説明

紙幣還流装置

【課題】バックアッププレート上の堆積紙幣の枚数が増大した場合においても堆積紙幣束の形状を幅方向中央部を上向きに膨出させた形状(逆U字状)に維持して紙幣束後端部の浮き上がりを効果的に防止する。
【解決手段】積層される紙幣の幅方向中央部を上向きに膨出させる凸部3aを幅方向上面中央部に備え、且つ上向きに弾性付勢されたバックアッププレート3aと、バックアッププレート上に昇降して紙幣の幅方向両端部側の上面を夫々抑える一対の押し込み部材と、一対の押し込み部材間の開口内を相対的に昇降する紙幣ガイド部材と、を備え、各押し込み部材は、凸部により膨出した紙幣の幅方向中央部を回避した幅方向両端部側上面を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を収納したり釣銭として払出す入出金機能を備えた紙幣還流装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えた紙幣還流装置は、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備されており、この紙幣還流装置としては、始業時に準備した紙幣、或いは稼働中に投入された紙幣を金種別に収納しておき、必要に応じて釣銭として払い出すように構成されたものが知られている。
【0003】
図5(a)及び(b)は夫々従来の紙幣還流装置の入金時ポジション、及び出金時ポジションを示す説明図である。
この紙幣還流装置200は、図示しない紙幣入金部から投入された紙幣を収納方向と出金方向の双方向へ搬送可能な搬送経路と連通しており、該搬送経路を搬送されてきた紙幣を収納(入金)したり該搬送経路へ繰出す手段である。紙幣は、紙幣の長手方向を搬送方向と並行にして搬送される。
紙幣還流装置200は、紙幣収納部201と、紙幣収納部と搬送経路との間で紙幣を双方向へ移動させる正逆転可能な給紙ローラ群250と、給紙ローラ群を駆動するモータ、ギヤ群等の図示しない駆動機構と、図示しない制御手段と、を備える。
紙幣収納部201は、上面に収納紙幣Pを積載し、且つ上下動可能なバックアッププレート202と、バックアッププレート202上に収納紙幣Pを押し込むために上下動可能であり、且つ紙幣通過用の開口を有した押し込み部材210と、押し込み部材を昇降させる図示しないモータ、プーリ、ベルト等からなる昇降機構と、バックアッププレート202の上方に位置し押し込み部材210の上下動に際して紙幣通過用の開口内を相対的に進退すると共に紙幣の搬送をガイドする紙幣ガイド部材220と、バックアッププレートを上昇方向へ付勢する弾性部材225と、を備える。
給紙ローラ群250は、バックアッププレート202上の紙幣上面に接して出金方向へ回転することにより最上部の紙幣を出金する繰出しローラ251と、分離ローラ対(フリクションローラ252a、ストップローラ252b)等を備える。
下側のストップローラ252bの回転軸には弾性材料(ゴム)から成る薄板状の羽根253aを中心部から放射状に突出させたスイーパ253が固定されている。 スイーパの羽根は、フリクションローラ252a、及びストップローラ252bと干渉しない軸方向両端部等に配置されており、羽根先端部によって紙幣収納部内の紙幣後端部の浮き上がりを押さえ込むように構成されている。
【0004】
図5(a)に示した入金時ポジションでは、押し込み部材210が下降してバックアッププレート202上の紙幣束Pの最上面に接してこれを押し下げることにより、押し込み部材上に投入紙幣P1の収容空間を形成する。この状態で繰出しローラ251とフリクションローラ252aを矢印で示した入金方向へ回転させることにより上記収容空間内に投入紙幣P1を収容する。続いて押し込み部材210だけを上昇させることにより、投入紙幣P1は押し込み部材に設けた紙幣通過用の開口内を相対的に通過してバックアッププレート上に堆積した紙幣束P上に移載される。
図5(a)に示した入金時ポジションから(b)に示した出金時ポジションに移行させる場合には、押し込み部材210を(b)中に示した上昇位置に移動させることによりバックアッププレート上の紙幣束Pの最上面を繰出しローラ251と接触させる。この状態で繰出しローラ251及びフリクションローラ252aを矢印で示した繰出し方向へ回転させることにより最上部の紙幣が紙幣収納部201から外部に繰り出される。この際、重送防止手段としてのストップローラ252bは回転を停止するか、或いは矢印で示した戻し方向へ回転することにより、重送されてきた二枚の紙幣のうちの下側を紙幣収納部201側に戻す。
図5(a)に示した入金時に反時計回り方向へ回転する過程で個々の羽根253aの先端部を紙幣収納部201内に突出させることにより、バックアッププレートと押し込み部材210との間に挟まれた紙幣束P中の折れ癖、膨らみ癖等を有した紙幣P2の後端部を押さえ込む。バックアッププレート上の紙幣の後端部が浮き上がっている場合には、後続の投入紙幣と衝突して進入を妨げたり、ジャムを起こす虞があるため、スイーパの羽根によって既堆積紙幣の後端部を押さえ込むことによって、分離ローラ対252a、252bによって後続紙幣を紙幣押え部材上の収容空間内にスムーズに進入させることが可能となる。
【0005】
また、押し込み部材210は、繰出しローラ251との干渉を避けるために、その端部が繰出しローラ251の手前側にて終端している。このことも、既堆積紙幣の後端部が浮き上がり易くなる原因となっている。
また、既堆積紙幣の後端部は、その浮き上がり癖が強い場合には、スイーパの羽根によって押えられている期間中だけは下方へ退避するが、羽根からの押え力がなくなった時点で再び浮き上がって後続紙幣と衝突することがある。
【0006】
ところで、端部がカールしにくい性質を有した円紙幣とは異なり、キネグラムを備えたユーロ紙幣等の海外の紙幣は端部がカールし易い性質を有している。このため、押し込み部材210によって抑えられていない堆積紙幣束の後端部に大きな盛り上がりが発生し易くなり、後続の入金紙幣と衝突してジャムを発生させる原因となる。
このような不具合に対処するために、特開2010−33488号公報(特許文献1)には、バックアッププレートの幅方向中央部上面に設けた凸部と、スイーパとの協働によってバックアッププレート上に堆積した紙幣を逆U字状に湾曲させて、紙幣束後端部の浮き上がりを防止するようにした技術が開示されている。
バックアッププレート上の堆積紙幣の枚数が少ない時や、カール紙幣が少ない場合には、凸部により紙幣中央部を上方に湾曲(フォーミング)させる機能と、スイーパによる叩き動作との協働によって、紙幣を長手方向全長に渡って逆U字状に湾曲さることにより紙幣後端部の浮き上がりを防止することができる。しかし、堆積枚数が例えば50枚を越えて増大してくると、スイーパによって紙幣束の後端部を叩くだけでは、堆積紙幣束全体を逆U字状に湾曲変形させて後端部の浮き上がりを防止した状態を維持し続けることが困難であるのが実情である。
【0007】
また、凸部を設けた場合であっても、既堆積紙幣の後端部の浮き上がり癖が強い場合には、スイーパの羽根によって押えられている間だけ下方に退避するが、羽根からの押え力がなくなった時点で再び浮き上がって後続紙幣と衝突することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−33488公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように従来の紙幣還流装置にあっては、紙幣収納部内の既堆積紙幣の後端部の浮き上がりを抑えることによって後続紙幣の進入をスムーズ化するために、バックアッププレートの上面中央部に突設したフォーミング用の凸部と、スイーパとの協働によって堆積紙幣束を全長に渡って逆U字状に湾曲させるようにしているが、堆積紙幣枚数が増大してくると、凸部とスイーパだけでは紙幣束を長手方向全長に渡って逆U字状に湾曲させることが困難となり、紙幣後端部の盛り上がりを抑えきれなくなっていた。
特に、押し込み部材は、繰出しローラとの干渉を避けるためにその端部が繰出しローラの手前側にて終端している。このため、既堆積紙幣の後端部が浮き上がり易くなっている。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、バックアッププレート上面の幅方向中央部に突設した凸部と、堆積紙幣後端部を叩いて押さえ込むスイーパとの協働によって、バックアッププレート上に堆積された紙幣束を長手方向全長に渡って逆U字状に湾曲させるようにした紙幣還流装置において、堆積紙幣の枚数が増大した場合においても堆積紙幣束の形状を幅方向中央部を上向きに膨出させた形状(逆U字状)に維持して紙幣束後端部の浮き上がりを効果的に防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、搬送経路を長手方向に沿って搬送されてきた紙幣を収納したり該搬送経路へ出金する紙幣還流装置であって、前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を収納する紙幣収納部と、該紙幣収納部と前記搬送経路との間で紙幣を入金方向及び出金方向へ双方向移動させる給紙ローラ群と、回転することにより前記バックアッププレート上の紙幣後端部の幅方向両端側上面を下向きに押圧する羽根を有したスイーパと、を備え、前記紙幣収納部は、前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を上下方向へ積層すると共に、積層される該紙幣の幅方向中央部を上向きに膨出させる凸部を幅方向上面中央部に備え、且つ上向きに弾性付勢されたバックアッププレートと、該バックアッププレート上に昇降して該バックアッププレート上の紙幣の幅方向両端部側の上面を夫々抑える一対の押し込み部材と、該一対の押し込み部材間の開口内を相対的に昇降する紙幣ガイド部材と、を備え、前記各押し込み部材は、前記凸部により膨出した前記紙幣の幅方向中央部を回避した幅方向両端部側上面を抑えることにより前記バックアッププレート上の紙幣後端部をも逆U字状に保持し続けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バックアッププレート上面の幅方向中央部に突設した凸部と、堆積紙幣後端部を叩いて押さえ込むスイーパとの協働によって、バックアッププレート上に堆積された紙幣束を長手方向全長に渡って逆U字状に湾曲させるようにした紙幣還流装置において、押し込み部材によって堆積紙幣の幅方向両端部を押さえ込むようにしたので、堆積紙幣の枚数が増大した場合においても堆積紙幣束の形状を幅方向中央部を上向きに膨出させた形状(逆U字状)に維持して紙幣束後端部の浮き上がりを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)(b)は本発明に係わる紙幣還流装置の入金手順を説明する説明図であり、各(a)(b)中の左図は正面側要部縦断面図であり、右図はA−A断面図である。
【図2】(c)(d)は本発明に係わる紙幣還流装置の入金手順を説明する説明図であり、各(c)(d)中の左図は正面側要部縦断面図であり、右図はA−A断面図である。
【図3】(a)及び(b)は出金時の状態を示す正面図、及びA−A断面図である。
【図4】(a)乃至(d)はバックアッププレートと一対の押し込み部材の構成及び動作を示す斜視説明図であり、(e)は紙幣がフォーミングされた状態を示す側面図である。
【図5】(a)及び(b)は夫々従来の紙幣還流装置の入金時ポジション、及び出金時ポジションを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示した実施の形態例に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1(a)(b)、図2(c)(d)は本発明に係わる紙幣還流装置の入金手順を説明する説明図であり、各図(a)乃至(d)中の左図は正面側要部縦断面図であり、右図はA−A断面図である。また、図3(a)及び(b)は出金時の状態を示す正面図、及びA−A断面図であり、図4(a)乃至(d)はバックアッププレートと一対の押し込み部材の構成及び動作を示す斜視説明図であり、(e)は紙幣がフォーミングされた状態を示す側面図である。
【0014】
紙幣還流装置1は、投入された紙幣を受け入れる入金機能や、釣り銭や払出し金として紙幣を払い出す出金機能を備えており、各種自動販売機、入出金装置、両替機等の紙幣取扱装置に装備される。
紙幣還流装置1は、紙幣取扱装置に設けた図示しない紙幣入金部から投入された紙幣を収納方向と出金方向の双方向へ搬送可能な搬送経路と連通し、該搬送経路を搬送されてきた紙幣を収納(入金)したり該搬送経路へ繰出す手段である。本装置において、紙幣は、長手方向一端縁を先頭として長手方向に沿って搬送される。
紙幣還流装置1は、紙幣を上下方向へ積層した状態で収納する紙幣収納部2と、紙幣収納部と搬送経路との間で紙幣を出金方向、及び入金方向へ双方向移動させる給紙ローラ群50と、スイーパ55、その他の可動部を駆動するモータ、ギヤ群等の図示しない駆動機構と、駆動機構を制御する制御手段と、を備える。
【0015】
紙幣収納部2は、上面に収納紙幣を積載し、且つ上下動可能なバックアッププレート3と、バックアッププレートを上方に付勢する弾性部材5と、バックアッププレート3上に収納紙幣Pを押し込むために一体的に上下動可能であり、且つ紙幣通過用の開口10aを介して対向配置された一対の押し込み部材10と、各押し込み部材10を一体的に昇降させるモータ、プーリ、ベルト等からなる昇降機構と、バックアッププレート3の上方に位置し各押し込み部材10の上下動に際して紙幣通過用の開口内を相対的に進退すると共に下面にて紙幣の上面に接してその搬送をガイドする紙幣ガイド部材20と、紙幣収納部2の前端側に固定された紙幣ガイド60と、を有する。
符号30は、紙幣収納部2から紙幣を送出する際に送出を完了したか否かを検知する通紙センサであり、通紙センサ30からの検知信号に基づいて制御手段が所定のタイミングで給紙ローラ群50,バックアッププレート3、押し込み部材10,紙幣ガイド部材20等を駆動する。
【0016】
本実施形態では、各押し込み部材10を細幅帯状の板材から構成し、これらを所定の間隔を隔てて並行に対向配置させている。各押し込み部材10は、図2(c)のように上昇した際に繰出しローラ51の回転軸51aと干渉しないように長さが設定されている。
各押し込み部材10の上下動に伴って開口10a内を紙幣ガイド部材20が相対的に上下方向へ通過移動できるようになっている。
【0017】
給紙ローラ群50は、バックアッププレート3上の紙幣P上面に接して出金方向へ回転することにより最上部の紙幣を出金する正逆転可能な繰出しローラ51と、分離ローラ対52と、を備える。分離ローラ対52は、正逆回転する上側のフリクションローラ53と、下側のストップローラ(重送防止ローラ)54、とを備える。ストップローラ54は、紙幣の繰出し時には停止しているか、或いは戻し方向に低速で回転している。
ストップローラ54の回転軸54a上のストップローラと干渉しない位置には、スイーパ55が固定されている。スイーパ55は、回転軸54aに固定される中心部材56と、中心部材56から放射状に突設された薄板状の弾性羽根57と、を備えている。少なくとも弾性羽根57は、ゴム等の弾性部材により構成されている。
【0018】
スイーパ55は、図1(a)に示した入金時に反時計回り方向へ回転する過程で個々の弾性羽根57の先端部を紙幣収納部2内に突出させることにより、バックアッププレートと押し込み部材との間に挟まれた紙幣束P中の折れ癖、膨らみ癖等を有した紙幣の後端部を押さえ込む。バックアッププレート上の紙幣の後端部が浮き上がっている場合には、後続の投入紙幣と衝突して進入を妨げたり、ジャムを起こす虞があるため、スイーパの弾性羽根によって既堆積紙幣の後端部を押さえ込むことによって、分離ローラ対52によって後続紙幣を紙幣押え部材上の収容空間内にスムーズに進入させることが可能となる。
昇降機構によって押し込み部材10の高さ位置とバックアッププレート3の高さ位置を変化させ、その結果として繰出しローラ51と紙幣上面との接触圧力を調整することにより、繰出し時における繰出しローラ51と紙幣最上面との間の分離圧力を変化させることができる。
【0019】
制御手段は、昇降機構を駆動することにより押し込み部材10及びバックアッププレート3を、最下降位置に保持した収納ポジション(図1(a))と、該収納ポジションよりも上方の返却ポジション(図1(b))と、該返却ポジションよりも上方の出金ポジション(図3)と、出金ポジションよりも上方の最上点ポジション(図示せず)との間で昇降させ、且つ各ポジションにて停止させることにより、紙幣の収納、収納途中の紙幣の返却、及び収納されていた紙幣の出金を夫々行う。各ポジションは、例えば押し込み部材、或いはバックアッププレートの高さ位置を図示しないフォトセンサ(ポジションセンサ)によって検出することにより知ることができる。
図1(a)に示した入金時ポジションでは、一対の押し込み部材10が下降してバックアッププレート3上の紙幣束Pの最上面に接してこれを押し下げることにより、押し込み部材上に投入紙幣P1の収容空間を形成する。この状態で繰出しローラ51とフリクションローラ53を矢印で示した入金方向へ回転させることにより上記収容空間内に投入紙幣P1を収容する。続いて図1(b)、図2(c)に示したように、投入紙幣の中央部上面を紙幣ガイド部材20により抑えた状態で押し込み部材10だけを上昇させることにより、投入紙幣P1は押し込み部材に設けた紙幣通過用の開口10a内を相対的に通過してバックアッププレート上に堆積した紙幣束P上に移載される。各押し込み部材10が投入紙幣P1の両端部を越えて上昇してから、再び下降することにより投入紙幣の両端部を既堆積紙幣P上に押さえ込む(図2(d))。
【0020】
図3に示した出金ポジションでは、押し込み部材10及びバックアッププレート3を返却ポジションよりも上方に位置させることによりバックアッププレート上の紙幣束Pの最上面の紙幣が適切な圧力で繰出しローラ51と接するように設定されている。更に、バックアッププレート3上の積載紙幣枚数が減少するのに応じて弾性部材5によってバックアッププレートが引き上げられ分離圧力を調整する。この状態で繰出しローラ51及びフリクションローラ53を矢印で示した繰出し方向へ回転させることにより最上部の紙幣が紙幣収納部2から外部に繰り出される。この際、重送防止手段としてのストップローラ54は回転を停止するか、或いは矢印で示した戻し方向へ回転することにより、重送されてきた二枚の紙幣のうちの下側紙幣を紙幣収納部2側に戻す。
【0021】
本発明の特徴的な構成は、図4(a)に示すように、バックアッププレート3の上面に積層される紙幣束Pの幅方向中央部を上向きに膨出させる凸部(突条)3aを、バックアッププレートの幅方向上面中央部に設けた点と、バックアッププレート上の紙幣束の後端部を叩いて浮き上がりを押さえ込むスイーパ55を設けた点と、入金のために一対の押し込み部材10がバックアッププレート上に下降した際に、バックアッププレート上に積層された紙幣束の幅方向両端部側の上面を夫々抑えるようにした点にある(図1(a)、図4(d)(e))。
凸部3aは、バックアッププレート3において堆積紙幣を全長に渡って逆U字状にフォーミングすることができるように、その幅と長手方向長が設定されている。図示した例では、凸部3aは断面が四角形の柱状体であるが、断面形状を台形としたり、上面を湾曲状に膨出させたり、全体的に円弧状の湾曲面としてもよい。
各押し込み部材10は、入金時に、凸部3aにより上向きに膨出した紙幣束の幅方向中央部を回避した幅方向両端部側上面を同時に抑えることにより、紙幣束を長手方向全長に渡って、幅方向中央部を上方に膨出させた湾曲姿勢に変形させるように構成されている。
【0022】
即ち、バックアッププレートの平坦な上面の幅方向中央部に、堆積される紙幣の幅方向中央部と対応する凸部3aを紙幣の長手方向と並行な方向に沿って形成することにより、バックアッププレート上に堆積される紙幣の幅方向中央部が幅方向両端部よりも上方に膨出した湾曲状態となるように構成すると共に、図4(c)(d)に示すように入金時にはスイーパ55によって紙幣束の後端部の浮き上がりを押え、且つ押し込み部材10によって紙幣束の幅方向両端部をバックアッププレート上に押さえ付けるようにしている。このため、バックアッププレート上の既堆積紙幣の後端部の浮き上がりを確実に防止することができ、紙幣収納部2内に新たに入金されてくる紙幣の先端部が既堆積紙幣の後端部に衝突してジャムを起こすことがなくなる。
特に、バックアッププレート上の紙幣枚数が増大した場合には、凸部3aを設けただけでは堆積紙幣を逆U字状にフォーミングし続けることが難しくなり、紙幣後端縁が浮き上がりを起こし易くなる。この場合、スイーパによる押さえ込みのみでは浮き上がりを継続して防止し続けることが難しく、後続紙幣と衝突し易くなる。
これに対して本発明では、入金時に、凸部3aによる紙幣フォーミング機能と、スイーパ55による紙幣後端縁押さえ込み機能に加えて、押し込み部材10によって堆積紙幣の幅方向両端部を押さえ込むようにしたので、逆U字状のフォーミングを継続して維持することが可能となり、堆積紙幣の後端部の浮き上がりを確実に防止することが可能となる。
【0023】
押し込み部材10の先端部は、繰出しローラ51の回転軸51aとの干渉を避けるために短くなっており、紙幣の全長に渡って両側部を押さえ込むことはできない。従って、浮き上がりやすい紙幣後端部の両側部を直接押さえ込むことはできないが、スイーパにより一旦押さえ込まれた紙幣後端部が再度浮き上がることを防止するには十分な長さである。
即ち、繰出しローラ51の両端部からは回転軸51aが突出しており、回転軸51aと干渉する経路を昇降する各押し込み部材が回転軸と干渉することを回避するためには、押し込み部材の先端部を切除した構成とする必要がある。一方、スイーパは複数枚の羽根によって断続的に紙幣後端部を押さえる構成であるに過ぎないため、各羽根が紙幣後端部と接していない期間は紙幣後端部が自らの浮き上がり癖によって浮き上がりを起こすことがある。このような不具合に対処するために本発明ではスイーパの羽根によって一旦押さえ込まれた紙幣後端部を押し込み部材によって確実に押さえ込んで紙幣後端部を逆U字状に保持して浮き上がらないようにしている。
なお、繰出しローラ51の両端部から回転軸51aを突出させる支持構造に代えて、回転軸51aの一端部によって繰出しローラを回転自在に軸支した片持ち支持構造とすることにより、一方の押し込み部材の先端部だけを紙幣後端部まで延在させることが可能となる。このように構成した場合には、押し込み部材による紙幣後端部のフォーミングが更に効果的に発揮されることは言うまでもない。
【0024】
以上のように本発明では、幅方向中央部上面に紙幣フォーミング用の凸部を突設したバックアッププレートと、バックアッププレート上の堆積紙幣の幅方向両端縁を押圧したり押圧解除するために昇降する押し込み部材と、堆積紙幣の幅方向中央部を押さえる紙幣ガイド部材と、堆積紙幣後端部を叩いて押さえ込むスイーパとの協働によって、バックアッププレート上に堆積された紙幣束を長手方向全長に渡って逆U字状に湾曲させるようにしたので、堆積紙幣の枚数が増大した場合においても堆積紙幣束の形状を幅方向中央部を上向きに膨出させた形状(逆U字状)に維持して紙幣束後端部の浮き上がりを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1…紙幣還流装置、2…紙幣収納部、3…バックアッププレート、3a…凸部、5…弾性部材、10…押し込み部材、20…紙幣ガイド部材、30…通紙センサ、50…給紙ローラ群、51…ローラ、52…分離ローラ対、53…フリクションローラ、54…ストップローラ、54a…回転軸、55…スイーパ、56…中心部材、57…弾性羽根、60…紙幣ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路を長手方向に沿って搬送されてきた紙幣を収納したり該搬送経路へ出金する紙幣還流装置であって、
前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を収納する紙幣収納部と、該紙幣収納部と前記搬送経路との間で紙幣を入金方向及び出金方向へ双方向移動させる給紙ローラ群と、回転することにより前記バックアッププレート上の紙幣後端部の幅方向両端側上面を下向きに押圧する羽根を有したスイーパと、を備え、
前記紙幣収納部は、前記搬送経路を搬送されてきた前記紙幣を上下方向へ積層すると共に、積層される該紙幣の幅方向中央部を上向きに膨出させる凸部を幅方向上面中央部に備え、且つ上向きに弾性付勢されたバックアッププレートと、該バックアッププレート上に昇降して該バックアッププレート上の紙幣の幅方向両端部側の上面を夫々抑える一対の押し込み部材と、該一対の押し込み部材間の開口内を相対的に昇降する紙幣ガイド部材と、を備え、
前記各押し込み部材は、前記凸部により膨出した前記紙幣の幅方向中央部を回避した幅方向両端部側上面を抑えることにより前記バックアッププレート上の紙幣後端部をも逆U字状に保持し続けることを特徴とする紙幣還流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−58072(P2013−58072A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195866(P2011−195866)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(305027456)ネッツエスアイ東洋株式会社 (200)
【Fターム(参考)】