説明

紫外線硬化発泡シート

【課題】足ゴム等の衝撃緩衝材のように伸びと強度が要求される用途に好適な紫外線硬化発泡シートの提供を目的とする。
【解決手段】オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤、多孔質構造を有する無機フィラーを含む紫外線硬化性樹脂原料を、オークスミキサーなどにより機械的に発泡させて紫外線で硬化させることにより、伸びと強度が良好な紫外線硬化発泡シートとする。多孔質構造を有する無機フィラーとしては、シリカ等、白色系のものを用いる。紫外線硬化性樹脂原料のオリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりのフィラーの添加量におけるフィラーの吸油量は5〜60mlが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シール材、制振材、衝撃緩衝材として好適な紫外線硬化発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄物の発泡シートは、例えば携帯電話やPDA用のシール材、制振材、衝撃吸収材等電気機器部材に多用されている。前記発泡シートの一つとして、紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させた紫外線硬化発泡シートがある。この紫外線硬化発泡シートは、他の発泡シートに比べて製造時の硬化時間を短縮できる利点がある。なお、機械的発泡は、化合物の分解等によって発泡ガスを生じる発泡剤による発泡ではなく、ミキサー等を用いる攪拌等により起泡させる方法である。
【0003】
ところで、発泡シートには、足ゴム等の衝撃緩衝材のように伸びと強度が要求される用途がある。しかし、従来の紫外線硬化発泡体においては、柔軟性と強度の両方を満たすのが困難であった。すなわち、紫外線硬化発泡体では、強度を高めるために希釈材として2官能のモノマーが用いられているが、架橋密度が高くなって、柔軟性に欠け、特に伸びに劣るものとなっていた。
【0004】
【特許文献1】特開平6−287376号公報
【特許文献2】特開平7−258978号公報
【特許文献3】特開昭61−137711号公報
【特許文献4】特開平3−54230号公報
【特許文献5】特開平9−174733号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は前記の点に鑑みなされたものであって、伸びと強度の両方が良好な紫外線硬化発泡シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させた紫外線硬化発泡シートにおいて、前記紫外線硬化性樹脂原料には、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤およびフィラーを含み、前記フィラーが多孔質構造を有する無機フィラーであることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりの前記フィラーの添加量において前記フィラーの吸油量が5〜60mlであることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記フィラーがシリカであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線硬化発泡シートによれば、紫外線硬化性樹脂原料にフィラーとして多孔質構造を有する無機フィラーを含むため、伸びと強度の両方を良好なものにすることができる。
【0010】
以下この発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の紫外線硬化発泡シートは、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤およびフィラーを含む紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させたものである。
【0011】
オリゴマーは、末端にアクリレート基またはメタクリレート基を持ち、直鎖部分がポリウレタン、エポキシ、ポリエーテル、ポリエステル、シロキサン等からなるものが用いられる。オリゴマーの分子量は8,000〜40,000が好ましい。このような高分子量のオリゴマーを用いることで紫外線硬化発泡シートの伸びが良くなる。前記オリゴマーの製造は、公知のプレポリマー製造方法と同様の方法により行うことができる。例えばウレタンアクリレートオリゴマーの場合、脂肪族または脂環式イソシアネートと、ポリオールと、イソシアネート基を有するアクリル酸エステル系単量体から製造される。具体的には、所定温度(例えば80℃)に加熱したタンクに前記ポリオールを所定量投入し、窒素を充填した状態で攪拌しながら、イソシアネートとイソシアネート基を有するアクリル酸エステル系単量体とを所定量投入して反応させることにより行われる。なお、市販のオリゴマーを使用することもできる。
【0012】
希釈剤には光重合可能なモノマーが用いられる。例えば、単官能のものではイソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸等が、2官能のものでは、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等、その他3官能以上のものとしてはトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が用いられる。なお、希釈剤の量は、オリゴマーと希釈剤の合計100重量部中に20〜40重量部含まれるのが好ましい。20重量部より少なくなると強度が低下し、一方、40重量部より多くなると柔軟性が悪くなるため、強度を高く、かつ柔軟性を良好にするには、20〜40重量部の範囲が好ましい。
【0013】
紫外線重合開始剤は、オリゴマーの重合反応を開始させるものであり、紫外線によりフリーラジカルを生成する。紫外線重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、アシルアセトフェノン系、オキシムアセトフェノン系等を用いることもできる。
【0014】
整泡剤は、機械的な発泡時(起泡時)に気泡の安定化、気泡の微細化等を行うものであり、界面活性剤を挙げることができる。特にシロキサン部とエーテル部とからなり、エーテル部を側鎖に有するペンダント型構造の整泡剤は、起泡性、泡安定性(起泡後の泡の維持性)が良好なため、縞模様発生防止効果が高くなり、好ましいものである。
【0015】
フィラーは、多孔質構造を有する無機フィラーが使用される。さらに多孔質構造を有する無機フィラーは、紫外線硬化性樹脂原料に紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂原料を硬化させる際に、紫外線による硬化を阻害しないようにするため、無色、白色〜淡色のものが好ましい。無色、白色〜淡色の多孔質構造を有する無機フィラーとしては、シリカ、ゼオライト、セピオライト、ハイドロタルサイト、セラミック、酸化物層状化合物等が挙げられる。前記多孔質構造を有する無機フィラーの中でも、シリカは特に好ましいものである。シリカとしては、末端に水酸基を有する親水性タイプと、末端に水酸基を有さない疎水タイプがあり、何れのタイプでも使用することができる。
【0016】
前記多孔質構造を有する無機フィラーの添加量は、オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たり、5〜40重量部が好ましい。添加量が5重量部未満の場合、多孔質構造を有する無機フィラーの添加による強度向上効果が得られにくくなり、一方、添加量が40重量部を超える場合、多孔質構造を有する無機フィラーの添加により紫外線硬化性樹脂原料の粘度上昇が著しくなってフィラーを紫外線硬化性樹脂原料に均一に混合するのが難しくなり、また、紫外線硬化発泡シートの生産性に劣るようになる。
【0017】
さらに、前記多孔質構造を有する無機フィラーは、吸油量(JIS K 5101準拠)が40〜330ml/100gのものが好ましい。吸油量が40ml/100g未満の場合、必要なフィラーの添加量が多くなりすぎて、フィラーを紫外線硬化性樹脂原料に均一に混合するのが難しくなり、また、紫外線硬化発泡シートの生産性に劣るようになる。一方、吸油量が330ml/100gを超える場合、伸び、強度とも向上が期待できるが、原料粘度が高くなり、生産性で劣る傾向が確認される。
【0018】
さらに、前記多孔質構造を有する無機フィラーは、前記オリゴマーと希釈剤(モノマー)の合計100重量部当たりのフィラーの添加量において、フィラーの吸油量が5〜60mlとなるようにするのが好ましい。5ml未満の場合は伸びも強度も向上程度が少なくなり、一方、60mlを超える場合は多孔質構造を有する無機フィラーの使用量が多くなりすぎ、その結果、紫外線硬化性樹脂原料の粘度上昇が著しくなってフィラーを紫外線硬化性樹脂原料に均一に混合するのが難しくなり、また、紫外線硬化発泡シートの生産性に劣る傾向がある。なお、前記オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりのフィラーの添加量におけるフィラーの吸油量は、次の式で計算される。
フィラーの吸油量(オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たり)=フィラー1g当たりの吸油量×フィラーの添加量
【0019】
前記多孔質構造を有する無機フィラーの粒径は、特に限定されないが、2.0〜20.0μmが好ましい。2.0μm未満の場合は強度向上効果が少なくなり、一方、20.0μmを超える場合には添加量の割に強度向上効果が得られなくなって無駄が多くなる。
【0020】
その他、紫外線硬化性樹脂原料には着色剤が含まれることもある。着色剤は、紫外線硬化発泡シートに求められる色のものが用いられる。例えば、紫外線硬化発泡シートを白色とする場合には白色の着色剤が用いられる。
【0021】
図1に前記紫外線硬化発泡シートのための製造装置10を示す。製造装置10は、下側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段と、紫外線硬化性樹脂原料の機械発泡・塗布手段と、上側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段と、紫外線照射手段と、紫外線硬化発泡シートの巻き取り手段とよりなる。
【0022】
下側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段は、下側プラスチックフィルム11が巻かれた下側プラスチックフィルム供給ロール13から下側プラスチックフィルム11を巻き戻して上方へ供給し、供給側下側ロール14で略水平方向へ向きを変えて所定距離供給した後に巻き取り側下側ロール15で下方へ向きを変え、後述の紫外線硬化発泡シートAの下面から剥がして下側プラスチックフィルム巻き取りロール16で巻き取るように構成されている。
【0023】
紫外線硬化性樹脂原料の機械発泡・塗布手段は、前記供給側下側ロール14付近において、前記略水平方向に供給される前記下側プラスチックフィルム11の上面に発泡(起泡)後の紫外線硬化性樹脂原料Pを吐出する機械発泡装置21で構成される。前記機械発泡装置21は、外部から供給される不活性ガスを紫外線硬化性樹脂原料に混合攪拌して紫外線硬化性樹脂原料を発泡(起泡)させるオークスミキサー、ホバートミキサー等の各種ミキサーを備え、発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pを、略水平方向に供給されている下側プラスチックフィルム11の上面に吐出可能となっている。なお、機械発泡装置21としては、攪拌によって紫外線硬化性樹脂原料にガスを巻き込んで紫外線硬化性樹脂原料を発泡(起泡)させることができ、かつ発泡(起泡)状態で吐出可能なものであれば、制限なくする使用することができる。不活性ガスは、常温常圧で気体状態のものであって、紫外線硬化性樹脂を劣化させないものであれば、特に限定されない。例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の無機ガスや、フロンガス、低分子量の炭化水素等の有機ガスが挙げられる。不活性ガスの供給量は適宜決定されるが、窒素ガスの場合の供給量は1〜10L/minが好ましい。
【0024】
上側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段は、上側プラスチックフィルム31の巻かれた上側プラスチックフィルム供給ロール33と、ナイフコーター34と、巻き取り側上側ロール35と、上側プラスチックフィルム巻き取りロール36とで構成される。
【0025】
前記上側プラスチックフィルム供給ロール33は、前記下側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段の上方に設けられている。前記上側プラスチックフィルム供給ロール33から巻き戻された上側プラスチックフィルム31は、略水平方向へ供給されている前記下側プラスチックフィルム11の近くまで供給され、発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの上面に積層される。
【0026】
前記ナイフコーター34は、前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの上面に積層された上側プラスチックフィルム31の上面に下端が接触し、前記上側プラスチックフィルム31の向きを略水平方向に変えると共に、前記下側プラスチックフィルム11と上側プラスチックフィルム31間における前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの厚みを調整する。前記ナイフコーター34の下端は、前記下側プラスチックフィルム11との間隔が、目的とする紫外線硬化発泡体Aの厚みと略等しくされる。正確には、紫外線硬化発泡シートAの厚みに上側プラスチックフィルム31の厚みを加算した値と略等しくされる。前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの厚みは、適宜の値とされるが、0.1〜3.0mmが好ましい。この範囲とすることで、後述の紫外線照射時に紫外線が前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの一側から反対側まで透過し、均一な気泡分布の紫外線硬化発泡シートAを得やすくなる。すなわち、前記厚みが0.1mm未満の場合、酸素阻害性による影響が大きくなり、十分に硬化した発泡シートが得られなくなる。一方、3.0mmを超えると紫外線の透過性が悪く、発泡シート内部まで十分に硬化しなくなる。
【0027】
前記巻き取り側上側ロール35は、前記供給側下側ロール14の上方に設けられ、前記上側プラスチックフィルム31の向きを上方に変えて紫外線硬化発泡シートAの上面から剥がすようにされている。
【0028】
前記上側プラスチックフィルム巻き取りロール36は、前記巻き取り側上側ロール35によって上方へ向きが変えられた上側プラスチックフィルム31を巻き取る。
【0029】
前記下側プラスチックフィルム11および前記上側プラスチックフィルム31は前記巻き取られた後、繰り返し使用することが可能である。また、前記下側プラスチックフィルム11および前記上側プラスチックフィルム31の少なくとも一方は紫外線透過性のものとされ、より好ましくは両方共、紫外線透過性とされる。本実施例では、前記下側プラスチックフィルム11および前記上側プラスチックフィルム31の両方共、紫外線透過性とされている。前記下側プラスチックフィルム11および上側プラスチックフィルム31は、外気を遮断し、前記紫外線硬化性樹脂に対して剥離可能なものが好ましい。
【0030】
前記紫外線透過性のプラスチックフィルムは、紫外線を透過可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ビニルポリイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂からなる透明プラスチックフィルムを用いることができる。さらに、紫外線を透過可能なもの、すなわち透明であれば、これらの樹脂の混合物からなるプラスチックフィルム、あるいはこれらの樹脂の積層フィルムであってもよい。前記下側プラスチックフィルム11および上側プラスチックフィルム31の厚みは25〜100μm程度が好ましい。
【0031】
紫外線照射手段41は、紫外線を照射可能な紫外線ランプ等を備えるもので構成され、前記ナイフコーター34と前記巻き取り側上側ロール35間に設けられて前記下側プラスチックフィルム11および上側プラスチックフィルム31のうち、少なくとも紫外線透過性フィルム側に紫外線を照射可能に構成されている。本実施例では上側プラスチックフィルム31側に紫外線を照射可能とされている。
【0032】
紫外線硬化発泡シートの巻き取り手段は、前記下側プラスチックフィルム11の略水平供給方向前方(進行方向側)において、前記巻き取り側下側ロール15および前記巻き取り側上側ロール35よりも前方位置に設けられた発泡シート向き変更用ロール42と、前記発泡シート向き変更用ロール42により上方へ向きを変えた紫外線硬化発泡シートAを巻き取る紫外線硬化発泡シート巻き取りロール43とで構成されている。
【0033】
前記製造装置10を用いる紫外線硬化発泡シートの製造について説明する。まず、前記下側プラスチックフィルム供給ロール13から下側プラスチックフィルム11を前記機械発泡装置21へ向けて供給し、前記機械発泡装置21から発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pを、前記下側プラスチックフィルム11の上面に吐出、塗布する。本実施例では、前記下側プラスチックフィルム11は紫外線透過可能な透明なものからなる。紫外線硬化性樹脂原料は前記の構成からなる。
【0034】
前記下側プラスチックフィルム11の上面に塗布された発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの上面に、前記上側プラスチックフィルム供給ロール33から上側プラスチックフィルム31を供給して積層すると共に、前記ナイフコーター34の下端を前記上側プラスチックフィルム31の上面に接触させて前記上側プラスチックフィルム31と下側プラスチックフィルム11間で紫外線硬化性樹脂原料Pの厚みを所定厚みにする。本実施例では前記上側プラスチックフィルム31は紫外線透過可能な透明なものからなる。
【0035】
次に、前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pは、前記下側プラスチックフィルム11と上側プラスチックフィルム31で両面が挟まれた状態で前記紫外線照射手段41へ移動し、前記紫外線照射手段41によって紫外線が照射される。本実施例では、紫外線が透過可能な透明な上側プラスチックフィルム31の上方から前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pに紫外線が照射される。前記紫外線の照射によって前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pが硬化し、紫外線硬化発泡シートAになる。その際、前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pは、前記下側プラスチックフィルム11と上側プラスチックフィルムで両面が覆われ、酸素との接触が防止されているため、酸素による重合阻害(いわゆる酸素阻害)により硬化性が悪くなって紫外線硬化発泡シートAの表面が粘着性のべたついたものになるのを防ぐことができる。
【0036】
前記紫外線の照射により紫外線硬化発泡シートAとした後、前記下側プラスチックフィルム11を前記下側プラスチックフィルム巻き取りロール16で巻き取って前記紫外線硬化発泡シートAの下面から剥がすと共に、前記上側プラスチックフィルム31を前記上側プラスチックフィルム巻き取りロール36で巻き取って前記紫外線硬化発泡シートAの上面から剥がし、前記紫外線硬化発泡シートAを紫外線硬化発泡シート巻き取りロール43で巻き取る。これによって、前記紫外線硬化発泡シートAが連続的に製造される。前記紫外線硬化発泡シート巻き取りロール43に巻き取られた前記紫外線硬化発泡シートAは、その後、用途に応じた寸法に裁断されて使用される。なお、前記下側プラスチックフィルム巻き取りロール16に巻き取られた下側プラスチックフィルム11、および前記上側プラスチックフィルム巻き取りロール36に巻き取られた上側プラスチックフィルム31は繰り返し使用可能である。
【実施例】
【0037】
以下、具体的な実施例および比較例について示す。図1に示した製造装置10を用い、表1〜表4に示す配合の紫外線硬化性樹脂原料に窒素ガスを5L/minの供給量で吹き込みながら、オークスミキサー(機械発泡装置21)により攪拌して機械的に発泡させ、発泡後の紫外線硬化性樹脂原料を前記下側プラスチックフィルム11上に塗布し、前記のようにして実施例および比較例の紫外線硬化発泡シート(厚み略1mm)を製造した。ミキサー回転数は400rpm、原料供給量は240g/minである。また、オークスミキサー(機械発泡装置21)の吐出ヘッドは、下側プラスチックフィルム11の幅方向へ往復移動させることなく、下側プラスチックフィルム11の幅方向中央に位置を固定して紫外線硬化性樹脂原料の吐出を行った。なお、表1〜表3における基本配合は、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤および整泡剤からなり、その内容を表4に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
表1〜表3におけるフィラー1はシリカ、親水性、品名:AZ−200、東ソーシリカ(株)製、フィラー2はシリカ、親水性、品名:BY−200、東ソーシリカ(株)製、フィラー3はシリカ、親水性、品名:CX−200、東ソーシリカ(株)製、フィラー4はシリカ、親水性、品名:SYLYSIA350、富士シリシア化学(株)製、フィラー5はシリカ、親水性、品名:SYLYSIA380、富士シリシア化学(株)製、フィラー6はシリカ、親水性、品名:SYLYSIA430、富士シリシア化学(株)製、フィラー7はシリカ、親水性、品名:SYLYSIA450、富士シリシア化学(株)製、フィラー8はシリカ、親水性、品名:SYLYSIA550、富士シリシア化学(株)製、フィラー9はシリカ、親水性、品名:SYLYSIA730、富士シリシア化学(株)製、フィラー10はシリカ、疎水性、品名:サイロホービック200、富士シリシア化学(株)製、フィラー11はシリカ、疎水性、品名:サイロホービック603、富士シリシア化学(株)製、フィラー12はゼオライト、ユニオン昭和(株)製である。またフィラー1〜12はいずれも白色である。また、比較例2のフィラーは、水酸化アルミニウム、平均粒子径8μm、関東化学(株)製である。
【0043】
表4におけるオリゴマーAは、ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートからなるポリウレタンメタクリレート、2官能、分子量20000、自社製、オリゴマーBはポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートからなるポリウレタンメタクリレート、2官能、分子量10000、自社製、希釈剤(モノマー)Aはモルホリンアクリレート、1官能、分子量141、品名:ACMO、(株)興人製、希釈剤(モノマー)Bは2−アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、1官能、分子量216、品名:A−SA、新中村化学工業(株)製、紫外線重合開始剤は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、分子量164.2、品名:Darocur 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、整泡剤はポリエーテル変性ポリシロキサン、ペンダント型、品番:SH192、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製である。
【0044】
なお、実施例1〜実施例16、実施例18〜実施例20はフィラーとしてシリカを用いた例であって、その中でも実施例1と実施例2はフィラー1の添加量を変化させた例、実施例2〜4、実施例6および実施例7、実施例9〜実施例11、実施例13、実施例15および実施例16は、フィラーの添加量を固定してフィラーの種類を異ならせた例、実施例4と実施例5はフィラー4の添加量を変化させた例、実施例7と実施例8はフィラー5の添加量を変化させた例、実施例12〜実施例14はフィラー9の添加量を変化させた例、実施例2と実施例18〜実施例20は基本配合のオリゴマーと希釈剤を変化させた例である。また、実施例17は、フィラーとしてゼオライトを用いた例である。なお、表には示してないが、フィラーを黒色の活性炭として実施例および比較例と同様に紫外線硬化発泡シートの製造を試みたところ、紫外線硬化性樹脂原料の硬化が不十分であった。これはフィラーが黒色のため、紫外線硬化性樹脂原料内まで紫外線が十分照射されなかったことによると推測される。
【0045】
各実施例および比較例に対して、密度(JIS K 6401準拠)、引張強度(JIS K6251準拠)、伸び(JIS K 6251準拠)、引裂強度(JIS K 6252準拠)を測定した。測定結果は表1〜表3の下欄に示すとおりである。
【0046】
測定結果から理解されるように、比較例1(フィラー無)と比較例2(フィラーが水酸化アルミニウム)と比べ、実施例1〜実施例20は何れも強度(引張強度および引裂強度)が高くなっている。また、実施例1および実施例2、実施例4および実施例5、実施例7および実施例8、実施例12〜実施例14の強度(引張強度および引裂強度)測定結果から、フィラーの添加量増大とともに強度が向上していることがわかる。さらにまた、実施例2〜実施例4、実施例6、実施例7、実施例9〜実施例11、実施例13、実施例15、実施例16から、フィラーの添加量が同一でも系のフィラーの吸油量(オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりのフィラーの添加量におけるフィラーの吸油量)が増大すると強度(引張強度および引裂強度)が向上していることがわかる。特に系のフィラーの吸油量が20ml以上の場合には、強度(引張強度および引裂強度)が特に良好になっている。このことから、系の吸油量(オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりのフィラーの添加量におけるフィラーの吸油量)の好ましい範囲である5〜60mlにおいて、特に好ましい範囲は20ml〜60mlである。一方、伸びについては、実施例1〜20の何れも100%以上であり、十分な伸びを有していた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】紫外線硬化発泡シートを連続的に製造する製造装置の概略正面図である。図である。
【符号の説明】
【0048】
11,31 プラスチックフィルム
21 機械発泡装置
41 紫外線照射手段
A 紫外線硬化発泡シート
P 機械的に発泡させた紫外線硬化性樹脂原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させた紫外線硬化発泡シートにおいて、
前記紫外線硬化性樹脂原料には、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤およびフィラーを含み、
前記フィラーが多孔質構造を有する無機フィラーであることを特徴とする紫外線硬化発泡シート。
【請求項2】
前記オリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりの前記フィラーの添加量において前記フィラーの吸油量が5〜60mlであることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化発泡シート。
【請求項3】
前記フィラーがシリカであることを特徴とする請求項1または2に記載の紫外線硬化発泡シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−7431(P2009−7431A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168556(P2007−168556)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】