説明

紙葉類収納装置

【課題】紙幣Sの収納量を検出するセンサの故障を判定する手段を提供する。
【解決手段】紙幣Sを厚さ方向に積層して集積する昇降可能に構成されたステージ12と、ステージ12に設けた遮光板16の存在を検出する複数の位置検出センサ15と、ステージ12の移動量を検出するエンコーダ14とを備え、紙幣Sの収納および繰出を行う紙幣収納カセット1において、位置検出センサ15をステージ12の移動方向であるステージ移動方向に沿って一列に配置し、位置検出センサ15による遮光板16の検出における論理的な矛盾によって、位置検出センサ15の故障を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣等の紙葉類の収納および繰出を行う紙葉類収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現金自動預払機の紙幣入出金機に装着されている金種別の紙葉類収納装置としての紙幣収納カセットは、紙幣を厚さ方向に積層して集積する昇降可能に構成されたステージと、搬送された紙幣をステージ上に集積し、収納された紙幣を1枚ずつに分離して繰出す分離集積機構と、「紙幣なし」を検出する光学式のエンド検出器と、「紙幣少量」を検出する光学式のニアエンド検出器と、「紙幣満杯」を検出する光学式のフル検出器とを備え、収納した紙幣が所定量よりも少なくなったことをニアエンド検出器が検出すると、ニアエンドになったことを示すアラームを保守センタの監視装置へ送信し、監視装置は一括収納庫に紙幣を装填して保守員に一括収納庫の運搬を通知し、保守員は一括収納庫を送信元の現金自動預払機へ運搬して装着し、紙幣収納カセットへ紙幣を補充している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−182348号公報(段落0011、0018−0021、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術においては、紙幣収納量の検出はフル検出器、ニアエンド検出器、エンド検出器のON/OFF状態で判定し、またこれらの光学式の検出器は、通常動作中にON/OFF状態が切り替わることもないため、検出器の故障を発見することができないという問題がある。
【0005】
すなわち、ニアエンド検出器およびエンド検出器は、通常収納されている紙幣またはステージ(対象物という。)を検出し続けているので、ON状態(受光素子が発光素子からの光を受光していない状態つまり暗状態をいう。)になっており、フル検出器は対象物を検出していないので、OFF状態(受光素子が発光素子からの光を受光している状態つまり明状態をいう。)になっている。
【0006】
このため、例えば、ニアエンド検出器の発光素子が寿命や断線、汚れ等によって発光しないまたは光量が少なくなった場合や受光素子の汚れ等によって発光素子からの光を受光できなくなった場合等の故障が生じたときであっても、正常な場合の通常状態(ニアエンド検出器、エンド検出器がON状態(暗)、フル検出器がOFF状態(明))と区別がつかず、ニアエンドが検出されずに唐突にエンドが検出され、現金自動預払機は、当該紙幣収納カセットからの出金を停止してしまい(例えば、特開2001−236548の段落0061−0063参照。)顧客の利便性が低下すると共に、上記特許文献1の技術においては、紙幣の補充が間に合わず、当該金種の紙幣の出金が補充を終えるまで停止されてしまうという問題が生ずる。
【0007】
また、エンド検出器が故障した場合も、正常な場合の通常状態と区別がつかず、ニアエンドの検出後にエンドが検出されないため、出金取引中に紙幣の繰出ができない事態が発生し、結果として当該金種が出金できず、顧客から苦情を受けてしまうという問題が生ずる。
【0008】
更に、フル検出器が故障によってOFF状態(明)からON状態(暗)に変化したとしても、正常な場合のフル状態(ニアエンド検出器、エンド検出器、フル検出器の全てがON状態)と区別がつかず、誤判定により当該金種の入金取引が停止されてしまい、顧客の利便性が低下するという問題が生ずる。
【0009】
上記した故障以外にも、受光素子がOFF状態(明)のときに、LO信号を出力するような回路構成を採っている場合は、受光素子からの信号線が断線するとOFF状態を出力し続けることになるので、例えば、フル検出器にこのような故障が生ずると、正常な場合の通常状態(ニアエンド検出器、エンド検出器がON状態(暗)、フル検出器がOFF状態(明))と区別がつかず、紙幣収納カセット内がフル状態であってもフル状態でないと誤判定され、集積できない過剰な紙幣が搬送される結果ジャムが発生し、装置が停止して入金取引が実行できず顧客から苦情を受けてしまうという問題が生ずる。
【0010】
上記のような検出器の故障による問題が生じたとしても、紙幣の補充を担当する保守員等は、補充しようとする紙幣収納カセットへの補充量の少なさ、または交換した紙幣収納カセットの重さ等によって、位置検出センサの故障による誤判定を現地で発見することになり、紙幣収納カセット内の紙幣に誤検出による無駄が生ずると共に、紙幣収納カセットの交換の効率的な運用が困難になるという問題が生ずる。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、紙幣等の紙葉類の収納量を検出するセンサの故障を判定する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、紙葉類を厚さ方向に積層して集積する昇降可能に構成されたステージと、前記ステージに設けた遮光板の存在を検出する複数の位置検出センサと、前記ステージの移動量を検出するエンコーダとを備え、紙葉類の収納および繰出を行う紙葉類収納装置において、前記位置検出センサを前記ステージの移動方向であるステージ移動方向に沿って一列に配置し、前記位置検出センサによる前記遮光板の検出における論理的な矛盾によって、前記位置検出センサの故障を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
これにより、本発明は、紙葉類の収納量を検出する位置検出センサの故障を容易に判定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1の紙幣収納カセットの概略構成を示す説明図
【図2】実施例1の紙幣収納カセットを示すブロック図
【図3】実施例1の紙幣収納カセットの繰出動作を示す説明図
【図4】実施例2の紙幣収納カセットの概略構成を示す説明図
【図5】実施例2の紙幣収納カセットの繰出動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明による紙葉類収納装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
図1、図2において、1は紙葉類としての紙幣Sを収納する紙葉類収納装置としての紙幣収納カセットである。本実施例の紙幣収納カセット1は、図示しない現金自動預払機の紙葉類取扱装置としての紙幣入出金機に着脱可能に装着された紙幣Sを金種別に収納する収納庫であって、紙幣収納カセット1に搬入された紙幣Sを集積すると共に、集積されている紙幣を1枚ずつに分離して繰出す分離集積機構2が設けられている。
【0017】
3はフィードローラであり、紙幣収納カセット1の天板に設けられた受渡口4の近傍に配置され、フィードローラ軸3aを中心に紙幣Sを集積する場合の回転方向である集積方向(図1において時計方向)およびその逆方向の紙幣Sを繰出す場合の回転方向である繰出方向(図3参照)に回転可能に構成されている。
【0018】
5はピンチローラであり、フィードローラ3の側方に対向配置されてピンチローラ軸5aを中心にフィードローラ3に従動回転し、受渡口4から搬入された紙幣Sおよび受渡口4から搬出する紙幣Sをフィードローラ3との間で挟持して搬送する。
【0019】
また、受渡口4と、フィードローラ3とピンチローラ5との挟持部等の間には、受渡口4から搬入または搬出される紙幣Pの搬送経路を挟んで発光部と受光部とを対向配置した光学式のセンサである受渡監視センサ4aが設けられている。
【0020】
6はゲートローラであり、フィードローラ3の下方に対向設置され、ゲートローラ軸6aを中心に紙幣Sの集積時にはフィードローラ3と共に回転するが、繰出時には回転しない一方向回転機構を備えており、紙幣収納カセット1から繰出す紙幣Sを1枚ずつに分離する機能を有している。
【0021】
7はピックアップローラであり、フィードローラ3の紙幣Sの繰出方向(紙幣繰出方向という。)の上流側に設けられ、フィードローラ軸3aに一端を回動可能に支持された図示しない支持レバーの他端である可動端に設けられたピックアップローラ軸7aを中心にフィードローラ3と正逆回転可能に取付けられており、フィードローラ3と連動して同方向に回転する。
【0022】
また、支持レバーは図示しないバネ部材によって後述するステージ12側に付勢されており、その可動端には、ピックアップローラ7がステージ12上の最上位の紙幣Sを所定の押圧力で押圧したことを検出するための押圧検出センサ8が設けられている。
【0023】
9は舌片ローラであり、合成ゴム等の弾性材料で形成された可撓性薄板部材からなる複数の舌片10を、ハブ部の外周面に放射状に埴設したローラであって、フィードローラ3から放出された紙幣Sの後端を舌片ローラ軸9aを中心に回転する舌片10の先端で押し、叩き落し、引寄せて後述するステージ12上に集積する機能を有しており、アクチュエータおよびリンク機構等からなる退避機構11によって、ゲートローラ軸6aと舌片ローラ軸9aとを同軸とした集積位置(図1参照)と、フィードローラ3により繰出される紙幣Sの搬送を妨げない退避位置との間を移動するよう構成されている(図3参照)。
【0024】
本実施例の分離集積機構2は、フィードローラ3、ゲートローラ6、ピックアップローラ7、舌片ローラ9等により構成される。
【0025】
ステージ12は、集積方向に回転するフィードローラ3とゲートローラ6との間から放出された紙幣Sをその上面12a上に厚さ方向に積層して集積する板状部材であって、ステージモータ13を駆動源とする昇降機構により昇降可能に構成されている。
【0026】
また、昇降機構のステージモータ13にはエンコーダ14が内蔵されており、ステージモータ13のシャフトの回転量の検出が可能になっている。このステージモータ13のシャフトは昇降機構を介してステージ12と直結しており、エンコーダ14で検出されたステージモータ13の回転量からステージ12の移動量を算出することができる。
【0027】
15は位置検出センサであり、遮光板16を通過させる溝17が形成されたコの字状の本体を有する光学式のセンサであって、溝17の両側面にそれそれ設けられた発光部18aと受光部18bとを対向配置して構成されており、発光部18aからの光を遮光板16が遮光したことを受光部18bで検出して遮光板16の存在を検出する。
【0028】
遮光板16は、ステージ12の一端に取付けられた板状部材であって、ステージ12と共に移動し、その上端はステージ12の上面12aと一致しており、発光部18aから光を遮光する部位のステージ12のステージ移動方向(図1において上下方向、ステージ移動方向という。)の長さは、L1に形成されている(この長さL1を遮光板長さL1という。)。
【0029】
本実施例の紙幣収納カセット1内には、紙幣Sを収納することが可能な空間として収納空間19(図1に破線で示した空間)が設定され、その上面19aは、ステージ12を上昇させて、その上に集積されている集積紙幣の最上位の紙幣Sでピックアップローラ7を押上げ、ピックアップローラ7の押圧検出センサ8が支持レバーの可動端を検出した位置(紙幣押圧位置という。)に設定され、その下面19bは、ステージ12上に集積された集積紙幣がフル状態になったときのステージ12の上面12aの位置に設定されている。
【0030】
また、収納空間19の最上部には、紙幣Sの集積動作に要する空間として集積動作空間20が設定され、その上面は収納空間19の上面19a(紙幣押圧位置)に設定され、下面はステージ12上に集積された集積紙幣の最上位の紙幣S上に紙幣Sを集積するときに、舌片ローラ9の舌片10の先端で集積される紙幣Sの後端を引寄せることができる位置に設定され、その集積動作空間20のステージ移動方向の長さは、L2に設定されている(この長さL2を集積動作空間長さL2という。)。
【0031】
本実施例の位置検出センサ15は、収納空間19の外側の上部に15a、15bの2つ、下部に15c〜15eの3つの合計5つの位置検出センサ15が、ステージ移動方向に沿って1列に配置されており、それらの隣合う発光部18aの光軸の中心間の間隔は、遮光板長さL1以上に設定されている。
【0032】
このため、各位置検出センサ15の正常状態では、遮光板16が位置検出センサ15間に存在するときは、全ての位置検出センサ15がOFF状態(受光部18bが発光部18aからの光を受光している状態つまり明状態をいう。)になっており、いずれか一つの位置検出センサ15が遮光板16の存在を検出しているときは、当該位置検出センサ15のみがON状態(受光部18bが発光部18aからの光を受光していない状態つまり暗状態をいう。)であり、他の位置検出センサ15はOFF状態になっている。
【0033】
図2において、21は紙幣収納カセット1の制御部であり、上位装置としての紙幣入出金機からの指令によって、紙幣収納カセット1内の各部を制御して紙幣Sの集積処理や繰出処理、位置検出センサ15の故障判定処理等の各種処理を実行する機能を有している。
22は紙幣収納カセット1の記憶部であり、制御部21が実行するプログラムやそれに用いる各種のデータおよび制御部21による処理結果等が格納される。
【0034】
本実施例の記憶部22には、以下に説明する紙幣Sの集積処理や繰出処理、位置検出センサ15の故障判定処理、集積枚数や集積余裕枚数の確認処理等を実行する機能を有するアプリケーションプログラムや、図示しないカセット扉の開閉を検知してその開閉時刻やそのときの収納枚数等を記録する機能を有するアプリケーションプログラム等からなるカセット処理プログラムが予め格納されており、制御部21が実行するカセット処理プログラムのステップにより本実施例の紙幣収納カセット1の各機能手段が形成される。
【0035】
また、記憶部22には、エンコーダ14から出力される波形のカウント数を基に、収納空間19の下面19bからのステージ12の上面12aの位置(ステージ位置Lpという。)を格納するためのステージ位置格納エリア、受渡監視センサ4aからの出力信号によって紙幣収納カセット1に収納している紙幣Sの収納枚数をカウントするための収納枚数カウントエリアが予め確保されている。
【0036】
更に、記憶部22には、上記した遮光板長さL1、集積動作空間長さL2、各位置検出センサ15a〜15eの発光部18aの光軸の中心と収納空間19の下面19bとの間の距離であるセンサ位置La〜Le(図1参照)、収納空間の下面19bと上面19aとの間の距離である収納長さL3(図1参照)、ステージモータ13に内蔵されたエンコーダ14によるカウント数をステージ12の移動量に換算するときの換算係数、紙幣収納カセット1が取扱う紙幣Sの厚さの設定値である厚さ設定値Th、受渡監視センサ4aで計数した収納枚数と後述する確認処理により算出したステージ12上の集積枚数との差を、相違と判定するための所定の許容範囲(本実施例では収納枚数の95%以上、105%以下の範囲)が予め設定されて格納されている。
【0037】
本実施例の紙幣収納カセット1の制御部21は、後述する集積処理および繰出処理において、ステージ12を昇降させるときに、昇降機構のステージモータ13のエンコーダ14からの出力をカウントし、そのカウント値を、記憶部22に格納されている換算係数を用いてステージ12の移動量に換算し、換算した移動量を記憶部22のステージ位置格納エリアに格納されているステージ位置Lpに加え、またはステージ位置Lpから減じて、収納空間19の下面19bからステージ12の上面12aまでのステージ位置Lpを更新しながら、ステージ位置Lpを管理している。
【0038】
そして、制御部21は、ステージ12の昇降に伴って位置検出センサ15のいずれかがON状態からOFF状態、またはOFF状態からON状態へ変化した時点、つまり位置検出センサ15のいずれかがステージ12に設けられた遮光板16の存在を検出した時点で、遮光板16を検出した位置検出センサ15の、記憶部22に格納されているセンサ位置とステージ移動方向とを基に新たな基準となるステージ位置Lpを算出し、ステージ位置格納エリアに格納されているステージ位置Lpを、算出したステージ位置Lpに書換えてリセットする。
【0039】
例えば、図3に2点鎖線で示すステージ12のように、その上昇中に位置検出センサ15cがON状態からOFF状態に変化した場合は、その変化は遮光板16の下端による変化であるので、そのセンサ位置Lcに遮光板長さL1を加えてステージ12の上面12aの位置(ステージ位置Lp)を算出し、ステージ位置格納エリアのステージ位置Lpを、新たな基準となる算出したステージ位置Lpに書換えてリセットする。
【0040】
また、ステージ12の上昇中に、位置検出センサ15cがOFF状態からON状態に変化した場合は、その変化は遮光板16の上端、つまりステージ12の上面12aによる変化であるので、そのセンサ位置Lcをステージ12の上面12aの位置として算出し、ステージ位置格納エリアのステージ位置Lpを、新たな基準となる算出したステージ位置Lpに書換えてリセットする。
【0041】
ステージ12の下降中に、位置検出センサ15cがON状態からOFF状態に変化した場合は、その変化は遮光板16の上端(ステージ12の上面12a)による変化であるので、そのセンサ位置Lcをステージ12の上面12aの位置として算出し、ステージ位置格納エリアのステージ位置Lpを、新たな基準となる算出したステージ位置Lpに書換えてリセットする。
【0042】
また、ステージ12の下降中に、位置検出センサ15cがOFF状態からON状態に変化した場合は、その変化は遮光板16の下端による変化であるので、そのセンサ位置Lcに遮光板長さL1を加えてステージ12の上面12aの位置を算出し、ステージ位置格納エリアのステージ位置Lpを、新たな基準となる算出したステージ位置Lpに書換えてリセットする。
【0043】
このように、本実施例では、ステージ12の昇降中に、位置検出センサ15のいずれかが遮光板16を検出したときに、ステージ位置格納エリアのステージ位置Lpを、ステージ移動方向を考慮した既知のセンサ位置にリセットするので、エンコーダ14で検出したステージ12の昇降に伴う移動量の累積誤差を解消しながらステージ位置Lpの正確な管理を行うことができる。
上記のようにしてステージ位置Lpを管理しながら制御部21は、紙幣Sの集積処理および繰出処理を実行する。
【0044】
以下に、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの集積処理について説明する。
紙幣入出金機から顧客が選択した入金取引等に伴う集積指令を受信すると、紙幣収納カセット1の制御部21は、紙幣収納カセット1の各部を集積待ち状態にセットする。
【0045】
すなわち、制御部21は、ピックアップローラ7の押圧検出センサ8が図示しない支持レバーの可動端を検出しているON状態でない場合、つまりOFF状態の場合は、退避機構11によって舌片ローラ9を退避位置(図3参照)へ退避させ、昇降機構のステージモータ13を回転させてステージ12を上昇させ、押圧検出センサ8がON状態となる位置、つまりステージ12上に集積された集積紙幣の最上位の紙幣Sの上面が収納空間19の上面と一致する位置(紙幣押圧位置)へ移動させる。なお、押圧検出センサ8が紙幣入出金機からの指令を受信したときにON状態となっている場合、つまり最上位の紙幣Sの上面が既に紙幣押圧位置にある場合は、前記の動作は省略される。
【0046】
最上位の紙幣Sが紙幣押圧位置にあることを認識した制御部21は、上記したステージ位置Lpの管理のためのカウントとは別に、記憶部22で紙幣押圧位置からのステージモータ13のエンコーダ14の出力をカウントしながらステージ12を下降させ、そのカウント数から記憶部22の換算係数を用いて換算したステージ12の移動量が記憶部22に格納されている集積動作空間長さL2に達したときにステージ12を停止させ、紙幣Sの集積動作に要する集積動作空間20を確保し、舌片ローラ9を退避位置から集積位置(図1参照)へ移動させる。なお、舌片ローラ9の移動は、集積動作空間20を確保しているときに並行処理で行ってもよい。
【0047】
この集積動作空間20を確保したときに、制御部21は、集積動作開始時におけるステージ12上に更に集積可能な紙幣Sの枚数である集積余裕枚数の確認処理を実行する。
すなわち、制御部21は、記憶部22のステージ位置格納エリアに格納されているステージ位置Lpを読出すと共に記憶部22に格納されている紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、収納空間19の下面19bとステージ12の上面12aの距離であるステージ位置Lpを厚さ設定値Thで除して、集積動作開始時における集積余裕枚数を算出する。
【0048】
そして、制御部21は、算出した集積余裕枚数を紙幣入出金機を介して複数の紙幣入出金機を遠隔監視している図示しない監視センタの監視装置へ送信する。
算出した集積余裕枚数を送信した制御部21は、フィードローラ3およびピックアップローラ7を集積方向に回転させると共にピンチローラ5および舌片ローラ9をその逆方向に回転させて紙幣Sの受入れ準備を終え、紙幣Sが受渡口4から搬入されるのを待って待機する。
【0049】
受渡口4から紙幣Sが搬入されると、その紙幣Sは受渡監視センサ4aによって検出された後にフィードローラ3とピンチローラ5によって挟持され、フィードローラ3により図示しないガイドに沿って集積動作空間20へ放出され(図1参照)、放出された紙幣Sの後端は、舌片ローラ9の舌片10の先端によって押され、叩き落され、引き寄せられてステージ12上に集積された最上位の紙幣P上に集積される。
このような集積動作を繰返すことによって、紙幣Sがステージ12上に連続的に集積される。
【0050】
この集積動作のときに、制御部21は、受渡監視センサ4aが新たな紙幣Sを検出する度に、記憶部22の収納枚数カウントエリアのカウント数に「1」を加えて収納枚数を計数すると共に、記憶部22に格納されている厚さ設定値Thを用いて、集積された紙幣Sによる集積動作空間長さL2の減少分を算出し、その減少分をエンコーダ14の回転量に換算し、集積された紙幣Sの枚数に応じてステージ12を下降させながら常に集積動作空間20を確保するよう制御する。
【0051】
そして、今回の集積指令による紙幣Sの集積を終えると、制御部21は集積紙幣をフリーにしないために、分離集積機構2を停止させると共に退避機構11によって舌片ローラ9を退避位置へ退避させ、ステージモータ13を回転させてピックアップローラ7の押圧検出センサ8がON状態となるまでステージ12を上昇させ、ステージ12とピックアップローラ7との間で集積紙幣を挟込んで最上位の紙幣Sを紙幣押圧位置に位置させる。
【0052】
集積紙幣をステージ12とピックアップローラ7との間で挟込んだことを認識した制御部21は、集積終了時の集積枚数の確認処理を実行する。
すなわち、制御部21は、ステージ12上の集積紙幣をステージ12とピックアップローラ7との間で挟込んだときのステージ位置Lpを記憶部22のステージ位置格納エリアから読出すと共に記憶部22に格納されている収納長さL3および紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、収納長さL3からステージ位置Lpを減じて収納空間19の上面19aとステージ12の上面12aとの間の距離を算出し、算出した距離を厚さ設定値Thで除してステージ12上に集積されている集積されている集積終了時の集積枚数を算出する。
【0053】
そして、制御部21は、算出した集積枚数および記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数を、紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信し、今回の集積指令による集積処理を終了させる。
このようにして、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの集積処理が実行される。
【0054】
以下に、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの繰出処理について説明する。
紙幣入出金機から顧客が選択した出金取引等に伴う繰出指令を受信すると、紙幣収納カセット1の制御部21は、ピックアップローラ7の押圧検出センサ8がOFF状態の場合は、退避機構11によって舌片ローラ9を退避位置へ退避させ、昇降機構のステージモータ13を回転させてステージ12を上昇させ、押圧検出センサ8がON状態となる位置、つまり紙幣押圧位置へ移動させる。なお、最上位の紙幣Sの上面が既に紙幣押圧位置にある場合は、前記の動作は省略される。
【0055】
最上位の紙幣Sが紙幣押圧位置にあることおよび舌片ローラ9が退避位置に退避していることを認識した制御部21は、図3に示すように、ピックアップローラ7でステージ12上の集積紙幣を押圧したままピックアップローラ7およびフィードローラ3を繰出方向(図3において反時計方向)へ回転させ、最上位の紙幣Sをピックアップローラ7によってフィードローラ3とゲートローラ6との間に送込む。
【0056】
このとき、最上位の紙幣Sはフィードローラ3によって繰出され、2枚目以降の紙幣Sは回転しないゲートローラ6によって止められて分離され、1枚に分離されて繰出された紙幣Sは、フィードローラ3とピンチローラ5によって挟持されて図示しないガイドに沿って受渡口4の方向に搬送され、受渡監視センサ4aによって検出された後に受渡口4から紙幣収納カセット1の外部へ搬出される。
【0057】
このような繰出動作を繰返すことによって、ステージ12上の紙幣Sが連続的に繰出される。
この繰出動作のときに、制御部21は、受渡監視センサ4aが新たに繰出される紙幣Sを検出する度に、記憶部22の収納枚数カウントエリアのカウント数から「1」を減じて収納枚数を計数する。
【0058】
また、制御部21は、繰出された紙幣Sによる集積紙幣の減少に伴ってピックアップローラ7が下り、ピックアップローラ7の押圧検出センサ8がOFF状態になったことを検出すると、ステージモータ13を回転させて押圧検出センサ8がON状態となるまでステージ12を上昇させ、これを繰返すことによって、集積紙幣の最上位の紙幣Sの位置を繰出された紙幣Sの枚数に応じて常に紙幣押圧位置に維持するよう制御する。
【0059】
そして、今回の繰出指令の指定枚数の紙幣Sの繰出を終えると、制御部21は分離集積機構2を停止させる。
このとき、次の繰出待ち紙幣がフィードローラ3とゲートローラ6の近傍まで送込まれているため、制御部21はそれを正常な集積状態に戻す戻し処理を実行する。
【0060】
すなわち、制御部21は、ステージモータ13を回転させ、ステージ12を集積動作空間長さL2に達するまでに下降させて集積動作空間20を確保し、舌片ローラ9の位置を退避位置から集積位置へ移動させた後に、フィードローラ3およびピックアップローラ7を集積方向に回転させ、舌片ローラ9をその逆方向に回転させて(図1参照)、その舌片10により繰出待ち紙幣を集積紙幣の最上部に戻し、繰出待ち紙幣を戻し終ると、フィードローラ3、ピックアップローラ7、舌片ローラ9を停止させ、舌片ローラ9を退避位置へ移動させた後に、ステージモータ13を回転させてピックアップローラ7の押圧検出センサ8がON状態となるまでステージ12を上昇させ、ステージ12とピックアップローラ7との間で集積紙幣を挟込んで、最上位の紙幣Sを紙幣押圧位置に位置させ、繰出待ち紙幣の戻し処理を終了させる。
【0061】
繰出待ち紙幣の戻し処理を終えた制御部21は、繰出終了時の集積枚数および集積余裕枚数の確認処理を実行する。
すなわち、制御部21は、上記したステージ位置Lpの管理のためのカウントとは別に、記憶部22で紙幣押圧位置からのステージモータ13のエンコーダ14の出力をカウントしながらステージ12を下降させ、そのカウント数から記憶部22の換算係数を用いて換算したステージ12の移動量が記憶部22に格納されている集積動作空間長さL2に達したときにステージ12を停止させて集積動作空間20を確保し、記憶部22のステージ位置格納エリアに格納されているステージ位置Lpを読出すと共に記憶部22に格納されている紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、ステージ位置Lpを厚さ設定値Thで除して、繰出終了時の集積余裕枚数を算出する。
【0062】
繰出終了時の集積余裕枚数を算出した制御部21は、再びステージモータ13を回転させてピックアップローラ7の押圧検出センサ8がON状態となるまでステージ12を上昇させ、ステージ12とピックアップローラ7との間で集積紙幣を挟込んで、最上位の紙幣Sを紙幣押圧位置に位置させ、このときのステージ位置Lpを記憶部22のステージ位置格納エリアから読出すと共に記憶部22に格納されている収納長さL3および紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、収納長さL3からステージ位置Lpを減じて収納空間19の上面19aとステージ12の上面12aとの間の距離を算出し、算出した距離を厚さ設定値Thで除してステージ12上に集積されている繰出終了時の集積枚数を算出する。
【0063】
そして、制御部21は、算出した集積枚数、集積余裕枚数および記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数を、紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信し、今回の繰出指令による繰出処理を終了させる。
一方、監視装置は、受信した集積終了時または繰出終了時の集積枚数および集積余裕枚数、収納枚数を、送信元の紙幣入出金機の識別番号に対応させて、その金種別の紙幣収納カセット1に集積された紙幣Sの集積枚数および集積余裕枚数、収納枚数として時系列に格納する。
【0064】
そして、監視装置は、紙幣収納カセット1の集積枚数が所定のニアフル閾値以上になったときに、当該紙幣収納カセット1のニアフル警報を図示しない表示部の画面に表示して監視センタの保守員等の係員に報知し、これを確認した係員は、所定の枚数の紙幣Sを装填した紙幣収納カセット1を当該紙幣入出金機へ運搬し、ニアフル警報が発せられた紙幣収納カセット1と交換する。
【0065】
また、監視装置は、紙幣収納カセット1の集積枚数が所定のニアエンド閾値以下になったときに、当該紙幣収納カセット1のニアエンド警報を図示しない表示部の画面に表示して監視センタの係員に報知し、これを確認した係員は、所定の枚数の紙幣Sを装填した紙幣収納カセット1を当該紙幣入出金機へ運搬し、ニアエンド警報が発せられた紙幣収納カセット1と交換する。
【0066】
上記のようにしてステージ位置Lpを管理しながら集積処理や繰出処理等を実行している場合において、本実施例の紙幣収納カセット1の制御部21は、集積処理または繰出処理の処理中に、位置検出センサ15による遮光板16の検出における論理的な矛盾によって位置検出センサ15の故障を判定する故障判定処理を実行する。
すなわち、制御部21は、以下に示す論理的な矛盾によって、矛盾を生じさせた位置検出センサ15を故障と判定する。
【0067】
(1)処理中に、エンコーダ14で検出したステージ12の移動量により算出したステージ位置Lpに遮光板長さL1を考慮して特定した位置検出センサ15が、ON状態でないこと、つまり遮光板16を検出しない、という論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ15を故障と判定する。
【0068】
(2)処理中に、エンコーダ14で検出したステージ12の移動量により算出したステージ位置Lpには遮光板長さL1を考慮しても位置検出センサ15が存在しない場合に、位置検出センサ15の少なくとも一つがON状態であること、つまり遮光板16を誤検出した、という論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ15を故障と判定する。
【0069】
(3)処理中に、エンコーダ14で検出したステージ12の移動量により算出したステージ位置Lpに遮光板長さL1を考慮して特定した位置検出センサ15が遮光板16を検出しているときに、他の位置検出センサ15の少なくとも一つがON状態であること、つまり遮光板16を誤検出した、という論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ15を故障と判定する。
【0070】
この場合に、本実施例の位置検出センサ15は、遮光板長さL1以上の間隔で配置されており、2以上の位置検出センサ15が同時に遮光板16を検出することは起こり得ないことであり、かつステージ位置Lpにより特定した位置検出センサ15が正常に遮光板16を検出しているので、他の位置検出センサ15の中でON状態となった位置検出センサ15の全てが故障と判定でき、故障した位置検出センサ15を特定することができる。
【0071】
(4)処理中に、受渡監視センサ4aからの出力信号によって紙幣収納カセット1に搬入または搬出された紙幣Sの枚数を計数し、それを加減しながら記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数と、上記集積終了時または繰出終了時に算出された集積枚数とが所定の許容範囲(本実施例では収納枚数の95%以上、105%以下の範囲)を超えて相違した、という論理的な矛盾が生じたときに、その直前にステージ位置Lpのリセットの基準となった位置検出センサ15を故障と判定する。
【0072】
(5)処理中に、受渡監視センサ4aによって計数した収納枚数により算出したステージ12の位置によって、上記(1)〜(3)に記載した論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ15を故障と判定する。
この(5)の場合の収納枚数により算出したステージ12の位置による検出センサ15の故障判定は、以下のようにする。
【0073】
すなわち、紙幣収納カセット1に収納される紙幣Sの種別は既知であるので、ステージ12上に積層された収納枚数による積層高さは算出できる。
従って、収納空間19の収納長さL3から積層高さを減じれば、集積終了時または繰出終了時におけるステージ12の位置、つまりステージ12とピックアップローラ7との間で収納紙幣を挟込んだときのステージ12の位置を算出することができる。
【0074】
この算出したステージ12の位置に遮光板長さL1を考慮すれば、遮光板16を検出すべき位置検出センサ15を特定でき、(1)特定した位置検出センサ15がON状態でないこと(2)算出したステージ12の位置には位置検出センサ15が存在しない場合に、位置検出センサ15の少なくとも一つがON状態であること(3)特定した位置検出センサ15が遮光板16を検出しているときに、他の位置検出センサ15の少なくとも一つがON状態であることによって、当該位置検出センサ15を故障と判定する。
【0075】
このようにして、制御部21が、位置検出センサ15の故障を判定した場合は、紙幣収納カセット1の稼動を停止し、位置検出センサ15の故障発生の旨の故障発生通知を紙幣入出金機へ送信し、故障発生通知を受信した紙幣入出金機はその運用を停止する。
【0076】
また、この故障発生通知は監視センタの監視装置に送信され、これを受信した監視装置は、紙幣収納カセット1の故障発生通知を図示しない表示部の画面に表示して監視センタの保守員等の係員に報知し、これを確認した係員は、所定の枚数の紙幣Sを装填した紙幣収納カセット1を当該紙幣入出金機へ運搬して故障発生通知が発せられた紙幣収納カセット1と交換し、当該紙幣収納カセット1が装着された紙幣入出金機を復旧させる。
なお、故障した紙幣収納カセット1は、故障した位置検出センサ15が分かっているため、それを修理する。
【0077】
上記のように、本実施例では、エンコーダ14で検出したステージ12の移動量によってステージ12のステージ位置Lpを管理するので、そのステージ位置と位置検出センサ15による遮光板16の検出との論理的な矛盾によって、位置検出センサ15の故障を容易に判定することができると共に、集積処理および繰出処理における、紙幣収納カセット1内の紙幣Sの集積枚数および集積余裕枚数を容易に算出することができる。
【0078】
また、位置検出センサ15の故障発生の旨を監視センタの監視装置へ通知するので、すぐに代替の紙幣収納カセット1を準備して修理を行うことができ、位置検出センサ15が故障した紙幣収納カセット1を排除して正常に動作している紙幣収納カセット1を常に使用することが可能になり、紙幣収納カセット1の運用計画の立案を容易にして紙幣収納カセット1の交換の効率的な運用による紙幣補充作業の無駄を削減することができると共に、紙幣収納カセット1内の紙幣の誤検出による無駄を削減することができる。
【0079】
更に、位置検出センサ15の故障発生の旨を監視センタの監視装置へ通知することによって、紙幣収納カセット1内の集積枚数や集積余裕枚数を正確に把握できないまま紙幣収納カセット1を稼動させて、唐突な紙幣の残量不足による取引途中での取引停止や、集積余裕枚数がないのに紙幣Sを集積したことによるジャムの発生に伴う、装置の長時間停止を防止して顧客の利便性を向上させることができる。
【0080】
更に、紙幣収納カセット1で取扱う紙幣Sの厚さ設定値Thをあらかじめ設定しておくので、各種紙幣の厚みに合わせて集積枚数や集積余裕枚数を算出することができる。
このことは、外国紙幣のように国毎に厚さに違いがある紙幣Sを取扱う場合に、国毎の位置検出センサ15の組立位置の変更を不要にできるため、位置検出センサ15の位置の変更が困難な紙幣収納カセット1に、特に有用である。
【0081】
なお、本実施例では、位置検出センサ15の故障を判定した際、紙幣収納カセット1の稼動を停止するとして説明したが、紙幣収納カセット1の稼動を継続させて、監視センタの監視装置へ故障発生通知を送信するのみとしてもよい。
この場合に、監視センタでは監視装置に表示された故障発生通知を確認して、代替の紙幣収納カセット1を準備して、その紙幣収納カセット1を現地へ運搬して故障発生通知が発せられた紙幣収納カセット1と交換し、故障が発生した紙幣収納カセット1の修理は、監視センタで最適なタイミングを見計らって行うようにする。
【0082】
また、故障が発生した紙幣収納カセット1の交換までの間は、故障が発生した位置検出センサ15は縮退させ、当該位置検出センサ15からの出力信号は無視し、エンコーダ14で検出したステージ12の移動量によってステージ位置Lpを管理しながら故障が発生した紙幣収納カセット1の稼動を継続するようにする。これによって、紙幣入出金機の稼動停止時間を最小限とすることができ、紙幣入出金機の稼動効率を向上させることができる。
【0083】
以上説明したように、本実施例では、位置検出センサをステージ移動方向に沿って一列に配置し、エンコーダで検出したステージの移動量によりステージ位置を管理しながら、ステージ位置と、位置検出センサによる遮光板の検出との論理的な矛盾によって位置検出センサの故障を判定するようにしたので、紙幣Sの収納量を検出する位置検出センサの故障を容易に判定することができると共に、集積処理後および繰出処理後における、紙幣収納カセット内の紙幣Sの集積枚数および集積余裕枚数を容易に算出することができる。
【実施例2】
【0084】
以下に、図4、図5を用いて本実施例の紙幣収納カセットについて説明する。
なお、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の位置検出センサ25は、上記実施例1の位置検出センサ15と同様の構成を有しているが、図4、図5に示すように、その配置が異なっており、収納空間19の外側に、25a〜25gの7つの位置検出センサ25が、ステージ移動方向に沿って1列に配置され、それらの隣合う発光部18aの光軸の中心間の間隔は、遮光板長さL1以上、集積動作空間長さL2に遮光板長さL1を加えた長さ以下の間隔に設定されている。
【0085】
このため、各位置検出センサ25の正常状態では、遮光板16が位置検出センサ25間に存在するときは、全ての位置検出センサ25がOFF状態になっており、いずれか一つの位置検出センサ25が遮光板16の存在を検出しているときは、当該位置検出センサ25のみがON状態であり、他の位置検出センサ25はOFF状態になっている。
【0086】
また、集積動作空間20を確保する動作においては、必ずいずれかの位置検出センサ25がON状態、つまり遮光板16を検出するように配置されている。
なお、本実施例の位置検出センサ25は、上記した間隔の範囲で等間隔に配置されているが、上記した間隔の範囲内であれば、不等間隔であってもよい。
【0087】
本実施例の記憶部22には、以下に説明する紙幣Sの集積処理や繰出処理、位置検出センサ25の故障判定処理、集積枚数や集積余裕枚数の確認処理等を実行する機能を有するアプリケーションプログラムや、図示しないカセット扉の開閉を検知してその開閉時刻やそのときの収納枚数等を記録する機能を有するアプリケーションプログラム等からなるカセット処理プログラムが予め格納されており、制御部21が実行するカセット処理プログラムのステップにより本実施例の紙幣収納カセット1の各機能手段が形成される。
【0088】
また、記憶部22には、エンコーダ14から出力される波形のカウント数をカウントするための回転量カウントエリア、上記実施例1と同様の収納枚数カウントエリアが予め確保されている。なお、本実施例では、実施例1のステージ位置格納エリアは省略されている。
【0089】
更に、記憶部22には、上記実施例1と同様に、遮光板長さL1、集積動作空間長さL2、各位置検出センサ25a〜25gの発光部18aの光軸の中心と収納空間19の下面19bとの間の距離であるセンサ位置Laa〜Lgg(図4参照)、収納空間の下面19bと上面19aとの間の距離である収納長さL3、エンコーダ14によるカウント数をステージ12の移動量に換算するときの換算係数、取扱う紙幣Sの厚さ設定値Th、収納枚数と集積枚数との差を、相違と判定するための所定の許容範囲(本実施例では収納枚数の95%以上、105%以下の範囲)が予め設定されて格納されている。
【0090】
以下に、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの集積処理について説明する。
紙幣入出金機から集積指令を受信すると、紙幣収納カセット1の制御部21は、紙幣収納カセット1の各部を集積待ち状態にセットする。
【0091】
すなわち、制御部21は、上記実施例1と同様に、押圧検出センサ8がON状態でない場合(OFF状態の場合)は、舌片ローラ9を退避位置へ退避させ、ステージモータ13を回転させてステージ12を上昇させ、押圧検出センサ8がON状態となる位置、つまり紙幣押圧位置へ移動させる。なお、最上位の紙幣Sの上面が既に紙幣押圧位置にある場合は、前記の動作は省略される。
【0092】
最上位の紙幣Sが紙幣押圧位置にあることを認識した制御部21は、記憶部22で紙幣押圧位置からのステージモータ13のエンコーダ14の出力をカウントしながらステージ12を下降させ、そのカウント数から記憶部22の換算係数を用いて換算したステージ12の移動量が記憶部22に格納されている集積動作空間長さL2に達したときにステージ12を停止させて集積動作空間20を確保し、舌片ローラ9を退避位置から集積位置へ移動させる。
この集積動作空間20の確保のときに、制御部21は、紙幣Sの集積余裕枚数の確認処理を実行する。
【0093】
すなわち、制御部21は、位置検出センサ25a〜25eからの出力信号を監視し、集積動作空間20を確保するまでの間に位置検出センサ25がOFF状態からON状態、ON状態からOFF状態へ変化した場合、つまり位置検出センサ25のいずれかがステージ12に設けられた遮光板16の存在を検出した場合は、その検出位置から集積動作空間20を確保するまでの間のエンコーダ14からの出力のカウント数を、上記した集積動作空間長さL2の計測のためのカウントとは別に、記憶部22の回転量カウントエリアでカウントし、集積動作空間20を確保したときに、回転量カウントエリアでカウントしたエンコーダ14のカウント数、および記憶部22に格納されている遮光板16を検出した位置検出センサ25のセンサ位置、換算係数、遮光板長さL1、紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、これらとステージ移動方向とを基に集積動作開始時の集積余裕枚数を算出する。
【0094】
例えば、図4に2点鎖線で示すステージ12のように、下降中に、位置検出センサ25dがOFF状態からON状態に変化した場合は、その位置検出センサ25dによる検出位置からのカウントを開始するが、その後にON状態からOFF状態に変化した場合は、記憶部22の回転量カウントエリアのカウント数を一旦クリアし、再度その検出位置からのカウントを開始し、集積動作空間20を確保したときに、回転量カウントエリアでカウントしたカウント数、位置検出センサ25dのセンサ位置Ldd(図4参照)、換算係数、遮光板長さL1、紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、回転量カウントエリアでカウントしたカウント数に換算係数を乗じて位置検出センサ25dからの移動量Lsを算出する。
【0095】
この場合の検出状態の変化は、下降中の遮光板16の上端(ステージ12の上面12a)による変化であるので、センサ位置Lddから移動量Lsを減じてステージ12の上面12aの位置を算出する。
この算出値は、収納空間19の下面19bとステージ12の上面12aとの間の距離であるので、これを厚さ設定値Thで除して、集積動作開始時の集積余裕枚数を算出する。
【0096】
そして、制御部21は算出した集積余裕枚数を紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信する。
その後の紙幣収納カセット1による集積動作および今回の集積指令による紙幣Sの集積を終えるまでの動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0097】
今回の集積指令による紙幣Sの集積を終えると、制御部21は集積紙幣をフリーにしないために、上記実施例1の場合と同様にして、ステージモータ13よりステージ12を上昇させ、ステージ12とピックアップローラ7との間で集積紙幣を挟込んで、最上位の紙幣Sを紙幣押圧位置に位置させ、集積終了時の集積枚数の確認処理を実行する。
【0098】
すなわち、制御部21は、位置検出センサ25a〜25eからの出力信号を監視し、集積紙幣をステージ12とピックアップローラ7との間で挟込むまでの間に位置検出センサ25がOFF状態からON状態、ON状態からOFF状態へ変化した場合、つまり位置検出センサ25のいずれかがステージ12に設けられた遮光板16の存在を検出した場合は、その検出位置から集積紙幣の挟込みを終えるまでの間のエンコーダ14からの出力のカウント数を記憶部22の回転量カウントエリアでカウントし、集積紙幣を挟込んだときに、回転量カウントエリアでカウントしたエンコーダ14のカウント数、および記憶部22に格納されている遮光板16を検出した位置検出センサ25のセンサ位置、換算係数、遮光板長さL1、収納長さL3、紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、これらとステージ移動方向とを基に集積終了時の集積枚数を算出する。
【0099】
例えば、図5に2点鎖線で示すステージ12のように、上昇中に、位置検出センサ25dがOFF状態からON状態に変化した場合は、その位置検出センサ25dによる検出位置からのカウントを開始するが、その後にON状態からOFF状態に変化した場合は、記憶部22の回転量カウントエリアのカウント数を一旦クリアし、再度その検出位置からのカウントを開始し、集積紙幣の挟込みを終えたときに、回転量カウントエリアでカウントしたカウント数、位置検出センサ25dのセンサ位置Ldd(図5参照)、換算係数、遮光板長さL1、収納長さL3、紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、回転量カウントエリアでカウントしたカウント数に換算係数を乗じて位置検出センサ25dからの移動量Lsを算出する。
【0100】
この場合の検出状態の変化は、上昇中の遮光板16の下端による変化であるので、センサ位置Lddに移動量Lsと遮光板長さL1を加えてステージ12の上面12aの位置を算出し、この算出値を収納長さL3から減じて、収納空間19の上面19aとステージ12の上面12aとの間の距離を算出し、これを厚さ設定値Thで除して、集積終了時の集積枚数を算出する。
【0101】
そして、制御部21は、算出した集積枚数および記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数を、紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信し、今回の集積指令による集積処理を終了させる。
このようにして、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの集積処理が実行される。
【0102】
以下に、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの繰出処理について説明する。
本実施例の紙幣収納カセット1の制御部21が、繰出指令を受信したときから、繰出待ち紙幣の戻し処理を終えるまでの動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0103】
繰出待ち紙幣の戻し処理を終えた制御部21は、繰出終了時の紙幣量の確認処理を実行する。
すなわち、制御部21は、記憶部22で紙幣押圧位置からのステージモータ13のエンコーダ14の出力をカウントしながらステージ12を下降させ、そのカウント数から記憶部22の換算係数を用いて換算したステージ12の移動量が記憶部22に格納されている集積動作空間長さL2に達したときにステージ12を停止させ、集積動作空間20を確保する。
【0104】
この集積動作空間20の確保のときに、制御部21は、上記集積動作開始時の場合と同様に、各位置検出センサ25からの出力信号を監視し、集積動作空間20を確保するまでの間に位置検出センサ25のいずれかが遮光板16の存在を検出した場合は、その検出位置から集積動作空間20を確保するまでの間のエンコーダ14からの出力のカウント数を、上記した集積動作空間長さL2の計測のためのカウントとは別に、記憶部22の回転量カウントエリアでカウントし、集積動作空間20を確保したときに、回転量カウントエリアでカウントしたエンコーダ14のカウント数、および記憶部22に格納されている遮光板16を検出した位置検出センサ25のセンサ位置、換算係数、遮光板長さL1、紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、これらとステージ移動方向とを基に、上記集積動作開始時の場合と同様にして、繰出終了時の集積余裕枚数を算出する。
【0105】
繰出終了時の集積余裕枚数を算出した制御部21は、再びステージモータ13を回転させてピックアップローラ7の押圧検出センサ8がON状態となるまでステージ12を上昇させ、ステージ12とピックアップローラ7との間で集積紙幣を挟込んで、最上位の紙幣Sを紙幣押圧位置に位置させる。
【0106】
このとき、制御部21は、上記集積終了時の場合と同様に、各位置検出センサ25からの出力信号を監視し、集積紙幣をステージ12とピックアップローラ7との間で挟込むまでの間に位置検出センサ25が遮光板16の存在を検出した場合は、その検出位置から集積紙幣の挟込みを終えるまでの間のエンコーダ14からの出力のカウント数を記憶部22の回転量カウントエリアでカウントし、集積紙幣を挟込んだときに、回転量カウントエリアでカウントしたエンコーダ14のカウント数、および記憶部22に格納されている遮光板16を検出した位置検出センサ25のセンサ位置、換算係数、遮光板長さL1、収納長さL3、紙幣Sの厚さ設定値Thを読出し、これらとステージ移動方向とを基に、上記集積終了時の集積枚数の算出の場合と同様にして、繰出終了時の集積枚数を算出する。
【0107】
そして、制御部21は、算出した集積枚数、集積余裕枚数および記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数を、紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信し、今回の繰出指令による繰出処理を終了させる。
その後の監視センタにおける処置は、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
上記した集積処理または繰出処理の処理中に、本実施例の紙幣収納カセット1の制御部21は、位置検出センサ25による遮光板16の検出における論理的な矛盾によって位置検出センサ25の故障を判定する故障判定処理を実行する。
すなわち、制御部21は、以下に示す論理的な矛盾によって、位置検出センサ25の故障を判定する。
【0109】
(6)処理中に、少なくとも2つの位置検出センサ25が同時にON状態であること、つまり遮光板16の存在を同時検出した、という論理的な矛盾が生じたときに、位置検出センサ25の故障を判定する。
この場合に、本実施例の位置検出センサ25は、遮光板長さL1以上の間隔で配置されており、2以上の位置検出センサ25が同時に遮光板16を検出することは起こり得ないことであるので、位置検出センサ25の故障発生を判定することができ、遮光板16を同時検出した位置検出センサ25のいずれか、または全てが故障と判定する。
【0110】
(7)処理中における、集積動作空間20を確保するためのステージ12の下降中、または集積動作空間20を確保した後の最上位の紙幣Sの紙幣押圧位置への上昇中に、つまり最上位の紙幣Sの集積動作空間20内での昇降中に、位置検出センサ25のいずれもがON状態にならないこと、つまり遮光板16の存在を検出しない、という論理的な矛盾が生じたときに、位置検出センサ25の故障を判定する。
【0111】
この場合に、本実施例の位置検出センサ25は、集積動作空間長さL2に遮光板長さL1を加えた長さ以下の間隔で配置されており、最上位の紙幣Sの集積動作空間20内での昇降中には必ずいずれかの位置検出センサ25が遮光板16を検出するはずであり、位置検出センサ25のいずれもが遮光板16の存在を検出しないことは起こり得ないことであるので、位置検出センサ25の故障発生を判定することができ、位置検出センサ25a〜25gのいずれか、または全てが故障と判定する。
【0112】
(8)処理中に、受渡監視センサ4aからの出力信号によって紙幣収納カセット1に搬入または搬出される紙幣Sの枚数を計数し、それを加減しながら記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数と、上記集積終了時または繰出終了時における集積枚数の確認時に上記(7)の論理的な矛盾が生じなかった場合に算出された集積枚数とが所定の許容範囲(本実施例では収納枚数の95%以上、105%以下の範囲)を超えて相違した、という論理的な矛盾が生じたときに、集積枚数算出の基礎となった位置検出センサ25が、確認処理中に故障したと判定する。
【0113】
上記に加えて、制御部21は、上記実施例1の故障判定処理の(5)と同様に、受渡監視センサ4aによって計数した収納枚数により算出したステージ12の位置によって以下に説明する故障判定処理を実行する。
【0114】
本実施例の紙幣収納カセット1に収納される紙幣Sの種別は既知であるので、ステージ12上に積層された収納枚数による積層高さは算出できる。
従って、収納空間19の収納長さL3から積層高さを減じれば、集積終了時または繰出終了時におけるステージ12の位置、つまりステージ12とピックアップローラ7との間で収納紙幣を挟込んだときのステージ12の位置を算出することができる。
【0115】
(9)上記のようにして収納枚数により算出したステージ12の位置に遮光板長さL1を考慮して特定した位置検出センサ25が、ON状態でないこと、つまり遮光板16を検出しない、という論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ25を故障と判定する。
【0116】
(10)上記のようにして収納枚数により算出したステージ12の位置には遮光板長さL1を考慮しても位置検出センサ25が存在しない場合に、位置検出センサ25の少なくとも一つがON状態であること、つまり遮光板16を誤検出した、という論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ25を故障と判定する。
【0117】
(11)上記のようにして収納枚数により算出したステージ12の位置に遮光板長さL1を考慮して特定した位置検出センサ25が遮光板16を検出しているときに、他の位置検出センサ25の少なくとも一つがON状態であること、つまり遮光板16を誤検出した、という論理的な矛盾が生じたときに、当該位置検出センサ25を故障と判定する。
【0118】
この場合は、収納枚数により算出したステージ12の位置により特定した位置検出センサ25が正常に遮光板16を検出しているので、他の位置検出センサ25の中でON状態となった位置検出センサ25の全てが故障と判定でき、故障した位置検出センサ25を特定することができる。
【0119】
このようにして、制御部21が、位置検出センサ25の故障を判定した場合は、上記実施例1の場合と同様に、紙幣収納カセット1の稼動停止または監視センタの監視装置への故障発生通知の送信のみを行う。
これらの場合の監視センタにおける処置は、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0120】
なお、本実施例において、位置検出センサ25の故障を判定した際に、紙幣収納カセット1の稼動を継続させて、監視センタの監視装置へ故障発生通知を送信するのみとした場合において、故障が発生した位置検出センサ25は縮退させたときは、当該位置検出センサ25からの出力信号は無視し、エンコーダ14で検出したステージ12の移動量によってステージ12の位置を管理しながら故障が発生した紙幣収納カセット1の稼動を継続するようにする。
【0121】
以上説明したように、本実施例では、位置検出センサを、遮光板長さL1以上、集積動作空間長さL2に遮光板長さL1を加えた長さ以下の間隔で配置し、位置検出センサが遮光板を検出したときからの、エンコーダで検出したステージの移動量によってステージの位置を算出するので、位置検出センサによる遮光板の検出の論理的な矛盾によって、位置検出センサの故障を容易に判定することができると共に、集積処理および繰出処理における、紙幣収納カセット内の紙幣Sの集積枚数および集積余裕枚数を容易に算出することができる他、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例3】
【0122】
本実施例の説明においては、上記実施例1と同様の部分は、同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の記憶部22には、上記実施例1と同様のカセット処理プログラムが予め格納されており、制御部21が実行するカセット処理プログラムのステップにより本実施例の紙幣収納カセット1の各機能手段が形成される。
【0123】
また、記憶部22には、上記実施例1と同様のステージ位置格納エリア、収納枚数カウントエリアが予め確保される他、受渡監視センサ4aからの出力信号によって計数した一取引の終了時における収納枚数、および集積枚数を算出したときのステージ位置Lpと収納空間19の上面19aとの距離を取引履歴情報として格納するための取引履歴情報格納エリアが予め確保されている。
【0124】
更に、記憶部22には、上記実施例1と同様に、遮光板長さL1、集積動作空間長さL2、各位置検出センサ25a〜25gの発光部18aの光軸の中心と収納空間19の下面19bとの間の距離であるセンサ位置Laa〜Lgg(図4参照)、収納空間の下面19bと上面19aとの距離である収納長さL3、エンコーダ14によるカウント数をステージ12の移動量に換算するときの換算係数、取扱う紙幣Sの厚さ設定値Th、収納枚数と集積枚数との差を、相違と判定するための所定の許容範囲(本実施例では収納枚数の95%以上、105%以下の範囲)が予め設定されて格納されている。
【0125】
以下に、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの集積処理について説明する。
本実施例の紙幣収納カセット1の制御部21が、集積指令を受信したときから、集積終了時の集積枚数の確認処理を終えるまでの動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0126】
集積終了時の集積枚数の確認処理を終えた制御部21は、集積枚数の確認処理の終了時、つまり受渡監視センサ4aからの出力信号によって計数した入金取引等の終了時における収納枚数、および集積終了時の集積枚数を算出したときのステージ位置Lpと収納空間19の上面19aとの距離を取引履歴情報として記憶部22の取引履歴情報格納エリアに格納する。
【0127】
そして、制御部21は、算出した集積枚数および記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数を、紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信し、今回の集積指令による集積処理を終了させる。
【0128】
以下に、本実施例の紙幣収納カセット1による紙幣Sの繰出処理について説明する。
本実施例の紙幣収納カセット1の制御部21が、繰出指令を受信したときから、繰出終了時の集積枚数の確認処理を終えるまでの動作は、上記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0129】
繰出終了時の集積枚数および集積余裕枚数の確認処理を終えた制御部21は、集積枚数の確認処理の終了時、つまり出金取引等の終了時における収納枚数、および繰出終了時の集積枚数を算出したときのステージ位置Lpと収納空間19の上面19aとの距離を取引履歴情報として記憶部22の取引履歴情報格納エリアに格納する。
【0130】
そして、制御部21は、算出した集積枚数、集積余裕枚数および記憶部22の収納枚数カウントエリアで計数した収納枚数を、紙幣入出金機を介して監視センタの監視装置へ送信し、今回の繰出指令による繰出処理を終了させる。
その後の監視センタにおける処置は、上記実施例1の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0131】
このようなカセット処理の実行中に、取引数が10取引になった場合、制御部21は、記憶部22の取引履歴情報格納エリアから、今回の取引を含む過去10取引分の取引履歴情報を読出し、連続する2つの取引間における収納枚数の変化枚数、つまり受渡口4から新たに搬入された紙幣Sの搬入枚数、または受渡口4から新たに搬出された紙幣Sの搬出枚数である受渡枚数を算出すると共に、連続する2つの取引間におけるステージ位置Lpの変化量、つまりステージ位置Lpと収納空間19の上面19aとの距離の変化量を算出し、ステージ位置Lpの変化量を受渡枚数で除してその取引における紙幣Sの厚さを算出し、過去10取引分の取引履歴情報によって算出した当該取引における紙幣Sの厚さを平均して紙幣厚さの平均値を算出し、記憶部22に格納されている紙幣Sの厚さ設定値Thを、算出した紙幣厚さの平均値に書換えて更新する。
【0132】
この場合に、過去10取引の紙幣厚さの平均値が、そのとき記憶部22に格納されている厚さ設定値Thの80%以上、120%以下の場合は、紙幣厚さが正常に検出できていると判定して、厚さ設定値Thの更新を行い、前記の範囲を超えている場合は、集積不良等の要因によって紙幣厚さが正常に検出できていないと判定して厚さ設定値Thの更新を行わずに、格納されている厚さ設定値Thを継続して用いるようにする。
【0133】
これにより、集積枚数や集積余裕枚数の算出値における誤差の増加を防止することが可能になる。
なお、本実施例では、10取引毎に紙幣厚さの平均値を算出するとして説明したが、紙幣厚さの平均値を算出する取引数は前記に限らず、2取引以上であればよく、平均値の算出も複数の取引毎ではなく、複数取引の移動平均として算出するようにしてもよい。
【0134】
また、本実施例では、実施例1の場合を例に説明したが、実施例2の場合も同様である。この場合に、記憶部22の取引履歴情報格納エリアの格納される取引履歴情報は、上記したステージ位置Lpと収納空間19の上面19aとの距離に代えて、ステージ12の移動量とセンサ位置とに基づいて算出したステージ12の上面12aの位置と収納空間19の上面19aとの距離が格納される。
【0135】
以上説明したように、本実施例では、上記実施例1または実施例2と同様の効果に加えて、紙幣収納カセット1毎に収納される紙幣Sの傷み具合やそこに収納される金種による紙幣厚さの違いによって発生する集積紙幣の厚さの差異を検出して補正することができ、紙幣収納カセット1内の集積枚数や集積余裕枚数を、より正確に算出することができる。
【0136】
また、それにより、紙幣収納カセット1の運用計画の立案がより容易になり、紙幣補充作業の無駄を削減することができると共に、紙幣収納カセット1内の紙幣の誤検出による無駄を削減することができる。
【0137】
なお、上記各実施例においては、ステージの位置検出に用いる位置検出センサは光学式のセンサであるとして説明したが、マイクロスイッチやその他のセンサであっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0138】
また、上記各実施例においては、ステージの移動量は、ステージモータに内蔵されたエンコーダにより検出するとして説明したが、ステージの昇降機構のギヤシャフト等に設けたスリットディスク等を用いた外付けのエンコーダであっても同様の効果を得ることができる。
更に、上記各実施例においては、交換可能な紙幣収納カセットを例に説明したが、紙幣入出金機等の装置に固定された紙幣収納庫に適用しても同様の効果を得ることができる。
【0139】
更に、上記各実施例においては、紙幣Sの収納枚数は、受渡口に設けた受渡監視センサにより計数するとして説明したが、受渡監視センサによるカウント数に代えて、上位装置としての紙幣入出金機が各紙幣収納カセットに搬送して収納した枚数を用いるようにしてもよい。
【0140】
更に、上記各実施例においては、紙幣収納カセットに設けた制御部が、上記した各処理を行うとして説明したが、紙幣収納カセットの記憶部に格納されたカセット処理プログラムや各種のデータを、紙幣入出金機の記憶部に格納するようにして、紙幣入出金機の制御部が位置検出センサからの信号等を基に、位置検出センサの故障等を判定するようにしてもよい。
【0141】
更に、上記各実施例においては、紙幣収納カセットが、収納した収納枚数と算出した集積枚数との相違を基に位置検出センサの故障を判定するとして説明したが(実施例1の(4)、実施例2の(8)参照)、監視センタの監視装置が受信した収納枚数、集積枚数および集積余裕枚数を基に、収納枚数と集積枚数との論理的な矛盾によって、位置検出センサの故障を判定するようにしてもよい。
【0142】
更に、上記各実施例においては、紙葉類取扱装置は、紙幣Sを取扱う紙幣入出金機であるとして説明したが、紙葉類取扱装置は前記に限らず、紙葉類としての小切手や商品券等を取扱う装置であってもよく、ネットワークを用いて遠隔管理する紙葉類取扱装置としてのプリンタであってもよい。このプリンタの場合には紙葉類としての用紙の残量の管理に、本発明を適用することができる。要は、紙葉類の集積枚数や集積余裕枚数を管理するような装置であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0143】
1 紙幣収納カセット
2 分離集積機構
3 フィードローラ
3a フィードローラ軸
4 受渡口
4a 受渡監視センサ
5 ピンチローラ
5a ピンチローラ軸
6 ゲートローラ
6a ゲートローラ軸
7 ピックアップローラ
7a ピックアップローラ軸
8 押圧検出センサ
9 舌片ローラ
9a 舌片ローラ軸
10 舌片
11 退避機構
12 ステージ
12a、19a 上面
13 ステージモータ
14 エンコーダ
15、25 位置検出センサ
16 遮光板
17 溝
18a 発光部
18b 受光部
19 収納空間
19b 下面
20 集積動作空間
21 制御部
22 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を厚さ方向に積層して集積する昇降可能に構成されたステージと、前記ステージに設けた遮光板の存在を検出する複数の位置検出センサと、前記ステージの移動量を検出するエンコーダとを備え、紙葉類の収納および繰出を行う紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサを前記ステージの移動方向であるステージ移動方向に沿って一列に配置し、
前記位置検出センサによる前記遮光板の検出における論理的な矛盾によって、前記位置検出センサの故障を判定することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紙葉類収納装置において、
前記エンコーダで検出した前記ステージの移動量によって、前記ステージの前記ステージ移動方向の位置であるステージ位置を管理することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサが前記遮光板を検出したときに、当該位置検出センサの前記ステージ移動方向の位置であるセンサ位置を基に、前記ステージ位置をリセットすることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項4】
請求項2に記載の紙葉類収納装置において、
前記論理的な矛盾は、前記ステージ位置により特定した位置検出センサが、前記遮光板を検出しないことであることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項5】
請求項2に記載の紙葉類収納装置において、
前記論理的な矛盾は、前記ステージ位置には前記位置検出センサが存在しない場合に、前記位置検出センサが前記遮光板を誤検出したことであることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項6】
請求項2に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサを、前記遮光板の前記ステージ移動方向の長さ以上の間隔で配置したことを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項7】
請求項6に記載の紙葉類収納装置において、
前記論理的な矛盾は、前記ステージ位置により特定した位置検出センサが、前記遮光板を検出しているときに、他の位置検出センサが前記遮光板を誤検出したことであることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項8】
請求項1に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサを、前記遮光板の前記ステージ移動方向の長さ以上、紙葉類の集積動作に要する集積動作空間の前記ステージ移動方向の長さに前記遮光板の前記ステージ移動方向の長さを加えた長さ以下の間隔で配置したことを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項9】
請求項8に記載の紙葉類収納装置において、
前記論理的な矛盾は、前記位置検出センサによる前記遮光板の同時検出であることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項10】
請求項2に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサの故障を判定したときに当該位置検出センサを縮退させることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項11】
請求項8に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサの故障を判定したときに当該位置検出センサを縮退させ、前記エンコーダで検出した前記ステージの移動量によって前記ステージのステージ移動方向の位置を管理することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサの故障を判定したときに、稼動を停止することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項13】
請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサの故障を判定したときに、故障発生の旨の通知を送信することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項14】
請求項2に記載の紙葉類収納装置において、
取扱う紙葉類の厚さの設定値を予め設定すると共に、紙葉類の収納が可能な空間である収納空間を設定し、
前記収納空間の上面に前記ステージ上に集積した紙葉類の最上位の紙葉類を位置させたときの前記ステージ位置および前記厚さの設定値を基に、紙葉類の集積枚数を算出することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項15】
請求項14に記載の紙葉類収納装置において、
紙葉類の集積動作に要する集積動作空間を確保したときの、前記収納空間の下面からの前記ステージ位置および前記厚さの設定値を基に、紙葉類の集積余裕枚数を算出することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項16】
請求項8に記載の紙葉類収納装置において、
取扱う紙葉類の厚さの設定値を予め設定すると共に、紙葉類の収納が可能な空間である収納空間を設定し、
前記収納空間の上面に前記ステージ上に集積した紙葉類の最上位の紙葉類を位置させる ための前記ステージの移動の間に、前記位置検出センサが前記遮光板の存在を検出したときに、当該位置検出センサの前記ステージ移動方向の位置であるセンサ位置から前記ステージの移動終了までの、前記エンコーダで検出した前記ステージの移動量および前記センサ位置、前記厚さの設定値を基に、紙葉類の集積枚数を算出することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項17】
請求項16に記載の紙葉類収納装置において、
前記集積動作空間を確保するための前記ステージの移動の間に、前記位置検出センサが前記遮光板の存在を検出したときに、当該位置検出センサの前記センサ位置から前記ステージの移動終了までの、前記エンコーダで検出した前記ステージの移動量および前記厚さの設定値を基に、紙葉類の集積余裕枚数を算出することを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項18】
請求項14ないし請求項17のいずれか一項に記載の紙葉類収納装置において、
搬入または搬出された紙葉類の枚数を計数し、
新たに搬入された紙葉類の搬入枚数または新たに搬出した紙葉類の搬出枚数と、前記エンコーダで検出した前記ステージの位置の変化量とから紙葉類の厚さを算出し、算出した紙葉類の厚さを、前記厚さの設定値として用いることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項19】
請求項14または請求項16に記載の紙葉類収納装置において、
搬入または搬出された紙葉類の枚数を計数し、
前記論理的な矛盾は、前記搬入または搬出された紙葉類の枚数を基に計数した前記ステージ上の収納枚数と、前記算出された集積枚数とが所定の許容範囲を超えて相違したことであることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項20】
請求項1に記載の紙葉類収納装置において、
紙葉類の収納が可能な空間である収納空間を設定し、
搬入または搬出された紙葉類の枚数を計数し、
前記搬入または搬出された紙葉類の枚数を基に計数した前記ステージ上の収納枚数を前記ステージ上に積層した場合の積層高さを基に、前記収納空間の上面からの前記ステージのステージ移動方向の位置を算出し、
前記論理的な矛盾は、前記ステージの位置により特定した位置検出センサが、前記遮光板を検出しないことであることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項21】
請求項20に記載の紙葉類収納装置において、
前記論理的な矛盾は、前記ステージの位置には前記位置検出センサが存在しない場合に、前記位置検出センサが前記遮光板を誤検出したことであることを特徴とする紙葉類収納装置。
【請求項22】
請求項20に記載の紙葉類収納装置において、
前記位置検出センサを、前記遮光板の前記ステージ移動方向の長さ以上の間隔で配置し、
前記論理的な矛盾は、前記ステージの位置により特定した位置検出センサが、前記遮光板を検出しているときに、他の位置検出センサが前記遮光板を誤検出したことであることを特徴とする紙葉類収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−53637(P2012−53637A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195137(P2010−195137)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】