紙袋
【課題】紙筒状体と最内層の筒状体とを分離する作業が極めて容易にでき、しかも最内層の筒状体によって形成された内袋の内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる紙袋を提供する。
【解決手段】口部2aのヒートシール部10には、紙袋の収容物の重力によって、該ヒートシール部10を分断し、該分断により外袋4aを形成している紙の筒状体4を内袋3aとを分離させる溝11がスコアカットにより形成されており、該溝11は、口部2aのヒートシール部10から袋本体2および封緘紙8が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部2dに配置され、該折り曲げ部2dには、紙袋1の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部33が形成され、底部2bの開封テープ7aが引かれた後に凹部33が持ち上げられると、紙の筒状体4と内袋3aとが分離される。
【解決手段】口部2aのヒートシール部10には、紙袋の収容物の重力によって、該ヒートシール部10を分断し、該分断により外袋4aを形成している紙の筒状体4を内袋3aとを分離させる溝11がスコアカットにより形成されており、該溝11は、口部2aのヒートシール部10から袋本体2および封緘紙8が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部2dに配置され、該折り曲げ部2dには、紙袋1の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部33が形成され、底部2bの開封テープ7aが引かれた後に凹部33が持ち上げられると、紙の筒状体4と内袋3aとが分離される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、この発明は、多層の筒状体によって形成される紙袋に関し、特に、最内層の筒状体がヒートシールされる紙袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙袋は、防湿性、あるいは密封性の向上といった機能を与えるために、紙袋の外表面を形成する紙層の内側に、他の層を重ねるようにした紙袋(紙重袋)がある。この従来の紙袋は、通常、複数層の筒状体を有する両端開口の袋本体を具えている(先行技術文献1参照)。
【0003】
図10は従来の紙袋の概念断面図であり、図11は図10の紙袋の概念平面図である。図10及び図11はいずれも、紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。なお、図10及び後述する図12では、図10と同一部分を同一符号で示している。また、図10乃至図12では、従来の紙袋の構造を理解しやすくするため、その構造を概念的に図示している。
図10及び図11で示すように、従来の紙袋101は、複数層の筒状体を有する両端開口の袋本体2を具えている。
【0004】
このうち、袋本体2は、最内層の筒状体3と、該最内層の筒状体の外周に配置される紙の筒状体4とを具えており、最内層の筒状体3は、ヒートシールされる筒状体であって、通常、不燃材料又は焼却不適材料で形成されるか又はこれを含む材料で形成されている。
また、紙の筒状体4は、最内層の筒状体3の外側を覆う紙の第一筒状体5と、第一筒状体5の外側を覆う紙の第二筒状体6とから構成されている。
【0005】
また、図10で示すように、袋本体2の両端の開口のうち、一方の開口には、紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3との間に糊部12が介在している。この糊部12は紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3とを接着する糊から構成されている。この糊部12の糊は、図11で示すように袋本体2の幅方向に沿って点状に配置されている。
【0006】
この袋本体2の他方の開口は、袋本体2が該袋本体2の中央寄りで1回折り曲げられ、その後、折り曲げられた袋本体2に取り付けられた開封テープ7a付きの当て紙7が、折り曲げられていない袋本体2に糊15によって貼着されて該開口が封緘され、これにより底部2bが形成されている。
また、袋本体2の上記一方の開口は、収容物61を充填する口部2aとなっているが、この口部2aにも、開封テープ7a付きの当て紙7が取り付けられている。なお、口部2aの当て紙7には予めホットメルト接着剤9が塗布されている。
【0007】
この紙袋101では、口部2aから収容物61を充填した後、最内層の筒状体3の口部2a側の端部をヒートシール(熱による接着)し、次にこのヒートシールされた部分(以下、ヒートシール部という。)10より長手方向中央よりで袋本体2の端部を一回折り曲げ、口部2aの開封テープ7a付きの当て紙7をホットメルト接着剤9で袋本体2に貼着すると、口部2aを封緘できる。なお、図10で示すように糊部12およびヒートシール部10、ホットメルト接着剤9は紙袋101の表面に表れないが、図11等では実線等によって図示している。
【0008】
また、この紙袋101では、図10および図11で示すように、口部2aおよび底部2bが封緘されると最内層の筒状体3によって内袋3aが形成され、この内袋3a内に収容物61が収容される状態となり、また内袋3aを覆う外袋4aが、紙の筒状体4によって形成される。この状態から、内袋3aと、外袋4aを構成している紙の筒状体4とを分離することができる。
この分離を行うには、まず底部2bの開封テープ7aをひいて底部2bを開封して底部2bの折り曲げを解除し、次に口部2aの開封テープ7aを引いて口部2aを開封して、口部2aの折り曲げを解除する。
そして次に、図12の矢印Eで示すように、外袋4aを形成していた紙の筒状体4を、内袋3aから引き離す。すると、この紙の筒状体4と内袋3aとを分離できる。
なお、上記図12は、図10の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する概念図である。
【0009】
また、従来の紙袋には、袋本体の開口部である口部2a、底部2bまたはその双方を封止帯で覆い各封止帯の上からミシン糸による縫合を行って封緘する紙袋がある。この従来の紙袋のうち口部2aをミシン糸で封緘する紙袋では、口部2aの封緘の際、口部2aの端を可及的に水平にしてミシン糸による縫合を確実にするため、口部2aをトリミングし、その後ミシン糸で口部2aを縫合している。
また、ミシン糸で口部2a、底部2bまたはその双方の封緘を行う従来の紙袋には、最内層の筒状体3の口部2a及び底部2bの封緘をヒートシールによって行って内袋3aを形成し、口部2aのヒートシール部に、外袋4aを構成する紙の筒状体4と内袋3aとを分離するための、スコアカットによる溝が形成された紙袋が提案されている。この口部2aのヒートシール部にスコアカットによる溝が形成された従来の紙袋111(図8(b))では、口部2aの封止帯112の両端を持ち上げることにより、紙の筒状体4と内袋3aとを分離するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平7−94256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、袋本体2の口部2a及び底部2bがいずれも開封テープ7a付きの当て紙7によって封緘された従来の紙袋101(図10)は、外袋4aを形成していた紙の筒状体4と内袋3aとを分離するためには、口部2aと底部2bを、いずれも開封テープ7aを引くことにより開封する必要があった。そのため、上記分離の作業が煩雑であるという問題があった。
【0012】
また、この紙袋101では、口部2aの、外袋4aを形成していた紙の筒状体4と内袋3aとを糊部12の糊によって接着しているから、図13で示すように紙の筒状体4と内袋3aとを分離する際には、糊部12の糊の接着力によって、その分離作業が煩雑になるという問題もあった。
【0013】
また、紙の筒状体4から分離した後の内袋3aの外面には、第一筒状体5と最内層の筒状体3とを接着していた糊部12の糊12bが付着しており、この糊12bに、紙粉等の粉末状の収容物61又はほこり等の収容物61以外のもの(異物)が付着するおそれがあるという問題もあった。たとえば、この糊12bに食品である粉末状の収容物61が付着すると、カビの発生要因にもなるので、食品衛生上好ましくない事態を引き起こす。
【0014】
また、袋本体2の口部2a、底部2bまたはその双方をミシン糸によって封緘する従来の紙袋では、外袋4aを構成する紙の筒状体4と内袋3aを分離するには、口部2aまたは底部2bの少なくとも一方を封緘している縫合されたミシン糸を解く必要があるので、紙の筒状体4と内袋3aとを分離する際にミシン糸が紙袋内に充填した収容物61に混入するという問題や、ミシン糸を解く手間や経験の無さによって、上記分離作業が煩雑になるという問題もあった。
また、口部2aのヒートシール部にスコアカットによる溝が形成された従来の紙袋111(図8(b))では、口部2aの封止帯112の両端を持ち上げることにより、紙の筒状体4と内袋3aとを分離するから、その分離の際、収容物61の重力が大きいと、持ち上げた封止帯112のミシン糸113の箇所から紙袋111が破けるという問題もあった。
【0015】
上述した事情に鑑み、本発明は、外袋を構成する紙の筒状体と最内層の筒状体によって形成された内袋とを分離する作業が従来に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができ、しかも、内袋の内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができるとともに、分離の際に紙袋が破れることが可及的に防止される紙袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本願発明の紙袋は、2層以上の筒状体の層を有する両端開口の袋本体を有し、該袋本体は、内周面同士がヒートシールにより接着して内袋を形成する最内層の筒状体と、該最内層の筒状体の外周に配置され、外袋を形成する紙の筒状体とを有し、前記袋本体の各開口に位置する前記最内層の筒状体の内周面同士をヒートシールによって接着してなるヒートシール部を具え、前記袋本体の開口のうち収容物を充填する口部には、前記袋本体に、ホットメルト接着剤が予め塗布された封緘紙であって該ホットメルト接着剤によって前記袋本体に貼着される封緘紙が取り付けられるとともに、前記紙の筒状体と前記最内層の筒状体とを接着する糊部が配置され、前記口部は、前記袋本体および前記封緘紙が折り曲げられた後に前記封緘紙の前記ホットメルト接着剤によって封緘され、前記袋本体の開口のうち口部とは別の開口である底部には、前記袋本体に、前記袋本体に貼着される開封テープ付きの当て紙が取り付けられ、前記底部は前記袋本体が折り曲げられた後に前記開封テープ付きの当て紙によって封緘される紙袋において、前記口部に形成されたヒートシール部は、前記糊部よりも前記袋本体の中央寄りに配置され、該口部のヒートシール部には、前記紙袋の収容物の重力によって、前記口部のヒートシール部を分断し、該分断により前記外袋を形成している前記紙の筒状体と前記内袋とを分離させる溝がスコアカットにより形成されており、該溝は、前記口部のヒートシール部から前記袋本体および前記封緘紙が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部に配置され、該折り曲げ部の形成により、前記紙袋の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部が形成され、前記底部の開封テープが引かれた後に前記該凹部が持ち上げられると、前記外袋を形成している紙の筒状体と前記内袋とが分離される。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の紙袋は、口部に形成されたヒートシール部が、紙の筒状体と最内層の筒状体とを接着する糊部よりも袋本体の中央寄りに配置され、該口部のヒートシール部には、紙袋の収容物の重力によって、口部のヒートシール部を分断し、該分断により外袋を形成している紙の筒状体と内袋とを分離させる溝がスコアカットにより形成されており、該溝は、口部のヒートシール部から袋本体および封緘紙が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部に配置され、該折り曲げ部の形成により、紙袋の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部が形成され、底部の開封テープが引かれた後に凹部が持ち上げられると、外袋を形成している紙の筒状体と内袋とが分離されるようにしたから、本願発明の紙袋によると、外袋を構成する紙の筒状体と、最内層の筒状体によって形成された内袋とを分離する作業が従来に比し単純で、極めて容易にでき、そのためこの分離の作業を短時間で行うことができ、しかも内袋の内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができるとともに、該分離の際に紙袋が破れることが可及的に防止される紙袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例の紙袋の概念平面図であって、特に口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。
【図2】図2は図1の紙袋に収容物を収容した様子を示す図であって図1の要部断面で切断した様子を示す概念断面図である。
【図3】図3は図2の紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘するためヒートシールする様子を示す概念断面図である。
【図4】図4は図3の紙袋の口部から収容物を充填した後、口部を封緘するためスコアカットによる溝を形成する様子を示す要部拡大概念断面図である。
【図5】図5は図1の紙袋の概念平面図で、口部を封緘する途中の、スコアカットによる溝形成直後の様子を示す図である。
【図6】図6(a)は図2の要部拡大概念図であり、図6(b)は図6(a)に対応する部分を示す従来の紙袋の要部概念断面図である。
【図7】図7は図2の紙袋の紙の筒状体と最内層の筒状体とを分離する動作を説明する概念図である。
【図8】図8(a)は図2の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する図であって特に紙袋の持ち上げ箇所である凹部を示す概念斜視図であり、図8(b)は図8(a)に対応する従来の紙袋の持ち上げ箇所を示す概念斜視図である。
【図9】図9は図2の紙袋1の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する概念図である。
【図10】図10は従来の紙袋の概念断面図であり、特に紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。
【図11】図11は図10の紙袋の概念平面図であり、特に紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。
【図12】図12は図10の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の紙袋について、以下、実施例の紙袋に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施例の紙袋の概念平面図であって、特に口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図であり、図2は図1の紙袋に収容物を収容した様子を示す図であって図1の要部断面で切断した様子を示す概念断面図である。
なお、図1乃至後述する図9では、図10乃至図12と同一部分を同一符号で示しており、また発明の理解をしやすくするため、紙袋の構造を概念的に図示している。
この紙袋1は、ひだ無しの袋(平胴形式の袋)である。
紙袋1の両端開口の袋本体2は、最内層の筒状体3と、該最内層の筒状体3の外周に配置された紙の筒状体4とを具えている。
このうち、紙の筒状体4は、最内層の筒状体3の外周を覆う紙の第一筒状体5と、この紙の筒状体5の外周を覆う紙の第二筒状体6とから構成されている。
なお、紙の筒状体3の第二筒状体6は、口部2a又は底部2bを形成する端6a、6bが直線切りされたシート状の紙から形成されている。このシート状の紙では幅方向両端6c、6dも直線切りされているので、この両端6c、6dを重ね合わせて胴張り部6eを形成するとともに、その重ね合わせの際に、最内層の筒状体3の外周を覆う第一の筒状体5を、さらにその外周から覆うと、紙の第二筒状体6を作ることができる。
また、紙の第一筒状体5も、第二筒状体6と同様のシート状の紙から形成されており、上述した第二筒状体6と同様の方法によって作ることができるが、最内層の筒状体3のみをその外周から覆う点が第二筒状体6と異なる。この第一筒状体5と第二の筒状体6とは袋本体2を作る際に糊16(図2)によって接着されている。
また、最内層の筒状体3は、その内周面同士がヒートシールにより接着する筒状体であり、通常、不燃材料又は焼却不適材料で形成されるか又はこれを含む材料で形成されている。
たとえば、この最内層の筒状体は、ポリエチレンの筒状体により構成されている。
【0021】
また、この紙袋1では、袋本体2では、少なくとも一方の開口に、紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3とを接着する糊部12が配置されている。
この実施例では、図2で示すように、糊部12は、収容物61を充填する口部(後述)2aに配置されており、糊部12は口部2aに位置する紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3との間に介在している。また、この糊部12は糊からなり、図1で示すように袋本体2の幅方向に沿って線状に配置されている。
【0022】
上記した袋本体2の開口の一方は、収容物61を充填する口部2aを形成している。
また袋本体2の他方の開口、すなわち口部2aとは別の開口である底部2bは、袋本体2が該袋本体2の中央寄りで1回折り曲げられ、その後、折り曲げられた袋本体2に取り付けられた開封テープ7a付きの当て紙7が、折り曲げられていない袋本体2に糊15によって貼着され、これにより底部2bが封緘されている。
なお、底部2bに位置する、紙の筒状体4と最内層の筒状体3の間には両者を接着する糊などの接着材は何ら介在されておらず、両者は接着されていない。
また底部2bに位置する最内層の筒状体3の内面同士は、符号10で示すように、ヒートシールによって接着されている。なお、開封テープ7a付きの当て紙7についての詳細は、上記特許文献1等に開示されている。
【0023】
また、口部2aの袋本体2には、口部2aを封緘する封緘紙8が取り付けられている。この封緘紙8は当て紙7と同じ材質のクラフト紙からなり、封緘紙8には開封テープ7aが形成されていない。
また、封緘紙8には予めホットメルト接着剤9が塗布されており、後述するように、この封緘紙8はホットメルト接着剤9によって袋本体2に貼着される。また、符号17は、底部2bの封緘前の当て紙7と袋本体2との間に介在され両者を接着する糊又は、口部2aの封緘前の封緘紙8と袋本体2との間に介在され両者を接着する糊である。
【0024】
図3は、図2の紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘するためヒートシールする様子を示す概念断面図である。図3で示すように、この紙袋1では、矢印Aで示すように口部2aを広げ、矢印Bで示すように口部2aから収容物61を充填する。なお、図3の一点鎖線は、口部2aが広げられた様子を図示している。収容物61が収容された後、口部2aの、互いに対向する最内層の筒状体3の内周面同士をヒートシール(熱による接着)する。
このヒートシールによって糊部12よりも袋本体2の中央寄りに位置する最内層の筒状体3の内周面同士が接着する。なお、ヒートシールは、紙袋1(図5)の幅方向に沿って線状に形成され、紙袋1の外面から行われる。
また、図3で示すようにヒートシール部10の幅Wは約10mmである。このヒートシールは、従来のヒートシール用治具30によって行うことができる。
このヒートシールされた紙袋では、図2で示すように、口部2aと底部2bの各ヒートシール部10によって最内層の筒状体3が封緘されて内袋3aが形成され、この内袋3a内には収容物61が収容され密封状態となる。
【0025】
次に、このヒートシール部10に、図4で示すようにスコアカットによる溝11を形成する。この溝11の形成位置は、ヒートシール部10の中間であり、紙袋1の幅方向に沿って線状に形成される。
なお、スコアカットとは、刃又は突起を素材に直接又は間接的に素材に押し当てることにより該素材に溝(スリット)を形成する技術である。
このスコアカットは、ヒートシールの熱が冷却する前に行われ、最内層の筒状体3に対し第二筒状体6及び第一の筒状体5を介して行われる。
後述するように、この溝11は、紙袋1の収容物61の重力によって、ヒートシール部10を分断し、該分断により、最内層の筒状体3により形成される内袋3aと、外袋4aを形成している紙の筒状体4とを分離させる溝である。
なお、スコアカットは図4で示すように、周面に突起を具えた回転自在なロール31と、周面に突起のない回転自在なロール32とを互いに対向させてなり、ロール31を、ロール32に接する紙袋1の、第二筒状体6の外面に押し当てて溝11を形成する従前の装置によって形成する。
この溝11は、図5で示すように、口部2aと底部2bの各ヒートシール部10のうち、口部2aのヒートシール部10に形成される。また、この溝11は、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを接着する糊部12よりも袋本体2の中央寄りに形成される。
なお、上記した図4は、図3の紙袋の口部から収容物を充填した後、口部を封緘するためスコアカットによる溝を形成する様子を示す要部拡大概念断面図である。また、図5は、図1の紙袋の概念平面図で、口部を封緘する途中の、スコアカットによる溝形成直後様子を示す図である。
【0026】
次に、図4の矢印C及び図6(a)で示すように、口部のヒートシール部10から袋本体2および封緘紙8を一回折り曲げる。この折り曲げられる袋本体2及び封緘紙8は、紙袋1の糊部12を含む一端部である。この一回折り曲げによって、袋本体2には、断面逆U字形状の折り曲げ部2dが形成され、折り曲げ部2dに溝11が配置される。
また、この折り曲げ部2dの形成によって、紙袋の幅方向の両端部には、図8(a)で示すように、凹部33が形成される。
その後、口部2aの封緘紙8をホットメルト接着剤9により袋本体2に貼着すると、口部2aを封緘でき、これにより、内袋3aを覆う外袋4aが紙の筒状体4によって形成される。
なお、図6(a)は図2の要部拡大概念図であり、図6(b)は図6(a)に対応する部分を示す従来の紙袋の要部概念断面図である。図6(a)の二点鎖線は、折り曲げの基準となる折り曲げ線を図示している。
【0027】
このように収容物61を収容して口部2aが封緘された紙袋1では、外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとを分離することができる。
図7乃至図9は、図2の紙袋1の紙の筒状体4と内袋3aとを分離する動作を説明する概念図である。
この分離を行うには、図7で示すように、まず底部2bの開封テープ7aをひく。そして、底部2bを開封して底部2bの折り曲げ(1回折り曲げ)を解除する。
次に図8(a)及び図9の矢印Dで示すように、紙の筒状体4の折り曲げ部2dによって形成された一対の凹部33を持ち上げる。すると、紙の筒状体4の糊部12を含む一端部が持ち上げられる。なお、符号Gは、紙袋1を載せた台または地面である。
また、この凹部33を形成する折り曲げ部2dには、スコアカットによる溝11が設けられている。
そのため、図9で示すように凹部33が持ち上げられると、ヒートシール部10は、収容物61の重力によって、糊部12側のヒートシール部10aと、収容物61側のヒートシール部10bに分断されるとともに、この分断によって、糊部12を有し溝11に対し糊部12側のヒートシール部10aを具えた紙の筒状体4と、溝11に対し収容物61側のヒートシール部10bを具えた最内層の筒状体3からなる内袋3aとが引き離されて、内袋3aと、外袋4を形成している紙の筒状体4が分離する。
なお、紙の筒状体4は、凹部33の持ち上げにより、収容物61が充填された内袋2aの外面に沿ってひきずられて最内層の筒状体3から引き離され、上述のように最終的に紙の筒状体4と内袋3aとが分離される。
この分離を行った後の上記内袋3aは、溝11に対し収容物61側のヒートシール部10bと底部2bのヒートシール部10によって封緘されており、そのため収容物61を収容した密封状態を維持する。
【0028】
この凹部33の持ち上げによって、内袋3aと外袋4を形成している紙の筒状体4とを分離する際、糊部12とは異なる位置の溝11で、内袋3aと糊部12が付着した最内層の筒状体3とが切断され、糊部12は、内袋3aの外面に表れない。
そのため、内袋3aの外面に糊部12が付着することは可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる。
したがって、この内袋3aの外面に、糊が付着し、この糊に紙粉等の粉末状の収容物61又はほこり等の収容物61以外のもの(異物)が付着するおそれは可及的に防止される。そのため、この糊に食品である粉末状の収容物61が付着して、カビが発生し、食品衛生上好ましくない事態を引き起こすおそれも可及的に防止される。
また、内袋3aは、上記の分離動作の際、収容物61側のヒートシール部10bおよび底部2bのヒートシール部10によって封緘された状態を維持するので、内袋3aの内面に異物が収容物61に混入するおそれは可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる。
【0029】
また、この紙袋1では、紙の筒状体4と内袋3aを分離する際に、糊部12とは異なる位置の溝11で、内袋3aと、糊部12が付着した最内層の筒状体3とが切断されるので、上記分離の作業が、糊部12の接着力の強さに影響を受けることもない。そのため、従来の紙袋101に比べて上記分離の作業が極めて容易となる。
なお、糊部12は、従来の紙袋101(図11)では、接着力を可及的に小さくして上記分離の作業をしやすくするため、点状に糊を配置していたが、この発明の紙袋1では、糊部12の配置に際し、上記分離の作業を考慮する必要がないから、糊部12を、紙袋1の幅方向に沿って線状に配置される糊から構成することができる。また、糊部12を紙袋1の幅方向に沿って線状に配置された糊から構成すると、従来の紙袋101に比し最内層の筒状体3と紙の筒状体4との接着力を大きくできるので、収容物61の充填又は収容の際に、最内層の筒状体3と紙の筒状体4とが互いに位置ずれすることを可及的に防ぐことができるとともに、紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3の間に収容物61が混入することも防止できる。
【0030】
この紙袋1では、上述のように、底部2bの開封テープ7aを引いた後、底部2bの折り曲げを解除し、凹部33を単に持ち上げるという単純な動作により、外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとを分離するから、従来のように口部2a及び底部2bのいずれの開封も開封テープ7aを引いて行う従来の紙袋51に比べ、開封テープ7aを引く動作が一つ少なくなる分、外袋4aを形成している紙の筒状体4と、内袋3aとを分離する作業が従来の紙袋に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができる。
またこの紙袋1では、紙の筒状体4と内袋3aとを分離するために、口部2aの折り曲げを解除する必要もないので、その分、紙の筒状体4と、内袋3aとを分離する作業が従来の紙袋101に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができる。
【0031】
また、この紙袋1では、従来の紙袋のように口部2a、底部2b又はその双方の封緘をミシン糸による縫合により行うものではないから、紙の筒状体4と内袋3aとを分離する際に、口部2aまたは底部2bの少なくとも一方を封緘している縫合されたミシン糸を解くことによってミシン糸が紙袋1内に充填した収容物61に混入するということはない。したがってミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる。
また、この紙袋1は、従来の紙袋のように口部2a、底部2b又はその双方の封緘をミシン糸による縫合により行うものではないから、紙の筒状体4と内袋3aを分離する際に、口部2a、底部2bの少なくとも一方を封緘している縫合されたミシン糸を解く必要がなく、この縫合を解く手間や経験も必要がない。そのため、この紙袋1では、上記分離の作業が従来の紙袋に比し、単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができる。
【0032】
また、この紙袋1では、持ち上げられる凹部33が、口部2aのヒートシール部10から袋本体2及び封緘紙8が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部2dにより形成されている。この凹部33の内表面は袋本体2によって形成されるから、図8(b)で示すように持ち上げ箇所である封止帯112が、袋本体2に取付けられている従来の紙袋111のものに比べ、紙の筒状体4と内袋3aの分離の際、収容物61の重力が大きい場合に紙袋1が破けることは可及的に防止される。
しかも、この折り曲げ部2dの、袋本体2とともに折り曲げられる封緘紙8は、従来の紙袋111(図8(b))の、ミシン糸による縫合のための封止帯112に比べて機械的強度の強いので、従来の紙袋111に比し、持ち上げ箇所(凹部33)の機械的強度が一層強く、そのため収容物61の重力が大きい場合であっても、紙袋1が破けることは一層可及的に防止される。
また、この紙袋1のように、紙袋1の持ち上げ箇所が凹部33であると、凹部33に作業者の手・指を引っかけることができるので、封止帯112の両端を持ち上げる従来の紙袋111(図8(b))に比べて、持ち上げ動作も簡単であり、そのため上記分離の作業が従来の紙袋111に比し極めて容易であり、この分離の作業を短時間で行うことができる。
なお、図8(a)は図2の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する図であって特に紙袋の持ち上げ箇所である凹部を示す概念斜視図であり、図8(b)は図8(a)に対応する従来の紙袋の持ち上げ箇所を示す概念斜視図である。
【0033】
以上で説明したように、この発明は、2層以上の筒状体の層を有する両端開口の袋本体2を有し、該袋本体2は、内周面同士がヒートシールにより接着して内袋を形成する最内層の筒状体3と、該最内層の筒状体3の外周に配置され、外袋を形成する紙の筒状体4とを有し、袋本体2の各開口(口部2a、底部2b)に位置する最内層の筒状体3の内周面同士をヒートシールによって接着してなるヒートシール部10を具え、収容物61を充填する口部2aには、袋本体2に、ホットメルト接着剤9が予め塗布された封緘紙8であって該ホットメルト接着剤9によって袋本体2に貼着される封緘紙8が取り付けられるとともに、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを接着する糊部12が配置され、口部2aは、袋本体2および封緘紙8が折り曲げられた後に封緘紙8のホットメルト接着剤9によって封緘され、袋本体2の開口のうち口部2aとは別の開口である底部2bには、袋本体2に、袋本体2に貼着される開封テープ7a付きの当て紙7が取り付けられ、底部2bは袋本体2が折り曲げられた後に開封テープ7a付きの当て紙7によって封緘される紙袋において、口部2aに形成されたヒートシール部10は、糊部12よりも袋本体2の中央寄りに配置され、該口部2aのヒートシール部10には、紙袋1の収容物の重力によって、口部2aのヒートシール部10を分断し、該分断により外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとを分離させる溝11がスコアカットにより形成されており、該溝11は、口部2aのヒートシール部10から袋本体2及び封緘紙8が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部2dに配置され、該折り曲げ部2dの形成により、紙袋1の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部33が形成され、底部2bの開封テープ7aが引かれた後に凹部33が持ち上げられると、外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとが分離されるようにしたから、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを分離する作業が従来の紙袋に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができ、しかも内袋3aの内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができるとともに、該分離の際に紙袋が破れることが可及的に防止される。
【0034】
さらに、この実施例の紙袋1は、その紙の筒状体4の各筒状体(5、6)が上述のように、口部2a又は底部2bを形成する端6a、6b(図1では第二筒状体6で代表して図示)が直線切りされたシート状の紙から形成されているから、この端6a、6bが段階切り加工され、収容物61の比重が異なると袋寸法を変更しなければならない紙袋や、収容物の比重が異なれば袋寸法を変更する必要があるバルブ紙袋のように、その紙袋の胴幅の寸法の変更によって、カッター刃の種類を変える必要がある紙袋に比べて、紙袋1の製造が、簡単となる。
また、紙袋1は、ひだ無しの袋(いわゆる平胴形式の紙袋)である。そのためいいかえると、ひだ有りの紙袋(ガセット形式の袋)に比べて、ヒートシール部10でのヒートシールの漏れ(抜け)は生じにくく、収容物61の漏れが可及的に防止される。
【0035】
また、この紙袋1は、最内層の筒状体3を具えた袋本体2を用いて製造される多重袋であるから、紙の筒状体4からなる紙袋の内側に、最内層の筒状体3を手作業で差し込む工程を含む従来の多重袋に比べて、この差し込む工程がない分、多重袋の製造コストを低くすることができる。
【0036】
この実施例の紙袋1では、口部2aのヒートシール部10のみにスコアカットによる溝11が形成されたものとしたが、この発明の紙袋は、袋本体の少なくとも口部2aに、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを接着する糊部12が配置され、溝11はこの糊部12よりも、袋本体2の中央寄りに位置する最内層の筒状体3の内周面同士をヒートシールによって接着するヒートシール部10に形成されていればよい。
【0037】
なお、この実施例の紙袋1では、紙の筒状体4を、2層の紙の筒状体5、6からなるものとして説明したが、本考案の紙袋を説明したが、紙の筒状体の層数はこれに限定されず、また、本願発明の紙袋1の最内層がヒートシールされる層から形成された紙袋であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明の紙袋は、主に食品用粉粒などクリーンルーム内にて保管し、作業性向上を目的とした分野の紙袋に適している。
【符号の説明】
【0039】
1…紙袋
2…袋本体
2a、2b…開口部
2a…口部
2b…底部
2d…折り曲げ部
3…最内層の筒状体
3a…内袋
4…紙の筒状体
4a…外袋
5…第一筒状体
6…第二筒状体
7…開封テープ付きの当て紙
7a…開封テープ
8…封緘紙
9…ホットメルト接着剤
10…ヒートシール部
11…溝
12…糊部
33…持ち上げ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、この発明は、多層の筒状体によって形成される紙袋に関し、特に、最内層の筒状体がヒートシールされる紙袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙袋は、防湿性、あるいは密封性の向上といった機能を与えるために、紙袋の外表面を形成する紙層の内側に、他の層を重ねるようにした紙袋(紙重袋)がある。この従来の紙袋は、通常、複数層の筒状体を有する両端開口の袋本体を具えている(先行技術文献1参照)。
【0003】
図10は従来の紙袋の概念断面図であり、図11は図10の紙袋の概念平面図である。図10及び図11はいずれも、紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。なお、図10及び後述する図12では、図10と同一部分を同一符号で示している。また、図10乃至図12では、従来の紙袋の構造を理解しやすくするため、その構造を概念的に図示している。
図10及び図11で示すように、従来の紙袋101は、複数層の筒状体を有する両端開口の袋本体2を具えている。
【0004】
このうち、袋本体2は、最内層の筒状体3と、該最内層の筒状体の外周に配置される紙の筒状体4とを具えており、最内層の筒状体3は、ヒートシールされる筒状体であって、通常、不燃材料又は焼却不適材料で形成されるか又はこれを含む材料で形成されている。
また、紙の筒状体4は、最内層の筒状体3の外側を覆う紙の第一筒状体5と、第一筒状体5の外側を覆う紙の第二筒状体6とから構成されている。
【0005】
また、図10で示すように、袋本体2の両端の開口のうち、一方の開口には、紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3との間に糊部12が介在している。この糊部12は紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3とを接着する糊から構成されている。この糊部12の糊は、図11で示すように袋本体2の幅方向に沿って点状に配置されている。
【0006】
この袋本体2の他方の開口は、袋本体2が該袋本体2の中央寄りで1回折り曲げられ、その後、折り曲げられた袋本体2に取り付けられた開封テープ7a付きの当て紙7が、折り曲げられていない袋本体2に糊15によって貼着されて該開口が封緘され、これにより底部2bが形成されている。
また、袋本体2の上記一方の開口は、収容物61を充填する口部2aとなっているが、この口部2aにも、開封テープ7a付きの当て紙7が取り付けられている。なお、口部2aの当て紙7には予めホットメルト接着剤9が塗布されている。
【0007】
この紙袋101では、口部2aから収容物61を充填した後、最内層の筒状体3の口部2a側の端部をヒートシール(熱による接着)し、次にこのヒートシールされた部分(以下、ヒートシール部という。)10より長手方向中央よりで袋本体2の端部を一回折り曲げ、口部2aの開封テープ7a付きの当て紙7をホットメルト接着剤9で袋本体2に貼着すると、口部2aを封緘できる。なお、図10で示すように糊部12およびヒートシール部10、ホットメルト接着剤9は紙袋101の表面に表れないが、図11等では実線等によって図示している。
【0008】
また、この紙袋101では、図10および図11で示すように、口部2aおよび底部2bが封緘されると最内層の筒状体3によって内袋3aが形成され、この内袋3a内に収容物61が収容される状態となり、また内袋3aを覆う外袋4aが、紙の筒状体4によって形成される。この状態から、内袋3aと、外袋4aを構成している紙の筒状体4とを分離することができる。
この分離を行うには、まず底部2bの開封テープ7aをひいて底部2bを開封して底部2bの折り曲げを解除し、次に口部2aの開封テープ7aを引いて口部2aを開封して、口部2aの折り曲げを解除する。
そして次に、図12の矢印Eで示すように、外袋4aを形成していた紙の筒状体4を、内袋3aから引き離す。すると、この紙の筒状体4と内袋3aとを分離できる。
なお、上記図12は、図10の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する概念図である。
【0009】
また、従来の紙袋には、袋本体の開口部である口部2a、底部2bまたはその双方を封止帯で覆い各封止帯の上からミシン糸による縫合を行って封緘する紙袋がある。この従来の紙袋のうち口部2aをミシン糸で封緘する紙袋では、口部2aの封緘の際、口部2aの端を可及的に水平にしてミシン糸による縫合を確実にするため、口部2aをトリミングし、その後ミシン糸で口部2aを縫合している。
また、ミシン糸で口部2a、底部2bまたはその双方の封緘を行う従来の紙袋には、最内層の筒状体3の口部2a及び底部2bの封緘をヒートシールによって行って内袋3aを形成し、口部2aのヒートシール部に、外袋4aを構成する紙の筒状体4と内袋3aとを分離するための、スコアカットによる溝が形成された紙袋が提案されている。この口部2aのヒートシール部にスコアカットによる溝が形成された従来の紙袋111(図8(b))では、口部2aの封止帯112の両端を持ち上げることにより、紙の筒状体4と内袋3aとを分離するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公平7−94256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、袋本体2の口部2a及び底部2bがいずれも開封テープ7a付きの当て紙7によって封緘された従来の紙袋101(図10)は、外袋4aを形成していた紙の筒状体4と内袋3aとを分離するためには、口部2aと底部2bを、いずれも開封テープ7aを引くことにより開封する必要があった。そのため、上記分離の作業が煩雑であるという問題があった。
【0012】
また、この紙袋101では、口部2aの、外袋4aを形成していた紙の筒状体4と内袋3aとを糊部12の糊によって接着しているから、図13で示すように紙の筒状体4と内袋3aとを分離する際には、糊部12の糊の接着力によって、その分離作業が煩雑になるという問題もあった。
【0013】
また、紙の筒状体4から分離した後の内袋3aの外面には、第一筒状体5と最内層の筒状体3とを接着していた糊部12の糊12bが付着しており、この糊12bに、紙粉等の粉末状の収容物61又はほこり等の収容物61以外のもの(異物)が付着するおそれがあるという問題もあった。たとえば、この糊12bに食品である粉末状の収容物61が付着すると、カビの発生要因にもなるので、食品衛生上好ましくない事態を引き起こす。
【0014】
また、袋本体2の口部2a、底部2bまたはその双方をミシン糸によって封緘する従来の紙袋では、外袋4aを構成する紙の筒状体4と内袋3aを分離するには、口部2aまたは底部2bの少なくとも一方を封緘している縫合されたミシン糸を解く必要があるので、紙の筒状体4と内袋3aとを分離する際にミシン糸が紙袋内に充填した収容物61に混入するという問題や、ミシン糸を解く手間や経験の無さによって、上記分離作業が煩雑になるという問題もあった。
また、口部2aのヒートシール部にスコアカットによる溝が形成された従来の紙袋111(図8(b))では、口部2aの封止帯112の両端を持ち上げることにより、紙の筒状体4と内袋3aとを分離するから、その分離の際、収容物61の重力が大きいと、持ち上げた封止帯112のミシン糸113の箇所から紙袋111が破けるという問題もあった。
【0015】
上述した事情に鑑み、本発明は、外袋を構成する紙の筒状体と最内層の筒状体によって形成された内袋とを分離する作業が従来に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができ、しかも、内袋の内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができるとともに、分離の際に紙袋が破れることが可及的に防止される紙袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本願発明の紙袋は、2層以上の筒状体の層を有する両端開口の袋本体を有し、該袋本体は、内周面同士がヒートシールにより接着して内袋を形成する最内層の筒状体と、該最内層の筒状体の外周に配置され、外袋を形成する紙の筒状体とを有し、前記袋本体の各開口に位置する前記最内層の筒状体の内周面同士をヒートシールによって接着してなるヒートシール部を具え、前記袋本体の開口のうち収容物を充填する口部には、前記袋本体に、ホットメルト接着剤が予め塗布された封緘紙であって該ホットメルト接着剤によって前記袋本体に貼着される封緘紙が取り付けられるとともに、前記紙の筒状体と前記最内層の筒状体とを接着する糊部が配置され、前記口部は、前記袋本体および前記封緘紙が折り曲げられた後に前記封緘紙の前記ホットメルト接着剤によって封緘され、前記袋本体の開口のうち口部とは別の開口である底部には、前記袋本体に、前記袋本体に貼着される開封テープ付きの当て紙が取り付けられ、前記底部は前記袋本体が折り曲げられた後に前記開封テープ付きの当て紙によって封緘される紙袋において、前記口部に形成されたヒートシール部は、前記糊部よりも前記袋本体の中央寄りに配置され、該口部のヒートシール部には、前記紙袋の収容物の重力によって、前記口部のヒートシール部を分断し、該分断により前記外袋を形成している前記紙の筒状体と前記内袋とを分離させる溝がスコアカットにより形成されており、該溝は、前記口部のヒートシール部から前記袋本体および前記封緘紙が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部に配置され、該折り曲げ部の形成により、前記紙袋の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部が形成され、前記底部の開封テープが引かれた後に前記該凹部が持ち上げられると、前記外袋を形成している紙の筒状体と前記内袋とが分離される。
【発明の効果】
【0017】
本願発明の紙袋は、口部に形成されたヒートシール部が、紙の筒状体と最内層の筒状体とを接着する糊部よりも袋本体の中央寄りに配置され、該口部のヒートシール部には、紙袋の収容物の重力によって、口部のヒートシール部を分断し、該分断により外袋を形成している紙の筒状体と内袋とを分離させる溝がスコアカットにより形成されており、該溝は、口部のヒートシール部から袋本体および封緘紙が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部に配置され、該折り曲げ部の形成により、紙袋の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部が形成され、底部の開封テープが引かれた後に凹部が持ち上げられると、外袋を形成している紙の筒状体と内袋とが分離されるようにしたから、本願発明の紙袋によると、外袋を構成する紙の筒状体と、最内層の筒状体によって形成された内袋とを分離する作業が従来に比し単純で、極めて容易にでき、そのためこの分離の作業を短時間で行うことができ、しかも内袋の内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができるとともに、該分離の際に紙袋が破れることが可及的に防止される紙袋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例の紙袋の概念平面図であって、特に口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。
【図2】図2は図1の紙袋に収容物を収容した様子を示す図であって図1の要部断面で切断した様子を示す概念断面図である。
【図3】図3は図2の紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘するためヒートシールする様子を示す概念断面図である。
【図4】図4は図3の紙袋の口部から収容物を充填した後、口部を封緘するためスコアカットによる溝を形成する様子を示す要部拡大概念断面図である。
【図5】図5は図1の紙袋の概念平面図で、口部を封緘する途中の、スコアカットによる溝形成直後の様子を示す図である。
【図6】図6(a)は図2の要部拡大概念図であり、図6(b)は図6(a)に対応する部分を示す従来の紙袋の要部概念断面図である。
【図7】図7は図2の紙袋の紙の筒状体と最内層の筒状体とを分離する動作を説明する概念図である。
【図8】図8(a)は図2の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する図であって特に紙袋の持ち上げ箇所である凹部を示す概念斜視図であり、図8(b)は図8(a)に対応する従来の紙袋の持ち上げ箇所を示す概念斜視図である。
【図9】図9は図2の紙袋1の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する概念図である。
【図10】図10は従来の紙袋の概念断面図であり、特に紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。
【図11】図11は図10の紙袋の概念平面図であり、特に紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図である。
【図12】図12は図10の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の紙袋について、以下、実施例の紙袋に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施例の紙袋の概念平面図であって、特に口部から収容物を充填して口部を封緘した様子を示す図であり、図2は図1の紙袋に収容物を収容した様子を示す図であって図1の要部断面で切断した様子を示す概念断面図である。
なお、図1乃至後述する図9では、図10乃至図12と同一部分を同一符号で示しており、また発明の理解をしやすくするため、紙袋の構造を概念的に図示している。
この紙袋1は、ひだ無しの袋(平胴形式の袋)である。
紙袋1の両端開口の袋本体2は、最内層の筒状体3と、該最内層の筒状体3の外周に配置された紙の筒状体4とを具えている。
このうち、紙の筒状体4は、最内層の筒状体3の外周を覆う紙の第一筒状体5と、この紙の筒状体5の外周を覆う紙の第二筒状体6とから構成されている。
なお、紙の筒状体3の第二筒状体6は、口部2a又は底部2bを形成する端6a、6bが直線切りされたシート状の紙から形成されている。このシート状の紙では幅方向両端6c、6dも直線切りされているので、この両端6c、6dを重ね合わせて胴張り部6eを形成するとともに、その重ね合わせの際に、最内層の筒状体3の外周を覆う第一の筒状体5を、さらにその外周から覆うと、紙の第二筒状体6を作ることができる。
また、紙の第一筒状体5も、第二筒状体6と同様のシート状の紙から形成されており、上述した第二筒状体6と同様の方法によって作ることができるが、最内層の筒状体3のみをその外周から覆う点が第二筒状体6と異なる。この第一筒状体5と第二の筒状体6とは袋本体2を作る際に糊16(図2)によって接着されている。
また、最内層の筒状体3は、その内周面同士がヒートシールにより接着する筒状体であり、通常、不燃材料又は焼却不適材料で形成されるか又はこれを含む材料で形成されている。
たとえば、この最内層の筒状体は、ポリエチレンの筒状体により構成されている。
【0021】
また、この紙袋1では、袋本体2では、少なくとも一方の開口に、紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3とを接着する糊部12が配置されている。
この実施例では、図2で示すように、糊部12は、収容物61を充填する口部(後述)2aに配置されており、糊部12は口部2aに位置する紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3との間に介在している。また、この糊部12は糊からなり、図1で示すように袋本体2の幅方向に沿って線状に配置されている。
【0022】
上記した袋本体2の開口の一方は、収容物61を充填する口部2aを形成している。
また袋本体2の他方の開口、すなわち口部2aとは別の開口である底部2bは、袋本体2が該袋本体2の中央寄りで1回折り曲げられ、その後、折り曲げられた袋本体2に取り付けられた開封テープ7a付きの当て紙7が、折り曲げられていない袋本体2に糊15によって貼着され、これにより底部2bが封緘されている。
なお、底部2bに位置する、紙の筒状体4と最内層の筒状体3の間には両者を接着する糊などの接着材は何ら介在されておらず、両者は接着されていない。
また底部2bに位置する最内層の筒状体3の内面同士は、符号10で示すように、ヒートシールによって接着されている。なお、開封テープ7a付きの当て紙7についての詳細は、上記特許文献1等に開示されている。
【0023】
また、口部2aの袋本体2には、口部2aを封緘する封緘紙8が取り付けられている。この封緘紙8は当て紙7と同じ材質のクラフト紙からなり、封緘紙8には開封テープ7aが形成されていない。
また、封緘紙8には予めホットメルト接着剤9が塗布されており、後述するように、この封緘紙8はホットメルト接着剤9によって袋本体2に貼着される。また、符号17は、底部2bの封緘前の当て紙7と袋本体2との間に介在され両者を接着する糊又は、口部2aの封緘前の封緘紙8と袋本体2との間に介在され両者を接着する糊である。
【0024】
図3は、図2の紙袋の口部から収容物を充填して口部を封緘するためヒートシールする様子を示す概念断面図である。図3で示すように、この紙袋1では、矢印Aで示すように口部2aを広げ、矢印Bで示すように口部2aから収容物61を充填する。なお、図3の一点鎖線は、口部2aが広げられた様子を図示している。収容物61が収容された後、口部2aの、互いに対向する最内層の筒状体3の内周面同士をヒートシール(熱による接着)する。
このヒートシールによって糊部12よりも袋本体2の中央寄りに位置する最内層の筒状体3の内周面同士が接着する。なお、ヒートシールは、紙袋1(図5)の幅方向に沿って線状に形成され、紙袋1の外面から行われる。
また、図3で示すようにヒートシール部10の幅Wは約10mmである。このヒートシールは、従来のヒートシール用治具30によって行うことができる。
このヒートシールされた紙袋では、図2で示すように、口部2aと底部2bの各ヒートシール部10によって最内層の筒状体3が封緘されて内袋3aが形成され、この内袋3a内には収容物61が収容され密封状態となる。
【0025】
次に、このヒートシール部10に、図4で示すようにスコアカットによる溝11を形成する。この溝11の形成位置は、ヒートシール部10の中間であり、紙袋1の幅方向に沿って線状に形成される。
なお、スコアカットとは、刃又は突起を素材に直接又は間接的に素材に押し当てることにより該素材に溝(スリット)を形成する技術である。
このスコアカットは、ヒートシールの熱が冷却する前に行われ、最内層の筒状体3に対し第二筒状体6及び第一の筒状体5を介して行われる。
後述するように、この溝11は、紙袋1の収容物61の重力によって、ヒートシール部10を分断し、該分断により、最内層の筒状体3により形成される内袋3aと、外袋4aを形成している紙の筒状体4とを分離させる溝である。
なお、スコアカットは図4で示すように、周面に突起を具えた回転自在なロール31と、周面に突起のない回転自在なロール32とを互いに対向させてなり、ロール31を、ロール32に接する紙袋1の、第二筒状体6の外面に押し当てて溝11を形成する従前の装置によって形成する。
この溝11は、図5で示すように、口部2aと底部2bの各ヒートシール部10のうち、口部2aのヒートシール部10に形成される。また、この溝11は、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを接着する糊部12よりも袋本体2の中央寄りに形成される。
なお、上記した図4は、図3の紙袋の口部から収容物を充填した後、口部を封緘するためスコアカットによる溝を形成する様子を示す要部拡大概念断面図である。また、図5は、図1の紙袋の概念平面図で、口部を封緘する途中の、スコアカットによる溝形成直後様子を示す図である。
【0026】
次に、図4の矢印C及び図6(a)で示すように、口部のヒートシール部10から袋本体2および封緘紙8を一回折り曲げる。この折り曲げられる袋本体2及び封緘紙8は、紙袋1の糊部12を含む一端部である。この一回折り曲げによって、袋本体2には、断面逆U字形状の折り曲げ部2dが形成され、折り曲げ部2dに溝11が配置される。
また、この折り曲げ部2dの形成によって、紙袋の幅方向の両端部には、図8(a)で示すように、凹部33が形成される。
その後、口部2aの封緘紙8をホットメルト接着剤9により袋本体2に貼着すると、口部2aを封緘でき、これにより、内袋3aを覆う外袋4aが紙の筒状体4によって形成される。
なお、図6(a)は図2の要部拡大概念図であり、図6(b)は図6(a)に対応する部分を示す従来の紙袋の要部概念断面図である。図6(a)の二点鎖線は、折り曲げの基準となる折り曲げ線を図示している。
【0027】
このように収容物61を収容して口部2aが封緘された紙袋1では、外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとを分離することができる。
図7乃至図9は、図2の紙袋1の紙の筒状体4と内袋3aとを分離する動作を説明する概念図である。
この分離を行うには、図7で示すように、まず底部2bの開封テープ7aをひく。そして、底部2bを開封して底部2bの折り曲げ(1回折り曲げ)を解除する。
次に図8(a)及び図9の矢印Dで示すように、紙の筒状体4の折り曲げ部2dによって形成された一対の凹部33を持ち上げる。すると、紙の筒状体4の糊部12を含む一端部が持ち上げられる。なお、符号Gは、紙袋1を載せた台または地面である。
また、この凹部33を形成する折り曲げ部2dには、スコアカットによる溝11が設けられている。
そのため、図9で示すように凹部33が持ち上げられると、ヒートシール部10は、収容物61の重力によって、糊部12側のヒートシール部10aと、収容物61側のヒートシール部10bに分断されるとともに、この分断によって、糊部12を有し溝11に対し糊部12側のヒートシール部10aを具えた紙の筒状体4と、溝11に対し収容物61側のヒートシール部10bを具えた最内層の筒状体3からなる内袋3aとが引き離されて、内袋3aと、外袋4を形成している紙の筒状体4が分離する。
なお、紙の筒状体4は、凹部33の持ち上げにより、収容物61が充填された内袋2aの外面に沿ってひきずられて最内層の筒状体3から引き離され、上述のように最終的に紙の筒状体4と内袋3aとが分離される。
この分離を行った後の上記内袋3aは、溝11に対し収容物61側のヒートシール部10bと底部2bのヒートシール部10によって封緘されており、そのため収容物61を収容した密封状態を維持する。
【0028】
この凹部33の持ち上げによって、内袋3aと外袋4を形成している紙の筒状体4とを分離する際、糊部12とは異なる位置の溝11で、内袋3aと糊部12が付着した最内層の筒状体3とが切断され、糊部12は、内袋3aの外面に表れない。
そのため、内袋3aの外面に糊部12が付着することは可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる。
したがって、この内袋3aの外面に、糊が付着し、この糊に紙粉等の粉末状の収容物61又はほこり等の収容物61以外のもの(異物)が付着するおそれは可及的に防止される。そのため、この糊に食品である粉末状の収容物61が付着して、カビが発生し、食品衛生上好ましくない事態を引き起こすおそれも可及的に防止される。
また、内袋3aは、上記の分離動作の際、収容物61側のヒートシール部10bおよび底部2bのヒートシール部10によって封緘された状態を維持するので、内袋3aの内面に異物が収容物61に混入するおそれは可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる。
【0029】
また、この紙袋1では、紙の筒状体4と内袋3aを分離する際に、糊部12とは異なる位置の溝11で、内袋3aと、糊部12が付着した最内層の筒状体3とが切断されるので、上記分離の作業が、糊部12の接着力の強さに影響を受けることもない。そのため、従来の紙袋101に比べて上記分離の作業が極めて容易となる。
なお、糊部12は、従来の紙袋101(図11)では、接着力を可及的に小さくして上記分離の作業をしやすくするため、点状に糊を配置していたが、この発明の紙袋1では、糊部12の配置に際し、上記分離の作業を考慮する必要がないから、糊部12を、紙袋1の幅方向に沿って線状に配置される糊から構成することができる。また、糊部12を紙袋1の幅方向に沿って線状に配置された糊から構成すると、従来の紙袋101に比し最内層の筒状体3と紙の筒状体4との接着力を大きくできるので、収容物61の充填又は収容の際に、最内層の筒状体3と紙の筒状体4とが互いに位置ずれすることを可及的に防ぐことができるとともに、紙の第一筒状体5と最内層の筒状体3の間に収容物61が混入することも防止できる。
【0030】
この紙袋1では、上述のように、底部2bの開封テープ7aを引いた後、底部2bの折り曲げを解除し、凹部33を単に持ち上げるという単純な動作により、外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとを分離するから、従来のように口部2a及び底部2bのいずれの開封も開封テープ7aを引いて行う従来の紙袋51に比べ、開封テープ7aを引く動作が一つ少なくなる分、外袋4aを形成している紙の筒状体4と、内袋3aとを分離する作業が従来の紙袋に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができる。
またこの紙袋1では、紙の筒状体4と内袋3aとを分離するために、口部2aの折り曲げを解除する必要もないので、その分、紙の筒状体4と、内袋3aとを分離する作業が従来の紙袋101に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができる。
【0031】
また、この紙袋1では、従来の紙袋のように口部2a、底部2b又はその双方の封緘をミシン糸による縫合により行うものではないから、紙の筒状体4と内袋3aとを分離する際に、口部2aまたは底部2bの少なくとも一方を封緘している縫合されたミシン糸を解くことによってミシン糸が紙袋1内に充填した収容物61に混入するということはない。したがってミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができる。
また、この紙袋1は、従来の紙袋のように口部2a、底部2b又はその双方の封緘をミシン糸による縫合により行うものではないから、紙の筒状体4と内袋3aを分離する際に、口部2a、底部2bの少なくとも一方を封緘している縫合されたミシン糸を解く必要がなく、この縫合を解く手間や経験も必要がない。そのため、この紙袋1では、上記分離の作業が従来の紙袋に比し、単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができる。
【0032】
また、この紙袋1では、持ち上げられる凹部33が、口部2aのヒートシール部10から袋本体2及び封緘紙8が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部2dにより形成されている。この凹部33の内表面は袋本体2によって形成されるから、図8(b)で示すように持ち上げ箇所である封止帯112が、袋本体2に取付けられている従来の紙袋111のものに比べ、紙の筒状体4と内袋3aの分離の際、収容物61の重力が大きい場合に紙袋1が破けることは可及的に防止される。
しかも、この折り曲げ部2dの、袋本体2とともに折り曲げられる封緘紙8は、従来の紙袋111(図8(b))の、ミシン糸による縫合のための封止帯112に比べて機械的強度の強いので、従来の紙袋111に比し、持ち上げ箇所(凹部33)の機械的強度が一層強く、そのため収容物61の重力が大きい場合であっても、紙袋1が破けることは一層可及的に防止される。
また、この紙袋1のように、紙袋1の持ち上げ箇所が凹部33であると、凹部33に作業者の手・指を引っかけることができるので、封止帯112の両端を持ち上げる従来の紙袋111(図8(b))に比べて、持ち上げ動作も簡単であり、そのため上記分離の作業が従来の紙袋111に比し極めて容易であり、この分離の作業を短時間で行うことができる。
なお、図8(a)は図2の紙袋の紙の筒状体と内袋とを分離する動作を説明する図であって特に紙袋の持ち上げ箇所である凹部を示す概念斜視図であり、図8(b)は図8(a)に対応する従来の紙袋の持ち上げ箇所を示す概念斜視図である。
【0033】
以上で説明したように、この発明は、2層以上の筒状体の層を有する両端開口の袋本体2を有し、該袋本体2は、内周面同士がヒートシールにより接着して内袋を形成する最内層の筒状体3と、該最内層の筒状体3の外周に配置され、外袋を形成する紙の筒状体4とを有し、袋本体2の各開口(口部2a、底部2b)に位置する最内層の筒状体3の内周面同士をヒートシールによって接着してなるヒートシール部10を具え、収容物61を充填する口部2aには、袋本体2に、ホットメルト接着剤9が予め塗布された封緘紙8であって該ホットメルト接着剤9によって袋本体2に貼着される封緘紙8が取り付けられるとともに、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを接着する糊部12が配置され、口部2aは、袋本体2および封緘紙8が折り曲げられた後に封緘紙8のホットメルト接着剤9によって封緘され、袋本体2の開口のうち口部2aとは別の開口である底部2bには、袋本体2に、袋本体2に貼着される開封テープ7a付きの当て紙7が取り付けられ、底部2bは袋本体2が折り曲げられた後に開封テープ7a付きの当て紙7によって封緘される紙袋において、口部2aに形成されたヒートシール部10は、糊部12よりも袋本体2の中央寄りに配置され、該口部2aのヒートシール部10には、紙袋1の収容物の重力によって、口部2aのヒートシール部10を分断し、該分断により外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとを分離させる溝11がスコアカットにより形成されており、該溝11は、口部2aのヒートシール部10から袋本体2及び封緘紙8が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部2dに配置され、該折り曲げ部2dの形成により、紙袋1の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部33が形成され、底部2bの開封テープ7aが引かれた後に凹部33が持ち上げられると、外袋4aを形成している紙の筒状体4と内袋3aとが分離されるようにしたから、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを分離する作業が従来の紙袋に比し単純で、極めて容易にでき、そのため、この分離の作業を短時間で行うことができ、しかも内袋3aの内面及び外面に異物等が付着すること及びミシン糸の混入が可及的に防止された状態で、上記分離を行うことができるとともに、該分離の際に紙袋が破れることが可及的に防止される。
【0034】
さらに、この実施例の紙袋1は、その紙の筒状体4の各筒状体(5、6)が上述のように、口部2a又は底部2bを形成する端6a、6b(図1では第二筒状体6で代表して図示)が直線切りされたシート状の紙から形成されているから、この端6a、6bが段階切り加工され、収容物61の比重が異なると袋寸法を変更しなければならない紙袋や、収容物の比重が異なれば袋寸法を変更する必要があるバルブ紙袋のように、その紙袋の胴幅の寸法の変更によって、カッター刃の種類を変える必要がある紙袋に比べて、紙袋1の製造が、簡単となる。
また、紙袋1は、ひだ無しの袋(いわゆる平胴形式の紙袋)である。そのためいいかえると、ひだ有りの紙袋(ガセット形式の袋)に比べて、ヒートシール部10でのヒートシールの漏れ(抜け)は生じにくく、収容物61の漏れが可及的に防止される。
【0035】
また、この紙袋1は、最内層の筒状体3を具えた袋本体2を用いて製造される多重袋であるから、紙の筒状体4からなる紙袋の内側に、最内層の筒状体3を手作業で差し込む工程を含む従来の多重袋に比べて、この差し込む工程がない分、多重袋の製造コストを低くすることができる。
【0036】
この実施例の紙袋1では、口部2aのヒートシール部10のみにスコアカットによる溝11が形成されたものとしたが、この発明の紙袋は、袋本体の少なくとも口部2aに、紙の筒状体4と最内層の筒状体3とを接着する糊部12が配置され、溝11はこの糊部12よりも、袋本体2の中央寄りに位置する最内層の筒状体3の内周面同士をヒートシールによって接着するヒートシール部10に形成されていればよい。
【0037】
なお、この実施例の紙袋1では、紙の筒状体4を、2層の紙の筒状体5、6からなるものとして説明したが、本考案の紙袋を説明したが、紙の筒状体の層数はこれに限定されず、また、本願発明の紙袋1の最内層がヒートシールされる層から形成された紙袋であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明の紙袋は、主に食品用粉粒などクリーンルーム内にて保管し、作業性向上を目的とした分野の紙袋に適している。
【符号の説明】
【0039】
1…紙袋
2…袋本体
2a、2b…開口部
2a…口部
2b…底部
2d…折り曲げ部
3…最内層の筒状体
3a…内袋
4…紙の筒状体
4a…外袋
5…第一筒状体
6…第二筒状体
7…開封テープ付きの当て紙
7a…開封テープ
8…封緘紙
9…ホットメルト接着剤
10…ヒートシール部
11…溝
12…糊部
33…持ち上げ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の筒状体の層を有する両端開口の袋本体を有し、
該袋本体は、内周面同士がヒートシールにより接着して内袋を形成する最内層の筒状体と、該最内層の筒状体の外周に配置され、外袋を形成する紙の筒状体とを有し、
前記袋本体の各開口に位置する前記最内層の筒状体の内周面同士をヒートシールによって接着してなるヒートシール部を具え、
前記袋本体の開口のうち収容物を充填する口部には、前記袋本体に、ホットメルト接着剤が予め塗布された封緘紙であって該ホットメルト接着剤によって前記袋本体に貼着される封緘紙が取り付けられるとともに、前記紙の筒状体と前記最内層の筒状体とを接着する糊部が配置され、
前記口部は、前記袋本体および前記封緘紙が折り曲げられた後に前記封緘紙の前記ホットメルト接着剤によって封緘され、前記袋本体の開口のうち口部とは別の開口である底部には、前記袋本体に、前記袋本体に貼着される開封テープ付きの当て紙が取り付けられ、前記底部は前記袋本体が折り曲げられた後に前記開封テープ付きの当て紙によって封緘される紙袋において、
前記口部に形成されたヒートシール部は、前記糊部よりも前記袋本体の中央寄りに配置され、
該口部のヒートシール部には、前記紙袋の収容物の重力によって、前記口部のヒートシール部を分断し、該分断により前記外袋を形成している紙の筒状体と、前記内袋とを分離させる溝がスコアカットにより形成されており、
該溝は、前記口部のヒートシール部から前記袋本体および前記封緘紙が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部に配置され、
該折り曲げ部の形成によって、前記紙袋の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部が形成され、
前記底部の開封テープが引かれた後に前記凹部が持ち上げられると、前記外袋を形成している紙の筒状体と前記内袋とが分離されることを特徴とする紙袋。
【請求項2】
前記袋本体を形成する紙の筒状体の第一筒状体又は第二筒状体は、直線切りされたシート状の紙によって形成され、
前記紙袋は、ひだなしの紙袋であることを特徴とする請求項(1)に記載の紙袋。
【請求項1】
2層以上の筒状体の層を有する両端開口の袋本体を有し、
該袋本体は、内周面同士がヒートシールにより接着して内袋を形成する最内層の筒状体と、該最内層の筒状体の外周に配置され、外袋を形成する紙の筒状体とを有し、
前記袋本体の各開口に位置する前記最内層の筒状体の内周面同士をヒートシールによって接着してなるヒートシール部を具え、
前記袋本体の開口のうち収容物を充填する口部には、前記袋本体に、ホットメルト接着剤が予め塗布された封緘紙であって該ホットメルト接着剤によって前記袋本体に貼着される封緘紙が取り付けられるとともに、前記紙の筒状体と前記最内層の筒状体とを接着する糊部が配置され、
前記口部は、前記袋本体および前記封緘紙が折り曲げられた後に前記封緘紙の前記ホットメルト接着剤によって封緘され、前記袋本体の開口のうち口部とは別の開口である底部には、前記袋本体に、前記袋本体に貼着される開封テープ付きの当て紙が取り付けられ、前記底部は前記袋本体が折り曲げられた後に前記開封テープ付きの当て紙によって封緘される紙袋において、
前記口部に形成されたヒートシール部は、前記糊部よりも前記袋本体の中央寄りに配置され、
該口部のヒートシール部には、前記紙袋の収容物の重力によって、前記口部のヒートシール部を分断し、該分断により前記外袋を形成している紙の筒状体と、前記内袋とを分離させる溝がスコアカットにより形成されており、
該溝は、前記口部のヒートシール部から前記袋本体および前記封緘紙が一回折り曲げられることにより形成される断面U字形状の折り曲げ部に配置され、
該折り曲げ部の形成によって、前記紙袋の幅方向の両端部に、持ち上げられる凹部が形成され、
前記底部の開封テープが引かれた後に前記凹部が持ち上げられると、前記外袋を形成している紙の筒状体と前記内袋とが分離されることを特徴とする紙袋。
【請求項2】
前記袋本体を形成する紙の筒状体の第一筒状体又は第二筒状体は、直線切りされたシート状の紙によって形成され、
前記紙袋は、ひだなしの紙袋であることを特徴とする請求項(1)に記載の紙袋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−35903(P2012−35903A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180487(P2010−180487)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000187138)昭和パックス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000187138)昭和パックス株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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