説明

紙容器とその製造方法

【課題】紙端面の被覆に支障をきたさず、かつ仕上がり外観の綺麗なバリア性を有する紙カップ等の紙容器と該紙カップや紙容器をロール状の紙基材から容易に直接紙カップや紙容器にする製造方法を提供すること。
【解決手段】容器形成用ブランクスの対向する両端縁に、基材シート上に積層された熱可塑性樹脂層を、前記端縁に沿って所定幅延設してなる端縁延設片が設けられており、
前記基材シートの紙部分までが重なり、かつ一方の端縁延設片が紙容器の内側に、他方の端縁延設片が外側にくるように両端部を重ね合わせ、重なり合わせた両端部どうしを熱圧着したことを特徴とする紙容器とその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器とその製造方法に関し、特に筒状の胴部材と底部材とを用いた紙カップ等の紙容器に関し、たとえば液状物等の内容物が接触する箇所に紙端面が露出しない構造の紙容器とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュース等の飲料を充填し、上部の開口部を蓋材で密封して使用するカップ状紙容器は、紙を基材とし両面にポリエチレン等の熱可塑性樹脂層を設けた積層材料を所定の形状に打ち抜いたブランクスを、胴部に接合部を設けて成形したカップ状紙容器が一般的であった。
【0003】
また、酸素や水蒸気等のガスに対するバリア性を必要とする場合、前記胴部の積層材料として、例えば、表側から、ポリエチレン/紙/ポリエチレン/アルミニウム箔/ポリエチレンテレフタレートフィルム/ポリエチレン、またはポリエチレン/紙/ポリエチレン/金属酸化物蒸着層を有するプラスチックフィルム/ポリエチレンのような材料を用いて成形した紙カップ等の紙容器を用いることが多かった。
【0004】
カップ状紙容器の接合部のバリア性を確保するため、例えば、カップ状紙容器の胴部を構成する胴部材の接合部の両側端の端面を保護するための端面処理(エッジプロテクト)の方法として、図2(a)〜(c)に示すスカイブヘミングと呼ばれる方法も知られている。
【0005】
この方法では紙基材(101)に熱可塑性樹脂(102)を積層した図2(a)に示すような積層シートからなる胴部材(100)の最外層端縁部を切削ミーリング方式あるいは切削ベルナイフ方式等により図2(b)に示すように胴部材(100)の厚みの約半分をスカイブ(切削)する。次に、スカイブ(切削)した残りの半分を削除面が内側になるようにヘミング(折り返し)し、図2(c)に示すように熱可塑性樹脂によって紙端面を保護する。
【0006】
上記、紙端面のスカイブヘミング加工を行うためには、あらかじめ打ち抜いた胴部材(ブランクス)を紙カップに成形する前に、特別の加工機械を用いて紙端面のスカイブヘミング加工を行うことが必要である。また、スカイブ端面を一直線上にそろえるため、カップ成形機でスカイブヘミング加工をすると同時にカップ成形をすることは困難であった。このようにスカイブヘミング加工は複雑な加工工程を経なければならず、さらに、用紙をスカイブ(切削)するため紙粉が発生し、紙粉の完全除去が困難であった。
【0007】
スカイブヘミング加工はさらに、スカイブ深さの管理が難しく成形後にスカイブ部からの切れが発生する場合があり、サイドシール等が安定しないという問題もあった。
加えて、スカイブヘミング加工でのスカイブ後の折り返し接着には糊を使用するため、糊の量や位置等の管理が難しかった。
【0008】
スカイブヘミング加工を行わずにバリア性に優れたカップ状紙容器を作製する方法として、紙基材の端面がフィルムで覆われたブランクスを用い、カップ状紙容器を製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この紙基材の端面を保護した、バリア性を有するカップ状紙容器においては、胴部貼り合わせ部の内側の端縁は全体にわたって熱可塑性樹脂層が紙基材から延出して作製されて
いる。このように、紙基材から延出した熱可塑性樹脂層のフィルムは、カップ成形する際に、不規則に成形されてしまい、本来の目的である紙基材の端面を被覆することが十分にできなかった。また、カップ状紙容器としての仕上がりが悪く、外観的に不具合が生じてしまう等の問題があった。
【0010】
さらに、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を、基材の端面に沿って、密着被覆させたブランクスを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせ、密着することにより胴部貼り合わせ部を形成することが提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
この紙容器では、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されているため、前記フランジ部で、基材の紙の厚みによる段差部が生じる。そのため、前記フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差部により密封を確実に行うことができなかった。特に、前記フランジ部が扁平状態の場合、前記基材の厚みによる影響が大きかった。
【0012】
また、前記密封を確実に行うために、前記フランジ部の上面の段差部を埋めるため、別の樹脂等からなる充填部材を設け、段差部を解消するために前記段差部の位置の密封シールを部分的に行なわなければならなかった。
【0013】
さらに、内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜き、一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を外面側に折り返した折り返し樹脂部を有するブランクスを、他方の側端縁の内側となるように重ね合わせて基材に密着することにより胴部貼り合わせ部を形成した紙容器も提案されている(特許文献3参照)。
【0014】
この紙容器は、貼り合わせ部における内面側基材端面は、熱可塑性樹脂層で被覆することにより保護されている。特許文献3にはまた、カップ状容器の場合、開口部に胴部材の上端縁部を巻き込んでフランジ部が形成されているため、前記フランジ部で、基材の紙の厚みによる段差部が生じるため、前記フランジ部の上面に蓋材を重ね、そのまま加熱シールした場合、前記段差部により密封が確実に行うことができなかったという問題に対する解決策も用意されている。
【0015】
しかしながら、この方法ではブランクスの一方の側端縁に外方に延出する樹脂部を外面側に折り返した折り返し樹脂部を形成するために、成形工程において特殊な折返し装置が必要となり通常のロールフィード成形機の改造等もしなければならない等の能率とコストの障害となる問題を抱えていた。
【0016】
特許文献4では、容器形成用ブランクスの対向する両端縁に、基材シート上に積層された熱可塑性樹脂層を端縁に沿って所定幅延設してなる端縁延設片が設けられており、基材シートの紙部分が重ならないように、かつ一方の端縁延設片が紙容器の内側に、他方の端縁延設片が外側にくるように両端部を重ね合わせ、各々の端縁延設片どうしを熱圧着した紙容器が提案されている。
【0017】
この方法は、特殊な折返し装置を必要とせず従来の成形機で製造できる簡潔な構成で紙基材端部の被覆が行えるが、ブランクスの両側端縁の紙部分が重ならずに紙部分端部より外方に延出した端縁延設片のみの領域が接合部に残るために容器としての強度の低下あるいは成形時のバリア性の劣化等の問題が起きることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開昭51−122566号公報
【特許文献2】特開2005−272010号公報。
【特許文献3】特開2008−222245号公報。
【特許文献4】特開2005−14975号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、製造時に特殊な装置や改造を必要とせず、基材接合部の紙基材端面の被覆を有する、耐水性とバリア性に優れた、たとえばカップ状紙容器とその製造方法を提供することを課題とする。
【0020】
さらに、重ね合わせ部の側端縁が、延出した熱可塑性樹脂層からなる樹脂で形成されている胴部材を用いてバリア性に優れた容器の製造において、紙端面の被覆に支障をきたさず、かつ、バリア性を有する紙カップ等の紙容器とそれらをロール状の紙基材から特殊な装置を使わないで直接紙カップや紙容器にする紙容器と紙カップの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の請求項1の発明は、紙を主体とする基材シートからなる容器形成用ブランクスを用いて形成される紙容器であって、容器形成用ブランクスの対向する両端縁に、基材シート上に積層された熱可塑性樹脂層を、前記端縁に沿って所定幅延設してなる端縁延設片が設けられており、前記基材シートの紙部分までが重なり、かつ一方の端縁延設片が紙容器の内側に、他方の端縁延設片が外側にくるように両端部を重ね合わせ、重なり合わせた両端部どうしを熱圧着したことを特徴とする紙容器である。
【0022】
本発明の請求項2の発明は、前記ブランクスの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する端縁延設片が、前記重ね合わせ部の内側のブランクスに沿って密着しており、前記ブランクスの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁から延出する端縁延設片が、前記重ね合わせ部の外側のブランクスに沿って密着していることを特徴とする、請求項1に記載の紙容器である。
【0023】
本発明の請求項3の発明は、少なくとも前記内面の熱可塑性樹脂は、ガスバリア性層を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の紙容器である。
【0024】
本発明の請求項4の発明は、前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する端縁延設片は、側端縁の全長に設けたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙容器である。
【0025】
本発明の請求項5の発明は、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクスを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクスの、両方の側端縁に外方に延出する端縁延設片を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクスの端縁延設片を形成した両方の側端縁を紙基材が重なるように重ね合わせ、熱融着して胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紙容器の製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の請求項1に係る発明の紙容器は、容器形成用ブランクスの対向する両端縁に、基材シート上に積層された熱可塑性樹脂層を、前記端縁に沿って所定幅延設してなる端縁延設片が設けられており、前記基材シートの紙部分までが重なり、かつ一方の端縁延設片が紙容器の内側に、他方の端縁延設片が外側にくるように両端部を重ね合わせ、重なり合
わせた両端部どうしを熱圧着した構成を有するので、ブランクスの両側端縁の紙部分が重ならない場合に起こる、紙部分端部より外方に延出した端縁延設片のみの領域が接合部に残るために容器としての強度が低下するあるいは成形時にバリア性が劣化する等の問題をなくすことが可能となる。
【0027】
これにより、紙端面が被覆されているので、液体が紙端面よりしみこみ紙を濡らして紙の層間の強度が低下することがない。内容物側からのしみこみだけでなく、外側からのしみこみも防止されるので、ボイルやレトルト殺菌、または水に漬けて冷却することが出来、かつ、バリア性を有する紙カップ等の紙容器と、それらをロール状の紙基材から、端部折り曲げ等の特殊な装置を使用しないで直接紙カップや紙容器にする紙容器と紙カップの製造方法を提供することが出来るようになる。
【0028】
本発明の請求項2に係る発明によれば、前記ブランクスの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する端縁延設片が、前記重ね合わせ部の内側のブランクスに沿って密着しており、前記ブランクスの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁から延出する端縁延設片が、前記重ね合わせ部の外側のブランクスに沿って密着していることにより、基材端部の封止が確実に行えるだけでなく、胴部貼り合わせ部の端縁延設片がブランクスから遊離していることにより起こる層間の剥離や外見の見苦しさを回避できる。
【0029】
本発明の請求項3に係る発明によれば、少なくとも前記内面の熱可塑性樹脂層は、ガスバリア層が含まれた構成とすることにより、内容物の保存性が優れた紙容器が得られる。
【0030】
本発明の請求項4に係る発明によれば、前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する端縁延設片は、側端縁の全長に設けることで、フランジ部以外の胴部貼り合わせ部の密封性の優れた紙容器が得られる。
【0031】
本発明の請求項5に係る発明によれば、少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクスを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクスの、両方の側端縁に外方に延出する端縁延設片を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクスの端縁延設片を形成した両方の側端縁を紙基材が重なるように重ね合わせ、熱融着して胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有する紙容器の製造方法であるから、紙端面の被覆に支障をきたさず、かつ、紙カップとしての仕上がり外観の綺麗なバリア性を有する紙カップ等の紙容器とそれをロール状の紙基材から直接紙カップや紙容器にする紙容器の製造方法を提供することが出来る。
【0032】
本発明の製造方法では、ウェブ状シートの状態で側端縁の端面処理(エッジプロテクト)が施されるために、紙カップや紙容器を成形する成形機の選択の幅が広くなり、巻き取り形式タイプ、枚葉形式タイプ等の広範な成形機での製造が可能になる。また、ウェブ状シートの不要部分がカットされているので、従来の紙カップ成形機も容易に使用することができる。
【0033】
さらに、端面処理(エッジプロテクト)が紙基材等を折り曲げることなく熱可塑性樹脂層で紙基材端面を封止処理する層が形成される。このためにピンホールやクラック等のない酸素バリア性、水蒸気バリア性などの向上した物性品質の高い紙カップが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】カップ状容器の製造工程を示す説明図である。
【図2】従来技術のスカイブヘミング加工の例を示す断面説明図である。
【図3】紙容器の胴部貼り合わせ部の例を示す断面説明図である。
【図4】カップ状紙容器の製造に用いる胴部材ブランクスの長窓を設ける第1打ち抜き工程を示し、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図5】カップ状紙容器の製造に用いる胴部材ブランクスの熱可塑性樹脂貼り合わせ工程を示し、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)のA−A’線断面説明図である。
【図6】カップ状紙容器の製造に用いる、胴部材ブランクスを所定の形状に打ち抜く第2打ち抜き工程を示し、(a)は平面説明図であり、(b)は(a)の断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明をカップ状紙容器の一実施形態に基づいて説明する。
本発明の紙容器は、例えば、内面及び外面に熱可塑性樹脂層が設けられた、紙を基材とする積層シートから構成されている。
図1はカップ状容器の製造工程を簡単に示す説明図である。
【0036】
図1に示すように、胴部材(18)を、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランクス(10)の、一方の端縁(11)をもう一方の端縁(12)に重ね合わせて胴部貼り合わせ部(15)を形成させて円筒形状とする。
また、底部材(20)は、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する。
そして、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させる。
【0037】
さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて環状脚部(22)を形成させる一方、胴部材の上部周縁を外方に、1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成させてカップ状紙容器とする。
【0038】
なお、このような構造は、テーパー状のカップ状紙容器に限定されず、円筒状のカップ状紙容器であっても同様である。さらには、内容物および外部環境からの水分の浸透等に対する紙基材接合部のエッジプロテクトを要求される紙容器であっても以下の接合部の構造の基本は同じである。
【0039】
図3は本発明の紙容器の胴部貼り合わせ部の一例を示す断面説明図であり、(a)は胴部貼り合わせ部の内側となるブランクスの断面説明図、(b)は胴部貼り合わせ部の外側となるブランクスの断面説明図であり、(c)は貼り合わせ後の貼り合わせ部の断面説明図である。
【0040】
図3に示すように、胴部材ブランクス(10)は、胴部貼り合わせ部(15)において容器内側に位置する内側基材端縁(11)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した端縁延設片(4a)を備えた構成とする。
【0041】
また、胴部貼り合わせ部(15)において容器外側に位置する外側基材端縁(12)が、紙基材内面側の熱可塑性樹脂層(40)と紙基材外面側の熱可塑性樹脂層(41)が、紙基材(1)の側端縁より外方に延出した端縁延設片(4c)を備えた構成とする。
【0042】
このように、端縁延設片(4a)を紙基材(1)の側端縁より外方に延出した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部内面の密封性が良好となり紙基材端面のバリア性が向上する。
【0043】
また、端縁延設片(4c)を紙基材(1)の側端縁より外方に延出した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部外面の密封性が良好となり紙基材端面のバリア性が向上する。
【0044】
このような構造を有している本発明のカップ状紙容器は、胴部貼り合わせ部(15)の内側に位置する紙基材の端面が、熱圧着により封止された端縁延設片(4a)で保護されており、胴部貼り合わせ部(15)の外側に位置する紙基材の端面が、熱圧着により封止された端縁延設片(4c)で保護されているので、容器に充填された内容物が紙基材端面から浸透することがないのみならず、容器外部からの浸透をも防止するエッジプロテクト効果を得ることが出来る。
【0045】
このように、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)、(41)を設けることにより、基材端面に外延した端縁延設片(4a)、(4c)が、前記両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)が外縁で一体化された状態で形成される。
そして、前記端縁延設片(4a)、(4c)は、紙基材両面に設けた熱可塑性樹脂層で形成する以外、別の部材、例えば、テープを基材の端部に設け、前述と同様に、外縁で一体化した構成でもよい。
【0046】
また、前記端縁延設片(4a)、(4c)は、一方を紙基材に設けた熱可塑性樹脂層を用い、他方をテープとし、前述と同様外縁で一体化した樹脂部でもよい。
そして、前記端縁延設片(4a)、(4c)を、紙基材の端縁から外方に延出して熱圧着する構成とすることによって、胴部貼り合わせ部の段差が、前記端縁延設片(4a)、(4c)で埋まり、段差のない構成とすることができるうえ、紙基材(1)が紙容器の内部及び外部に露出しない構成とすることができる。
【0047】
本発明の紙容器でカップ状の紙容器には通常フランジ部(16)が設けられており、胴部材(18)の貼り合わせ部(15)の上端においては、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランクス(10)を用いることによって、胴部材の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、少なくとも3重構成のフランジ部を形成した際、貼り合わせ部においても、基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の3重構成の巻き込み状態となる。
【0048】
ここで、この切欠き部(31)(32)の形状を異なる形状とすることにより、少なくとも3重構成のフランジ部(16)の上面を平坦にしても、フランジ部上面に、前記貼り合せ部の位置に生じる段差を解消することができる。
【0049】
本発明の紙容器においては、前記熱可塑性樹脂層(40)が、バリア層を含む層とする構成とすることもできる。このように、バリア層を含む構成とすることにより、紙基材(1)の端面もバリア層によって保護されるので、バリア性に優れたカップ状紙容器とすることができる。
【0050】
また、バリア層を含めた端縁延設片を紙基材(1)の側端縁より外方に延出した構成とすることで、胴部貼り合わせ部(15)における樹脂量が確保でき、貼り合わせ部内面の密封性が良好となり紙基材端面のバリア性が向上する。
【0051】
また、紙基材(1)の外側面にもポリエチレン等の熱可塑性樹脂層(41)を設け、紙基材の両面に熱可塑性樹脂層(40)(41)を設けた構成としたので、両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)の先端の内面同士を一体化することで紙基材(1)の端面を封止する樹脂部を端縁延設片(4a)、(4c)の単なる熱圧着で形成することができる。
【0052】
特に、胴部貼り合わせ部(15)の内側に接着される紙基材(1)の端部に両面の熱可塑性樹脂層(40)(41)で形成した端縁延設片(4a)からなる樹脂部は、単なる熱圧着で形成したのちに、外側の紙基材(1)の端部に形成された端縁延設片(4c)から
なる樹脂部および紙基材(1)の端部近辺の外面に形成された熱可塑性樹脂層(41)に密着させて固定することによって必要な端部保護が出来、接着部で一定の樹脂量が確保でき、かつ、外側と内側の紙基材(1)の端面同士が重なるようにすることによって、胴部貼り合わせ部(15)の強度を確保することができる。
図3(c)には上記紙基材の重なり部分の長さをLで示した。
【0053】
また、外側から水等の液体が付着しても紙基材の剛性が弱くなることがなく、耐水性に優れたカップ状紙容器とすることができる。
なお、このような構造は、テーパー状のカップ状紙容器に限定されず、円筒状のカップ状紙容器であってもよく、貼り合わせ部のエッジプロテクトの必要な紙容器に用いることが出来る。
【0054】
次に、本発明の紙容器の一例の製造方法について、特に、胴部材ブランクスの製造方法を含めて説明する。
【0055】
先ず、ロール状の紙基材(1)に扇形状の胴部材ブランクス(10)を複数個並べて割りつけ印刷すると共に、胴部材ブランクスの両方の端縁(11)、(12)に、その端縁を含めて外方の部分を長窓(13)、(14)として穿設する(図5(a),(b)参照)〜第1打ち抜き工程。
【0056】
胴部材ブランクス(10)を印刷して長窓(13)、(14)が穿設された紙基材(1)の内側面、および外側面にポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂層(40)、(41)を溶融樹脂押し出し法により積層して、積層シート(3)を形成させる。この時、紙基材(1)の長窓部分に、前記2つの熱可塑性樹脂層で端縁延設片となる樹脂部(4a)、(4c)を形成させる(図6(a),(b)参照)〜熱可塑性樹脂貼り合わせ工程。
【0057】
あるいは、胴部材ブランクス(10)を印刷して長窓(13)、(14)が穿設された紙基材(1)の内側面に、バリア層を有する熱可塑性樹脂層(40)を、外側面にバリア層を含まない熱可塑性樹脂層(41)を積層して、積層シートを形成させる。この時、紙基材の長窓部分に、前記2つの熱可塑性樹脂層で端縁延設片となる樹脂部(4a)、(4c)を形成させる(図6(a)(b)参照)〜熱可塑性樹脂貼り合わせ工程。
【0058】
前記バリア層(2a)としては、アルミニウム箔、アルミニウム蒸着プラスチックフィルム、無機化合物蒸着プラスチックフィルム、エチレン−ポリビニルアルコール共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルムなど、ガスバリア性の優れた材料を使用できる。
【0059】
前記積層シート(3)の、紙基材(1)からは、外方に延出して設けられた端縁延設片となる樹脂部(4a)、(4c)を含む長窓部分を形成させた胴部材ブランクス(10)の不必要部分を連続してカットする(図7(a),(b)参照)〜スクラップカット工程。
【0060】
不必要部分が切り取られた積層シート(3)から、印刷された複数個の扇形状の胴部材ブランクス(10)を打ち抜き、端縁延設片(4a)、(4c)を形成させた一枚ずつの胴部材ブランクス(10)を作製する(図7〜第2打ち抜き工程。)
【0061】
このような各工程を経て紙基材(1)より所定幅外方に延出した端縁延設片(4a)、(4c)を両方の側端縁に形成させた胴部材ブランクス(10)を作製することができる。
【0062】
このような方法により作製した胴部材ブランクス(10)を用いてカップ状紙容器を成形する成形方法の一例を説明する(図1参照)。
【0063】
胴部材ブランクスの端面の端縁延設片(4a)を設けた内側基材端縁(11)を内側にして、もう一方の端縁延設片(4c)を設けた外側基材端縁(12)とが所定幅(L)重なるように重ね合わせて接合し、胴部貼り合わせ部(15)を形成して円筒形状の胴部材(18)とする。
【0064】
前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて環状脚部(22)を形成させる。
【0065】
最後に胴部材(18)の上部周縁を外方に1周以上巻き込み、フランジ部(16)を形成させ、本発明のカップ状紙容器とする。
【0066】
フランジ部(16)は、前記のように上部周縁を外方に1周以上巻き込んだ構成だけでなく、さらに、このフランジ部を上下から、加圧圧着して、上面を平坦にしてもよい。
【0067】
ここで、胴部材(18)は、両側端縁上部にそれぞれ切欠き部(31)(32)を設けた胴部材ブランクス(10)を用いているので、胴部材(18)の上部周縁を外方に1周以上巻き込んで、フランジ部(16)を形成した際、貼り合わせ部(15)においても、紙基材が、前記貼り合せ部以外の部分と同様の重なりの巻き込み状態となるので、フランジ部の段差を解消することができる。
【0068】
本発明の紙容器は周知の方法で加飾することが出来る。
たとえば、紙基材の表面に通常のグラビアあるいはオフセット等の印刷により、装飾層を設けた基材を胴部ブランクスとして用い、紙容器を製造することが出来る。あるいは、紙基材の表面側に印刷等による装飾層および/または金属蒸着層を設けたプラスチックフィルムを積層した積層材料を用い、紙容器を製造することも出来る。
または、成形された紙容器の胴部の表面に、印刷、金属蒸着により装飾層を施したプラスチックフィルムを被覆することも出来る。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
紙基材(坪量260g/m2)からなるシートに長窓を形成した。
【0070】
次に、前記シートの紙基材の表面に低密度ポリエチレン層(30μm)、紙基材の裏面に低密度ポリエチレン層(30μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/低密度ポリエチレン層(70μm)を設け、前記長窓の位置で、前記低密度ポリエチレン層の内面を接合、一体化した。
【0071】
そして、紙基材の片側の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクスを形成した。
【0072】
なお、両方の側端縁に設けた樹脂部は、5mm幅で設け、5mm延出する端縁延設片樹脂部を有する胴部ブランクスを形成した。
【0073】
前記端縁延設片樹脂部を有する前記ブランクスの側端縁を重ね合わせの長さLが5mm
になるように重ねて接合一体化し、胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
【0074】
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する底部材の周縁部(21)の外面を接合させた。
【0075】
そして、カップ成形機を用い、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、直径が52mmの環状脚部(22)を形成した。
【0076】
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmのカップ状紙容器を成形した。
【0077】
前記カップ状紙容器は、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部貼り合わせ部の強度も十分であった。
(実施例2)
【0078】
実施例1のフランジ部を、超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上面を平坦にした。
前記、カップ状紙容器は、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、フランジ部の上面の胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部貼り合わせ部の強度も十分であった。
(実施例3)
【0079】
表側から、紙基材(坪量260g/m2)低密度ポリエチレン(30μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)からなるシートに長窓を形成した。
【0080】
次に、前記積層シートの紙基材表面に、低密度ポリエチレン層(30μm)、ポリエチレンテレフタレートフィルム面にポリエチレン層(70μm)を設け、前記長窓で、前記低密度ポリエチレン層の内面を接合、一体化した。
【0081】
そして、紙基材の片側の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクスを形成した。
【0082】
なお両方の側端縁に設けた端縁延設片となる樹脂部は、5mm幅で設けて折り返さずに圧着した。
【0083】
前記ブランクスの端縁延設片を有する側端縁を5mm重ね合わせて端縁延設片を基材表面に圧着して接合一体化し胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
【0084】
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する底部材の周縁部(21)の外面を接合させた。
【0085】
そして、カップ成形機を用い、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、直径が52
mmの環状脚部(22)を形成した。
【0086】
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmのカップ状紙容器を成形した。
【0087】
前記カップ状紙容器は、胴部貼り合わせ部およびフランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部貼り合わせ部の強度も十分であった。
(実施例4)
【0088】
実施例3のフランジ部を、超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上面を平坦にした。
前記、カップ状紙容器は、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部貼り合わせ部の強度も十分であった。(実施例5)
【0089】
表側から、低密度ポリエチレン層(30μm)/紙基材(坪量260g/m2)からなるシートに長窓を形成した。
【0090】
次に、前記紙基材の裏面に低密度ポリエチレン(30μm)/アルミニウム箔(9μm)/ポリエチレンテレフタレートフィルム(12μm)/低密度ポリエチレン層(15μm)を設け、シート紙基材表面の長窓部分を覆うように設けた。
【0091】
そして、片側の紙基材の側端縁上部に、幅が9mm、高さが5mmの三角形の切欠き部、他方の側端部上部に、幅が8mm、高さが6mmの三角形の切欠き部を有する扇形形状(上辺の長さ225mm、下辺の長さ162mm)に打ち抜き、胴部ブランクスを形成した。
【0092】
なお、両方の側端縁に設けた端縁延設片となる樹脂部は、5mm幅で設けた。
【0093】
前記ブランクスの端縁延設片を有する側端縁を5mm重ね合わせて端縁延設片を基材表面に圧着して接合一体化し胴部貼り合わせ部を設けて胴部を形成した。
【0094】
次に、前記胴部の下部内面に、円形状で、下向きに起立させた周縁部(21)を有する底部材の周縁部(21)の外面を接合させた。
【0095】
そして、カップ成形機を用い、前記胴部材(18)の下部内面に、底部材(20)の周縁部(21)の外面を接合させ、さらに周縁部(21)を覆うように、前記胴部材(18)の下端縁部を内方に折り曲げ、底部材の周縁部(21)内面に接合させて、直径が52mmの環状脚部(22)を形成した。
【0096】
また、トップカールユニットにより、上部開口部を1周以上巻き込み、下側半分が一重巻き、上側半分が二重巻きとなる、幅が3mmのフランジ部を有する、開口の直径が69mmのカップ状紙容器を成形した。
【0097】
前記カップ状紙容器は、フランジ部の上面の、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部貼り合わせ部の強度も十分であった。
(実施例6)
【0098】
実施例5のフランジ部を、超音波シール装置を用い、上下から加圧圧着し、フランジ上
面を平坦にした。
前記、カップ状紙容器は、フランジ部の上面を平坦にしたにもかかわらず、胴部貼り合わせ部に位置する部分に段差がなく成形され、胴部貼り合わせ部の強度も十分であった。
【符号の説明】
【0099】
1‥‥‥紙基材
3‥‥‥積層シート
40‥‥熱可塑性樹脂層
41‥‥熱可塑性樹脂層
4‥‥‥樹脂部
4a‥‥端縁延設片
4c‥‥端縁延設片
10‥‥胴部材ブランクス
11‥‥内側基材側端縁
12‥‥外側基材側端縁
13‥‥長窓
14‥‥長窓
15‥‥貼り合わせ部
16‥‥フランジ部
18‥‥胴部材
20‥‥底部材
21‥‥周縁部
22‥‥環状脚部
31‥‥切欠き部
32‥‥切欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主体とする基材シートからなる容器形成用ブランクスを用いて形成される紙容器であって、容器形成用ブランクスの対向する両端縁に、基材シート上に積層された熱可塑性樹脂層を、前記端縁に沿って所定幅延設してなる端縁延設片が設けられており、
前記基材シートの紙部分までが重なり、かつ一方の端縁延設片が紙容器の内側に、他方の端縁延設片が外側にくるように両端部を重ね合わせ、重なり合わせた両端部どうしを熱圧着したことを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記ブランクスの重ね合わせ部の外側に位置する側端縁から延出する端縁延設片が、前記重ね合わせ部の内側のブランクスに沿って密着しており、前記ブランクスの重ね合わせ部の内側に位置する側端縁から延出する端縁延設片が、前記重ね合わせ部の外側のブランクスに沿って密着していることを特徴とする、請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
少なくとも前記内面の熱可塑性樹脂は、ガスバリア性層を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の紙容器。
【請求項4】
前記内側及びまたは外側に位置する側端縁から延出する端縁延設片は、側端縁の全長に設けたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の紙容器。
【請求項5】
少なくとも内面に熱可塑性樹脂層が設けられた紙を基材とする積層シートを所定の形状に打ち抜きブランクスを形成する打ち抜き工程と、前記ブランクスの、両方の側端縁に外方に延出する端縁延設片を形成する樹脂部形成工程と、前記ブランクスの端縁延設片を形成した両方の側端縁を紙基材が重なるように重ね合わせ、熱融着して胴部貼り合わせ部を形成する胴部形成工程と、を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の紙容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−222038(P2010−222038A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71772(P2009−71772)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】