説明

純水の製造方法、及び純水製造システム

【課題】RO膜の酸化劣化を抑制しつつ、高純度の生産水を安定供給することができ、しかも酸化劣化が生じた場合でも迅速に対応でき、かつ省エネルギーにも寄与することができるようにする。
【解決手段】原水ポンプ1から汲み上げられた原水を活性炭ろ過装置2に供給し、原水に含有される遊離塩素を除去する。次いで、遊離塩素が除去された原水を軟水装置3に供給し、硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水化し、被処理水を生成し、RO装置4に供給する。RO装置4では、極超低圧膜からなるRO膜12aに0.5MPa以下の操作圧を負荷し、高純度の透過水(生産水)と濃縮水とに膜ろ過分離する。また、第1及び第2のシリカ濃度測定装置10a、10bによりシリカ除去率φを算出し、RO膜12aの酸化劣化の進行を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水の製造方法、及び純水製造システムに関し、より詳しくは被処理水を逆浸透膜で処理して高純度の純水を生成する純水の製造方法、及びこの製造方法に使用することができる純水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程や電子部品の洗浄、医療器具の洗浄等では、不純物を含まない高純度の純水が使用される。
【0003】
この種の純水は、従来より、地下水や水道水等の原水を逆浸透膜(以下、「RO膜」という。)で処理して生産されている。
【0004】
そして、例えば、特許文献1には、硬度成分を含む原水を酸化剤の溶存下、該原水にキレート剤を添加した後に合成高分子系複合膜モジュールにより処理するようにした膜モジュールによる原水の処理方法が提案されている。
【0005】
特許文献1では、次亜塩素酸ナトリウム等の薬剤(酸化剤)を殺菌剤として原水に注入することにより、ろ過膜にファウリングが生じるのを防止し、さらに前記原水にキレート剤を添加することにより、原水の硬度が高い場合であっても、ろ過膜が硬度成分の触媒的作用により酸化劣化されるのを防止することが可能である。すなわち、特許文献1によれば、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を添加しても、原水硬度に起因するRO膜の酸化劣化の促進を抑制することが可能である。
【0006】
また、特許文献2には、軟水器を使用して原水の硬度成分を10ppm以下に低減し、該原水を酸化剤の溶存下、合成高分子系複合膜モジュ−ルにより処理した膜モジュ−ルによる原水の処理方法が提案されている。
【0007】
特許文献2では、酸化剤が添加された薬剤が注入された軟水に対して膜ろ過処理を行っているので、原水硬度に起因するRO膜の酸化劣化の促進を抑制でき、かつ微生物に起因したバイオファウリングを防止することが可能となる。
【0008】
また、特許文献3には、被処理水を軟水処理した後、逆浸透膜部でろ過し、該逆浸透膜部により発生する濃縮排水を所定間隔でブローするようにした水処理方法が提案されている。
【0009】
特許文献3では、被処理水を軟水処理することにより、被処理水中のカルシウム等の硬度成分が除去されるので、前記硬度成分とシリカ(SiO)との結合によるスケールの析出が防止される。したがって、被処理水のシリカ溶解度が高くなり、その分、被処理水のシリカ濃度が高い状態でもシリカスケールの析出が抑制され、これにより被処理水のシリカ濃度が高くても水処理運転が可能となる。
【0010】
しかも、膜ろ過分離して得られた濃縮水を所定間隔でブローしているので、逆浸透膜部付近における被処理水のシリカ濃度の上昇を抑制することができる。すなわち、シリカスケールの析出が抑制されることから、逆浸透膜部の目詰まりを防止でき、その結果、長期的に安定した水処理運転を継続して行うことができ、生産水を生成する際の水回収率を向上させることが可能である。
【0011】
【特許文献1】特開平9−891号公報
【特許文献2】特開平6−226253号公報
【特許文献3】特開2005−279460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1では、キレート剤を原水に添加することによりRO膜の酸化劣化を抑制しているため、キレート剤の注入装置が空状態となったり、注入ポンプに異常等が生じて注入不良又は注入不能になると、RO膜の酸化劣化を抑制することができず、却って酸化劣化を助長してしまうおそれがある。
【0013】
また、特許文献2では、硬度が10ppm以下の軟水を使用しているものの、原水中に酸化剤が注入されているため、RO膜は長時間の運転継続により酸化劣化が進行するおそれがある。
【0014】
さらに、本発明者らの研究結果により、原水中に遊離塩素等の酸化剤を含んでいる場合は、RO膜によるシリカ除去率が通水時間に略比例して低下することが判明した。したがって、特許文献2では、酸化剤を含有した原水がRO装置に供給されているので、RO膜によるシリカ除去率が通水時間に略比例して低下し、このためRO膜の後段に配された各種装置への負荷の増加を招くおそれがある。
【0015】
また、特許文献3では、軟水を使用することによりRO膜へのシリカスケールの析出を抑制しようとしたものであり、どの程度の硬度の軟水を使用しているのかは不明であり、またどの程度の純度の生産水が得られているのかも不明である。
【0016】
しかも、原水中に遊離塩素等の酸化剤を含んでいる場合は、特許文献2と同様、長時間の継続運転によりRO膜の酸化劣化が進行し、その結果シリカ除去率の低下を招くため、RO膜の後段に配された各種装置への負荷の増加を招くおそれがある。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、RO膜の酸化劣化を抑制しつつ、高純度の生産水を安定供給することができ、しかも酸化劣化が生じた場合でも迅速に対応でき、かつ省エネルギーにも寄与することができる純水の製造方法、及びこの製造方法に使用することのできる純水製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
原水を軟水処理した被処理水をRO膜で処理する方法は、上記特許文献3にも示したように従来より知られている。
【0019】
しかしながら、〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、従来で被処理水に軟水を使用しているのは、主としてRO膜へのスケール析出を防止することを意図したものであり、純水の純度向上を意図としたものは未だ存在していない状況にある。
【0020】
一方、LSIなどの半導体製造工程におけるシリコンウエハの洗浄や,医薬品の製造工程では、できるだけ高純度の純水が求められている。
【0021】
そこで、本発明者らは、RO膜による不純物の除去率を高めてより一層高純度の純水を得るべく、軟水を使用して鋭意研究を行ったところ、硬度が5mgCaCO/L以下の軟水をRO膜に供給することにより、不純物の除去率をより一層高めることができ、これにより高純度の純水を安定供給できるという知見を得た。しかも、上記軟水を使用することにより、軟水中の遊離塩素の含有量が微小であれば、酸化劣化の進行を抑制できるという知見も併せて得た。
【0022】
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る純水の製造方法は、硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水化して被処理水を生成し、該被処理水をRO膜で処理して生産水を生成することを特徴としている。
【0023】
また、上述したように遊離塩素の含有量が微小であれば、硬度が5mgCaCO/L以下の被処理水を使用することにより、酸化劣化の進行を抑制できるが、通常、原水には相当量の遊離塩素を含んでいることが多く、このような場合は予め活性炭ろ過装置等で遊離塩素を除去しておくのが好ましい。
【0024】
そこで、本発明の純水の製造方法は、前記原水中に含有される遊離塩素を除去した後、前記軟水化を行うことを特徴としている。
【0025】
また、本発明者らの更なる鋭意研究の結果、被処理水中に微小の遊離塩素が含まれている場合、電気伝導度や各種イオン類の除去率は長時間連続的に通水しても殆ど変動しないが、シリカの除去率は通水時間に略比例して通水初期から経時的に顕著に低下してゆくことが判明した。したがって、シリカ除去率を常時監視することにより、遊離塩素によるRO膜の酸化劣化に迅速に対処することが可能となる。
【0026】
そこで、本発明の純水の製造方法は、前記被処理水に対する前記生産水のシリカ除去率を監視することを特徴としている。
【0027】
また、本発明の純水の製造方法は、前記RO膜が、極超低圧膜であることを特徴としている。
【0028】
さらに、本発明の純水の製造方法は、前記RO膜が、少なくとも極超低圧膜と超低圧膜とを含む二種類以上からなり、前記被処理水を前記極超低圧膜で処理した後、前記超低圧膜で処理し、前記生産水を生成することを特徴としている。
【0029】
また、本発明に係る純水製造システムは、原水を軟水化して被処理水を生成する軟水装置と、該軟水装置で生成された前記被処理水を処理して生産水を生成するRO装置(逆浸透膜ろ過装置)とを備えた純水製造システムにおいて、前記原水に対する生産水のシリカ除去率を監視するシリカ除去率監視手段を備えると共に、前記軟水装置は、5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水化して被処理水を生成する被処理水生成手段を有していることを特徴としている。
【0030】
また、本発明の純水製造システムは、前記原水に含有される遊離塩素を除去する遊離塩素除去手段を備えていることを特徴としている。
【0031】
また、本発明の純水製造システムは、前記遊離塩素除去手段が、活性炭ろ過装置であることを特徴としている。
【0032】
また、本発明の純水製造システムは、前記RO装置が、極超低圧膜モジュールを有していることを特徴としている。
【0033】
さらに、本発明の純水製造システムは、前記RO装置は、第1のRO装置と第2のRO装置とを含む二種類以上のRO装置を備え、前記第1のRO装置は、極超低圧膜モジュールを有し、前記第2のRO装置は、超低圧膜モジュールを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0034】
上記純水の製造方法及び純水製造システムによれば、硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水装置で軟水化して被処理水を生成し、該被処理水をRO膜で処理して生産水を生成するので、所望の高純度の純水を得ることができ、しかもRO膜の酸化劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0035】
また、原水中に含有される遊離塩素を活性炭ろ過装置等の遊離塩素除去手段により除去した後、前記軟水化を行うので、軟水化された被処理水中には遊離塩素を含んでおらず、或いはたとえ被処理水中に遊離塩素を含んでいても微量に抑制することが可能となり、RO膜の酸化劣化の進行を効果的に抑制することが可能となる。
【0036】
また、被処理水に対する前記生産水のシリカ除去率をシリカ除去率監視手段で監視するので、シリカ除去率の変動によりRO膜の酸化劣化に起因したシステム異常に迅速に対処することが可能となる。
【0037】
上記純水の製造方法及び純水製造システムで、RO膜を極超低圧膜で構成するので、RO装置を低い操作圧で駆動させることが可能となり、したがって不純物の除去率の向上と水回収率の向上を両立させながら、省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
また、被処理水を極超低圧膜で処理した後、より塩除去率の高い超低圧膜で処理し、前記生産水を生成するので、操作圧を低く抑えつつも、多段RO処理によって除去率をより一層向上させることが可能となり、省エネルギー運転しながらより高純度の純水を効率よく得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づき詳説する。
【0040】
図1は本発明に係る純水の製造方法に使用される純水製造システムの一実施の形態(第1の実施の形態)を示すシステム構成図である。
【0041】
該純水製造システムは、地下水や水道水等の原水を供給する原水ポンプ1と、原水に含有される遊離塩素を除去する活性炭ろ過装置(遊離塩素除去手段)2と、活性炭ろ過装置2を通過した原水を軟水化して被処理水を生成する軟水装置3と、該被処理水を処理して生産水を生成するRO装置(逆浸透膜ろ過装置)4と、前記生産水の通過流量を測定する流量計5とが給水ライン6上に順次配設され、該給水ライン6は給水タンク7に接続されている。
【0042】
また、活性炭ろ過装置2の下流には残留塩素測定装置8が配され、原水中に含まれる遊離塩素、すなわち遊離残留塩素の濃度を測定する。また、軟水装置3の下流には硬度測定装置9が配され、軟水装置3から出水される被処理水の硬度を測定する。
【0043】
RO装置4の上流側及び下流側にはそれぞれ第1及び第2のシリカ濃度測定装置10a、10bが配され、RO装置4で除去されるシリカの除去率が、前記第1及び第2のシリカ濃度測定装置10a、10bの測定結果に基づいて算出されるように構成されている。また、給水タンク7は、その下方側壁に圧力検知式の水位センサ11が挿入されており、該水位センサ11の検出水位に基づいて給水タンク5への生産水の給水を制御する。
【0044】
尚、上記各構成要素は不図示の制御部に接続され、該制御部によりシステム全体が制御されている。
【0045】
活性炭ろ過装置2は、ろ過塔内に粒状の活性炭(不図示)が収容されており、原水に含有される遊離塩素を除去する。また、この活性炭ろ過装置2には、タイマが内蔵されており、給水ライン6からの原水の供給を定期的に停止して再生処理を行う。すなわち、所定時間(例えば、1〜7/日)毎に再生モードに突入し、逆洗ポンプ(不図示)を駆動して給水タンク7に貯留された生産水を活性炭ろ過装置2に供給して逆洗した後、所定時間経過後に水洗し、活性炭に付着したゴミ等の異物を除去し、再生する。
【0046】
この活性炭ろ過装置2は、例えば、原水に含まれる遊離塩素の含有量が微小である場合等、原水の水質によっては省略することが可能である。ただし、前記遊離塩素が原水中に多量に含まれている場合や、微生物を殺菌する目的で次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を意図的に原水に注入する場合等は、遊離塩素を除去してRO膜の酸化劣化を防止するのが望ましく、活性炭ろ過装置2を設けるのが好ましい。
【0047】
尚、上記再生モードでは、給水タンク7の生産水を使用して逆洗しているが、給水ライン6とは異なる別ラインから原水を活性炭ろ過装置2に供給して逆洗するようにしてもよい。
【0048】
軟水装置3は、イオン交換塔内にナトリウム型の陽イオン交換樹脂(不図示)が収容されており、イオン交換塔に併設された塩水タンク(不図示)内には飽和食塩水が貯留されている。原水が給水ライン6から、軟水装置3に供給されると、原水に含まれる硬度成分、すなわちカルシウムイオン及びマグネシウムイオンが、陽イオン交換樹脂のナトリウムイオンとイオン交換されて除去され、これにより、硬度が5mgCaCO/L以下となるように軟水化される。また、軟水装置3の陽イオン交換樹脂の交換能力が飽和状態になると、軟水装置3は通水モードから再生モードに切り替えられて飽和食塩水が塩水タンクから供給され、これにより陽イオン交換樹脂の再生が行われる。そして再生処理が終了すると、再び通水モードとなって原水が供給可能状態となる。
【0049】
ここで、被処理水の硬度が5mgCaCO/L以下となるように軟水化したのは、以下の理由による。
【0050】
被処理水の硬度が5mgCaCO/Lを超えると、該被処理水をRO装置4に供給した場合、硬度が高過ぎるために被処理水中の不純物を十分に除去することができず、所望の高純度の純水を得るのが困難になる。特に、省エネルギー化の観点から、操作圧が0.5MPa以下の極超低圧膜をRO膜に使用した場合は、不純物の除去率が低下するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施の形態では、被処理水の硬度が5mgCaCO/L以下となるように軟水装置3で軟水化し、これを被処理水としている。
【0052】
また、このように被処理水の硬度を5mgCaCO/L以下とすることにより、例えば活性炭ろ過装置2の収着能力低下等により被処理水中に遊離塩素が含まれていても、該遊離塩素の含有量が微量であれば、該遊離塩素によるRO膜の酸化劣化の進行を抑制することが可能である。
【0053】
尚、軟水装置3の形式としては、被処理水の5mgCaCO/L以下に軟水化できるのであれば、特に限定されるものではない。例えば、通水及び再生剤(飽和食塩水)の双方を同一方向に流す並流再生方式、通水と再生剤とを互いに対向するように流す向流再生方式、通水を一方方向から流し、再生剤を分流してイオン交換樹脂床の両端部から中央部へ向けて流すようにしたスプリットフロー再生方式のいずれでもよいが、原水の水質が悪い、すなわち溶残塩類濃度が高い場合でも、目標純度の軟水を安定して確保することのできる向流再生方式、又はスプリットフロー再生方式を採用するのが好ましい。特に、スプリットフロー再生方式は、再生剤の押出しに生産水ではなく、原水を使用しても目標純度の軟水を確保することができるので、一層好ましい。
【0054】
RO装置4は、極超低圧膜からなるRO膜(RO膜エレメント)12aを内蔵したクロスフロー型のRO膜モジュール12と、加圧ポンプ13とを有している。RO膜モジュール12は、被処理水が流通する一次側とRO膜12aを透過した透過水を出力する二次側とに分離されており、一次側は被処理水の流入ポートと該被処理水が濃縮された濃縮水の流出ポートとを有している。濃縮水の流出ポートには、排水弁14及び循環ライン15が接続され、濃縮水の一部が排出されつつ、残部が加圧ポンプ13の上流側に還流されるようになっている。
【0055】
尚、上記極超低圧膜は、ポリアミド等の合成高分子系材料からなり、25℃における500mg/LNaCl水溶液に対し、操作圧0.7MPaで透過流束60L/h・m・MPa以上、かつ塩除去率98.5%以上の特性を有しており、本実施の形態では、0.5MPa以下の極超低圧の操作圧で膜ろ過分離処理が行われる。
【0056】
このように構成された純水製造システムでは、原水ポンプ1から供給された原水が活性炭ろ過装置2に供給され、原水に含有される遊離塩素が除去される。次いで、残留塩素測定装置8では、原水中に遊離塩素が混入していないか否かを常時監視する。そして、遊離塩素の含有量が許容範囲(例えば、0.05mgCl/L)を超えている場合は、活性炭ろ過装置2に異常が生じているおそれがあると判断し、システムの保守・点検を行う。
【0057】
一方、原水中に遊離塩素が含まれていないか、含まれていても許容範囲内の場合は、原水を軟水装置3に供給する。そして、該軟水装置3で硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水化し、被処理水を生成する。
【0058】
次いで、被処理水を硬度測定装置9で測定し、硬度が5mgCaCO/Lを超えていないか否かを監視する。そして、被処理水の硬度が5mgCaCO/Lを超えている場合は、軟水装置3に異常が生じているおそれがあると判断し、システムの保守・点検を行う。
【0059】
一方、被処理水の硬度が5mgCaCO/L以下の場合は、給水ライン6を介して被処理水をRO装置4に供給する。
【0060】
RO装置4では、加圧ポンプ13が駆動すると、RO膜12aには一次側から0.5MPa以下の操作圧が負荷され、膜ろ過分離されて高純度の透過水が二次側に出水し、これにより生産水を生成し、給水タンク7に貯留される。また、RO膜12aを透過しなかった濃縮水の一部は循環ライン15を介して加圧ポンプ13の上流側に還流され、残りは排水弁14から排水される。
【0061】
また、RO装置4の上流側及び下流側にそれぞれ配された第1及び第2のシリカ濃度測定装置10a、10bにより下記数式(1)に基づきシリカ除去率φを算出する。
【0062】
φ={(S1−S2)/S1}×100 …(1)
ここで、S1は被処理水に含まれるシリカ濃度、S2は生産水に含まれるシリカ濃度を示す。
【0063】
このようにシリカ除去率φを算出することにより、RO膜12aの酸化劣化を早期に発見し、RO膜12aの酸化劣化による除去率の低下等を極力回避することができる。
【0064】
すなわち、各種不純物の除去率を監視する方法としては、電気伝導度やNa、Cl、SO2-などのイオン種、或いはMアルカリ度(被処理水がpH4.8となるまでに必要な酸の量を炭酸カルシウムに換算して表示したもの)等で監視することも可能である。しかしながら、上記イオン種やMアルカリ度等で被処理水の水質を監視した場合は、被処理水中に遊離塩素が含まれていても、これら不純物の除去率は、軟水を被処理水として供給している限り、経時的変動は殆ど生じない。
【0065】
これに対しシリカの場合は、被処理水中に遊離塩素が含まれていると、軟水を被処理水としてRO装置4に供給している場合であっても、通水初期からシリカ除去率φが通水時間に略比例して顕著に低下する。
【0066】
したがって、第1及び第2のシリカ濃度測定装置10a、10bでシリカ除去率φを監視するのが好ましく、これによりRO膜12aの酸化劣化を早期に検知することができ、システム異常に対して迅速に対処することができる。
【0067】
このように本第1の実施の形態では、硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水装置3で軟水化して被処理水を生成し、該被処理水をRO膜12aで処理して生産水を生成するので、所望の高純度の純水を得ることができ、しかもRO膜の酸化劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0068】
また、原水中に含有される遊離塩素を活性炭ろ過装置2により除去した後、軟水装置3で軟水化を行うので、軟水化された被処理水中には遊離塩素を含んでおらず、或いはたとえ被処理水中に遊離塩素を含んでいても微量に抑制することが可能となり、RO膜12aの酸化劣化の進行を効果的に抑制することが可能となる。
【0069】
さらに、被処理水に対する前記生産水のシリカ除去率φを第1及び第2のシリカ濃度測定装置10a、10bの測定結果に基づいて算出しているので、シリカ除去率φの変動によりRO膜12aの酸化劣化に起因したシステム異常に迅速に対処することが可能となる。
【0070】
また、RO膜12aに極超低圧膜を使用しているので、0.5MPa以下の操作圧で運転しても高い除去率を維持して水回収率を向上させることが可能であり、省エネルギー運転しながら安定した高純度の純水を得ることができる。
【0071】
図2は本発明の純水製造システムの第2の実施の形態を示すシステム構成図である。
【0072】
本第2の実施の形態では、第1の実施の形態のRO装置4に代えて、第1のRO装置17と第2のRO装置19とが直列接続され、かつ第1のRO装置17における第1のRO膜16aが極超低圧膜で構成され、第2のRO装置19における第2の第RO膜18aが超低圧膜で構成されている。
【0073】
すなわち、第1のRO装置17は、極超低圧膜からなる第1のRO膜16aを内蔵したクロスフロー型の第1のRO膜モジュール16と、第1の加圧ポンプ20とを有している。第1のRO膜モジュール16は、被処理水が流通する一次側と第1のRO膜16aを透過した透過水を出力する二次側とに分離されており、一次側の被処理水の流入ポートと該被処理水が濃縮された濃縮水の流出ポートとを有している。濃縮水の流出ポートには、第1の排水弁21及び第1の循環ライン22が接続され、濃縮水の一部が排水されつつ、残部が第1の加圧ポンプ20の上流部に還流されるようになっている。
【0074】
尚、上記極超低圧膜は、第1の実施の形態と同様、ポリアミド等の合成高分子系材料からなり、25℃における500mg/LNaCl水溶液に対し、操作圧0.7MPaで透過流束60L/h・m・MPa以上、かつ塩除去率98.5%以上の特性を有しており、本実施の形態では、0.5MPa以下の操作圧で膜ろ過分離処理が行われる。
【0075】
また、第2のRO装置19は、超低圧膜からなる第2のRO膜18aを内蔵したクロスフロー型の第2のRO膜モジュール18と、第2の加圧ポンプ23とを有している。第2のRO膜モジュール18も、第1のRO膜モジュール16と同様、被処理水が流通する一次側と第2のRO膜18aを透過した透過水を出力する二次側とに分離されており、一次側は被処理水の流入ポートと該被処理水が濃縮された濃縮水の流出ポートとを有している。濃縮水の流出ポートには、第2の排水弁24及び第2の循環ライン25が接続され、濃縮水の一部が排水されうつつ、残部が第2の加圧ポンプ23の上流部側に還流されるようになっている。
【0076】
尚、上記超低圧膜は、ポリアミド等の合成高分子系材料からなり、25℃における500mg/LNaCl水溶液に対し、操作圧0.75MPaで透過流速45L/h・m・MPa以上、かつ塩除去率99%以上の特性を有しており、本実施の形態では、0.7MPa以下の操作圧で膜ろ過分離処理が行われる。
【0077】
また、第1のRO装置17の上流側及び下流側にはそれぞれ第1及び第2のシリカ濃度測定装置26a、26bが配され、第2のRO装置19の下流側には第3のシリカ濃度測定装置26cが配されている。そして、第1及び第2のシリカ濃度測定装置26a、26bの測定結果に基づいて第1のRO膜16aのシリカ除去率φ1が算出され、第2及び第3のシリカ濃度測定装置26b、26cの測定結果に基づいて第2のRO膜18aのシリカ除去率φ2が算出され、これにより第1のRO膜16a、第2のRO膜18aの酸化劣化の状態を監視している。
【0078】
このように構成された純水製造システムでは、第1の実施の形態と同様、活性炭ろ過装置2で遊離塩素を除去した後、原水を硬度5mgCaCO/L以下に軟水化して被処理水を生成し、該被処理水が第1のRO装置17に給水される。そして、第1のRO装置17では、第1の実施の形態と同様、高純度の純水が生成され、さらに、この純水が被処理水として第2のRO装置19に供給される。
【0079】
そして、第1のRO装置17で純水が既に得られており、かつ第2のRO装置19では、塩除去率が第1のRO装置17より高いことから、不純物の除去率をより一層高めることができる。そして、第2のRO装置19には純水が供給されることから、通常の操作圧よりも低い圧力でより高純度の純水を得ることができ、省エネルギー化にも寄与することができる。しかも、第1のRO膜16aに極超低圧膜を使用しているので、第1の加圧ポンプ20の能力に余裕が生まれる。このため、低温時にはポンプ回転数を増加して操作圧を上昇させることが容易にでき、定格処理水量を得ることが可能となる。
【0080】
このように本第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水装置3で軟水化して被処理水を生成し、その後、被処理水を極超低圧膜の第1のRO膜16a及び超低圧膜の第2のRO膜18aで処理して生産水を生成するので、不純物の除去率をより一層高めることができる。したがって省エネルギー運転をしながら、より一層の高純度の純水を高効率で得ることができ、しかもRO膜の酸化劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0081】
また、第1の実施の形態と同様、原水に含有される遊離塩素を活性炭ろ過装置2により除去した後、軟水装置3で軟水化を行うので、軟水化された被処理水中には遊離塩素を含んでおらず、或いはたとえ被処理水中に遊離塩素を含んでいても微量に抑制することが可能となり、第1及び第2のRO膜16a、18aの酸化劣化の進行を効果的に抑制することが可能となる。
【0082】
さらに、被処理水に対する前記生産水のシリカ除去率φ1、φ2を第1〜第3のシリカ濃度測定装置26a〜26cの測定結果に基づいて算出しているので、シリカ除去率φ1、φ2の変動により第1及び第2のRO膜16a、18aの酸化劣化に起因したシステム異常に迅速に対処することが可能となる。
【0083】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。上記各実施の形態では、活性炭ろ過装置で遊離塩素を除去しているが、活性炭ろ過装置に代えて、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤を原水に注入して原水中の遊離塩素を還元除去するようにしてもよい。
【0084】
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
【実施例1】
【0085】
この実施例1では、被処理水としての試験水の硬度を変化させ、各硬度における電気伝導度除去率(以下、「EC除去率」という。)を算出し、試験水硬度とEC除去率との関係を調べた。
【0086】
尚、EC除去率とは、RO膜に供給される試験水の電気伝導度を100とした場合の透過水の電気伝導度をいい、数式(2)により算出した。
【0087】
EC除去率(%)={(E1−E2)/E1}×100 ・・・(2)
ここで、E1はRO膜に供給される試験水の電気伝導度、E2は透過水の電気伝導度を示す。
【0088】
図3は、実施例1で使用した実験装置の模式構成図である。
【0089】
すなわち、この実験装置は、試験水が貯留される給水タンク31と、RO膜モジュール32とを備えている。また、RO膜モジュール32の給水側、濃縮水側、及び透過水(生産水)側にはそれぞれ第1〜第3の圧力計33a〜33cが設けられている。そして、給水タンク31とRO膜モジュール32とは給水ライン34で接続されると共に、該給水ライン34には給水ポンプ35が介装されている。
【0090】
そして、RO膜モジュール32で膜ろ過分離された透過水は透過水ライン36を経て給水タンク31に回収される一方、濃縮水の一部は濃縮水循環ライン37を介して給水ライン34に還流され、かつ前記濃縮水の残部は排水ライン38を介して給水タンク31に回収される。このように本実施例では、濃縮水と透過水の双方が給水タンク31に回収されることから、給水タンク31内の試験水の水質は、常に一定に保持されることになる。
【0091】
また、給水タンク31にはヒータ39が付設されると共に、給水循環ライン40が接続されている。この給水循環ライン40には、循環ポンプ41及びチラー42が介装され、ヒータ39とチラー42とを調整することにより、給水タンク31内の試験水が、常に25℃前後となるように設定される。尚、配管適所には流量計43a〜43c及び弁44a〜44dが配されている。
【0092】
ここで、RO膜モジュール32に内蔵されるRO膜32aには、以下の性能を有する極超低圧膜を使用した。
【0093】
〔RO膜の性能〕
膜素材:ポリアミド系高分子
膜面積:37.2m
透過流束:60L/h・m・MPa以上
塩除去率:98.5%以上
尚、上記RO膜の特性は、500mg/LNaCl水溶液について、25℃における操作圧を0.7MPaとし水回収率を15%とした場合を示している。
【0094】
上述のように構成された実験装置を使用し、以下のようにして実験した。
【0095】
まず、予め活性炭ろ過装置及び軟水装置で処理された試験水を給水タンク31に貯留し、チラー42とヒータ39を調整して試験水温度が25℃前後となるようにした。尚、試験水温度を略一定にしたのは、温度によって水の粘性が変動することから、EC除去率等に影響を及ぼすのを回避するためである。
【0096】
次いで、弁44aを開いて給水ポンプ35を駆動させ、透過水量が1000L/hとなるようにインバータ(不図示)で周波数調整を行いながら、試験水をRO膜モジュール32に供給した。尚、操作圧は0.3〜0.4MPaの間で変動したが、0.5MPa以下に抑制できることを確認した。
【0097】
次いで、RO膜32aで試験水を透過水と濃縮水とに膜ろ過分離し、透過水を給水タンク31に回収した。また、濃縮水については透過水と排水との比が約7:3となるように弁44b及び弁44cを操作し、循環水は濃縮水循環ライン37を介して給水ライン34に還流し、一方、排水は排水ライン38を介して給水タンク31に還流した。
【0098】
そして、給水タンク31に塩化カルシウムを添加して、試験水の硬度を種々設定し、上述の方法で実験装置に試験水を通水した。
【0099】
尚、試験水硬度の設定は、試験水硬度が所定値となるように、塩化カルシウムの理論添加量を予め算出しておき、給水タンク31内の試験水に前記理論添加量を適宜添加して行った。
【0100】
そして、ICP発光分光装置(セイコーインスツルメンツ社製VISTA-MPX)を使用し、各実験毎に試験水の硬度を測定した。さらに、試験水及び透過水を各実験毎にサンプリングし、電気伝導度計(東亜DKK社製CM−21P)で電気伝導度を測定し、この測定結果に基づいてEC除去率を算出した。
【0101】
表1は試験No.1〜9における試験水硬度、EC除去率、及び試験水温度を示している。
【0102】
【表1】

図4は試験水硬度とEC除去率及び試験水温度との関係をプロットした図であり、図5は図4のA部拡大図、図6は図4のB部拡大図である。いずれも横軸が試験水硬度(mgCaCO/L)、左縦軸がEC除去率(%)、右縦軸が試験水温度(℃)であり、実線がEC除去率、破線が試験水温度を示している。
【0103】
この表1及び図4〜6から明らかなように、試験水硬度が高くなるに伴いEC除去率が低下している。そして、試験No.3、4に示すように、試験水硬度が4.8mgCaCO/LのときはEC除去率は98.6%となって98.5%以上を確保できたが、試験水硬度が12.9mgCaCO/LになるとEC除去率は98.4%となって98.5%未満に低下した。
【0104】
したがって、98.5%以上のEC除去率を確保して高純度の純水を安定的に供給するためには、試験水硬度、すなわちRO装置に供給されるべき被処理水の硬度を5mgCaCO/L以下に抑制する必要のあることが分かった。
【0105】
尚、本実施例では塩化カルシウムを添加して試験水硬度を変えているが、塩化カルシウムを添加した場合、塩化物イオン及びカルシウムイオンの双方が増加すると考えられる。したがって、EC除去率の低下が塩化物イオンに依るものか、或いはカルシウムイオンに依るものかは不明である。
【0106】
そこで、本実施例では、別途、試験水の電気伝導度が同一となるように試験水に塩化ナトリウム又は塩化カルシウムをそれぞれ添加して比較試験を行った。その結果、塩化ナトリウム又は塩化カルシウムの添加によりいずれの試験でも電気伝導度は上昇した。しかし、EC除去率については、塩化カルシウムを添加した試験では低下したが、塩化ナトリウムを添加した試験では低下しなかった。したがって、塩化カルシウムを添加によって、カルシウムイオンが増加して硬度が上昇し、これによりEC除去率が低下したものと思われる。
【0107】
このようにして上記EC除去率の低下は、塩化物イオンの増加に依るものではなく、カルシウムイオンの増加に依るものであることを確認した。
【0108】
そして、この実施例1により、98.5%以上のEC除去率を確保して高純度の純水を得るためには、被処理水の硬度を5mgCaCO/L以下に軟水化する必要のあることが確認された。
【実施例2】
【0109】
実施例2では、原水として水道水を軟水処理した軟水、及び水道水(硬水)を使用して通水時間と透過流束及び除去率の関係を調べ、これらがRO膜の酸化劣化に及ぼす影響を確認した。
【0110】
図7は実施例2で使用した実験装置の模式構成図である。
【0111】
この実験装置は、原水供給ライン45上に軟水装置46が配されており、軟水装置46で軟水化された軟水が試験水として給水タンク47に貯留されるように構成されている。さらに、給水タンク47とRO膜モジュール48とが給水ライン49で接続されると共に、該給水ライン49には給水ポンプ50が介装されている。
【0112】
尚、RO膜モジュール48に内蔵されるRO膜48aとしては、実施例1と同様の性能を有する極超低圧膜を使用した。
【0113】
原水供給ライン45には軟水装置46をバイパスするバイパスライン51が接続され、遊離塩素を含んだ原水が軟水装置46を介さずに直接給水タンク47に供給されるように構成されている。
【0114】
そして、RO膜モジュール48で試験水(又は原水)は透過水と濃縮水とに膜ろ過分離され、透過水は透過水ライン52に出水される一方、濃縮水の一部は濃縮水循環ライン53を介して給水ライン49に還流されると共に、前記濃縮水の残部は排水ライン54から外部に排水される。
【0115】
尚、RO膜モジュール48の給水側、濃縮水側、及び透過水側にはそれぞれ第1〜第3の圧力計56a〜56cが設けられ、さらに、配管適所には流量計57a〜57c及び弁58a〜58cが配されている。
【0116】
給水ライン49を流れる水をサンプリングし、残留塩素測定装置で遊離塩素を測定したところ、0.4mg/Lであった。また、給水タンク47に貯留された試験水(軟水)をサンプリングし、硬度測定装置で硬度を測定したところ、5mgCaCO/L以下であった。
【0117】
次いで、このような遊離塩素を含有した試験水を、実施例1と同様、試験水温度を略一定にしてRO膜モジュール48に長時間連続して通水し、EC除去率、シリカ除去率、及び透過流束を測定し、その経時変化を調べた。尚、操作圧は0.18〜0.40MPaの範囲で変動したが、0.5MPa以下に抑制できることを確認した。
【0118】
図8はその測定結果を示している。横軸が通水時間(h)、左縦軸が除去率(%)及び透過流束(L/h・m・MPa)、右縦軸が試験水温度(℃)である。(I)がシリカ除去率(%)、(II)がEC除去率(%)、(III)が透過流束(L/h・m・MPa)、(IV)が試験水温度(℃)を示している。図中、Tが軟水供給区間、すなわち軟水装置46で軟水処理された試験水を供給した区間である。軟水供給区間Tが経過した後は、通水経路をバイパスライン51に切り替え、RO膜モジュール48に原水である水道水(硬水)を直接供給した。
【0119】
この図8から明らかなように、通水時間の経過と共に透過流束が上昇している。すなわち、軟水供給区間Tであっても、遊離塩素を除去していないため、軟水中には遊離塩素が含まれており、このためRO膜48aの酸化劣化が進み、透過流束が増加している。また、軟水供給区間Tでは、EC除去率は殆ど変化していないが、シリカ除去率は通水初期から通水時間に略比例して顕著に低下している。そして、軟水供給区間Tの経過後、原水(硬水)供給に切り替えた時点で透過流束は更に上昇し、かつEC除去率が急激に低下している。
【0120】
すなわち、遊離塩素の除去処理を行わずに、被処理水中に相当量の遊離塩素を含んでいる場合は、RO膜の酸化劣化は進行するが、EC除去率は殆ど変動しない。したがって電気伝導度を監視していても酸化劣化の状態を迅速に把握することができない。
【0121】
これに対しシリカ除去率は通水初期から通水時間に略比例して経時的に低下している。したがって、シリカ除去率を常時監視しておくことにより、遊離塩素に起因した酸化劣化を迅速に把握することができ、システム異常に迅速に対処することが可能である。
【0122】
図9は、ナトリウムイオン及び硫酸イオンの除去率をシリカ除去率と比較したものであり、横軸は通水時間(h)、縦軸は除去率(%)である。(I)はシリカ、(II)はナトリウムイオン、(III)は硫酸イオンの各除去率を示している。
【0123】
ナトリウムイオン及び硫酸イオンの除去率は、イオンクロマトグラフ法(ダイオネクス社製ICS−1000)で試験水及び透過水のナトリウムイオン濃度及び硫酸イオン濃度を測定して求めた。尚、塩化物イオン、Mアルカリ度についても除去率を求めたが、ナトリウムイオンと略同様の除去率を示したので、図示は省略した。
【0124】
この図9から明らかなように、軟水中に遊離塩素を含んでいるので、シリカ除去率は、通水初期から通水時間に略比例して経時的に低下しているが、ナトリウムイオンや硫酸イオンは、電気伝導度の場合(図8参照)と同様、軟水供給区間Tでは除去率が殆ど変動していない。
【0125】
したがって、被処理水中に相当量の遊離塩素を含んでいる場合は、シリカ除去率を常時監視してRO膜の酸化劣化に迅速に対処するのが好ましいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明に係る純水の製造方法に使用される純水製造システムの一実施の形態(第1の実施の形態)を示すシステム構成図である。
【図2】本発明に係る純水の製造方法に使用される純水製造システムの第2の実施の形態を示すシステム構成図である。
【図3】実施例1で使用した実験装置の模式構成図である。
【図4】被処理水の硬度とEC除去率及び被処理水温度との関係を示す図である。
【図5】図4のA部拡大図である。
【図6】図4のB部各大図である。
【図7】実施例2で使用した実験装置の模式構成図である。
【図8】通水時間と、除去率、透過流束、及び被処理水温度との関係を示す図である。
【図9】通水時間と除去率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
2 活性炭ろ過装置(遊離塩素除去手段)
3 軟水装置
4 RO装置
10a 第1のシリカ濃度測定装置
10b 第2のシリカ濃度測定装置
12a RO膜(極超低圧膜)
16a 第1のRO膜(極超低圧膜)
17 第1のRO装置
18a 第2のRO膜(超低圧膜)
19 第2のRO装置
26a 第1のシリカ濃度測定装置
26b 第2のシリカ濃度測定装置
26c 第3のシリカ濃度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬度が5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水化して被処理水を生成し、該被処理水を逆浸透膜で処理して生産水を生成することを特徴とする純水の製造方法。
【請求項2】
前記原水中に含有される遊離塩素を除去した後、前記軟水化を行うことを特徴とする請求項1記載の純水の製造方法。
【請求項3】
前記被処理水に対する前記生産水のシリカ除去率を監視することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の純水の製造方法。
【請求項4】
前記逆浸透膜は、極超低圧膜であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の純水の製造方法。
【請求項5】
前記逆浸透膜は、少なくとも極超低圧膜と超低圧膜とを含む二種類以上からなり、前記被処理水を前記極超低圧膜で処理した後、前記超低圧膜で処理し、前記生産水を生成することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の純水の製造方法。
【請求項6】
原水を軟水化して被処理水を生成する軟水装置と、該軟水装置で生成された前記被処理水を処理して生産水を生成する逆浸透膜ろ過装置とを備えた純水製造システムにおいて、
前記原水に対する生産水のシリカ除去率を監視するシリカ除去率監視手段を備えると共に、
前記軟水装置は、5mgCaCO/L以下となるように原水を軟水化して被処理水を生成する被処理水生成手段を有していることを特徴とする純水製造システム。
【請求項7】
前記原水に含有される遊離塩素を除去する遊離塩素除去手段を備えていることを特徴とする請求項6記載の純水製造システム。
【請求項8】
前記遊離塩素除去手段は、活性炭ろ過装置であることを特徴とする請求項7記載の純水製造システム。
【請求項9】
前記逆浸透膜ろ過装置は、極超低圧膜モジュールを有していることを特徴とする請求項6乃至至請求項8のいずれかに記載の純水製造システム。
【請求項10】
前記逆浸透膜ろ過装置は、第1の逆浸透膜ろ過装置と第2の逆浸透膜ろ過装置とを含む二種類以上の逆浸透膜ろ過装置を備え、
前記第1の逆浸透膜ろ過装置は、極超低圧膜モジュールを有し、前記第2の逆浸透膜ろ過装置は、超低圧膜モジュールを有していることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれかに記載の純水製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−82610(P2010−82610A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257956(P2008−257956)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】