説明

紙幣入出金装置

【課題】同一の機構で入金処理と出金処理が出来る簡明で小型な機構により出金時にはサイズの異なる紙幣を安定した束の状態に集積して一括して出金を行うことができる紙幣入出金装置を提供する。
【解決手段】ルーフプレート21及びステージプレート22が入金された紙幣と共に入出金部5から一時集積部6へ移動すると、ピックローラ25、セパレータ27、フィードローラ26、搬送ローラ28が回転駆動されて紙幣を紙幣収納部に連絡する搬送路7aに搬出し、部分羽根車27は羽根の無い周面を搬出紙幣の通路に向けて停止している。出金時にはセパレータ27、フィードローラ26、搬送ローラ28が紙幣搬入方向に回転して搬送路7aから搬送されてくる紙幣を一時集積部6に搬入し、部分羽根車27は羽根で搬入紙幣の後端部を叩いて紙幣の後部を底面位置dに揃えて紙幣を集積する。整列レバー31は上下に回動してサイズの異なる搬入紙幣の先端を規制し、常に紙幣の後端を部分羽根車27が叩けるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出金紙幣の集積装置に係わり、更に詳しくはATM(automated teller machine)等において、同一の機構で入金処理と出金処理が出来る簡明で小型な機構により出金時にはサイズの異なる紙幣を安定した束の状態に集積して一括して出金を行うことができる紙幣入出金装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばユーロ紙幣などのように、額面に応じてサイズの異なる紙幣を一括して束で出金する装置においては、所定の枚数を金種別に紙幣を集積してあるスタッカやカセットから、繰出し機構により搬送路に繰り出し、搬送路から更に最大サイズの紙幣に合わせた一定サイズの一時集積部に紙幣を集積し、それから一括して顧客に渡す方式のものが提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
特許文献1では、上述の紙幣の出金時には、紙幣は金種毎に順序良く繰出されて一時集積部に集積される。一時集積部には、スタックローラとバックアップローラとブラシローラからなる紙幣集積機構が配置されている。
【0003】
スタックローラとバックアップローラによって一時集積部に一枚ごと送り込まれてくる紙幣は、後端部をブラシローラの羽根に叩かれて、後続の紙幣と衝突しないようにして順次集積されるとしている。
【0004】
また、特許文献1における紙幣の入金時には、一時集積部に収納された入金紙幣束を紙幣集積機構から離れた位置にあるフィードローラとゲートローラからなる分離機構により紙幣を一枚ごとに分離し、ピンチローラ、フィードローラ、駆動ローラ等によって、収納部に続いている搬送路に送り出すように構成されている。
【0005】
また、このような装置には、顧客が紙幣を取り忘れた場合には、自動的に紙幣を撤去させて、次の取引可能状態に移行するという機能も重要である。通常は、入金時と同様に一時集積部から自動的に紙幣を搬送路に送り出し、搬送路から取り忘れ紙幣収納部に移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−99795号公報
【発明の概要】
【0007】
ところで、特許文献1の入出金口を兼ねる一時集積部には、出金時に専用の紙幣集積機構と、入金時に専用の分離機構と搬送機構が、それぞれ独立に備えられている。したがって、一時集積部の構成が極めて複雑で且つ機構部分によって装置の大型化を招くという解決すべき課題が残されている。
【0008】
また、例えばユーロ紙幣などのように、額面に応じてサイズの異なる紙幣を一時集積部に集積させるには、特許文献1のようにブラシローラの羽根で集積紙幣の後端を叩いて紙幣を集積させることが一般的である。
【0009】
しかし、ブラシローラの羽根が短すぎると紙幣を十分抑えられない場合があり、長すぎるとコシの弱い紙幣を巻き込んでジャムを引き起こす場合があり、紙幣を安定的に集積するには使用できる紙幣のサイズに制限が生じるという解決すべき課題が残されている。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、同一の機構で入金処理と出金処理が出来る簡明で小型な機構により出金時にはサイズの異なる紙幣を安定した束の状態に集積して一括して出金を行うことができる紙幣入出金装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の紙幣入出金装置は、顧客からの入金時には顧客が入出金口から紙幣を投入し、顧客への出金時には顧客が入出金口から紙幣を取り出す紙幣一時収納部となる入出金部と、上記入金時には上記入出金部から入金紙幣を搬送路に繰り出し、上記出金時には上記搬送路から送り込まれた出金紙幣を上記入出金部に移動させるための一時集積部と、上記入出金部と上記一時集積部との間を移動経路に沿って移動可能な紙幣集積手段と、上記一時集積部に設けられたピックローラと、上記一時集積部と上記搬送路との間に配置されたフィードローラ、セパレータ、搬送ローラ、部分羽根車と、上記一時集積部に配置された整列レバーと、を備え、上記紙幣集積手段は、上記入出金部に移動したとき、上記入出金口の下方に入金紙幣受入部又は出金紙幣払出部を形成し、上記一時集積部に移動したとき、入金紙幣繰出部又は出金紙幣一時集積部を形成し、上記紙幣集積手段が上記入金紙幣繰出部を形成したとき、上記ピックローラは、上記入金紙幣繰出部に収容されている紙幣束に圧接して最上部の紙幣を一枚ごと上記フィードローラ方向に繰り出し、上記フィードローラは繰り出された上記紙幣を上記搬送ローラと共に上記搬送路に搬出し、上記部分羽根車は羽根の無い周面を搬出紙幣の通路に向けて停止し、上記紙幣集積手段が上記出金紙幣一時集積部を形成したとき、上記搬送ローラは上記フィードローラ及び上記セパレータと共に上記搬送路から搬送されてくる紙幣を上記出金紙幣一時集積部に搬入し、上記整列レバーは上記出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣の後端部が上記出金紙幣一時集積部の底部に位置するよう上記紙幣の前端部を規制し、上記部分羽根車は上記出金紙幣一時集積部に搬入された紙幣の後端部を羽根で叩くように回転して後続の搬入紙幣が先行の搬入紙幣に衝突することを防止する、ように構成される。
【0012】
上記紙幣集積手段は、例えば、上記移動経路にほぼ垂直に立設され、上記一時集積部側に配置されたルーフプレートと上記入出金部側に配置されたステージプレートとから成るように構成され、また、上記整列レバーは、例えば、上記出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣の最大サイズの紙幣の先端位置に対応する位置を退避位置とし、上記出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣が所定サイズ以下の紙幣であるとき上記退避位置から降下して上記所定サイズ以下の紙幣の先端を規制するように構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、同一の機構で入金処理と出金処理が出来る簡明で小型な機構により出金時には紙幣を安定した束の状態に集積して一括して出金を行うことができる紙幣入出金装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る紙幣入出金装置を備えたATM(automated teller machine)(本体装置)の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1に係る紙幣入出金装置の拡大図である。
【図3】(a),(b),(c)は実施例1に係る紙幣入出金装置の整列レバーとステージプレートとの関係を示す図である。
【図4】(a),(b)は実施例1に係る紙幣入出金装置のフィードローラ、セパレータ、搬送ローラ、部分羽根車の位置関係を示す図である。
【図5】実施例1に係る紙幣入出金装置の各部の動作を制御する制御部と制御部によって制御される処理タスクのブロック図である。
【図6】(a),(b)は実施例1に係る紙幣入出金装置の入金処理時における各部の動作状態を示す図(その1)である。
【図7】実施例1に係る紙幣入出金装置の入金処理時における各部の動作状態を示す図(その2)である。
【図8】(a),(b)は実施例1に係る紙幣入出金装置の出金処理時における各部の基本動作を示す図である。
【図9】(a),(b),(c)は実施例1に係る紙幣入出金装置の出金処理時における整列レバーの機能について説明する図である。
【図10】実施例1に係る紙幣入出金装置の出金時において例えばユーロ紙幣などのように額面に応じて紙幣幅サイズの異なる紙幣を一時集積部に集積させる場合の整列レバーの回動を制御する処理のフローチャートである。
【図11】(a),(b)は図19の処理における整列レバーの回動動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は、実施例1に係る紙幣入出金装置を備えたATM(automated teller machine)(以下、本体装置ともいう)の構成を模式的に示す断面図である。同図に示すATM1は、紙幣入出金装置2と、搬送部3と、収納部4とを備えている。
【0017】
紙幣入出金装置2は、装置前方(図の右方)のやや傾斜して形成されている上面に、図では断面のため見えないが入力操作パネル部と、上部開口部にシャッタを有する入出金部5と、集積された紙幣を一時的に収容する一時集積部6を備えている。
【0018】
搬送部3には、搬送路7(7a、7b)が縦横に入り組んで配置されている。搬送路7は、図では黒の太線のみで示しているが、実際は多数のローラと、それらのローラに掛け渡された多数のベルトと、搬送路の分岐点に配置された切替ゲート等から成る。
【0019】
本体装置1の上部の搬送路7aには、プール部8や鑑別部9やダミー券保持部11などが連結されている。プール部8は、顧客12によって入出金部5に入金され、一時集積部6から本体装置側に繰り出された紙幣を一時的に収容する。
【0020】
そして、上記繰り出し中に計数された紙幣の枚数と、顧客12が入力操作パネル部から入力した紙幣の枚数又は額面が示す紙幣枚数とが一致すると、プール部8に一時収容されていた紙幣が一枚ごとにプール部8の下方から繰出されて、鑑別部9に搬送される。
【0021】
鑑別部9は、内部を通過する紙幣の真贋、汚れ、角折れ等を判定する。この鑑別部9による判定結果は不図示の中央処理装置に通知される。中央処理装置は、鑑別部9を通過した紙幣が、搬送路7aを搬送される途上において、上記の通知に基づいて種々の処理を行う。
【0022】
例えば、紙幣が偽造品等の受付不可な紙幣であるときは搬送路7aを逆搬送して一時集積部6に返却し、偽造紙幣では無いが例えば大きな汚れ等を示しており今後の使用に支障が考えられるとき、又は他の紙幣と交換する必要があるときは、下方のリジェクトボックス13に収容するか、又は一時集積部6に返却し、紙幣が真券で且つ汚れがないときは、収納部4に収納する。
【0023】
本体装置1の下部の搬送路7bの下方にある収納部4には、上記のリジェクトボックス13をはじめとして、大サイズの紙幣を収容するカセットA14、中サイズの紙幣を収容するカセットB15、小サイズの紙幣を収容するカセットC16及びカセットD17が着脱自在に配設されている。
【0024】
これらのリジェクトボックス及びカセットの上部には、搬入搬出路18が設けられている。これらの搬入搬出路18には、不図示の切替ゲートを介して搬送路7bが連結されている。
【0025】
顧客12に紙幣を出金するときは、顧客12が入力操作パネル部から入力した金額に対応する額面と枚数の紙幣が、紙幣に対応するカセットA14、B15、C16又はD17から搬送路7bに繰り出され、鑑別部9で金種が確認され、搬送路7aから一時集積部6に繰り込まれる。
【0026】
一時集積部6には、小サイズ紙幣から中サイズ紙幣、大サイズ紙幣の順に順次集積され、集積紙幣の総額が、顧客12が入力操作パネル部から入力した紙幣の枚数又は額面が示す紙幣枚数と一致すると、集積紙幣は入出金部5に一括して出金される。
【0027】
図2は、紙幣入出金装置2の拡大図である。図2に示すように、紙幣入出金装置2は、長溝孔20を介して不図示の駆動軸から長溝孔20の長手方向に進退駆動されて入出金部5と一時集積部6とに移動可能なルーフプレート21及びステージプレート22を備えている。
【0028】
尚、図2には、一時集積部6に移動したときのルーフプレート21及びステージプレート22を実線で示し、入出金部5に移動したときのルーフプレート21及びステージプレート22を破線で示している。
【0029】
ルーフプレート21及びステージプレート22が入出金部5(破線位置)に移動したときは、入出金口23の下方に入金紙幣受入部(入金時)又は出金紙幣払出部(出金時)を形成する。入出金部5は上部が開口して入出金口23を形成し、開口部にはシャッタ24が配設されている。
【0030】
また、ルーフプレート21及びステージプレート22が一時集積部6(実線位置)に移動したとき、入金紙幣繰出部(入金時)又は出金紙幣一時集積部(出金時)を形成する。一時集積部6には、中央部左方にピックローラ25が設けられ、下方にはフィードローラ26、セパレータ27、搬送ローラ28、部分羽根車29等が配置されている。また、一時集積部6の上方には、整列レバー31が配置されている。
【0031】
上記のフィードローラ26、セパレータ27、搬送ローラ28、部分羽根車29は、入金時には、一時集積部6に移動してきた集積紙幣を、プール部8、カセットA等の紙幣収納部に連絡する搬送路7aに搬出する搬出口を形成し、出金時には、紙幣収納部に連絡する搬送路7aから搬送されてくる紙幣を搬入する搬入口を形成する。
【0032】
上記の搬出口(又は搬入口、以下同様)に直結する搬送路7aには、搬出口の直後に、搬送路7aの搬送ローラ32が配設されている。搬送ローラ32は、入金時には一時集積部6から搬送路7aに搬出される紙幣を紙幣収納部方向に搬送し、出金時には、紙幣収納部から取り出され、搬送路7aにより搬送されてくる紙幣を一時集積部6に送り込む。
【0033】
整列レバー31は、左端部を回転軸33により軸支され、右端部側がソレノイド34により回転軸33を介して上下に回動駆動される。整列レバー31は、右端部側の上面がストッパ35に当接して停止する位置が退避位置(又は待機位置)となっている。図2に示す整列レバー31は、退避位置から降下して降下位置にある状態を示している。
【0034】
部分羽根車29は、入金時には羽根の無い周面をフィードローラ26に向けて停止し、出金時には回転を開始して、破線丸aで示す範囲を羽根の先端が回転する。
【0035】
図3(a),(b),(c)は、整列レバー31とステージプレート22との関係を示す図である。図3(a)はルーフプレート21及びステージプレート22が一時集積部6に移動したときの状態を示し、図3(b),(c)は図3(a)を矢印b方向に見た図を示している。
【0036】
尚、図3(a)には、図1又は図2に示した紙幣入出金装置2の主要部の構成のみを示し、他の部分は図示を省略している。また、図3(a),(b),(c)には、図1又は図2に示した構成と同一の構成部分には、図1又は図2と同一の番号を付与して示している。
【0037】
図3(b),(c)に示すように、整列レバー31は保持部レバー36と、保持部レバー36に保持された複数の櫛歯37からなる。保持部レバー36の図の奥行き方向奥側端部は図3(a)に示す回転軸33により軸支されている。
【0038】
一方のステージプレート22には、櫛歯37が嵌入して進退する切り欠き溝38が形成されている。図3(b)は整列レバー31が退避位置に在るときの櫛歯37と切り欠き溝38の位置関係を示しており、櫛歯37の先端は退避位置cに設定されている。
【0039】
図3(c)は整列レバー31が降下位置に在るときの櫛歯37と切り欠き溝38の位置関係を示しており、櫛歯37の先端は降下位置c´に設定されている。一時集積部6の底面位置dと櫛歯37の退避位置c間の距離Aは、大型紙幣のサイズに対応し、一時集積部6の底面位置dと櫛歯37の降下位置c´間の距離Bは、所定サイズ以下の紙幣に対応している。
【0040】
図4(a),(b)は、フィードローラ26、セパレータ27、搬送ローラ28、部分羽根車29の位置関係を示す図である。尚、図4(a)には、図1又は図2に示した紙幣入出金装置2の主要部の構成のみを示し、他の部分は図示を省略している。
【0041】
また、図4(a),(b)には、図1ないし図3に示した構成と同一の構成部分には、図1ないし図3と同一の番号を付与して示している。また、図4(b)は図4(a)の構成を矢印e方向に見た図に更に紙幣39を加えて示している。
【0042】
図5は、上記構成の各部の動作を制御する制御部と、制御部によって制御される処理タスクのブロック図である。図5に示すように制御部40は、USB(universal serial bus)41を介して紙幣入出金装置2の処理部42に各種タスクのコマンドを送信する。
【0043】
処理部42のファームウエアは回線タスク43、コマンド処理タスク44及び制御タスク部45から成り、制御タスク部45は、メカ制御タスク46、搬送制御タスク47、鑑別制御タスク48等から成る。
【0044】
回線タスク43は、USB41を介して制御部40から送信されてくるコマンドを受信して、受信したコマンドをコマンド処理タスク44に引き渡す。コマンド処理タスク44は受け取ったコマンドに応じた制御タスクを生成して、生成した制御タスクを制御タスク部45に引き渡す。
【0045】
制御タスク部45は、受け取った制御タスク、すなわち、メカ制御タスク46、搬送制御タスク47、又は鑑別制御タスク48に応じて、それら制御タスクに応じたドライバ部49の各ドライバ(DV)を駆動制御する。ドライバ部49の各ドライバ(DV)は、上記の駆動制御に応じて被駆動部51の対応するモータ、センサ等を駆動制御する。
【0046】
図6(a),(b)及び図7は、入金処理時の紙幣入出金装置2の各部の動作状態を示す図である。尚、図6(a),(b)には、図1ないし図4に示した構成と同一の構成部分には、図1ないし図4と同一の番号を付与して示している。また、図7には、図6(a),(b)に示す紙幣入出金装置2の主要部の構成のみを示し、他の部分は図示を省略している。
【0047】
図6(a)は、ルーフプレート21及びステージプレート22が入出金部5(破線位置)に移動して、入出金口23の下方に入出金部5に入金紙幣受入部を形成し、シャッタ24を開き、その入金紙幣受入部に顧客12(図1参照)により紙幣39の束(以下、紙幣束39ともいう)が入金された状態を示している。
【0048】
図6(b)は、ルーフプレート21及びステージプレート22が紙幣束39を挟持したまま、不図示の駆動軸により長溝孔20を介して一時集積部6に移動された状態を示している。ここで、整列レバー31は退避位置に退避し、ピックローラ25は紙幣束39のルーフプレート21側の面に圧接する。
【0049】
そして、図7に示すように、ピックローラ25は、矢印fで示す時計回り方向に回転して入金紙幣繰出部に収容されている紙幣束39の最上部の紙幣39を一枚ごとフィードローラ26方向に繰り出す。
【0050】
フィードローラ26は繰り出された紙幣39を搬送ローラ28と共に挟持し、フィードローラ26は矢印gで示す時計回り方向に回転し、搬送ローラ28は矢印hで示す反時計回り方向に回転して、挟持した紙幣39を紙幣収納部に連絡する搬送路7aに搬出する。
【0051】
このとき、セパレータ27は図の時計回り方向に回転して、ピックローラ25により繰り出された紙幣に下方の紙幣が従動して重送されることを防止する。部分羽根車29は羽根の無い周面を、搬出紙幣の通路に向けて停止している。これにより、入金された紙幣束39が、一時集積部6から一枚ごとに順次矢印iで示すように搬送路7aに搬出される。
【0052】
図8(a),(b)は、出金処理時の紙幣入出金装置2の各部の基本動作を示す図である。尚、図8(a)には、図1ないし図4に示した構成と同一の構成部分には、図1ないし図4と同一の番号を付与して示している。また、図8(b)には、図8(a)に示す紙幣入出金装置2の主要部の構成のみをやや拡大して示し、他の部分は図示を省略している。
【0053】
図8(a)に示すように、出金処理時には、ルーフプレート21及びステージプレート22が長溝孔20に沿って一時集積部6に移動し、出金紙幣一時集積部を形成する。部分羽根車29が回転を開始し、その羽根の先端が破線丸aで示す範囲で回転する。
【0054】
そして、図8(b)に示すように、紙幣収納部に連絡する搬送路7aから矢印jで示すように搬送されてくる紙幣を、フィードローラ26は搬送ローラ28及びセパレータ27と共に挟持する。尚、出金処理時には、セパレータ27はフィードローラ26及び搬送ローラ28と共に搬入ローラとして機能する。
【0055】
フィードローラ26は矢印mで示す反時計回り方向に回転し、搬送ローラ28は矢印nで示すように時計回り方向に回転し、セパレータ27も図の時計回り方向に回転して、搬送路7aから矢印jで示すように搬送されてくる紙幣を、一時集積部6に形成されている出金紙幣一時集積部に搬入する。
【0056】
このとき、整列レバー31は、出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣39の後端部が出金紙幣一時集積部の底部dに位置するように、図8(b)に示すように紙幣39の前端部を規制する。
【0057】
部分羽根車29は出金紙幣一時集積部に搬入された紙幣39の後端部を羽根で叩くように回転して、後続の搬入紙幣が先行の搬入紙幣に衝突することを防止する。また、部分羽根車29の羽根の先端が搬入紙幣の後端部を常に正しく叩くことができるように、ステージプレート22は、紙幣39が集積されることに応じて矢印pで示すように入出金部5方向に徐々に移動する。
【0058】
これにより、出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣39は、その後端部が部分羽根車29の羽根の先端が回転する範囲aに接すか否かの近傍位置に常に設定されるので、フィードローラ26や搬送ローラ28等の回転に常に同期して回転するピックローラ25は、搬入紙幣39に接触しない位置で空回転し、紙幣搬入処理の障害にはならない。
【0059】
図9(a),(b),(c)は、紙幣出金時における整列レバー31の機能について説明する図である。尚、図9(a),(b),(c)には、図8(a)に示す紙幣入出金装置2の主要部の構成のみを示し、他の部分は図示を省略している。
【0060】
図9(a)に示す整列レバー31が、図8(a),(b)に示したような回動する部材ではなく紙幣入出金装置2のフレームに位置固定されている固定部材であるとする。整列レバー31が固定部材であると、搬入されてくる紙幣束39が小サイズであったとき、図8(a)に示すように搬入された紙幣束39の先端と整列レバー31との間に間隙qが生じる。
【0061】
このため、出金紙幣一時集積部(一時集積部6)に高速で搬入されてきた紙幣39aは惰性によって間隙qの分だけ上に飛び出してしまうので、その後端部が、部分羽根車29の羽根の先端の回転範囲aから外れて、部分羽根車29の羽根が搬入紙幣39aの後端を叩くことが出来ない場合が生じ、搬入紙幣39aが一時集積部6内で浮き上がった状態となる。
【0062】
そこに図9(b)に示すように、後続の紙幣39bが搬入されてくると、浮き上がった状態の先行の紙幣39aに、後続の紙幣39bが衝突し、ジャム発生の要因となる。しかし整列レバー31が回動部材であると、図9(c)に示すように、退避位置31aから降下位置31bに回動して、図9(a),(b)に示す間隙qを解消することができる。
【0063】
そうすると、搬入される紙幣は、先端を規制されて、後端部が矢印rで示すように常に部分羽根車29の羽根の先端の回転範囲aに入るので、後端部が羽根に叩かれて、先に搬入されている紙幣束39に密着するように揃った形で集積される。したがって、先行の紙幣39aに、後続の紙幣39bが衝突することが無くなる。
【0064】
図10は、出金時において例えばユーロ紙幣などのように額面に応じて紙幣幅サイズの異なる紙幣を一時集積部6に集積させる場合の整列レバー31の回動を制御する処理のフローチャートである。
【0065】
図11(a),(b)は、上記の処理における整列レバー31の回動動作を示す図である。尚、図10及び図11(a),(b)に示す処理は、図5に示した制御部40が処理部42に各種タスクのコマンドを送信することによって実行される。
【0066】
図10に示す処理は、顧客12(図1参照)により、入出金部5のやや傾斜して形成されている上面外側近傍に配置されている不図示の入力操作パネル部から、出金依頼と出金金額が操作表示画面から入力されたことによって開始される。
【0067】
尚、この出金処理では、紙幣幅サイズの小さい紙幣から紙幣幅サイズの大きいものへと順に、紙幣が一時集積部6に集積される。
【0068】
図10において、先ず制御部40は、顧客12から入力操作パネル部を介して出金依頼が入力されたことを認識すると(ステップS1)、出金処理のシーケンスを開始する(ステップS2)。
【0069】
この出金処理のシーケンスでは、先ず、出金依頼の金額に応じて所定の金種の紙幣が収納部4の対応するカセットA〜Dのいずれかから搬送路7bに繰り出される(ステップS3)。繰り出された紙幣は搬送路7aを経由して鑑別部9を通過し、鑑別部9により紙幣の幅サイズが、例えば71mm以下であるか否か鑑別される(ステップS5)。
【0070】
ここで、幅サイズが71mm以下の紙幣のというのは、収納部4のカセットB〜Dに収納されている中サイズ又は小サイズの紙幣であることを示しており、幅サイズが71mmを超える紙幣のときは、カセットAに収納されている大サイズの紙幣であることを示している。
【0071】
前述したように、出金処理では、紙幣幅サイズの小さい紙幣から紙幣幅サイズの大きいものへと順に、紙幣が一時集積部6に集積されるので、出金依頼の金額にサイズの異なる紙幣が混在するときは、中サイズ以下、つまり幅サイズが71mm以下の紙幣から先に収納部4から繰り出されている。
【0072】
したがって、この場合はステップS5の判別はYesとなり、鑑別紙幣が一時集積部6に送り込まれる前に、予め紙幣整列レバーの突出処理が行われる(ステップS6)。
【0073】
この処理は、図11(a)に示すように、整列レバー31の保持部レバー36をストッパ25に当接する退避位置cから降下位置c´に降下させて(図3参照)、一時集積部6に集積される紙幣39Sの先端部に当接して紙幣先端を規制するよう整列レバー31の櫛歯37の先端をステージプレート22の切り欠き溝38内に突出させる処理である。
【0074】
これにより、一時集積部6に集積される中サイズ又は小サイズの紙幣39Sは、図9(c)で説明したように、一時集積部6内で浮き上がることなく下端部を部分羽根車29の羽根に叩かれて、下端を一時集積部6の底面位置dに揃えて集積される。
【0075】
制御部40は、紙幣が一枚集積される毎に、収納部4からの出金依頼枚数に対応する紙幣の繰り出しが完了したか否かを判別する(ステップS6)。そして、まだ完了していない場合は(S6の判別No)、ステップS2に戻って、出金処理のシーケンスを繰り返す。
【0076】
この間、フィードローラ26、搬送ローラ28、セパレータ27は、図8(b)に示したように、それぞれ紙幣搬入方向に回転しており、部分羽根車29は、搬入紙幣39Sの後端部を羽根で叩くように回転している。
【0077】
また、上記ステップS5の鑑別部9による判別で、紙幣の幅サイズが71mmを超えているときは(S5の判別がNo)、制御部40は、続いて更に紙幣整列レバーが突出しているか否か判別する(ステップS8)。
【0078】
この処理は、整列レバー31の保持部レバー36がストッパ25に当接する退避位置cから離れて降下位置c´に降下していか否かを判別する処理である。そして、整列レバー31が降下位置c´に降下している、すなわち櫛歯37の先端がステージプレート22の切り欠き溝38内に突出しているときは(S8の判別がYes)、紙幣整列レバー退避の処理を行う(ステップS9)。
【0079】
この処理は、図11(b)に示すように、ソレノイド34の駆動を解除して、整列レバー31をストッパ25に当接する退避位置cに回動させる処理である。これにより、この後一時集積部6に集積される大サイズ紙幣39Lの先端がちょうど整列レバー31に規制される位置に来る。
【0080】
したがって、一時集積部6に送り込まれる大サイズ紙幣39Lは、その後端を部分羽根車29の羽根で叩かれながら、後端を一時集積部6の底面位置dに揃えながら集積される。このように、サイズの異なる紙幣39S及び39Lが安定した束の状態になって集積される。
【0081】
この後も、制御部40は、紙幣が一枚集積される毎に、ステップS6で収納部4からの出金依頼枚数に対応する紙幣の繰り出しが完了したか否かを判別し、完了していない場合は、ステップS2に戻って、出金処理のシーケンスを繰り返す。
【0082】
この場合、ステップS8の判別では、既に前段のシーケンス処理で紙幣整列レバー退避の処理が行われているので、ステップS8の判別はNoであり、制御部40は、直ちにステップS6の判別に移るということを繰り返す。
【0083】
そして、ステップS6の判別で、収納部4からの出金依頼枚数に対応する紙幣の繰り出しが完了していれば、出金処理を終了する(ステップS10)。出金処理を終了すると、フィードローラ26、搬送ローラ28、セパレータ27、部分羽根車29等の回転系は回転を停止する。
【0084】
この後、特には図示しないが、ルーフプレート21及びステージプレート22が長溝孔20を介して駆動軸により駆動され、一時集積部6の底面位置dに沿って入出金部5へと移動する。
【0085】
これにより、一時集積部6に安定した束の状態になって集積されたサイズの異なる紙幣39S及び39Lは、束の状態のまま、入出金部5に移動し、図1に示すように、顧客12によって、一括して取り出される。
【0086】
このように、本例の紙幣入出金装置2によれば、同一の機構で入金処理と出金処理が出来る簡明で小型な機構により出金時にはサイズの異なる紙幣を安定した束の状態に集積して一括して出金を行うことができる。
【0087】
また、顧客12が出金紙幣を取り残した場合などには、同一機構の入金処理時の動作を活用して、取り残し紙幣を、プール部8又はリジェクトボックス13に一時的に収納することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、同一の機構で入金処理と出金処理が出来る簡明で小型な機構により出金時には紙幣を安定した束の状態に集積して一括して出金を行うことができる紙幣入出金装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ATM(automated teller machine)
2 紙幣入出金装置
3 搬送部
4 収納部
5 入出金部
6 一時集積部
7(7a、7b) 搬送路
8 プール部
9 鑑別部
11 ダミー券保持部
12 顧客
13 リジェクトボックス
14 カセットA
15 カセットB
16 カセットC
17 カセットD
18 搬入搬出路
20 長溝孔
21 ルーフプレート
22 ステージプレート
23 入出金口
24 シャッタ
25 ピックローラ
26 フィードローラ
27 セパレータ
28 搬送ローラ
29 部分羽根車
31 整列レバー
32 搬送ローラ
33 回転軸
34 ソレノイド
35 ストッパ
36 保持部レバー
37 櫛歯
38 切り欠き溝
39 紙幣
40 制御部
41 USB(universal serial bus)
42 処理部
43 回線タスク
44 コマンド処理タスク
45 制御タスク部
46 メカ制御タスク
47 搬送制御タスク
48 鑑別制御タスク
49 ドライバ部
51 被駆動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客からの入金時には顧客が入出金口から紙幣を投入し、顧客への出金時には顧客が入出金口から紙幣を取り出す紙幣一時収納部となる入出金部と、
前記入金時には前記入出金部から入金紙幣を搬送路に繰り出し、前記出金時には前記搬送路から送り込まれた出金紙幣を前記入出金部に移動させるための一時集積部と、
前記入出金部と前記一時集積部との間を移動経路に沿って移動可能な紙幣集積手段と、
前記一時集積部に設けられたピックローラと、
前記一時集積部と前記搬送路との間に配置されたフィードローラ、セパレータ、搬送ローラ、部分羽根車と、
前記一時集積部に配置された整列レバーと、
を備え、
前記紙幣集積手段は、前記入出金部に移動したとき、前記入出金口の下方に入金紙幣受入部又は出金紙幣払出部を形成し、前記一時集積部に移動したとき、入金紙幣繰出部又は出金紙幣一時集積部を形成し、
前記紙幣集積手段が前記入金紙幣繰出部を形成したとき、前記ピックローラは、前記入金紙幣繰出部に収容されている紙幣束に圧接して最上部の紙幣を一枚ごと前記フィードローラ方向に繰り出し、前記フィードローラは繰り出された前記紙幣を前記搬送ローラと共に前記搬送路に搬出し、前記部分羽根車は羽根の無い周面を搬出紙幣の通路に向けて停止し、
前記紙幣集積手段が前記出金紙幣一時集積部を形成したとき、前記搬送ローラは前記フィードローラ及び前記セパレータと共に前記搬送路から搬送されてくる紙幣を前記出金紙幣一時集積部に搬入し、前記整列レバーは前記出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣の後端部が前記出金紙幣一時集積部の底部に位置するよう前記紙幣の前端部を規制し、前記部分羽根車は前記出金紙幣一時集積部に搬入された紙幣の後端部を羽根で叩くように回転して後続の搬入紙幣が先行の搬入紙幣に衝突することを防止する、
ことを特徴とする紙幣入出金装置。
【請求項2】
前記紙幣集積手段は、前記移動経路にほぼ垂直に立設され、前記一時集積部側に配置されたルーフプレートと前記入出金部側に配置されたステージプレートとから成る、ことを特徴とする請求項1記載の紙幣入出金装置。
【請求項3】
前記整列レバーは、前記出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣の最大サイズの紙幣の先端位置に対応する位置を退避位置とし、前記出金紙幣一時集積部に搬入される紙幣が所定サイズ以下の紙幣であるとき前記退避位置から降下して前記所定サイズ以下の紙幣の先端を規制する、
ことを特徴とする請求項1記載の紙幣入出金装置。

【図5】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−247947(P2012−247947A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118446(P2011−118446)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】