説明

紙製積層体および紙製容器

【課題】本発明は、優れた遮光性、湿気バリア性、酸素ガスバリア性を有し、環境配慮型のリサイクル性や容器成型適性にも優れ、製造が容易で経済的な、紙層を主体とする紙製積層体およびその紙製積層体を用いた紙製容器を提供することを目的とするものである。
【解決手段】少なくとも、最外層となる樹脂層、紙基材層、金属蒸着膜層、ガスバリア性被膜層、最内層となる熱融着可能な樹脂層を順次積層してなる紙層を主体とすることを特徴とする紙製積層体およびその紙製積層体を用いた紙製容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた遮光性とバリア性を有する紙層を主体とする紙製積層体、およびその紙製積層体を用いた、特に紙製液体容器として好適に使用できる紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
牛乳、乳酸菌飲料、液体スープなどのチルド流通タイプの液体状食品や、清酒、果汁飲料、めんつゆなどの長期保存を必要とする常温流通タイプの液体状食品などに用いられる容器としては、従来からガラス容器や金属容器が使用されて来たが、最近では、紙容器も広く使用されるようになった。この紙容器において、チルド流通タイプの液体状食品に対しては、比較的に簡単なポリエチレン/紙/ポリエチレン構成などの積層材料が使われているが、常温流通タイプの液体状食品は、保存期間が長引くにつれて内容物味や香りといった官能上の品質が劣化するといった問題がある。この問題を解決するために、ガスバリヤ性と光遮断性とを兼ね備えた、例えば、ポリエチレン/紙/アルミニウム箔/ポリエチレテレフタレート/ポリエチレン構成などの積層材料が使われており、この積層材料の構成中には、アルミニウム箔などの金属箔が使用されていた。
【0003】
しかし、アルミニウム箔等の金属箔を積層した紙製液体容器積層材料を使用した紙製液体容器の使用後の廃棄物焼却時に、焼却炉のロストル(火格子)に燃え残りの金属が詰まる問題や、金属がアルミニウムの場合には、焼却時にアルミナに変化して、焼却残滓の埋め立て処分時に加湿することによって、焼却残滓中のアルミナに吸着されていた有毒なアンモニアガスが発生してくる問題、また、焼却せずにアルミニウム箔だけを分離して紙と樹脂を回収することも簡単に行い得ない。また、内容物を充填し、成形した容器を金属探知器で検査できないという問題もある。さらに、使用されるアルミニウム箔等の金属箔その厚さが5〜20μm程度と厚いことが問題となっている。最近の環境破壊の問題から、包装材料においても、産業廃棄物の処理の改善が求められるようになって来ており、紙容器積層材料の構成中にアルミニウム箔などの金属箔を用いない、湿気バリア性と酸素ガスバリア性、遮光性を有する液体状食品用の紙容器の開発が強く求められるようになった。
【0004】
そこで、アルミニウム箔に代わる遮光手段として、遮光性顔料を樹脂に練り込んだ遮光性着色樹脂層を積層する方法が取られてきた。遮光性顔料としてはカーボンブラック、グラファイト、フタロシアニン、フタロシアニングリーン、ベンガラ、二酸化チタン等が挙げられるがこの中で遮光性に優れているのはカーボンブラック、グラファイト、二酸化チタンである(特許文献1参照)。
【0005】
しかし、前記遮光性顔料を樹脂に練り込んだ遮光性着色樹脂層を積層することにより遮光性の高い容器を得ることはできるが、前記遮光性顔料は、熱伝導率の高いものが多く、遮光性に優れているカーボンブラック、グラファイト、二酸化チタンは特に熱伝導率が高い。
【0006】
このような熱伝導率の高い遮光性顔料を使用した場合、容器の成型に際し、次のような問題が認められる。この種の容器は、シール面の熱可塑性樹脂層をヒーターノズルから吹き出した熱風で加熱し溶融してシールすることにより成型されるが、筒貼りされたカートンのボトムやトップのシールは、最内面側の熱可塑性樹脂層が加熱されてシールされる。このとき、遮光性着色樹脂層に前記熱伝導率の高い遮光性顔料が使用されていると、その遮光性着色樹脂層の周囲にポリエチレン等の低融点樹脂がある場合、前記シール面の熱可塑性樹脂層を通して加熱された遮光性着色樹脂層が、その高い熱伝導により、周囲の低融点樹脂を加熱し、これにより周囲の低融点樹脂が溶融して火膨れ状態を起こす可能性があ
り、迅速な加熱シールを行わなければならない。特に、筒貼りしたゲーベルトップカートンのボトムの折り込み成型では、ボトムのシール面の熱可塑性樹脂層を加熱する時間が他のシール面に比べ長く過加熱になり易く、そのため遮光性着色樹脂層を通してその周囲の低融点樹脂が加熱されて溶融し火膨れ状態を起こしたり、また、これによりボトムを構成するカートンの一部がシール時の加圧により捻れてしまうことが危惧される。また、前記火膨れやカートンの一部に捻れが無く、所望の成型が行われたとしても、遮光性着色樹脂層を通して加熱された周囲の低融点樹脂は臭気を発生させることもある。
【0007】
そこで、上記の問題点を解決するために、遮光性とバリア性を有する紙層を主体とする紙製積層体および紙製液体容器として、例えば、少なくとも紙層と合成樹脂層とからなる積層材料を用いた液体用紙容器であって、上記積層材料の構成中に、紙層/着色層/紙層からなる光遮断性の積層構成を有し、必要に応じては、前記の紙層/着色層/紙層の積層構成の表裏の少なくともどちらか一方に、ガスバリヤ性樹脂を積層させた、材料構成中に金属層を用いないで光遮断性や、必要に応じて、ガスバリヤ性についても十分な配慮がなされて内容物の保護性が良好で、しかも、最近の環境破壊に対する産業廃棄物処理の改善の問題に対応し得る液体紙容器がで提案されている(特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、上記の液体紙容器を構成する積層材料は、アルミニウム箔等の金属箔を用いないで、遮光性とバリア性を有するものの、紙層間に着色層を設ける方法として、紙を多層抄造するとき中間層を着色する方法や、2枚の紙をエクストルージョンラミネーション法によって着色したポリエチレン樹脂などによる貼り合わせる方法や、2枚の紙の間に着色した紙または着色した合成樹脂フィルムをウエットラミネーション法またはドライラミネーション法によって貼り合わす方法などを採用して貼り合わせるために、工程が複雑となり経済的とは言えない。また、着色した紙をリサイクルされた場合は、着色剤を含むためにその再生紙の用途が限定されるといった問題がある。
【特許文献1】特許第3079816号明細書
【特許文献2】実開平5−5445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、優れた遮光性、湿気バリア性、酸素ガスバリア性を有し、環境配慮型のリサイクル性や容器成型適性にも優れ、製造が容易で経済的な、紙層を主体とする紙製積層体およびその紙製積層体を用いた紙製容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、すなわち、
請求項1に係る発明は、
少なくとも、最外層となる樹脂層、紙基材層、金属蒸着膜層、ガスバリア性被膜層、最内層となる熱融着可能な樹脂層を順次積層してなる紙層を主体とすることを特徴とする紙製積層体である。
【0011】
請求項2に係る発明は、
前記ガスバリア性被膜層が、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくともいずれか一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し加熱乾燥してなることを特徴とする請求項1記載の紙製積層体である。
【0012】
請求項3に係る発明は、
前記金属アルコキシドがテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項2記載の紙製積層体である。
【0013】
請求項4に係る発明は、
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項2または3記載の紙製積層体である。
【0014】
請求項5に係る発明は、
前記金属蒸着膜層の金属が、アルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙製積層体である。
【0015】
請求項6に係る発明は、
前記紙基材層の紙が、坪量100〜600g/m2の範囲の紙であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙製積層体である。
【0016】
請求項7に係る発明は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の紙製積層体を用いて成形されてなることを特徴とする紙製容器である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、優れた遮光性、湿気バリア性、酸素ガスバリア性を有し、環境配慮型のリサイクル性や容器成型適性にも優れ、製造が容易で経済的な、紙層を主体とする紙製積層体およびその紙製積層体を用いた紙製容器を提供することができる。
【0018】
<作用>
本発明によれば、金属蒸着膜層上に、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドまたは/およびその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜を積層してなることにより、このガスバリア性被膜層が反応性に富む無機成分を含有し、水溶性高分子との複合被膜がガスバリア性に優れることから金属蒸着膜層とガスバリア性被膜層との界面に両層の反応層を生じるか、あるいはガスバリア性被膜層が金属蒸着膜層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成されるため、高いガスバリア性、耐水性、耐湿性を有するとともに、変形に耐えられる可撓性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の紙層を主体とする紙製積層体の構成の一例を示す断面図である。図2は、本発明の紙製容器の一例を示す斜視図である。図3は、本発明の紙製容器の他の例を示す斜視図である。
【0020】
図2に示すように、本発明の紙層を主体とする紙製積層体10は、最外層となる樹脂層1、紙基材層2、金属蒸着膜層3、ガスバリア性被膜層4、最内層となる熱融着可能な樹脂層5をこの順に、順次、積層してなる構成の紙製積層体である。
【0021】
本発明で使用される最外層となる樹脂層1としては熱可塑性樹脂が用いられ、その熱可塑性樹脂としては、例えば、チグラー触媒等のマルチサイト系触媒を用いて合成された低密度ポリエチレン(LDPE)が一般的であるが、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、中密度ポリエチレン(MDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレ
ンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフレフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂など、あるいはこれらの高分子共重合体樹脂など通常包装材料として用いられる合成樹脂が使用される。
【0022】
本発明で使用される紙基材層2の紙基材としては、特に限定されず、紙製容器の形状、容量によって異なるが、保型性、自立性を有する、通常、坪量100〜600g/m2の範囲の非塗工紙、上質紙、カップ原紙が使用される。坪量が100g/m2より小さいと十分な腰および容器として必要な強度が得られない。また、坪量が100g/m2より大きいと容器に成型する際のハンドリング、容器成型適性が劣るだけでなく、資源の無駄となり経済的ではない。
【0023】
上記の紙基材層2に後述する金属蒸着層3を形成する紙基材の表面に、蒸着適性を向上する目的で目止め層を設けることもできる。目止め剤層2は、ポリエステル、アクリルポリオールから選ばれる樹脂のいずれかを主成分とする目止め剤、またはアクリル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン、ポリエステル、メラミン、硝化綿から選ばれる樹脂の2種以上を混合した目止め剤、特にアクリルポリオール樹脂を主成分とする目止め剤、または、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、およびウレタン樹脂を混合した目止め剤、あるいはポリエステル樹脂、メラミン樹脂、および硝化綿樹脂を混合した目止め剤などを用いることができる。
【0024】
目止め層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、ダイレクトコート、ナイフコート、エアナイフコート、キスロールコート、ディップコート、バーコート、キャストコートなどの周知の方法により紙基材に形成される。その塗布量は2〜10g/m2とすることが好ましい。塗布量がこれより少ないとコーティング時に平滑な層が形成できず、極端な場合にはピンホールが発生するという問題があり、他方、上記より多いと目止め層自体の強度を保つ(層の凝集破壊やクラックの発生等を防止する)必要が生じる。
【0025】
また、この紙基材層2の最外層側には、通常、印刷層を形成する。この印刷層は、包装体などとして実用的に用いるために形成されるものであり、公知のウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系などの従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料、可塑剤、乾燥剤、安定剤などが添加されたインキにより構成される層であり、文字、絵柄、図柄、数字、記号などが形成されている。印刷層の形成方法としては、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法や、ロールコート、ナイフエッジコート、グラビアコートなどの周知の塗布方式を用いることができる。厚さは、通常0.1〜2.0μm程度である。
【0026】
本発明で使用される金属蒸着膜層3の金属としては、アルミニウムおよびチタンが挙げられるが、コスト面から特にアルミニウムが望ましい。
【0027】
紙基材層2上に金属蒸着膜層3を設ける方法は、特に限定するものではないが、金属蒸着膜層3は紙基材層2の全面を被覆し、軽いのが望ましいので、できるだけ薄い方が好ましい。そのような理由から、上記層の形成法は、特に真空蒸着法が好ましく、一層に限らず、多層とすることができる。
【0028】
金属の真空蒸着、例えば、アルミニウム等の金属の真空蒸着は、高純度のアルミニウム金属を、高周波誘導加熱、直接通電加熱、エレクトロンビーム加熱等により、通常1300〜1450℃に加熱蒸発させ、10-1〜10-2Pa程度の真空度で行われる。真空蒸着の前に、予め被蒸着物の表面にコロナ放電処理等の密着性向上手段を講じておくこともで
きる。蒸着により形成されるアルミニウム金属膜の厚さは、20〜200nmとするのが好ましい。厚さが20nmより薄いと十分なバリア性、遮光性が得られない。また、厚さが200nmより厚いとそれ以上のバリア性、遮光性が得られないので経済的ではない。
【0029】
本発明で使用されるガスバリア性被膜層4としては、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよび/またはの加水分解物、または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤からなる。水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を金属蒸着膜層3上にコーティング、加熱乾燥し、形成したものである。コーティング剤に含まれる各成分について以下に詳述する。
【0030】
本発明でコーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる、特にポリビニルアルコール(PVA)を本発明のガスバ紙製積層体のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。
【0031】
また、塩化錫は塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、あるいはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0032】
さらに、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC254〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C373〕などの一般式、
M(OR)n
(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属,R:CH3、C25等のアルキル基)で表せるものである。なかでもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0033】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0034】
例えば、コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0035】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。被膜の厚さはコーティング剤の種類によって異なるが、乾燥後の厚さが約0.01〜100μmの範囲であればよいが、50μm以上では、膜にクラックが生じやすくなるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。
【0036】
本発明で使用される最内層となる熱融着可能な樹脂層5としては、紙製容器などを形成するために接着層として積層されるシーラント層であり、熱によって溶融し相互に融着し得るものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン、
中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレ、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマ−樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ−、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ−ル酸、イタコン酸、その他等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂その他等の樹脂を使用することができる。厚さは、目的に応じて適宜決められるが、一般的には15〜40μmの範囲である。
【0037】
特に、紙製積層材料を紙製容器として、リモネンなど内容物が含有している薬効成分や香料成分の包装材料の内面シーラント層への吸着を抑制・防止する目的で低吸着性シーラント材を用いることができる。このような低吸着性シーラント材としては、ポリエステル系シーラント材やエチレン−ビニルアルコール(EVOH)共重合樹脂シーラント材が好適に使用することができる。
【0038】
上記のポリエステル系シーラント材のポリエステル系樹脂として、テレフタル酸を主体とするジカルボン酸成分、エチレングリコールを主体とするグリコール成分および3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合したポリエステル樹脂(A)と、前記ポリエステル樹脂(A)の融点より低い融点を有し、分岐鎖を有するポリエステル樹脂(B)とを含有するポリエステル樹脂組成物である。
【0039】
また、ポリエステル系樹脂が、テレフタル酸を主体とする芳香族ジカルボン酸、エチレングリコールを主体とするグリコール成分からなり、かつ全酸成分もしくは全グリコール成分に対し3官能以上のポリカルボン酸又はポリオールを含有する分岐鎖を有するポリエステル樹脂(A)と、テレフタル酸を主体とする芳香族ジカルボン酸、エチレングリコールを主体とするグリコール成分からなる分岐鎖を有しないポリエステル樹脂(B)を混合してなるポリエステル樹脂混合物さらにエチレン系重合体が含有されているポリエステル樹脂組成物である。
【0040】
上記の紙製積層材料を積層する方法としては、特に限定されず、通常、包装材料をラミネートする周知の方法によって積層することができるが、押出しラミネーション法が好ましい。
【0041】
上記の紙製容器積層材料を用いて成型された紙製容器は、特に、紙製液体容器として好適に使用されるものである。例えば、図2に示すブリック型(レンガ型)または図3に示すゲーブルトップ型(屋根型)の紙製液体容器であれば、上記の紙製容器積層材料を打ち抜いてカートンブランクを形成し、従来のこの種の紙製液体容器の成形工程にしたがって成形される。但し、本発明の紙製容器、すなわち紙製液体容器に形状にあっては特に限定されるものではない。
【0042】
本発明の紙製積層体の最外層の樹脂層1に使用する樹脂材料として、最内面の樹脂層2に使用するシーラント材料とお互い熱融着性を有する熱可塑性樹脂を選択することにより紙製積層体の最外面と最内面とがヒートシール可能となるために取りうる容器形状の範囲が広がり広範囲の用途に適応できる紙製容器が得られる。
【0043】
さらに、前記容器材料の場合、従来、市場で大量に販売されている紙製液体容器用の容器材料と全厚・最外面側の熱可塑性樹脂層厚・最内面側の熱可塑性樹脂層厚等を同じに合わせて作ることができる。そうすることにより、折り曲げ罫線押し圧加工、サイドシール加工等を既存の製造設備を使い、同じ操業条件で効率良く加工製造することができる。さらに、紙製液体容器用の充填機において、製函における折れ罫線での折り曲げ加工、樹脂
層の加熱圧着加工等が従来の紙製液体容器と同じ設備、同じ操業条件で行うことができ、品種切り替え時間、条件調整が大幅に節約でき、経済的である。
【0044】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0045】
紙基材として、坪量200g/m2のカップ原紙を用い、その片面に真空蒸着法によりアルミニウム金属蒸着層を形成し、その反対面に熱溶融押出しコーティング法により最外面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層した。さらに、上記アルミニウム金属蒸着層の上に下記に示すガスバリア性被膜溶液をグラビアコート法により塗布乾燥し、厚さ0.4μmのガスバリア性被膜層を形成した。次に、そのガスバリア性被膜層上に熱溶融押出しコーティング法により最内面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層し、本発明の紙製積層体を作成した。
【0046】
<ガスバリア性被膜溶液の調整>
下記に示す(1)液と(2)液を配合比(wt%)で6/4に混合したものを、ガスバリア性被膜溶液として用いた。
(1)液:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO2換算)の加水分解溶液。
(2)液:ポリビニルアルコールの3wt%水/イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール重量比で90:10)。
【実施例2】
【0047】
実施例1で得られた本発明の紙製積層体とその性能を比較するための比較例として、
紙基材として、坪量200g/m2のカップ原紙を用い、その片面に熱溶融押出しコーティング法により最外面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層し、その反対面に厚さ20μmのアルミニウム箔を熱溶融押出しコーティング法により厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂により積層した。さらに、上記アルミニウム箔の上に熱溶融押出しコーティング法により最内面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層し、紙製積層体を作成した。
【実施例3】
【0048】
実施例1で得られた本発明の紙製積層体とその性能を比較するための比較例として、
紙基材として、坪量200g/m2のカップ原紙を用い、その片面に真空蒸着法によりアルミニウム金属蒸着層を形成し、その反対面に熱溶融押出しコーティング法により最外面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層した。さらに、上記アルミニウム金属蒸着層の上に最内面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層し、紙製積層体を作成した。
【実施例4】
【0049】
紙基材として、坪量200g/m2のカップ原紙を用い、その片面に熱溶融押出しコーティング法により最外面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層し、その反対面に実施例1と同様の厚さ0.4μmのガスバリア性被膜層を形成した。さらに、上記ガスバリア性被膜層の上に熱溶融押出しコーティング法により最内面となる厚さ20μmの低密度ポリエチレン(LDPE)層を積層し、紙製積層体を作成した。
【0050】
実施例1〜4で得られた紙製積層体について下記の評価方法に基づいて透湿度、酸素透過度および全光線透過率を測定して評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
<透湿度、酸素透過度および全光線透過率の測定方法>
40℃・90%RHにおける透湿度、25℃・65%RHにおける酸素透過度をそれぞれMOCON法(同圧法)により測定した。また、全光線透過率についてはJIS K 7105に準拠して測定した。
【0052】
【表1】

【0053】
次に、加熱殺菌したオレンジ果汁を実施例1〜4で得られた紙製積層体を用い図4に示すブリック型紙製容器に無菌的に充填した包装体を作成し、これを室内に1ケ月間放置して内容物保存テストを実施した。充填直後および保存後の還元型アスコルビン酸量、および重量変化を測定して内容物保存性を評価した。その結果を表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表1より、実施例1で得られた本発明の紙製積層体は、本発明の紙製積層体と性能を比較するための比較例としての実施例3、4で得られた紙製積層体と比較して、透湿度、酸素透過度、光線透過率の値から、湿気バリア性、酸素ガスバリア性のいずれも優れる、かつ遮光性を有することがわかる。なお、比較例としての実施例2の紙製積層体は、湿気バリア性、酸素バリア性、遮光性は優れているもののアルミニウム箔を使用している構成であり、本発明の主旨を逸脱するものである。
【0056】
また、表2より、実施例1で得られた本発明の紙製積層体を用いて成形された紙製容器は、比較例としての実施例3、4で得られた紙製積層体を用いて成形された紙製容器と比較して、充填直後と保存後の内容物のオレンジ果汁に含有する還元型アスコルビン酸量の変化が少なくない。このことは、本発明の紙製容器積層材料が湿気バリア性、酸素バリア性、遮光性は優れているものであるから、長期にわたって内容物の変質を抑制し、それらのうま味、香りなどの機能や性質を保持することができるものである。
【0057】
本発明の紙製積層材料および紙製容器は、金属蒸着膜層上に、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドまたは/およびその加水分解物または(b)塩化錫の少なくとも一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し、加熱乾燥してなるガスバリア性被膜を積層してなることにより、このガスバリア性被膜層が反応性に富む無機成分を含有し、水溶性高分子との複合被膜がガスバリア性に優れることから金属蒸着膜層とガスバリア性被膜層との界面に両層の反応層を生じるか、あるいはガスバリア性被膜層が金属蒸着膜層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成されるため、高い酸素ガスバリア性、耐水性、耐湿性を有するとともに、変形に耐えられる可撓性を有するものであり、環境配慮型のリサイクル性や、容器成型適性にも優れ、製造が容易で経済的な紙製積層体およびその紙製積層体を用いた紙製容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の紙製積層体の構成の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の紙製容器の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の紙製容器の他の例を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例における内容物保存テスト用に作成して使用した紙製容器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
10・・・紙製積層体
1・・・最外層樹脂層
2・・・紙基材層
3・・・金属蒸着層
4・・・ガスバリア性被膜層
5・・・最内層樹脂層(シーラント層)
20、30・・・紙製容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最外層となる樹脂層、紙基材層、金属蒸着膜層、ガスバリア性被膜層、最内層となる熱融着可能な樹脂層を順次積層してなる紙層を主体とすることを特徴とする紙製積層体。
【請求項2】
前記ガスバリア性被膜層が、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシドおよび/またはその加水分解物、または(b)塩化錫の少なくともいずれか一方を含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を塗布し加熱乾燥してなることを特徴とする請求項1記載の紙製積層体。
【請求項3】
前記金属アルコキシドがテトラエトキシシランまたはトリイソプロポキシアルミニウム、あるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項2記載の紙製積層体。
【請求項4】
前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項2または3記載の紙製積層体。
【請求項5】
前記金属蒸着膜層の金属が、アルミニウムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紙製積層体。
【請求項6】
前記紙基材層の紙が、坪量100〜600g/m2の範囲の紙であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の紙製積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の紙製積層体を用いて成形されてなることを特徴とする紙製容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−256198(P2006−256198A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78707(P2005−78707)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】