説明

紫外線硬化型塗料組成物

【課題】紫外線吸収剤等を配合しなくとも長期に亘って良好な耐候性を発揮する塗膜を与え得る紫外線硬化型塗料組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ケイ素原子含量が11質量%以上であり、ケイ素原子に直結する水酸基および/またはアルコキシ基を有する有機シラン化合物および/またはその縮合物、(B)ケイ素原子含量が2.7質量%以上であり、1分子中にアルコキシシリル基と(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1個以上有する紫外線硬化性化合物、並びに(C)光重合開始剤を含み、(B)成分が、(i)(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物、並びに(ii)(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物から選ばれる少なくとも1種である紫外線硬化型塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の基材の耐食性向上やそれら表面の耐擦過性向上等を目的として紫外線硬化型塗料が用いられている。
この紫外線硬化型塗料を外壁等の屋外用途に用いる場合、耐食性や耐擦過性などの上述した特性に加え、耐候性も要求される。
このような要求から、塗料組成物に紫外線吸収剤を配合し、耐光性や耐候性を発揮させる手法が汎用されていたが、配合された紫外線吸収剤がブリードアウトし、目的とする効果が持続しにくいという問題があった。
【0003】
耐候性の長期持続性に優れた紫外線硬化型塗料として、例えば、特許文献1には、光重合性モノマーと、特定の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系光安定剤とを含む塗料組成物が開示されている。この塗料を用いることで、メタルウェザー耐候性試験機を用いた1000時間の耐候性試験においても、光沢や外観を維持し得る塗膜が形成できている。
しかし、この塗料では、紫外線照射を低酸素濃度下で行う必要がある等の特殊な工程が必要であり、実用性の点で問題がある上に、紫外線吸収剤等を配合する手法であることには変わりはないため、ブリードアウト等の問題を根本的に解決する手法ではない。
【0004】
また、特許文献2には、アルコキシシリル基および(メタ)アクリロイル基を有する樹脂と、シリケート等とを加水分解縮合させて得られた有機無機複合体を含む組成物から得られた塗膜が、屋外環境において耐候性と耐擦傷性を両立できることが開示されている。
しかし、この組成物の主成分である有機無機複合体は、まずアルコキシシリル基および(メタ)アクロイル基を有する樹脂を合成した後、これをさらにシリケート等と加水分解縮合させる必要があり、その合成工程が煩雑である。
また、この組成物では、紫外線吸収剤や光安定剤が必須とされていることから、塗膜の耐候性はこれらの成分によって発揮されている可能性が高く、この場合も紫外線吸収剤等を配合する手法であることには変わりはないため、ブリードアウト等の問題を根本的に解決する手法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−213285号公報
【特許文献2】特開2005−171216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、紫外線吸収剤等を配合しなくとも長期に亘って良好な耐候性を発揮する塗膜を与え得る紫外線硬化型塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のケイ素原子含量の有機シラン化合物と、所定のケイ素原子含量の(メタ)アクリレート系紫外線硬化性化合物とを含む組成物から得られた塗膜が、紫外線吸収剤等を配合しなくとも、良好な耐候性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)ケイ素原子含量が11質量%以上であり、ケイ素原子に直結する水酸基および/またはアルコキシ基を有する有機シラン化合物および/またはその縮合物、(B)ケイ素原子含量が2.7質量%以上であり、1分子中にアルコキシシリル基と(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1個以上有する紫外線硬化性化合物、並びに(C)光重合開始剤を含み、前記(B)成分が、(i)多官能(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物、並びに(ii)(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする紫外線硬化型塗料組成物、
2. 前記(B)成分が、多官能(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物である1の紫外線硬化型塗料組成物、
3. 前記(A)成分が、下記式(1)で示される有機シラン化合物および/またはその縮合物である1または2の紫外線硬化型塗料組成物
【化1】

(式中、R1は、水素原子またはアルキル基を表し、R2〜R4は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。)
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線硬化型塗料組成物は、所定のケイ素原子含量の有機シラン化合物と、所定のケイ素原子含量の(メタ)アクリレート系紫外線硬化性化合物とを用いているため、紫外線吸収剤等を配合しなくとも、良好な耐候性を発揮する塗膜を与え得る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る紫外線硬化型塗料組成物は、(A)ケイ素原子含量が11質量%以上であり、ケイ素原子に直結する水酸基および/またはアルコキシ基を有する有機シラン化合物および/またはその縮合物、(B)ケイ素原子含量が2.7質量%以上であり、1分子中にアルコキシシリル基と(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1個以上有する紫外線硬化性化合物、並びに(C)光重合開始剤を含み、(B)成分が、(i)多官能(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物、並びに(ii)(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
【0011】
(A)有機シラン化合物
本発明の紫外線硬化型塗料組成物では、ケイ素原子含量(以下、Si含量という)が11質量%以上であり、ケイ素原子に直結する水酸基および/またはアルコキシ基を有する有機シラン化合物および/またはその縮合物を用いる。
ここで、Si含量が11質量%未満であると、得られる塗膜の耐候性が不十分になる。好ましくは、11.5質量%以上、より好ましくは13質量%以上、より一層好ましくは15質量%以上である。
また、その上限は、耐候性という点からは特に制限されるものではないが、Si含量が多すぎると、得られる塗膜が割れ易くなる等の問題が生じる虞があるため、50質量%程度が好ましく、40質量%程度がより好ましく、35質量%程度がより一層好ましい。
【0012】
上記有機シラン化合物としては、特に限定されるものではなく、従来公知の有機シラン化合物から、上記Si含量を満たすものを選択して用いればよいが、本発明では、特に式(1)で示される有機シラン化合物および/またはその縮合物が好適に用いられる。なお、縮合物である場合、その縮合度としては2〜100の範囲が一般的であり、相溶性の点からは、縮合度が2〜15である液状のものが好ましい。また、本発明において、(A)成分であるアルコキシ基含有有機シラン化合物は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
【化2】

【0014】
上記式中、R1は、水素原子またはアルキル基を表し、R2〜R4は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。
上記アルキル基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、炭素数1〜10、特に、1〜5が好ましい。また、その構造は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
【0015】
アリール基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、炭素数6〜20、特に、6〜14が好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基、o−ビフェニリル基、m−ビフェニリル基、p−ビフェニリル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。
【0016】
アルコキシ基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、炭素数1〜10、特に、1〜5が好ましい。また、その構造は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。
【0017】
アリールオキシ基の炭素数としては、特に限定されるものではないが、本発明においては、炭素数6〜20、特に、6〜14が好ましい。
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、α−ナフトキシ基、β−ナフトキシ基等が挙げられる。
【0018】
有機シラン化合物の具体例としては、テトラメチルシリケート(テトラメトキシシラン)、テトラエチルシリケート(テトラエトキシシラン)等のテトラアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン、およびこれら各有機シラン化合物の縮合物等が挙げられる。
なお、縮合物は、例えば、上記有機シラン化合物の単一物または2種以上の混合物に、水を添加し、(部分)加水分解縮合させて得ることができる。
【0019】
また、本発明の有機シラン化合物としては、市販品を用いることもでき、その具体例としては、KR−510(Si含量20.5質量%、信越化学工業(株)製)、KR−213(Si含量17.7質量%、信越化学工業(株)製)、KR−217(Si含量11.6質量%、信越化学工業(株)製)、KR−500(Si含量29.4質量%、信越化学工業(株)製)、KC−89S(Si含量27.5質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−9225(Si含量31.3質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−9246(Si含量33.6質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−9250(Si含量34.1質量%、信越化学工業(株)製)、KR−401N(Si含量26.1質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−9227(Si含量27.5質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−9247(Si含量21.5質量%、信越化学工業(株)製)、KR−9218(Si含量18.7質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−2308(Si含量23.8質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−9238(Si含量21質量%、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0020】
(B)紫外線硬化性化合物
また、本発明の紫外線硬化型塗料組成物では、Si含量が2.7質量%以上であり、1分子中にアルコキシシリル基と(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1個以上有する紫外線硬化性化合物を用いる。
具体的には、(i)多官能(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物、並びに(ii)(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物から選ばれる少なくとも1種を用いる。
ここで、Si含量が2.7質量%未満であると、得られる塗膜の外観および耐候性が低下する。好ましくは、2.75質量%以上、より好ましくは2.8質量%以上、より一層好ましくは3.0質量%以上である。
また、その上限は、特に制限されるものではないが、Si含量が最大になるような分子構造に鑑みても、15質量%程度である。
【0021】
上記多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル基を2個以上有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTA)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(ETMPTA)等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(DTMPTA)等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPAA)等のペンタ(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)等のヘキサ(メタ)アクリレート化合物などが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
アミノ基含有アルコキシシランの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
メルカプト基含有アルコキシシラン化合物の具体例としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記アルコキシシラン化合物の縮合物としては、例えば、上記アルコキシシラン化合物に水を添加し、(部分)加水分解させて縮合させて得られた化合物や、上記アルコキシシラン化合物と、その他のアルコキシシラン化合物との混合物に水を添加し、(部分)加水分解させて縮合させて得られた化合物が挙げられる。
その他のアルコキシシラン化合物を用いる場合、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物とその他のアルコキシシラン化合物との混合比率は任意であるが、1/1〜1/2(モル比)が好ましい。
なお、これらの部分加水分解縮合物は、市販品を用いてもよく、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとテトラエチルシリケートとの部分加水分解縮合物であるX41−1805(信越化学工業(株)製)等を用いることができる。
【0024】
なお、その他のアルコキシシラン化合物としても、特に限定されるものではなく、例えば、テトラメチルシリケート(テトラメトキシシラン)、テトラエチルシリケート(テトラエトキシシラン)、テトラ−n−プロピルシリケート(テトラn−プロポキシシシラン)、テトライソプロピルシリケート(テトラi−プロポキシシシラン)、テトラ−n−ブチルシリケート(テトラn−ブトキシシラン)、テトライソブチルシリケート(テトラi−ブトキシシラン)、テトラ−t−ブチルシリケート(テトラt−ブトキシシラン)等のテトラアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、メチルトリ−sec−オクチルオキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールトリアルコキシシラン;メチルトリフェノキシシラン等のアルキルトリアリールオキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシトリアルコキシシラン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記多官能(メタ)アクリレート化合物とアミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物との付加反応物は、これらをマイケル付加反応等の従来公知のα,β−不飽和カルボニル化合物へのアミノ基またはメルカプト基の1,4−付加反応を用いて製造することができる。
この場合、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物の使用量は、多官能(メタ)アクリレート化合物の不飽和二重結合が残存する割合であれば任意であるが、例えば、ジ(メタ)アクリレート化合物の場合は、アクリレート化合物1.0molに対し、アルコキシシラン化合物0.3〜1.0molが好ましく、トリ(メタ)アクリレート化合物の場合は、アクリレート化合物1.0molに対し、アルコキシシラン化合物0.4〜1.5molが好ましく、テトラ(メタ)アクリレート化合物の場合は、アクリレート化合物1.0molに対し、アルコキシシラン化合物0.6〜2.0molが好ましく、ペンタ(メタ)アクリレート化合物の場合は、アクリレート化合物1.0molに対し、アルコキシシラン化合物0.7〜2.5molが好ましく、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物の場合は、アクリレート化合物1.0molに対し、アルコキシシラン化合物0.8〜3.0molが好ましい。
なお、多官能(メタ)アクリレート化合物とメルカプト基含有アルコキシシラン化合物との付加反応は、塗料の研究,No.138,pp.2−7,2002年に記載の方法等を採用してもよい。
【0026】
一方、(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物としては、公知の化合物から、上記Si含量を満たすものを適宜選択して用いればよい。
その具体例としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシジアルコキシシラン;3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリプロポキシシラン等の(メタ)アクリロキシトリアルコキシシランなどが挙げられる。
また、これらの縮合物としては、上記と同様の手法にて(部分)加水分解縮合させたものが挙げられる。
なお、(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物の縮合物としては、市販品を用いることもでき、その具体例としては、KR−513(Si含量14.0質量%、信越化学工業(株)製)、X−40−2655A(Si含量16.8質量%、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0027】
本発明の組成物において、上記(A)成分と(B)成分との配合割合は、塗布性や乾燥硬化性等の通常の塗料に要求される性質が、実用上問題ない範囲であれば任意であるが、本発明においては、(A)成分100質量部に対して、(B)成分30〜240質量%程度が好ましく、50〜220質量%程度がより好ましく、50〜200質量%程度がより一層好ましい。
【0028】
(C)光重合開始剤
本発明の組成物には、紫外線照射によってラジカルを発生する光重合開始剤を用いる。
光重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン類;ベンジル等のα−ジカルボニル類;ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパノン−1等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のα−アシルオキシム類;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等のアミン類などが挙げられる。
なお、光重合開始剤としては、市販品であるイルガキュア184、1000、1700(以上、BASFジャパン(株)製);LucirinLR8728(BASF社製、商品名);Darocure1116、1173(メルク社製、商品名);ユベクリルP36(UCB社製、商品名)等を用いることもできる。
光重合開始剤の使用量としては、有効量以上であれば特に限定されるものではないが、通常、(A)成分および(B)成分の総質量に対して、0.1〜10質量%程度である。
【0029】
なお、本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、触媒等の各種添加剤を組成物中に、0.1〜30質量%配合してもよいが、後に実施例を挙げて示すように、本発明の塗料組成物では、紫外線吸収剤や光安定剤を配合しなくとも、得られた塗膜は十分な耐候性を発揮する。
【0030】
また、本発明の組成物には、上述した(A)成分および(B)成分と共重合可能なその他のモノマーを配合してもよい。
共重合可能なその他のモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル基含有(メタ)アクリル系モノマー;(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有(メタ)アクリル系モノマー;アクリロニトリル等のニトリル基含有(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニルモノマー;マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和結合含有酸無水物;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有モノマー;ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有アルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル等のアルキレングリコールモノアリルエーテル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテルなどが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのその他のモノマーを使用する場合、その使用量は、(A)成分および(B)成分の総質量に対し、0.1〜10質量%程度することが好適である。
【0031】
本発明の組成物は、上記各成分を任意の順序で適宜配向して調製することができ、その調製の際には溶剤を用いてもよい。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶剤;ミネラルスピリット等の石油系炭化水素溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリコールエーテルエステル類溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
溶剤の使用量には特に制限はないが、組成物中の総固形分量が10〜70質量%程度となる量が好ましい。
【0032】
以上説明した紫外線硬化型塗料組成物の使用法としては、例えば、基材表面に直接本発明の組成物を塗布し、これを加熱して乾燥した後、紫外線を照射する手法が挙げられる。
この場合、本発明の組成物の塗布法は特に限定されるものではなく、刷毛塗り、ローラ塗りなどの公知の手法から適宜選択すればよい。また、塗布量、塗膜の厚み、乾燥時間などは、基材の材質や被覆品の用途などに応じて適宜なものとすればよい。
加熱乾燥温度は、上述した(A)成分および(B)成分が反応する温度範囲であれば、特に限定されるものではないが、本発明においては、50〜100℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
本発明の組成物を適用する基材としては、金属基材、プラスチック基材、ガラス基材等任意であるが、本発明の塗料組成物から得られた塗膜は、耐候性に優れていることから、特に、外壁、窓ガラス、ヘッドランプカバー等の外装材用途に、好適に用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各物性は、以下の手法によって測定した。また、以下において、「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
(1)粘度
装置:芝浦システム(株) ビスメトロン VG−A
【0034】
[合成例1]アクリルモノマーとアルコキシシランの付加反応物Aの合成
撹拌機、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA)296.0部、および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)110.7部を仕込み、50℃で12時間反応を行い、固形分100%、粘度1760mPa・s(25℃,以下同様)の付加反応物A(Si含量3.9%)を得た。
【0035】
[合成例2]アクリルモノマーとアルコキシシランの付加反応物Bの合成
撹拌機、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA)296.0部、および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)71.1部を仕込み、50℃で12時間反応を行い、固形分100%、粘度1260mPa・sの付加反応物B(Si含量2.8%)を得た。
【0036】
[合成例3]アクリルモノマーとアルコキシシランの付加反応物Cの合成
撹拌機、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、ジトリメチロールプロパンアクリレート(DTMPTA)466.0部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)110.7部を仕込み、50℃で12時間反応を行い、固形分100%、粘度28500mPa・sの付加反応物C(Si含量2.8%)を得た。
【0037】
[合成例4]アクリルモノマーとアルコキシシランの付加反応物Dの合成
撹拌機、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパンアクリレート(TMPTA)296.0部、および3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)63.5部を仕込み、50℃で12時間反応を行い、固形分100%、粘度980mPa・sの付加反応物D(Si含量2.6%)を得た。
【0038】
[合成例5]アクリルモノマーとアルコキシシランの付加反応物Eの合成
撹拌機、温度計、および還流冷却器を備えた反応容器に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)578.0部、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、KBE−903)110.7部を仕込み、50℃で12時間反応を行い、固形分100%、粘度38900mPa・sの付加反応物E(Si含量2.3%)を得た。
【0039】
〈紫外線硬化型塗料組成物の調製〉
[実施例1]
アルコキシ基含有有機シラン化合物(信越化学工業(株)製、KR−510)100.0部、合成例1で得られた付加反応物A100.0部、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製、イルガキュア184)8.0部を撹拌・混合し、塗料組成物を調製した。
【0040】
[実施例2〜6,比較例1〜8]
下記表1の組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物を調製した。
【0041】
【表1】

【0042】
上記各実施例および比較例で調製した塗料組成物を、No.12のバーコーターでフロートガラスに塗布した後、70℃で3分乾燥した。次いで、出力4000W/cm2の高圧水銀灯を光源として、紫外線を照射強度80mW/cm2、積算照射強度1200mJ/cm2で照射し、塗膜を硬化させた。
得られた各塗膜について、外観および促進耐候性を以下の手法により測定・評価した。結果を表2に示す。
(1)塗膜外観
硬化させた塗膜を目視にて以下の基準により評価した。
○:異常なし
△:若干の白化が認められる
×:白化が認められる
(2)促進耐候性
硬化させた塗膜を促進耐候性試験機(岩崎電気(株)製、アイスーパーUVテスター)にて1000hr暴露し、暴露後の外観を目視にて以下の基準により評価した。
○:異常なし
△:若干の白化、クラックが認められる
×:白化、クラックが認められる
【0043】
【表2】

【0044】
表2に示されるように、各実施例で調製した塗料組成物は、A成分、B成分ともに所定のSi含量のものを用いているため、得られた塗膜は、外観および促進耐候性に優れていることがわかる。
これに対し、比較例1,2で調製した塗料組成物は、(B)成分のSi含量が2.7%未満であるため、得られた塗膜は、外観および耐候性に劣っていることがわかる。
また、比較例3〜8で調製した組成物は、(A)成分のSi含量が11%未満であるため、得られた塗膜は、耐候性に劣っていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子含量が11質量%以上であり、ケイ素原子に直結する水酸基および/またはアルコキシ基を有する有機シラン化合物および/またはその縮合物、
(B)ケイ素原子含量が2.7質量%以上であり、1分子中にアルコキシシリル基と(メタ)アクリレート基とをそれぞれ1個以上有する紫外線硬化性化合物、並びに
(C)光重合開始剤
を含み、
前記(B)成分が、
(i)多官能(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物、並びに
(ii)(メタ)アクリレート基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物
から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする紫外線硬化型塗料組成物。
【請求項2】
前記(B)成分が、多官能(メタ)アクリルモノマーと、アミノ基またはメルカプト基含有アルコキシシラン化合物および/またはその縮合物との付加反応物である請求項1記載の紫外線硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、下記式(1)で示される有機シラン化合物および/またはその縮合物である請求項1または2記載の紫外線硬化型塗料組成物。
【化1】

(式中、R1は、水素原子またはアルキル基を表し、R2〜R4は、互いに独立して、アルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアリールオキシ基を表す。)

【公開番号】特開2012−131886(P2012−131886A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284358(P2010−284358)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000116301)亜細亜工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】