説明

糖化システム、糖化液の製造方法、発酵システム、及び発酵液の製造方法

【課題】糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収できる糖化液の製造方法を提供する。
【解決手段】水13の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス1中のセルロースを酵素11によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応槽3と、糖化液から夾雑物を分離して糖化液を精製する第一の分離装置9と、第一の分離装置9で分離された夾雑物15,16に付着している酵素11を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄装置20と、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化反応槽3に供給するために貯蔵する回収タンク23と、を備える糖化システム100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は糖化システム、糖化液の製造方法、発酵システム、及び発酵液の製造方法に関し、更に詳しくは、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収できる糖化システム、糖化液の製造方法、発酵システム、及び発酵液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車燃料は、石油などの化石資源に依存していたが、化石資源は有限資源であり、代替資源の開発が望まれていた。近年、化石資源に代わる自動車燃料として、例えば、サトウキビ、トウモロコシ、稲わら、木材チップ等の植物資源を原料とするバイオマスから製造されたエタノールを利用する技術が注目を集めている。このようなエタノールの利用は、地球温暖化防止策の一環として今後更に進められることが予想される。
【0003】
しかし、サトウキビやトウモロコシは、食用資源であり、これらの食用資源を工業用資源とすることは、サトウキビやトウモロコシの価格を引き上げ、また、その他の食料の価格も引き上げるという問題などが生じることが懸念されている。そこで、廃棄物系バイオマス、例えば、段ボールや雑誌などの古紙などを有効利用することが注目されている。
【0004】
廃棄物系バイオマスを有効利用する場合において、廃棄物系バイオマスを処理する方法のうち、例えば、セルラーゼなどの酵素を廃棄物系バイオマスに含まれるセルロースに作用させることで、セルロースを加水分解してグルコースなどの糖を得、得られた糖をアルコール発酵や乳酸発酵等の発酵工程に供して有価物を生産する方法が、安全性が高く、用途の幅も広い有効な方法と考えられている。具体的には、セルロース含有物に酵素(セルラーゼ)を加えて、セルロースを加水分解して、加水分解物を得、得られた加水分解物中の、生成した溶解性の糖及び短繊維を含有する糖含有液と、長繊維や夾雑物などの固形分と、を固液分離により分離し、固形分を取り除いた後、溶解性の糖と短繊維のみを更に加水分解してグルコースを得る方法(例えば、特許文献1参照)や、固液分離により溶解性の糖と短繊維のみを得、これらに微生物を追加して、同時糖化発酵させる方法(例えば、特許文献2参照)などが報告されている。
【0005】
ここで、特許文献1及び2に記載された方法には、固液分離により取り除かれた固形分、即ち、長繊維と夾雑物とを廃棄すること以外に、これらを再利用する方法も開示されている。このように固形分を再利用することによって、長繊維のセルロースを糖化の原料として利用することができる。
【0006】
一方、一般的に、酵素は、生成物阻害を引き起こすことが知られている。セルラーゼの場合は、セルロースを分解することによって生成された糖の濃度が3質量%を超えると、単糖化の反応効率が著しく低下する。このような生成物阻害に対して、糖液を濃縮することや、生成された糖を発酵させて発酵液を得たい場合などには、発酵後に発酵液を濃縮することなどの方策が講じられているが、このような方策は濃縮コストが嵩み、生産性が悪いという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2002−176997号公報
【特許文献2】特開2002−186938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された方法では、未分解の長繊維を含む固形分が固液分離により廃棄されてしまうため、生産効率が悪い。そこで、生産効率を向上させるために、この固形分を糖化反応槽に戻した場合は、固形分中の夾雑物がシステム内、特に糖化反応槽内に滞留するため、糖化反応槽の処理能力が低下するという問題があった。また、夾雑物がシステム内に滞留することによって、糖化反応が阻害されるという問題などがあった。また、特許文献1及び2に記載された方法には、セルロースを糖化する酵素を再利用することは開示されていない。酵素を再利用せずに夾雑物とともに廃棄してしまうと、酵素が高価であることに起因してランニングコストが高くなるという問題があった。なお、夾雑物だけを分別して廃棄しようとしても、固液分離された固形分は一般的には湿潤状態であるため、夾雑物は液分を含んでいる。そのため、夾雑物を廃棄すると、夾雑物に含まれる液分中の酵素が、夾雑物に付着した形で失われてしまう。
【0009】
一方、特許文献2に記載された方法のように、糖化反応槽で糖液を得た後に、得られた糖液を発酵させて発酵液を得る場合も、生成物阻害により、糖化反応槽の糖濃度を高濃度にすることは困難である。従って、糖化反応槽に高濃度のセルロースを供給しても、反応時間が非常に長くなるか、未分解の繊維が糖化反応槽内に多量に残り、この未分解の繊維が固液分離により除去されてしまうため、生産効率が悪くなる。即ち、高濃度の発酵液を得ることは困難である。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収できる糖化システム、糖化液の製造方法、発酵システム、及び発酵液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す糖化システム、糖化液の製造方法、発酵システム、及び発酵液の製造方法が提供される。
【0012】
[1]水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応槽と、前記糖化液から前記夾雑物を分離して前記糖化液を精製する第一の分離装置と、前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄装置と、前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を前記糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収タンクと、を備える糖化システム。
【0013】
[2]前記廃棄物系バイオマスが、パルプスラッジ、オフィス古紙、段ボール、雑誌、磁気用紙、感熱紙、アルミ蒸着紙、フィルムコーティング紙、及び、衛生用品廃棄物よりなる群から選択される少なくとも一種である前記[1]に記載の糖化システム。
【0014】
[3]前記第一の分離装置が、比重の違いによって分離する分離装置、大きさの違いによって分離する装置、または、これらの装置を組み合わせた装置である前記[1]または[2]に記載の糖化システム。
【0015】
[4]更に、前記回収タンク内の前記洗浄回収液中の夾雑物を分離する第二の分離装置を備えるものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の糖化システム。
【0016】
[5]前記第一の分離装置によって夾雑物を分離して得られる前記糖化液から、未分解のセルロース及び前記酵素を分離するろ過装置を更に備える前記[1]〜[4]のいずれかに記載の糖化システム。
【0017】
[6]水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程と、前記糖化液から前記夾雑物を分離して前記糖化液を精製する第一の分離工程と、前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を前記糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、を有する糖化液の製造方法。
【0018】
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の糖化システムと、前記糖化システムによって得られた糖化液を発酵する発酵反応タンクと、を備える発酵システム。
【0019】
[8]水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程と、前記糖化液から前記夾雑物を分離して前記糖化液を精製する第一の分離工程と、前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を前記糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、前記第一の分離工程で精製した前記糖化液を発酵反応タンク内で発酵する発酵工程と、を有する発酵液の製造方法。
【0020】
[9]水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得、得られた前記糖化液を発酵して夾雑物を含む発酵液を得る糖化発酵反応工程と、前記糖化発酵液から前記夾雑物を分離して前記糖化発酵液を精製する第一の分離工程と、前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化発酵反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、を有する発酵液の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の糖化システムは、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収できるという効果を奏するものである。
【0022】
本発明の糖化液の製造方法は、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、糖化液を製造することができるという効果を奏するものである。
【0023】
本発明の発酵システムは、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、発酵液を得ることが可能であるという効果を奏するものである。
【0024】
本発明の発酵液の製造方法は、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、発酵液を得ることが可能であるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0026】
[1]糖化システム:
本発明の糖化システムの一実施形態は、例えば、図1に示す糖化システム100のように、水13の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス1中のセルロースを酵素11によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応槽3と、糖化液から夾雑物を分離して糖化液を精製する第一の分離装置9と、第一の分離装置9で分離された夾雑物15,16に付着している酵素11を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄装置20と、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化反応槽3に供給するために貯蔵する回収タンク23と、を備えるものである。
【0027】
このような糖化システム100は、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収できる。なお、本実施形態の糖化システムによって得られる糖化液は、含有する糖を発酵させて、例えばエタノール等を含む発酵液とすることができる。なお、エタノールは石油などの化石資源に代わる新しい資源として有効に利用することができる。
【0028】
[1−1]糖化反応槽:
本実施形態の糖化システムに備えられた糖化反応槽は、水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得るものである。夾雑物を含む糖化液には、溶解性の糖や短繊維、不溶性の未分解の長繊維、及び夾雑物が含まれる。
【0029】
糖化反応槽としては、水の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得られるものである限り特に制限はないが、糖化反応槽は、通常の原料と酵素とを混合攪拌させることができ、酵素反応を促す攪拌反応槽であれば良いが、好ましくは原料となる廃棄系バイオマスの離解を促す離解設備(離解機)を備えるものである。すなわち、糖化反応槽は、有底の円筒状であり、その下部に解離物排出口を有するとともに、内部に離解機を備える装置(以下、「離解処理装置」と記す場合がある)であることが好ましい。離解設備とは、原料を分散、または、せん断する能力の高いものであり、例えば、円筒状の糖化反応槽の中心軸に沿って配置された回転棒とこの回転棒の側面に複数の撹拌羽とを備える撹拌機、有底の円筒状の糖化反応槽の底部に配置された円盤状のディスクとこのディスクに配置された複数の撹拌羽とを備えるローターなどを挙げることができる。酵素反応槽は、離解機を備えることによって、水と廃棄物系バイオマスとをミキシングした際に、廃棄物系バイオマス中の繊維が容易に解れるという利点がある。即ち、廃棄物系バイオマス中のセルロースと夾雑物とを容易に分離することができる。
【0030】
このような離解処理装置としては、具体的には、パルパー、セパレーター、ニーダー等を挙げることができる。パルパーとしては、具体的には、ハイドラパルパー、ローターパルパー、横型パルパー等の低濃度パルパーや、縦型バッチ式パルパー、ドラム型連続式パルパー等の高濃度パルパー等を挙げることができる。これら離解処理装置に類する装置を有する設備を糖化反応槽として用いると、廃棄物系バイオマス中のセルロースと夾雑物とを効果的に分離することができる、なお、セルロースは水分を含むと膨潤するため、酵素によるセルロースの分解が良好に行われ、糖化液を効率良く得ることができる。
【0031】
糖化反応槽は、更に、糖化反応槽内の温度を30〜60℃の範囲内に調整するためのジャケット構造を備えるものであってもよく、冷却管やコイルヒーターを備えるものであってもよい。また、糖化反応槽は、廃棄物系バイオマス、酵素、及び水をそれぞれ貯留する貯留タンクが、各供給配管によって接続されているものであってもよく、更に、各供給配管の途中に、廃棄物系バイオマスの分解状況などに応じて適宜上記各貯留タンクを開閉する開閉弁が配置されているものであってもよい。
【0032】
なお、上記酵素は廃棄物系バイオマスと同時に糖化反応槽に投入してもよいが、別途離解処理装置を用いて、廃棄物系バイオマスをある程度、例えば、回転数80〜500rpmで10〜60分離解処理を行った後で糖化反応槽に投入してもよい。
【0033】
廃棄物系バイオマスは、少なくともセルロースを含んでいれば良い。このような廃棄物系バイオマスは、セルロースなどの繊維分(セルロース系繊維分)以外に、金属、合成樹脂などの夾雑物を含んでいるものである。廃棄物系バイオマスとしては、具体的には、パルプスラッジ、オフィス古紙、段ボール、雑誌、磁気用紙、感熱紙、アルミニウム箔貼合紙(以下、「アルミ貼合紙」と略す)、フィルムコーティング紙、衛生用品廃棄物などを挙げることができる。本実施形態の糖化システムに用いる廃棄物系バイオマスとしては、上述した、パルプスラッジ、オフィス古紙、段ボール、雑誌、磁気用紙、感熱紙、アルミ貼合紙、フィルムコーティング紙、及び、衛生用品廃棄物よりなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。これらのパルプスラッジなどの廃棄物系バイオマスを原料として用いることにより、工業製品として製造されたものを再び工業資源として有効利用することができる。
【0034】
なお、廃棄物系バイオマスに含まれる夾雑物とは、廃棄物系バイオマスに含まれるセルロース以外の成分のうち、水中で固体であるものを意味し、例えば、雑誌や段ボールなどに使用されている粘着剤、フィルムなどの樹脂や、ホチキスの針、酸化鉄などの磁性体、アルミ貼合紙のアルミニウムなどの金属等を挙げることができる。このような夾雑物が糖化反応槽内に蓄積して夾雑物の比率が高くなると、攪拌が困難になることなどに起因して糖化反応が進み難くなるばかりでなく、夾雑物の種類によっては糖化反応自体を阻害することもある。そのため、廃棄物系バイオマスから高い収率で糖化液を得るためには、糖化液を得る際に夾雑物を除去する必要がある。
【0035】
廃棄物系バイオマスの使用割合は、水と廃棄物系バイオマスとの合計量に対して、3〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましい。上記使用割合が3質量%未満であると、セルロース濃度が低くなりすぎて、糖化液や発酵液の濃度が低くなり、目的の生産物(糖や発酵液)の回収及び濃縮が効率的に行われず、高コストになるおそれがある。一方、30質量%超であると、酵素が廃棄物系バイオマス全体に行渡らず、夾雑物の分離が不十分になるおそれがある。
【0036】
酵素は、少なくともセルラーゼを含むものであり、廃棄物系バイオマスを分解して、糖化液を得ることができるものである限り特に制限はなく、夾雑物の存在によって酵素活性が左右され難いものが好ましい。このような酵素は、廃棄物系バイオマスの処理条件に応じて、それぞれのpH及び温度に適した条件で作用する酵素を選択することが好ましい。
【0037】
酵素としては、例えば、反応溶液がpH4〜5の酸性領域では、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム属(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス属(Trametes)などに由来するセルラーゼ製剤を使用することができる。pH6〜7の中性領域では、フーミコラ(Humicola)属などに由来するセルラーゼ製剤を使用することができる。pH8以上のアルカリ領域では、バチルス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤を使用することができる。このようなセルラーゼ製剤の市販品としては、全て商品名で、例えば、「セルロイシンT2」(エイチピィアイ社製)、「メイセラーゼ」(明治製菓社製)、「ノボザイム188」(ノボザイム社製)、「マルティフェクトCX10L」(ジェネンコア社製)等を挙げることができる。
【0038】
また、セルラーゼ製剤には、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼなどのセルロース分解酵素の他、キシラン分解酵素、マンナン分解酵素、ペクチン分解酵素、アラビナン分解酵素などの一連のヘミセルロース分解酵素のうちから選ばれる少なくとも一つの酵素を含むことが好ましい。例えば、広葉樹に由来する材料を多く含む廃棄物系バイオマスを使用する場合には、キシラナーゼ、キシロシダーゼなどのキシラン分解酵素を含むセルラーゼ製剤が好ましく、針葉樹に由来する材料を多く含む廃棄物系バイオマスを使用する場合には、マンナナーゼなどのマンナン分解酵素を含むセルラーゼ製剤が好ましい。更に、廃棄物系バイオマスには、澱粉などが含まれていることもあることため、上記酵素はアミラーゼなどを含んでいても良い。
【0039】
酵素の使用割合は、廃棄物系バイオマス1gに対して、後述するFPUの活性測定法により測定したときの値が、10〜500FPUになるように設定することが好ましく、30〜300FPUになるように設定することが更に好ましい。上記使用割合が10FPU未満であると、セルロースの加水分解が不十分となり、糖収率が低下するおそれがある。一方、500FPU超であると、夾雑物に付着する酵素が増えてしまい、回収が不十分となり、生産コストが高まるおそれがある。
【0040】
ここで、本明細書において「FPU活性」は、以下のFPUの活性測定法によって測定した値である。まず、濾紙(ワットマン社製の「No.1」)50mgを基質とし、これに酵素液0.5mlとクエン酸緩衝液(pH4.8、0.05M)1.0mlとを加え、50℃で1時間酵素反応を行う。その後、ジニトロサリチル酸試薬3.0mlを加え、100℃で5分間加熱し発色させる。冷却後、これにイオン交換水または蒸留水20mlを加え、540nmの波長で比色定量する。1分間に1μmolのグルコースに相当する還元糖を生成する酵素量を1ユニット(FPU)とした。
【0041】
セルロースを酵素によって加水分解して糖を得る条件は、例えば、pH4〜7、30〜55℃、5〜72時間の条件とすることができる。
【0042】
pHは、上述したように、4〜7であることが好ましく、4.5〜5.5が更に好ましい。上記pHが4未満であると、酵素が酸変性し、失活するおそれがある。一方、7超であると、酵素活性が低く、糖収率が低下するおそれがある。温度は、上述したように、30〜55℃であることが好ましく、35〜50℃であることが更に好ましい。上記温度が30℃未満であると、酵素活性が低い状態にあるため、糖収率が低下するおそれがある。一方、60℃超であると、酵素が温度変性し、失活するおそれがある。また、反応時間は、上述したように、5〜72時間であることが好ましく、15〜48時間であることが更に好ましい。上記反応時間が5時間未満であると、セルロースの加水分解が不十分になるおそれがある。また、夾雑物の分離が不十分になるおそれがある。一方、72時間超であると、糖濃度が高くなるため、糖化反応速度が低下するおそれがある。そのため、糖の収率に対して製造コストが嵩むという問題が発生するおそれがある。
【0043】
ここで、本明細書において「糖化液」とは、水の存在下で、廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって加水分解して得られる、溶解性の糖、溶解性の短繊維、及び、不溶性の未分解の長繊維を含有するものを意味する。
【0044】
[1−2]第一の分離装置:
本実施形態の糖化システムに備えられた第一の分離装置は、夾雑物を含む糖化液から夾雑物を分離して糖化液を精製するものである。即ち、第一の分離装置によって夾雑物を除去して、高い純度の糖化液(溶解性の糖、溶解性の短繊維、及び、不溶性の未分解の長繊維を含有する液)を得ることができる。糖化液を発酵する場合、夾雑物が混入していると、発酵が阻害されることがあるため、第一の分離装置で夾雑物を除去することによって、夾雑物による発酵の阻害を防止することができる。
【0045】
第一の分離装置は、夾雑物を含む糖化液から、夾雑物を分離することができるものであれば特に制限はないが、比重の違いによって分離する装置(以下、「比重差分離装置」と記す場合がある)、大きさの違いによって分離する装置(以下、「サイズ差分離装置」と記す場合がある)、または、これらの装置を組み合わせた装置であることが好ましい。なお、第一の分離装置として、サイズ差分離装置と比重差分離装置とを組み合わせた装置を用いる場合、例えば、図1に示すように、サイズ差分離装置、比重差分離装置の順に配置することが好ましい。即ち、糖化反応槽3にサイズ差分離装置4を接続し、このサイズ差分離装置4に比重差分離装置5を接続することが好ましい。なお、サイズ差分離装置4及び比重差分離装置5は、それぞれ、不溶性の未分解の長繊維と、溶解性の糖や短繊維とを含む糖化液を排出する糖化液排出口と、夾雑物を排出する夾雑物排出口とが形成されているものを用いることが好ましい。
【0046】
比重の違いによって分離する装置(比重差分離装置)としては、例えば、液体サイクロン等を挙げることができる。液体サイクロンは、遠心力を利用して比重差によって分離することができるものである。液体サイクロンとしては、例えば、重量クリーナー、軽量クリーナーなどを挙げることができる。重量クリーナーは、夾雑物を含む糖化液のうち、砂やホチキスの針等の比重の重い夾雑物(固形分)を分離除去することができるものであり、特にアルミニウム等の金属などの比重の重いものを分離することができる。このような重量クリーナーを配置することによって、廃棄物系バイオマス(夾雑物を含む糖化液)中に比重が重く、大きめの夾雑物が含まれている場合であっても、軽量クリーナーのみを用いる場合に比べて、分離装置(第一の分離装置)を傷つけ難いという利点がある。軽量クリーナーは、不溶性の未分解の長繊維よりも比重が重く、砂やホチキスの針等よりも比重が軽いもの、例えば、発泡スチロールやビニールなどを分離することができる。液体サイクロンなどによる処理方法としては、連続式が好ましい。なお、複数のクリーナーを用いる場合、軽量クリーナーは、分離装置中の最後に配置することが好ましい。
【0047】
大きさの違いによって分離する装置(サイズ差分離装置)としては、例えば、遠心力型ドラムスクリーン、遠心力型加圧スクリーン、バグフィルターなどを挙げることができる。本実施形態の糖化システムは、上記スクリーンなどの、大きさの違いによって分離する装置を複数配置することが好ましい。具体的には、まず、発泡スチロール、硬質のプラスティック、アルミ箔、フィルム、金属、紐などを除去するため、目の大きさが2〜50mmのスクリーンを用い、次に、目の大きさが0.1〜2mmのスクリーンを用いることが好ましい。このように多段階で分離処理をすることによって、夾雑物を含む糖化液の固形分のうち夾雑物を選択的に効率良く分離することができる。なお、分離処理は連続的に行うことが好ましい。
【0048】
例えば、バケットスクリーンを備えた離解処理装置(例えば、パルパー)などは、糖化反応槽としての機能とサイズ差分離装置としての機能とを備えるものである。
【0049】
なお、粘着剤、フィルムなどの樹脂やホチキスの針などの金属の夾雑物が多く含まれる廃棄物系バイオマスを原料として用いる場合には、第一の分離装置が詰まってしまうなどの問題を発生させないために、まず、目が大きめのサイズ差分離装置を配置し、次に、上記サイズ差分離装置に接続した比重差分離装置、例えば、後述する重量クリーナーを配置することが好ましい。このような重量クリーナーを配置することによって、廃棄物系バイオマス(夾雑物を含む糖化液)中に大きめの重量の夾雑物が含まれている場合であっても、軽量クリーナーのみを用いる場合に比べて、分離装置(第一の分離装置)を傷つけ難いという利点がある。
【0050】
図1に示すように、第一の分離装置9は、サイズ差分離装置4と、このサイズ差分離装置4に接続された比重差分離装置5とを備え、サイズ差分離装置4によって比較的大きめの夾雑物15が分離され、比重差分離装置5によって大きめの重量の夾雑物16が分離される。そして、これらの夾雑物15,16は、後述する洗浄装置20によって洗浄される。
【0051】
[1−3]洗浄装置:
本実施形態の糖化システムに備えられた洗浄装置は、第一の分離装置で分離された夾雑物に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流すものである。このような洗浄装置により夾雑物に付着していた酵素などの付着物を洗い流した後、洗い流された酵素を含む洗浄回収液を回収することによって、夾雑物とともに付着物、特に酵素が廃棄されてしまうことを防止することができる。そのため、糖化システムのランニングコストを低減することができる。
【0052】
洗浄装置としては、例えば、第一の分離装置(複数配置している場合には、最も下流側に配置されているもの(図1では比重差分離装置5))の排出口に接続された排出配管の先端部の下方に配置され、第一の分離装置で分離された夾雑物を貯める洗浄用スクリーンと、この洗浄用スクリーンの上方に位置し、その開口端を洗浄用スクリーンに向けて配置した、夾雑物に洗浄液を放出する洗浄ノズルと、この洗浄ノズルに接続された配管が接続され、洗浄液を貯めておく洗浄液用タンクと、洗浄ノズル及び洗浄液用タンクを接続する上記配管の途中に配置された、洗浄液用タンク内の洗浄液を送液するためのポンプと、を備えるものを用いることができる。
【0053】
洗浄用スクリーンの形状は、有底の円筒状、半球状、平板状、ドラム状などを挙げることができる。また、洗浄用スクリーンに形成された孔の形状は、円形、楕円形、三角形、四角形、多角形、スリットなどを挙げることができる。また、洗浄用スクリーンに形成された孔の大きさは、先に分離装置として用いられたスクリーンよりもその孔の大きさが小さいものが好ましい。ここでは、未分解の長繊維と夾雑物を分離する必要がないため、夾雑物と酵素が含まれた液分との分離が行われれば良く、第一の分離装置で分離された夾雑物が液分に混入しないように、更に細かな孔を有するスクリーンを用いることが好ましい。なお、洗浄装置としては、沈殿槽や遠心分離機、スクリュープレス、ベルトプレス、傾斜エキストラクターなど、通常の固液分離装置や脱水に用いられる設備を使用することができる。これらの設備を使用する場合は、夾雑物をタンクに投入して、洗浄水を添加した後に混合し、上記固液分離装置または脱水装置を用いることで、夾雑物と、酵素を含む液分と、を容易に分離することができる。
【0054】
付着物を洗い流す条件としては特に制限はないが、例えば、洗浄液として、温度15〜50℃の滅菌水を、固形分量の2〜10倍程度の量で使用することができる。この洗浄液によって洗浄、脱水された後の夾雑物は、そのまま地中に埋めても良いし、焼却廃棄しても良い。
【0055】
[1−4]回収タンク:
本実施形態の糖化システムに備えられた回収タンクは、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化反応槽に供給するために貯蔵するものである。回収タンクとしては、例えば、その開口部が上記洗浄装置の洗浄用スクリーンの下方に位置するように配置することができる。このように配置することによって、洗浄用スクリーンを通過した付着物を容易に回収することができる。本実施形態の糖化システムは、この回収タンクに貯蔵された洗浄回収液を糖化反応槽に供給することによって、第一の分離装置において、夾雑物とともに分離されてしまった酵素などの付着物を再利用することができる。そのため、糖化システムのランニングコストを低減させることができる。
【0056】
[1−5]その他の装置:
本実施形態の糖化システムは、糖化反応槽、第一の分離装置、及び、回収タンク以外に、殺菌装置を備えることもできる。例えば、図1に示すように、殺菌装置2は、糖化反応槽3に投入する前の廃棄物系バイオマス1を殺菌するものである。このよう糖化反応槽で処理する前に廃棄物系バイオマスを殺菌することによって、廃棄物系バイオマスに付着している雑菌によって糖化液中の糖が消費されてしまうことを防止することができる。
【0057】
殺菌装置における殺菌方法は、特に制限はなく、廃棄物系バイオマスを酸やアルカリに晒す方法、廃棄物系バイオマスを高温雰囲気下に晒す方法、これらの方法を組み合わせた方法などを挙げることができる。なお、酸またはアルカリに晒す方法を用いて殺菌を行う場合、殺菌後は、糖化反応槽で用いる酵素を失活させないpH、例えば、弱酸性付近に調整することが好ましい。また、廃棄物系バイオマスを高温雰囲気下に晒す方法を用いて殺菌を行う場合、殺菌後は、糖化反応槽で用いる酵素を失活させない温度、例えば、室温にすることが好ましい。殺菌装置としては、具体的には、乾熱殺菌機、スチーム殺菌装置などを挙げることができる。
【0058】
本実施形態の糖化システムは、更に、回収タンク内の洗浄回収液中の夾雑物を分離する第二の分離装置を備えることができる。このような第二の分離装置によって、夾雑物に付着している付着物を洗浄液で洗い流した際に、洗浄回収液中に夾雑物が混入した場合であっても、混入した夾雑物を分離することができるため、夾雑物を糖化反応槽に供給してしまうことを防止することができる。また、第一の分離装置によって比較的大きい夾雑物を分離し、第二の分離装置によって更に小さい夾雑物を分離したり、第一の分離装置でサイズによる分離を行い、第二の分離装置で比重による分離を行うような態様が可能である。このように段階的に夾雑物を分離することによって分離効率を向上させることができる。
【0059】
例えば、図1に示す本実施形態の糖化システム100は、第二の分離装置として、回収タンク23の排出口に接続したサイズ差分離装置21と、このサイズ差分離装置21に接続した比重差分離装置22と、を備え、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を貯蔵する回収タンク23内の洗浄回収液をサイズ差分離装置21によって大きさの小さい夾雑物24を分離し、比重差分離装置22によって比重の小さい夾雑物25を分離する。その後、夾雑物24,25が分離された洗浄回収液を糖化反応槽3に供給し、洗浄回収液に含まれる酵素などを再利用することができる。なお、サイズ差分離装置21の洗浄回収液排出口は比重差分離装置22の供給口に接続されており、比重差分離装置22の洗浄回収液排出口は糖化反応槽3の洗浄回収液供給口に接続されている。
【0060】
第二の分離装置としては、例えば、上述した第一の分離装置と同様の比重差分離装置やサイズ差分離装置を用いることができる。なお、第二の分離装置としてサイズ差分離装置を用いる場合、使用するスクリーンは、第一の分離装置で使用するサイズ差分離装置のスクリーンの孔径よりも小さい孔径を有するものが好ましい。具体的には、その形状が円形である場合、直径が0.01〜1mmであることが好ましく、0.02〜0.5mmであることが更に好ましい。
【0061】
また、本実施形態の糖化システムは、第一の分離装置によって夾雑物を分離して得られる(精製される)糖化液から、未分解のセルロース(未分解の長繊維)及び酵素を分離するろ過装置を更に備えることが好ましい。このようなろ過装置によって糖化液から未分解のセルロース及び酵素を分離し、糖化反応槽に供給することによって、セルロースの廃棄ロスを減らし、システム内を循環させることによりセルロースの滞留時間を長くすることで、糖化率を高めて糖収率を向上させることができる。即ち、夾雑物は取り除きながら未分解の長繊維などの不溶性成分は除去することなく利用し、原料を有効使用して糖化反応及び/または糖化発酵反応の生産性を高めることができる。
【0062】
ろ過装置としては、例えば、図1に示すように、精密ろ過装置6、限外ろ過装置7の順に配置したろ過装置10を用いることが好ましい。即ち、精密ろ過装置6は、その供給口が、比重差分離装置5の糖化液排出口に接続されており、精密ろ過装置6の糖化液排出口は限外ろ過装置7の供給口が接続されている。精密ろ過装置6は、未分解のセルロース14をろ別することができ、限外ろ過装置7は酵素17をろ別することができる。精密ろ過装置としては、例えば、ノリタケ社製の商品名「セラミックフィルター」、日本ポール社製の商品名「メンブラロックス」、旭化成社製の商品名「マイクローザMF」などを用いることができる。限外ろ過装置としては、例えば、旭化成社製の商品名「マイクローザUF膜」、日東電工社製の商品名「キャピラリー型UFエレメント」などを用いることができる。精密ろ過装置及び限外ろ過装置のろ過膜としては、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、平膜などを挙げることができる。精密ろ過装置6及び限外ろ過装置7によってろ別されたセルロース14及び酵素17は、糖化反応槽3に供給する。
【0063】
[2]糖化液の製造方法:
本発明の糖化液の製造方法の一の実施形態は、水の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程と、糖化液から夾雑物を分離して糖化液を精製する第一の分離工程と、第一の分離装置で分離された夾雑物に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、を有するものである。
【0064】
このような製造方法によって、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、糖化液を製造することができる。
【0065】
本実施形態の糖化液の製造方法は、各工程を連続的に行う連続式であってもよく、各工程を回分的に行うバッチ式であってもよい。
【0066】
[2−1]糖化反応工程:
本実施形態の糖化液の製造方法は、まず、水の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程を行う。糖化反応工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えられる糖化反応槽を好適に用いることができる。なお、離解機を備える糖化反応槽を用いる場合、離解機の回転数80〜500rpm(好ましくは150〜400rpm)で、5〜72時間(好ましくは10〜48時間)離解処理を行うことが好ましい。
【0067】
[2−2]第一の分離工程:
次に、本実施形態の糖化液の製造方法は、糖化液から夾雑物を分離して不溶性の未分解の長繊維と、溶解性の糖や短繊維と、を含む糖化液を精製する第一の分離工程を行う。このような第一の分離工程によって、廃棄物系バイオマスに含まれていた粘着剤、フィルムなどの樹脂や、ホチキスの針、磁性体、アルミニウムなどの金属等の夾雑物を除去することができるため、純度の高い糖化液を得ることができる。第一の分離工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えられる第一の分離装置を好適に用いることができる。なお、サイズ差分離装置としてスクリーンを用いる場合、孔径が0.15〜1.4mmのスクリーンを用い、2段または3段の多段処理で分離することが好ましい。
【0068】
[2−3]洗浄工程:
次に、本実施形態の糖化液の製造方法は、第一の分離装置で分離された夾雑物に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程を行う。このように夾雑物に付着していた酵素などの付着物を洗い流すことによって、夾雑物とともに付着物、特に酵素が廃棄されてしまうことを防止することができ、ランニングコストを低減させることができる。洗浄工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えられる洗浄装置を好適に用いることができる。
【0069】
[2−4]回収工程:
次に、本実施形態の糖化液の製造方法は、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程を行う。この回収タンクに貯蔵された洗浄回収液を糖化反応槽に供給することによって、夾雑物とともに分離された酵素などを再利用することができるため、ランニングコストを低減することができる。回収工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えられる回収タンクを好適に用いることができる。
【0070】
[2−5]その他の工程:
本実施形態の糖化液の製造方法は、糖化反応工程、第一の分離工程、洗浄工程、及び回収工程以外に、糖化反応工程の前に、廃棄物系バイオマスを殺菌する殺菌工程を行ってもよい。このように糖化反応槽で廃棄物系バイオマスを処理する前に殺菌することによって、廃棄物系バイオマスに付着している雑菌に起因して糖化液中の糖が消費されてしまうことを防止することができる。殺菌工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えることのできる殺菌装置を好適に用いることができる。なお、殺菌方法は、本発明の糖化システムの殺菌装置による殺菌方法と同様の方法によって行うことができる。
【0071】
本実施形態の糖化液の製造方法は、更に、回収工程によって得られる洗浄回収液中の夾雑物を分離する第二の分離工程を有することができる。このような第二の分離工程によって、夾雑物に付着している付着物を洗浄液で洗い流した際に、洗浄回収液中に夾雑物が混入した場合であっても、混入した夾雑物を分離することができるため、夾雑物が糖化反応工程に戻ってしまうことを防止することができる。また、第一の分離工程によって比較的大きい夾雑物を分離し、第二の分離工程によって更に小さい夾雑物を分離するような態様が可能である。このように段階的に夾雑物を分離することによって分離効率を向上させることができる。第二の分離工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えることのできる第二の分離装置を好適に用いることができる。
【0072】
本実施形態の糖化液の製造方法は、更に、第一の分離工程で得られた糖化液から、未分解のセルロース及び酵素を分離するろ過工程を更に有することが好ましい。このようなろ過工程を行って糖化液から未分解のセルロース及び酵素を分離し、分離した未分解のセルロースを糖化反応工程に戻すことによって、セルロースの廃棄ロスを減らすとともに、循環させることによりセルロースの滞留時間を長くすることができる。そのため、糖化率を高めて糖含有量の高い糖化液を得ることができる。また、分離した酵素を糖化反応工程に戻すこと、即ち、酵素を再利用することによって、ランニングコストを低減することができる。ろ過工程を行うための装置としては、例えば、本発明の糖化システムに備えることのできるろ過装置を好適に用いることができる。
【0073】
[3]発酵システム:
本発明の発酵システムの一の実施形態は、本発明の糖化システム(即ち、糖化反応槽、第一の分離装置、洗浄装置、回収タンク、及び、必要に応じてその他の装置)と、この糖化システムによって得られた糖化液を発酵する発酵反応タンクと、を備えるものである。このような発酵システムによれば、発酵液を収率良く得ることができる。
【0074】
例えば、図2に示す発酵システム101は、水13の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス1中のセルロースを酵素11によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応槽3と、糖化液から夾雑物15,16を分離して糖化液を精製する第一の分離装置9と、第一の分離装置9で分離された夾雑物15,16を洗浄液で洗浄する洗浄装置20と、夾雑物を洗浄した洗浄液を回収し、糖化反応槽3に供給する回収タンク23と、糖化液を発酵する発酵反応タンク27と、を備えるものである。
【0075】
[3−1]発酵反応タンク:
本実施形態の発酵システムに備えられる発酵反応タンクは、本発明の糖化システムによって得られた糖化液を発酵するものである。このような発酵反応タンクによって、収率良く発酵液を得ることができる。発酵反応タンクとしては、本発明の糖化システムに備えられた糖化反応槽と同様のものを好適に用いることができる。図2は、比重差分離装置5(第一の分離装置9)で夾雑物15,16が分離されて精製された糖化液を発酵反応タンク27に供給するとともに、この発酵反応タンク27に糖化液を発酵するための微生物18と、培地29とを投入することを示している。即ち、発酵反応タンク27は、その供給口が、比重差分離装置5の糖化液排出口に接続されており、発酵反応タンク27の発酵液排出口には機密ろ過装置6の供給口が接続されている。
【0076】
なお、発酵反応タンクには、糖化反応槽から糖以外に、糖化液に含まれる不溶性の未分解セルロース(未分解の長繊維)や溶解性の短繊維、及び酵素も搬送される。そのため、発酵反応タンク内においても、未分解のセルロース(未分解の長繊維)の分解が可能である。
【0077】
ここで、糖化液の発酵は、酵母や乳酸菌などの微生物によって行うことができ、具体的には、酵母として、「Issatchenkia orientalis」、「Saccharomyces serevulishiae」、真菌類として「リゾプス・オリザエ(Rizopus oryzae)」などを用いることができる。なお、糖化液の発酵に際し、上記微生物以外に、培地成分などを添加することができる。培地としては、例えば、YM培地、CSL培地などを挙げることができる。培地を添加することによって、発酵反応を促進させることができる。
【0078】
酵母や乳酸菌などの微生物の使用割合は、廃棄物系バイオマスに対して、1×10〜1×1010個/mlであることが好ましく、1×10〜1×10個/mlであることが更に好ましい。上記使用量が1.0×10個/ml未満であると、糖化に対して発酵の速度が追いつかず、生産性を低下させるおそれがある。一方、1.0×1010個/ml超であると、微生物の密度が高すぎて、栄養分が十分に行き渡らず、生産性が低下するおそれがある。
【0079】
糖化液を発酵させる条件は、微生物によって糖化液を発酵させることができれば特に制限はなく公知の条件で行うことができるが、例えば、25〜45℃で15〜120時間とすることができる。
【0080】
[3−2]その他の装置:
本実施形態の発酵システムは、回収タンク内の洗浄回収液中の夾雑物を分離する第二の分離装置を更に備えることができる。このような第二の分離装置によって、夾雑物に付着している付着物を洗浄液で洗い流した際に、洗浄回収液中に夾雑物が混入した場合であっても、混入した夾雑物を分離することができるため、夾雑物を糖化反応槽に供給してしまうことを防止することができる。本実施形態の発酵システムに備えられる第二の分離装置としては、本発明の糖化システムに備えられる第二の分離装置と同様のものを用いることができる。
【0081】
また、本実施形態の発酵システムは、発酵反応タンクで得られた発酵液から、発酵に用いた微生物、未分解のセルロース及び酵素を分離するろ過装置を更に備えることが好ましい。このようなろ過装置によって発酵液から、発酵に用いた微生物、未分解のセルロース及び酵素を分離し、分離した微生物及び未分解のセルロースを発酵反応タンクに供給することによって、微生物を再利用することができるとともに、セルロースの廃棄ロスを減らすことができ、システム内を循環させることによりセルロースの滞留時間を長くすることができる。従って、糖化率を高めて発酵液収率を高めることができる。また、分離した酵素を糖化反応槽、発酵反応タンク、またはこれらの両方に供給することによって、即ち、酵素を再利用することによって、ランニングコストを低減することができる。本実施形態の発酵システムに備えられるろ過装置としては、本発明の糖化システムに備えられるろ過装置と同様のものを用いることができる。
【0082】
図2は、精密ろ過装置6、限外ろ過装置7の順にろ過装置を配置し、精密ろ過装置6の供給口が発酵反応タンクの排出口に接続され、精密ろ過装置6の排出口が限外ろ過装置7の供給口に接続されていることを示し、発酵反応タンク27で得られた発酵液から、精密ろ過装置6を用いて微生物18及び未分解のセルロース14をろ別し、限外ろ過装置7を用いて酵素17をろ別することによって、微生物18、未分解のセルロース14、及び酵素17が分離された発酵液8を得ることを示している。なお、ろ別した微生物18及び未分解のセルロース14は、発酵反応タンク27に供給して再利用することができ、ろ別した酵素17は、糖化反応槽3及び/または発酵反応タンク27に供給して再利用することができる。
【0083】
[4]発酵液の製造方法:
本発明の発酵液の製造方法は、上述した一の実施形態の発酵システムを用いた発酵液の製造方法であり、水の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程と、糖化液から夾雑物を分離して糖化液を精製する第一の分離工程と、第一の分離装置で分離された夾雑物に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、第一の分離工程で精製した糖化液を発酵反応タンク内で発酵する発酵工程と、を有する方法である。このような製造方法であると、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、発酵液を良好に得ることができる。
【0084】
糖化反応工程、第一の分離工程、洗浄工程、及び回収工程は、上述した糖化液の製造方法における、糖化反応工程、第一の分離工程、洗浄工程、及び回収工程と同様の条件で、同様の装置を用いて行うことができる。
【0085】
発酵工程は、第一の分離工程で精製した糖化液を、既に上述した発酵反応タンク内で発酵する工程であり、糖化液を発酵させる条件は、既に上述した条件である。
【0086】
本実施形態の発酵システムを用いた発酵液の製造する方法は、糖化反応工程、第一の分離工程、洗浄工程、回収工程、及び、発酵工程以外に、上述した糖化液の製造方法で行うことができる、殺菌工程、及び、第二の分離工程を行ってもよい。
【0087】
[5]発酵システム:
本発明の発酵システムの別の実施形態は、例えば、図3に示すように、水13の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス1中のセルロースを酵素11によって分解して糖化液を得、得られた糖化液を発酵して夾雑物を含む発酵液を得る糖化発酵反応タンク28と、発酵液から夾雑物15,16を分離して発酵液を精製する第一の分離装置9と、第一の分離装置9で分離された夾雑物15,16に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄装置20と、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化発酵反応タンク28に供給するために貯蔵する回収タンク23と、を備える発酵システム102である。このような発酵システムは、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、発酵液を得ることができる。
【0088】
[5−1]糖化発酵反応タンク:
本実施形態の発酵システムに備えられる糖化発酵反応タンクは、図3に示すように、水13の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス1中のセルロースを酵素11によって分解して糖化液を得、得られた糖化液を発酵して夾雑物を含む発酵液を得るものであり、糖化液を発酵するために微生物18及び培地29が加えられるものである。
【0089】
このように糖化と発酵とを同じタンク内で行うことによって、別途発酵装置を設ける必要がないという利点がある。また、糖化のみを別工程で行うと、即ち、糖化と発酵を別の装置で行うと、糖化で生成した糖によって糖化反応装置内の酵素が生成物阻害を受ける。即ち、分解後の物質にも酵素は結合できるために、分解すべき物質への結合の頻度が減る。従って、糖濃度が高くなるにつれて、糖化速度が低下してしまう傾向がある。一方、糖化と発酵を同時に行う糖化発酵反応タンクを用いると、糖化で生成した糖は、微生物によって順次発酵物に変換されるために、酵素が生成物阻害を受けず、糖化速度は常に最速の状態が維持され、発酵物の生産性を高く維持することができる。
【0090】
本実施形態の発酵システムに備えられる糖化発酵反応タンクとしては、本発明の糖化システムに備えられる糖化反応槽と同様のものを好適に用いることができる。
【0091】
糖化液の発酵は、上述した本発明の発酵システムの一の実施形態と同様の微生物及び培地を用い、同様の条件で行うことができる。
【0092】
なお、本発明の糖化システムと同様に、離解機を備える糖化発酵反応タンクを用いる場合、上記微生物は廃棄物系バイオマスと同時に糖化発酵反応タンクに投入してもよいし、廃棄物系バイオマスをある程度、例えば、回転数80〜500rpmで10〜60分離解処理を行った後で糖化発酵反応タンクに投入してもよい。
【0093】
なお、廃棄物系バイオマス、及び酵素としては、本発明の糖化システムに用いることができる廃棄物系バイオマス、及び酵素と同様のものを用いることができる。
【0094】
[5−2]第一の分離装置:
本実施形態の発酵システムに備えられる第一の分離装置は、発酵液から夾雑物を分離して発酵液を精製するものである。このような第一の分離装置によって、廃棄物系バイオマスに含まれる粘着剤、フィルムなどの樹脂や、ホチキスの針、磁性体、アルミニウムなどの金属等の夾雑物を除去すると、高い純度の糖化液を得ることができ、また、夾雑物の濃度が高まることによって発酵が阻害されることを防止することができる。本実施形態の発酵システムに備えられる第一の分離装置としては、本発明の糖化システムに備えられる第一の分離装置と同様のものを用いることができる。
【0095】
[5−3]洗浄装置:
本実施形態の発酵システムに備えられる洗浄装置は、第一の分離装置で分離された夾雑物に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流すものである。このように夾雑物に付着していた酵素などの付着物を洗い流すことによって、夾雑物とともに付着物、特に酵素が廃棄されてしまうことを防止することができ、ランニングコストを低減させることができる。本実施形態の発酵システムに備えられる洗浄装置としては、本発明の糖化システムに備えられる洗浄装置と同様のものを用いることができる。
【0096】
[5−4]回収タンク:
本実施形態の発酵システムに備えられた回収タンクは、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化発酵反応タンクに供給するために貯蔵するものである。この回収タンクに貯蔵された洗浄回収液を糖化発酵反応タンクに供給することによって、夾雑物とともに分離された酵素などを再利用することができるため、ランニングコストを低減することができる。
【0097】
[5−5]その他の装置:
本実施形態の発酵システムは、回収タンク内の洗浄回収液中の夾雑物を分離する第二の分離装置を更に備えることができる。このような第二の分離装置によって、夾雑物に付着している付着物を洗浄液で洗い流した際に、洗浄回収液中に夾雑物が混入した場合であっても、混入した夾雑物を分離することができるため、夾雑物を糖化発酵反応タンクに供給してしまうことを防止することができる。また、第一の分離装置によって比較的大きい夾雑物を分離し、第二の分離装置によってより小さい夾雑物を分離するような態様が可能であり、このように段階的に夾雑物を分離することによって分離効率を向上させることができる。本実施形態の発酵システムに備えられる第二の分離装置としては、本発明の糖化システムに備えられる第二の分離装置と同様のものを用いることができる。
【0098】
また、本実施形態の発酵システムは、第一の分離装置によって得られた発酵液から、未分解のセルロース及び酵素を分離するろ過装置を更に備えることが好ましい。このようなろ過装置によって発酵液から未分解のセルロース及び酵素を分離すると、分離した未分解のセルロースを糖化発酵反応タンクに供給することによって、セルロースの収率を向上させることができ、また、分離した酵素を糖化発酵反応タンクに供給する、即ち、酵素を再利用することによって、ランニングコストを低減することができる。本実施形態の発酵システムに備えられるろ過装置としては、本発明の糖化システムに備えられるろ過装置と同様のものを用いることができる。
【0099】
[6]発酵液の製造方法:
本発明の発酵液の製造方法は、上述した別の実施形態の発酵システムを用いた発酵液の製造方法であり、水の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得、得られた糖化液を発酵して夾雑物を含む発酵液を得る糖化発酵反応工程と、糖化発酵液から夾雑物を分離して糖化発酵液を精製する第一の分離工程と、第一の分離装置で分離された夾雑物に付着している酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、付着物と洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化発酵反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、を有する方法である。このような製造方法であると、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収することができる。また、酵素が生成物阻害を受けず、糖化速度は常に最速の状態が維持され、高い生産性で発酵液を製造することができる。
【0100】
上記第一の分離工程、洗浄工程、及び回収工程は、上述した糖化発酵液の製造方法における、第一の分離工程、洗浄工程、及び回収工程と同様の条件で、同様の装置を用いて行うことができる。
【0101】
糖化発酵反応工程は、水の存在下で、セルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中のセルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得、得られた糖化液を発酵して夾雑物を含む発酵液を得る工程である。廃棄物系バイオマス、及び酵素としては、[1]糖化システムで既に説明した廃棄物系バイオマス、及び酵素と同様のものを用いることができる。セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液は、既に上述した[2−1]糖化反応工程と同様にして得ることができる。得られた糖化液を発酵させる条件としては、上記[3−1]発酵反応タンクで既に説明した条件を好適に用いることができる。糖化発酵反応工程は、上述した糖化発酵反応タンクを用いて行うものである。
【0102】
本実施形態の発酵システムを用いた発酵液の製造する方法は、第一の分離工程、洗浄工程、及び、回収工程以外に、上述した糖化液の製造方法で行うことができる、殺菌工程、及び、第二の分離工程を行ってもよい。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
(実施例1)
本実施例で用いた糖化システムは、糖化反応槽(糖化反応タンク)としてジャーファーメンターと、第一の分離装置としてフラットスクリーンと、洗浄装置と、回収タンク(洗浄液回収タンク)と、ろ過装置として精密ろ過装置(バイオット社製のセラミックスピンフィルター)及び限外ろ過装置(日本ポール社製のUF膜(重量平均分子量(MW):10,000))と、糖液回収タンクと、を備えるものである。洗浄装置は、フラットスクリーンで分離された夾雑物を貯める洗浄用スクリーンと、この洗浄用スクリーンの上方に位置し、その開口端を洗浄用スクリーンに向けて配置した、夾雑物に洗浄液を放出する洗浄ノズルと、この洗浄ノズルに接続された配管が接続され、洗浄液を貯めておく洗浄液用タンクと、洗浄ノズル及び洗浄液用タンクを接続する上記配管の途中に配置された、洗浄液用タンク内の洗浄液を送液するためのポンプと、を備えている。
【0105】
本実施例では、まず、感熱紙14質量%、ノーカーボン紙7質量%、磁気乗車券7質量%、アルミ蒸着段ボール7質量%、フィルム付重袋3.5質量%、タック剥離紙6.5質量%、雑誌古紙11質量%、及びオフィス古紙44質量%の割合で含む廃棄物系バイオマスを1cm角に裁断した。その後、所定量の水が入れられている容量2.5Lのジャーファーメンターに、酵素としてジェネンコア社製のセルラーゼ「マルティフェクトCX10L」を、反応液の全液量2Lに対して、10質量%(廃棄物バイオマス1gに対してFPU活性が260FPU)投入して混合した。その後、100gの上記廃棄物系バイオマス(反応液の全液量に対して、5質量%)を1回/日投入した。その後、全液量が2Lになるように水を加えた。その後、処理温度を50℃、pHを5として、攪拌機の回転数200〜300rpmで糖化反応を行い、糖化反応液を得た。
【0106】
次に、上記糖化反応液を150ml/時間でジャーファーメンターから抜き取り、0.2μmの孔径のセラミックスピンフィルター(バイオット社製)を用いてろ過した。その後、セラミックスピンフィルターでろ過されたろ液を、日本ポール社製のUF膜(MW:10,000)を用いて、75ml/時間の割合でろ過し、ろ過されたろ液を糖液タンクに回収した。UF膜で濃縮された残り液は、糖化反応槽に戻した。このような処理により、即ち、セラミックスピンフィルターにより、繊維及び夾雑物は糖化反応槽に残留し、UF膜により、酵素液は濃縮されて糖化反応槽に戻され、糖液のみがUF膜を通過して糖液回収タンクに回収される。なお、回収される糖液に見合う水分を洗浄液回収タンクより75ml/時間で追加した。
【0107】
また、24時間ごとに、糖化反応槽の全液を抜き取り、0.15mmのフラットスクリーンにて夾雑物を除去し、残りの液は糖化反応槽に戻した。ここで、新規の廃棄物系バイオマス100gを(糖化反応槽の全液に対して、5質量%)投入した。蒸発による減少分や夾雑物により付随して失われる液分を回収タンクより調整しながら追加した。上記のフラットスクリーンで取り除かれた夾雑物は、洗浄装置によって100mlの蒸留水で洗浄し、再度フラットスクリーンにより夾雑物を取り除き、残った洗浄水は回収タンクに投入した。上記方法で糖化反応を10日間行った。
【0108】
本実施例において、糖収量は、糖化反応槽及び糖液回収タンク中の糖化液をフェノール硫酸法により測定して得られる値から算出した。
【0109】
本実施例において、5日目の糖収量は350gであり、10日目の糖収量は750gであった。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
(比較例1)
実施例1で使用したものと同様のものを同様の割合で含む廃棄物系バイオマスを、実施例1と同様の処理をして糖化液を得た。ただし、本比較例においては、24時間ごとに、糖化反応槽の全液を抜き取り、0.15mmのフラットスクリーンで夾雑物を除去する代わりに、糖化反応液を遠心分離(4000G、5分間)により固液分離を行い、上清を糖化反応槽に戻した。本比較例における糖収量の測定結果を表1に示す。
【0112】
(比較例2)
実施例1で使用したものと同様のものを同様の割合で含む廃棄物系バイオマスを、実施例1と同様の処理をして糖化液を得た。ただし、本比較例においては、0.15mmのフラットスクリーンで除去した夾雑物の洗浄は行わなかった。本比較例における糖収量の測定結果を表1に示す。
【0113】
(実施例2)
本実施例で用いた発酵システムは、糖化反応槽(糖化反応タンク)としてジャーファーメンターと、第一の分離装置としてフラットスクリーンと、洗浄装置と、回収タンク(洗浄液回収タンク)と、発酵反応タンク(発酵槽)と、ろ過装置として精密ろ過装置(第一のセラミックスピンフィルター、第二のセラミックスピンフィルター)及び限外ろ過装置(UF膜)と、発酵液回収タンクと、を備えるものである。洗浄装置は、フラットスクリーンで分離された夾雑物を貯める洗浄用スクリーンと、この洗浄用スクリーンの上方に位置し、その開口端を洗浄用スクリーンに向けて配置した、夾雑物に洗浄液を放出する洗浄ノズルと、この洗浄ノズルに接続された配管が接続され、洗浄液を貯めておく洗浄液用タンクと、洗浄ノズル及び洗浄液用タンクを接続する上記配管の途中に配置された、洗浄液用タンク内の洗浄液を送液するためのポンプと、を備えている。
【0114】
実施例1で使用したものと同様のものを同様の割合で含む廃棄物系バイオマスを、所定量の水が入れられている容量2.5Lの糖化反応槽であるジャーファーメンターに、酵素としてジェネンコア社製のセルラーゼ「マルティフェクトCX10L」を、反応液の全液量2Lに対して、10質量%(廃棄物バイオマス1gに対してFPU活性が130FPU)投入して混合した。その後、200gの上記廃棄物系バイオマス(反応液の全液量に対して、10質量%)を1回/日投入した。その後、全液量が2Lになるように水を加えた。その後、処理温度を50℃、pHを5として、攪拌機の回転数200〜300rpmで糖化反応を行い、糖化反応液を得た。
【0115】
上記糖化反応液を150ml/時間でジャーファーメンターから抜き取り、0.2μmの孔径の第一のセラミックスピンフィルター(バイオット社製)を用いてろ過した。第一のセラミックスピンフィルターでろ過されたろ液を液量2Lの発酵槽に送液し、発酵を行った。発酵槽には酵母が1.0×10個/mlになるように添加しておいた。発酵は、pHが5、処理温度30℃、100〜150rpmで攪拌しながら行い、発酵反応液を得た。発酵後、上記発酵反応液を150ml/時間で発酵槽から抜き取り、0.2μmの孔径の第二のセラミックスピンフィルター(バイオット社製)を用いてろ過した。第二のセラミックスピンフィルターでろ過されたろ液は、日本ポール社製のUF膜(MW:10,000)を用いて、75ml/時間の割合でろ過し、ろ過された発酵液を発酵液回収タンクに回収した。UF膜で濃縮された残り液75ml/時間は、糖化反応槽に戻した。
【0116】
このような処理により、即ち、ジャーファーメンター後のセラミックスピンフィルターにより、繊維及び夾雑物は糖化反応槽に残留し、発酵槽後のスピンフィルターにより、酵母が発酵槽に残留し、UF膜により、酵素液は濃縮されて糖化反応槽に戻され、発酵液のみがUF膜を通過して発酵液回収タンクに回収される。なお、回収される発酵液に見合う水分を回収タンク及び培地タンクより合計75ml/時間になるように追加した。培地タンクは1%CSL培地溶液が含まれる。
【0117】
また、24時間ごとに、糖化反応槽の全液を抜き取り、0.15mmのフラットスクリーンにて夾雑物を除去し、残りの液は糖化反応槽に戻した。ここで、新規の廃棄物系バイオマスを200g(糖化反応槽中の全液量に対して、10質量%)投入した。また、蒸発による減少分や夾雑物により付随して失われる液分を回収タンクより調整しながら追加した。上記のフラットスクリーンで取り除かれた夾雑物は、洗浄装置によって200mlの蒸留水で洗浄し、再度フラットスクリーンにより夾雑物を取り除き、残った洗浄水は回収タンクに投入した。上記方法で糖化及び発酵反応を10日間行った。
【0118】
本実施例において、発酵物量は、発酵槽及び発酵液回収タンク中のエタノール量を王子計測機器社製のバイオセンサー「モデルBF−4」(商品名)を用いて測定し、これらの総量を算出した。
【0119】
本実施例において、5日目の発酵物量は350gであり、10日目の発酵物量は750gであった。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】

【0121】
(比較例3)
実施例1で使用したものと同様のものを同様の割合で含む廃棄物系バイオマスを、実施例2と同様の処理をして発酵液を得た。ただし、本比較例においては、0.15mmのフラットスクリーンで夾雑物を除去する代わりに、糖化反応液を遠心分離(4000G、5分間)により固液分離を行い、上清を糖化反応槽に戻した。本比較例における発酵物量の測定結果を表2に示す。
【0122】
(実施例3)
本実施例で用いた発酵システムは、糖化反応及び発酵反応を行うための糖化発酵タンク(糖化発酵槽)としてジャーファーメンターと、第一の分離装置としてフラットスクリーンと、洗浄装置と、回収タンク(洗浄液回収タンク)と、ろ過装置として精密ろ過装置(第一のセラミックスピンフィルター、第二のセラミックスピンフィルター)及び限外ろ過装置(UF膜)と、発酵液回収タンクと、を備えるものである。洗浄装置は、フラットスクリーンで分離された夾雑物を貯める洗浄用スクリーンと、この洗浄用スクリーンの上方に位置し、その開口端を洗浄用スクリーンに向けて配置した、夾雑物に洗浄液を放出する洗浄ノズルと、この洗浄ノズルに接続された配管が接続され、洗浄液を貯めておく洗浄液用タンクと、洗浄ノズル及び洗浄液用タンクを接続する上記配管の途中に配置された、洗浄液用タンク内の洗浄液を送液するためのポンプと、を備えている。
【0123】
実施例1で使用したものと同様のものを同様の割合で含む廃棄物系バイオマスを、所定量の水が入れられている容量2.5Lのジャーファーメンターに、酵素としてジェネンコア社製のセルラーゼ「マルティフェクトCX10L」を、反応液の全液量2Lに対して、10質量%(廃棄物バイオマス1gに対してFPU活性が130FPU)投入して混合した。その後、200gの上記廃棄物系バイオマス(反応液の全液量に対して、10質量%)を1回/日投入した。その後、酵母(Issatchenkia orientalis)が1.0×10個/mlになるように添加し、CSL培地溶液が1質量%含まれるように添加した後、全液量が2Lになるように水を加えた。その後、処理温度を50℃、pHを5として、攪拌機の回転数200〜300rpmで、糖化発酵反応を行い、糖化発酵反応液を得た。
【0124】
糖化発酵反応後、上記糖化発酵反応液を150ml/時間で糖化発酵層から抜き取り、0.2μmの孔径のセラミックスピンフィルター(バイオット社製)を用いてろ過した。セラミックスピンフィルターでろ過されたろ液は、日本ポール社製のUF膜(MW:10,000)を用いて、75ml/時間の割合でろ過し、ろ過された発酵液を発酵回収タンクに回収した。UF膜で濃縮された残り液75ml/時間は、糖化発酵反応槽に戻した。このような処理により、即ち、ジャーファーメンター後のセラミックスピンフィルターにより、繊維、夾雑物及び酵母が発酵槽に残留し、UF膜により、酵素液は濃縮されて糖化反応槽に戻され、発酵液のみがUF膜を通過して発酵液回収タンクに回収される。なお、回収される発酵液に見合う水分を回収タンク及び培地タンクより合計75ml/時間になるように追加した。培地タンクは1%CSL培地溶液が含まれる。
【0125】
また、24時間ごとに、糖化発酵反応槽の全液を抜き取り、0.15mmのフラットスクリーンにて夾雑物を除去し、残りの液は糖化発酵反応槽に戻した。ここで、新規の廃棄物系バイオマスを200g(糖化発酵反応槽中の全液量に対して、10質量%)投入した。また、蒸発による減少分や夾雑物により付随して失われる液分を回収タンクより調整しながら追加した。上記のフラットスクリーンで取り除かれた夾雑物は、洗浄装置によって200mlの蒸留水で洗浄し、再度フラットスクリーンにより夾雑物を取り除き、残った洗浄水は洗浄液回収タンクに投入した。上記方法で糖化発酵反応を10日間行った。
【0126】
本実施例において、5日目の発酵物量は350gであり、10日目の発酵物量は750gであった。結果を表3に示す。
【0127】
【表3】

(比較例4)
実施例1で使用したものと同様のものを同様の割合で含む廃棄物系バイオマスを、実施例2と同様の処理をして発酵液を得た。ただし、本比較例においては、0.15mmのフラットスクリーンで夾雑物を除去する代わりに、糖化反応液を遠心分離(4000G、5分間)により固液分離を行い、上清を糖化反応槽に戻した。本比較例における発酵物量の測定結果を表3に示す。
【0128】
表1から明らかなように、比較例1の糖化システムは、夾雑物除去率が99.2%であり、実施例1の糖化システムに比べて、若干劣るだけでなく、また、セルロース回収率も64.0%であり、低かった。また、比較例1の糖化システムは、糖収率は51.2%であった。即ち、比較例1の糖化システムは、実施例1の糖化システムに比べて、夾雑物が除去されにくいだけでなく、夾雑物とセルロースとの分離が不十分であるため、夾雑物とともにセルロースもロスしてしまっていた。
【0129】
実施例1の糖化システムは、パルパー処理において、即ち、バケットスクリーンによって94%の夾雑物を除去できるのは、酵素により夾雑物とセルロースとが分離され、効率良く夾雑物の除去ができたためである。
【0130】
設備の簡略化のために、パルパー処理のみで夾雑物の除去を行った場合について比較すると、実施例1の糖化システムでは、夾雑物除去率が95.7%((18.0kg/18.8kg)×100)、セルロース収率が99.6%であるのに対して、比較例1の糖化システムでは、夾雑物除去率が52.4%((12.0kg/22.9kg)×100)、セルロース収率が97.6%であった。このように、夾雑除去率、及びセルロース収率ともに差が確認できた。
【0131】
実施例1の糖化システムでは、パルパー処理によってほとんどの夾雑物を除去できているが、原料の種類や比率によっては、他の精製設備の効力が高まる場合もある。例えば、廃棄物系バイオマスとして磁気乗車券を使用する場合は、夾雑物である磁気粒子が細かいために、バケットスクリーンでは十分に除去することは困難である。そのため、重量クリーナーなどの精製装置を更に用いることが好ましく、重量クリーナーなどを用いることによって効率良く夾雑物を除去することが可能になる。
【0132】
以上のように、実施例1の糖化システムは、夾雑物を効率良く除去するだけでなく、セルロースの回収率も高い。更に、夾雑物を少なくすることができることで酵素の働きが阻害されることなく糖化されるために糖化率も高い、即ち、高い収率で糖を生産することができる。
【0133】
また、表2、3から明らかなように、実施例2、3の発酵システムは、比較例3、4の発酵システムに比べて、糖化反応が良好に行われるとともに、糖化反応に用いた酵素を効率良く回収しつつ、発酵液を得ることが可能であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の糖化システムは、廃棄物系バイオマスからエタノールを得るための原料である糖化液を製造することができるものである。
【0135】
本発明の糖化液の製造方法は、廃棄物系バイオマスからエタノールを得るための原料である糖化液を製造することができるものである。
【0136】
本発明の発酵システムは、廃棄物系バイオマスからエタノールを得ることができるものである。
【0137】
本発明の発酵液の製造方法は、廃棄物系バイオマスからエタノールを製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明の糖化システムの一の実施形態の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の発酵システムの一の実施形態の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の発酵システムの別の実施形態の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0139】
1:廃棄物系バイオマス、2:殺菌装置、3:糖化反応槽、4:サイズ差分離装置、5:比重差分離装置、6:精密ろ過装置、7:限外ろ過装置、8:糖化液、9:第一の分解装置、10:ろ過装置、11:酵素、12:発酵液、13:水、14:未分解のセルロース、15:夾雑物、16:夾雑物、17:酵素、18:微生物、20:洗浄装置、21:サイズ差分離装置、22:比重差分離装置、23:回収タンク、24:夾雑物、25:夾雑物、27:発酵反応タンク、28:糖化発酵反応タンク、29:培地、100:糖化システム、101:発酵システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応槽と、
前記糖化液から前記夾雑物を分離して前記糖化液を精製する第一の分離装置と、
前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄装置と、
前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を前記糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収タンクと、
を備える糖化システム。
【請求項2】
前記廃棄物系バイオマスが、パルプスラッジ、オフィス古紙、段ボール、雑誌、磁気用紙、感熱紙、アルミ蒸着紙、フィルムコーティング紙、及び、衛生用品廃棄物よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の糖化システム。
【請求項3】
前記第一の分離装置が、比重の違いによって分離する分離装置、大きさの違いによって分離する装置、または、これらの装置を組み合わせた装置である請求項1または2に記載の糖化システム。
【請求項4】
更に、前記回収タンク内の前記洗浄回収液中の夾雑物を分離する第二の分離装置を備えるものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の糖化システム。
【請求項5】
前記第一の分離装置によって夾雑物を分離して得られる前記糖化液から、未分解のセルロース及び前記酵素を分離するろ過装置を更に備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の糖化システム。
【請求項6】
水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程と、
前記糖化液から前記夾雑物を分離して前記糖化液を精製する第一の分離工程と、
前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、
前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を前記糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、を有する糖化液の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の糖化システムと、
前記糖化システムによって得られた糖化液を発酵する発酵反応タンクと、
を備える発酵システム。
【請求項8】
水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得る糖化反応工程と、
前記糖化液から前記夾雑物を分離して前記糖化液を精製する第一の分離工程と、
前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、
前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を前記糖化反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、
前記第一の分離工程で精製した前記糖化液を発酵反応タンク内で発酵する発酵工程と、を有する発酵液の製造方法。
【請求項9】
水の存在下で、少なくともセルロース及び夾雑物を含む廃棄物系バイオマス中の前記セルロースを酵素によって分解して夾雑物を含む糖化液を得、得られた前記糖化液を発酵して夾雑物を含む発酵液を得る糖化発酵反応工程と、
前記糖化発酵液から前記夾雑物を分離して前記糖化発酵液を精製する第一の分離工程と、
前記第一の分離装置で分離された前記夾雑物に付着している前記酵素を含む付着物を洗浄液で洗い流す洗浄工程と、
前記付着物と前記洗浄液とを含む洗浄回収液を糖化発酵反応槽に供給するために貯蔵する回収工程と、を有する発酵液の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−36058(P2010−36058A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198362(P2008−198362)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】