説明

紛粒体タンク、及びこれを使用した湿潤紛粒体製造装置

【課題】紛粒体の「圧密現象」を全く発生させないようにすることができて、紛粒体の排出を効率良く行えるようにした紛粒体タンク、及びこのような紛粒体タンクを備えた湿潤紛粒体製造装置を提供すること。
【解決手段】タンク本体10の底壁11及びこれに連なる壁12・13の内面に沿って同期しながら無限駆動される少なくとも2本の搬送ベルト20と、これらの搬送ベルト20に所定間隔をおいて連結されて移動される複数の掻きバー30とを備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紛体または粒体を大量に収納するタンク、及びこれを使用した湿潤紛粒体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばセメントや各種化学材料等の紛体、または穀物や各種化学材料等の粒体は、流体液体のような性質を有しているから、保管や運搬を行う場合に所定のタンク内に大量に収納される。そして、これらの紛粒体は、そのタンクとともに現場や工場に運ばれて、その用途に応じた排出がなされる。以上のような紛粒体は、「液体」のような性質を有してはいても、当然本来の「固体」としての性質も有しているから、タンク内に収納したとき等には種々な問題を引き起こす。
【0003】
紛粒体をタンク内に収納するには、タンクの上側に設けた投入口から文字通り「投入」するのであり、これを排出するにはタンクの下側に設けた排出口から排出することになるのが一般的であるが、そのようにしているのは、「固体」としての性質を有する紛粒体に対して「重力」を利用することにより無理なく作業が行えるからである。しかしながら、タンク内に紛粒体が満杯に収納されたときには、その重力が下側にある排出口付近にも大きく掛かることになるから、紛粒体自体が排出口付近でも互いに圧着し合って自然落下できない現象(一般的には「圧密現象」と呼ばれている)が生じ、そのままでは効率的に排出できなくなってしまうことがあった。
【0004】
また、この種の紛粒体タンクでは、これを何度も使用していると、内壁に紛粒体自体が固まってこびり付いたり、内壁が傷んで紛粒体の停滞し易い部分ができたりして、「最後の一粒」まで排出することが困難となるのであり、通常は、大きなタンクであればある程、毎回の清掃が欠かせないものとなっている。
【0005】
以上のことは、配合飼料を畜舎に送るタンク(あるいはこれを備えた車や装置)、化学材料を製品製造工場に送るためのタンクローリ、そして土壌改良を行うためのセメント粉体を収納するタンクにおいても言えることであり、紛粒体の排出を確実に行えるような「タンク」が求められているのである。
【0006】
例えば、セメントを収納して運搬するものとしては、特許文献1に示されているような「固化材供給装置」がある。
【0007】
【特許文献1】特許第3661716号掲載公報、特許請求の範囲、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1には、「湿潤固化材を使用して表層地盤改良工事を行うのに、地盤改良工個所の近傍で湿潤固化材が製造できて、かつ湿潤固化材をフレコンに供給するまでを短時間で行うことができる移動式の固化材供給装置を提供すること」を目的としてなされた「固化材供給装置」が記載されている。
【0009】
この特許文献1に記載さている「固化材供給装置」は、図9にも示すように、例えば「化材製造機械と固化材供給機械からなる固化材製造装置が運搬車両に積載されている固化材供給装置であって、該固化材供給機械は、固化材製造機械の混合機から搬出された湿潤固化材を散布用容器に供給する供給機からなることを特徴とする固化材供給装置」(請求項1)という構成を有したものである。また、この特許文献1に記載さている「固化材供給装置」では、請求項3にも記載されているように、「固化材抜き出し部は、スクリュ−機構のスクリュ−コンベアを有し、該スクリュ−コンベアの回転軸は混合機に連通している」ものである。
【0010】
この特許文献1に示されている「スクリューコンベア」を使用すると、当該文献1の段落0010に記載されているように、「固化材タンク4内のセメント粉体が固化材抜き出し部5のスクリュ−コンベア5Aの作動によりスクリュ−回転軸に連通した混合機7内へ搬送される」のであるが、このスクリューコンベアは、セメント粉体を言わば強制的に送るものであるから、送り量を余程調整しないと、上述した「圧密現象」を却って促進してしまうことになる。
【0011】
そこで、本発明者等は、紛粒体の特に「排出」を効率良く行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、紛粒体の「圧密現象」を全く発生させないようにすることができて、紛粒体の排出を効率良く行えるようにした紛粒体タンク、及びこのような紛粒体タンクを備えた湿潤紛粒体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「タンク本体10内に大量に収納された粉体または粒体を必要量づつ排出するようにした紛粒体タンク100であって、
タンク本体10の底壁11及びこれに連なる壁12・13の内面に沿って同期しながら無限駆動される少なくとも2本の搬送ベルト20と、これらの搬送ベルト20に所定間隔をおいて連結されて移動される複数の掻きバー30とを備えたことを特徴とする紛粒体タンク100」
である。
【0014】
すなわち、この請求項1に係る紛粒体タンク100は、タンク本体10内に大量に収納された粉体または粒体を、例えば排出口15から必要量づつ排出するようにしたものであり、タンク本体10の底壁11及びこれに連なる壁12・13の内面に沿った搬送ベルト20を備えているものである。勿論、この紛粒体タンク100は、図9に示したような「スクリューコンベア」を内部に有してはいないものである。
【0015】
この紛粒体タンク100は、図1〜図5に示すように、タンク本体10内に複数の搬送ベルト20を配置したものであるが、後述する最良形態では、図4に示すように、タンク本体10の内部両側にそれぞれ配置した2本のものとしてある。また、これら各搬送ベルト20は、最良形態の場合、所謂「チェーンベルト」として構成してあり、「輪」として構成することにより、両者は同期させて無限駆動されるものである。勿論、これらの搬送ベルト20は、必要に応じて本数を増加してもよいが、1つの駆動源により同期させて駆動するために少なくとも2本は必要なものである。
【0016】
また、これらの搬送ベルト20は、図3にも示すように、タンク本体10を構成している左右の側壁14を除いた、底壁11、前壁12、後壁13、及び天井18の各内面に近接した状態で配置されるものであり、そのようにするために、各駆動軸21や従動軸22を左右の側壁14に水平状態となるように取り付けてある。勿論、各駆動軸21は、当該タンク本体10の外側に配置した駆動モータ(図示しない)によって回転駆動されるものであり、従動軸22は搬送ベルト20の動きに連れて回転し、搬送ベルト20の位置を支持するものである。
【0017】
以上のようにした結果、各搬送ベルト20の全ての部分は、左右の側壁14を除いた、底壁11、前壁12、後壁13、及び天井18の各内面に近接した状態で無限回転駆動されるものである。
【0018】
これらの搬送ベルト20には、複数の掻きバー30が、図3及び図5に示すように、所定間隔をおいて連結してあり、底壁11、前後壁12・13、及び天井18に対して平行でかつ搬送方向と直角に移動されたり、あるいは、図6に示すように、排出口15に対して斜めに移動される。これらの掻きバー30は、図5に示すように、その先端面が、左右の側壁14を除いた、底壁11、前壁12、及び後壁13の各内面に接触しながら搬送ベルト20によって搬送されるものである。
【0019】
以上の結果、各搬送ベルト20及び掻きバー30によって、長四角形または菱形の開口が形成されるのであり、この開口を通して紛粒体が自由に落下することになる。つまり、当該紛粒体タンク100内に紛粒体を投入する場合には、天井18下の部分にある開口からタンク本体10内に紛粒体が収納されることになるのであり、底壁11の直上にある搬送ベルト20の開口からは、図5の(2)に示すように、紛粒体が底壁11上に供給されることになるのである。
【0020】
さて、タンク本体10内に収納された紛粒体を、タンク本体10に形成してある排出口15から排出する場合について詳述すると、当該紛粒体タンク100では、底壁11の直上にある各搬送ベルト20が、図3中の白抜き矢印にて示す方向に駆動される。このとき、各掻きバー30は、図5の(2)に示すように、その進行方向の前面にて底壁11上に落下している紛粒体を押すことになり、これを排出口15上に向けて送ることになる。
【0021】
排出口15が開放されていれば、各掻きバー30によって押されてきた紛粒体はこの排出口15内に落下することになるのであるが、排出口15が開放されていなければ、そのまま後壁13に沿って押される。これらいずれの場合も、移動されるべき紛粒体の量は、各掻きバー30の厚さと間隔によって形成される空間分だけであるので、各搬送ベルト20を駆動しているモータにはそれ程負荷は掛からず、従来の例えばスクリューコンベアに比較すれば小さい電力で作動させることができる。また、底壁11上の紛粒体に「圧密現象」による固まりがあったとしても、これを切りながら各掻きバー30が進行するので、何らの問題も生じない。
【0022】
つまり、この紛粒体タンク100においては、各搬送ベルト20及び掻きバー30と、タンク本体10を構成している底壁11、前壁12、及び後壁13との間に形成される僅かな空間内にある紛粒体のみが移動されるのであり、当該紛粒体タンク100内において「圧密現象」を発生させることはないのである。このため、排出口15からは必要に応じた量の紛粒体を何らの制限も受けることなく排出することができるのである。そして、底壁11の直上に搬送ベルト20や掻きバー30が常に位置することになるから、紛粒体の「最後の一粒」まで排出が安定的になされ、各掻きバー30の先端を底壁11を代表とする内壁に接触させていることから、内壁に紛粒体がこびり付くことが少なくなっている。
【0023】
勿論、以上のことは、紛粒体が穀物であってもセメントであっても言えることであり、当該紛粒体タンク100は、全ての紛粒体に対して有効なものとなっている。また、この紛粒体タンク100は、スクリューコンベアを使用する場合に比較して、消費電力を小さくすることもできる。
【0024】
従って、この請求項1に係る紛粒体タンク100は、紛粒体の「圧密現象」を全く発生させないようにすることができて、紛粒体の排出を効率良く行えるものとなっているのである。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の紛粒体タンク100について、
「タンク本体10の底壁11に形成した排出口15に定量ポンプ40を設けて、前記粉体または粒体を定量づつ排出するようにしたこと」
である。
【0026】
すなわち、この請求項2の紛粒体タンク100では、図3に示すように、タンク本体10の底壁11に形成した排出口15に定量ポンプ40を設けたものであり、この定量ポンプ40によって紛粒体タンク100からの紛粒体の排出を定量的に行えるようにしたものである。
【0027】
定量ポンプ40としては、種々な態様のものが考えられるが、後述する最良形態では、紛粒体として「セメント」を採用しているため、図7に示すようなものを採用している。この定量ポンプ40は、排出口15に連なる部屋内に図示しないモータによって回転される複数のブレード42を備えたものであり、各ブレード42間に形成された空間内に紛粒体を受け取り、受け取った分の紛粒体を下方の排出口41から排出するようにしたものである。勿論、この定量ポンプ40は、スクリューコンベアであってもよいものである。
【0028】
従って、この請求項2に係る紛粒体タンク100は、上記請求項1のそれと同様な機能を発揮する他、紛粒体の排出を定量的に行えるのである。
【0029】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の紛粒体タンク100について、
「タンク本体10の底壁11以外の内壁について、全てを底壁11に対して垂直に立設させたこと」
である。
【0030】
一般に、この種の紛粒体タンクでは、底壁に対して立ち上がっている側壁を斜めにして、紛粒体が側壁から底壁まで完全に滑り落ちるようにしてあるが、そのようにしたときには、側壁の下側に「斜め」にしたことによるデッドスペースができる。
【0031】
この点、本発明に係る紛粒体タンク100では、側壁に沿って搬送ベルト20や掻きバー30が移動するから、紛粒体を滑り落ちるようにするための傾斜を形成する必要はない。このため、この紛粒体タンク100では、タンク本体10の底壁11以外の内壁について、全てを底壁11に対して垂直に立設させて、従来であれば必要悪であったデッドスペースが完全になくなり、紛粒体の収納をより多く行えるものとなっているのである。
【0032】
勿論、この紛粒体タンク100は、デッドスペースが少ないものとなっているから、これを図1に示すような湿潤紛粒体製造装置200に搭載したときにもデッドスペースを少なくすることができるのであり、しかも、重量物となり得る当該紛粒体タンク100の前壁12、後壁13、及び側壁14の大部分を直接装置本体に支持させることができるから、車への搭載を安定的に行える。
【0033】
従って、この請求項3に係る紛粒体タンク100は、上記請求項1または請求項2のそれと同様な機能を発揮する他、紛粒体の収納をより効率的に行え、当該紛粒体タンク100の車への搭載を確実なものとし得るのである。
【0034】
そして、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、
「請求項1〜請求項3のいずれかに記載の紛粒体タンク100を備えて、この紛粒体タンク100からのセメント粉体と水とを混合して地盤改良用の湿潤セメントを現場において製造することができるようにした湿潤紛粒体製造装置200」
である。
【0035】
すなわち、この湿潤紛粒体製造装置200は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の紛粒体タンク100を備えたものであり、この紛粒体タンク100として「セメント粉体」を収納するものとしたものである。
【0036】
そして、この湿潤紛粒体製造装置200は、図1にも示すように、所謂タンクローリー車として構成して水槽130をも搭載したものであり、この水槽130の水と紛粒体タンク100のセメント粉体とを施工現場に同時に運搬できることは勿論、これらの水とセメント粉体とを当該湿潤紛粒体製造装置200上にて混合することにより、土壌改良材としての湿潤セメントを現場において形成できるのである。また、この湿潤紛粒体製造装置200は、現地設置型のものとしても構成できるものであり、この場合も、土壌改良材としての湿潤セメントを現場において形成できるのである。
【0037】
従って、この請求項4の湿潤紛粒体製造装置200は、これに搭載してある紛粒体タンク100について上記請求項1〜請求項3のいずれかの発明と同様な機能を発揮することは当然として、水とセメント粉体とを施工現場に同時に運搬できたり、施工現場に直接設置できることは勿論、これらの水とセメント粉体とを当該湿潤紛粒体製造装置200上にて混合することにより、土壌改良材としての湿潤セメントを現場において形成できるものとなっているのである。
【発明の効果】
【0038】
以上、説明した通り、本発明においては、
「タンク本体10内に大量に収納された粉体または粒体を必要量づつ排出するようにした紛粒体タンク100であって、
タンク本体10の底壁11及びこれに連なる壁12・13の内面に沿って同期しながら無限駆動される少なくとも2本の搬送ベルト20と、これらの搬送ベルト20に所定間隔をおいて連結されて移動される複数の掻きバー30とを備えたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、紛粒体の「圧密現象」を全く発生させないようにすることができて、紛粒体の排出を効率良く行える紛粒体タンク100を提供することができるのである。
【0039】
また、請求項4の発明においては、
「請求項1〜請求項3のいずれかに記載の紛粒体タンク100を備えて、この紛粒体タンク100からのセメント粉体と水とを混合して地盤改良用の湿潤セメントを現場において製造することができるようにした湿潤紛粒体製造装置200」
に構成上の特徴があり、これにより、水とセメント粉体とを施工現場に同時に運搬できたり、施工現場に直接設置できることは勿論、これらの水とセメント粉体とを当該湿潤紛粒体製造装置200上にて混合することにより、土壌改良材としての湿潤セメントを現場において形成することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
次に、上記のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した最良の形態に係る紛粒体タンク100、及びこれを搭載した湿潤紛粒体製造装置200について説明すると、図1及び図2には、本発明に係る紛粒体タンク100を搭載した、本発明に係る湿潤紛粒体製造装置200が示してある。
【0041】
まず、紛粒体タンク100を搭載した湿潤紛粒体製造装置200について説明すると、この湿潤紛粒体製造装置200は、図1及び図2に示したように、トレーラーの上に、前方から、水槽130、紛粒体タンク100、及びミキサー120が搭載してあり、このミキサー120では、水槽130からの水と、紛粒体タンク100からのセメント粉体とを混合して、土壌改良材として使用される湿潤セメントを形成するものである。
【0042】
また、水槽130からの水はパイプを通してミキサー120に送られるが、紛粒体タンク100からのセメント粉体は、タンク本体10の底部の排出口15に接続した定量ポンプ40からコンベア110を介してミキサー120に送られる。ミキサー120の具体的な構造は、スクリューコンベアであるが、この湿潤紛粒体製造装置200においての使用は、タンク本体10の外部において、定量ポンプ40から落下してきたセメント粉体をミキサー120上まで送り、当該ミキサー120内に落下させるようにしているから、当該コンベア110によってセメント粉体の「圧密現象」は生じないものとなっている。
【0043】
以上の湿潤紛粒体製造装置200における各部分の配管や配線状況は、図8に示した系統図のようになっており、それぞれ図示したモータや配管で水やセメント粉体の供給制御がなされ、最終的にミキサー120において、土壌改良に使用する「湿潤セメント」が形成される。形成された湿潤セメントは、ミキサー120の側部から直接施工現場に投下されるか、袋詰めされてからスタビライザー等の機器を使用して土中に混入される。
【0044】
なお、紛粒体タンク100や水槽130を搭載した当該湿潤紛粒体製造装置200は、運転者によって施工現場まで移動されることは当然として、各部分への電力供給は、図8の左下に示した発電機からなされ、同制御盤にて全体の作動が制御される。
【0045】
紛粒体タンク100は、図1〜図4に示すような全体形状のものであり、そのタンク本体10は、底壁11を除いて完全な四角形状の箱としてある。つまり、前壁12、後壁13、及び左右の側壁14は、底壁11に対して垂直に立ち上がったものしてあり、デッドスペースができるだけ発生しないようにしてある。タンク本体10の底壁11については、図3に示したように、その後方部分が斜めに上昇するようにしてあるが、これは、当該タンク本体10の排出口15に定量ポンプ40を接続するための空間を確保するためである。
【0046】
なお、この紛粒体タンク100においては、図2〜図4に示したように、その天井18の上面にバッグフィルタ16が設けてあり、このバッグフィルタ16によって、タンク本体10内にセメント粉体を投入する際などに発生する粉塵を除去できるようにしてある。勿論、このタンク本体10の上部側面には、図1及び図2に示したように、エアによって給送されてくる紛粒体を内部に投入するためのパイプが接続してあり、このパイプを通してタンク本体10内への紛粒体の供給がなされる。
【0047】
勿論、このタンク本体10の天井18には、図3に示したように、点検窓17が設けてあり、この点検窓17から内部のセメント粉体の量や状態が文字通り点検できるようにしてある。
【0048】
タンク本体10内には、図3及び図4に示したように、湿潤紛粒体製造装置200の進行方向に無限駆動される2本の搬送ベルト20が配置してある。これらの搬送ベルト20は、多数のチェーンブロックを連結した、所謂チェーンベルトであり、タンク本体10内に配置した駆動軸21及び従動軸22に掛装されていて、それぞれは「輪」になっている。つまり、各搬送ベルト20は、駆動軸21がタンク本体10外のモータによって駆動されると、当該紛粒体タンク100を搭載した湿潤紛粒体製造装置200の進行方向に、キャタピラのように同期しながら無限駆動されるのである。
【0049】
各搬送ベルト20が無限駆動する際に重要なことは、各駆動軸21及び従動軸22がタンク本体10の内壁に近接した状態に設けてあって、その結果、搬送ベルト20も図3及び図5に示した程度に、タンク本体10の内壁に近接した状態で無限駆動されることである。
【0050】
そして、各搬送ベルト20には、図5に示したように、多数の掻きバー30が取り付けてあり、これらの掻きバー30は、湿潤紛粒体製造装置200の進行方向に対して直角に配置してある。各掻きバー30の端面は、各従動軸22部分以外はタンク本体10の内面に接触するようにしてあり、タンク本体10の内面直近にある紛粒体(本最良形態ではセメント粉体)のみを掻き取れるようになっている。
【0051】
また、各搬送ベルト20に取り付けた多数の掻きバー30については、図6に示したように、その搬送方向に対して斜めに配置することもできる。このようにした場合には、各掻きバー30の前端面と排出口15の端部との交差部分が、各搬送ベルト20による搬送に伴って一方の端から他方の端へと順次移動することになるから、紛粒体の排出口15内への投入が順に行われることになるのである。つまり、このように掻きバー30を斜めにすれば、紛粒体が一度にドサッと排出口15内に落ちることがないのである。
【0052】
なお、この掻きバー30については、搬送ベルト20を構成している各チェーンブロックに対して自由に移動できるように、つまり例えば「ベーンポンプ」の「ベーン」のようにすることも可能である。このようにしておけば、底壁11上になるときには、その先端部が底壁11上に直接接触することになって紛粒体の掻き取りが確実になり、それ以外の部分ではチェーンブロックに対して自由に出入りできて必要以上の掻き取りをさせなくても済むからである。そして、底壁11上の紛粒体の掻き取りだけが確実になされれば、当該紛粒体タンク100からの紛粒体の排出は十分だからである。
【0053】
また、この紛粒体タンク100においては、図1及び図3に示したように、タンク本体10の底壁11に形成した排出口15に定量ポンプ40が設けてある。この定量ポンプ40としては、例えばスクリューコンベアのような態様のものも考えられるが、本最良形態では、紛粒体として「セメント」を採用しているため、図7に示したようなものを採用している。
【0054】
この定量ポンプ40は、排出口15に連なる部屋内に図示しないモータによって回転される複数のブレード42を備えたものであり、各ブレード42間に形成された空間内に紛粒体を受け取り、受け取った分の紛粒体を下方の排出口41から排出するようにしたものである。これにより、この紛粒体タンク100は、その定量ポンプ40によって紛粒体の排出を定量的に行えるのである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように構成した紛粒体タンク100は、上述したような湿潤セメントを形成するためのものだけでなく、家畜の飼料を運搬する車両にも適用することができるだけでなく、化学工業用の原料を運搬する車両にも適用することができるのである。
【0056】
つまり、この紛粒体タンク100は、紛粒体の強制搬送時に発生する「圧密現象」を確実に防止することができるのであるから、畜産業や化学工業において使用されているタンクにも採用し得るものであり、非常に価値の高いものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る紛粒体タンクを搭載した湿潤紛粒体製造装置の側面図である。
【図2】同湿潤紛粒体製造装置の平面図である。
【図3】湿潤紛粒体製造装置に搭載してある本発明に係る紛粒体タンクの拡大断面図である。
【図4】同紛粒体タンクの平面図である。
【図5】各搬送ベルトに対する掻きバーの接続状態を示すもので、(1)は底壁に当接した掻きバーの一部を中心にしてみた紛粒体タンクの部分断面図、(2)は(1)中の搬送ベルトに沿ってみた部分断面図、(3)は複数の掻きバーが所定間隔をおいて搬送ベルトに接続されている状態の部分平面図である。
【図6】各搬送ベルトに対して斜めに接続した掻きバーを示すもので、複数の掻きバーが所定間隔をおいて搬送ベルトに接続されている状態の部分平面図である。
【図7】タンク本体の排出口に接続された定量ポンプの拡大断面図である。
【図8】本発明に係る湿潤紛粒体製造装置の概略を示す系統図である。
【図9】従来の技術を示す側面図である。
【符号の説明】
【0058】
100 紛粒体タンク
10 タンク本体
11 底壁
12 前壁
13 後壁
14 側壁
15 排出口
16 バッグフィルタ
17 点検窓兼用投入口
18 天井
20 搬送ベルト
21 駆動軸
22 従動軸
30 掻きバー
40 定量ポンプ
41 排出口
42 ブレード
110 コンベア
120 ミキサー
130 水槽
200 湿潤紛粒体製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体内に大量に収納された粉体または粒体を必要量づつ排出するようにした紛粒体タンクであって、
前記タンク本体の底壁及びこれに連なる壁の内面に沿って同期しながら無限駆動される少なくとも2本の搬送ベルトと、これらの搬送ベルトに所定間隔をおいて連結されて移動される複数の掻きバーとを備えたことを特徴とする紛粒体タンク。
【請求項2】
前記タンク本体の前記底壁に形成した排出口に定量ポンプを設けて、前記粉体または粒体を定量づつ排出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の紛粒体タンク。
【請求項3】
前記タンク本体の前記底壁以外の内壁について、全てを前記底壁に対して垂直に立設させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の紛粒体タンク。
【請求項4】
前記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の紛粒体タンクを備えて、この紛粒体タンクからのセメント粉体と水とを混合して地盤改良用の湿潤セメントを現場において製造することができるようにしたことを特徴とする湿潤紛粒体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−297090(P2007−297090A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126134(P2006−126134)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(506149380)株式会社東洋スタビ (6)
【Fターム(参考)】