説明

素地調整工具

【課題】狭隘な場所に狭い間隔で並設状態に配設している電線管や鋼管などの管材でも容易に素地調整作業を行うことができる素地調整工具を提供することを目的とする。
【解決手段】長尺体1に沿って移動自在に取り付ける移動基体2に、長尺体1に被嵌する被嵌体3を移動基体2に対して往復スライド移動自在に設け、この被嵌体3を移動基体2に対して往復スライド移動する駆動装置4を移動基体に設け、被嵌体3は、一対の被嵌半体3a,3bからなり一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3bを半割自在に設けた構成とし、この被嵌体3の内側に長尺体1の外周面を包囲して当接する研磨体5を設け、この研磨体5は、被嵌体3が長尺体1を被嵌した際に、この長尺体1の外周面に押圧状態で密着するシート状研磨体5に構成した素地調整工具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鋼管や電線管などの金属製長尺体の表面の錆や塗装膜を除去したり、表面を研削したりするための素地調整工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄塔の構造要素である鋼管や、電線の保護を目的とする電線管には、一般的に錆などの発生を防止する防食用塗膜が塗装されているが、この防食用塗膜は経時劣化して剥がれ落ちてしまうため、定期的な塗り替え作業を行う必要があった。
【0003】
この塗り替え作業は、前処理として、鋼管や電線管に付着している古い塗膜を綺麗に除去する素地調整作業が必須であるが、この素地調整作業は、ディスクサンダーなどの電動式の素地調整工具を用いて作業することが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したディスクサンダーなどの従来の素地調整工具は、研磨体の研磨面が平面に構成されており、そのため、鋼管や電線管などの円筒形の長尺体のように外周面が曲面状のものに対しては、面接触とならずに線接触となってしまうため、研磨体を当接させた際の研磨面積が非常に狭く作業効率が悪かった。
【0005】
また、橋梁の電線管のように、狭隘なところに複数の長尺体が並設状態に配設されているような場合は、長尺体同士の配設間隔が狭くなっているので、長尺体同士の間隙にディスクサンダーなどの電動式の素地調整工具を配設することができず、そのため、ディスクサンダーなどの電動式の素地調整工具を用いた効率的な素地調整作業ができず、作業者が手作業で素地調整を行うこととなり、このような手作業は、膨大な労力とコストが掛かり、また、作業者への負担も大きく非常に厄介な作業であった。
【0006】
本発明は、このような素地調整作業の問題点を解決し、極めて効率的に長尺体の素地調整作業を行うことができ、更に、狭隘な場所に狭い間隔で並設状態に配設されている電線管や鋼管などの長尺体でも容易に素地調整作業を行うことができる素地調整工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
長尺体1に沿って移動自在に取り付ける移動基体2に、前記長尺体1に被嵌する被嵌体3を前記移動基体2に対して往復スライド移動自在に設け、この被嵌体3を前記移動基体2に対して往復スライド移動する駆動装置4を前記移動基体に設け、前記被嵌体3は、一対の被嵌半体3a,3bからなり一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3bを着脱自在若しくは回動開閉自在に設けて半割自在に設けた構成とし、この被嵌体3の内側に前記長尺体1の外周面を包囲して当接する研磨体5を設け、この研磨体5は、前記一対の被嵌半体3a,3bを係合し前記長尺体1を被嵌した際に、この長尺体1の外周面に押圧状態で密着するシート状研磨体5に構成し、前記駆動装置4による前記被嵌体3の往復スライド移動によりこの長尺体1の外周面に被嵌し押圧状態に密着する前記シート状研磨体5が前記長尺体1の外周面を往復研磨し得るように構成したことを特徴とする素地調整工具に係るものである。
【0009】
また、前記研磨体5は、該研磨体5自体が厚さ方向に伸縮する弾性を有するものであることを特徴とする請求項1記載の素地調整工具に係るものである。
【0010】
また、前記被嵌体3は、一対の凹状に形成した前記被嵌半体3a,3bからなり、この凹状の被嵌半体3a,3bの開口側同士を係合することで前記長尺体1を貫通配設する貫通孔6を形成するように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の素地調整工具に係るものである。
【0011】
また、前記貫通孔6を形成する前記一対の凹状に形成した被嵌半体3a,3bの内面に前記シート状研磨体5を着脱自在に設け、この凹状の被嵌半体3a,3bの開口側同士を係合することで、前記一対の凹状に形成した被嵌半体3a,3bの内面に設けたシート状研磨体5がこの被嵌半体3a,3bに押圧されることで、前記貫通孔6内に配設された前記長尺体1の外面に前記シート状研磨体5が押圧状態に密着するように構成したことを特徴とする請求項3記載の素地調整工具に係るものである。
【0012】
また、前記被嵌体3は、前記被嵌半体3a,3b同士を片側枢着して回動開閉自在に構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の素地調整工具に係るものである。
【0013】
また、前記移動基体2は、ハンドル部7を具備した本体部8に設けた構成とし、このハンドル部7を把持しながら前記本体部8を前記長尺体1に沿って押動若しくは引動操作して、前記移動基体2を前記長尺体1に沿って移動させるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の素地調整工具に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、研磨体と長尺体との接触面積が広大になり、研磨面積が広くなることで、従来に比して、飛躍的に作業効率が向上する。
【0015】
即ち、ディスクサンダーなどの従来の素地調整工具は、鋼管や電線管など円筒形の長尺体の外周面に対して、面ではなく線で接触して研磨していたため、研磨面積が非常に狭く、極めて作業効率が悪かったが、本発明は、長尺体を被嵌する、具体的には、長尺体の外周面を包囲するように当接して被嵌するので、従来に比して極めて広大な研磨面積となり、効率的に素地調整作業を行うことができることとなる。
【0016】
しかも、狭隘な場所に狭い間隔で並設状態に配設されている電線管や鋼管などの長尺体に対しても、ディスクサンダーなどの従来の電動工具(素地調整工具)では素地調整作業ができず手作業で素地調整作業を行っていた箇所を、本発明の素地調整工具を用いて極めて容易に素地調整することができるので、手作業に比べて作業効率が著しく向上し、大幅な工期短縮と施工コスト削減を実現できることとなるなど、極めて実用性に優れた画期的な素地調整工具となる。
【0017】
また、請求項2,4記載の発明においては、研磨体が長尺体の外周面に良好に圧接した状態で確実に研磨が行われるので、長尺体の外周面の素地調整を極めて効果的に行うことができ、しかも、この圧接は、研磨体自体の弾性によってなされるので、一々、研磨体を長尺体に対して押圧させるための押圧手段を設ける必要がなく、被嵌体を簡易でスリムな構造にすることができるので、長尺体同士の間隙が狭くても、この狭い間隙に被嵌半体を通して、長尺体に被嵌体を被嵌することができることとなるので、従来、電動式の素地調整工具では素地調整作業ができず作業者が手作業で素地調整していた箇所も、極めて容易に素地調整作業することができるようになる。
【0018】
また、請求項3記載の発明においては、被嵌体が長尺体の外周面全周を包囲するように被嵌するので、一々、被嵌体を長尺体の周方向に移動させることなく効率的にまんべんなく素地調整を施すことができる一層実用性に優れた素地調整工具となる。
【0019】
また、請求項5記載の発明においては、より一層簡易に被嵌体を長尺体に被嵌することができる実用性に優れた素地調整工具となる。
【0020】
また、請求項6記載の発明においては、より一層操作性が向上し、効率よく素地調整作業を行うことができる実用性に優れた素地調整工具となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本実施例の使用状態を示す説明側面図である。
【図3】本実施例の移動基体及び被嵌体を示す正断面図である。
【図4】本実施例の移動基体及び被嵌体を示す側断面図である。
【図5】本実施例の駆動装置を示す分解斜視図である。
【図6】本実施例を長尺体に取り付ける際の説明図である。
【図7】本実施例の被嵌体の往復スライド動作原理を示す説明図である。
【図8】本実施例の被嵌体を長尺体に被嵌した状態を示す説明正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0023】
本発明は、長尺体1に被嵌する被嵌体3の内側に、長尺体1の外周面を包囲して当接するシート状研磨体5を設けたので、このシート状研磨体5を設けた被嵌体3を長尺体1に被嵌し、駆動装置4を駆動させて被嵌体3を往復スライド移動させることで、長尺体1の被嵌体3が被嵌している部分の外周面を、被嵌体3を周方向に移動させることなく、まんべんなく研磨することができるので、従来のディスクサンダーなどの素地調整工具に比して、極めて効率的に長尺体1の素地調整作業を行うことができるようになる。
【0024】
しかも、狭隘なところに複数の長尺体1が並設状態に配設されているような場合は、長尺体1同士の配設間隔が狭くなっているので、従来は、長尺体1同士の間隙9にディスクサンダーなどの電動式の素地調整工具を配設することができず、そのため、作業者が手作業で素地調整を行っていたが、本発明は、被嵌半体3a,3bからなる被嵌体3を、一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3bを分離して、若しくは開き方向に回動して半割れ状態にすることで、素地調整対象である長尺体1同士の間隙9が狭くても容易に長尺体1に被嵌体3を被嵌することができる。
【0025】
即ち、例えば、被嵌半体3a,3b同士が完全に分離する構成とした場合は、分離し半割れ状態となった被嵌半体3a,3b同士を長尺体1の両側から挟み込むように被嵌することで、長尺体1同士の間隙9が狭くとも、容易に長尺体1に被嵌体3を被嵌させることができることとなる。
【0026】
また、例えば、一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3bを回動開閉自在に設けて、この被嵌半体3bを開き方向に回動して一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3aを半割れ状態にする構成とした場合は、被嵌体3を半割れ状態としたことで、半割れ状態の被嵌半体3a,3bの一方、具体的には、移動基体2側でない方は、長尺体1同士の狭い間隙9を通過し得るスリムな形状となるので、容易に長尺体1同士の間隙9に通すことができ、長尺体1に被嵌体3を被嵌することができることとなる。
【0027】
また、このように長尺体1に被嵌することで、被嵌体3の内側に設けられた長尺体1の外周面を包囲して当接するシート状研磨体5が、長尺体1の外周面に被嵌し押圧状態に密着し、駆動装置4を駆動することで被嵌体3が移動基体2に対し長尺体1に沿って往復スライド移動し、この被嵌体3が往復スライド移動することによって、長尺体1の外周面に押圧密着したシート状研磨体5が長尺体1の外周面を往復研磨することとなり、このシート状研磨体5の往復研磨により長尺体1の素地調整がなされることとなる。
【0028】
よって、駆動装置4を駆動したまま移動基体2を長尺体1に沿って少しずつ移動させることで、長尺体1がその長さ方向に連続的に素地調整されていくことになる。
【0029】
従って、狭隘な場所に狭い間隔で並設状態に配設されている電線管や鋼管などの長尺体1の素地調整作業に本発明の素地調整工具を用いれば、作業者が手作業による素地調整作業を行うことを回避でき、よって、作業効率が著しく向上し、大幅な工期短縮と施工コスト削減を実現できるなど、極めて実用性に優れた画期的な素地調整工具となる。
【実施例】
【0030】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0031】
本実施例は、図1〜図3に示すように、長尺体1に沿って移動自在に取り付ける移動基体2に、長尺体1に被嵌する被嵌体3を移動基体2に対して往復スライド移動自在に設け、この被嵌体3を移動基体2に対して往復スライド移動する駆動装置4を移動基体に設け、被嵌体3は、一対の被嵌半体3a,3bからなり一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3bを着脱自在若しくは回動開閉自在に設けて半割自在に設けた構成とし、この被嵌体3の内側に長尺体1の外周面を包囲して当接する研磨体5を設け、この研磨体5は、一対の被嵌半体3a,3bを係合し長尺体1を被嵌した際に、この長尺体1の外周面に押圧状態で密着するシート状研磨体5に構成し、駆動装置4による被嵌体3の往復スライド移動によりこの長尺体1の外周面に被嵌し押圧状態に密着するシート状研磨体5が長尺体1の外周面を往復研磨し得るように構成した素地調整工具である。
【0032】
即ち、本実施例は、被嵌体3を構成する一方の被嵌半体3aに対して他方の被嵌半体3bを分離させて半割状態にし、この半割状態にした他方の被嵌半体3bを長尺体1に被嵌した後、一方の被嵌半体3aをこの他方の被嵌半体3bを被嵌した反対側から長尺体1に被嵌するように配してこれら被嵌半体3a,3bを係合することによって本実施例の被嵌体3を長尺体1に対して取り付けることができるので、長尺体1の両端部が他の部材に連結されてフリーになっていない電線管のような長尺体1に対しても、簡単に取り付けできるように構成した素地調整工具である。
【0033】
本実施例をより詳細に説明すると、本実施例の移動基体2は、方形状に形成した金属製の板状体10の左右端部に垂下端縁11を設けて正面視コ字状に形成すると共に、板状体10の下面に後述する被嵌体3に設けられるスライドレール部12を貫通配設する貫通配設部13を設けた構成とし、更に、被嵌体3をこの移動基体2に対して往復スライド移動する駆動装置4を設けた構成としている。
【0034】
また、この移動基体2に設けた駆動装置4は、本体部8と連結した構成とし、この本体部8は、駆動装置4を駆動する電動モータ14とハンドル部7とを備えた構成とし、この本体部8に設けたハンドル部7を把持して移動基体2を長尺体1に沿って移動させることができる構成としている。
【0035】
この移動基体2と本体部8とを連結する駆動装置4は、駆動伝達部15と駆動変換部16とで構成しており、具体的には、図4,図5に示すように、駆動伝達部15は、第一スピンドル部17と伝達歯車18とからなる構成とし、また、駆動変換部16は、受歯車19と偏心カム20を設けた第二スピンドル部21とからなる構成としており、本体部8に設けた電動モータ14の駆動によって本体部8側に設けられている傘歯車22が回転し、この傘歯車22の回転によって第一スピンドル部17を介して伝達歯車18が回転し、この伝達歯車18の回転によってこの伝達歯車18と係合する伝達受歯車19が回転し、この伝達受歯車19が回転することによって第二スピンドル部21が回転することで、この第二スピンドル部21の下端に設けた偏心カム20が回転する構成としており、この第二スピンドル部21の下端に設けた偏心カム20は、中心軸を第二スピンドル部21の中心軸と位置ズレさせて設けた構成としており、よって、偏心カム20は、第二スピンドル部21の回転運動に対して円運動を行い、駆動を変換するように構成している。
【0036】
尚、符号23,24,25は軸受である。
【0037】
また、本実施例の被嵌体3は、一対の凹状に形成した被嵌半体3a,3bからなり、この凹状の被嵌半体3a,3bの開口側同士を係合することで長尺体1を貫通配設する貫通孔6を形成するように構成している。
【0038】
具体的には、被嵌体3は、上下方向に並設状態に配設した上側被嵌半体3aと下側被嵌半体3bとで構成しており、この上側被嵌半体3aと下側被嵌半体3bとは、夫々、方形状の金属個体の一面に長手方向に沿って断面視半円形の凹部を形成し、この上側被嵌半体3aの凹部と下側被嵌半体3bの凹部とを上下方向に対向状態に配して係合することで、長尺体1を貫通し得る円形の貫通孔6を形成するように構成している。
【0039】
即ち、この被嵌体3で鋼管や電線管などの円筒形の長尺体1を被嵌した際に、長尺体1の外周面を周面方向にぐるり一周包囲するように被嵌する構成としている。
【0040】
また、本実施例の被嵌体3は、上側被嵌半体3aと下側被嵌半体3bとの一側面同士をヒンジ26で枢着して回動開閉自在に構成すると共に、このヒンジ26を設けた一側面と対向する他側面に掛止係止具27とこの掛止係止具27を引掛け係止する鉤状係止部28を設け、この掛止係止部27を鉤状係止部28に引掛け係止することで、上側被嵌半体3aと下側被嵌半体3bとの係合状態を保持する構成とし、本実施例においては、上側被嵌半体3aに掛止係止具27を設け、下側被嵌半体3bに鉤状係止部28を設けた構成としている。
【0041】
即ち、本実施例の被嵌体3は、掛止係止具27と鉤状係止部28との係止状態を解除し、図6(a),(b)に示すように、上側被嵌半体3aに対して下側被嵌半体3bを開動作動することでこの下側被嵌半体3bを半割れ状態にし、この半割れ状態となった下側被嵌半体3bの先端部を長尺体1の側方付近から下部側に向かってこの長尺体1の外周面に沿って周方向に移動させることで、この下側被嵌半体3bが長尺体1の下部側を被嵌し、この長尺体1の下部側を被嵌した下側被嵌半体3bと上側被嵌半体3aとを係合し、掛止係止具27を鉤状係止部28に引掛け係止してこの係合状態を保持するようにすることで、この長尺体1に被嵌体3を取り付けることができる構成としている。
【0042】
従って、本実施例の素地調整工具は、単独で配設されている鋼管や電線管などの長尺体1への取り付けは勿論のこと、狭隘な場所に複数の長尺体1が密集して並設されていて長尺体1同士の間隙9が狭い状況であっても、この間隙9が下側被嵌半体3bの先端部を挿入し得る間隔であれば、この間隙9から下側被嵌半体3bの先端部を長尺体1の周方向に沿って移動させながらこの長尺体1の下部側に下側被嵌半体3bを被嵌させることができ、この長尺体1の下部側に被嵌した下側被嵌半体3bと上側被嵌半体3aとを係合させるだけで長尺体1同士の間隙9が狭い配設条件においても、長尺体1に対して被嵌体3を被嵌状態に取り付けることができるように構成している。
【0043】
また、本実施例の被嵌体3は、上側被嵌半体3aの正面及び背面にレール支持部29を設け、この被嵌体3の前後に設けたレール支持部29にスライドレール部12を複数(本実施例では二本)設けた構成としている。
【0044】
具体的には、上側被嵌半体3aの正面及び背面に板状に形成したレール支持部29を垂設し、この板状のレール支持部29間に上述した移動基体2に設けた貫通配設部13に貫通配設し、且つ、この貫通配設部13にスライド移動自在に設けられるパイプ状のスライドレール部12を二本架設した構成としている。
【0045】
また更に、本実施例の被嵌体3は、上側被嵌半体3aの上面に、駆動装置4に設けた偏心カム20と係合するカム係合部30を設けた構成としている。
【0046】
このカム係合部30は、中心部に被嵌体3の左右方向(幅方向)に長い横長開口部31を形成した構成としている。
【0047】
また、横長開口部31は、長径寸法、即ち、被嵌体3の左右方向の寸法を偏心カム20の直径よりやや径大に設定し、短径寸法、即ち、被嵌体3の前後方向の寸法を偏心カム20の直径と略同径に設定して、所謂、楕円形状に形成した構成としている。
【0048】
即ち、この楕円状の横長開口部31に挿入配設した偏心カム20の円運動によって、この偏心カム20がカム係合部30を前後方向に押動するように構成し、この被嵌体3を移動基体2に対して往復スライド移動するように構成している。
【0049】
この偏心カム20の円運動によってカム係合部30が前後方向に押動される作動について説明すると、図7(a)の状態(位相0°)から、図7(b)のように第二スピンドル部21が図中矢印方向に90°回転すると(位相90°とすると)、偏心カム20の回転により第二スピンドル部21の中心軸から最も遠い位置にある偏心カム20の外周面が、カム係合部30に設けた横長開口部31の内周面、具体的には、被嵌体3の正面側の内周面(図面右側の内周面)に当接して、カム係合部30を被嵌体3の正面方向(前方)へ押動することになる。
【0050】
更に、図7(c)のように第二スピンドル部21が図中矢印方向に90°回転すると(位相180°とすると)、横長開口部31の正面側内周面を押動していた偏心カム20の外周面が横長開口部31の右側内周面(図面上側の内周面)に当接するように位相変化してカム係合部30が下方へ下がり(被嵌体3が位相0°の状態と同じ高さとなり)、引き続いて図7(d)のように第二スピンドル部21が図中矢印方向に90°回転すると(位相270°とすると)、第二スピンドル部21の中心軸から最も遠い位置にある偏心カム20の外周面が、カム係合部30に設けた横長開口部31の内周面、具体的には、被嵌体3の背面側の内周面(図面左側の内周面)に当接して、カム係合部30を被嵌体3の背面方向(後方)へ押動することになる。
【0051】
尚、図中符号32は偏心カム20の外周面に設けた軸受(ボールベアリング)であり、この軸受32が偏心カム20とカム係合部30に設けた横長開口部31の内周面との当接移動を円滑にする構成としている。
【0052】
以下、第二スピンドル部21の回転によってこの動きを繰り返すこととなり、よって、本実施例は、上述したように、偏心カム20の円運動により横長開口部31の前後方向の内周面が偏心カム20によって押動されることでカム係合部30が前後方向に押動されることとなり、このカム係合部30が押動されることで、このカム係合部30を設けている被嵌体3が移動基体2に対してその上下方向に往復スライド移動する構成としている。
【0053】
また、この被嵌体3は、この被嵌体3の内側、具体的には、被嵌体3に設けた貫通孔6の内周面に、長尺体1の外周面を包囲して当接する研磨体5を設けた構成とし、より具体的には、この研磨体5は、一対の被嵌半体3a,3bを係合し長尺体1を被嵌した際に、この長尺体1の外周面に押圧状態で密着するシート状研磨体5に構成している。
【0054】
更に詳細に説明すると、本実施例のシート状研磨体5は、形状を方形状に形成し、縦横の長さは、一方を被嵌体3の貫通孔6の長さと略同じ長さに設定し、もう一方が被嵌体3の内周面の円周と略同じ長さに設定して、被嵌体3の貫通孔6の内周面を略完全に被覆する形状に形成し、長尺体1に被嵌して長尺体1を被嵌体3の貫通孔6に貫通配設した際に、この長尺体1の外周面を周方向に囲繞するように構成している。
【0055】
言い換えると、被嵌体3を鋼管や電線管などの円筒形の長尺体1に被嵌した際に、被嵌体3の内周面に設けたシート状研磨体5が、長尺体1の外周面を周面方向にぐるり一周包囲するように当接する構成とし、従来のディスクサンダーなどの素地調整工具のように長尺体1に対して線状に当接するのではなく、長尺体1の外周面の周方向に沿って面で当接する構成としている。
【0056】
また、本実施例のシート状研磨体5は、研磨体5自体が厚さ方向に伸縮する弾性を有する研磨体5を採用した構成とし、具体的には、本実施例では、砥粒付不織布からなる研磨体5を採用した構成としている。
【0057】
また、シート状研磨体5を不織布で構成することで、シート状研磨体5は可撓(変形)性をも有することとなり、図8に示すように、この砥粒付不織布からなるシート状研磨体5を被嵌体3の貫通孔6の内周面に沿設状態に設けることができ、よって、被嵌体3を構成する上側被嵌半体3aと下側被嵌半体3bとで長尺体1を被嵌し、上側被嵌半体3aに設けた掛止係止具27を下側被嵌半体3bに設けた鉤状係止部28に引掛けて係止状態する際、掛止係止具27が鉤状係止部28を引き寄せることで下側被嵌半体3bが上側被嵌半体3a側に引き寄せられ、これによって、被嵌半体3a,3b、即ち、被嵌体3がシート状研磨体5を押圧することとなり、この被嵌体3に押圧されたシート状研磨体5は収縮状態となるが、この収縮状態となったシート状研磨体5は、もとの形状に戻ろうとする弾性力を生じることとなり、この弾性力が長尺体1を押圧する押圧力となることで、シート状研磨体5が長尺体1の外周面に被嵌した際に長尺体1に対して押圧状態に密着して、良好に長尺体1を研磨するように構成している。
【0058】
尚、本実施例では、被嵌体3の正面側及び背面側の貫通孔6の開口部周縁に、内方に突出する研磨体当接周縁部33を設けた構成とし、貫通孔6の内面にシート状研磨体5を設けた際に、この研磨体当接周縁部33にシート状研磨体5が当接して位置決められるように構成し、被嵌体3の往復スライド移動に伴ってこのシート状研磨体5も往復スライド移動するように構成している。
【0059】
また、本実施例のシート状研磨体5は、被嵌体3に着脱自在に設けた構成とし、不織布に付着させた砥粒が消耗し、研磨状態が良好でなくなった場合は容易に交換できるように構成している。
【0060】
また、本実施例を、シート状研磨体5の厚みを変更可能な構成とする、或いは、シート状研磨体5と被嵌体3の内周面との間に厚さ調整用部材(スペーサー)を挿入配設し得る構成とすることで、長尺体1への押圧状態を変更したり、管径の異なる長尺体1でも容易に素地調整作業を行うことができるように構成しても良い。
【0061】
即ち、シート状研磨体5の厚みを厚くするか、スペーサーを挿入配設することで、管径の細い長尺体1の素地調整作業に対応でき、シート状研磨体5の厚さを薄くするか、スペーサーを取り外すことで管径の太い長尺体1の素地調整作業に対応できるような構成としても良い。
【0062】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0063】
1 長尺体
2 移動基体
3 被嵌体
3a 被嵌半体
3b 被嵌半体
4 駆動装置
5 研磨体
6 貫通孔
7 ハンドル部
8 本体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体に沿って移動自在に取り付ける移動基体に、前記長尺体に被嵌する被嵌体を前記移動基体に対して往復スライド移動自在に設け、この被嵌体を前記移動基体に対して往復スライド移動する駆動装置を前記移動基体に設け、前記被嵌体は、一対の被嵌半体からなり一方の被嵌半体に対して他方の被嵌半体を着脱自在若しくは回動開閉自在に設けて半割自在に設けた構成とし、この被嵌体の内側に前記長尺体の外周面を包囲して当接する研磨体を設け、この研磨体は、前記一対の被嵌半体を係合し前記長尺体を被嵌した際に、この長尺体の外周面に押圧状態で密着するシート状研磨体に構成し、前記駆動装置による前記被嵌体の往復スライド移動によりこの長尺体の外周面に被嵌し押圧状態に密着する前記シート状研磨体が前記長尺体の外周面を往復研磨し得るように構成したことを特徴とする素地調整工具。
【請求項2】
前記研磨体は、該研磨体自体が厚さ方向に伸縮する弾性を有するものであることを特徴とする請求項1記載の素地調整工具。
【請求項3】
前記被嵌体は、一対の凹状に形成した前記被嵌半体からなり、この凹状の被嵌半体の開口側同士を係合することで前記長尺体を貫通配設する貫通孔を形成するように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の素地調整工具。
【請求項4】
前記貫通孔を形成する前記一対の凹状に形成した被嵌半体の内面に前記シート状研磨体を着脱自在に設け、この凹状の被嵌半体の開口側同士を係合することで、前記一対の凹状に形成した被嵌半体の内面に設けたシート状研磨体がこの被嵌半体に押圧されることで、前記貫通孔内に配設された前記長尺体の外面に前記シート状研磨体が押圧状態に密着するように構成したことを特徴とする請求項3記載の素地調整工具。
【請求項5】
前記被嵌体は、前記被嵌半体同士を片側枢着して回動開閉自在に構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の素地調整工具。
【請求項6】
前記移動基体は、ハンドル部を具備した本体部に設けた構成とし、このハンドル部を把持しながら前記本体部を前記長尺体に沿って押動若しくは引動操作して、前記移動基体を前記長尺体に沿って移動させるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の素地調整工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−18060(P2013−18060A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151154(P2011−151154)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(592185585)株式会社ブリッジ・エンジニアリング (7)
【出願人】(594091215)株式会社技術開発研究所 (9)
【Fターム(参考)】