説明

紫外線照射装置

【課題】 複数のLEDをライン方向に列設した場合においても、照射領域において均一な照度分布を得ることができ、また、紫外線の照射効率を向上させることが可能な紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】 紫外線照射装置は、照射面1に沿ったライン方向に列設された紫外線を射出するLED2と、この複数個のLED2の前方においてライン方向に沿って配設され、ライン方向と直交する方向にのみパワーを有するシリンダーレンズ3と、その光軸が各LED2の光軸5と一致する状態で複数個のLED2に各々対応して列設され、その光軸の全周方向にパワーを有することにより、LED2より射出された紫外線の光束を狭角とするためのメニスカスレンズ4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、照射面を紫外線を射出するLEDを用いてライン状に照射する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような紫外線照射装置は、UV(紫外線)硬化型樹脂のキュアー、UV接着剤の乾燥、UVインクの乾燥等に使用される。
【0003】
このような紫外線照射装置としては、照明を行うべきライン方向に複数個列設されたLEDと、このLEDの前方においてライン方向に沿って配設されたシリンダーレンズとを有するものが知られている。このような紫外線照射装置においては、シリンダーレンズとしてライン方向と直交する方向にのみパワーを有するものを使用し、このシリンダーレンズの作用によりLEDから射出された紫外線を照射すべきライン方向と直交する方向にのみ集光するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−158274号公報参照
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような紫外線照射装置においては、照射面における照度分布の均一さが要求される。しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、LEDから、例えば120度程度の配光角で射出される紫外線を、ライン方向と直交する方向にのみパワーを有するシリンダーレンズを利用して集光するものであることから、ライン方向の照度分布については考慮されていなかった。
【0006】
すなわち、シリンダーレンズでは、LEDから射出された紫外線について、ライン方向には光束の制御を行わないことから、ライン状の照射領域の中央付近では照度が高く、また、照射領域の両端付近では照度が低くなるという問題がある。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、複数のLEDをライン方向に列設した場合においても、照射領域において均一な照度分布を得ることができ、また、紫外線の照射効率を向上させることが可能な紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、照射面を紫外線によりライン状に照射する紫外線照射装置であって、前記ライン方向に複数個列設され、紫外線を射出するLEDと、前記複数個のLEDの前方において前記ライン方向に沿って配設され、前記ライン方向と直交する方向にのみパワーを有するシリンダーレンズと、前記複数個のLEDと前記シリンダーレンズとの間において、その光軸が前記各LEDの光軸と一致する状態で前記複数個のLEDに各々対応して列設され、その光軸の全周方向にパワーを有することにより、前記LEDより射出された紫外線の光束を狭角とするためのメニスカスレンズとを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数のLEDのうちの一つのLEDから射出され、前記メニスカスレンズおよび前記シリンダーレンズを通過した紫外線のライン方向の配光全角の端縁が、そのLEDと隣接するLEDの光軸と略一致する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ライン方向と直交する方向においては、前記複数のLEDから射出され、前記メニスカスレンズおよび前記シリンダーレンズを通過した紫外線のビームウエストの位置が、前記照射面とほぼ一致する。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記複数のメニスカスレンズは、連結部を介して接続された状態で一体成型される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、各LEDに各々対応して列設され、LEDより射出された紫外線の光束を狭角とするメニスカスレンズの作用により、複数のLEDをライン方向に列設した場合においても、照射領域において均一な照度分布を得ることが可能となる。また、メニスカスレンズの作用により、各LEDとメニスカスレンズのLED側の表面との距離を略一定とすることができることから、各メニスカスレンズより射出された光束を略均一に配光分布することができ、シリンダーレンズを通過後照射面の照度分布をより均一にすることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、紫外線のライン方向の配光全角の端縁が隣接するLEDの光軸と一致することから、照射面のライン方向の全領域においてより均一な照度分布を得ることが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、紫外線のビームウエストの位置が照射面とほぼ一致することから、照射面の照度を向上させることが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記複数のメニスカスレンズが連結部を介して接続された状態で一体成型されることから、複数のメニスカスレンズの位置決めと装着とを容易に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係る紫外線照射装置のライン方向の側面図である。
【図2】この発明に係る紫外線照射装置のライン方向と直交する方向の側面図である。
【図3】LED2とメニスカスレンズ4との配置関係を示す説明図である。
【図4】照射面1上の照度分布を示すグラフである。
【図5】この発明の他の実施形態に係るメニスカスレンズの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1はこの発明に係る紫外線照射装置のライン方向の側面図であり、図2はそのライン方向と直交する方向の側面図である。
【0018】
この紫外線照射装置は、照射面1を紫外線によりライン状に照射するためのものであり、照射面1に沿ったライン方向(図1における左右方向、図2における紙面に垂直な方向)に複数個(この実施形態においては9個)列設された紫外線を射出するLED2と、この複数個のLED2の前方においてライン方向に沿って配設され、ライン方向と直交する方向(図1における紙面に垂直な方向、図2における左右方向)にのみパワーを有するシリンダーレンズ3と、複数個のLED2とシリンダーレンズ3との間において、その光軸が各LED2の光軸5と一致する状態で複数個のLED2に各々対応して列設され、その光軸の全周方向にパワーを有することにより、LED2より射出された紫外線の光束を狭角とするための軸対称のメニスカスレンズ4とを備える。
【0019】
図3は、LED2とメニスカスレンズ4との配置関係を示す説明図である。
【0020】
片面が凸で片面が凹であるメニスカスレンズ4は、図3に示すように、その凹面の表面とLED2の出射部との距離がほぼ一定となるような形状を有する。こうすることで、LED2から角度を持って射出配光される紫外線の光束を、メニスカスレンズ4の凹面にほぼ垂直に(凹面の法線方向から)入射させることができる。このため、図3に示すように、LED2から略均一な配光で射出した紫外線を、略均一性を崩すことなく配光分布することができ、シリンダーレンズ3を通過後照射面の照度分布をより均一にすることが可能となる。
【0021】
図1に示すように、各LED2から射出され、メニスカスレンズ4およびシリンダーレンズ3を通過した紫外線は、その配光全角の端縁6が、照射面1において、そのLED2の隣に配置されたLED2の光軸5とほぼ一致するように配置されている。すなわち、図1に示すように、紫外線の配光全角の最も外側の部分6が、照射面1において、LED2の光軸5上に位置するように、LED2、メニスカスレンズ4およびシリンダーレンズ3が配置、設計されている。このような構成を採用することにより、照射面のライン方向の照度は、2個のLEDの配光が互いに重なることになり、これにより全領域にわたって隣接するLED2の配光が重ね合わされて、均一な照度分布が得られる。このため、照射面1すなわち照射領域において、均一な照度分布を得ることが可能となる。
【0022】
また、図2に示すように、ライン方向と直交する方向においては、各LED2から射出され、メニスカスレンズ4およびシリンダーレンズ3を通過した紫外線のビームウエストWの位置が、照射面1の位置とほぼ一致している。このように、シリンダーレンズ3の焦点距離等を設定することにより、LED2から射出された紫外線を照射面1上で集光させることができ、照射面積が小さくなることで照射面の照度を向上させることが可能となる。
【0023】
なお、この実施形態においては、LED2として、特に、高出力の紫外線を射出するパワーLEDを採用している。このようなパワーLEDは、そのパワー(光束)は大きいが、配光角も広いという特徴を有する。このため、紫外線の広がりにともなってその照射面も広くなり、照度が低くなるという問題を生ずる。これに対して、上述した構成を採用することにより、複数のパワーLEDをライン方向に列設した場合においても、照射面の照度を向上させながら、照射領域において均一な照度分布を得ることが可能となる。
【0024】
図4は、上述した紫外線照射装置による照射面1上の照度分布を示すグラフである。この図において、図4(a)は上述したライン方向の照度分布を示しており、図4(b)はライン方向と直交する方向の照度分布を示している。なお、これらの図において横軸は照射面上の位置を、また、縦軸は(放射)照度を示している。
【0025】
この発明によれば、ライン方向に関しては、LED2から広い角度で配光される略均一な分布を有する紫外線を、メニスカスレンズ4によりその均一性を崩すことなく、その配光角を狭角として照射面1に導いている。そして、そのときに隣接するLED2の配光を重ね合わせ、より具体的には、2個のLED2の配光が全領域で重ねあわされる構成を採用することにより、最終的にライン方向の照度の均一性と、照度の向上とを図っている。
【0026】
一方、ライン方向と直交する方向に対しては、メニスカスレンズ4により上記と同様の効果を得るとともに、シリンダーレンズ3によって紫外線を集光させることで、照度の均一性と、照度の向上とを図っている。
【0027】
従って、この図に示すように、ライン方向においては、個々のLED2とメニスカスレンズ4とで均一な配光分布を達成させ、シリンダーレンズ3を通過後照射面では、隣接するLED2から配光を重ね合わせることになり、ほぼ均一な照度分布を得ることができ、また、ライン方向と直交する方向においては、強いピークを有する集光された照度分布を得ることが可能となる。
【0028】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図5は、この発明の他の実施形態に係るメニスカスレンズユニットの説明図である。
【0029】
このメニスカスレンズユニットは、上述した実施形態と同位置の複数のメニスカスレンズ4を、連結部9により連結した構成を有する。このメニスカスレンズユニットは、メニスカスレンズ4と連結部9とを連結した状態で一体成型されたものである。
【0030】
このような構成を採用することにより、複数のメニスカスレンズ4の位置決めと装着とを容易に実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 照射面
2 LED
3 シリンダーレンズ
4 メニスカスレンズ
5 光軸
6 紫外線の配光全角の端縁
9 連結部
W ビームウエスト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射面を紫外線によりライン状に照射する紫外線照射装置であって、
前記ライン方向に複数個列設され、紫外線を射出するLEDと、
前記複数個のLEDの前方において前記ライン方向に沿って配設され、前記ライン方向と直交する方向にのみパワーを有するシリンダーレンズと、
前記複数個のLEDと前記シリンダーレンズとの間において、その光軸が前記各LEDの光軸と一致する状態で前記複数個のLEDに各々対応して列設され、その光軸の全周方向にパワーを有することにより、前記LEDより射出された紫外線の光束を狭角とするためのメニスカスレンズと、
を備えたことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紫外線照射装置において、
前記複数のLEDのうちの一つのLEDから射出され、前記メニスカスレンズおよび前記シリンダーレンズを通過した紫外線の前記ライン方向の配光全角の端縁が、前記照射面において、そのLEDと隣接するLEDの光軸と略一致する紫外線照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の紫外線照射装置において、
前記ライン方向と直交する方向においては、前記複数のLEDから射出され、前記メニスカスレンズおよび前記シリンダーレンズを通過した紫外線のビームウエストの位置が、前記照射面とほぼ一致する紫外線照射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の紫外線照射装置において、
前記複数のメニスカスレンズは、連結部を介して接続された状態で一体成型される紫外線照射装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−60798(P2011−60798A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205428(P2009−205428)
【出願日】平成21年9月7日(2009.9.7)
【出願人】(502231904)株式会社仲久 (4)
【Fターム(参考)】