説明

紙葉類の貯蔵容器および紙葉類処理装置

【課題】ATM内の紙幣の搬送系における、紙幣の静電気帯電によるトラブルを防止し、特にスタッカ容器内の紙幣の電位を検出して、スタッカ容器の電位を紙幣と同じ電位に制御することで、収納時の静電気障害を防止する。
【解決手段】上部に紙幣の送り込まれるスタッカ入口9があり、容器内に紙幣が積み重なる構造のスタッカ容器1において、貯蔵される紙幣の近傍にセンサー電極板7が配置され、該センサー電極板7の電位を検出回路12で検出し、電圧制御回路13により側面板上部4および上面板2の電位を制御するように構成し、またセンサー電極板7は積み重なって貯蔵される紙幣8の上端位置の容器側面に配置するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現金自動預け払い機(Automatic Teller Machine:以下ATMと略す)内の紙幣の搬送系における、紙幣の静電気帯電によるトラブルを防止する技術に関し、更にはATM内の紙幣を収納する貯蔵部(スタッカ容器)内の紙幣の電位を検出して、スタッカ容器の電位を紙幣と同じ電位に制御することで、収納時の静電気障害を防止することに係わる。
【背景技術】
【0002】
ATM内では紙幣が出入金口や鑑別部、貯蔵部などの間を搬送されて処理されるが、特に湿度の低い冬期においては、紙幣が搬送機構の中での摩擦により静電気を帯電しやすく、この静電気帯電により、搬送系トラブルや電気系トラブルを生じる可能性がある。
【0003】
この静電気帯電によるトラブルを回避する方法として、従来、ガイドやベルトなどの搬送用部材を帯電防止部材で製作することや、除電ブラシを配置することなどで、紙幣の帯電を防いだり低下させるという対策がなされている。しかし、環境条件などによっては、帯電防止材料を使っても帯電を完全に防ぐことはできず、特に、紙幣を集めて貯蔵するスタッカ容器内において、帯電した紙幣どうしが反発して積み重ねがうまくいかなくなるというトラブルが生じる。また、除電ブラシによる良好な効果を得るためには、多くの場所に取りつける必要があり、ATM内での場所の制約などから完全な除電効果を得ることは難しい。
【0004】
特許文献1には、搬送路から順次搬出された紙葉類を集積箱内に順次積み重ねるようにしたものにおいて、上記紙葉類の一端辺を案内するガイド面に、アースした除電用ガイド体を取付けることにより、紙葉類の静電気を除去することが記載されている。特許文献2には、押圧手段を導電性材料からなる支持部材と、押圧板と、ガイド部材と、押圧板とガイド部材との電気的接触を行う導電部材で構成して、ガイド部材の帯電を防止し円滑に紙葉類を集積して収納処理することが記載されている。しかし、これらの文献は除電により上記の帯電に伴うトラブルを防止しようとするもので、十分除電できない場合があり、本発明のような、貯蔵される紙幣の電位を検出し、検出電位を貯蔵容器の側面板上部や上面板に印加するよう電位を制御する技術は開示されていない。
【特許文献1】特開昭57−145765号公報(第1−3頁、第1,2図)
【特許文献2】特開平02−175558号公報(第1−4頁、第1,2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上述べたように本発明は、乾燥した環境で紙幣の貯蔵部(スタッカ容器)での帯電した紙幣どうしが反発して積み重ねがうまくいかなくなる等に起因するトラブルを解決するために、スタッカの構造の工夫により、帯電によるトラブルが起きないような機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上部に紙幣の送り込まれる入り口があり、容器の上方から紙幣が積み重なる構造のスタッカ容器において、貯蔵される紙幣の近傍にセンサー電極板が配置され、該センサー電極板の電位を検出回路で検出し、電圧制御回路により側面板上部および上面板の電位を制御するよう構成し、また上記スタッカ容器において、センサー電極板を、積み重なって貯蔵される紙幣の上端位置の容器側面に配置するように構成する。
【0007】
上記構成による作用の原理的説明を以下に述べる。上部に紙幣の送り込まれる入り口があり、容器内に紙幣が積み重なる構造のスタッカ容器内において、静電気を帯びた紙幣がスタッカ容器に貯まっていくと、スタッカ容器内に多くの帯電紙幣があるために総電荷量が増えていき、一枚のみの単独状態よりも電位および周囲の電界は大きくなる。このように帯電した紙幣が多数貯まって帯電した状態を図4に示す。図4は本発明の原理説明図であり、同図において、1はスタッカ容器、2は上面板、3は側面板、4は側面板上部、5は側面板下部、6は底板、7はセンサ電極板であり、また20は帯電電荷である。図4(a)において、例えば帯電が正電荷とすると、貯まった紙幣の電位はVpとなり、貯まった紙幣の上の空間には上向きの強い電界Eが存在することになり、新たに容器内に送り込まれた正に帯電した紙幣は、上向きの力を受けることになり迅速に落下しない。紙幣は次々に送り込まれてくるので、落下が滞ることでスタッカ容器内の紙幣の整列不良、更にはジャムが生じる原因となる。
【0008】
そこで、貯蔵される紙幣の近傍にセンサー電極板7を配置し、該センサー電極板7の電位を検出回路で検出し、電圧制御回路により側面板上部4および上面板2の電位を制御することにより、容器内の電界をなくす構造とすることができる。即ち、図4(b)に示すように貯まった紙幣の電位をVpとすると、スタッカ底面6付近に置いたセンサー電極板7は紙幣に近いので、適切な絶縁を行い電位検出の回路を接続すればVpに近い電位Vsを検出することが可能である。この電位Vsをスタッカ容器の側面板上部4、上面板2に印加することにより、スタッカ容器1の入り口付近の空間は、図4(b)のようにほぼ同じ電位のVpとVsに囲まれた空間となり、この空間内に電位勾配、つまり電界Eはなくなる。これにより、スタッカ容器内に送り込まれた紙幣は、帯電していても電界による力で落下を妨げられることがなくなる。
【0009】
紙幣の電位Vpを検出するセンサー電極板7の位置は、スタッカ容器1の底面に配置した場合は、貯まっている紙幣の上部と下部に電位の差がある場合に誤差が大きくなるので、センサ電極板7は紙幣の上端位置付近が望ましい。また、電位制御を容器の側面全体に対して行うと、貯まった紙幣が印加電位に取り囲まれ、紙幣の電位も印加分だけ上昇してしまい、電界減少効果がなくなるため、この電位を印加する部分はスタッカ容器の側面板上部4、上面板2とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、空気の乾燥などでの紙幣の帯電防止、除電が完全にはできない状況においても、スタッカ容器内での積み重ねに伴うトラブル防止が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に本発明の一実施例の外観図を示す。同図において、1はスタッカ容器、2は上面板、3は側面板、4は側面板上部、5は側面板下部、6は底板、7はセンサー電極板、8は貯蔵紙幣、9はスタッカ容器入口、10は搬送ローラ、11は搬送路、12は検出回路、13は電圧制御回路である。1〜7は、説明済みの図4と同じであり、また図1及び以降の図面において、同一部品には同一番号を付し、説明は省略する。
【0012】
図1はセンサー電極板7をスタッカ容器1の底板6の下側に配置する場合の実施例である。センサー電極板7の電位は、検出のために電流を取り出すと変わってしまうので、非常に高いインピーダンスで受けて検出することが必要である。
【0013】
また、図5(a)に示すように、センサー電極板7の電位を非接触の表面電位計プローブ21と表面電位計回路22により検出したり、図5(b)に示す例のように、センサー電極板7から検出回路12の内部まで導体ケーブル23で繋げておき、検出回路12内部で電極24から、表面電位計プローブ21で非接触の計測を行うようにしても良い。このように検出した電位と同じ電位になるように、電圧制御回路12がスタッカ容器1の側面板上部4、上面板2に電圧を印加する。この場合には当然、必要な電流を供給することになる。
【0014】
更に、センサー電極板7の位置を貯蔵紙幣8の上端の容器側面とすると、落下を妨害するために問題になる電位をより正確に検出できると期待される。図2は他の実施例として、センサー電極板7の位置を貯蔵紙幣8の貯まっているスタッカ容器1の貯蔵紙幣の上端位置の側面部14とした場合であり、この電位をスタッカ容器1の側面板上部4、上面板2に印加するものである。
【0015】
スタッカ容器1の電圧を印加する側面部は、導電性であることが必要であり、スタッカ容器1の側面部を上下の2つに分け、上部は伝導体で電圧を印加し、センサ電極を側面に取り付ける場合は、下部は非伝導体でなければならない。また、スタッカ容器1の側面板上部4および上面板2に印加する電位は、貯まった紙幣の電位と完全に一致しなくとも、おおよそ同じであれば十分な効果を発揮するので、センサー電極板7の検出電位の0.7倍から1.5倍程度であれば良いが、検出電位をアンプで増幅する等により1倍より大きな値に制御して、送り込まれた紙幣を積極的に落下させる電界を生じるようにするほうが望ましい。
【0016】
また、図1及び図2において、検出回路12の出力と電圧制御回路13の間は、検出電位そのものでなくても、例えば検出電位の1000分の1として電圧制御回路13に通知しても、ディジタル値で通知してもよく、電圧制御回路13の機能として所定の電位をスタッカ容器1の側面板上部4および上面板2に印加できれば良い。
【0017】
また、電圧を印加する側面板の部分は、貯まった紙幣の上端より上の部分であることが望ましいことから、スタッカの底面が可動式で、紙幣が貯まっていくに従い下降するような方式であれば、上端位置は一定であるので、センサー電極板7を設計された上端位置付近に取りつければよい。
【0018】
上端位置が貯蔵に従い変化する場合には、センサー電極板に移動機構をつけて追随させる構造としても良い。この場合の実施例を図3に示す。図3において、15は昇降機、16はセンサー電極板取りつけ材、17はプローブ取りつけ材、18は上面埋め込み電極、19は側面埋め込み電極である。本実施例では、容器スタッカ1の底板が貯蔵紙幣の量に応じて上下する昇降機16がついており、また底板自体をセンサー電極板7とする。センサー電極板7の電位は、表面電位計プローブ21により検出する。センサー電極板7とは電気的に絶縁するため、昇降機16との結合部のセンサー電極板取りつけ部16、表面電位計プローブ取りつけ部17などは非導電性のプラスチックを使用する。
【0019】
表面電位計プローブ21および検出回路によって検出された電位は、電圧制御回路13に送られる。このときは検出電位をそのままの電圧として送る必要はなく、千分の1程度に縮小した電圧信号として送ればよい。電圧制御回路は信号に従い、元の検出電位の値に増幅した電圧を、側面や上面のプラスチック製の板の中に埋め込まれた電極A、B、Cに印加する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1実施例を説明する構成図
【図2】本発明の他の実施例を示す構成図
【図3】本発明のスタッカ底面に昇降機を備えた実施例を示す構成図
【図4】本発明の原理説明図
【図5】本発明の帯電紙幣の電位検出方法の説明図
【符号の説明】
【0021】
1 スタッカ容器
2 上面板
3 側面板
4 側面板上部
5 側面板下部
6 底板
7 センサー電極板
8 貯蔵紙幣
9 スタッカ入口
10 搬送ローラ
11 搬送路
12 検出回路
13 電圧制御回路
14 貯蔵紙幣の上端位置の側面部
15 昇降機
16 センサー電極板取りつけ部
17 プローブ取りつけ部
18 上面埋め込み電極
19 側面埋め込み電極
20 帯電電荷
21 表面電位計プローブ
22 表面電位計回路
23 導体ケーブル
24 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の上部から搬入される紙葉類が、容器内に積み重なって貯蔵される構造の容器において、
貯蔵される紙葉類の近傍に配置されるセンサーと、
前記センサーからの電位を検出する電位検出部と、
前記電位検出部の検出した電位に応じて、所定電位を印加する電圧制御部と、
を備え、前記電圧制御部により、前記容器の側面部および上面部に前記所定電位を印加することを特徴とする紙葉類の貯蔵容器。
【請求項2】
前記センサーの配置される位置は、貯蔵される紙幣の上端位置の容器側面とすることをと特徴とする請求項1に記載の紙葉類の貯蔵容器。
【請求項3】
前記センサーの配置される位置は、前記容器の底面とすることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類の貯蔵容器。
【請求項4】
前記電圧制御部により、所定電位を印加する前記容器の側面部の位置は、側面板の上端から3分の1以内とすることを特徴とする請求項1〜3に記載の紙葉類の貯蔵容器。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の前記紙葉類の貯蔵容器を有することを特徴とする紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−1402(P2009−1402A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165479(P2007−165479)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】