説明

紫外線照射装置

【課題】照射物を高温化させずに、なおかつ、照射物の温度差を小さくさせて、高出力で紫外線照射することができる紫外線照射装置を提供すること。
【解決手段】光透過性部材により覆われた放電ランプが複数並列に配置された構造において、各光透過性部材は、冷却風が当該放電ランプの長手方向中央近傍から導入されて軸方向に沿って両端に向かって流れることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紫外線照射装置に関する。特に、液晶パネルの製造工程で使用する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルは2枚の光透過性基板(ガラス基板)の間に液晶を封入した構造をしており、その製造工程では、液晶中にモノマーを分散させて紫外線を照射する工程がある。
この工程では、液晶およびモノマーに対して高照度で紫外線を照射させる必要があるが、その一方で、液晶およびモノマーをあまりに高い温度に曝すわけにはいかない。特に、モノマーは温度依存性が高いため、ランプからの輻射熱があたると容易に変質してしまう。さらに、場所的に不均一に高温化されてしまうとモノマーの反応に差を生じ、液晶の傾きにムラを発生させる。このムラは製品時に濃淡ムラとなって現れてしまう。なお、このような液晶パネルの製造方法は、例えば、特開2003−177408号に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−177408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、照射物を高温化させることなく、高出力で紫外線照射することができる紫外線照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、この発明の紫外線照射装置は、光透過性部材により覆われた放電ランプが複数並列に配置された構造において、各光透過性部材は、冷却風が当該放電ランプの長手方向の中央近傍から導入されて軸方向に沿って両端に分流することを特徴とする。
【0006】
前記光透過性部材は波長300nm〜波長400nmの紫外光を透過する部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紫外線照射装置は、以下の効果を得ることができる。
(1)放電ランプを光透過性部材によって覆い、その中に冷却風を流すことで、放電ランプから放射される紫外線の高出力化を達成できる。また、放電ランプおよび光透過性部材からの輻射熱を低下できるので、照射物の高温化を防止できる。
(2)複数の放電ランプが並列配置されているが、光透過性部材の内部に流れる冷却風は、中央近傍から両端にそれぞれ向かうように構成されるため、軸方向の冷却風の上流に相当する位置と下流に相当する位置における照射物の温度差を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の紫外線照射装置の概略構成を示す。
【図2】本発明の紫外線照射装置の概略構成を示す。
【図3】本発明を説明するための図面を示す。
【図4】本発明を説明するための図面を示す。
【図5】本発明の紫外線照射装置に使うエキシマランプを示す。
【図6】本発明の紫外線照射装置の他の実施例を示す。
【図7】本発明の紫外線照射装置の他の実施例を示す。
【図8】本発明の紫外線照射装置の他の実施例を示す。
【図9】本発明の紫外線照射装置の他の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の紫外線照射装置の概略構成を示す。
紫外線照射装置1は開口面を有する全体略箱型のケーシング10より構成される。ケーシング10の上壁11には仕切部材13が取り付けられている。放電ランプ2(以下、単に「ランプ」ともいう)は全体が長尺状であって、後述するように例えば波長300〜400nmの紫外光を放射する。このランプ2は筒状の光透過性部材3によって全体が取り囲まれている。光透過性部材3は例えば石英ガラスから構成されており、ランプ2が放射する紫外光を透過する性質を有している。ここで、本発明では放電ランプと光透過性部材をあわせて光源4と称する。光源4は両端において取付部材131を介して仕切部材13に保持されている。仕切部材13は例えばステンレスから構成されている。ランプ2の放射方向には照射物(ワーク)Wが配置される。照射物Wにはランプ2の直射光が照射されるとともに、反射部材14を介して反射光も照射される。ここで反射部材14は支持部材13と同一部材であってもよいし、紫外光反射特性がより高い材料を使ってもよい。ケーシング10の上壁11には送風パイプ30用の開口が設けられており、ケーシング10の外側において送風パイプ30の端部に冷却ファン20が取り付けられる。冷却ファン20はケーシング10の外部から吸引して送風パイプ30を介して光透過性部材3の軸方向ほぼ中央位置から冷却風を導入する。導入された冷却風は、光透過性部材3の軸方向の中央位置において、光透過性部材3の両端部にそれぞれ分かれるように流れる。光透過性部材3の一端から排出された風は、ケーシング10内の空間161を介して一方の側壁121に設けられた排風口151から排出され、また、光透過性部材3の他端から排出された風は、ケーシング10内の空間162を介して他方の側壁122に設けられた排風口152から排出される。なお、図では、ランプ2が光透過性部材3の中で固定されるための具体的構成は省略しているが、例えばランプ2の両端に弾性部材を取り付けて光透過性部材3の内面に押圧保持させることが可能である。また、排気された風は、例えば熱交換器を用いて冷却した後で再び冷却ファン20に循環させることができる。
【0010】
図2は図1に示した装置において上部(上壁11)から眺めた内部構造を示す。ケーシング10の内部には複数のランプ2(2A、2B、2C、2D、2E、2F)が並列的に配置されており、それぞれのランプごとに光透過性部材3(3A、3B、3C、3D、3E、3F)が存在している。光透過性部材3には長手方向の中央近傍に送風パイプ30(30A、30B、30C、30D、30E、30F)が接続している。送風パイプ30には図示略の冷却ファン20(20A、20B、20C、20D、20E、20F)が接続されている。図において、便宜上、ランプ2が6本配置する構成を示しているが、実際には20〜40本の範囲から選択される本数、例えば36本配置されている。
具体的に説明すると、ランプ2Aに対して光透過性部材3Aが覆うように設けられており、ランプ2Bに対して光透過性部材3Bが覆うように設けられており、ランプ2Cに対して光透過性部材3Cが覆うように設けられており、ランプ2Dに対して光透過性部材3Dが覆うように設けられており、ランプ2Eに対して光透過性部材3Eが覆うように設けられており、ランプ2Fに対して光透過性部材3Fが覆うように設けられている。光透過性部材3の一方の端部には空間161(161A、161B、161C、161D、161E、161F)と、側壁121に排出口151(151A、151B、151C、151D、151E、151F)が形成されており、また、光透過性部材3の他方の端部には空間162(162A、162B、162C、162D、162E、162F)と、側壁122に排出口152(152A、152B、152C、152D、152E、152F)が形成されている。送風パイプ30にはそれぞれ冷却ファンを取り付けてもよく、例えば軸流ファンを使った場合、1つの光源に対して例えば4m/分の送風量を有し、光源が36個あれば144m/分の送風能力を有している。
【0011】
ランプ2Aについて説明すると、冷却ファン20Aから吸引された風は、送風パイプ30A→光透過性部材3Aと流れて分流する。一部は排出側の空間161Aを介して排出開口151Aからケーシング10の外部に排風され、他は排出側の空間162Bを介して排出開口152Aからケーシング10の外部に排風される。他のランプ2B、2C、2D、2E、2Fも同様である。
【0012】
図3は1つの光源の軸方向の各位置におけるワークの温度変化を概念的に示すものである。横軸は光源の軸方向の位置を示し、縦軸は光源直下のワーク面温度を示す。同図(a)は横軸方向に紙面左から右に向けて冷却風が流れる場合の当該光源直下におけるワーク温度を示す。同図(b)は横軸方向に紙面中央から両端に向けて冷却風が流れる場合の当該光源直下におけるワーク温度を示す。
図から分るように、冷却風の上流側に相当するワーク面温度は、冷却風の下流側に相当するワーク面温度よりも低い。これは、光源の上流側はランプの外表面温度も光透過性部材の外表面温度も下流側に比べて低いため、ランプ外表面や光透過性部材外表面から放射される輻射熱が小さいからである。特に、本願発明の光照射装置は、G8サイズといわれる液晶をワークとするものであり、光源(ランプおよび光透過性部材)の長さは2600mm以上の長尺となる。さらに、光源とワークの間隙は30mm以下と小さいことから、長尺状光源に対して冷却風を流しても上流側と下流側では例えば10℃程度の温度が生じてしまう。
(b)に示す冷却構造は(a)に示す冷却構造に比べてワーク面における温度の分布差が小さい。冷却風が光透過性部材に導入されてから排出されるまでの距離が(a)に示す冷却構造に比べて小さいからである。
【0013】
図4はランプ2の拡大構造を示す。同図(a)は全体の外観図を示し、(b)は(a)のA−A線断面図を示す。
ランプ2は例えば石英ガラスなどの誘電体材料によって、断面が略方形状の放電容器21を備える。容器21の上壁部211の外面にはメッシュ状の電極221が設けられており、下壁部212の外面にはメッシュ状の電極222が設けられている。これら電極221、222は、容器21の内部に形成された放電空間Sおよび容器21を構成する誘電体材料を挟んで対向するように設けられている。放電空間Sにはキセノンガスが封入されており、また容器21の内壁面には部分的に蛍光体を塗布してもよい。
【0014】
電極間に電力が供給されると、容器21の壁材を介在して誘電体バリア放電が生じ、メッシュ状の電極222を通過して外部に波長300〜400nmの紫外線が放射される。また、容器21の内面には反射材23が塗布されており、一定方向に紫外線が放射される。
【0015】
図5は本発明の他の実施形態を示す。1つの光源4の長手方向において、複数の冷却ファン20(201、202、203)と、複数の送風パイプ30(301、302、303)が形成されている。このような構成により、光源4の長手方向における対応するワークの表面温度をより均一にすることができる。特に、送風パイプ30(301、302、303)の光透過部材3への接続位置や、冷却ファン20(201、202、203)の風量バランスを調整することで可能となる。
【0016】
図6は本発明の他の実施形態を示す。図は光源4のみを便宜上4つ示すものであり、光源4Aと光源4Cは冷却ファン(図示略)が吹出型であって、光透過性部材3の両端からそれぞれ吸引された冷却風が送風パイプ20を介して冷却ファンから排出される。冷却風の流れは図示のように光透過性部材3の両端から中央に向かうものとなる。光源4Bと光源4Dは冷却ファン(図示略)が吸引型であって、光透過性部材3の中央位置から両端に向かって流れる。
【0017】
図7は図6に示した実施形態を技術的に説明するための説明図である。なお、送風パイプ30や冷却ファン20などの記載は省略している。
図において、矢印は、ランプおよび光透過性部材から放射される輻射熱を示しており、便宜上、光源4B(ランプ2Bと光透過性部材3B)、光源4C(ランプ2Cと光透過性部材3C)、光源4D(ランプ2Dと光透過性部材3D)から放射される輻射熱のみ図示している。ここで、光源4Cに着目した場合、光源4Cから放射される輻射熱は、光源4C直下のワーク面部分Wcを放射するだけではなく、隣に配置される光源4B下のワーク面部分Wbや光源4D下のワーク面部分Wdに対しても放射する。つまり、ワークのある領域に着目すると、当該領域の直上に位置する光源からの熱放射だけでなく、隣接する光源から放射される熱放射の影響も大きく受けているわけである。
図6に示す実施形態は、このような構造おいて、光源内に流れる冷却風の方向がすべての光源で同一であると、風路の上流側に相当するワーク温度と、下流側に相当するワーク温度の差が相乗的に大きくなるため、温度差を極力小さくするために流れる方向を交互に変えるものである。
【0018】
図8、図9は本発明の他の実施形態を示す。図8は図1と同じ方向から見た装置の内部構造を示し、図9は図8のX−X断面から見た構造である。
図1に示した構造と第一に相違する点は、図1に示した構造は冷却ファンと光透過性部材との間に送風パイプを有しているのに対し、本実施例の構造は送風パイプを有していないことである。
また、図1に示した構造と第二に相違する点は、図1に示した構造は上壁から下方に伸びる仕切部材に光源が取り付けられているのに対し、本実施例の構造は側壁に上壁とほぼ平行にのびる厚壁9を有することである。
また、図1に示した構造と第三に相違する点は、図1に示した構造は水冷構造を有していないのに対し、本実施例の構造は厚壁に水冷パイプ8が配設することで水冷構造を有していることである。
また、図1に示した構造と第四に相違する点は、図1に示した構造は光透過性部材がパイプ形状であるのに対し、本実施例の構造は光透過性部材が半割りのパイプ形状である。
変形例として、これら構造を選択的に採用することもできる。
【符号の説明】
【0019】
2 ランプ
3 光透過性部材
4 光源
10 ケーシング
20 吸引ファン
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性部材により覆われた放電ランプが複数並列に配置された構造を有する光照射装置おいて、
前記光透過性部材は、冷却風が長手方向の中央近傍から導入されて軸方向に沿って両端に流れることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記光透過性部材は波長300nm〜波長400nmの紫外光を透過する部材であることを特徴とする請求項1の光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−88099(P2011−88099A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−245172(P2009−245172)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】