説明

紫外線照射装置

【課題】紫外線を対象物の表面にライン状に照射するにあたって、ラインの幅内の強度変化を抑制するとともに、対象物との距離変化による強度変化も抑制することができる紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】紫外線照射装置1は、複数のレーザダイオード2が並べて実装される2枚の基板3を備える。基板3の一面には、長手方向に沿ってレーザダイオード2が1列に並んで実装される。基板3は、長手方向を平行にして配置される。レーザダイオード2から放射される紫外線は、回折光学素子5により基板3の長手方向にのみ放射範囲が広がるように伝播方向が制御される。レーザダイオード2から放射される紫外線は回折光学素子5で回折されることにより所定の照射面にライン状の照射領域を形成し、この照射面において、各基板3に配置されたレーザダイオード2が形成する照射領域が重ね合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面に紫外線をライン状に照射する紫外線照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な対象物への印刷や塗装にあたって、紫外線硬化インクや紫外線硬化塗料が採用されている。紫外線硬化インクや紫外線硬化塗料を硬化させるには紫外線照射装置が必要である。ここに、印刷や塗装の対象物は、紙や布からなるシート状の印刷原反、セメントを抄造した建築用板などであって、多くの場合、印刷や塗装の対象となる表面は一定の幅を有している。
【0003】
したがって、対象物の表面に紫外線をライン状に照射する紫外線照射装置を用い、対象物と紫外線照射装置とを対象物の表面に沿って相対的に変位させることによって、対象物の所要領域に紫外線を照射する構成が広く採用されている。一般的には、対象物を一定幅である方向に対して直交する方向に搬送し、対象物の表面に沿う面内で対象物が搬送される方向に交差するラインを形成するように紫外線照射装置を配置する構成が採用されている。
【0004】
紫外線照射装置に用いる光源には、キセノンランプのような高輝度の紫外線ランプがあるが、近年では、消費電力の抑制などを目的として、光源に発光ダイオード(以下、「LED」と略称する)を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。LEDを用いた紫外線照射装置は、対象物の表面に沿って対象物が搬送される方向に交差する方向に複数個のLEDを配列することにより、紫外線を対象物にライン状に照射できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−146646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、紫外線硬化インクや紫外線硬化塗料は、照射される紫外線の強度と紫外線の照射時間とにより決まる光量が多いほど硬化が促進されると考えられる。したがって、単位時間当たりの処理数を増加させるには、対象物に照射される紫外線の強度を高めることが要求される。また、対象物と紫外線照射装置との距離が変化する場合、例えば、対象物が外壁に用いる建築用板であって表面に凹凸があるような場合、対象物の表面において紫外線照射装置からの距離が最大になる部位に照射される光量によって、対象物の搬送速度が制限されることになる。
【0007】
上述のような観点から、紫外線照射装置に用いる光源の輝度は高いほうがよいと考えられるが、現状の技術ではLEDを光源に用いた紫外線照射装置で上述の要求に応える程度に輝度を高めることは容易ではない。
【0008】
また、上述したように、紫外線硬化インクや紫外線硬化塗料を硬化させる光量を得るには、光源の輝度だけではなく、対象物を搬送する方向において紫外線を照射する時間を考慮する必要がある。したがって、対象物に紫外線をライン状に照射する場合に、対象物が搬送される方向におけるラインの寸法(つまり、ライン状の照射領域の幅寸法)を考慮しなければならない。また、対象物が紫外線の照射領域を通過する間に、紫外線硬化インクや紫外線硬化塗料の硬化を終了させるためにも、対象物が搬送される方向におけるラインの幅寸法について考慮する必要がある。
【0009】
紫外線ランプやLEDを光源に用いた紫外線照射装置では、レンズのような光学要素を用いて、ライン状の照射領域が形成されている。しかし、紫外線ランプやLEDから放射される紫外線の配光を光学要素によって制御しても、ラインの幅内において紫外線の強度は中央部よりも周辺部の強度が小さくなる。そのため、対象物を搬送する速度は、ラインの幅内における周辺部の強度に合わせて設定することになる。このことが、対象物を搬送する速度を低下させる一因になっている。
【0010】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、紫外線を対象物の表面にライン状に照射するにあたって、ラインの幅内の強度変化を抑制するとともに、対象物との距離変化による強度変化も抑制することができる紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紫外線照射装置は、複数枚の基板と、発光波長が紫外領域であって基板ごとに複数個ずつ列をなすように並べて配置されたレーザダイオードと、レーザダイオードから放射される紫外線を回折させる回折光学素子とを備え、回折光学素子は、基板上でレーザダイオードが並ぶ方向に紫外線を回折させる機能を有し、基板は、レーザダイオードが並ぶ方向が互いに平行になるように配置され、かつ各基板から放射された紫外線が1つのライン上で重複するように、レーザダイオードが並ぶ方向に直交する面内において互いに傾斜していることを特徴とする。
【0012】
この紫外線照射装置において、発光波長が紫外領域であって前記基板とは異なる実装基板に複数個が列をなすように並べて配置された発光ダイオードをさらに備えていることが望ましい。
【0013】
この紫外線照射装置において、1枚の基板に前記ラインを形成する複数のグループのレーザダイオードが配置され、グループごとに点灯と消灯とのタイミングが異なることがより望ましい。
【0014】
この紫外線照射装置において、1枚の基板に前記ラインを形成する複数のグループのレーザダイオードが配置され、グループごとに発光波長が異なることがより望ましい。
【0015】
この紫外線照射装置において、レーザダイオードと回折光学素子との間にレーザダイオードから放射された紫外線の広がり範囲を制御するレンズをさらに備えることがより望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、紫外線を対象物にライン状に照射するにあたって、ラインの幅内の強度変化を抑制するとともに、対象物との距離変化による強度変化を抑制することが可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】基本構成を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図2】同上に用いるレーザダイオードを示す斜視図である。
【図3】(a)は同上におけるレーザダイオードと回折光学素子との配置を示す側面図、(b)は同上におけるレーザダイオードと回折光学素子とレンズとの配置を示す側面図、(c)は1個のレーザダイオードによる対象物の表面への照射範囲を示す図である。
【図4】同上に用いる1枚の基板に関する動作説明図である。
【図5】(a)は同上に用いるレーザダイオードの配光を示す側面図、(b)は同図(a)について所定距離での紫外線の強度分布を示す図である。
【図6】実施形態1における配置例を示す側面図である。
【図7】図6に示した配置例での紫外線の強度分布を示す図である。
【図8】実施形態2における配置例を示す側面図である。
【図9】図8に示した配置例での紫外線の強度分布を示す図である。
【図10】(a)は同上に用いる発光ダイオードの配光を示す側面図、(b)は同図(a)について所定距離での紫外線の強度分布を示す図である。
【図11】同上の使用例を示す動作説明図である。
【図12】実施形態3の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、紫外線照射装置を印刷装置に用いる場合を例として説明する。印刷装置は、紙や布のようなシート状の印刷原反に紫外線硬化インクによる印刷を施した後に、紫外線照射装置から印刷原反に紫外線を照射することにより紫外線硬化インクを硬化させるように構成される。
【0019】
(基本構成)
紫外線照射装置1は、図1に示すように、短冊状の複数枚の基板3を備え、基板3ごとに厚み方向の一面に複数個のレーザダイオード2が並べて実装される。ここでは、基本的な構成について説明するために基板3が2枚である場合を例とする。また、レーザダイオード2は1枚の基板3に2列以上配置することが可能であるが、図示例では1枚の基板3にレーザダイオード2を1列だけ配置してある。
【0020】
レーザダイオード2は、図2に示すように、円柱状のパッケージ21を備える。パッケージ21の一端面には紫外線を放射させる発光窓22が形成され、パッケージ21の他端面からは端子23が突設される。
【0021】
レーザダイオード2の発光窓22に対向する部位には、回折を利用して紫外線の伝播方向を制御する回折光学素子5が配置される。回折光学素子5は、レーザダイオード2から放射された紫外線を回折させることにより、レーザダイオード2から放射された紫外線の放射範囲を一方向に広げるように回折パターンが形成されている。したがって、レーザダイオード2が放射した紫外線は、回折光学素子5によってスリット光のように扇状に広げられる。
【0022】
回折光学素子5は、レーザダイオード2から放射される紫外線の放射範囲が基板3の長手方向に沿う向きになるように回折パターンの向きを定めて配置される。したがって、レーザダイオード2から放射された紫外線の放射範囲(破線で示す範囲)は、図3(a)に示すように、主として基板3の長手方向(図3の左右方向)に広がる。また、レーザダイオード3から放射された紫外線の放射範囲は、基板3の短手方向にはほとんど広がらない。したがって、紫外線を照射する仮想の照射面91を回折光学素子5の前方に設定すると、照射面91に対する紫外線の照射領域200は、図3(c)のように、基板3の長手方向に広がり、基板3の短手方向にはほとんど広がらない矩形状になる。
【0023】
したがって、図4のように、基板3の長手方向に隣り合う各一対のレーザダイオード2に対応した照射領域200の一部を重複させるようにレーザダイオード2の配列ピッチを設定すると、照射面91(図3参照)にライン状の照射領域201が形成されることになる。レーザダイオード2の配列ピッチは、回折光学素子5の回折パターンなどの設計条件に依存するが、少なくとも隣接するレーザダイオード2を離間させる配置が可能である。レーザダイオード2の配列ピッチL2は、1個のレーザダイオード2の基板3の長手方向における寸法L1に対して、例えば、1.5〜2.5倍程度に設定することが可能になる。これにより、基板3の長手方向において単位長さ当たりに必要なレーザダイオード2の個数は、発光ダイオードを用いる場合よりも少なくなる。また、隣接するレーザダイオード2が離間していることにより、互いに他のレーザダイオード2の発熱による影響が抑制される。なお、図4に示すように、必要に応じて複数枚の基板3を長手方向に並べて配置してもよい。
【0024】
上述したように、レーザダイオード2から放射され回折光学素子5により回折された紫外線の放射範囲は、基板3の短手方向には大きく広がらない。図5(a)には放射範囲の広がりを強調して記載しているが、実際には、レーザダイオード2からの距離D1の変化に対して照射領域200の変化は比較的少ない。また、レーザダイオード2から放射されるレーザ光の属性として放射範囲内での強度の変化は比較的少ない。すなわち、図5(b)に示すように、基板3の短手方向において照射領域200の範囲では均一な強度(照度)が得られる。
【0025】
ところで、紫外線照射装置1として用いるレーザダイオード2は出力が大きいから、放熱対策が必要である。そのため、基板3には、図1に示すように、放熱部材4が取り付けられる。図示する放熱部材4は水のような冷媒によって放熱を行う構成であって、放熱部材4は冷媒を通過させる流路44,45を備えた中空状に形成されている。基板3は、放熱部材4における図1(b)の上面に配置される。図1(b)における放熱部材4の上面は、左右方向における中央部の中央面43と、中央面43の左右にそれぞれ連続し互いに離れる向きに上り傾斜した2つの傾斜面41,42とを備える。
【0026】
上述したように2枚の基板3を設けているから、傾斜面41,42ごとに基板3が載せられ、両基板3は長手方向が平行になるように配置される。また、基板3と放熱部材4とは熱的に結合される。2枚の基板3が上述のように配置されるから、各基板3に設けたレーザダイオード2によって所望の照射面91において形成されるライン状の照射領域201(図4参照)を重ね合わせることが可能である。すなわち、所望の照射面91に対する傾斜面41,42の傾き角度および基板3から照射面91までの距離を調節することにより、2枚の基板3を用いて照射面91にライン状の照射領域201を形成することが可能になる。この構成では、2枚の基板3から紫外線を照射しているから、他の条件が同じであれば、1枚の基板3のみで紫外線を照射する場合に比較すると、照射領域201に対して2倍近い強度の紫外線を照射することが可能になる。
【0027】
上述の例では、レーザダイオード2から放射された紫外線の伝播方向(配光)を回折光学素子5のみで制御しているが、図3(b)に示すように、回折光学素子5に加えてレンズ51を設けてもよい。レンズ51は、レーザダイオード2と回折光学素子5との間に配置すればよい。レンズ51は、例えば、入射した光を平行光にして出射させるコリメートレンズ、照射領域201に形成されるラインの幅を調節するためのレンズなどを用いることが可能である。
【0028】
(実施形態1)
基本構成としては、2枚の基板3を用いた紫外線照射装置1を例示したが、以下では、図6に示すように、4枚の基板3(31,32,33,34)を用いる場合を例として説明する。
【0029】
4枚の基板31,32,33,34は、長手方向が平行になるように配置され、かつ基板3の長手方向に直交する面内では照射面91(図3参照)に対する傾斜角度を互いに異ならせるように配置される。基板31,32,33,34ごとの傾斜角度は、基板31,32,33,34ごとに照射面91に形成されるライン状の照射領域201が互いに一致して重なり合うように設定される。照射面91が図6に符号A1で示す位置であるとき、各基板31,32,33,34により形成されるライン状の照射領域201を重ね合わせるために、両端部の基板31,34の照射面91に対する傾斜角度は、中央部の基板32,33の照射面91に対する傾斜角度よりも大きく設定される。
【0030】
基板31,32,33,34を図6のように配置した場合、符号A1で示す位置では、ライン状の照射領域201が重なり合っているから、図7(a)に示すように、照射領域201において強度がほぼ一定になる。一方、図6に符号B1で示す位置(符号A1で示す位置よりも基板31,32,33,34に近い位置)では、各基板31,32,33,34から放射された紫外線の放射範囲が重なり合う領域と重なり合わない領域とが生じる。放射範囲が重なっている領域では紫外線の強度が大きくなり、放射範囲が重なっていない領域では相対的に紫外線の強度が小さくなる。したがって、符号B1で示す位置では、図7(b)に示すように、基板3の長手方向に直交する面内において紫外線の強度が一様にならない。なお、図7(b)は紫外線の強度を模式的に示してあり、実際の強度分布を示してはいない。
【0031】
本実施形態の構成では、紫外線の強度が均一になる位置(図6に符号A1で表された位置)では、ライン状の照射領域201における紫外線の強度が、4枚の基板31,32,33,34からの紫外線の合算になる。そのため、紫外線の強度を基本構成よりもさらに高めることが可能である。
【0032】
(実施形態2)
実施形態1は、レーザダイオード2のみを光源に用いる例を示したが、本実施形態は、発光ダイオードを合わせて光源に用いる構成例について説明する。
【0033】
図8に示すように、本実施形態の紫外線照射装置1は、実施形態1の基板32,33に代えて、発光波長が紫外線領域である発光ダイオード6を実装した短冊状の実装基板81,82を備える。
【0034】
発光ダイオード6は、レーザダイオード2と同様に、回折を利用して紫外線の伝播方向を制御する回折光学素子7と組み合わせて用いられる。回折光学素子7は、回折光学素子5と同様に、発光ダイオード6から放射された紫外線を一方向に広げるように回折パターンが形成されている。また、発光ダイオード6は、実装基板81,82の厚み方向の一面に長手方向に沿って1列に並んで配置され、回折光学素子7は、発光ダイオード6から放射された紫外線の放射範囲を、実装基板81,82の長手方向に広げるように配置される。
【0035】
本実施形態は、発光ダイオード6の輝度がレーザダイオード2の輝度よりも低いことを前提にしている。したがって、紫外線硬化インクを硬化させるのに必要な強度の紫外線を照射することができる距離は、発光ダイオード6のほうがレーザダイオード2よりも短くなる。すなわち、発光ダイオード6について、紫外線硬化インクの硬化に必要な強度の紫外線を照射可能な最大距離をD2(図10参照)とすると、レーザダイオード2について同じ強度の紫外線を照射可能な最大距離はD2よりも大きくなる。ここでは、図5に示した距離D1が距離D2に対応すると仮定する(D2<D1)。また、実装基板8の長手方向に直交する断面において、距離D2の位置に仮の照射面92を設定した場合の照射領域202は、レーザダイオード2において距離D1の位置に照射面91を設定した場合の照射領域201よりも広くなると仮定する。これらの仮定は、レーザダイオード2および発光ダイオード6の属性から合理的であると言える。また、発光ダイオード6から放射された紫外線は、照射領域202において強度が一様にならず、図10(b)に示すように、照射領域202の中央部から両端部に向かって強度が次第に低下する。
【0036】
基板31,34に配置されたレーザダイオード2からの紫外線と、実装基板81,82に配置された発光ダイオード6からの紫外線との配光の関係から、本実施形態では、照射面91,92までの距離による紫外線の強度の変化が抑制される。すなわち、レーザダイオード2により形成されるライン状の照射領域201(図3参照)が重なり合う位置(図8の符号A2の位置)では、主としてレーザダイオード2からの紫外線の強度によって照射領域201の強度分布が決まる。また、発光ダイオード6からの紫外線が紫外線硬化インクの硬化に有効に寄与する位置(図8の符号B2の位置)では、レーザダイオード2からの紫外線と発光ダイオード6からの紫外線とが合成されて照射領域202の強度分布が決まる。その結果、図9(a)のように、位置A2において紫外線の強度がほぼ一様になるだけではなく、図9(b)のように、位置B2においても紫外線の強度がほぼ一様になる。なお、基板31,32に直交する面内において、位置A2における紫外線の照射領域201に比較して、位置B2における紫外線の照射領域202は広くなる。
【0037】
上述したように、本実施形態では、レーザダイオード2と発光ダイオード6とを併用することにより、照射面91,92までの距離の変化に対する紫外線の強度の変化が抑制される。
【0038】
ところで、印刷装置では、図11に示すように、紫外線を照射する対象である印刷原反9を圧胴10に沿って搬送する構成が知られている。たとえば、オフセット印刷を行う印刷装置では、印刷原反9を圧胴10に沿って搬送するから、紫外線照射装置1は、圧胴10の周囲に配置される。印刷原反8の端部93,94には張力が作用しないから、端部93,94は圧胴10から浮き上がりやすい傾向がある。そのため、印刷原反9の端部93,94は、レーザダイオード2のみによりライン状の照射領域201が形成される位置よりも近い位置を通過する可能性がある。本実施形態の構成では、符号A2で示す位置よりも近い位置(符号B2で示す位置)であっても、発光ダイオード6により紫外線の強度が補償されるから、印刷原反9の端部93,94においても紫外線の強度を均一化することが可能になる。また、実施形態1の構成であってもレーザ光の強度が高いから、距離変化に対応可能である。なお、本実施形態では、発光ダイオード6をレーザダイオード2を配置した基板3とは別に設けた実装基板8に実装しているが、発光ダイオード6をレーザダイオード2と同じ基板3に配置してもよい。他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0039】
(実施形態3)
実施形態1は、紫外線照射装置1の光源に用いるすべてのレーザダイオード2に同仕様のものを用い、また、すべてのレーザダイオード2について同制御を行っているが、本実施形態では、レーザダイオード2について異なる制御を行う場合と、仕様の異なるレーザダイオード2を組み合わせて用いる場合とについて説明する。
【0040】
ここでは、図12に示すように、6個のレーザダイオード2が、1枚の基板3に配置されている場合を例として説明する。また、1枚の基板3に複数のグループ(本実施形態では2グループについて説明する)のレーザダイオード2a,2bを配置する。第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとは、基板3の長手方向において交互に配置される。
【0041】
第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとは異なる制御が行われる。具体的には、図12(a)のように、第1グループのレーザダイオード2aが点灯する状態と、図12(b)のように、第2グループのレーザダイオード2bが点灯する状態とを交互に入れ換える。第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとのどちらが点灯している状態であっても、照射領域201がライン状になるように、グループごとのレーザダイオード2a,2bは、点灯時に照射領域200が連続するように配置される。
【0042】
第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとを交互に点灯させることによって、第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとの一方に、紫外線を放射しない休止期間を設けることが可能になる。したがって、基板3に配置したすべてのレーザダイオード2a,2bを一斉に点灯させる場合に比較して発熱量の低減が可能になり、レーザダイオード2a,2bの特性の変化や寿命の低下が抑制される。また、第1グループと第2グループとのレーザダイオード2a,2bを交互に点灯させるから、レーザダイオード2a,2bを一斉に点灯させる場合に比較すると、寿命が約2倍になる。
【0043】
第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとは、交互に点灯させる代わりに、発光波長を異ならせてもよい。例えば、第1グループのレーザダイオード2aの発光波長を365nmとし、第2グループのレーザダイオード2bの発光波長を385nmとする。この構成では、第1グループのレーザダイオード2aと第2グループのレーザダイオード2bとを同時に点灯させることにより、紫外線照射装置1から異なる波長の紫外線を同時に放射することが可能になる。例えば、紫外線硬化インクの成分や色によって硬化に適した波長が異なる場合には、この構成の紫外線照射装置1を用いることにより、紫外線硬化インクの特性に合わせた複数の波長の紫外線を照射することが可能になる。
【0044】
なお、本実施形態は1枚の基板3に2つのグループのレーザダイオード2a,2bを配置した例を示したが、3以上のグループのレーザダイオードを配置してもよい。他の構成および機能は基本構成と同様である。
【0045】
上述した各実施形態では、レーザダイオード2ごとに矩形状の照射領域を形成する回折光学素子5,7を用いているが、異なる回折パターンの回折光学素子5,7を用いることにより、レーザダイオード2ごとの照射領域の形状を正方形、三角形、円などの各種の形状に形成することが可能となる。また、局所的な領域にスポットを照射するように回折パターンを形成した回折光学素子5,7を用いることも可能となる。さらに、各レーザダイオード2に対してそれぞれ回折光学素子5を設ける構成例を説明したが、1枚の基板3に配置されたレーザダイオード2の全体に跨る1枚のシート状の回折光学素子を用いることも可能である。
【0046】
また、上述した実施形態では、紫外線照射装置1を印刷原反9に印刷する印刷装置に用いる場合を想定して説明したが、建築用板に紫外線硬化塗料を塗布する装置など、他の装置であっても上述した技術を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 紫外線照射装置
2 レーザダイオード
3 基板
5 回折光学素子
6 発光ダイオード
7 回折光学素子
51 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基板と、発光波長が紫外領域であって前記基板ごとに複数個ずつ列をなすように並べて配置されたレーザダイオードと、前記レーザダイオードから放射される紫外線を回折させる回折光学素子とを備え、前記回折光学素子は、前記基板上で前記レーザダイオードが並ぶ方向に紫外線を回折させる機能を有し、前記基板は、前記レーザダイオードが並ぶ方向が互いに平行になるように配置され、かつ各前記基板から放射された紫外線が1つのライン上で重複するように、前記レーザダイオードが並ぶ方向に直交する面内において互いに傾斜していることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
発光波長が紫外領域であって前記基板とは異なる実装基板に複数個が列をなすように並べて配置された発光ダイオードをさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
1枚の基板に前記ラインを形成する複数のグループの前記レーザダイオードが配置され、前記グループごとに点灯と消灯とのタイミングが異なることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
1枚の基板に前記ラインを形成する複数のグループの前記レーザダイオードが配置され、前記グループごとに発光波長が異なることを特徴とする請求項1または請求項3に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記レーザダイオードと前記回折光学素子との間に前記レーザダイオードから放射された紫外線の広がり範囲を制御するレンズをさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−77732(P2013−77732A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217342(P2011−217342)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】