説明

純水製造装置及び純水製造方法

【課題】ホウ素濃度の極めて低い純水を、高い水回収率で製造することのできる純水製造装置及び純水製造方法を提供する
【解決手段】純水製造装置は、原水W0を処理する前処理装置5と、前処理装置5からの処理水W1を脱塩室11Aに受け入れて脱イオン処理を行ってホウ素を除去する第1の電気脱イオン装置6Aと、第1の電気脱イオン装置6Aからの脱塩水の一部を第1の電気脱イオン装置6Aの濃縮室に導入して得られた濃縮水W4を脱塩室11Bに受け入れて脱イオン処理を行ってホウ素を除去する第2の電気脱イオン装置6Bとを備え、第2の電気脱イオン装置6Bからの脱塩水W5を第1の電気脱イオン装置6Aの前段に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造システム等に組み込むのに好適な純水製造装置に関し、特にホウ素濃度の低い純水を製造するための純水製造装置に関する。また、本発明は、超純水製造システム等に好適な純水製造方法に関し、特にホウ素濃度の低い純水を製造するための純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超純水製造システムは、通常、前処理システム、一次純水システム、及びサブシステムより構成される。前処理システムは、凝集濾過、MF膜(精密濾過膜)、UF膜(限外濾過膜)等による除濁処理装置、活性炭等による脱塩素処理装置により構成される。
【0003】
一次純水システムは、RO(逆浸透膜)装置、脱気膜装置、電気脱イオン装置等により構成され、かかる一次純水システムにより、ほとんどのイオン成分やTOC成分が除去される。また、サブシステムは、UV装置(紫外線酸化装置)、非再生型イオン交換装置、UF装置(限外濾過装置)等により構成され、微量イオンの除去、特に低分子の微量有機物の除去、微粒子の除去が行われる。このサブシステムで作られた超純水は、ユースポイントに送水され、余剰の超純水はサブシステムの前段のタンクに返送されるのが一般的である。
【0004】
ところで、超純水の要求水質は年々厳しくなり、現在、最先端の電子産業分野ではホウ素濃度1ppt以下の超純水が要求されるようになってきている。このホウ素は、超純水中ではほとんどホウ酸イオンとして存在することになるが、このホウ酸イオンは弱イオンであるので除去するのが難しい。そこで、ホウ素濃度の低い純水を製造するために、RO装置の給水をpH10以上にしてRO装置でのホウ素除去率を向上させることが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、前処理後の処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂と接触させること(特許文献2参照)、原水をRO装置等の脱塩装置で脱塩した後、ホウ素吸着樹脂塔に通水することが提案されている(特許文献3参照)。
【0006】
さらに、原水を前処理装置、2段RO装置、電気再生式脱塩装置等に通水させた処理水を、ホウ素選択性イオン交換樹脂に接触させる超純水製造装置が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3321179号公報
【特許文献2】特許第3200301号公報
【特許文献3】特開平8−89956号公報
【特許文献4】特開平9−192661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された純水製造方法では、RO装置の給水をpH10以上に調整するためにアルカリを使用するか、アニオン交換樹脂塔を設ける必要があり、薬品コスト又は装置的負荷がかかる上に、連続運転ができないという問題点がある。
【0009】
また、特許文献2〜4に記載された純水製造方法は、処理水をホウ素選択性イオン交換樹脂やホウ素吸着樹脂に流通することにより、ホウ素を除去するものであるが、被処理水のホウ素濃度が高いと、これらのホウ素吸着樹脂等が短期間で破過してしまい、被処理水のホウ素濃度が例えば10ppb以下程度の低濃度であるとホウ素除去率が低下してしまうという問題点がある。さらに、ホウ素吸着樹脂からのTOCの溶出のおそれもあるため、ホウ素吸着樹脂の洗浄、コンディショニングが必要であるという問題点もある。
【0010】
さらに、電気脱イオン装置を用い、陰イオンであるホウ酸イオンを同時に除去することが考えられるが、ホウ酸イオンは弱イオンであるので、電気脱イオン装置の電流密度を上げて運転しても除去率を90%以上にすることは困難である。また、RO装置を組み合わせてもホウ素除去率を98%以上にすることが困難である。
【0011】
近年、超純水の要求水質は年々厳しくなり、ホウ素濃度100ppt以下、最先端の電子産業分野ではホウ素濃度10ppt以下、場合によっては1ppt以下の水質が要求されるにもかかわらず、簡単な構造でこれを達成できる純水製造装置はなかった。これを、電気脱イオン装置を用いて達成するためには、少なくとも電気脱イオン装置におけるホウ素除去率を99%以上、特に99.5%以上にすることが必要である。
【0012】
電気脱イオン装置における99%以上のホウ素除去率を達成するためには、純水製造装置系内のホウ素濃縮を抑制すべく、水回収率を約80%程度に設定して電気脱イオン装置を運転し、約20%の濃縮水を系外に排出する必要がある。そのため、電気脱イオン装置を用いると水回収率が低いという問題点があった。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ホウ素濃度の極めて低い純水を、高い水回収率で製造することのできる純水製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、ホウ素濃度の低い純水を、高い水回収率で製造することのできる純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、原水を処理する前処理装置と、前記前処理装置からの処理水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行う第1の電気脱イオン装置と、前記第1の電気脱イオン装置からの濃縮水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行う第2の電気脱イオン装置とを備え、前記第2の電気脱イオン装置からの脱塩水を前記第1の電気脱イオン装置の前段に供給することを特徴とする純水製造装置を提供する(発明1)。
【0015】
純水製造装置における水回収率を向上させるためには、電気脱イオン装置からの濃縮水を廃棄することなく、純水製造装置の系内に返送することが考えられるが、かかる濃縮水はホウ素を高濃度で含有しているため、そのまま返送すると系内のホウ素濃度が上昇してしまう。しかしながら、上記発明(発明1)によれば、第1の電気脱イオン装置からの濃縮水を第2の電気脱イオン装置にて処理することで、前処理装置からの処理水よりもホウ素濃度を低減させた脱塩水を得ることができるため、かかる脱塩水を第1の電気脱イオン装置の前段に供給することで、純水製造装置による生産水(脱塩水)のホウ素濃度を効果的に低減しつつ、水回収率を向上させることができる。
【0016】
上記発明(発明1)においては、前記第2の電気脱イオン装置からの濃縮水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行う第3の電気脱イオン装置をさらに備え、前記第2の電気脱イオン装置からの脱塩水及び前記第3の電気脱イオン装置からの脱塩水を、前記第1の電気脱イオン装置の前段に供給するのが好ましい(発明2)。
【0017】
第2の電気脱イオン装置からの濃縮水から、さらにホウ素を除去することで、前処理装置の処理水よりもホウ素濃度を低減させた脱塩水を得ることができるため、上記発明(発明2)によれば、かかる脱塩水を第1の電気脱イオン装置の前段に供給することで、さらに水回収率を向上させることができる。
【0018】
上記発明(発明2)においては、前記第1の電気脱イオン装置の脱塩室に受け入れられる前記前処理装置からの処理水のシリカ濃度が、30ppb(SiO換算)以下であるのが好ましい(発明3)。
【0019】
シリカを含有する被処理水を電気脱イオン装置にて処理すると、1体の電気脱イオン装置あたりシリカ濃度が5倍に濃縮され、電気脱イオン装置にて処理する被処理水のシリカ濃度が基準値の800ppbを超えると、当該電気脱イオン装置においてシリカスケールが生じてしまうおそれがある。しかしながら、上記発明(発明3)のように、前処理装置の処理水のシリカ濃度が30ppb(SiO換算)以下であることで、第3の電気脱イオン装置の脱塩室に受け入れられる被処理水(第2の電気脱イオン装置からの濃縮水)のシリカ濃度を800ppb以下とすることができるため、電気脱イオン装置(特に、第3の電気脱イオン装置)でのシリカスケールの発生を防止することができ、純水製造装置を安定的に運転することができる。
【0020】
上記発明(発明1〜3)においては、前記第1の電気脱イオン装置の後段に設けられ、前記第1の電気脱イオン装置からの脱塩水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行う第4の電気脱イオン装置をさらに備え、前記第4の電気脱イオン装置からの濃縮水を前記第1の電気脱イオン装置の前段に供給するのが好ましい(発明4)。
【0021】
第4の電気脱イオン装置からの濃縮水は、前段の第1の電気脱イオン装置にてホウ素が除去されていることで、前処理装置の処理水よりもホウ素濃度が低いものとなるため、上記発明(発明4)によれば、第4の電気脱イオン装置からの濃縮水を第1の電気脱イオン装置の前段に供給することで、さらに水回収率を向上させることができるとともに、第1の電気脱イオン装置からの脱塩水をさらに第4の電気脱イオン装置にて処理することで、極めて低いホウ素濃度の生産水(脱塩水)を製造することができる。
【0022】
上記発明(発明1〜4)においては、前記電気脱イオン装置の脱塩室内には、前記脱塩室内を複数の小室に区画する区画部材が設けられているのが好ましい(発明5)。
【0023】
上記発明(発明5)によれば、脱塩室内において、各小室内の略全体に被処理水を通水することができるため、被処理水の短絡を防止することができ、これにより脱塩室内にイオン交換体を充填した場合に、当該イオン交換体と被処理水とをより効果的に接触させて脱塩室内でのホウ素の移動を促進させることができるため、よりホウ素濃度を低減させた生産水(脱塩水)を製造することができる。
【0024】
上記発明(発明1〜5)においては、前記電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を、当該電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から一過式に導入するのが好ましい(発明6)。
【0025】
水質の良好な脱塩室からの排出水(脱塩水)を脱塩室の出口側から入口側の方向に向けて濃縮室に導入することにより、脱塩室と濃度室との間のホウ素の濃度勾配を緩和することができ、特に向流一過式に脱塩水を濃縮室に導入することで濃縮室における脱塩室出口側での濃縮水のホウ素濃度が低くなり、濃度拡散による脱塩室側への影響(濃縮室側から脱塩室側へのホウ素の拡散)を抑制することができるため、上記発明(発明6)によれば、電気脱イオン装置によるホウ素の除去率を飛躍的に向上させることができる。
【0026】
第二に本発明は、原水を前処理装置で処理した処理水を第1の電気脱イオン装置の脱塩室に導入して脱イオン処理を行う純水製造方法であって、前記第1の電気脱イオン装置からの濃縮水を、第2の電気脱イオン装置の脱塩室に導入し、前記第2の電気脱イオン装置からの脱塩水を、前記第1の電気脱イオン装置の前段に導入することを特徴とする純水製造方法を提供する(発明7)。
【0027】
上記発明(発明7)によれば、第1の電気脱イオン装置からの濃縮水を第2の電気脱イオン装置にて処理することで、前処理装置の処理水よりもホウ素濃度を低減させた脱塩水を得ることができる。そのため、かかる脱塩水を第1の電気脱イオン装置の前段に供給することで、生産水(脱塩水)のホウ素濃度を効果的に低減しつつ、水回収率を向上させることができる。
【0028】
上記発明(発明7)においては、前記第2の電気脱イオン装置からの濃縮水を、第3の電気脱イオン装置の脱塩室に導入し、前記第2の電気脱イオン装置からの脱塩水及び前記第3の電気脱イオン装置からの脱塩水を、前記第1の電気脱イオン装置の前段に導入するのが好ましい(発明8)。
【0029】
第2の電気脱イオン装置からの濃縮水から、さらにホウ素を除去することで、前処理装置の処理水よりもホウ素濃度を低減させた脱塩水を得ることができるため、上記発明(発明8)によれば、かかる脱塩水を第1の電気脱イオン装置の前段に供給することで、さらに水回収率を向上させることができる。
【0030】
上記発明(発明7,8)においては、前記第1の電気脱イオン装置の脱塩室に導入される処理水のシリカ濃度が30ppb(SiO換算)以下となるように、前記前処理装置にて原水を処理するのが好ましい(発明9)。
【0031】
上記発明(発明9)のように、第1の電気脱イオン装置の脱塩室に導入される処理水のシリカ濃度が30ppb(SiO換算)以下となるように前処理装置にて原水を処理することで、第3の電気脱イオン装置の脱塩室に導入される被処理水(第2の電気脱イオン装置からの濃縮水)のシリカ濃度を800ppb以下とすることができるため、電気脱イオン装置でのシリカスケールの発生を防止することができ、ホウ素濃度の低い生産水(脱塩水)を安定的に製造することができる。
【0032】
上記発明(発明7〜9)においては、前記第1の電気脱イオン装置からの脱塩水を、第4の電気脱イオン装置の脱塩室に導入し、前記第4の電気脱イオン装置からの濃縮水を、前記第1の電気脱イオン装置の前段に導入するのが好ましい(発明10)。
【0033】
第4の電気脱イオン装置の脱塩室に導入する第1の電気脱イオン装置からの脱塩水が、十分にホウ素が除去された脱塩水であることで、第4の電気脱イオン装置からの濃縮水は、前処理装置の処理水よりもホウ素濃度が低いものとなるため、上記発明(発明10)によれば、第4の電気脱イオン装置からの濃縮水を第1の電気脱イオン装置の前段に供給することで、さらに水回収率を向上させることができるとともに、第1の電気脱イオン装置からの脱塩水をさらに第4の電気脱イオン装置にて処理することで、極めて低いホウ素濃度の生産水(脱塩水)を製造することができる。
【0034】
上記発明(発明7〜10)においては、前記電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を、当該電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から一過式に導入するのが好ましい(発明11)。
【0035】
水質の良好な脱塩室からの排出水(脱塩水)を脱塩室の出口側から入口側の方向に向けて濃縮室に導入することにより、脱塩室と濃度室との間のホウ素の濃度勾配を緩和することができ、特に一過式に脱塩水を濃縮室に導入することで濃縮室における脱塩室出口側での濃縮水のホウ素濃度が低くなり、濃度拡散による脱塩室側への影響(濃縮室側から脱塩室側へのホウ素の拡散)を抑制することができるため、上記発明(発明11)によれば、電気脱イオン装置によるホウ素の除去率を飛躍的に向上させることができ、よりホウ素濃度の低い生産水(脱塩水)を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、ホウ素濃度の低い純水を、高い水回収率で製造することのできる純水製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、ホウ素濃度の低い純水を、高い水回収率で製造することができる純水製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る純水製造装置を示すフロー図である。
【図2】同実施形態における電気脱イオン装置を示す概略構成図である。
【図3】同実施形態における電気脱イオン装置の脱塩室に配設される区画部材を示す概略構成図である。
【図4】実施例1の純水製造装置を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の純水製造装置の一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る純水製造装置を示すフロー図であり、図2は、本実施形態における第1〜第4の電気脱イオン装置を示す概略構成図である。
【0039】
図1に示すように、純水製造装置10は、活性炭装置1と、ヒータ2と、膜式濾過装置3と、原水タンク4と、前処理装置5と、貯水タンクT1〜T3と、第1〜第4の電気脱イオン装置6A〜6Dと、一次純水のサブタンク7とから構成されている。
【0040】
本実施形態において、前処理装置5は、第1の逆浸透膜(RO)装置51と、第2の逆浸透膜(RO)装置52と、脱炭酸膜装置53とにより構成されている。この前処理装置5は、原水W0の水質に応じて、シリカ濃度30ppb(SiO換算)以下の処理水W1が第1の電気脱イオン装置6Aの脱塩室に導入されるように設計されていればよい。
【0041】
上述したような純水製造装置10において、第1〜第4の電気脱イオン装置6A〜6Dは、図2に示すように、陽極15A〜15Dと陰極16A〜16Dとの間に複数のアニオン交換膜13A〜13Dとカチオン交換膜14A〜14Dとを交互に配列し、これらのアニオン交換膜13A〜13D及びカチオン交換膜14A〜14Dにより区画されてなる脱塩室11A〜11Dと濃縮室12A〜12Dとを備えている。
【0042】
第1の電気脱イオン装置6Aの脱塩室11Aの入口側には、前処理装置5からの処理水W1の流路R11が接続され、脱塩室11Aの出口側には、脱塩水W2の流路R12が接続されており、前処理装置5からの処理水W1を処理し、脱塩水W2として取り出すことのできる構成となっている。
【0043】
流路R12の途中には、流路R12から分岐して濃縮室12Aに接続する分岐流路R13が設けられており、脱塩室11Aからの脱塩水W2の一部を、脱塩室11Aの出口側から入口側の方向に向けて濃縮室12Aに導入することができる。脱塩水W2の一部を濃縮室12Aに導入する場合、一過式に導入するのが好ましい。このように濃縮室12Aに脱塩水W2の一部を向流一過式に導入することで、濃縮室12Aにおける脱塩室11A出口側での濃縮水のホウ素濃度が低くなり、濃度拡散による脱塩室11A側への影響(濃縮室12A側から脱塩室11A側へのホウ素の拡散)を抑制することができるため、ホウ素除去率を飛躍的に向上させることができる。
【0044】
濃縮室12Aの出口側には、濃縮水の流路R14を介して貯水タンクT2が接続されており、濃縮室12Aから排出された濃縮水W4が流路R14を通じて貯水タンクT2に貯留されるように構成されている。
【0045】
第2の電気脱イオン装置6Bの脱塩室11Bの入口側には、流路R21を介して貯水タンクT2が接続されており、これにより、第1の電気脱イオン装置6Aの濃縮室12Aから排出された濃縮水W4が、流路R21を通じて脱塩室11Bに導入されるように構成されている。
【0046】
第2の電気脱イオン装置6Bの脱塩室11Bの出口側には、脱塩水W5の流路R22を介して貯水タンクT1が接続されており、脱塩室11Bからの脱塩水W5が流路R22を通じて貯水タンクT1に貯留されるように構成されている。
【0047】
流路R22の途中には、流路R22から分岐して濃縮室12Bに接続する分岐流路R23が設けられており、脱塩室11Bからの脱塩水W5の一部を、脱塩室11Bの出口側から入口側の方向に向けて濃縮室12Bに導入することができる。脱塩水W5の一部を濃縮室12Bに導入する場合、一過式に導入するのが好ましい。このように濃縮室12Bに脱塩水W5の一部を向流一過式に導入することで、濃縮室12Bにおける脱塩室11B出口側での濃縮水のホウ素濃度が低くなり、濃度拡散による脱塩室11B側への影響(濃縮室12B側から脱塩室11B側へのホウ素の拡散)を抑制することができるため、ホウ素除去率を飛躍的に向上させることができる。
【0048】
濃縮室12Bの出口側には、濃縮水の流路R24を介して貯水タンクT3が接続されており、濃縮室12Bから排出された濃縮水W6が流路R24を通じて貯水タンクT3に貯留されるように構成されている。
【0049】
第3の電気脱イオン装置6Cの脱塩室11Cの入口側には、流路R31を介して貯水タンクT3が接続されており、これにより、第2の電気脱イオン装置6Bの濃縮室12Bから排出された濃縮水W6が、流路31を通じて脱塩室11Cに導入されるように構成されている。
【0050】
第3の電気脱イオン装置6Cの脱塩室11Cの出口側には、脱塩水W7の流路R32を介して貯水タンクT1が接続されており、脱塩室11Cからの脱塩水W7が流路R32を通じて貯水タンクT1に貯留されるように構成されている。
【0051】
流路R32の途中には、流路32から分岐して濃縮室12Cに接続する分岐流路R33が設けられており、脱塩室11Cからの脱塩水W7の一部を、脱塩室11Cの出口側から入口側の方向に向けて濃縮室12Cに導入することができる。脱塩水W7の一部を濃縮室12Cに導入する場合、一過式に当該脱塩水W7の一部を導入するのが好ましい。このように濃縮室12Cに脱塩水W7の一部を向流一過式に導入することで、濃縮室12Cにおける脱塩室11C出口側での濃縮水の濃度が低くなり、濃度拡散による脱塩室11C側への影響(濃縮室12C側から脱塩室11C側へのホウ素の拡散)を抑制することができるため、ホウ素除去率を飛躍的に向上させることができる。
【0052】
第4の電気脱イオン装置6Dの脱塩室11Dの入口側には、第1の電気脱イオン装置6Aからの脱塩水W2の流路R41(R12)が接続され、脱塩室11Dの出口側には、脱塩水W8の流路R42が接続されている。これにより、脱塩水W2を第4の電気脱イオン装置6Dにて処理し、脱塩水(最終生産水)W8として取り出すことができる構成となっている。
【0053】
流路R42の途中には、流路R42から分岐して濃縮室12Dに接続する分岐流路R43が設けられており、脱塩室11Dからの脱塩水W8の一部を、脱塩室11Dの出口側から入口側の方向に向けて濃縮室12Dに導入することができる。脱塩水W8の一部を濃縮室12Dに導入する場合、一過式に当該脱塩水W8の一部を導入するのが好ましい。このように濃縮室12Dに脱塩水W8の一部を向流一過式に導入することで、濃縮室12Dにおける脱塩室11D出口側での濃縮水の濃度が低くなり、濃度拡散による脱塩室11D側への影響(濃縮室12D側から脱塩室11D側へのホウ素の拡散)を抑制することができるため、ホウ素除去率を飛躍的に向上させることができる。
【0054】
濃縮室12Dの出口側には、濃縮水の流路R44を介して貯水タンクT1が接続されており、濃縮室12Dから吐出された濃縮水W3が流路R44を通じて貯水タンクT1に貯留されるように構成されている。
【0055】
第1〜第4の電気脱イオン装置6A〜6Dの脱塩室11A〜11D内には、図3(A)に示すような複数の小室9に区画されてなるハニカム構造体からなる区画部材8が設けられており、かかる複数の小室9にはそれぞれイオン交換体(図示せず)が充填されている。小室9は、上下左右に多数配置されており、各小室9の1対の側辺が脱塩室11A〜11Dにおける通水方向、すなわち図2における上下方向となるように配置されている。
【0056】
区画部材8は、予め一体成形されたものであってもよいし、複数の部材を組み合わせて形成されるものであってもよい。区画部材8は、図3(B)に示すように、例えば、長手方向面81と、長手方向面81に対して120°の角度に屈曲し、長手方向面81に連続する通水性を有する射向面82とを有する屈曲板83の長手方向面81,81同士を、接着剤等を用いて連結することにより構成される。屈曲板83は、通水性を有する材料、例えば織布、不織布、メッシュ、多孔質材料等により構成されているのが好ましい。
【0057】
なお、屈曲板83の長手方向面81は、通水性を有していてもよいし、通水性を有していなくてもよい。長手方向面81が通水性を有していなければ、小室9内の被処理水が屈曲板83の射向面82を通じてのみ下方の小室9内に流れることになり、小室9内の全体に被処理水が略均一に流れることになるため、脱塩室11A〜11Dに充填されたイオン交換体と被処理水(処理水W1,脱塩水W2,濃縮水W4,W6)とを効果的に接触させることができる。
【0058】
脱塩室11A〜11Dに充填されるイオン交換体としては、アニオン交換体、カチオン交換体、両性イオン交換体等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。また、これらのイオン交換体のうちの2種以上が脱塩室11A〜11Dに複層状に充填されていてもよい。
【0059】
なお、濃縮室12A〜12D内にもイオン交換体が充填されていてもよい。濃縮室12A〜12D内にもイオン交換体が充填されていることで、より電流が流れやすくなるため、脱塩室11A〜11Dから濃縮室12A〜12Dへのホウ素等の弱イオンの移動をより促進することができ、被処理水からのホウ素の除去率を向上させることができる。
【0060】
このような構成を有する純水製造装置10においては、まず、原水W0を活性炭装置1に導入して有機物を除去した後、ヒータ2にて所定の温度にまで加温し、その後、膜式濾過装置3に導入して固体微粒子を除去し、原水タンク4に一旦貯留する。続いて、この原水タンク4に貯留された原水W0を前処理装置5にて処理する。
【0061】
この前処理装置5では、第1の逆浸透膜(RO)装置51と、第2の逆浸透膜(RO)装置52とにより原水W0中の強イオン性の不純物が除去され、さらに、脱炭酸膜装置53により炭酸イオン(CO)が除去され、処理水W1を得ることができる。
【0062】
この前処理装置5は、処理水W1中のシリカ濃度が30ppb(SiO換算)以下、好ましくは20ppb以下、特に好ましくは10ppb以下となるように設計する。電気脱イオン装置における被処理水のシリカ濃度が800ppbを超えると、シリカスケールが生じてしまうという問題がある一方、後述するように、各電気脱イオン装置6A〜6Dにおいて99%以上のホウ素除去率を達成するためには、各電気脱イオン装置6A〜6Dにおける水回収率を80%程度で運転する必要があり、そのような条件で電気脱イオン装置6A〜6Dを運転すると、シリカの濃縮率が5倍程度となる。そのため、処理水W1のシリカ濃度が30ppbを超えてしまうと(例えば、40ppb)、第1の電気脱イオン装置6Aからの濃縮水W4のシリカ濃度が200ppbとなり、第2の電気脱イオン装置6Bからの濃縮水W6のシリカ濃度が1000ppbとなってしまい、第3の電気脱イオン装置6Cにおいてシリカスケールが生じてしまうおそれがある。したがって、処理水W1中のシリカ濃度が30ppb以下とすることで、第3の電気脱イオン装置6Cに導入される濃縮水W6のシリカ濃度が、基準値である800ppb以下となり、シリカスケールが生じるのを防止することができる。
【0063】
このようにして得られた処理水W1を第1の電気脱イオン装置6Aの脱塩室11Aに導入して処理する。この第1の電気脱イオン装置6Aにおいては、電流密度300mA/dm以上で運転するのが好ましい。このような電流密度で運転を行うことにより、電気脱イオン装置の性能にもよるが、従来の電気脱イオン装置では達成できなかった99%以上、特に99.5%以上のホウ素除去率とすることができる。
【0064】
このとき、第1の電気脱イオン装置6Aからの脱塩水W2の回収率(脱塩水量/処理水量)が80%程度となるように、第1の電気脱イオン装置6Aを運転するのが好ましい。脱塩水W2の回収率を上記範囲内とすることで、第1の電気脱イオン装置6Aでのホウ素除去率を99%以上とすることができる。
【0065】
なお、第1の電気脱イオン装置6Aから得られた脱塩水W2の一部を、向流一過式に濃縮室12Aに導入する。これにより、濃縮室12A入口側での濃縮水のホウ素濃度を低くすることができ、濃度拡散による脱塩室11A側への影響を抑制することができるため、ホウ素除去効率を飛躍的に向上させることができる。
【0066】
第1の電気脱イオン装置6Aの濃縮室12Aから排出され、貯水タンクT2に貯留された濃縮水W4を、第2の電気脱イオン装置6Bの脱塩室11Bに導入して処理する。第2の電気脱イオン装置6Bにおいても同様に、99%以上、特に99.5%以上のホウ素除去率を確保するために、電流密度300mA/dm以上で運転するのが好ましい。
【0067】
このとき、第2の電気脱イオン装置6Bからの脱塩水W5の回収率(脱塩水量/処理水量)が80%程度となるように、第2の電気脱イオン装置6Bを運転するのが好ましい。脱塩水W5の回収率を上記範囲内とすることで、第2の電気脱イオン装置6Bでのホウ素除去率を99%程度とすることができる。
【0068】
このようにして処理された第2の電気脱イオン装置6Bからの脱塩水W5は、そのホウ素濃度が前処理装置5からの処理水W1のホウ素濃度よりも低いものとなるため、当該脱塩水W5を第1の電気脱イオン装置6Aの前段の貯水タンクT1に導入する。これにより、純水製造装置10の系内のホウ素濃度を上昇させることなく、水回収率を向上させることができる。
【0069】
なお、第2の電気脱イオン装置6Bから得られた脱塩水W5の一部を、向流一過式に濃縮室12Bに導入する。これにより、濃縮室12B入口側での濃縮水のホウ素濃度を低くすることができ、濃度拡散による脱塩室11B側への影響を抑制することができるため、ホウ素除去効率を飛躍的に向上させることができる。
【0070】
第2の電気脱イオン装置6Bの濃縮室12Bから排出され、貯水タンクT3に貯留された濃縮水W6を、第3の電気脱イオン装置6Cの脱塩室11Cに導入して処理する。第3の電気脱イオン装置6Cにおいても同様に、99%以上、特に99.5%以上のホウ素除去率を確保するために、電流密度300mA/dm以上で運転するのが好ましい。
【0071】
このとき、第3の電気脱イオン装置6Cからの脱塩水W7の回収率(脱塩水量/処理水量)が80%程度となるように、第3の電気脱イオン装置6Cを運転するのが好ましい。脱塩水W7の回収率を上記範囲内とすることで、第3の電気脱イオン装置6Cでのホウ素除去率を99%程度とすることができる。
【0072】
このようにして処理された第3の電気脱イオン装置6Cからの脱塩水W7もまた、そのホウ素濃度が前処理装置5からの処理水W1のホウ素濃度よりも低いものとなるため、当該脱塩水W7を第1の電気脱イオン装置6Aの前段の貯水タンクT1に導入する。これにより、純水製造装置10の系内のホウ素濃度を上昇させることなく、水回収率をさらに向上させることができる。
【0073】
なお、第3の電気脱イオン装置6Cから得られた脱塩水W7の一部を、向流一過式に濃縮室12Cに導入する。これにより、濃縮室12C入口側での濃縮水のホウ素濃度を低くすることができ、濃度拡散による脱塩室11C側への影響を抑制することができるため、ホウ素除去効率を飛躍的に向上させることができる。
【0074】
第1の電気脱イオン装置6Aからの脱塩水W2を、第4の電気脱イオン装置6Dの脱塩室11Dに導入して処理する。これにより、ホウ素濃度が極めて低い最終生産水(脱塩水)W8を製造することができる。第4の電気脱イオン装置6Dにおいても同様に、99%以上、特に99.5%以上のホウ素除去率を確保するために、電流密度300mA/dm以上で運転するのが好ましい。
【0075】
このとき、第4の電気脱イオン装置6Dからの脱塩水W8の回収率(脱塩水量/処理水量)が80%程度となるように、第4の電気脱イオン装置6Dを運転するのが好ましい。脱塩水W8の回収率を上記範囲内とすることで、第4の電気脱イオン装置6Dでのホウ素除去率を99%程度とすることができる。
【0076】
このようにして処理された後の第4の電気脱イオン装置6Dからの濃縮水W3は、そのホウ素濃度が前処理装置5からの処理水W1のホウ素濃度よりも低いものとなるため、当該濃縮水W3を第1の電気脱イオン装置6Aの前段の貯水タンクT1に導入する。これにより、純水製造装置10の系内のホウ素濃度を上昇させることなく、水回収率をさらにまた向上させることができる。
【0077】
なお、第4の電気脱イオン装置6Dから得られた脱塩水W8の一部を、向流一過式に濃縮室12Dに導入する。これにより、濃縮室12D入口側での濃縮水のホウ素濃度を低くすることができ、濃度拡散による脱塩室11D側への影響を抑制することができるため、ホウ素除去効率を飛躍的に向上させることができる。
【0078】
このように、本実施形態に係る純水製造装置10においては、第2の電気脱イオン装置6Bからの脱塩水W5、第3の電気脱イオン装置6Cからの脱塩水W7及び第4の電気脱イオン装置6Dからの濃縮水W3を第1の電気脱イオン装置6Aの前段の貯水タンクT1に返送することにより、各電気脱イオン装置6A〜6Dにおける水回収率を80%程度として99%以上のホウ素除去率を確保するとともに、最終生産水(脱塩水)W8の回収率を98%以上という高い水準に維持することができる。したがって、本実施形態に係る純水製造装置10は、ホウ素を効果的に除去した脱塩水を、高い水回収率で効率的に生産することができるという効果を奏することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る純水製造装置10によれば、2段直列的に接続された第1及び第4の電気脱イオン装置6A,6Dを備えることにより、処理水W1からのホウ素の十分な除去が可能となるとともに、連続運転が可能となるばかりか、アルカリ等の薬品を使用しないので環境負荷が少ない。さらに、給水(原水)のホウ素濃度の広い領域に対応することができ、また、ホウ素吸着樹脂等に比べて破過が生じないので、数年間に渡り安定的にホウ素濃度を低減させた純水を製造することができる。
【0080】
さらに、本実施形態に係る純水製造装置10によれば、処理水W1よりもホウ素濃度の低い脱塩水W5,W7及び濃縮水W3が貯水タンクT1に返送されることで、経時的には処理水W1のホウ素濃度が低下するため、ホウ素濃度1ppt以下の純水を製造することも可能となる。
【0081】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0082】
例えば、上記実施形態において、第3の電気脱イオン装置6C及び第4の電気脱イオン装置6Dは、いずれか一方を備えていなくてもよいし、両方とも備えていなくてもよい。本実施形態に係る純水製造装置10にて所望される最終生産水のホウ素濃度に応じて、第3の電気脱イオン装置6C及び第4の電気脱イオン装置6Dを設けるか否かにつき適宜決定すればよい。また、さらにホウ素濃度の低い超純水が要求される場合には、第4の電気脱イオン装置6Dの後段に、直列的に電気脱イオン装置を備えるようにしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態において、前処理装置5は、第1の電気脱イオン装置6Aに30ppb以下のシリカ濃度の処理水W1を供給でき、かつ所望とするホウ素濃度の超純水が得られるように、原水W0の水質に応じて種々設定することができる。
【0084】
具体的には、前処理装置5を以下のような構成のものにすることができる。
(1)RO装置+脱炭酸膜装置
(2)第1のRO装置+第2のRO装置+脱炭酸膜装置
(3)イオン交換樹脂装置(2B3T)+RO装置+脱炭酸膜装置
(4)イオン交換樹脂装置(4B5T)+RO装置+脱炭酸膜装置
【0085】
さらに、上記実施形態において、第1〜第4の電気脱イオン装置6A〜6Dの脱塩室11A〜11D内に配設される区画部材8が、六角形状の小室9を有するハニカム構造体からなるものとして構成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、方形状や三角形状の小室を有するものであってもよいし、方形状又は三角形状の小室と六角形状の小室とを有するものであってもよい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、本実施例においては、下記の電気脱イオン装置を用いた。
・第1の電気脱イオン装置6A(栗田工業社製,製品名:KCDI−UPz−250H,処理水量:25m/hr)
・第2の電気脱イオン装置6B(栗田工業社製,製品名:KCDI−UPz−150H,処理水量:15m/hr)
・第3の電気脱イオン装置6C(栗田工業社製,製品名:KCDI−UPz−020H,処理水量:2m/hr)
・第4の電気脱イオン装置6D(栗田工業社製,製品名:KCDI−UPz−200H,処理水量:20m/hr)
【0087】
〔実施例1〕
図4に示すように、第1〜第4の電気脱イオン装置6A〜6Dを備える純水製造装置を製造した。そして、ホウ素濃度が31ppbの被処理水W0(2段逆浸透膜装置により処理した処理水に相当する被処理水)を貯水タンクT1に61.9m/hrで供給し、この純水製造装置を用いて処理した。
【0088】
処理開始から所定時間経過後における第1の電気脱イオン装置6Aの脱塩室11Aに導入される被処理水W1、各電気脱イオン装置6A〜6Dからの脱塩水W2,W5,W7,W8及び濃縮水W3,W4,W6,W9のホウ素イオン濃度とそれらの水量(m/hr)とを測定し、水回収率(%)を算出した。なお、第1〜第4の電気脱イオン装置6A〜6Dにおける水回収率を、それぞれ82%、83%、85%及び83%と設定した。
結果を表1に示す。
【0089】
〔比較例1〕
第2の電気脱イオン装置6B及び第3の電気脱イオン装置6Cを備えずに、第1の電気脱イオン装置6Aからの濃縮水W4を廃棄する以外は実施例1と同様の構成を有する純水製造装置にて被処理水W0を処理し、処理開始から所定時間経過後における第1の電気脱イオン装置6Aの脱塩室11Aに導入される被処理水W1、第1及び第4の電気脱イオン装置6A,6Dからの脱塩水W2,W8及び濃縮水W3,W4のホウ素イオン濃度と水量(m/hr)とを測定し、水回収率(%)を算出した。なお、第1及び第4の電気脱イオン装置6A,6Dにおける水回収率を、それぞれ82%及び83%と設定した。
結果を表1にあわせて示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から明らかなように、実施例1の純水製造装置においては、第4の電気脱イオン装置6Dからの最終生産水(脱塩水)W8のホウ素濃度が0.4pptであり、最先端の電子産業分野における要求水質(ホウ素濃度:1ppt以下)を充足する超純水を製造可能であることが確認された。
【0092】
一方、比較例1の純水製造装置においても、第4の電気脱イオン装置6Dからの生産水(脱塩水)のホウ素濃度が0.5pptであり、実施例1と同様に最先端の電子産業分野における要求水質(ホウ素濃度:1ppt以下)を充足する超純水を製造可能であることが確認された。
【0093】
このように、前処理装置からの処理水W1を2段直列的に接続した電気脱イオン装置にて処理することで、ホウ素濃度に関する要求水質を十分に満足し得る純水を製造することができる。
【0094】
しかしながら、実施例1の純水製造装置においては、98%という極めて高い水回収率であったのに対し、比較例1の純水製造装置においては、78%という低い水回収率であった。実施例1の純水製造装置においては、第2の電気脱イオン装置6B及び第3の電気脱イオン装置6Cからの脱塩水のホウ素濃度がそれぞれ2ppb、16ppbであり、前処理装置5からの処理水のホウ素濃度(31ppb)よりも低濃度であることから、かかる脱塩水を貯水タンクT1に返送しても系内のホウ素濃度が上昇することがないのに対し、比較例1の純水製造装置においては、第1の電気脱イオン装置6Aからの濃縮水W4のホウ素濃度が151ppbであり、被処理水W0のホウ素濃度よりも高いため、当該濃縮水W4を貯水タンクT1に返送することができないことに起因するものである。
【0095】
このように、実施例1の純水製造装置によれば、極めて高い水回収率を確保しつつ、ホウ素濃度の低い超純水を製造することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の純水製造装置及び純水製造方法は、極めて高い水回収率にて、極めてホウ素濃度を低減させた純水の製造に有用である。
【符号の説明】
【0097】
5…前処理装置
51…第1の逆浸透膜(RO)装置(前処理装置)
52…第2の逆浸透膜(RO)装置(前処理装置)
53…脱炭酸膜装置(前処理装置)
6A…第1の電気脱イオン装置
6B…第2の電気脱イオン装置
6C…第3の電気脱イオン装置
6D…第4の電気脱イオン装置
8…区画部材
11A〜D…脱塩室
12A〜D…濃縮室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を処理する前処理装置と、
前記前処理装置からの処理水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行ってホウ素を除去する第1の電気脱イオン装置と、
前記第1の電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を前記第1の電気脱イオン装置の濃縮室に導入して得られた濃縮水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行ってホウ素を除去する第2の電気脱イオン装置と
を備え、
前記第2の電気脱イオン装置からの脱塩水を前記第1の電気脱イオン装置の前段に供給することを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
前記第1の電気脱イオン装置の脱塩室に受け入れられる前記前処理装置からの処理水のシリカ濃度が、30ppb(SiO換算)以下であることを特徴とする請求項1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記第1の電気脱イオン装置の後段に設けられ、前記第1の電気脱イオン装置からの脱塩水を脱塩室に受け入れて脱イオン処理を行ってホウ素を除去する第3の電気脱イオン装置をさらに備え、
前記第3の電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を前記第3の電気脱イオン装置の濃縮室に導入して得られた濃縮水を前記第1の電気脱イオン装置の前段に供給することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の純水製造装置。
【請求項4】
前記電気脱イオン装置の脱塩室内には、前記脱塩室内を複数の小室に区画する区画部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の純水製造装置。
【請求項5】
前記電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を、当該電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から一過式に導入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の純水製造装置。
【請求項6】
原水を前処理装置で処理した処理水を第1の電気脱イオン装置の脱塩室に導入して脱イオン処理を行ってホウ素を除去する純水製造方法であって、
前記第1の電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を前記第1の電気脱イオン装置の濃縮室に導入して得られた濃縮水を、第2の電気脱イオン装置の脱塩室に導入して脱イオン処理を行ってホウ素を除去し、
前記第2の電気脱イオン装置からの脱塩水を、前記第1の電気脱イオン装置の前段に導入することを特徴とする純水製造方法。
【請求項7】
前記第1の電気脱イオン装置の脱塩室に導入される処理水のシリカ濃度が30ppb(SiO換算)以下となるように、前記前処理装置にて原水を処理することを特徴とする請求項6に記載の純水製造方法。
【請求項8】
前記第1の電気脱イオン装置からの脱塩水を、第3の電気脱イオン装置の脱塩室に導入して脱イオン処理を行ってホウ素を除去し、
前記第3の電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を前記第3の電気脱イオン装置の濃縮室に導入して得られた濃縮水を、前記第1の電気脱イオン装置の前段に導入することを特徴とする請求項6または7に記載の純水製造方法。
【請求項9】
前記電気脱イオン装置からの脱塩水の一部を、当該電気脱イオン装置の濃縮室に前記脱塩室への処理水の導入方向と反対方向から一過式に導入することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の純水製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139687(P2012−139687A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67327(P2012−67327)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2008−206185(P2008−206185)の分割
【原出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】