説明

紫外線遮蔽樹脂フィルムの製造方法

【課題】 酸化亜鉛微粒子をポリエステル系樹脂中に高分散させることができ、酸化亜鉛粒子を配合することにより樹脂の成形性が損なわれない透明性が高く紫外線遮蔽能の優れたポリエステル系樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】 酸化亜鉛微粒子を、極性又は非極性のビニル系樹脂と混練して酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散されたマスター樹脂組成物とし、このマスター樹脂組成物をポリエステル系樹脂に添加混練し、フィルムに成形する。ビニル系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が好ましく使用される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化亜鉛微粒子を配合し、耐候性や透明性に優れ、紫外線遮蔽効果が高いポリエステル系樹脂フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、延伸特性、成形性、耐摩耗性、安全性等の特性に優れており、フィルムに成形して包装用フィルム、保護フィルム、農業用フィルム等として従来から、好適に使用されている。
【0003】ただ、ポリエステル系樹脂フィルムは、それ自身それほど紫外線遮蔽能が優れたフィルムではない。しかして、紫外線により、食品、医薬品、化粧品等の変質や劣化、並びに色彩を帯びた衣服、精密機器、書籍、文房具等の退色が促進されることが知られており、したがって、当該ポリエステル系樹脂フィルムに紫外線吸収剤を配合することにより高い紫外線遮蔽効果を付与することができれば、これら物品の包装用フィルムや保護フィルム等としてより好適に使用されることが期待される。
【0004】ポリエステル系樹脂フィルムを包装材料等として使用する場合は、紫外線吸収剤を添加することにより、当該フィルムが、紫外光は遮蔽するが、可視光の透過率は阻害されることのない内容物が確認できるフィルムであることが要請される。
【0005】紫外線吸収剤としては、従来、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の有機系紫外線吸収剤が知られており、当該有機系の紫外線吸収剤を添加配合したポリエステル系樹脂フィルムは、その透明性があまり阻害されることが無く、初期段階では、優れた紫外線遮蔽効果を奏するが、当該添加した紫外線吸収剤が時間経過と共に経時劣化したり、また当該フィルム表面にブリードアウトするため、紫外線吸収能が低下するという問題があった。特に、有機系の紫外線吸収剤が当該フィルム表面にブリードアウトすると、安全性・衛生上の問題が生じ、とりわけ、食品包装用には使用しにくいという大きな問題があった。
【0006】これに対し、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子等の無機系紫外線吸収剤は、経時劣化やブリードアウトの問題はなく、安全性等の観点からは、極めて好ましいものである。しかしながら、酸化亜鉛粒子等の無機粒子は、基材フィルムを構成する熱可塑性樹脂との相溶性がないため、粒子を配合すると、フィルムの透明性が低下するという大きな問題があり、これを防ぐために、粒子径が可視光線の波長より短い、例えば0.1μm程度以下に微細化した無機粒子を用いる多くの提案がなされている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】紫外線は、基本的に、波長290〜320nmのB紫外線(以下、UV−Bと称する。)と、320〜400nmのA紫外線(以下、UV−Aと称する。)とに大別される。従来は、これらの紫外線の内、主としてより有害なUV−Bのみを遮蔽すればよいとされていたが、近年、皮膚の弾力性を弱め老化皮膚を呈する等UV−Aの有害性が認識されるようになったこともあり、一般的に紫外線遮蔽のためには、UV−Aをも遮蔽することが強く望まれるようになった。かかる状況において、従来から用いられている酸化チタンでは、このUV−Aの遮蔽には十分対応できないことから、UV−A遮蔽能の高い酸化亜鉛が注目され、特にこれを添加・含有した透明フィルムが望まれている。
【0008】しかしながら、微粒子状の酸化亜鉛は、その比表面積が極めて大きいことから、その凝集力も非常に大きく、従って、このような微粒子状の酸化亜鉛をフィルム等に練り込む場合には、当該微粒子状の酸化亜鉛がポリマーに十分に分散せずポリエステル系樹脂中に均一に分散させることが困難である。このため、紫外線や可視光線透過率のばらつき、透明性の低下、フィルム表面の凸凹、さらに極端な場合は、粒子がフィルム表面から剥離して包装されている内容物に混入するという問題があった。
【0009】又、さらに本発明者らは、酸化亜鉛微粒子をポリエステル系樹脂中に配合し、射出成形機等の中で溶融混練した場合、酸化亜鉛微粒子の配合量や溶融混練の条件によっては樹脂が分解して、その粘性が低下し、成形が困難になる場合があるという予想されざる問題があることを見いだした。かかる現象は、従来全く知られていなかったものであるが、おそらくこれは、酸化亜鉛微粒子が、空気中の水分及び/又は樹脂中に吸着されている微量の水分により、ポリエステルのエステル結合を加水分解し、樹脂を分解せしめる触媒として作用するためではないかと推察される。
【0010】かくして本発明の目的は、酸化亜鉛微粒子をポリエステル系樹脂中に高分散させることができるとともに、かつ、酸化亜鉛粒子を配合することにより、当該樹脂の成形性が損なわれることのない透明性の高い紫外線遮蔽能の高いポリエステル系樹脂フィルムの製造方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、まず、酸化亜鉛微粒子を特定のビニル系樹脂と混練してから、さらにポリエステル系樹脂と混練することによりこれらの問題が解決しうることを見出し本発明を完成した。
【0012】すなわち本発明に従えば、以下の発明が提供される。
(1) 酸化亜鉛微粒子が配合された紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムの製造方法において、当該酸化亜鉛微粒子を、極性又は非極性のビニル系樹脂と混練して酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散されたマスター樹脂組成物とし、当該マスター樹脂組成物を、ポリエステル系樹脂に添加混練した樹脂組成物をフィルムに成形することを特徴とする紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムの製造方法。
【0013】(2)極性又は非極性のビニル系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポブテン、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂である(1)に記載のフィルムの製造方法。
【0014】(3)前記マスター樹脂組成物をペレットとしてポリエステル系樹脂に添加混練する(1)又は(2)に記載のフィルムの製造方法。
【0015】(4)前記フィルムの厚み30μmにおける紫外線の透過率が10%以下、及び可視光線の透過率が80%以上である(1)〜(3)のいずれかに記載のフィルムの製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】本発明の酸化亜鉛微粒子が配合された紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムの製造方法においては、まず最初に、酸化亜鉛微粒子を、極性又は非極性のビニル系樹脂と混練して酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散されたマスター樹脂組成物とする。
【0018】本発明で使用する酸化亜鉛微粒子としては、その平均粒径(BET法による。)が0.01〜5μm、好ましくは0.01〜1μm、さらに好ましく0.01〜0.1μm程度のものであれば特に限定はない。また、当該酸化亜鉛は、亜鉛を主体としたものであればよく、他の金属成分、例えばSi、Al、Sn、In、Fe、Pb、Cd等を30質量%以下、好ましくは20質量%以下を含有していてもかまわない。
【0019】このような酸化亜鉛微粒子は、例えば原料酸化亜鉛を含む水スラリーに二酸化炭素ガスを吹込み、まず塩基性炭酸亜鉛を合成し、得られた当該塩基性炭酸亜鉛スラリーを、造粒乾燥もしくは噴霧乾燥した後、加熱分解することにより得られる。
【0020】原料として用いられる酸化亜鉛としては、所謂酸化亜鉛であればどのようなものであってもよく、例えば、亜鉛を溶融・蒸発させ気相で酸化するフランス法、亜鉛鉱石を仮焼・コークス還元・酸化するアメリカ法、亜鉛塩溶液にソーダ灰を加えて塩基性炭酸亜鉛を沈殿させ、乾燥・焼成する湿式法(加熱分解法)等のいずれで製造したものでもよい。
【0021】二酸化炭素ガスの導入方法としては、スラリーとガスが効果的に接触しうるものであれば、特に限定するものではないが、例えば反応槽底部に散気管等を設置し、この散気管を通じて二酸化炭素ガスを液中に吹き込み、さらに好ましくは撹拌機の撹拌羽根によりこれを細分化して導入する方法等が好ましい。
【0022】塩基性炭酸亜鉛生成反応は、種々の方式によって実施することができ、例えば、反応槽にまず酸化亜鉛スラリーを仕込んでおき、これに二酸化炭素ガスを連続的に供給して塩基性炭酸亜鉛スラリーを生成させる半連続法(半回分法)、酸化亜鉛スラリーと二酸化炭素ガスの両者を連続的に反応槽に供給して塩基性炭酸亜鉛スラリーを生成させ、当該生成した塩基性炭酸亜鉛スラリーを連続的に反応槽から連続的に抜き出す連続法等の方法が好ましく採用される。
【0023】反応温度としては、特に限定するものではないが、10〜80℃、好ましくは20〜60℃である。 また、反応時間は、反応温度等により変わりうるが、通常10分〜10時間、好ましくは30分〜5時間程度である。
【0024】以上のごとくして得られた塩基性炭酸亜鉛を含むスラリーは、そのまま流動層乾燥、媒体流動層乾燥、気流乾燥及又は噴霧乾燥し、水分を除去して塩基性炭酸亜鉛の乾燥粉末とすることが好ましい。
【0025】得られた塩基性炭酸亜鉛粒子は、ボックス炉やバッチ式や連続式のロータリーキルン、ベルトキルン等の加熱炉内において200〜500℃程度で通常30分〜20時間加熱分解され、酸化亜鉛微粒子とする。
【0026】本発明においては、酸化亜鉛微粒子を極性のビニル系樹脂と混練してマスター樹脂組成物とする。
【0027】酸化亜鉛微粒子を混練する極性のビニル系樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチル(メタ)アクリレート、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、また非極性のビニル系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、スチレンブタジエン共重合体、エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。なかでも、極性又は非極性のビニル系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンからなる群より選択されるものが好ましい。なお、これらの一部が塩素等でハロゲン化されたものや、これらの共重合体であってもよい。例えば、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリブテン、エチレン−塩化ビニル共重合体等であってもよい。
【0028】酸化亜鉛微粒子をビニル系樹脂に混練する装置としては、特に限定するものではなく、通常の混練機、押出機又は射出成形機が使用される。混練機としては、バンバリーミキサーやニーダーが使用され、押出機若しくは射出成形機としては、単軸、二軸、多軸の押出機等が使用される。これらの混練機等は、回分式であっても連続式であってもいずれでもかまわない。好ましくは、ビニル系樹脂を押出機等の中でその溶融温度以上に加熱し、溶融樹脂として酸化亜鉛微粒子と充分混練することである。かくして酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散されたマスター樹脂組成物が得られるが、好ましくは、これを一旦冷却固化し、ペレット、顆粒、粉体とするものである。そのうち、取扱いの容易性から最も好ましくは、ペレット(マスターペレット)の形状に賦形することである。その場合、ペレット化は、ストランドカット方式、ホットカット方式、ウォーターリングカット方式、アンダーウォーターカット方式のいずれで行ってもかまわない。
【0029】マスター樹脂組成物中の酸化亜鉛微粒子のビニル系樹脂に対する混合比率は、できるだけ高濃度であることが好ましく、例えば質量部の比で、1〜50/99〜50、好ましくは2〜40/98〜60、さらに好ましくは5〜30/95〜70である。
【0030】以上のごとくして得られた酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散されたマスター樹脂組成物は、次にポリエステル系樹脂に添加混練される。
【0031】本発明において使用するポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とジオール又はそのエステル形成性誘導体を重縮合せしめて得られる。ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられ、ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、テトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。かかるポリエステル系樹脂の例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート、ポリヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボンキシレート等が好ましいものとして挙げられる。
【0032】酸化亜鉛微粒子を含むマスター樹脂組成物は、上記したポリエステル系樹脂に添加混練される。使用する混練装置としては、特に限定するものではないが、通常、単軸、二軸、多軸のいずれかの押出機が使用される。好ましくは、ポリエステル系樹脂を押出機等の中でその溶融温度以上に加熱し、またマスター樹脂組成物をペレットとして供給・溶融し、両者を充分混練する。混練中に当該ビニル系樹脂のペレットは、溶融し、剪断力により多数の微小部分に分割されてポリエステル系樹脂中に分散するが、この際、常に当該ビニル系樹脂からなる微小部分中には酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散された状態に保持されていると考えられる。
【0033】従って、本発明によれば、酸化亜鉛微粒子をポリエステル系樹脂中に配合し、射出成形機等の中で溶融混練する場合、樹脂の粘度が大幅に低下して、以下に述べるフィルムへの成形が困難になるようなことは起こり得ない。この理由は、当該酸化亜鉛微粒子の大部分は、常にビニル系樹脂中に分散された状態にあり、直接ポリエステル系樹脂に接触することは実質的に防止されるので、ポリエステルのエステル結合を加水分解し、樹脂を分解せしめる触媒として作用することは無くなるためと推定される。
【0034】このようにして、当該ビニル系樹脂中に酸化亜鉛微粒子が保持されたまま、ポリエステル系樹脂中に均一に分散された樹脂組成物が得られる。
【0035】酸化亜鉛微粒子を含むマスターペレット等のマスター樹脂組成物とポリエステル系樹脂との混合比率は、最終的なフィルム中にさせるべき酸化亜鉛微粒子の配合量によって異なりうるが、例えば質量部の比で、5〜60/95〜40、好ましくは10〜50/90〜50、さらに好ましくは15〜40/85〜60である。
【0036】当該マスター樹脂組成物をポリエステル系樹脂に添加混練した溶融樹脂組成物は、最後にフィルムに成形される。
【0037】ポリエステル系樹脂のフィルム成形は、流延法などによってもよいが、通常、Tダイ法またはインフレーション法により行われることが好ましい。
【0038】Tダイ法による場合は、上記混練する押出機の先端にTダイを装着する。押出機で加熱溶融された酸化亜鉛微粒子を含むポリエステル系樹脂組成物は、Tダイで広幅化され、先端の狭いすきま(スリット)から溶融フィルムとして押出され冷却ロールで冷却・固化されて製品であるポリエステル系樹脂フィルムが得られる。
【0039】インフレーション法による場合は、上記押出機に円形ダイ(環状ダイ)を組み合わせる。押出機で加熱溶融された酸化亜鉛微粒子を含むポリエステル系樹脂組成物は、円形ダイから円筒状に押出され、当該円筒状のフィルム内に一定量の空気を装入し、空気圧で膨張・冷却固化させて円筒状のポリエステル系樹脂フィルムが得られる。なお、上記の方法によって得られる樹脂フィルムは、引張り強さや引き裂き強さ等の機械的強度等を向上させるため、さらに逐次2軸延伸、同時2軸延伸などの手段により延伸したポリエステル系樹脂フィルムとしてもよい。
【0040】本発明における酸化亜鉛微粒子が配合されたポリエステル系樹脂フィルムの厚みは、特に限定するものではないが、通常、通常10〜100μm、好ましくは15〜80μm、さらに好ましくは20〜60μm程度である。また、当該ポリエステル系樹脂フィルム中の酸化亜鉛微粒子のポリエステル系樹脂に対する質量比は、0.1〜30/99.9〜70、好ましくは0.5〜25/95.5〜75、さらに好ましくは1〜20/99〜80である。
【0041】本発明の方法によって得られる、酸化亜鉛微粒子が配合された紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムは、厚み30μmにおいて、その紫外線の透過率が10%以下、及び可視光線の透過率が80%以上である光線透過特性を有する。このように、本発明における紫外線遮蔽フィルムによれば、可視光線の透過率を80%未満に低下させることなく、紫外線を10%以下と充分に遮蔽することができるので、食品、医薬品、化粧品、精密機器等の包装用フィルムや保護フィルムとして好適に使用することができる。
【0042】すなわち、本発明における紫外線遮蔽フィルムは、本来の目的である内容物の紫外線による劣化を充分に防止するとともに、かつ可視光線を充分に透過させて実質的に透明なフィルムと同等の透視性が得られるため、消費者等は、内容物である食品や精密機器等を自然に近い状態で見て、その新鮮さ、品質、表面状態を正確に把握し、判断することが可能になる。
【0043】なお、本発明で使用する酸化亜鉛微粒子は、分散性をより向上させるため、あらかじめジメチルポリシロキサン、ジメチルシリコーン、ジメチル・ジメトキシシラン等の表面処理剤で表面処理してもよい。
【0044】本発明において、フィルム厚みが30μm以外の場合は、その厚みにおける光線透過率の測定値をBeer則により式(1)で30μm厚みに換算すればよい。
【0045】
log10(I0 /I)=K*L (1) ここで、 I0 :入射光の強さI :フィルム透過後の光の強さL :フィルムの厚さ(μm)
K :定数
【0046】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の一例であり、本発明の技術的範囲がこれらの実施例により限定されるものではない。
【0047】(実施例1)超微粒子状の酸化亜鉛(ハクスイテック社製、ZINCOX(ハクスイテック社登録商標)Super−1、平均粒径0.02μm(BET法による。))を、ポリプロピレン樹脂(以下、PP樹脂又は単にPPと略称する。)に20質量%配合し、スクリュー型二軸押出成形機により混練部の温度を235℃として混練・押出して酸化亜鉛粒子含有PPマスターペレットを作製した。
【0048】このPPマスターペレットを、スクリュー型二軸押出成形機(東洋精機ラボストミル50C150)を使用してポリエチレンテレフタレート樹脂に20質量%混合して、スクリュー回転数50rpmにて250〜290℃で混練・溶融し、これを円形ダイより円筒状に押出してインフレーション法により厚さ30μmのフィルムに成膜して、酸化亜鉛微粒子が4質量%配合された紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムを得た。
【0049】(実施例2)超微粒子状の酸化亜鉛(ハクスイテック社製、ZINCOX(ハクスイテック社登録商標)Super−1、平均粒径0.02μm(BET法による。))を、塩化ビニル樹脂(以下、PVC樹脂又は単にPVCと略称する。)に20質量%配合し、スクリュー型二軸押出成形機により混練部の温度を160℃として混練・押出して酸化亜鉛粒子含有PVCマスターペレットを作製する他は、実施例1と同様に処理して、酸化亜鉛微粒子が4質量%配合された厚み30μmの紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムを得た。
【0050】(比較例1)実施例1と同じ超微粒子状酸化亜鉛を実施例1と同じスクリュー型二軸押出成形機においてポリエチレンテレフタレート樹脂に4質量%混合して、250〜270℃で混練・溶融し、これを円形ダイより円筒状に押出してインフレーション法により成膜して、酸化亜鉛微粒子が4質量%配合された厚さ30μmの紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムを得た。
【0051】(比較例2)実施例1と同じ超微粒子状酸化亜鉛を実施例1と同じスクリュー型二軸押出成形機においてポリエチレンテレフタレート樹脂に4質量%混合して、スクリュー回転数50rpmにて250〜290℃で混練・溶融し、これをTダイ(ダイ幅:14cm、スリット幅:0.8cm)より押出してチルロール(70℃)で巻き取り、延伸前の厚み100〜200μm程度のポリエステル樹脂リボンを形成することを試みたが、Tダイより押出された樹脂は粘性が低下しており所望の樹脂リボンは得られなかった。
【0052】(比較例3)実施例1と同じ超微粒子状酸化亜鉛を実施例1と同じスクリュー型二軸押出成形機においてポリエチレンテレフタレート樹脂に2質量%混合して、スクリュー回転数100rpmにて250〜295℃で混練・溶融し、これをTダイ(ダイ幅:14cm、スリット幅:0.8cm)より押出してチルロール(70℃)で巻き取り、厚み170μmのポリエステル樹脂リボンを形成した。当該リボンを延伸機により延伸し、酸化亜鉛微粒子が2質量%配合された厚さ30μmの紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムを得た。しかしながら、このフィルムは強度が低く極めて脆いものであった。
【0053】(試験方法)上記実施例1〜2及び比較例1による紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムについて、光透過率および表面状態の試験を行った。試験法は次のとおりである。
【0054】■光透過率分光光度計(日本分光社製)により、波長190〜2500μmの光透過率を測定する。測定結果から、波長190〜380nmの紫外線については透過率の最大値(%)を、また可視光線については600nmの光透過率(%)を指標として表示する。
【0055】■表面状態フィルムの表面をデジタルマイクロスコープにより観察し、超微粒子酸化亜鉛の分散性(凝集)および剥離の有無を調べる。
【0056】上記実施例、比較例の結果を、表1に示す。これより明らかなように、酸化亜鉛微粒子を特定のビニル系樹脂と混練してマスター樹脂組成物とし、これをポリエステル系樹脂に添加混練した樹脂組成物をフィルムに成形した実施例1及び実施例2においては可視光線の透過性に優れ、さらに紫外線透過遮蔽性に優れているフィルムが得られることが確認できた。また、酸化亜鉛微粒子はフィルム中で非常に良く均一分散しており、また粒子のフィルム表面からの剥離は認められなかった。
【0057】これに対し、酸化亜鉛微粒子を直接ポリエステル系樹脂に配合した比較例1のものは、紫外線遮蔽率が低く、また可視光線透過率が低く透明性が劣っているフィルムである。これは、酸化亜鉛微粒子がフィルム中で凝集しておりその分散性が非常に悪いためと思われる。また、一部の粒子はフィルム表面から剥離していることが認められた。
【0058】
【表1】


【0059】
【発明の効果】本発明に従えば、酸化亜鉛微粒子を特定のビニル系樹脂と混練してから、さらにポリエステル系樹脂と混練することにより、酸化亜鉛微粒子をポリエステル系樹脂中に高分散させることができるとともに、かつ、酸化亜鉛粒子を配合することにより当該ポリエステル系樹脂の成形性が損なわれることのない透明性の高い紫外線遮蔽能の高いポリエステル系樹脂フィルムの製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸化亜鉛微粒子が配合された紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムの製造方法において、当該酸化亜鉛微粒子を、極性又は非極性のビニル系樹脂と混練して酸化亜鉛微粒子が高濃度に分散されたマスター樹脂組成物とし、当該マスター樹脂組成物を、ポリエステル系樹脂に添加混練した樹脂組成物をフィルムに成形することを特徴とする紫外線遮蔽ポリエステル系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項2】 極性又は非極性のビニル系樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも一つの樹脂である請求項1に記載のフィルムの製造方法。
【請求項3】 前記マスター樹脂組成物をペレットとしてポリエステル系樹脂に添加混練する請求項1又は2に記載のフィルムの製造方法。
【請求項4】 前記フィルムの厚み30μmにおける紫外線の透過率が10%以下、及び可視光線の透過率が80%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムの製造方法。

【公開番号】特開2003−96202(P2003−96202A)
【公開日】平成15年4月3日(2003.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−292741(P2001−292741)
【出願日】平成13年9月26日(2001.9.26)
【出願人】(000234395)ハクスイテック株式会社 (9)
【Fターム(参考)】