説明

糸巻取機

【課題】糸巻取機において、糸の巻取りを再開する場合に糸を確実にトラバースガイドに掛けることを可能にする。
【解決手段】自動ワインダは、ボビンセット部と、クレードル23と、接触ローラ29と、トラバースガイド28と、糸寄せプレート75,76と、を備える。ボビンセット部は、給糸ボビンの糸を供給する。クレードル23は、ボビンセット部から供給される糸20が巻き取られるパッケージ30を回転可能に保持する。接触ローラ29は、パッケージ30に接触して回転する。トラバースガイド28は、接触ローラ29とは独立して設けられる。また、トラバースガイド28は、パッケージ30に巻き取られる糸20を係合して、当該糸20をトラバースする。糸寄せプレート75,76は、トラバースガイド28が糸20を係合する前の段階で、張力が付与される糸20に接触することで、パッケージ30の巻幅方向中央側に当該糸20を寄せる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸部から糸を供給してトラバースしながらパッケージに巻き取る糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の糸巻取機は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1の糸巻取機は、糸を往復案内する糸フィンガを備えている。この糸フィンガは、駆動装置の回転軸に取り付けられたアームと、アームの先端部に取り付けられた糸ガイドと、を備えている。糸フィンガの先端の糸ガイドは、駆動装置の回転軸の正逆回転によって円弧状の軌跡を描きながら往復運動する。また、特許文献1の糸巻取機は、糸フィンガの先端の軌道に沿って配置された門字形の案内フレームを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−298499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のような糸巻取機においては、糸の巻取中において糸切れ等が発生した場合、巻取りを再開するには糸ガイドに糸を掛けて糸フィンガで再びトラバースできるようにする必要がある。しかしながら、状況によっては、このように糸ガイドに糸を掛けることが困難な場合があった。また、例えば細い糸を巻き取る場合、糸に大きな張力を掛けると切れてしまうために張力が弱めに設定されることも多く、糸掛けを一層困難なものにしていた。
【0005】
糸が糸ガイドにうまく掛からないと、トラバースができないためにパッケージに棒巻きが形成されてしまい、それを除去するために大変な手間を要することになる。また、糸が糸ガイドに押し出されてパッケージの端面からはみ出し、いわゆる端面落ちとなって、パッケージの品質を大きく低下させることもある。このことから、糸を確実にトラバースガイドに係合できる構成が望まれていた。
【0006】
この点、特許文献1には案内フレームが開示されているが、当該案内フレームを設けた目的についての記載がない。また、この案内フレームの構成では、糸が糸ガイドに押し出されるのを防止することもできない。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、糸巻取機において、糸の巻取りを再開する場合に糸を確実にトラバースガイドに掛けることが可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、給糸部と、クレードルと、接触ローラと、トラバースガイドと、糸寄せ部と、を備える。前記給糸部は、糸を供給する。前記クレードルは、前記給糸部により供給される糸が巻き取られるパッケージを回転可能に保持する。前記接触ローラは、前記パッケージに接触して回転する。前記トラバースガイドは、前記接触ローラとは独立して設けられ、前記クレードルにより保持される前記パッケージに巻き取られる糸を係合して、当該糸をトラバースする。前記糸寄せ部は、前記トラバースガイドが前記糸を掛ける前の段階で、張力が付与される当該糸に接触することで、前記パッケージの巻幅方向中央側に前記糸を寄せる。
【0010】
これにより、糸の巻取りを再開する場合に、パッケージの巻幅方向中央側に寄せられた状態の糸に対してトラバースガイドを係合させることができる。従って、糸をトラバースガイドに確実に掛けて、糸のトラバースを円滑に開始させることができる。
【0011】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記糸寄せ部の輪郭は、第1案内部と、第2案内部と、を有している。前記第1案内部は、前記パッケージの巻幅方向端部に近づくにつれて前記給糸部側から徐々に遠ざかるように第1傾斜角で傾斜して配置される。前記第2案内部は、前記第1案内部よりも前記パッケージの巻幅方向中央側に配置されて前記第1案内部の端部に接続し、前記パッケージの巻幅方向端部に近づくにつれて前記給糸部側から徐々に遠ざかるように第2傾斜角で傾斜して配置される。前記第2傾斜角は前記第1傾斜角より急である。
【0012】
これにより、トラバースガイドが糸を係合する前の段階で、糸は最終的に、急な傾斜角を有する第2案内部に接触するまで寄せられる。従って、第2案内部の位置を適宜定めることにより、トラバースガイドが糸を確実に係合し易い良好な位置で糸を引っ掛けることができるので、糸をトラバースガイドに一層確実に掛けることができる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、前記第1案内部及び前記第2案内部が、前記パッケージの巻幅方向の両側にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0014】
これにより、糸の巻取りを再開する場合に、糸端の引出し位置がパッケージの巻幅方向の何れの端部に位置していたとしても、糸をパッケージの巻幅方向中央側に寄せることができる。従って、トラバースガイドによる糸の係合を確実に開始することができる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記トラバースガイドは、糸のトラバース方向の一側を開放させるフック状の糸掛け部を備える。前記第1案内部及び前記第2案内部は、前記パッケージの巻幅方向において少なくとも、前記糸掛け部の開放側と同じ側に配置されている。
【0016】
これにより、トラバースガイドが有するフック状の糸掛け部に、開放側から糸を容易に掛けることができる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、前記トラバースガイドに係合された状態でトラバースされる当該糸の糸道をガイドする糸道ガイド部を備えることが好ましい。
【0018】
これにより、糸がトラバースガイドに掛けられた後は、糸は糸寄せ部に接触することなく、糸道ガイド部によって糸道が適宜ガイドされながらトラバースガイドでトラバースされて巻き取られる。従って、糸寄せ部がパッケージの巻取りに影響を与えることを防止できるので、高品質なパッケージを形成することができる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、前記糸寄せ部は板状の部材で構成されていることが好ましい。
【0020】
これにより、糸が糸寄せ部に絡まりにくい構成が実現されるので、巻取作業を円滑に行うことができる。
【0021】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、前記トラバースガイドを駆動する駆動部を備える。前記トラバースガイドは、糸を係合する部分が設けられた先端部と、前記駆動部からの駆動力が伝達される基端部と、を有するアーム状に形成されている。前記トラバースガイドの前記基端部が前記駆動部により駆動されることで、当該トラバースガイドの前記先端部が円弧状の軌跡を描いて往復運動する。
【0022】
即ち、一般的に、円弧状の軌跡を描いて運動するトラバースアームの先端部で糸を係合するのは難しかったが、上記の構成によれば、糸が糸寄せ部によって事前にパッケージの巻幅方向中央側に寄せられるので、トラバースガイドによる糸の係合を確実に行うことができる。
【0023】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この糸巻取機は、糸継装置と、捕捉案内部と、を備える。前記糸継装置は、前記給糸部と前記パッケージとの間の糸の連続状態が分断された場合に、前記給糸部側の糸端と前記パッケージ側の糸端とを継ぐ。前記捕捉案内部は、前記パッケージ側の糸端を捕捉して前記糸継装置に案内する。
【0024】
これにより、パッケージの巻取途中に必要に応じて糸継動作を行う糸巻取機において、トラバースガイドが糸を確実に係合することができるため、巻取りを円滑に再開することができる。この結果、パッケージの生産効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの全体的な構成を示す正面図。
【図2】第1実施形態におけるワインダユニットの正面図及びブロック図。
【図3】トラバース装置周辺の構成を示す正面拡大図。
【図4】トラバース装置の模式的な側面図。
【図5】トラバースガイドの詳細な構成を示す斜視図。
【図6】スプライサ装置での糸継ぎのためにパッケージ側の糸端を上糸案内パイプで吸引する様子を示す側面図。
【図7】図6の状態から上糸案内パイプを回動させ、糸端を引き出す様子を示す側面図。
【図8】糸が糸寄せプレートによってパッケージの巻幅方向中央側に寄せられる様子を示す正面拡大図。
【図9】パッケージの巻幅方向中央側に寄せられた糸をトラバースガイドで掛ける様子を示す正面拡大図。
【図10】比較例において、糸をトラバースガイドで掛ける様子を示す正面拡大図。
【図11】第2実施形態のワインダユニットにおいて、トラバース装置周辺の構成を示す正面拡大図。
【図12】第3実施形態におけるワインダユニットの正面図及びブロック図。
【図13】トラバース装置周辺の構成を示す正面拡大図。
【図14】トラバース装置の模式的な側面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、発明の実施の形態を説明する。初めに、図1を参照して、本実施形態の自動ワインダ1の全体的な構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ1の正面図である。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、糸巻取時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。つまり、図2等に示すように、本実施形態では、ボビンセット部18で給糸ボビン21から解舒された糸20が巻取部17によって巻き取られるため、ボビンセット部18側が上流であり、巻取部17側が下流となる。
【0027】
図1に示すように、自動ワインダ(糸巻取機)1は、並べて配置された複数のワインダユニット(巻取ユニット)10と、自動玉揚装置8と、機台制御装置90と、を主要な構成として備える。
【0028】
それぞれのワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒された糸20をトラバース(綾振り)しながら巻取ボビン22に巻き取り、パッケージ30を形成できるように構成されている。
【0029】
自動玉揚装置8は、複数のワインダユニット10の間で走行できるように構成されている。この自動玉揚装置8は、各ワインダユニット10においてパッケージ30が満巻となった際に、当該ワインダユニット10の位置まで走行し、満巻のパッケージ30を回収するとともに、糸20が巻かれていない巻取ボビン(空の巻取ボビン)22を供給する。なお、自動玉揚装置8は、満巻きのパッケージ30のみを回収し、空の巻取ボビン22の供給は行わない構成でも良い。また、自動玉揚装置8は、満巻きのパッケージ30の回収は行わずに、空の巻取ボビン22の供給だけを行う構成でも良い。
【0030】
機台制御装置90は、操作部91と、表示部92と、を主要な構成として備える。オペレータは、操作部91を操作することにより、所定の設定値を入力したり適宜の制御方法を選択したりすることができる。これにより、各ワインダユニット10に対して設定を行うことができる。表示部92は、各ワインダユニット10における糸20の巻取状況等、各種の情報を表示することができる。
【0031】
次に、ワインダユニット10の詳細な構成について、図2から図5を参照して説明する。図2は、第1実施形態におけるワインダユニット10の正面図及びブロック図である。図3は、トラバース装置27周辺の構成を示す正面拡大図である。図4は、トラバース装置27の模式的な側面図である。図5は、トラバースガイド28の詳細な構成を示す斜視図である。
【0032】
図2に示すように、各ワインダユニット10は、巻取ユニット本体11と、ユニット制御部50と、を備える。
【0033】
ユニット制御部50はマイクロコンピュータ式の制御部として構成されており、CPUと、メモリと、を備える。メモリには各種のプログラムが記憶され、CPUは当該プログラムを実行することで、巻取ユニット本体11の各構成を制御するように構成されている。このとき、メモリは、一時的なデータの記憶領域としても用いられる。
【0034】
前記巻取ユニット本体11は、給糸ボビン21と巻取ボビン(巻取管、紙管、芯管)22との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、ボビンセット部(給糸部)18と、糸解舒補助装置12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置(糸継装置)14と、クリアラ(糸品質測定器)15と、巻取部17と、を配置して構成されている。
【0035】
ボビンセット部18は、巻取ユニット本体11の下部に配置されている。ボビンセット部18は、図略のボビン搬送システムやマガジン式ボビン供給装置によって供給された給糸ボビン21を保持し、当該給糸ボビン21に巻かれた糸20を解舒して供給することができる。このボビンセット部18の構成としては種々考えられるが、例えば、給糸ボビン21が備える筒状の芯管を差込可能であり、差し込まれた状態で当該芯管の内壁を保持可能な棒状の部材とすることが考えられる。
【0036】
糸解舒補助装置12は、給糸ボビン21から解舒される糸20が振り回されて給糸ボビン21上部に形成されるバルーンに対して規制部材40を接触させ、当該バルーンを適切な大きさに制御することによって糸20の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出する図略のセンサが備えられている。このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40が例えばエアシリンダ(図略)によって下降される。
【0037】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与する。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯36に対して可動の櫛歯37を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯37は、固定の櫛歯36と噛み合わせ状態又は解放状態になるように、例えばロータリ式に構成されたソレノイド38により回動される。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸20に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。なお、テンション付与装置13としては、上記ゲート式のもの以外にも、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0038】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出してカッタ39で糸20を切断する糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎする。このような上糸と下糸とを糸継ぎする糸継装置としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0039】
クリアラ15は、糸20の太さを検出するための図略のセンサが配置されたクリアラヘッド49と、このセンサからの糸太さ信号を処理するアナライザ53と、を備えている。クリアラ15は、前記センサからの糸太さ信号を監視することにより、スラブ等の糸欠陥を検出する。前記クリアラヘッド49の近傍には、前記クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するためのカッタ39が設けられている。なお、クリアラ15は、糸欠点として、糸20に含まれる異物を検出するように構成されていても良い。また、アナライザ53は、ユニット制御部50に設けるようにしても良い。
【0040】
前記スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉してスプライサ装置14に案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉してスプライサ装置14に案内する上糸案内パイプ(捕捉案内部)26と、が設けられる。また、下糸案内パイプ25と上糸案内パイプ26は、それぞれ軸33と35を中心にして回動可能に構成されている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されているので、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を発生させて、上糸及び下糸の糸端を吸引して捕捉することができる。
【0041】
巻取部17は、クレードル23と、接触ローラ29と、トラバース装置27と、1対の糸寄せプレート(糸寄せ部)75,76と、を主要な構成として備える。
【0042】
クレードル23は、巻取ボビン22を着脱可能に保持する。このクレードル23は、ワインダユニット10の正面側及び背面側に回動可能に構成されており、巻取ボビン22への糸20の巻取りに伴うパッケージ30の糸層径の増大を、クレードル23が回動することによって吸収できるように構成されている。これにより、糸20が巻き取られることによりパッケージ30の糸層径が変化しても、当該パッケージ30の表面を接触ローラ29に対して適切に接触させることができるようになっている。
【0043】
クレードル23には、サーボモータで構成されたパッケージ駆動モータ(巻取管駆動部)41が設けられている。巻取部17は、パッケージ駆動モータ41によって巻取ボビン22を回転駆動することにより、当該巻取ボビン22の表面(又はパッケージ30の表面)に糸20を巻き取る。パッケージ駆動モータ41のモータ軸は、巻取ボビン22をクレードル23に支持させたときに、当該巻取ボビン22と相対回転不能に連結されるようになっている(いわゆるダイレクトドライブ方式)。
【0044】
パッケージ駆動モータ41の動作はユニット制御部50により制御されている。ただし、ユニット制御部50とは独立したパッケージ駆動モータ制御部を設け、パッケージ駆動モータ制御部によってパッケージ駆動モータ41の動作を制御するように構成しても良い。
【0045】
接触ローラ29は、巻取ボビン22の外周面又はパッケージ30の外周面に接触するように配置され、回転可能に支持されている。この接触ローラ29は、巻取ボビン22又はパッケージ30の回転に伴って従動回転することができる。ただし、接触ローラ29を直接回転駆動する駆動モータを設けて、パッケージ30を従動回転させるようにしても良い。
【0046】
トラバース装置27は、アーム式のトラバース装置として構成されており、糸20をパッケージ30の表面にトラバースする。巻取部17は、このトラバース装置27によって糸20をトラバースしながらパッケージ30に糸20を巻き取ることが可能に構成されている。
【0047】
図3に示すように、トラバース装置27は、トラバースガイド28と、トラバースガイド駆動モータ(駆動部)45と、ガイドプレート(糸道ガイド部)71と、を主要な構成として備えている。
【0048】
トラバースガイド28は、支軸のまわりに旋回可能に構成した細長状の部材として構成されている。トラバースガイド28の第1の端部(糸20に近い側、先端側)には、糸20を引っ掛けることができるように糸掛け溝65が形成されている。一方、トラバースガイド28の第2の端部(基端側)は、トラバースガイド駆動モータ45の駆動軸45aに設けられたボス部46に固定される。このように、本実施形態のトラバース装置27は、接触ローラ29に形成した溝でトラバースを行う構成とは異なり、トラバースガイド28を接触ローラ29の回転とは無関係にトラバースガイド駆動モータ45により駆動させ、糸20をトラバースする構成となっている。
【0049】
トラバースガイド駆動モータ45は、トラバースガイド28を駆動するためのものであって、例えばサーボモータにより構成されている。なお、トラバースガイド駆動モータ45は、ブラシレスDCモータ、ステッピングモータ、ボイスコイルモータ等、その他の適宜のモータにより構成されていても良い。
【0050】
トラバース装置27は、トラバースガイド28の先端部(上記糸掛け溝65)に糸20を引っ掛けた状態で、トラバースガイド駆動モータ45を駆動してトラバースガイド28を往復動させる。これにより、トラバース装置27は、当該先端部が円弧状の軌跡を描くようにパッケージ30の巻幅方向に往復動させて、糸20を左右方向でパッケージ30の表面にトラバースする。これにより、ワインダユニット10は、糸20を所定の巻幅に所定の速度でトラバースしながら巻取ボビン22に巻き取り、当該巻取ボビン22の外周面に形成される糸層を所望の密度で形成させていくことができる。
【0051】
トラバースガイド駆動モータ45の動作は、ユニット制御部50により制御される。ただし、トラバースガイド駆動モータ45は、上記のようにユニット制御部50により制御することに代えて、専用のトラバース制御部を設けて制御しても良い。
【0052】
トラバースガイド28よりすぐ上流側には、ガイドプレート71が配置されている。ガイドプレート71は、円錐面状に湾曲された板状の部材として構成されている。
【0053】
このガイドプレート71において、トラバースガイド28に近い側の縁部は、当該トラバースガイド28の先端部が描く軌跡に沿う円弧状に形成された円弧ガイド部72とされている。この円弧ガイド部72は、トラバースガイド28が往復動する際には、トラバースガイド28に引っ掛けられた状態の糸20が円滑に往復運動するように糸道を案内する。
【0054】
ここで、図4に示すように、前記トラバースガイド駆動モータ45の駆動軸45aは、トラバースストロークの一端側と他端側とを結ぶ直線の方向(接触ローラ29の軸方向)で見たときに、ガイドプレート71よりも下流側の糸20の糸道に対して平行に近い角度となるように配置されている。言い換えれば、本実施形態では、トラバース装置27は、ワインダユニット10の設置面に対して略平行な平面内でトラバースガイド28を往復動させるようになっている。
【0055】
この構成により、本実施形態の自動ワインダ1は、ワインダユニット10の設置面に対してトラバースガイド28の長手方向が略垂直である構成(後述の第3実施形態)と比べ、ガイドプレート71による糸道の屈曲を少なくすることができる。特に、糸道の屈曲が最大となるトラバースストロークの両端部において、当該糸道の屈曲を低減する効果を大きく発揮させることができる。
【0056】
次に、トラバースガイド28の形状及び構成について、図5を参照して説明する。トラバースガイド28は、図5に示すように、アーム本体60と、このアーム本体60に固定される糸ガイド片(糸ガイド部)64と、を備えている。
【0057】
アーム本体60は、細長状の板状の部材であり、例えば軽量金属を素材として構成されている。このアーム本体60は、アーム部61と、屈曲部62と、フック部(糸掛け部)63と、を備える。
【0058】
アーム部61は、アーム本体60の大部分(先端部以外の部分)を占めている。アーム部61の中央部には、軽量化のための複数の孔が形成されている。
【0059】
屈曲部62は、アーム部61とフック部63との間に形成されている。この屈曲部62は、図4に示すように、先端側のフック部63を接触ローラ29に近づける方向に屈曲した形状となっている。この構成により、フリーレングス(トラバースガイド28から接触ローラ29に接触するまでの糸20の長さ)を短くできるので、糸20の挙動を安定させて高品質のパッケージ30を形成することができる。
【0060】
フック部63は、アーム本体60の先端部を構成する部分であり、トラバースガイド28の基部に近い側を開放させるとともにトラバース方向一側を開放させたフック状に構成される。このフック部63の内部には、セラミックにより構成された糸ガイド片64が配置される。この糸ガイド片64には、糸20を差し込むことができるスリット状の糸掛け溝65が形成されている。
【0061】
糸掛け溝65は直線状に形成されており、その長手方向がトラバースガイド28の長手方向とほぼ平行となるように配置されている。また、糸掛け溝65の長手方向一側の端部(トラバースガイド28の基部に近い側の端部)は、前記フック部63の開放部分に接続されている。
【0062】
次に、図3等を参照して、糸寄せプレート75及び76を詳細に説明する。この糸寄せプレート75及び76は、トラバースガイド28の糸掛け溝65に糸20を掛ける前の段階で、糸20がパッケージ30の巻幅方向端部寄りに位置する場合に、当該糸20を巻幅方向中央側に寄せて案内するためのものである。
【0063】
それぞれの糸寄せプレート75及び76は、板状の部材を適宜曲げて構成されている。この糸寄せプレート75及び76は1対で設けられており、うち1つがパッケージ30の巻幅方向一側(コーン巻パッケージの小径側)に配置され、残りが他側(大径側)に配置される。
【0064】
ここで、前記トラバースガイド28のフック部63は、トラバース方向の一側(具体的には、コーン巻パッケージの小径側)を開放させるように構成されている。従って、フック部63の形状との関係を用いていえば、糸寄せプレート75は、パッケージ30の巻幅(言い換えれば、トラバースガイド28のトラバースストローク)において、フック部63の開放側と同じ側に配置され、糸寄せプレート76は、フック部63の開放側と反対側に配置されているということができる。
【0065】
2つの糸寄せプレート75及び76は、図4等に示すように、糸走行方向においてガイドプレート71のすぐ上流側に配置されている。それぞれの糸寄せプレート75及び76は、ガイドプレート71が有する円錐面状の部分を一部覆うようにして、当該ガイドプレート71の外側に配置される。
【0066】
また、正面側からワインダユニット10を見たときには、図3で示すように、ガイドプレート71の縁部である円弧ガイド部72は、パッケージ30の巻幅方向中央に相当する部分だけが露出しており、その他の部分は糸寄せプレート75及び76によって覆われている。
【0067】
図4に示すように、糸寄せプレート75及び76とガイドプレート71との間(糸寄せプレート75及び76の内側)には、糸20を通過させることが可能な隙間78が形成されている。また、2つの糸寄せプレート75及び76の間には、糸20を通過させることが可能なジグザグ状の開放部77が形成されており(図3を参照)、この開放部77が前記隙間78と繋がるように構成されている。
【0068】
図3に示すように、糸寄せプレート75において、トラバースガイド28に近い側の縁部は折れ線状に形成されており、第1案内部81と、第2案内部82と、が設けられている。
【0069】
第1案内部81はほぼ直線状の輪郭を有しており、パッケージ30の巻幅方向端部に近づくにつれて、ボビンセット部18から徐々に遠ざかるように傾斜するように配置されている。この第1案内部81は、パッケージ30の巻幅の端部に相当する位置を含むように配置されている。
【0070】
第2案内部82もほぼ直線状の輪郭を有しており、パッケージ30の巻幅方向端部に近づくにつれて、ボビンセット部18から徐々に遠ざかるように傾斜するように配置されている。ただし、第2案内部82が有する傾斜角は、第1案内部81が有する傾斜角よりも急激になっている。第2案内部82は第1案内部81よりもパッケージ30の巻幅方向中央側に配置されており、第2案内部82と第1案内部81とは、緩やかな折れ部をなしながら互いに接続している。
【0071】
なお、パッケージ30の巻幅方向において反対側に位置する糸寄せプレート76においても、トラバースガイド28に近い側の縁部は、第1案内部81と、第2案内部82と、を有している。第1案内部81及び第2案内部82の構成は上記の糸寄せプレート75と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
以上のように糸寄せプレート75及び76を構成することにより、1対の第1案内部81と、1対の第2案内部82とは、図3に示すように、それぞれパッケージ30の巻幅方向中央部を挟んでほぼ対称に配置される構成となっている。また、正面側からワインダユニット10を見たときに、糸寄せプレート75及び76の輪郭は、前記第2案内部82の部分で、ガイドプレート71が有する円弧ガイド部72と交差している。
【0073】
次に、以上の構成のワインダユニット10において、給糸ボビン21から解舒される糸20が切れた場合、又は前記クリアラ15が糸欠点を検出してカッタ39により糸20を切断した場合に行われる制御について説明する。図6から図9には、パッケージ30側の糸端を上糸案内パイプ26で捕捉し、スプライサ装置14で給糸ボビン21側の糸端と糸継ぎした後、糸20をトラバースガイド28に掛けてトラバースを再開する動作が順を追って示されている。また、図10は、比較例において糸20をトラバースガイド28で掛ける様子を示す正面拡大図である。
【0074】
糸20が切れ、あるいは糸20がカッタ39により切断されると、ユニット制御部50は、クリアラ15からの信号に基づき、直ちにパッケージ30の回転を停止させ、また、トラバースガイド28のトラバースを停止させるように制御する。
【0075】
なお、糸20は、分断されてフリーとなった直後に、トラバースガイド28の糸掛け溝65から自然に外れる。また、パッケージ30は完全に停止するまでの間に慣性で一定程度回転するので、フリーとなったパッケージ30側の糸端は、上記の慣性回転に伴ってパッケージ30の外周面に巻き付くことになる。
【0076】
次に、ユニット制御部50は、上糸案内パイプ26を図2の位置から上方へ回動させる。その後、ユニット制御部50は、パッケージ30を逆回転させるようにパッケージ駆動モータ41を制御する。これにより、パッケージ30の外周面に巻き付けられている糸端が図6に示すように解舒されて、糸20は、サクションマウス34から上糸案内パイプ26内に吸い込まれる。なお、このときにトラバースガイド28が糸端の解舒の邪魔にならないように、ユニット制御部50は、トラバースガイド28を予め所定の位置に退避させるようにトラバースガイド駆動モータ45を制御する。
【0077】
その後、ユニット制御部50は上糸案内パイプ26を直ちに下方へ回動させ、上糸案内パイプ26で捕捉している糸端をスプライサ装置14に案内する。これにより、糸20は、糸寄せプレート75と76の外側(糸寄せプレート75と76よりもワインダユニット10の正面側)を通過するように、パッケージ30から引き出される(図7)。
【0078】
ここで、上記したパッケージ30の逆回転は、少なくとも、上糸案内パイプ26が糸端をスプライサ装置14に案内し終わる頃には停止するように制御される。この逆回転停止時において、パッケージ30と接触ローラ29との接触箇所から糸端が引き出されている位置(以下、引出し点と呼ぶことがある)は不定であり、パッケージ30の巻幅方向で様々な位置を取る可能性がある。今回の説明では、図8に符号P1で示すように、当該引出し点がパッケージ30の巻幅方向の端部近傍(コーン巻パッケージの小径側端部の近傍)に位置していたとする。
【0079】
パッケージ30から引き出される糸端(糸20)には、サクションマウス34の吸引作用等によって一定の張力が付与される。今回の例では、引出し点P1がパッケージ30の巻幅方向の端部近傍に位置しているので、糸20がピンと張られるのに伴い、引出し点P1より上流側の糸20は、糸寄せプレート75が有する第2案内部82に接触する。そして、糸20が上流側に引っ張られることにより、その糸道は、第2案内部82及び第1案内部81の傾斜を滑るようにして、パッケージ30の巻幅方向中央に寄せられることになる。
【0080】
なお、図面では示していないが、この上糸案内パイプ26による上糸の捕捉及び案内と並行して、図2に示す下糸案内パイプ25が給糸ボビン21側の糸端を吸引することで捕捉し、続いて上側へ回動し、当該糸端をスプライサ装置14に案内する。その後、パッケージ30側の糸端と給糸ボビン21側の糸端とがスプライサ装置14により糸継ぎされる。
【0081】
次に、ユニット制御部50は、パッケージ30の回転を再開させるとともに、トラバースガイド28の往復動を再開させる。図9には、パッケージ30の回転を開始した直後の状態が示されている。この状態からトラバースガイド28を太線矢印方向(パッケージ30の小径側に向かう方向)に回転させることにより、トラバースガイド28の先端部に糸20を掛けることができる。
【0082】
ここで、糸20のパッケージ30からの引出し点P1は上述のように巻幅方向端部近傍にあるものの、当該引出し点P1より上流側の糸20は、前述のように、糸寄せプレート75の作用によってパッケージ30の巻幅方向の中央側に寄せられている。従って、トラバースガイド28は、そのトラバースストロークの中央近くの位置から糸20を引っ掛け始めることができるので、糸掛けの失敗を効果的に減らすことができる。
【0083】
なお、糸寄せプレート75及び76が無い従来の構成では、パッケージ30からの糸端の引出し点P1が巻幅方向端部近傍にあった場合、図10の比較例で示すようにトラバースガイド28が僅かなストロークS1で糸20を引っ掛けなければならず、糸掛けが困難であった。特に、糸20に付与される張力が弱い場合、糸20をトラバースガイド28でしっかりと引っ掛けることが難しく、糸掛けの失敗が頻発していた。また、糸掛けに失敗するだけでなく、トラバースガイド28がトラバース範囲を超えるように糸20を押し出してしまい易く、パッケージ30の端面から糸20がはみ出しながら巻かれて(端面落ち)、パッケージ30の品質を大きく低下させることも多かった。この点、本実施形態のワインダユニット10は上記の糸寄せプレート75及び76を備えているので、上述のとおりトラバースガイド28に糸20を確実に掛けることができるとともに、高品質なパッケージを生成することができる。
【0084】
ただし、パッケージ30からの糸端の引出し点P1の位置は上述のとおり不定であって、図8に示す例に限らず、パッケージ30の巻幅の範囲内で様々な位置を取り得る。引出し点P1が図8の場合と反対側(即ち、コーン巻パッケージの大径側)の端部近傍に位置した場合は、糸寄せプレート76が有する第1案内部81及び第2案内部82の作用により、糸20は巻幅方向中央に寄せられる。引出し点P1がパッケージ30の巻幅方向中央部近傍だった場合は、糸20は第1案内部81及び第2案内部82に接触することなく引き出されることになるが、糸20はもともとパッケージ30の巻幅方向の中央部に位置するので、トラバースガイド28への糸掛けを問題なく行うことができる。
【0085】
次に、糸寄せプレート75及び76における第2案内部82の配置について説明する。第2案内部82は第1案内部81よりも急な傾斜角で配置されているので、上記のように糸20が糸寄せプレート75及び76によって寄せられるときは、第2案内部82の部分にまで寄せられる。このことを利用して、本実施形態では、第2案内部82の位置が、トラバースガイド28による糸掛けの成功率が高いポイントに糸道を案内できるように設定されている。即ち、トラバースガイド28の先端部は円弧状の軌跡を描いて運動するため、そのトラバース位置に応じてトラバースガイド28のフック部63の向き(糸掛け溝65の角度)が変化することになる。本実施形態ではこの点を考慮して、第2案内部82の位置が、フック部63の向きと糸道の角度との関係が良好になるポイントでトラバースガイド28と糸20との係合が開始されるように適宜調整されている。これにより、糸掛けの確実性が一層高められている。
【0086】
トラバースガイド28の先端に糸20が掛けられると、糸20はトラバースガイド28によってトラバースされながら、パッケージ30に巻き取られる。なお、この糸20のトラバースに伴って、1対の糸寄せプレート75及び76の間に形成された開放部77から糸20は前記の隙間78(糸寄せプレート75及び76の内側)に入り込む。その後は、糸20はガイドプレート71の円弧ガイド部72により案内され、もはや糸寄せプレート75及び76に接触しなくなるので、糸寄せプレート75及び76が糸20のトラバースに影響を与えることはない。このようにして、図2から図4で示す状態に戻り、糸20の巻取りが継続される。
【0087】
以上に説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、ボビンセット部18と、クレードル23と、接触ローラ29と、トラバースガイド28と、糸寄せプレート75及び76と、を備える。ボビンセット部18は、給糸ボビン21に巻かれた糸20を供給する。クレードル23は、ボビンセット部18から供給される糸20が巻き取られるパッケージ30を回転可能に保持する。接触ローラ29は、パッケージ30に接触して回転する。トラバースガイド28は、接触ローラ29とは独立して設けられる。また、トラバースガイド28は、クレードル23により保持されるパッケージ30に巻き取られる糸20を係合して、当該糸20をトラバースする。糸寄せプレート75及び76は、トラバースガイド28が糸20を係合する前の段階で、張力が付与される糸20に接触することで、パッケージ30の巻幅方向中央側に当該糸20を寄せる。
【0088】
これにより、スプライサ装置14で糸継ぎを行って糸20の巻取りを再開する場合に、パッケージ30の巻幅方向中央側に寄せられた状態の糸20に対してトラバースガイド28を係合させることができる。従って、糸20をトラバースガイド28に確実に掛けて、糸20のトラバースを円滑に開始させることができる。
【0089】
本実施形態の自動ワインダ1において、糸寄せプレート75及び76の輪郭は、第1案内部81と、第2案内部82と、を有している。第1案内部81は、パッケージ30の巻幅方向端部に近づくにつれてボビンセット部18側から徐々に遠ざかるように、第1傾斜角で傾斜して配置される。第2案内部82は、第1案内部81よりもパッケージ30の巻幅方向中央側に配置されて第1案内部81の端部に接続する。また、第2案内部82は、パッケージ30の巻幅方向端部に近づくにつれてボビンセット部18側から徐々に遠ざかるように、第2傾斜角で傾斜して配置される。第2傾斜角は第1傾斜角より急である。
【0090】
これにより、トラバースガイド28が糸20を係合する前の段階で、糸20は最終的に、急な傾斜角を有する第2案内部82に接触するまで寄せられる。従って、第2案内部82の位置を適宜定めることで、トラバースガイド28が糸20を係合し易い良好な位置で糸20を引っ掛けることができるので、糸20をトラバースガイド28に一層確実に掛けることができる。
【0091】
本実施形態の自動ワインダ1において、第1案内部81及び第2案内部82が、パッケージ30の巻幅方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0092】
これにより、糸20の巻取りを再開する場合に、糸端の引出し点P1がパッケージ30の巻幅方向の何れの端部に位置していたとしても、糸20をパッケージ30の巻幅方向中央側に寄せることができる。従って、トラバースガイド28による糸20の係合を確実に開始することができる。
【0093】
本実施形態の自動ワインダ1において、トラバースガイド28は、糸20のトラバース方向の一側(コーン巻パッケージの小径側)を開放させるフック部63を備える。そして、糸寄せプレート75が備える第1案内部81及び第2案内部82は、パッケージ30の巻幅方向において、フック部63の開放側と同じ側(コーン巻パッケージの小径側)に配置されている。
【0094】
これにより、トラバースガイド28のフック部63に、開放側から糸20を容易に掛けることができる。
【0095】
本実施形態の自動ワインダ1は、トラバースガイド28に係合された状態でトラバースされる糸20の糸道をガイドするガイドプレート71を備える。
【0096】
これにより、糸20がトラバースガイド28に掛けられた後は、糸20は糸寄せプレート75及び76に接触することなく、ガイドプレート71によって糸道が適宜案内されながらトラバースガイド28でトラバースされて巻き取られる。従って、糸寄せプレート75及び76がパッケージ30の巻取りに影響を与えることを防止できるので、高品質なパッケージ30を形成することができる。
【0097】
本実施形態の自動ワインダ1において、糸寄せプレート75及び76は板状の部材で構成されている。
【0098】
これにより、糸20が糸寄せプレート75及び76の部分で絡まりにくい構成が実現されるので、巻取作業を円滑に行うことができる。
【0099】
本実施形態の自動ワインダ1は、トラバースガイド28を駆動するトラバースガイド駆動モータ45を備える。トラバースガイド28は、糸20を係合する部分(糸掛け溝65)が設けられた先端部と、トラバースガイド駆動モータ45からの駆動力が伝達される基端部と、を有するアーム状に形成されている。トラバースガイド28がトラバースガイド駆動モータ45により駆動されることで、当該トラバースガイド28の前記先端部が円弧状の軌跡を描いて往復運動する。
【0100】
一般的に、円弧状の軌跡を描いて運動するトラバースガイド28の先端部で糸20を係合するのは難しかった。しかし、上記の構成によれば、糸20が糸寄せプレート75及び76によって事前にパッケージ30の巻幅方向中央側に寄せられるので、トラバースガイド28による糸20の係合を確実に行うことができる。
【0101】
本実施形態の自動ワインダ1は、スプライサ装置14と、上糸案内パイプ26と、を備える。スプライサ装置14は、ボビンセット部18とパッケージ30との間での糸20の連続状態が分断された場合に、ボビンセット部18側の糸端とパッケージ30側の糸端とを継ぐ。上糸案内パイプ26は、パッケージ30側の糸端を捕捉してスプライサ装置14に案内する。
【0102】
これにより、パッケージ30の巻取途中に必要に応じて糸継動作を行う自動ワインダ1において、トラバースガイド28が糸20を確実に係合することができるため、巻取りを円滑に再開することができる。この結果、パッケージ30の生産効率を向上させることができる。
【0103】
次に、第2実施形態を説明する。図11は、第2実施形態のワインダユニット10において、トラバース装置27周辺の構成を示す正面拡大図である。なお、本実施形態以降の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0104】
図11に示す第2実施形態の巻取部17xにおいては、1対で配置される糸寄せプレート75x及び76x同士が、厚み方向でオーバーラップする部分を有している。このオーバーラップ部分77xは、パッケージ30の巻幅方向中央部に対応するように配置されている。オーバーラップ部分77xにおいて、糸寄せプレート75x及び76xの間にはプレート厚み方向の隙間が形成されており、糸20はこの隙間から糸寄せプレート75x及び76xの内側に入ることができる。
【0105】
次に、第3実施形態を説明する。図12は、第3実施形態におけるワインダユニット10の正面図及びブロック図である。図13は、トラバース装置27周辺の構成を示す正面拡大図である。図14は、トラバース装置27の模式的な側面図である。
【0106】
この第3実施形態の巻取部17yにおいては、トラバース装置27の向きが他の実施形態と異なっている。即ち、本実施形態では図14で示すように、トラバースストロークの一端側と他端側とを結ぶ直線の方向(接触ローラ29の軸方向)で見たときに、トラバースガイド28の長手方向が、ワインダユニット10の設置面に対して略垂直に配置されている。言い換えれば、本実施形態では、ワインダユニット10の設置面に対して略垂直な平面内でトラバースガイド28を往復動させるようになっている。また、トラバースガイド28のアーム本体60においては、他の実施形態において備えられていた屈曲部が形成されておらず、真っ直ぐな形状となっている。
【0107】
ガイドプレート71yは、円錐面状の湾曲部を有しない平坦な部材として構成され、その上端部には、上に凸となる円弧状に形成された円弧ガイド部72yが形成される。このガイドプレート71yにおいて、トラバースガイド28と反対側を向く面(ワインダユニット10の正面側を向く面)には、案内プレート部75y及び76yが配置されている。
【0108】
2つの案内プレート部75y及び76yは、1つの板状部材を折り曲げることにより構成されている(即ち、両側の案内プレート部75y及び76yが一体化されている)。そして、第1実施形態において図3で示したような折れ線状の縁部、即ち第1案内部81及び第2案内部82は、本実施形態においては、パッケージ30の巻幅方向の一側(トラバースガイド28のフック部63の開放側)に配置された案内プレート部75yのみにしか形成されていない。従って、本実施形態においては、一側の案内プレート部75yのみが本発明の糸寄せ部に相当する。
【0109】
前述の第2実施形態と同様に、案内プレート部75y及び76y同士は、厚み方向でオーバーラップする部分を有している(図13を参照)。オーバーラップ箇所77yにおいて、2つの案内プレート部75y及び76yの間にはプレート厚み方向の隙間が形成されており、この隙間を糸20が通過することができる。
【0110】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0111】
糸寄せ部(例えば第1実施形態の糸寄せプレート75及び76)の構成は上記に限定されず、適宜変更することができる。例えば、第1案内部81及び第2案内部82のうち少なくとも何れかを、直線状でなく曲線状に形成することができる。
【0112】
第1実施形態の糸寄せプレート75と76及び第2実施形態の糸寄せプレート75xと76xを、それぞれ1つの部材で構成するように変更することができる。
【0113】
第1実施形態及び第2実施形態でほぼ対称をなしながらパッケージ30の巻幅方向両側に配置される第1案内部81及び第2案内部82のうち、一側を省略することができる。この場合、トラバースガイド28のフック部63に形成されている開放側と反対側に位置する第1案内部81及び第2案内部82を省略することが好ましい。
【0114】
プレート状の部材(糸寄せプレート75及び76)の縁部に第1案内部81及び第2案内部82を配置することに代えて、例えば、特許文献1の案内フレームに用いられたような棒状の部材を第1案内部81及び第2案内部82の形状に適宜折り曲げることで、上記実施形態と同等の機能を実現することができる。ただし、プレート状の部材は棒状の部材と比較して、糸20が絡まりにくい点で好ましい。
【0115】
トラバースガイド28の形状は適宜変更することができ、例えば、フック部63の形状として、コーン巻パッケージの大径側を開放させるものを採用することができる。この場合、例えば図13の構成においては、案内プレート部75y及び76yの位置関係を反転させて、フック部63の開放側と同じ側に第1案内部81及び第2案内部82が位置するようにすることが好ましい。
【0116】
上記実施形態ではコーン巻パッケージを形成する場合を例に挙げて説明したが、チーズ形状のパッケージを形成する構成の自動ワインダにおいても本発明を適用することができる。
【0117】
本発明は、自動ワインダに限らず、巻返し機及び精紡機(例えば空気紡績機、オープンエンド紡績機)等の他の糸巻取機にも適用することができる。
【符号の説明】
【0118】
1 自動ワインダ(糸巻取機)
14 スプライサ装置(糸継装置)
18 ボビンセット部(給糸部)
23 クレードル
26 上糸案内パイプ(捕捉案内部)
28 トラバースガイド
29 接触ローラ
30 パッケージ
45 トラバースガイド駆動モータ(駆動部)
63 フック部(糸掛け部)
71 ガイドプレート(糸道ガイド部)
75,76 糸寄せプレート(糸寄せ部)
81 第1案内部
82 第2案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を供給する給糸部と、
前記給糸部により供給される糸が巻き取られるパッケージを回転可能に保持するクレードルと、
前記パッケージに接触して回転する接触ローラと、
前記接触ローラとは独立して設けられ、前記クレードルにより保持される前記パッケージに巻き取られる糸を係合して、当該糸をトラバースするトラバースガイドと、
前記トラバースガイドが前記糸を係合する前の段階で、張力が付与される当該糸に接触することで、前記パッケージの巻幅方向中央側に前記糸を寄せる糸寄せ部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記糸寄せ部の輪郭は、
前記パッケージの巻幅方向端部に近づくにつれて前記給糸部側から徐々に遠ざかるように第1傾斜角で傾斜して配置された第1案内部と、
前記第1案内部よりも前記パッケージの巻幅方向中央側に配置されて前記第1案内部の端部に接続し、前記パッケージの巻幅方向端部に近づくにつれて前記給糸部側から徐々に遠ざかるように第2傾斜角で傾斜して配置された第2案内部と、
を有しており、
前記第2傾斜角は前記第1傾斜角より急であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項2に記載の糸巻取機であって、
前記第1案内部及び前記第2案内部が、前記パッケージの巻幅方向の両側にそれぞれ配置されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の糸巻取機であって、
前記トラバースガイドは、糸のトラバース方向の一側を開放させるフック状の糸掛け部を備え、
前記第1案内部及び前記第2案内部は、前記パッケージの巻幅方向において少なくとも、前記糸掛け部の開放側と同じ側に配置されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記トラバースガイドに係合された状態でトラバースされる糸の糸道をガイドする糸道ガイド部を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記糸寄せ部は板状の部材で構成されていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記トラバースガイドを駆動する駆動部を備え、
前記トラバースガイドは、糸を係合する部分が設けられた先端部と、前記駆動部からの駆動力が伝達される基端部と、を有するアーム状に形成されており、
前記トラバースガイドの前記基端部が前記駆動部により駆動されることで、当該トラバースガイドの前記先端部が円弧状の軌跡を描いて往復運動することを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記給糸部と前記パッケージとの間の糸の連続状態が分断された場合に、前記給糸部側の糸端と前記パッケージ側の糸端とを継ぐ糸継装置と、
前記パッケージ側の糸端を捕捉して前記糸継装置に案内する捕捉案内部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−63838(P2013−63838A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204553(P2011−204553)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】