説明

納豆チーズのり巻き及びその製造方法

【課題】納豆菌が失活するような高温処理を施すことなく、食して有効成分をそのまま摂取することができる納豆の処理方法を採用すると共に、東西の発酵食品である納豆とチーズをのり巻き状にして、共に味わうことができるようにした納豆チーズのり巻き及びその製造方法を提供する。
【解決手段】容器内に米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖を混入して加熱を開始すると共に、該容器内の沸点前に粉チーズを混入して煮詰めた後、加熱を終了して納豆菌が死滅しない所定温度まで下げた後に、該容器内にフリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆を混入して撹拌し、次いでこの材料を冷却すると共に押圧して所定形状に切断し、該所定形状の材料に醤油を塗布して海苔を付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本の発酵食品である納豆と西洋の発酵食品であるチーズとをのり巻き状にして、共に味わうことができるようにした納豆チーズのり巻き及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている納豆は、発酵した大豆から作られる発酵食品であり、生きた納豆菌と胞子が生存すると共に、消化性のよい蛋白質や各種のアミノ酸、またはB1、B2、E、K等のビタミン類を含み、それらが旨味成分となって独特の風味を有する食品として愛用されている。
【0003】
また、最近では、納豆の各種有用成分として、例えば、コレステロールを低下させると共に動脈硬化を予防する効果を有するダイズサポニンやレシチン、または、血栓溶解作用や血液をサラサラにする効果を有するナットウキナーゼ等、人体に有益な成分を含む、優れた機能性を有する健康食品であることが知られている。
【0004】
このように、納豆は健康食品として有益であるため、食事の際の副食として用いる他に、いわゆるスナック系の食材として利用することが提案されている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1には、納豆と各種の具材を混合し、これを食材で作った容器に入れ、この容器に食材で作った蓋をして、油で揚げたことを特徴とする納豆の食品が記載されている。
【0006】
ところが、この食品の製造工程においては、納豆の食品を150℃〜170℃程度に熱した油で揚げるため、納豆菌が死滅し、上記のような納豆に含まれるナットウキナーゼが機能しなくなるという不都合があった。
【0007】
なお、ナットウキナーゼは納豆から抽出され精製される酵素であり、納豆の製造工程において、煮た大豆を納豆菌で発酵させた際に、結果としてナットウキナーゼが生成されるものである。
【0008】
このように、ナットウキナーゼの酵素を生み出すのは納豆のみであるが、納豆菌は約80℃以上の高温処理によって酵素が失活するため、ナットウキナーゼもまた機能しなくなることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−135017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、納豆菌が失活するような高温処理を施すことなく、食して有効成分をそのまま摂取することができる納豆の処理方法を採用すると共に、東西の発酵食品である納豆とチーズをのり巻き状にして、共に味わうことができるようにした納豆チーズのり巻き及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1の納豆チーズのり巻きは、米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖と粉チーズを含んで加熱混合した材料に、フリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆が納豆菌の死滅しない温度下で混入され、押圧形成されると共に所定形状に切断された材料に醤油を塗布して海苔を付着してあることを特徴とする。
【0012】
また、本発明における請求項2の納豆チーズのり巻きの製造方法は、容器内に米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖を混入して加熱を開始すると共に、該容器内の沸点前に粉チーズを混入して煮詰めた後、加熱を終了して納豆菌が死滅しない所定温度まで下げた後に、該容器内にフリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆を混入して撹拌し、次いでこの材料を冷却すると共に押圧して所定形状に切断し、該所定形状の材料に醤油を塗布して海苔を付着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の納豆チーズのり巻きは、米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖と粉チーズ等の材料にフリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆を混入する際、容器内が納豆菌の死滅しない所定温度に低下した状態とした後に混入されるため、
納豆菌のナットウキナーゼが失活することなく、その機能が有効に生かされる。
【0014】
このため、この納豆チーズのり巻きを食する者は、納豆特有の栄養素を摂取することができるほか、納豆特有の味覚を味わうことができる。
【0015】
また、この納豆チーズのり巻きを食する者は、材料に混入している粉チーズの風味も加わるため、東西の発酵食品である納豆とチーズの風味を味わうことが可能となる。
【0016】
さらに、本発明による納豆チーズのり巻きは、その周囲に塗布した醤油によって付着した海苔の風味を味わうことができる。従って、この納豆チーズのり巻きを食する者は、まず最初に海苔の風味を味わい、醤油の風味に混ざった納豆の風味を味わうと共に、チーズの風味も味わうというように、種々の風味を楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による実施例の納豆チーズのり巻きの製造工程を概略的に示す工程図である。
【図2】本発明による実施例の納豆チーズのり巻きの製造工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0019】
本実施例の納豆チーズのり巻きの製造方法を工程別に分けて順次記載すると、図1の工程図に示すように、次の通りとなる。
(第1工程)容器1内に米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖を混入し、加熱を開始する。
(第2工程)容器1内に粉チーズを混入して撹拌し、容器1内の材料を煮詰める。
(第3工程)加熱を終了して、納豆菌が死滅しない所定温度まで下げる。
(第4工程)容器1内に、フリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆を混入し、均等に撹拌する。
(第5工程)容器1内の材料を、例えば冷却板に落として冷却すると共に、ローラで押圧する。
(第6工程)押圧した材料を所定形状に切断する。
(第7工程)所定形状に形成された材料に醤油を塗布して海苔を付着する。
【0020】
以下、上記の製造方法について、図1の工程図または図2の製造方法に関する概略図を参照しながら詳細に述べる。
【0021】
まず、第1工程では、米粉を主成分とするおこし種を用意する。この際、米粉は膨化処理された米からなる膨化米粉を使用してもよい。なお、おこし種には、小麦粉、澱粉、塩、重曹等を混入して調整するようにしてもよい。
【0022】
次に、図2(a)に示すように、上記のおこし種を容器1に入れると共に、この容器1に水飴と砂糖を混入する。上記の材料の重量配分は、その一例として、おこし種600gに対して、水飴は1000g、砂糖としてグラニュー糖100gを混入する。
【0023】
また、この容器1内に、マーガリンを例えば150g、醤油を例えば80g入れて、各材料が均等となるように撹拌し、加熱を開始する。この加熱は、容器1内を100℃の温度で5分間維持することによって行う。
【0024】
次に、第2工程として、図2(b)に示すように、上記の容器1内が沸点前の状態で、容器1内に粉チーズとしてチーズパウダーを例えば120g混入し、撹拌して、140℃で8分程度煮詰める。
【0025】
次に、第3工程として、図2(c)に示すように、上記の容器1に対する加熱を終了して、容器1内の温度を納豆菌が死滅しない所定温度まで下げる。この納豆菌が死滅しない所定温度は、実験結果によると74℃とされているが、本実施例では、70℃まで下げることにする。
【0026】
次いで、第4工程として、図2(c)に示すように、上記の容器1内に、フリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆を混入し、容器1内の材料が均等な状態となるように撹拌する。この乾燥納豆としては、粒状のドライ納豆を200g、粉状のドライ納豆150gを混入する。なお、このとき、味付けとして、フリーズドライあさつき(乾燥ネギ)を6g、洋からし粉5gを加入してもよい。
【0027】
上記のように、第3工程において、容器1に対する加熱を終了し、容器1内の温度を納豆菌が死滅しない所定温度として、70℃まで下げることにより、第4工程で容器1内に混入した乾燥納豆は、納豆菌が死滅することがないため、ナットウキナーゼが失活することなく、その機能を有効に生かすことができる。
【0028】
次に、第5工程として、図2(d)に示すように、この材料2を容器1から冷却板3の面上に落として材料2を冷却すると共に、図2(e)に示すように、材料2をローラ4で押圧して平状にする。
【0029】
そして、次に、第6工程として、図2(f)、(g)に示すように、カッター5を用いて所定形状に切断する。このカッター5は、切断後の菓子形状に応じたカッター形状を有するものである。
【0030】
即ち、図2(f)、(g)は、断面円形の棒状の菓子形状を切断形成するための上下のカッター5a、5bから構成され、夫々のカッター5a、5bに複数の断面半円弧形のカッター形状を配列したものとしている。この上下のカッター5a、5bを用いて、材料2を所望の菓子形状に切断するには、上下のカッター5a、5bの間に第5工程で得た平状に押圧された材料2を介在させ、この材料を上下のカッターで狭圧するように押圧することにより、長尺で棒状の菓子形状が形成される。
【0031】
また、この長尺で棒状の菓子形状を他の切断用カッター(不図示)で所定長さに切断することにより、図2(h)に示す菓子形状6を形成することが可能となる。
【0032】
なお、図2(f)に示す上下のカッター5a、5bの形状を変えて、菓子形状6を、図2(j)に示すような矩形の平状な菓子形状7にすることも可能である。
【0033】
次いで、第7工程として、図2(h)に示す棒状の菓子形状6、または図2(j)に示す矩形平状の菓子形状7の材料の表面に醤油を塗布して、図2(i)又は図2(k)に示すように海苔8を付着し、または海苔8を巻きつけることにより、本実施例の納豆チーズのり巻き9を得ることができる。
【0034】
なお、上記の各所で述べた材料配分のグラム数は、相対的な配分であり、また本発明による納豆チーズのり巻き9の仕上がりの好みによって変化する数値である。さらに、上記の加熱および煮詰めの時間は、材料の量等によって変化するものである。
【0035】
上記のように製造した納豆チーズのり巻きは、米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖と粉チーズを含んで加熱混合した材料に、フリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆が納豆菌の死滅しない温度下で混入され、押圧形成されると共に所定形状に切断された材料に醤油を塗布して海苔を付着したものとなる。
【0036】
また、上記の製造方法によれば、第4工程で容器1内に混入した乾燥納豆のナットウキナーゼが失活することなく、その機能が有効に生かされるため、この納豆チーズのり巻きを食した者は、納豆特有の栄養素を摂取することができるほか、納豆特有の風味を味わうことが可能となる。
【0037】
また、この納豆チーズのり巻きを食する者は、材料に混入している粉チーズの風味も加わるため、東西の発酵食品である納豆とチーズの風味を同時に味わうことが可能となる。
【0038】
さらに、本実施例の納豆チーズのり巻きは、その周囲に塗布した醤油によって付着した海苔の風味を味わうことができるため、まず最初に海苔の風味を味わい、醤油の風味に混ざった納豆の風味を味わうと共に、チーズの風味も味わうというように、東西における種々の風味を楽しむことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の納豆チーズのり巻き及びその製造方法は、納豆菌が失活するような高温処理を施すことなく、食して有効成分をそのまま摂取することができる納豆の処理方法を採用すると共に、東西の発酵食品である納豆とチーズをのり巻き状にして、共に味わうことができるようにした納豆チーズのり巻き及びその製造方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 容器
2 材料
3 冷却板
4 ローラ
5 カッター
5a、5b 上下のカッター
6 棒状の菓子形状
7 平状な菓子形状
8 海苔
9 納豆チーズのり巻き


【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖と粉チーズを含んで加熱混合した材料に、フリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆が納豆菌の死滅しない温度下で混入され、押圧形成されると共に所定形状に切断された材料に醤油を塗布して海苔を付着してあることを特徴とする納豆チーズのり巻き。
【請求項2】
容器内に米粉を主成分とするおこし種と水飴と砂糖を混入して加熱を開始すると共に、該容器内の沸点前に粉チーズを混入して煮詰めた後、
加熱を終了して納豆菌が死滅しない所定温度まで下げた後に、
該容器内にフリーズドライによって納豆を乾燥した乾燥納豆を混入して撹拌し、
次いでこの材料を冷却すると共に押圧して所定形状に切断し、
該所定形状の材料に醤油を塗布して海苔を付着することを特徴とする納豆チーズのり巻きの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−39072(P2013−39072A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177733(P2011−177733)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(599065163)株式会社美多加堂 (2)
【Fターム(参考)】