説明

紫外線カット性包装材料

【課題】本発明は、透明性に優れていながら、紫外線カット性を備えており、内容物が変色、褪色、変質などの起こりやすい食品、非食品類、医療・医薬品などの包装に適した紫外線カット性包装材料を提供することを目的とする。
【解決手段】印刷基材フィルム(1)上に、少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有し、インキのバインダー樹脂(固着剤)がウレタン/塩酢ビ系樹脂からなる紫外線カットインキ層(2)と、接着層(3)と、支持体フィルム(4)上に無機酸化物の蒸着薄膜層(5)を積層したバリア性積層フィルム(6)と、接着層(3a)と、最内層にシーラント層(7)を順次積層したことを特徴とする紫外線カット性包装材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線カット性を有する包装材料に関し、さらに詳しくは、透明性に優れていながら、紫外線カット性を備えており、内容物が変色、褪色、変質などの起こりやすい食品、非食品類、医療・医薬品などの包装に適した紫外線カット性包装材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、非食品類、医療・医薬品などの包装に用いられる包装材料には、各種の機能が要求され、特に重要な機能として包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他の気体による内容物の変質、或いは紫外線による内容物の変色、褪色、変質などを防止する内容物保護機能があり、包装する内容物によっては、ガスバリア性と共に紫外線カット性を兼ね備えたものが求められる。
【0003】
従来から、このような要求に対しては、主にアルミニウム箔やアルミニウム蒸着層を含む積層体が多用されてきたが、これらはガスバリア性、紫外線カット性に優れているものの、一方では透明性が全くないという大きな欠点があった。
【0004】
特に、近年アルミニウム箔を積層した積層体は、さまざまな問題が指摘されている。例えば、使用後の廃棄処分において焼却処理を行うと、そのアルミニウム箔が残査として残ってしまう問題や、焼却炉を傷めてしまう恐れがある問題など、いわゆる廃棄処分にともなう問題が発生している。
【0005】
また、資源再利用の要請から、該包装材料を使用後に回収し、材料別に分別し再利用することが要望されているが、上記のようなアルミニウム箔を使用した積層体では、アルミニウム箔、樹脂フィルムなどの各材料をそれぞれに分別回収することが著しく困難であり、再利用を図ることは実質的には不可能である。
【0006】
更に、内容物包装後の衛生安全面から行う金属等の異物の混入を確認する金属探知器の使用が不可能であり、衛生安全面も良くない。
【0007】
そこで、最近は、アルミニウム箔に代わる材料として、プラスチックフィルムに酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化珪素などの無機酸化物を蒸着した積層体が使用されているが、内容物保存上必要なガスバリア性は優れているが、高い透明性を有するため紫外線カット性が劣るという欠点がある。したがって、内容物によっては、紫外線により変質、変色する問題が残されていた。このため従来から用いていたアルミニウム箔やアルミニウム蒸着層を含む積層体からの代替が進んでいなかった。
【0008】
該紫外線カット性は、例えば内容物の変色や褪色などの外観上の問題、或いは内容物それ自体の性質の変化(例えば、化学物質の分解や他の物質との反応などの化学的変化)による劣化などを防ぐため、包装材料を印刷インキなどにより着色したり、或いは紫外線吸収剤が適用されることがある。該紫外線吸収剤としては、有機系化合物を主成分とするものや、無機系化合物を主成分とするものが市販されている。
【0009】
前記紫外線吸収剤は、プラスチック材料自体に練り込んだり、該紫外線吸収剤をコーティング液に配合して基材フィルム上に塗布形成したり、複数のフィルムを積層する接着剤に紫外線吸収剤を混合して用いることで、包装材料に紫外線カット性を付与するものであった。
【0010】
ところが、前記紫外線吸収剤の内、無機系化合物を主成分とするものを用いた場合、包装材料の透明性が低下する傾向が高かった。一般的に紫外線吸収剤は、少なくともその一部が透明である包装材料に適用されることを考慮すれば、この透明性の低下は包装材料にとってデメリットである。
【0011】
また、単に通常のコーティング液(例えば、OPニス)に紫外線吸収剤を添加したのでは、十分な量の紫外線吸収剤を包装材料に対して付与することができなかった。これは、紫外線吸収剤を多量に添加すると、コーティング液のコーティング適性が低下するためであり、また無理に多量の紫外線吸収剤を添加してコーティングを施しても、紫外線吸収剤がブリードアウトして脱落したり、積層体のラミネート強度を損ねたりするという問題があった。
【0012】
そこで適性量を添加したコーティング液を、例えば2度コーティングしてコーティング膜の厚さを大きくすれば、紫外線カット性能は向上するが、コーティング膜が硬くなるためクラックが生じやすくなり、また包装材料の柔軟性が低下して、包装材料としての適性が損なわれるといった問題があった。
【0013】
また、紫外線吸収剤を接着剤に混合して用いる方法でも、接着剤の機能を損なわない範囲での混合量とする必要があり、紫外線のカット性能に限界があった。
【0014】
さらに、無機系の紫外線吸収剤では、特に色素の変褪色などに影響の大きい360〜380nm付近の紫外線を遮蔽する能力に劣っており、前述したような内容物の劣化の防止が十分満足のいくものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、透明性に優れていながら、紫外線カット性を備えており、内容物が変色、褪色、変質などの起こりやすい食品、非食品類、医療・医薬品などの包装に適した紫外線カット性包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、印刷基材フィルム(1)上に、少なくとも紫外線吸収剤を含有する紫外線カットインキ層(2)と最内層にシーラント層(7)を順次積層したことを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【0017】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の紫外線カット性包装材料において、前記紫外線吸収剤として、少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いたことを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【0018】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の紫外線カット性包装材料において、前記紫外線カットインキ層(2)を形成するインキのバインダー樹脂(固着剤)がウレタン/塩酢ビ系樹脂からなることを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【0019】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項記載の紫外線カット性包装材料において、前記印刷基材フィルム(1)上に紫外線カットインキ層(2)がグラビア印刷方式で形成されることを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【0020】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載の紫外線カット性包装材料において、前記グラビア印刷方式に用いられる版の深度が28〜42μmであることを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【0021】
本発明の請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載の紫外線カット性包装材料において、前記紫外線カットインキ層(2)と最内層のシーラント層(7)との間にバリア性積層フィルム(6)を有することを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【0022】
本発明の請求項7に係る発明は、請求項6記載の紫外線カット性包装材料において、前記バリア性積層フィルム(6)が無機酸化物蒸着フィルムからなることを特徴とする紫外線カット性包装材料である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る紫外線カット性包装材料は、印刷基材フィルム上に、少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を含有し、インキのバインダー樹脂(固着剤)がウレタン/塩酢ビ系樹脂からなる紫外線カットインキ層と、最内層にシーラント層を順次積層したことにより、紫外線カット性(波長370nm以下の波長域の紫外線は完全カットし、波長390nm以下の波長域の紫外線は80%以上カット可能)が優れ、内容物の変色、褪色、変質などを防止することができ、且つ透明性にも優れているので内容物を確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態を図1および図2に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明に係る紫外線カット性包装材料の層構成の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る紫外線カット性包装材料の層構成のその他の実施例を示す側断面図である。
【0026】
本発明に係る1実施例を示す紫外線カット性包装材料の層構成は、図1に示すように、印刷基材フィルム(1)上に、紫外線吸収剤を含有する紫外線カットインキ層(2)、接着層(3)、支持体フィルム(4)上に無機酸化物の蒸着薄膜層(5)を積層したバリア性積層フィルム(6)、接着層(3a)、最内層にシーラント層(7)を順次積層した層構成である。
【0027】
また、本発明に係るその他の実施例を示す紫外線カット性包装材料の層構成は、図2に示すように、支持体フィルム(4)上に無機酸化物の蒸着薄膜層(5)を積層したバリア性積層フィルム(6)上に紫外線吸収剤を含有する紫外線カットインキ層(2)、接着層(3b)、最内層にシーラント層(7)を順次積層した層構成である。
【0028】
前記紫外線カット性包装材料が透明である必要がない場合は、前記層構成にさらに通常の絵柄印刷層(図示せず)を前記印刷基材フィルム(1)と紫外線カットインキ層(2)との中間に設けるか、または前記無機酸化物の蒸着薄膜層(5)と紫外線カットインキ層(2)との中間に設けることが可能である。
【0029】
前記印刷基材フィルム(1)としては、通常の包装材料として使用されるものが任意に使用できるが、本発明の目的から、透明であり、寸法安定性、耐熱性、機械的強度に優れたプラスチックフィルムであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロ
ン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの延伸フィルム或いは無延伸フィルムを用いることができる。
【0030】
一般的にプラスチックフィルムは、延伸フィルムと無延伸フィルムに大別されるが、延伸フィルムは、プラスチックフィルムを融点以下の温度に加熱しながら縦横二方向、或いはそのいずれか一方向に引き伸ばして配向させたフィルムであり、無延伸フィルムは延伸をしていない未延伸状態のフィルムで分子鎖の配向がなく分子運動が自由なため熱溶融による接着(熱シール)ができる。
【0031】
延伸によるフィルムの分子鎖は、一軸延伸では一方向に、二軸延伸では面方向に配向し、無延伸フィルムの物性改善が可能となる。一般的にプラスチックフィルムは、延伸することにより、腰(剛度)、透明性、引張り強さ、収縮性は増加し、光沢、防湿性、防気性は改善するが、伸び、引裂き強度は減少する。
【0032】
本発明においては、特に透明性、強度、加工適性、コストなどの面から、二軸方向に任意に延伸された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を使用することが好ましい。
【0033】
前記印刷基材フィルム(1)の厚さは、特に制約されないが、包装材料としての適性や該印刷基材フィルム(1)上に紫外線カットインキ層(2)を形成する場合、および他のフィルムを積層する場合などの印刷・加工性を考慮すると、10〜50μm程度の範囲内が好ましい。
【0034】
また、該印刷基材フィルム(1)と紫外線カットインキ層(2)との密着性を良くするために、該印刷基材フィルム(1)の印刷面をコロナ放電処理、グロー放電処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、火炎処理、薬品処理、溶剤処理などの公知の方法で前処理を行なう場合もある。
【0035】
次に、前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系などの有機系紫外線吸収剤を1種または複数組み合わせて使用することができるが、グラビア印刷用ビヒクル中に溶解または分散してインキ化し、グラビア印刷方式を用いて印刷する。
【0036】
通常、グラビア印刷用インキの組成は、顔料または染料などからなる着色料と合成樹脂などからなるバインダー樹脂(固着剤)を溶剤に溶解したビヒクルおよび助剤(安定剤、スリップ剤など)から構成されている。
【0037】
前記バインダー樹脂(固着剤)としては、溶剤に溶解あるいは分散可能な樹脂を使用する。例えば、塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ニトロセルロース、ウレタン、ポリエステル、ポリアミドなどの樹脂が使用される。
【0038】
次に、これらの樹脂を溶解あるいは分散させることができる溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類、ヘプタン、トルエン、ベンゼンなどの脂肪族および芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類などの汎用溶剤を挙げることができる。
【0039】
本発明の紫外線カットインキ層(2)を形成するインキのバインダー樹脂(固着剤)は、ウレタン/硝化綿系樹脂を使用できるが、ウレタンと硝化綿が反応することで経時変化
が起こり、無色透明なものから黄褐色に変色する。したがって、本発明の紫外線カットインキのバインダー樹脂(固着剤)としては、ウレタン/塩酢ビ系樹脂を用いることが好ましく、印刷基材フィルム(1)への接着が強固になり、経時変化による変色もない。
【0040】
前記紫外線カットインキ層(2)は、バインダー樹脂95〜70重量%に対し、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤5〜30重量%を配合した混合物からなっている。したがって、波長390nmまでの波長域の紫外線を良好に吸収カットすることができる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の混合量が5重量%未満の場合は、十分な紫外線カット性が得ることが困難であり、30重量%を超えると接着性が低下してしまうので良くない。
【0041】
前記紫外線カットインキ層(2)を印刷基材フィルム(1)上に形成する方法は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式などの公知の印刷方法やグラビアロールコーティング方式、リバースロールコーティング方式などの公知のコーティング方法を使用することができるが、中でも塗布量の均一安定性と微妙な塗布量調整が容易なグラビア印刷方式が好ましい。
【0042】
前記グラビア印刷方式に用いられる版の深度は、28〜42μmが好ましい。版の深度が28μmより浅い場合は、紫外線カットインキの塗布量が少なくなり、紫外線カット性の効果が薄れる。また、版の深度が42μmより深い場合は、ブロッキングなどの加工適性が悪くなる。
【0043】
次に、前記シーラント層(7)としては、紫外線カット性包装材料を製袋品などに成形する際にヒートシールなどによりシール可能な熱可塑性樹脂であれば、特に、制約されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)、エチレン−α−オレフィン共重合体などエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂などの選択が可能であり、また、これらのオレフィン系樹脂をグラフト重合などにより酸変性した変性ポリオレフィン樹脂も使用可能である。前述したポリオレフィン系樹脂の単体、または2種以上からなるブレンド品でも構わない。
【0044】
前記シーラント層(7)を形成する方法には、前記樹脂を予め製膜して作製した熱可塑性樹脂フィルムを使用し、接着層を介して形成する方法と直接熱可塑性樹脂を溶融押出ししてラミネーションするエクストルージョンラミネーション法(溶融押出しラミネーション法)により形成する方法がある。該シーラント層(7)の厚さは、20〜100μm程度の範囲内で任意に選択して形成することが好ましい。
【0045】
次に、本発明に係る紫外線カット性包装材料は、収納する内容物によって、酸素ガス、水蒸気などに対する十分な耐性を求められる場合には、図1に示すように、支持体フィルム(4)上に無機酸化物の蒸着薄膜層(5)を積層したバリア性積層フィルム(6)を紫外線カットインキ層(2)とシーラント層(7)との中間に接着層(3、3a)を介して積層する。
【0046】
また、図2に示すように、前記バリア性積層フィルム(6)そのものを印刷基材フィルムとして用いて該蒸着薄膜層(5)面に紫外線カットインキ層(2)を設け、さらに接着層(3b)を介してシーラント層(7)を積層する。
【0047】
前記バリア性積層フィルム(6)としては、例えば、支持体フィルム(4)上に無機酸化物の蒸着薄膜層(5)を積層した無機酸化物蒸着フィルムやポリエチレンテレフタレー
ト(PET)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)などのフィルムにポリ塩化ビニリデンを塗工した塗工フィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートや2軸延伸ナイロンフィルムとエチレン−ビニルアルコール共重合体の積層フィルム、さらに単一フィルムであるエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)、ポリビニルアルコールフィルム(PVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)ケン化物などのフィルム、またこれらフィルムの1種乃至それ以上を組み合わせた積層フィルムなどが挙げられるが、酸素ガス、水蒸気などに対するガスバリア性が最も優れ、且つ近年の環境問題を考慮すると、使用後の廃棄処分が容易な前記無機酸化物蒸着フィルムが最適である。
【0048】
前記無機酸化物蒸着フィルムの支持体フィルム(4)は、特に、制約されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などのポリオレフィン、ナイロン−6、ナイロン−66などのポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)などの無延伸あるいは延伸フィルムを挙げることができる。
【0049】
これらの中でも、透明性、強度、加工適性、コストなどの面から、二軸方向に任意に延伸された二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を使用することが好ましい。
【0050】
前記支持体フィルム(4)の厚さは、特に制約されないが、包装材料としての適性、蒸着薄膜層(5)を形成する場合、他のフィルムを積層する場合などの加工性を考慮すると、10〜50μm程度の範囲内が好ましい。
【0051】
また、該支持体フィルム(4)の蒸着面を蒸着薄膜層(5)との密着性を良くするため、コロナ放電処理、グロー放電処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、火炎処理、薬品処理、溶剤処理などの公知の方法で前処理を行なう場合もある。
【0052】
前記無機酸化物の蒸着薄膜層(5)としては、基本的には金属の酸化物を使用することが可能であり、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、亜鉛、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、パラジウム、インジウム、イットリウムなどの酸化物またはそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
一般的には、透明性、物性面、生産性などから、酸化アルミニウム、酸化珪素などを使用することが好ましい。
【0054】
このような無機酸化物の蒸着薄膜層(5)を形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング法などを使用することができるが、生産性、生産コスト面などを考慮すると、真空蒸着法が好ましい。
【0055】
前記真空蒸着法は、被蒸着体の形態から、大別して3つの方式があり、1)バッチ方式:成形品の蒸着方式、2)巻き取り式半連続方式:ロール状フィルム(ウェブ)が対象で真空系の中で巻き出し・蒸着・巻き取り後、大気系に再度戻し、蒸着製品を取り出す方式、3)巻き取り式完全連続方式:ロール状フィルム(ウェブ)が対象でアンワインダー(巻き出し装置)とリワインダー(巻き取り装置)を大気系に配置し、蒸着ドラムや蒸発源を真空系に配置してロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を蒸着する方式であって、一般的にair−to−air方式と呼ばれる連続方式である。
【0056】
ロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を蒸着する場合は、特に巻き取り式半連続方式
が普及しており、その巻き取り式真空蒸着装置の構成要素と作業工程の概略、更に真空蒸着装置の内部構造について記述する。
【0057】
先ず、構成要素は、ロール状フィルム(ウェブ)、蒸発源、蒸発物質、蒸着ドラム、真空系統、アンワインダー(巻き出し装置)、リワインダー(巻き取り装置)、ガイドロール等である。
【0058】
次に作業工程の概略について記述すると、先ず前準備として真空蒸着装置の扉を開け、ロール状フィルム(ウェブ)をアンワインダー(巻き出し装置)にセットし、アンワインダーと蒸着ドラム間に配置されているガイドロールを介して、前記ロール状フィルム(ウェブ)を蒸着ドラムまで走行させ、更にリワインダー(巻き取り装置)との間に配置されているガイドロールを介して、リワインダー(巻き取り装置)に巻き取り、前記ロール状フィルム(ウェブ)への蒸発物質の蒸着準備が終了する。
【0059】
次に、真空蒸着装置の扉を閉じて、真空ポンプにより、真空蒸着装置内の真空吸引定圧室と隔壁により分割された真空蒸着室を所定の真空環境にして、アンワインダー(巻き出し装置)から前記ロール状フィルム(ウェブ)を繰り出し、ガイドロールを介して走行させた前記ロール状フィルム(ウェブ)に、蒸着ドラムの下部に配置されている蒸発源から蒸発物質を加熱蒸発させて前記ロール状フィルム(ウェブ)に蒸着させる。
【0060】
前記蒸着ドラムは冷却されているので前記ロール状フィルム(ウェブ)に蒸発物質を再結晶化させて固着させ、更にリワインダー側のガイドロールを介して蒸着された前記ロール状フィルム(ウェブ)はリワインダーに巻き取られる。
【0061】
真空蒸着装置の内部構造は、真空吸引定圧室と真空蒸着室に隔壁で分割されており、真空吸引定圧室はアンワインダー、ガイドロール、張力制御装置、速度制御装置、位置制御装置、蒸着ドラムの一部、リワインダー等が配置されている。
【0062】
真空蒸着室は蒸着ドラムの一部と蒸発源とその加熱装置等が配置されており、真空蒸着装置本体の周辺に付属して配置されている真空ポンプにより、真空吸引定圧室は真空度が1×100MPa程度、隔壁を介して設けた真空蒸着室は1×10-2MPa(SI単位)程度にセットされる。
【0063】
2つに室が隔壁で分割されているので、真空吸引定圧室で前記ロール状フィルム(ウェブ)から発生したガスなどの不純物(ダスト)は、真空蒸着室での蒸着時に悪い影響を与えることは少ない。
【0064】
また、逆に真空蒸着室に配置されている蒸発源からの放射熱は、真空吸引定圧室への影響は少ないので前記ロール状フィルム(ウェブ)への熱の影響は少ない。
【0065】
真空蒸着法も、加熱方法により、1)間接抵抗法、2)直接抵抗加熱法(ワイヤフィード法)、3)高周波誘導加熱法、4)電子ビーム法(Electoron Beam、略してEB法)の4つの方法があるが、蒸発物質が酸化珪素や酸化アルミニウム等の絶縁性金属酸化物を使用する場合は、エネルギー変換効率の良い電子ビーム法が最適である。
【0066】
巻き取り式電子ビーム真空蒸着法は、酸化アルミニウムや酸化珪素等の蒸発物質に直接、電子ビームを照射し、該蒸発物質表面上をスキャンすることで、該蒸発物質表面を加熱する方法で、電子ビームがあたった部分でエネルギーを変換し、該蒸発物質を蒸発させる方法である。
【0067】
該蒸着薄膜層(5)の厚さは、無機酸化物蒸着フィルムの最終用途によって、適宜選択されるが、5〜400nmの範囲内であることが好ましい。該蒸着薄膜層(5)の膜厚が5nm未満では均一な膜が設けられないので、十分な酸素ガスバリア性や水蒸気バリア性が得られず、膜厚が400nmを越えると、柔軟性がなくなり、折り曲げ、引張りなどの外的要因により、蒸着薄膜層(5)に亀裂や剥離が発生しやすくなるので好ましくない。
【0068】
尚、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)からなる支持体フィルム(4)と蒸着薄膜層(5)との間に熱架橋性プライマーコート層(図示せず)を設けて、該支持体フィルム(4)と蒸着薄膜層(5)との間の密着性を高めた無機酸化物蒸着フィルムを使用しても構わない。
【0069】
前記熱架橋性プライマーコート層としては、例えば、一般式M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C25などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される金属アルコキシドあるいは該金属アルコキシドの加水分解物または、一般式、R´Si(OR)3(R´:アルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表される3官能基のオルガノシランあるいは該オルガノシランの加水分解物の内、少なくとも一方とポリオール化合物およびイソシアネート化合物との複合物も使用することができる。
【0070】
または、一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アミノ基、イソシアネート基、スルホキシド基など、R:アルキル基など)で表される3官能基のオルガノシランとポリオール化合物およびイソシアネート化合物との複合物からなるものでも構わない。
【0071】
次に、前記金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C25などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される化合物で、例えば、アルコキシシラン化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタニウムアルコキシド化合物、その他などを使用することができる。
【0072】
具体的には、テトラメトキシシラン[Si(O−CH34]、テトラエトキシシラン[Si(O−C254]、テトライソプロポキシシラン[Si(O−iso−C374]、テトラブトキシシラン[Si(O−C494]、ジメチルジメトキシシラン[(H3C)2Si(O−CH32]、トリメトキシメチルシラン[H3CSi(O−CH33]、ジメチルジエトキシシラン[(H3C)2Si(O−C252]などのアルコキシシラン化合物、テトラメトキシジルコニウム[Zr(O−CH34]、テトラエトキシジルコニウム[Zr(O−C254]、テトライソプロポキシジルコニウム[Zr(O−iso−C374]、テトラブトキシジルコニウム[Zr(O−C494]などのジルコニウムアルコキシド化合物、テトラメトキシチタニウム[Ti(O−CH34]、テトラエトキシチタニウム[Ti(O−C254]、テトライソプロポキシチタニウム[Ti(O−iso−C374]、テトラブトキシチタニウム[Ti(O−C494]などのチタニウムアルコキシド化合物などを挙げることができる。
【0073】
また、該金属アルコキシドが、一般式、M(OR)n(式中、M:Si、Zr、Ti、Alなどの金属元素、R:CH3、C25などのアルキル基、n:金属元素の酸化数)で表される化合物の加水分解物であってもよい。
【0074】
次に、前記3官能基のオルガノシランは、一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表される化合物で、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランなどを挙げることができるが、これら
の化合物は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。また、前記一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アルキル基、ビニル基、エポキシ基、グリシドオキシプロピル基など、R:アルキル基など)で表される化合物の加水分解物であってもよい。
【0075】
さらに、該3官能基のオルガノシランは、一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アミノ基、イソシアネート基、スルホキシド基など、R:アルキル基など)で表される化合物で、例えば、γ−アミノ−プロピルトリメトキシシラン、γ−アミノ−プロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができるが、これらの化合物は、単独で使用しても、2種類以上の混合物で使用してもよい。また、前記一般式、R´Si(OR)3(式中、R´:アミノ基、イソシアネート基、スルホキシド基など、R:アルキル基など)で表される化合物の加水分解物であってもよい。
【0076】
次に、該熱架橋性プライマーコート層を構成している、ポリオール化合物としては、ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールを使用することができる。
【0077】
前記ポリエステルポリオールは、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びこれらの反応性誘導体の酸原料と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3−ブタンジオール、1、4−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのアルコール原料から公知の製造方法で得られたポリエステル系樹脂のうち末端に2個以上の水酸基(ヒドロキシル基)を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
【0078】
次に、前記アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、もしくはアクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーと共重合させて得られる高分子化合物のうち、末端にヒドロキシル基を持つもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。
【0079】
中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを単独で重合させたものや、スチレンなどのその他のモノマーを加え、共重合させたアクリルポリオールが好ましく使用される。
【0080】
また、イソシアネート化合物との反応性を考慮するとヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。
【0081】
次に、該ポリオール化合物と3官能基のオルガノシランの配合比は、重量比で1/1〜100/1の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2/1〜50/1の範囲内である。
【0082】
溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば、特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが単独および任意に配合されたものを使用することができる。
【0083】
しかし、該3官能基のオルガノシランを加水分解するために塩酸や酢酸などの水溶液を使用することがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコールなどと極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を使用することがより好ましい。
【0084】
また、3官能基のオルガノシランの配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加しても一向に構わない。添加される触媒としては、反応性および重合安定性の観点から塩化錫(SnCl2、SnCl4)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)2Cl2)、錫アルコキシドなどの錫化合物であることが好ましい。これらの触媒は、配合時に直接添加してもよく、またメタノールなどの溶媒に溶かして添加してもよい。添加量は、少なすぎても多すぎても触媒効果は得られないため、3官能基のオルガノシランに対してモル比で1/10〜1/10000の範囲内が好ましく、さらに望ましくは、1/100〜1/2000の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
次に、該イソシアネート化合物は、ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールと反応してできるウレタン結合により、基材フィルムや蒸着薄膜層との密着性を高めるために添加されるもので、主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。
【0086】
このようなイソシアネート化合物としては、芳香族系のトリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート、脂肪族系のキシリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が使用され、これらは単独または混合物として用いられる。
【0087】
該ポリオール化合物とイソシアネート化合物の配合比は、特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキングなどが発生し加工上問題がある。そこでポリオール化合物とイソシアネート化合物の配合比としては、イソシアネート化合物由来のイソシアネート基がポリオール化合物由来の水酸基の50倍以下であることが好ましい。特に、好ましいのは、イソシアネート基と水酸基が等量で配合される場合であり、その混合方法は、公知の方法が使用できる。
【0088】
次に、該熱架橋性プライマーコート層を形成するためのプライマー溶液の調液法としては、3官能基のオルガノシランとポリオール化合物およびイソシアネート化合物を任意の配合比で混合した複合混合溶液を作り、それを支持体フィルム(4)上にコーティングして形成する。
【0089】
その複合混合溶液の作り方としては、3官能基のオルガノシランとポリオール化合物を混合し、溶媒、希釈剤を加え、任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して複合混合溶液を作る方法、または予め3官能基のオルガノシランを溶媒中に混合しておき、その後ポリオール化合物を混合させたものを溶媒、希釈剤を加え任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物を加え複合混合溶液を作る方法などがある。
【0090】
この複合混合溶液に各種添加剤、例えば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化物、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩などの硬化促進剤や、フェノール系、硫黄系、ホスファイト系などの酸化防止剤、レベリング剤、流動調製剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤などを必要に応じて添加することも可能である。
【0091】
該熱架橋性プライマーコート層の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば、特に限定されないが、その乾燥膜厚が5〜300nmの範囲内であることが好ましい。厚さが、5nm以下では均一な塗膜形成ができず、安定的な密着性が得られず、300nm以上
では、物性的に平衡に達するので経済的でない。
【0092】
該熱架橋性プライマーコート層を形成する方法は、例えば、公知のグラビアロールコーティング方式、リバースロールコーティング方式、バーコーティング方式、滴下方式などを使用することができる。
【0093】
次に、前記無機酸化物蒸着フィルムのガスバリア性をさらに高めるために、該無機酸化物の蒸着薄膜層(5)上にガスバリア性被覆層(図示せず)を積層した構成にしても構わない。該ガスバリア性被覆層としては、例えば、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物または、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含むものからなるもの使用することができる。
【0094】
該ガスバリア性被覆層は、該蒸着薄膜層(5)の後工程での2次的な各種損傷を防止するとともに、より高いガスバリア性を付与するために該蒸着薄膜層(5)上に設けられるものであり、その成分は、水溶性高分子と、(a)1種以上の金属アルコキシドおよびその加水分解物または、(b)塩化錫、の少なくとも一方を含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を該蒸着薄膜層(5)上に塗布してガスバリア性被覆層を形成するものである。
【0095】
例えば、水溶性高分子と塩化錫を水系(水溶液あるいは水/アルコール混合溶液)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行なったものを混合した溶液を該蒸着薄膜層(5)上にコーティングし、加熱乾燥し形成したものである。
【0096】
前記水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0097】
特に、ポリビニルアルコール(PVA)は、ガスバリア性が優れているので好ましく、ここでいうポリビニルアルコール(PVA)は、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものである。
【0098】
前記ポリビニルアルコール(PVA)としては、例えば、酢酸基が数十%残存している、所謂、部分鹸化ポリビニルアルコール(PVA)から酢酸基が数%しか残存していない完全鹸化ポリビニルアルコール(PVA)などを含み、特に限定されるものではない。
【0099】
前記塩化錫は、塩化第一錫、塩化第二錫、或いはそれらの混合物であり、またこれら塩化錫の無水物及び水和物なども使用できる。
【0100】
次に、金属アルコキシドとしては、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定なテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムなどが好ましい。
【0101】
さらに、該コーティング剤には、そのガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を、必要に応じて加えることができる。
【0102】
該コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。
【0103】
このようなイソシアネート化合物として、例えばトリレンジイソシアネート、トリフェ
ニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が挙げられる。
【0104】
該ガスバリア性被覆層を該蒸着薄膜層(5)上に形成する方法は、グラビアコーティング方式、リバースロールコーティング方式、エアナイフコーティング方式などの公知の方法で塗布した後、加熱、乾燥して形成される。
【0105】
その際の該ガスバリア性被覆層の厚さは、乾燥後の厚さが、0.01〜50μmの範囲内にあることが好ましい。該乾燥後の厚さが、0.01μm以下では、十分なガスバリア性が得られず、50μm以上の場合は、塗膜にクラックが入り易く、ガスバリアに悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0106】
以上のように、バリア性積層フィルム(6)が、支持体フィルム(4)/プライマー層(図示せず)/無機酸化物の蒸着薄膜層(5)/ガスバリア性被膜層(図示せず)の層構成からなる無機酸化物蒸着フィルムを使用しても構わない。
【0107】
次に、図1に示すように、印刷基材フィルム(1)上に設けた紫外線カットインキ層(2)面とバリア性積層フィルム(6)の支持体フィルム(4)面、さらに該バリア性積層フィルム(6)の該蒸着薄膜層(5)面とシーラント層(7)とを接着層(3、3a)を介して順次積層する方法、また図2に示すように、バリア性積層フィルム(6)の該蒸着薄膜層(5)上に設けた紫外線カットインキ層(2)面とシーラント層(7)とを接着層(3b)を介して積層する方法は、例えば、ドライラミネーション方法、ノンソルベントドライラミネーション方法、ホットメルトラミネーション方法、エクストルージョンラミネーション方法、該エクストルージョンラミネーション方法を利用したサンドイッチ・エクストルージョンラミネーション方法などの公知の方法を適宜使用することができる。
【0108】
先ず、前記ドライラミネーション方法は、ドライラミネーション用接着剤からなる接着層を介して、一方のフィルムと、他方のフィルムとをラミネーションする方法で、コーティング部、乾燥装置、ニップローラー部の3つのセクションと、巻き出し、巻き取り、及びテンションコントロールシステムから構成されている。
【0109】
該コーティング部は、一般的にグラビアロールコーティング方式、又はリバースロールコーティング方式を採用している。
【0110】
該ドライラミネーション方法に使用する接着剤は、一般的に、ポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他などのドライラミネーション用接着剤を使用することができる。
【0111】
前記ラミネーション用接着剤は、溶剤型接着剤、或いは無溶剤型接着剤が使用されるが、無溶剤型接着剤を使用する場合は、乾燥装置は不要であり、特に、ノンソルベントドライラミネーション方法と呼んでいる。
【0112】
前記ホットメルトラミネーション方法は、加熱溶融したエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ワックス、粘着付与剤などからなるホットメルト接着剤を介して、一方のフィルムと、他方のフィルムとを、直ちにラミネーションする方法である。
【0113】
前記エクストルージョンラミネーション方法は、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)などの熱可塑性樹脂を加熱し、シリンダーと呼ばれる筒の中で溶解し、スクリューで圧力をかけて押し出し、該シリンダーの先端部にあるTダイスと呼ばれる、細いスリットからカーテン状に溶解した該熱可塑性樹脂を押し出してフィルム状にした後、基材フィルムに
ダイレクトにラミネーションする方法である。
【0114】
この際、該エクストルージョンラミネーション方法を利用して、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)などの熱可塑性樹脂を接着剤にして、一方のフィルムと他方のフィルムとをラミネーションするサンドイッチ・エクストルージョンラミネーション方法を使用することもできる。
【0115】
以上のように、各種のラミネーション方法を用いることは可能であるが、本発明においては、包装材料の透明性、接着強度、加工性などを考慮するとドライラミネーション方法が好ましい。
【0116】
ところで、前述のように前記紫外線カット性包装材料が透明である必要がない場合は、通常の絵柄印刷層(図示せず)を前記印刷基材フィルム(1)と紫外線カットインキ層(2)との中間に設けるか、または前記無機酸化物の蒸着薄膜層(5)と紫外線カットインキ層(2)との中間に設けることが可能である。
【0117】
その印刷方法は、例えば、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、シルクスクリーン印刷方式などにより設けることができるが、鉄製の円筒(シリンダー)表面上に銅メッキを施して下地を形成し、該銅メッキ面上に剥離層を設け、更に銅メッキをして、その表面を鏡面状に研磨した銅面に彫刻方式や腐食方式により、凹部(セル)を作成し、該セル内の印刷インキを被印刷面に転移させて、調子物でもカラフルに印刷ができ、且つ訴求効果も高いグラビア印刷方式が好ましい。
【0118】
また、該印刷基材フィルム(1)の印刷面に絵柄インキの密着性を良くするために、コロナ放電処理、グロー放電処理、低温プラズマ処理、火炎処理、薬品処理、溶剤処理などの公知の方法で前処理を行なう場合もある。また、該印刷基材フィルム(1)の表裏面には、公知の各種の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、可塑剤、及び滑剤などを使用することも可能である。
【実施例】
【0119】
以下に、本発明の具体的実施例を挙げて、さらに詳しく説明する。
【0120】
<実施例1>
印刷基材フィルム(1)には、厚さ25μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を使用し、該OPET片面に紫外線カットインキ[東洋インキ製造株式会社製、商品名:Z1124UVカットコート剤(バインダー樹脂:ウレタン/塩酢ビ系樹脂を使用)]を深度28μmのグラビア版でグラビア印刷を行なって紫外線カットインキ層(2)を積層した。
【0121】
一方、別工程で支持体フィルム(4)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を使用し、真空蒸着装置を用いて該OPET片面に厚さ50nmの酸化アルミニウムの蒸着薄膜層(5)を積層してなるバリア性積層フィルム(6)を得た。
【0122】
次に、ドライラミネーション機で、前記紫外線カットインキ層(2)面とポリウレタン系接着剤からなる接着層(3)を介して前記別工程で作製したバリア性積層フィルム(6)の非蒸着面と積層した後、同様にポリウレタン系接着剤からなる接着層(3a)を介して厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)フィルムからなるシーラント層(7)を積層して、以下に示す、本発明の紫外線カット性包装材料を得た。
(最外層側)OPET(25μm)(1)/紫外線カットインキ層(2)/接着層(3)
/酸化アルミニウム蒸着OPET(12μm)(6)/接着層(3a)/L−LDPE(40μm)(7)(最内層側)。
【0123】
<実施例2>
支持体フィルム(4)として、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OPET)を使用し、真空蒸着装置を用いて、該OPET片面に厚さ50nmの酸化アルミニウムの蒸着薄膜層(5)を積層してなるバリア性積層フィルム(6)を作製した。
【0124】
該バリア性積層フィルム(6)の蒸着面に紫外線カットインキ[東洋インキ製造株式会社製、商品名:Z1116UVカットコート剤(バインダー樹脂:ウレタン/硝化綿系樹脂を使用)]を深度28μmのグラビア版でグラビア印刷を行なって紫外線カットインキ層(2)を積層した。
【0125】
次に、ドライラミネーション機で、前記紫外線カットインキ層(2)面とポリウレタン系接着剤からなる接着層(3b)を介して厚さ40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(L−LDPE)フィルムからなるシーラント層(7)を積層して、以下に示す、本発明の紫外線カット性包装材料を得た。
(最外層側)酸化アルミニウム蒸着OPET(12μm)(6)/紫外線カットインキ層(2)/接着層(3b)/L−LDPE(40μm)(7)(最内層側)。
【0126】
<評価1>
実施例1、2で得られた、紫外線カット性包装材料の紫外線カット性を確認するため、測定波長360〜400nmまでの紫外線透過率(%)を分光光度計(株式会社島津製作所製UV−1200)により測定した。また、同時に内容物視認性も目視で確認した。その結果を表1に示した。
【0127】
【表1】

表1は、前記測定波長300〜400nmまでの紫外線カット率(%)の測定結果および内容物視認性の確認結果を示した表である。○は紫外線カット性包装材料の透明性が良く内容物視認性が良好。
【0128】
<評価2>
実施例1、2で得られた、紫外線カット性包装材料の各保管条件による色の変化を目視で確認した。その結果を表2に示した。
【0129】
【表2】

表2は、各保管条件による色の変化を目視で確認した結果を示した表である。
【0130】
表1および表2の結果から、実施例1の紫外線カット性包装材料は、波長370nm以下の波長域の紫外線は完全カットし、波長390nm以下の波長域の紫外線は80%以上カットして、優れた紫外線カット性を有している。また、内容物視認性も優れ、さらに長期保存しても色の変化がなく良好である。実施例2の紫外線カット性包装材料は、実施例1と同様に波長370nm以下の波長域の紫外線は完全カットし、波長390nm以下の波長域の紫外線は80%以上カットして、優れた紫外線カット性を有している。また、内容物視認性も優れている。しかし、保管条件によって色の変化があり良くない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に係る紫外線カット性包装材料の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る紫外線カット性包装材料の層構成のその他の実施例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0132】
1・・・印刷基材フィルム
2・・・紫外線カットインキ層
3、3a、3b・・・接着層
4・・・支持体フィルム
5・・・無機酸化物の蒸着薄膜層
6・・・バリア性積層フィルム
7・・・シーラント層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷基材フィルム上に、少なくとも紫外線吸収剤を含有する紫外線カットインキ層と最内層にシーラント層を順次積層したことを特徴とする紫外線カット性包装材料。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤として、少なくともベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いたことを特徴とする請求項1記載の紫外線カット性包装材料。
【請求項3】
前記紫外線カットインキ層を形成するインキのバインダー樹脂(固着剤)がウレタン/塩酢ビ系樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線カット性包装材料。
【請求項4】
前記印刷基材フィルム上に紫外線カットインキ層がグラビア印刷方式で形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の紫外線カット性包装材料。
【請求項5】
前記グラビア印刷方式に用いられる版の深度が28〜42μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の紫外線カット性包装材料。
【請求項6】
前記紫外線カットインキ層と最内層のシーラント層との間にバリア性積層フィルムを有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の紫外線カット性包装材料。
【請求項7】
前記バリア性積層フィルムが無機酸化物蒸着フィルムからなることを特徴とする請求項6記載の紫外線カット性包装材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−126181(P2007−126181A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320544(P2005−320544)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】