記糖不含有パイナップル抽出物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
<その他の成分>
前記糖不含有パイナップル抽出物は、デキストリン、シクロデキストリンなどの薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状などの任意の剤形に製剤化して提供することができ、他の組成物(例えば、経口医薬品等)に配合して使用できる他、軟膏剤、外用液剤、貼付剤などとして使用することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味剤、矯臭剤などを用いることができる。
【0032】
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸などが挙げられる。また、前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられ、前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖などが挙げられ、前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられ、前記矯味剤乃至矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
【0033】
なお、本発明のラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、毛乳頭細胞増殖促進剤は、必要に応じてラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用のいずれかを有する他の天然抽出物などを共に配合して用いることができる。
【0034】
前記ヒラミニン−5産生促進剤は、有効成分として含有される前記糖不含有パイナップル抽出物の作用により、ラミニン−5産生促進作用を発揮する。
前記表皮ヒアルロン酸産生促進剤は、有効成分として含有される前記糖不含有パイナップル抽出物の作用により、表皮ヒアルロン酸産生促進作用を発揮する。
前記ヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、有効成分として含有される前記糖不含有パイナップル抽出物の作用により、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用を発揮する。
前記トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤は、有効成分として含有される前記糖不含有パイナップル抽出物の作用により、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を発揮する。
前記メラニン産生抑制剤は、有効成分として含有される前記糖不含有パイナップル抽出物の作用により、メラニン産生抑制作用を発揮する。
前記毛乳頭細胞増殖促進剤は、有効成分として含有される前記糖不含有パイナップル抽出物の作用により、毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮する。
【0035】
本発明のラミニン−5産生促進剤によると、優れたラミニン−5産生促進作用を通じて、例えば、皮膚の基底膜形成を促進し、シワ、弾力性の低下などの皮膚の老化症状を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のラミニン−5産生促進剤は、これらの用途以外にもラミニン−5産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0036】
本発明の表皮ヒアルロン酸産生促進剤によると、優れた表皮ヒアルロン酸産生促進作用を通じて、例えば、保湿力、弾力性を向上させ、肌荒れ、シワ、弾力性の低下などの皮膚の老化症状を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明の表皮ヒアルロン酸産生促進剤は、これらの用途以外にも表皮ヒアルロン酸産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0037】
本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤によると、優れたヒアルロニダーゼ活性阻害作用を通じて、例えば、ヒアルロン酸の分解を抑制し、ヒスタミン遊離を促進し、保湿の強化を図り、炎症やアレルギーを予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のヒアルロニダーゼ活性阻害剤は、これらの用途以外にもヒアルロニダーゼ活性阻害作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0038】
本発明のトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤によると、優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を通じて、例えば、皮膚表皮のバリア機能を向上させ、肌荒れきめの消失、弾力性の低下等の老化症状を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤は、これらの用途以外にもトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0039】
本発明のメラニン産生抑制剤によると、優れたメラニン産生抑制作用を通じて、例えば、紫外線から皮膚を保護し、皮膚の黒化、シミ等の老化症状を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明のメラニン産生抑制剤は、これらの用途以外にもメラニン産生抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0040】
本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤によると、優れた毛乳頭細胞増殖促進作用を通じて、例えば、毛包上皮系細胞の増殖及び毛髪の分化を促進し、細毛化を予防及び改善することが可能となる。ただし、本発明の毛乳頭細胞増殖促進剤は、これらの用途以外にも毛乳頭細胞増殖促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0041】
本発明のラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、毛乳頭細胞増殖促進剤は、優れた作用を有するとともに、食用とされるパイナップルから得られた抽出物であり、安全性に優れているため、飲食品、皮膚外用剤、及び育毛剤に配合するのに好適である。
【0042】
また、本発明のラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、優れた作用を有するので、ラミニン−5、表皮ヒアルロン酸、ヒアルロニダーゼ、トランスグルタミナーゼ−1、及び毛乳頭細胞の研究や、ヒアルロニダーゼ、ラミニン−5、表皮ヒアルロン酸、トランスグルタミナーゼ−1、メラニン、及び毛乳頭細胞に関連する機能乃至疾患の研究のための試薬として好適に利用できる。
【0043】
なお、本発明のラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0044】
(飲食品)
本発明の飲食品は、本発明の糖不含有パイナップル抽出物、並びにラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤の少なくともいずれかを配合してなり、更に必要に応じてその他の成分を配合してなる。
【0045】
前記飲食品とは、人の健康に危害を加える恐れが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品などの区分に制限されるものではなく、例えば、経口的に摂取される一般食品、健康食品、保健機能食品、美容用食品、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものを意味する。
また、本発明の飲食品は、飲料、ハードカプセル、ソフトカプセル、顆粒などの形状に形態に加工することにより簡便に飲食でき、広範囲に利用することが可能である。
【0046】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料(これら飲料の濃縮液及び調整用粉末を含む。);アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。なお、前記飲食品は上記例示に限定されるものではない。
【0047】
本発明のラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤の前記飲食品に対する添加量としては、添加する飲食品に応じて異なり一概には規定できないが、錠剤、カプセル剤などの場合は、1質量%〜90質量%が好ましく、その他の飲食品では、0.001質量%〜50質量%が好ましい。また、添加対象飲食品の一般的摂取量を考慮して、成人一日当たりの前記糖不含有パイナップル抽出物の摂取量が約1mg〜1,000mg程度になるように調製することが好ましい。
【0048】
前記その他の成分としては、前記飲食品を製造するに当り通常用いられる補助的原料、添加物などが挙げられる。
前記補助的原料乃至添加物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができるが、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L−アスコルビン酸、dl−α−トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤などが挙げられる。
【0049】
本発明の飲食品は、日常的に経口摂取することが可能であり、有効成分である前記パイナップル抽出物の働きによって、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、ラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを極めて効果的に達成することができる。
【0050】
なお、本発明の飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【0051】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤は、本発明の糖不含有パイナップル抽出物、並びにラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤のいずれかを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
ここで、前記皮膚外用剤とは、皮膚に適用される各種の薬剤を意味し、その区分としては特に制限されるものではなく、例えば、皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品などを幅広く含むものである。
前記皮膚外用剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を、その活性を妨げないように任意の皮膚外用剤に配合したものであってもよいし、前記糖不含有パイナップル抽出物を主成分とした皮膚外用剤であってもよい。また、前記皮膚外用剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物そのものであってもよい。
【0052】
前記皮膚外用剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプーなどが挙げられる。
【0053】
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、皮膚外用剤を製造するにあたって通常用いられる成分、例えば、収斂剤、殺菌、抗菌剤、美白剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗老化剤、消炎・抗アレルギー剤、抗酸化剤、活性酸素除去剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。
【0054】
前記皮膚外用剤中の、前記糖不含有パイナップル抽出物、ラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤のいずれかの含有量としては、特に制限はなく、皮膚外用剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記糖不含有パイナップル抽出物の量としては、0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜5質量%がより好ましい。
【0055】
(育毛剤)
本発明の育毛剤は、本発明の糖不含有パイナップル抽出物、並びにラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤のいずれかを含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記育毛剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物を、その活性を妨げないように任意の育毛剤に配合したものであってもよいし、前記糖不含有パイナップル抽出物を主成分とした育毛剤であってもよい。また、前記育毛剤は、前記糖不含有パイナップル抽出物そのものであってもよい。
本発明の育毛剤によると、優れたラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用等を通じて、例えば、乳頭細胞及び毛包上皮系細胞の増殖、毛髪の分化などを促進し、細毛化、脱毛などを予防及び改善するために好適に利用することができる。
なお、本明細書における「育毛剤」とは、毛を発育させること、毛の発育を促進すること、毛の健康状態を保つこと、脱毛を予防すること及び脱毛を低減させることのいずれかの効果を持つ薬剤を意味し、「養毛剤」をも包含する。したがって、本発明の育毛剤は養毛剤としても好適に用いることができる。
【0056】
本発明の育毛剤は、優れた作用を有するとともに、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、頭髪用育毛剤、頭髪化粧料などの皮膚外用剤に配合するのに好適である。前記皮膚外用剤の投与部位としては、例えば、頭髪、頭髪の毛根、頭皮、頭皮の皮脂腺などの頭部が好ましい。前記皮膚外用剤の剤形としては、例えば、軟膏、クリーム、ローション、ゲル、ゾル、スプレー、溶液などが挙げられる。頭髪化粧料としては、例えば、ヘアトニック、ヘアリキッド、シャンプー、ポマード、リンスなどが挙げられる。
【0057】
前記育毛剤中の、前記糖不含有パイナップル抽出物、ラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤のいずれかの含有量としては、特に制限はなく、育毛剤の種類などに応じて適宜選択することができるが、例えば、前記糖不含有パイナップル抽出物の量としては、0.0001質量%〜10質量%が好ましく、0.001質量%〜5質量%がより好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、製造例及び試験例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0059】
(製造例1:糖不含有パイナップル抽出物の製造)
パイナップル可食部の圧搾後の残渣(パイナップルパルプ)、100gを90体積%エタノール1,000mlに加え、還流抽出器で80℃にて2時間加熱抽出し、熱時濾過した。その後、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、さらに同様の濾過処理を行った。得られた残渣について500mlの水で洗浄し、糖質を除去したペースト状の糖不含有パイナップル抽出物1.5gを得た。抽出物の収率は1.5(質量%)であった。
【0060】
得られた糖不含有パイナップル抽出物について、以下の通り成分分析を行った。
前記糖不含有パイナップル抽出物を50体積%エタノールにサンプル濃度20体積%になるように溶解したものを被験試料として用い、グルコース/フルクトース分析キット(F−キット(グルコース/フルクトース)、株式会社J.K.インターナショナル製)によりブドウ糖及び果糖の含有量を測定した。測定の結果、前記糖不含有パイナップル抽出物は、0.03質量%のブドウ糖、0.01質量%の果糖を含有することがわかった。
【0061】
上記の製造例1において得られた糖不含有パイナップル抽出物を被験試料として用い、以下の試験例1〜6に示すとおり、糖不含有パイナップル抽出物に関する美肌、美白及び育毛に関連する評価を行った。
なお、対照パイナップル抽出物として、100%パイナップル果汁(市販パイナップル搾汁物)200mlを、エバポレーターを用いて減圧下で濃縮し、凍結乾燥を行い、得られた26.3gのパイナップル搾汁凍結乾燥物を用いた。該パイナップル搾汁凍結乾燥物0.413g/Lについて、前記糖不含有パイナップル抽出物と同様にブドウ糖及び果糖の含有量を測定した結果、該パイナップル搾汁凍結乾燥物は、29.1質量%のブドウ糖、26.6質量%の果糖を含有することがわかった。
【0062】
(試験例1:ラミニン−5産生促進作用試験)
<試験方法>
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK、倉敷紡績株式会社製)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM、倉敷紡績株式会社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10細胞/mLの濃度になるようにBPE無添加KGM(KGM−BPE、倉敷紡績株式会社製)で希釈した後、24ウェルプレートに1ウェル当たり500μLずつ播種し、2日間培養した。培養終了後、培地を抜き、KGM−BPEで溶解した被験試料を各ウェルに500μL添加し、48時間培養した。培養終了後、上清100μLをELISAプレートに移し換え、37℃で2時間プレートに吸着させた後、溶液を捨て、0.05体積%のTween20を含むリン酸整理緩衝液(0.05%PBS−T、pH7.4)にて洗浄を行った。
その後、1体積%ウシ血清アルブミンを含むリン酸生理緩衝液(pH7.4)で、ブロッキング操作を行った。溶液を捨て、0.05%PBS−Tにて洗浄を行い、抗ヒトラミニン−5抗体(マウスIgG、日本ケミコン株式会社製)を反応させた。溶液を捨て、0.05%PBS−Tにて洗浄を行い、発色反応を行った。得られた測定結果から、下記式によりラミニン−5産生促進率(%)を算出した。
【0063】
ラミニン−5産生促進作用の計算方法は、以下のとおりである。結果を表1に示す。
ラミニン−5産生促進率(%)=A/B×100 ・・・式(1)
[ただし、前記式(1)中、
A:被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度
B:被験試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。]
【0064】
【表1】

【0065】
表1の結果から、糖不含有パイナップル抽出物に、濃度依存的なラミニン−5産生促進作用が認められた。
【0066】
(試験例2:表皮ヒアルロン酸産生促進作用試験)
<試験方法>
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、24時間培養した。培養終了後、KGMで溶解した被験試料を各ウェルに100μL添加し、7日間培養した。培養後、各ウェルの培地中のヒアルロン酸量を、ヒアルロン酸結合タンパク(HABP、生化学バイオビジネス株式会社製)を用いたサンドイッチ法により測定した。
【0067】
ヒアルロン酸産生促進作用の計算方法は、以下のとおりである。結果を表2に示す。
1ウェル当りのヒアルロン酸産生促進率(%)=A/B×100 ・・・式(2)
[ただし、前記式(2)中、
A:被験試料添加時のヒアルロン酸量
B:被験試料無添加時のヒアルロン酸量、を表す。]
【0068】
【表2】

【0069】
表2の結果から、糖不含有パイナップル抽出物に、有意な表皮ヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
【0070】
(試験例3:ヒアルロニダーゼ活性阻害作用試験)
<試験方法>
被験試料を溶解した0.1mol/L酢酸緩衝液(pH3.5)0.2mLにヒアルロニダーゼ溶液(Type IV−S(ウシ精巣由来)、400 NF units/mL;Sigma−Aldrich Japan製)0.1mLを加え、37℃で20分間反応した。さらに、活性化剤として2.5mmol/L塩化カルシウム0.2mLを加え、37℃で20分間反応した。これに0.4mg/mLヒアルロン酸ナトリウム溶液(トリ鶏冠由来ヒアルロン酸ナトリウム、和光純薬工業株式会社製)0.5mLを加え、37℃で40分間反応した。その後、0.4mol/L水酸化ナトリウム0.2mLを加えて反応を止め冷却した後、各反応溶液にホウ酸溶液0.2mLを加え、3分間煮沸した。氷冷後、p−DABA試薬(p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、和光純薬工業株式会社製)6mLを加え、37℃で20分間反応した。その後、波長585nmにおける吸光度を測定した。同様の方法で空試験を行い補正した。
【0071】
ヒアルロニダーゼ活性阻害作用の計算方法は、以下のとおりである。結果を表3に示す。
ヒアルロニダーゼ活性阻害率(%)=
{1−(St−Sb)/(Ct−Cb)}×100 ・・・式(3)
[ただし、前記式(3)中、
St:被験試料溶液の波長585nmにおける吸光度
Sb:被験試料溶液ブランクの波長585nmにおける吸光度
Ct:コントロール溶液の波長585nmにおける吸光度
Cb:コントロール溶液ブランクの波長585nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。]
【0072】
【表3】

【0073】
表3の結果から、糖不含有パイナップル抽出物に、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用が認められた。また、パイナップル搾汁凍結乾燥物には、逆にヒアルロニダーゼ活性を促進する作用があることが確認された。
【0074】
(試験例4:トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用試験)
<試験方法>
ヒト正常新生児皮膚表皮角化細胞(NHEK)を、ヒト正常新生児表皮角化細胞用培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×10細胞/mLの濃度になるようにKGMで希釈した後、96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、2日間培養した。培養終了後、KGMで溶解した被験試料を各ウェルに100μL添加し、24時間培養した。培養後、培地を抜き、細胞をプレートに固定させ細胞表面に発現したトランスグルタミナーゼ−1の量を、モノクローナル抗ヒトトランスグルタミナーゼ−1抗体(Anti−Keratinocyte Transglutaminase、Biomedical Technologies. Inc製)を用いたELISA法により測定した。
【0075】
トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用の計算方法は、以下のとおりである。結果を表4に示す。
トランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)=A/B×100 ・・・式(4)
[ただし、前記式(4)中、
A:被験試料添加時の波長405nmにおける吸光度
B:被験試料無添加時(コントロール)の波長405nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。]
【0076】
【表4】

【0077】
表4の結果から、糖不含有パイナップル抽出物に、有意なトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用が認められた。
【0078】
(試験例5:メラニン産生抑制作用試験)
<試験方法>
B16メラノーマ細胞を10体積%FBS(STANDARD FETAL BOVINE SERUM、HyClone製)含有ダルベッコMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(1)、日水製薬株式会社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を10体積%FBS及び1mmol/Lテオフィリン(Theophylline、和光純薬工業株式会社製)含有ダルベッコMEMで24.0×10細胞/mLの濃度に希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり300μLずつ播種し、6時間培養した。培養終了後、10体積%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMで溶解した被験試料を各ウェルに300μL添加し、4日間培養した。培養終了後、各ウェルから培地を取り除き、2mol/LのNaOH溶液200μLを添加して超音波破砕器により細胞を破壊し、波長475nmにおける吸光度を測定し、メラニン産生量とした。
また、細胞生存率の測定のため、同様に培養後、400μLのPBS(−)リン酸生理緩衝液で洗浄し、終濃度0.05mg/mLで10体積%FBS含有ダルベッコMEMに溶解した13.8mmol/Lニュートラルレッドを各ウェルに200μL添加した。2.5時間培養した後、ニュートラルレッド溶液を捨て、エタノール・酢酸溶液(エタノール:酢酸:水=50:1:49)を各ウェルに200μL添加し、色素を抽出した。抽出後、波長540nmにおける吸光度を測定した。
空試験として、10体積%FBS及び1mmol/Lテオフィリン含有ダルベッコMEMのみで培養した細胞を同様の方法で試験した。
【0079】
メラニン産生抑制作用の計算方法は、以下のとおりである。結果を表5に示す。
メラニン産生抑制率(%)=
{1−(B/D)/(A/C)}×100 ・・・式(5)
[ただし、前記式(5)中、
A:被験試料を添加しない細胞での波長475nmにおける吸光度
B:被験試料を添加した細胞での波長475nmにおける吸光度
C:被験試料を添加しない細胞での波長540nmにおける吸光度
D:被験試料を添加した細胞での波長540nmにおける吸光度、をそれぞれ表す。]
【0080】
【表5】

【0081】
表5の結果から、糖不含有パイナップル抽出物に、対照となるパイナップル搾汁凍結乾燥物よりも強く、濃度依存的なメラニン産生抑制作用が認められた。
【0082】
(試験例6:毛乳頭細胞増殖促進作用試験)
<試験方法>
正常ヒト頭髪毛乳頭細胞(東洋紡績株式会社製)を、毛乳頭細胞増殖培地(東洋紡績株式会社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を、10体積%FBS含有ダルベッコMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(1)、日水製薬株式会社製)を用いて1.0×10細胞/mLの濃度に希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェル当り200μL播種し、3日間培養した。培養後、培地を抜き、無血清DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地(1)、日水製薬株式会社製)に溶解した被験試料を各ウェルに200μL添加し、さらに4日間培養した。毛乳頭細胞増殖作用はMTTアッセイを用いて測定した。培養終了後、培地を抜き、終濃度0.4mg/mLで無血清のDMEMに溶解した3−(4,5−ジメチル-チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド(MTT、株式会社同仁化学研究所製)を各ウェルに100μL添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度(OD570)を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度(OD650)を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。
【0083】
毛乳頭細胞増殖促進作用の計算方法は、以下のとおりである。結果を表6に示す。
毛乳頭細胞増殖促進率(%)=A/B×100 ・・・式(6)
[ただし、前記式(6)中、
A:被験試料添加時のOD570−OD650
B:被験試料無添加時のOD570−OD650、をそれぞれ表す。]
【0084】
【表6】

【0085】
表6の結果から、糖不含有パイナップル抽出物のみに、有意な毛乳頭細胞増殖促進作用が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の糖不含有パイナップル抽出物、ラミニン−5産生促進剤、表皮ヒアルロン酸産生促進剤、ヒアルロニダーゼ活性阻害剤、トランスグルタミナーゼ−1産生促進剤、メラニン産生抑制剤、及び毛乳頭細胞増殖促進剤は、安全性、及び生産性に優れ日常的に摂取可能であり、かつ安価でありながら、優れたラミニン−5産生促進作用、表皮ヒアルロン酸産生促進作用、ヒアルロニダーゼ活性阻害作用、トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用、メラニン産生抑制作用、及び毛乳頭細胞増殖促進作用の少なくともいずれかを有するので、美容用飲食品に配合したり、皮膚外用剤、及び育毛剤に配合したり、研究用の試薬として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイナップル可食部を溶媒により抽出することにより得られ、ブドウ糖、及び果糖を含有しないことを特徴とする糖不含有パイナップル抽出物。
【請求項2】
パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出することにより得られる請求項1に記載の糖不含有パイナップル抽出物。
【請求項3】
溶媒が、70体積%〜100体積%エタノール水溶液である請求項1から2のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物。
【請求項4】
パイナップル可食部を溶媒により抽出し、ブドウ糖、及び果糖を除去することを特徴とする糖不含有パイナップル抽出物の製造方法。
【請求項5】
パイナップル可食部の圧搾後の残渣を溶媒により抽出する請求項4に記載の糖不含有パイナップル抽出物の製造方法。
【請求項6】
溶媒が、70体積%〜100体積%エタノール水溶液である請求項4から5のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするラミニン−5産生促進剤。
【請求項8】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする表皮ヒアルロン酸産生促進剤。
【請求項9】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするヒアルロニダーゼ活性阻害剤。
【請求項10】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするトランスグルタミナーゼ−1産生促進剤。
【請求項11】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とするメラニン産生抑制剤。
【請求項12】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする毛乳頭細胞増殖促進剤。
【請求項13】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項14】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項15】
請求項1から3のいずれかに記載の糖不含有パイナップル抽出物を含有することを特徴とする育毛剤。

【公開番号】特開2012−97008(P2012−97008A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244480(P2010−244480)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(591082421)丸善製薬株式会社 (239)
【Fターム(参考)】