説明

細胞および細胞由来生成物の産生のための、灌流バイオリアクター、細胞培養システム、および方法

本発明は、細胞および細胞由来生成物の産生のための、灌流バイオリアクター、自動細胞培養システム、および方法を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が、すべての図面、表、およびアミノ酸又は核酸配列を含み全体として参照により本明細書に組み入れられる、2008年10月22日出願の米国特許仮出願第61/107,644号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
予測される個別化医療の成長は、個々の患者のニーズに適合した治療を設計するための新しい理論的枠組みを必要とする。最大の課題は細胞療法の領域に参画することであると予想される。生細胞の治療的適用は極めて大きな可能性を秘めており、ヒトの多種多様な疾患のための実行可能な治療戦略として浮上しつつあるが、研究、臨床開発および商業化用の細胞のエクスビボ産生のための安全で経済的かつ効率的な手段に対するいまだ満たされていない要求が存在する。現在の方法は、費用がかかり、大きな労力を要し、過誤や汚染を起こしやすく、変動しやすい培養条件という難点を有し、大規模な設備インフラを必要とする。
【0003】
自己細胞療法は、バイオテクノロジー産業における最も有望な成長領域の1つとして広く認められている。自己細胞療法は、患者から1種類または複数種類の細胞型の細胞を採取し、実験室で細胞を成長または増殖させ、増殖させておそらくは改変させた細胞を患者に戻すことによって達成される。細胞療法の適用には、例えば、変形性関節症の治療のために軟骨を再建すること、熱傷の治療のために自己皮膚を成長させること、皮膚疾患の治療のために線維芽細胞を増殖させること、および心疾患の治療のために筋肉を成長させることが含まれる。
【0004】
自己細胞療法の場合、各々の細胞または細胞に基づく生成物は各々の患者から製造される。哺乳動物細胞培養のための手作業による方法は、本質的に、技術者の過誤または全く同一の培養物の間に差異をもたらす不均一性を生じやすい。これは特に、ますます多くの自己細胞が個別治療のために増殖されるにつれて顕著になる。患者特異的細胞またはタンパク質は、特に手作業による方法で効率よく管理できるレベルを超える規模になった場合、変動を受けやすい。
【0005】
多大な労力を要することに加えて、各患者の材料をあらゆる他の患者の材料から隔離するための厳しい必要条件は、一度に1名の患者だけのために使用できる独自の装置(インキュベーター、組織培養フード、遠心分離機)を各々備えた数多くの単離セットを含め、製造設備が大きくかつ複雑であることを意味する。各々の患者の治療は新しい唯一のものであるので、患者特異的に製造することにも大きな労働力を要し、直接の製造人員だけでなく、品質保証と品質管理機能のために不均衡なほどに増大する人的資源をも必要とする。
【0006】
さらに、細胞または細胞に基づく生成物を製造するための従来のアプローチおよびツールは、典型的には、熟練した専門家によって実施された場合でも変動を受けやすい数多くの手作業による操作を含む。数百または数千の異なる細胞、細胞株を製造するために必要とされる規模で、および患者特異的な細胞療法に使用される場合、変動性、過誤または汚染の割合は、商業的プロセスのためには許容できなくなる。
【0007】
インビトロで細胞を培養するための細胞培養装置または培養容器(cultureware)は公知である。その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,804,628号に開示されているように、ホローファイバー培養装置は複数のホローファイバー膜を含む。酸素、栄養分および他の化学的刺激物を含有する培地は、ホローファイバー膜または毛管の内腔を通して輸送され、その壁を通過して、膜とホローファイバーを含むカートリッジの外殻との間の毛管外(EC)空間へと拡散する。維持されるべき細胞は毛管外空間に集められる。代謝老廃物はバイオリアクターから除去される。細胞または細胞生成物を装置から収集することができる。
【0008】
治療における再生医療の可能性は、改善され自動化されたインビトロ細胞培養技術に対する強い要求を生み出した。1つの原理例は、熱傷被害者および、高齢者、糖尿病患者、または寝たきりもしくは消耗性遺伝性疾患に罹患している個人などの慢性創傷患者を治療するための皮膚移植片の作製である。
【0009】
現在、適切な適合皮膚移植片を作製するためのプロセスは、高度に熟練した専門家によって実施される複雑で多大な労力を要するプロトコールに従う。1970年代の生物製剤の製造と同様に、再生医療は現在、大量生産を容易にする自動化技術の不足という問題を抱える。現在のところ、ケラチノサイトは、細胞マトリックス上、またはコラーゲンもしくは硫酸コンドロイチンなどの適切なマトリックスで被覆されたディッシュ上でゆっくりと、労力を要しつつ増殖させる。これらの培養物は、次に、細胞間相互作用を誘導して適切な移植片を作製する細胞増殖を助けるための複雑な増殖培地および細胞シグナル伝達タンパク質を使用することにより、経験豊かな専門家によって維持される。
【0010】
完全自動化システムはこの分野の大きな利益となり、治療的適用に必要とされる、プロセスの均一性を有意に改善する。タンパク質産生のために現在利用可能な装置と同様に、次世代バイオリアクターは、例えばケラチノサイトなどの治療用細胞についての費用対効果の高い産生を促進する自動灌流法の利点を包含する。
【0011】
Biovest International,Inc.(Tampa,FL)は、ホローファイバーバイオリアクターおよび長期的な高密度培養を維持する高度なプロセス制御装置を利用する、自動細胞培養機器AutovaxID(商標)を開発し、市販している。該機器は、培地および増殖補助物質の自動灌流のためおよび生成物収集のための多数のポンプ、プロセス制御のためのフィードバックセンサーおよびガス交換機能、ならびに細胞および細胞由来生成物のcGMP遵守製造のために設計されたコンピュータ支援制御装置および記録保管を組み込んでいる。AutovaxID(商標)システムと合わせた酢酸セルロースのホローファイバーバイオリアクターは、主としてハイブリドーマ細胞の増殖およびモノクローナル抗体の産生のために設計された。該システムは、この適用のためには非常に効率的であるが、接着細胞の増殖またはその後の剥離、および所望生成物である生細胞の回収のためには最適化されていない。
【0012】
細胞療法のための幹細胞の使用は、広い範囲のヒトの疾患の治療に革命をもたらす潜在的可能性を有する。近年、幹細胞を単離し、増殖させる能力に著しい進歩が為され、現在臨床開発における数多くの適用が存在する。非常に有望であるにもかかわらず、研究開発、臨床試験の需要または承認後の医療需要を満たす十分な量の幹細胞を製造する、安全で経済的かつ再現可能な方法の開発にはほとんど努力が費やされていない。主として二次元(2D)静置培養系に基づく現在の方法は、多大な労力を要し、過誤および/または汚染を生じやすく、そして商業化の重大な障害である、培養間の変動という難点を抱える。同種異系細胞の大量生産または自己細胞の個別化増殖のための汎用システム(off-the-shelf system)のような技術を可能にすることは、研究室から診療施設への細胞治療レジメンの移行を促す。
【発明の概要】
【0013】
発明の概略
本発明の1つの局面は、細胞(例えば幹細胞、前駆細胞、分化細胞)を大量に増殖させることができる灌流バイオリアクターである。各々の灌流バイオリアクターは、導入口と導出口を有する筐体、および細胞増殖マトリックスを含む。一部の態様では、細胞増殖マトリックスは、平面状であるか、プリーツ状であるか、または中心コアの周囲にらせん状に巻かれている。好ましくは、筐体は、内表面を有する第一部分と内表面を有する第二部分とを含み、該第一部分は、第一部分および第二部分の内表面が細胞増殖マトリックスによって占有される空間(細胞増殖チャンバー)を画定するように、第二部分と(流体密封の様式で)係合し、該マトリックスは第一側面と第二側面を有し、第一マトリックス側面と第一部分の内表面が第一チャンバー(第一細胞増殖チャンバーまたはサブチャンバー)を画定し、第二マトリックス側面と第二部分の内表面が第二チャンバー(第二細胞増殖チャンバーまたはサブチャンバー)を画定する。従って、第一チャンバーと第二チャンバーは細胞増殖マトリックスによって隔てられている。好ましくは、本体の第一部分は、第一チャンバーと流体連通している導入口と導出口を有し、本体の第二部分は、第二チャンバーと流体連通している導入口と導出口を有する。
【0014】
マトリックスがプリーツ状である態様では、本体の第一部分の内表面もしくは本体の第二部分の内表面または両方の内表面は、マトリックスのプリーツを支持するための支持体をさらに含む。各支持体は、マトリックスの各側面のプリーツに適合する。任意で、各々の支持体は、培地の流れが支持体を通過することを可能にする、支持体を横断する穴を有する。好ましくは、本体の第一部分の内表面と本体の第二部分の内表面は相互に係合するヘッダーをさらに含み、第二部分の内表面のヘッダーを含む。好ましくは、各々のヘッダーは、培地の流れがヘッダーを通ることを可能にする、ヘッダーを横断する穴を有する。一部の態様では、第一部分と第二部分は、各末端に2列のヘッダー(内側の列と外側の列)を有し、内側の列のヘッダーは各ヘッダー中に穴を有するが、外側の列のヘッダーは、流量をさらに制限するために、より少ない数の穴を有する。
【0015】
一部の態様では、バイオリアクターは、中心コアと、中心コアを囲んで包み込むマトリックスをさらに含む。
【0016】
本発明のもう1つの局面は、細胞培養増殖を支持するためのハードウエアを組み込んだ再使用可能な計装ベース装置と、本発明の灌流バイオリアクターを含有する、該計装ベース装置に着脱可能に取り付けられる少なくとも1つの使い捨て細胞培養容器モジュールとを含む、細胞および細胞由来生成物の産生のための自動細胞培養システムである。
【0017】
本発明のもう1つの局面は、本発明の少なくとも1つの灌流バイオリアクターを提供する工程、細胞をバイオリアクターに導入する工程、およびバイオリアクター内で細胞を培養する工程を含む、細胞および細胞由来生成物の産生のための方法である。細胞および/または細胞由来生成物は、その後、バイオリアクターから収集し得る。1つの態様では、該産生方法は、培養システムにおいて灌流バイオリアクターを使用することを含む。従って、この態様では、該方法は、本発明の少なくとも1つの灌流バイオリアクターを含む、少なくとも1つの培養容器モジュールを提供する工程、細胞培養培地をバイオリアクターを通して循環させるためのマイクロプロセッサー制御装置およびポンプを含む、細胞増殖を支持するハードウエアを組み込んだ再使用可能な計装ベース装置を提供する工程、培養容器モジュールを計装ベース装置に着脱可能に取り付ける工程、細胞をバイオリアクターに導入する工程、細胞培養培地の供給源を培養容器モジュールに液体が流れるように(fluidly)取り付ける工程、マイクロプロセッサー制御装置に操作パラメータをプログラムする工程、および細胞または細胞生成物をバイオリアクター内で増殖させるために細胞培養培地をバイオリアクターを通して循環させるようにポンプを操作する工程を含む。任意で、該方法は、増殖した細胞および/または細胞由来生成物をバイオリアクターから収集する工程、ならびに、任意で、培養容器モジュールを廃棄する工程をさらに含んでいてもよい。
【0018】
本発明の1つの局面は、細胞(例えば初代細胞もしくは細胞株)および/または細胞由来生成物の産生および増殖のための細胞培養システムである。該システムは、機械部品および電子部品のすべてを有する再使用可能な制御モジュール筐体と該制御モジュールに取り付ける使い捨て灌流バイオリアクターとを含む。このシステムは、熟達した専門家の必要性を最小限に抑え、より重要な点として、多用途設備における交差汚染の可能性を防止する。閉鎖型システムであるため、完全な隔離によって提供される安全性は、自己細胞培養物を必要とする治療または診断への直接的な適用を容易にする。この自己完結型(self-contained)自動細胞培養装置は、個別の隔離された細胞培養セットを必要とせずに、コンパクトな設備内で数多くの細胞培養物を同時に培養することを可能にする。本発明のシステムは、細胞、細胞株、患者特異的細胞および細胞生成物の工業規模での費用対効果の高い製造を可能にする、コンパクトな密封された格納システムを提供する。
【0019】
本発明の方法およびシステムは、洗浄および再使用の必要性を排除する、使い捨て培養容器を組み込むことができる。該培養システムは、大きなシステムについての、卓上型装置(ポンプ、制御装置、インキュベーター、冷却装置、培養容器等)への独立型の組込みを有する。細胞培養システムは、情報管理システム(製造実行システムまたはMIMSなど)と共に使用する場合、バッチ記録の自動作成を可能にする、バーコードリーダーおよびデータ収集ソフトウエアを組み込むことができる。
【0020】
細胞培養システムは、操作を支持するために必要とされるオペレーターの時間を大きく低減する機能(例えば一体化されたポンプカセット、pHセンサーを備えた滅菌済み培養容器、迅速装填(quick-load)培養容器)、ならびにシステムが操作を通して連続していることを可能にする、設計された自動化手順および機械(例えば自動流体クランプ、制御ソフトウエア)を組み込む。
【0021】
自動細胞培養システムは、自己完結型培養環境を作り出す。該システムは、密封された滅菌済み使い捨て培養容器、プログラム可能なプロセス制御装置、自動流体弁調節、pHフィードバック制御装置、乳酸フィードバック制御装置、温度制御装置、栄養分送達制御装置、老廃物除去、ガス交換機構、リザーバー、チューブ類、ポンプおよび収集容器を備えた、灌流培養を組み込む。従って、細胞培養システムは、高度に制御された汚染のない方法で細胞を増殖させることができる。このアプローチが適用できる細胞は、形質転換または非形質転換細胞株、リンパ球もしくは他の免疫細胞、軟骨細胞、筋細胞もしくは筋芽細胞、上皮細胞および患者特異的細胞などの体細胞を含む一次細胞、一次またはそうでない細胞を包含する。また、成体および胚の幹細胞の両方のような、遺伝的に修飾された細胞または細胞株も含まれる。具体的には、自動細胞培養システムは、オペレーターの関与の必要性を最小限に抑え、細胞の増殖および操作のための隔離されたクリーンルームの必要性を最小限に抑える方法で、細胞または細胞分泌タンパク質などの細胞生成物の産生および収集を可能にする。さらに、該システムは、完全に自己完結型であり、使い捨ての培養環境を提供する。これは、管理された多用途設備において典型的に必要とされる個別クリーンルームの必要性を排除する。バイオリアクター内の流体動力学の制御により、独自の培養プロトコールの適用または独自の細胞もしくは細胞株の増殖を容易にするために、増殖条件を調整する、例えば増殖因子濃度を変化させることが可能になる。結果として、自己細胞の増殖および個別化医療の適用におけるそれらの使用へ適用するための、均一で再現可能な細胞産生のために必要とされる、より少ない変動およびより少ない労力が得られる。
【0022】
本発明のこれらの局面および他の局面によれば、細胞培養増殖を支持するためのハードウエアを組み込んだ再使用可能な計装ベース装置を含む、細胞および細胞由来生成物の産生のための細胞培養システムが提供される。灌流バイオリアクターを含む使い捨て培養容器モジュールは、計装ベース装置に着脱可能に取り付けられる。
【0023】
本発明のこれらの局面および他の局面によれば、細胞増殖チャンバーを含む使い捨て培養容器モジュールと、細胞培養増殖を支持するためのハードウエアを組み込んだ再使用可能な計装ベース装置とを提供する工程を含む、高度に制御された汚染のない環境での細胞および細胞由来生成物の産生のための方法も提供される。ベース装置は、培地を細胞増殖チャンバーを通して循環させるためのマイクロプロセッサー制御装置およびポンプを含む。培養容器モジュールは、計装ベース装置に着脱可能に取り付けられる。細胞は、1つまたは複数のバイオリアクターに導入される。培地の供給源は、培養容器モジュールに液体が流れるように取り付けられる。操作パラメータは、マイクロプロセッサー制御装置にプログラムされる。ポンプは、細胞または細胞生成物を細胞増殖チャンバーの中で増殖させるために、培地がその中を通って循環するように操作される。次に、増殖した細胞および/または細胞由来生成物をバイオリアクターから収集することができる。培養容器モジュールは、その後、廃棄することができる。
【0024】
本発明のこれらおよび他の特徴、局面および利点は、以下の詳細な説明から、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1A〜図1Dは、本発明の灌流バイオリアクターの態様の4つの図を示す。図1Aは、ポリカーボネートまたは他の適切な材料で構築され得る、バイオリアクター2の筐体(本明細書では本体6とも称する)の透視図を示す。図1Bは、分離した本体部分(6A、6B)とその間のマトリックス8(特定の1種類または複数種類の細胞型の増殖に適する1種類または複数種類の材料、例えばPET、キトサン、コラーゲンから構成される)を示す分解組立図である。図1Cおよび1Dは、8が、2つのチャンバー10、12を作り出すためにバイオリアクター筐体6内にどのように適合しているかを示す、バイオリアクター2の断面図である。本体6の各々の部分は、少なくとも1つの導入口と少なくとも1つの導出口を有する。代替的態様では、本体6Aと6Bの部分は、協同して1つまたは複数の(共有)導入口および1つまたは複数の(共有)導出口を形成する。
【図2】図2A〜2Bは、図1に示すバイオリアクター2が3つの流体状態:プライミング、接種および再循環(灌流)に適応するためにどのように設計されているかを例示する断面図である。流体の流れは、これらの状態に適応するために導入口14、16および導出口18、20を選択的に閉鎖することにより、バイオリアクター2を通って誘導される。図2Aでは、すべての口14、16、18、20が、システムの培地とのプライミングのために開放されている。図2Bでは、下部チャンバー導入口16を接続しているチューブとチャンバー導出口20を接続しているチューブは、接種工程の間は閉じている。これは、細胞懸濁液を上部チャンバー導入口14から、マトリックス8を通って下部チャンバー導出口20より出て行くように誘導する。播種作業が完了したら、チャンバー導出口18、20が培地の再循環のために開放され、マトリックス8の両側に接線流を生じさせる。
【図3】図3は、図1に示すバイオリアクター2が3つ並行して配置された改変AutovaxID(商標)培養容器モジュール、ならびに接種、酸素添加(再循環)および細胞回収回路の概略図である。従って、図3は、従来のAutovaxID(商標)機器4の流路である図7Bに示す流路の、改変型を示す。
【図4】図4A〜4Cは、プリーツ状マトリックス8、支持体22、および培地の分配のために構成されたヘッダー24を有する、本発明の灌流バイオリアクター2の態様を示す。図4Aは、本体部分6A、6Bの両方を合わせたバイオリアクター2を示す。図4Bは、本体部分6A、6Bの両方が分離され、その間にプリーツ状マトリックス8を有するバイオリアクター2を示す分解組立図である。図4Cは、1つの本体部分6Bを示す。
【図5】図5A〜5Eは、改変された流体分配機構を含む、プリーツ状シート構造(本明細書では改変プリーツ状シート構造と称する)を有する本発明の灌流バイオリアクター2の態様を示す。図5Aおよび5Eは、バイオリアクター2の本体部分の1つである6Bの透視図である。図5Bは、接種流の方向を示す、本体部分6A、6Bの両方を合わせた断面図である。図5Dは、図5CにおけるラインA-Aに沿った本体部分6Bの断面図である。図5Aおよび5Dに示すように、この態様では、スペーサーの少なくとも1つの末端は、ヘッダーの少なくとも1つの列に隣接して、流体連通することができ、培地の流れがそこを通ることを可能にする。
【図6】図6A〜6Dは、らせん状に巻かれた構造を有する本発明の灌流バイオリアクター2(本明細書ではらせん状巻き付きバイオリアクターと称する)の態様を示す。図6Aは、ヘッダー38とコアヘッダー32とを含むバイオリアクター2を示し、軸流(外側)と半径流(内側)の領域が示されている。図6Bは、コア30、膜8、および支持体メッシュ34の断面図を示す。図6Cは、支持体メッシュ34でエンベロープに接着された膜8(上部および下部)を有する、コアヘッダー32を示す。膜8と支持体メッシュ34はコアヘッダー32に接着されている。好ましくは、コアは、培地流のための細孔36を有する。
【図7】図7A〜7Bは、従来のAutovaxID(商標)機器4の局面を示す。図7Aは、ホローファイバーバイオリアクター40を有する、AutovaxID(商標)機器4を示す図面である。ホローファイバーバイオリアクターは、典型的には約8インチの長さであり、透明なプラスチックによって密封されて、使い捨て培養容器モジュールの内部に位置する。完全な自己完結型システムは、典型的には4つのポンプ、ガス交換カートリッジ、pH、温度、培地灌流およびCO2のためのセンサー、加熱器、ならびに培地と収集材料の貯蔵のための冷蔵区画を含む。システムは、乳酸レベルをモニターして制御するように装備され得る。図7Bは、AutovaxID(商標)機器の流路の概略図を示す。本発明の自動細胞培養システムでは、システムは、ホローファイバーバイオリアクター40の代わりに本発明の灌流バイオリアクター2を含む。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、細胞および細胞由来生成物の産生のための、バイオリアクター2、自動細胞培養システム、および方法を提供する。本発明のバイオリアクターを使用して増殖された細胞は、損傷した組織または器官を再建するために使用できる。外傷または損傷後の可能な適用は数多くあり、例えば熱傷修復のための自己皮膚の産生、骨折修復のための骨の成長、および/または重症損傷の形成復元(plastic reconstruction)のための組織の産生などである。
【0027】
本発明のバイオリアクター2の複数を、単一の培地供給源または多数の供給源から並行して運転させることができる。1つの態様では、3つ以上のバイオリアクターユニット2を単一培地供給源から並行して運転させる。
【0028】
一部の態様では、各々のバイオリアクター2は、細胞基質材料8(本明細書では「マトリックス」、「細胞マトリックス」、「細胞増殖マトリックス」または「細胞基質マトリックス」と称する)を保持するために筐体6内に彫られたチャンバー10、12を有する。1種類または複数種類の所望の細胞型の増殖を支持することができる任意の多孔性材料が使用できる。一部の態様では、マトリックス8は、3Dの細胞相互作用と未分化ヒト間葉系幹細胞(hMSC)の増殖とを支持することが以前に示された、ポリエチレンテレフタレート(PET)不織布で構築される(例えば、各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,875,605号;同第6,943,008号;および同第7,122,371号; Grayson et al., J. Cell Physiol., 2006, 207:331-339; Zhao et al., Biotechnol. Prog., 2005, 21 : 1269-1280; Li et al., Biomaterials, 2001. 22:609-619を参照のこと)。
【0029】
市販されている厚さ1.2mmのPETマトリックス8をNaOHで高温度にて処理し、次に熱圧縮して、シートへと切断することができる。チャンバー10、12の各々を、ポリカーボネート筐体6内にPETマトリックス8のシートを1枚保持するように彫る。フローチャンバー10、12は、培養の間はマトリックス8に並行に、または細胞の播種および収集の間はマトリックス8に対して接線方向に、培地が流れるように向けられるよう設計される。この設計により、細胞の播種、長期的な培養、および個別の灌流チャンバー2の各々のマトリックス8からの収集が統合され、システムの自動化と操作の容易さが促進される。灌流チャンバー2において培地流を調節する能力はまた、大量の所望細胞集団を産生するために長期間にわたって細胞(例えばhMSC)増殖の多様な要求を満たすように、3Dマトリックス内部の細胞増殖環境について最大限の制御を可能にする。
【0030】
図1A〜1Dを参照すると、個別のバイオリアクターユニット2の各々の主本体を医療用グレードのポリカーボネートまたは他の適切な材料から構築することができる。好ましくは、バイオリアクター2は、流体密封の様式で(例えばOリングまたは他のガスケットで)互いに着脱可能に係合するように設計された、好ましくは対称形である、第一部分と第二部分(例えば上部と下部)6A、6Bで構成される。2つの部分6A、6Bは、細胞増殖マトリックス8を保持するために合わせて固定されて、密封され(図4に示す)、マトリックス8によって少なくとも部分的に占有される空間を作り出して、それによりマトリックス8の両側に(例えばバイオリアクター2およびマトリックス8の配向に依存して、マトリックスの上および下に)チャンバー10、12を作製することができる。各々のチャンバーは、(例えば各チャンバーの末端に)流体の流入/流出のための導入口と導出口をさらに含む。
【0031】
PETをマトリックス8として使用しようとする場合、PET材料をLi et al., Biomaterials, 22:609-618 (2001)に述べられているように処理することができる。ダクロンとしても知られる、市販のニードルパンチ式PET不織布(繊維径:〜20μm、繊維密度:1.35g/cm3)を、まず最初に洗浄し、次に表面の疎水性を低減するために1%NaOH溶液で100℃にて1時間加水分解する。次に、前記布を30kPaの圧力下において120℃で45分間熱圧縮する。マトリックスの多孔度は約89%、細孔径は20〜50μmの範囲であるべきである。最後に、マトリックスをバイオリアクター本体内に適合するように切断する。各々のバイオリアクターは2.5cm×10cmであり、25cm2の表面積および約3mLの総マトリックス容量(マトリックスの厚さを0.12cmと仮定する)を有する。
【0032】
一部の態様では、バイオリアクター2はプリーツ状の細胞増殖マトリックス8を有する。バイオリアクター2の主本体6は、例えば産生量に合わせて医療用グレードのポリカーボネートで射出成形することができる。ユニットは、第一部分と第二部分6A、6B(例えば上部と下部)で構成され得る。2つの部分は、図4A〜4Cに示すように細胞増殖マトリックスを含むために着脱可能に合わせて固定され、密封される。これは、マトリックス8の各々の側に(例えば配向に依存して、マトリックス8の上および下に)チャンバー10、12を作製する。各々のチャンバー10、12の末端に、流体の流入/流出を可能にする開口部が存在する(14、16、18、20)。バイオリアクター2は、内部に、マトリックス8の各々のプリーツに沿って均等に流れが分配されるのを可能にする流体ヘッダー空間を有する。
【0033】
プリーツ状のデザインを構築するため、同心円状のローラーを用いてマトリックス材料をプリーツ状表面へと成形することができる。次にプリ-ツ状の膜を切断し、側面をバイオリアクター2の密封面に実質的に適合するように成形する。膜は、好ましくは、細孔構造の完全性を維持するために、打ち抜きではなくロール成形される。1つの態様では、バイオリアクターの利用可能なおおよその表面積は、19.1cm(プリ-ツの有効幅)×長さ13.1、すなわち251cm2である。マトリックス8の容量は、最終的な形状およびマトリックス材料の厚さに依存するが、典型的な厚さ1.2mmのPET材料については、これは約30mLのマトリックス容量を形成する。他の材料を細胞支持体マトリックスとして使用することができる。
【0034】
接種の間の細胞の均一な流れと十分な分配は、大規模な細胞産生の成功のために重要である。流体動力学も、勾配形成を最小限に抑え、マトリックス容量全体に栄養分を均一に送達するために重要である。流体分配を最大化するため、図5A〜5Eに示すように、代替の流体分配スキームが使用できる。基本的には、マトリックス8のためのバイオリアクター支持体構造22をチューブ状にするように変更する。流体は、導入ヘッダーから支持体チューブに入り、チューブの長さに沿った(好ましくは直径が漸増する)一連の穴28を介してチャンバー空間に曝露される。この態様は、培地の分配を改善し、チャンバー導入口16からチャンバー導出口20への、接種物、栄養分および酸素の勾配を低減する潜在的能力を有する。
【0035】
一部の治療的適用に関しては、109〜1011個の細胞を生成することができるバイオリアクターが望ましい。足場依存性株についての推定細胞増殖密度に基づくと、これは、単一バイオリアクター内に非常に大きな表面積またはマトリックス容量が含まれねばならないことを意味する。これを達成するための1つの方法は、中心コア30の周囲にマトリックス8をらせん状に巻き付けることであり、これはタンジェンシャルフローろ過(tangential flow filtration:TFF)カートリッジ設計において使用される概念に類似する。この技術を、大きな総容量の細胞基質マトリックス8を含有するバイオリアクターデザインに適合させることができる。培地の流れを、細胞基質マトリックス8の両側の別個の区画を通るように方向づけることができる。このアプローチは、多孔性支持体メッシュ34の各側上に密封マトリックス8を有するエンベロープをらせん状に巻き付けることを含む。エンベロープは、各々の末端32、38に「内側エンベロープチャンバー」の流入口および流出口として働く流体ヘッダーを有するように構成される。エンベロープを、「外側エンベロープチャンバー」を形成するために付加的な支持体メッシュに沿ってらせん状に巻きつけることができる。この組立物を、各々の末端に開口部(導入および導出)を有する筐体(本体6)内に位置づける。軸流は外側エンベロープチャンバーに沿って流れる。半径流を可能にするために付加的な筐体開口部を内側エンベロープの各末端に取り付ける。この態様の概略図を図6A〜6Dに示す。このらせん状態様は、同種異系細胞または他の特殊な足場依存性細胞についての大規模な適用に特に適する。
【0036】
Biovest International,Inc.は、ホローファイバー灌流バイオリアクターの領域で20年以上の経験を有する。この会社は、最近、研究、バイオテクノロジーおよび医薬の適用のための自己完結型自動システムである、新世代の細胞培養機器AutovaxID(商標)を世に送り出した。AutovaxID(商標)システムは、機械的構造および電子機器回路を含むベースまたは制御モジュール、ならびにホローファイバー細胞増殖チャンバーとガス交換カートリッジとを含む単回使用要素である使い捨て培養容器モジュールを含む。培養容器ユニットは、ベースユニット筐体内に容易にはめ込まれる一体化された密封モジュールである。接種物である細胞がひとたびアクセス口を通してユニットに導入されると、ユニットは密封され、該細胞は、それらの特異的な要求に対して最適化された温度およびCO2調節環境において増殖し、成長する。栄養分とO2が送達され、老廃物は培地の自動灌流を通して除去される。別々のポンプが、増殖補助物質の導入と細胞馴化培地の収集を制御する。システムは、ほとんどまたは全くオペレーターが関与せずに数日間から数か月間にわたって持続的な細胞増殖と共に維持され得る。運転プロセス中のすべての操作パラメータが記録され、文書化およびバッチごとの再現性のための電子バッチ記録を作成する。複数のAutovaxIDの使用は、単一設備において最小限の環境管理で様々な生成物の同時培養を可能にする。
【0037】
AutovaxID(商標)培養容器モジュールは、ホローファイバー灌流バイオリアクターを組み込んだ滅菌済みユニットである。細胞は外側でまたは毛管外(EC)空間で増殖し、一方培地はホローファイバーの内腔または毛管内(IC)空間を通って灌流される。栄養分と酸素はEC空間内に拡散し、老廃物は除去のために外へと拡散する。ホローファイバー膜は10KDaのカットオフ値を有し、そのため血清成分、増殖因子および細胞分泌生成物などの大きな分子量の種はEC区画に閉じ込められる。細胞は、栄養分の効率的な灌流によってEC区画内で極めて高い密度を達成することができる。モノクローナル抗体などの分泌生成物は、下流での処理を助ける高濃度の比較的小さな容量で回収される。培養条件は高度に制御され、産生運転全体を通じて均一であり、生成物は、予め定められた間隔で自動的に回収され得る。
【0038】
AutovaxID(商標)システムは、幹細胞および他の細胞型の産生のために多くの重要な利点を提供する。使いやすく、自己完結型であり、卓上で機能することができ、インキュベーターや費用のかかる環境管理の必要性を排除する。細胞は、均一で制御された再現可能な培養条件下で高密度を達成することができる。自動制御は、過誤や汚染の危険性を最小限に抑える、より少ない操作を意味している。労力とインフラコストの両方で著しい倹約が実現される。AutovaxID(商標)機器の図面および機器の流路の概略図をそれぞれ図7Aおよび7Bに示す。
【0039】
本発明の1つまたは複数の灌流バイオリアクターは、それらの全体が各々参照により本明細書に組み入れられる、2007年5月21日出願の国際公開公報第2007/139742号(Wojciechowski et al.,; Method and System for the Production of Cells and Cell Products and Applications Thereof)、および2007年5月21日出願の国際公開公報第2007/139747号(Page; Interface of a Cultureware Module in a Cell Culture System and Installation Method Thereof)に記載されAutovaxID(商標)と称される自動細胞培養システムおよび方法に、組み込むことができる。一般に、AutovaxID(商標)は、哺乳動物細胞培養を自動化するプラットフォーム装置である。付加的なバイオリアクター構造を組み込むことにより、その技術を多くの特殊な細胞型または適用に生かすことができる。より重要な点として、通常は熟練した専門家を伴う複雑なプロトコールを、再現可能で効率的な大量生産のためのフィードバック制御による灌流培養に適合させることができる。多用途のプラットフォーム技術を作製することにより、AutovaxID(商標)システムは従来の細胞培養法に比べて有意な利点を示す。一般に、1つの設備において数百種の自己(個々の患者の)細胞株を同時に増殖させる能力は、皮膚移植および他の細胞療法のための商業的適用において重要な役割を果たす。
【0040】
任意の1種類または複数種類の所望の細胞型の増殖と回収を容易にする、膜ベースのバイオリアクターなどの灌流バイオリアクターが使用できる。これらの特殊な細胞型のためのプロセス管理スキームおよび関連するバイオリアクターは、プラットフォームAutovaxID(商標)システムに組み込むことができる。バイオリアクターは、例えば3Dマトリックス、平面シート、プリーツ状シート、またはらせん状に巻かれた構造であり得る。好ましくは、バイオリアクターは、細胞または組織(例えば皮膚細胞層)を回収するためにAutovaxID(商標)システムからアクセス可能であるかまたは容易に取り出される。本発明のシステムは、治療用細胞についての費用対効果の高い(専門家による時間が最小限である)産生を容易にするために、自動灌流法の利点を組み込む。この特殊な適用のためのプロセス管理スキームおよび関連するバイオリアクターは、プラットフォームAutovaxID(商標)システムに組み込むことができる。
【0041】
従って、本発明は、閉鎖型の自己充足型環境において細胞および細胞由来生成物を産生するための完全に統合されたシステムを提供する。より具体的には、本システムは、技術者の介入を最小限しか必要とせずに、細胞の増殖、および細胞とそれらの生成物の収集を可能にする。本明細書でさらに説明するように、該装置はバイオリアクター灌流技術を組み込み、すべてのチューブ類部品、収集チューブ類およびポンプカセットを通り抜けるチューブは、単回使用の使い捨てインキュベーター中に納められる。バイオリアクターに細胞を接種した後、システムは、予めプログラムされたプロセスに従って培地を送達し、pHを維持し、乳酸レベルを維持し、温度を制御し、細胞または細胞分泌タンパク質を収集する。様々な細胞型を増殖できるように、および細胞または細胞生成物が、人的過誤の可能性を最小限に抑えつつ効率よく再現可能に収集できるように、標準的なまたは特有の細胞培養増殖パラメータをプログラムすることができる。
【0042】
培地は1つまたは複数のバイオリアクターを通って灌流される。培地は、しばしば1種類または複数種類のタンパク質増殖因子を含む、塩、アミノ酸およびビタミンからなる明確に定義された混合物を含有する液体であり得る。これは、栄養分を細胞空間に送達する、および逆に代謝老廃物を除去するまたは代謝老廃物の毒性蓄積を防止するのに役立つ。この循環の間に、培地は、pH制御および細胞のための酸素を提供する、ならびに逆に培養物から二酸化炭素を除去するのに役立つ、酸素供給器またはガス交換カートリッジを通過する。バイオリアクターが、より少ない数の細胞を含む場合は、接種の直後に、酸素供給器またはガス交換カートリッジは、CO2を供給し、その後培養環境のpHを制御するために使用される。細胞数が増加すると共に、酸素供給器はCO2の除去のために使用され、これは酸の中和を増大させて、培養物のpHを制御するのに役立つ。
【0043】
多種多様な培地、塩、培地補助物質、および培地調製用の生成物が、1種類または複数種類の特定細胞型に依存して、細胞を産生するために利用できる。これらの物質の例は、担体タンパク質および輸送タンパク質(例えばアルブミン)、生物学的界面活性剤(例えばせん断力および機械的損傷から細胞を保護するため)、生物学的緩衝剤、増殖因子、ホルモン、加水分解産物、脂質(例えばコレステロール)、脂質担体、必須および非必須アミノ酸、ビタミン、血清(例えばウシ、ウマ、ヒト、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ウサギ、ヒツジ)、血清代替物、抗生物質、抗真菌薬、および接着因子を含むが、それらに限定されない。これらの物質は、同じく本発明に関して利用できる、様々な古典的および/または市販されている培地中にあってもよい。そのような培地の例は、エイムス培地(Ames’ Medium)、イーグル基礎培地(BME)、クリック培地、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、DMEM/栄養混合物F12ハム培地、フィッシャー培地、イーグル最小必須培地(MEM)、栄養混合物(ハム)、ウエイマウス培地、およびウィリアムE培地を含むが、それらに限定されない。
【0044】
本システムは、その使い捨て部品および閉鎖型の操作を通して、著しい効率とコスト削減を提供する。このように、細胞は閉鎖型システムに収められて、特殊な隔離されたクリーンルームを必要とせずに継続的に培養される。この完全に統合された装置は、洗浄と滅菌の検証の必要性、および従来の細胞培養設備に付随する困難な配管工事の必要性を排除する。
【0045】
本システムは、2つの個別の部分:再使用可能な計装ベース装置、および治療的適用のために特に有益な、単回生産運転のために使用され、使い捨てである内蔵培養容器モジュールを有する。多数のモジュールを単一装置で使用することができる。前記機器は、小型のパッケージ内での細胞培養増殖および産生を支持するハードウエアを提供する。ベース装置内に設置された簡易装填(easy-load)マルチチャネル蠕動ポンプ駆動装置およびポンプカセットは、新鮮な基礎培地を培養容器内に移動させ、使用済みの培地を除去し、増殖因子または他の補助物質を添加し、生成収集物を取り出す。組み込まれた冷蔵領域は、因子および収集物を低温(約4℃)に維持する。組み込まれた加熱機構は、増殖と産生を促進する細胞環境を維持する。ガス交換カートリッジは、培養容器のpHセンサーと共に、細胞培養培地のpHを制御する。2つの自動チューブ弁調節装置は、培養容器の流路構成を制御するために使用でき、正常に運転を開始し行うために必要な流体切り替え機能を達成する。該機器の弁およびセンサーは培養容器モジュール内の流体循環を制御する。流体循環のためのポンプ駆動装置が備えられている。付属のバーコードリーダーは、オペレーターを助け、ロットの追跡を容易にするために使用できる。通信ポートは、機器をデータ情報管理システム(MESなど)に結合する。タッチスクリーンを有する平面パネルディスプレイをユーザー介入のために組み込むことができる。
【0046】
1回使用の培養容器モジュールは滅菌済みで提供される。該培養容器モジュールは、機器へ迅速に装填されるように設計される(「迅速装填」)。培養容器本体の装填によって機器に接続される。チューブ類に物理的に結合したポンプカセットは、ユーザーがポンプ部分を迅速に装填することを可能にする。この設計と配置は装填エラーを最小限に抑える。培養容器筐体は、細胞流体温度を維持するために加熱される領域を提供する。流体循環ユニットは、流体の容量と循環を維持し、培養容器内に含まれる。流体循環速度、pHについてのセンサー、および機器の温度センサー用の熱ウエル(thermal well)が提供される。機器からの混合ガスは、細胞代謝を支持するために循環する流体に、酸素を供給して二酸化炭素を添加または除去するガス交換カートリッジに送られる。磁気的に結合したポンプ駆動装置は、流体をバイオリアクターおよびガス交換カートリッジを通して循環させる。細胞空間と培地成分の交換とを提供する、少なくとも1つのバイオリアクターも培養容器内にある。生成物回収のための使い捨て容器も提供される。培養を開始する前に、オペレーターは、培地供給源、因子バッグおよび使用済み培地の容器を運転前の培養容器に取り付ける。運転の最後に、収集物容器を取り出すかまたは空にして、培地および使用済み培地容器の接続を解き、ポンプカセットを取り外して、収集物バッグの接続を解き、培養容器本体を取り外して、使用済み培養容器を廃棄用のバイオハザード容器に入れる。
【0047】
細胞培養およびその後のプロセスの追跡には、各々の培養物についてのバッチ記録の作成が必要である。歴史的にこれは、オペレーターが情報を記入することに基づく紙ベースのシステムで行われる。これは多大の労力を要し、過誤を生じやすい。前記の完全に統合された装置は、情報管理システム(MES)と共に使用された場合、バッチ記録の自動作成を可能にするバーコードリーダーおよびデータ収集ソフトウエアを組み込むことができる。
【0048】
本発明のシステムは、調節された細胞培養環境において適用できる。自己全細胞療法または患者特異的タンパク質(ワクチン)療法は、本質的に、単一設備における多数の細胞株の同時培養を必要とするであろう。この閉鎖型の培養アプローチを介してなされる隔離に加えて、前記機械は、標準的な情報管理システム(LIMSまたはMESなど)プロトコールを支持するように設計される。この能力は、各々の生成物の標準化、追跡および安全性を保証する完全なバッチ記録の作成および培養条件の検証に寄与する。この能力は、自己生成物または患者特異的生成物に関わる設備にとって極めて重要な多品種生産(multi-product)の概念を推進する。
【0049】
使い捨て細胞培養モジュールは、装置に着脱可能に取り付けられる。モジュールは装置の制御計装に対する多数の機械的および電気的インターフェースを必要とする。モジュールは、単一動作による設置を可能にする装置内の機器インターフェース装備と結合する、モジュール内に組み込まれたインターフェース装備を有する。モジュールは使用後廃棄されるので、多数のモジュールが単一ベース装置と共に使用できることが認識されるべきである。
【0050】
装置のインターフェース装備は、循環ポンプ駆動装置、アクチュエーター弁および循環センサーを含む。加えて、温度プローブおよびフローセンサーがモジュールの構成要素と接続している。装置はまた、モジュール内に配置されたpHプローブのための電気的接続を含む。
【0051】
ガスポートはガス交換器と連通している。1つのポートは交換器への流入口と連通し、他方のポートは交換器の流出口と連通する。ガスポートは循環装置への圧力を制御する。
【0052】
上述したように、モジュールは細胞流体温度を維持するために加熱される。加熱機構は、増殖と産生を促進する細胞環境を維持する。高温を必要とする細胞培養物の使い捨てモジュールは、空気口の位置が整合し、ある位置では温められた空気が機器からモジュールへと送り込まれ、別の位置では漏出できるように、モジュールを完全に密閉し、制御機器にモジュールを取り付けることによって温められる。機器装置は、加熱された空気の導出口および戻ってきた加熱空気の導入口を有する。
【0053】
図7Bの従来のAutovaxIDシステムの工程図を参照すると、ポンプは、新鮮な基礎培地を培地ラインで培養容器内へと移動させる。培地ラインは、使い捨て容器にポンプで注入される増殖のための栄養分を細胞培養物に供給するために、ユーザーが提供する新鮮な培地の容器に接続される。流出ラインは、使い捨て容器からポンプで排出される老廃物または使用済み培地を回収するためにユーザーが提供する容器に接続される。因子ラインは、使い捨て容器にポンプで注入される増殖因子についてのユーザーが提供する容器に接続される。指示される場合はEC接種物およびIC試料を添加することができる。生成収集物は指示されるように取り出される。細胞は指示されるように収集される。収集ラインは、使い捨て容器からポンプで排出される生成物を回収するために使用される使い捨て容器の一部である、予め取り付けられた容器である。ポンプは多数のラインを有する。ポンプは、共通の固定軸シャフトと個別のサーボ駆動ローターとを有するので、各々の流れの制御は独立していることができ、1つのチャネルまたは流れを増加させ、一方では別のチャネルまたは流れを低下させることが可能である。
【0054】
AutovaxID(商標)機器は、自動モードまたは手動オーバーライド状態のいずれかでポンプ、ガス交換およびセンサーを制御するように設計されている。これらのモードはオペレーターによって選択可能である。手動制御は、システムの操作と柔軟性を最大化する選択された変数での実験を可能にする。培養容器モジュールは、接種および再循環のために必要な予測される低流量を可能にする有意の変更を有する。0.1mL/分の範囲のシステムの流量がバイオリアクターの作業に関して予測される。2つの流路:再循環/接種ループおよび酸素添加ループが培養容器に組み込まれる。両方の回路は、図3に示すように同じリザーバーから供給される。
【0055】
酸素添加回路は、リザーバーから培地を取り出し、それをガス交換カートリッジ(GEX)にポンプで通し、リザーバーに戻す、遠心ポンプ(例えば最大500mL/分)から成る。該回路はまた、培地の流量(容量)およびpHをモニターするセンサーを内蔵する。AutovaxID制御システムは、測定されたpHの読み取りを使用してGEXに送達されるガス混合物を調整し、それによって培地に酸素添加して、ユーザーが規定した設定点を維持するようにpHを調整する。これは、GEX膜を通って拡散し、重炭酸塩緩衝培地と平衡化する空気/CO2のガス混合物を提供することによって達成される。GEXはまた、望ましくない培地老廃物のガス(例えばアンモニア、過剰のCO2)を除去するように働く。リザーバーには、栄養分を補充し、流出/老廃物除去ポンプによって継続的に減少するリザーバー容量を維持する(培地供給量プラス20%)ために継続的に新鮮培地が供給される。目標とする結果は、リザーバー内の、制御されたレベルで酸素添加され、pH調整された培地である。
【0056】
再循環回路は、酸素添加され、pH制御された培地をリザーバーから送り出し、バイオリアクターを通って、リザーバーへと戻す蠕動ポンプ(0〜400mL/時または0〜6.67mL/分)を使用する。もう1つの蠕動ポンプ(0〜400mL/時)が、この回路に接続された付加的な供給ライン(増殖補助物質または因子添加)を駆動する。この供給ラインは、増殖因子および他の培地成分などの補助物質をメインの基本培地回路に導入することを可能にする。
【0057】
酸素添加および再循環回路は、温度インキュベーターとしての役割も果たす透明なポリカーボネート外殻内に密閉される。AutovaxIDは、培地およびバイオリアクターの温度を調節するために、制御された温度の空気を密閉体に送り込む。培養容器は組み立て済みであり、酸化エチレンで滅菌される。培地、因子および老廃物容器は、オペレーターによって無菌的に接続される。
【0058】
本発明のバイオリアクターは、AutovaxID流路に従来内蔵されるホローファイバーバイオリアクターに取って代わるものである。簡単に述べると、各々の流路は、単一AutovaxID制御ユニットのプロセス管理下で、1つまたは複数のバイオリアクターを含み得る。これらのバイオリアクターは、好ましくは互いに並行して位置づけられ、共通の培地供給装置を共有する。低流量では、培地が3つのバイオリアクター全部に均一に分布しない可能性がある。これは、培地組成(浸透圧またはタンパク質濃度)を変化させること、および技術開発のための運転において、各バイオリアクターからの流出をモニターすることによって評価される。流れがすべてのバイオリアクターに均一でない場合は、多種多様な培地流のための付加的な努力が技術グループによって実施される。培地を3つのバイオリアクター全部に同時に送達することができない場合は、2つのバイオリアクターを取り除き、1つのバイオリアクターだけでその後の流路を組み立てる。
【0059】
ハイブリドーマ株の増殖のための現在のAutovaxID操作条件下では、細胞はホローファイバーを取り囲む空間に維持され、一方培地はファイバーの内腔を通って継続的に灌流される。栄養分送達および代謝老廃物除去を高めるために、ファイバー膜の細胞側と非細胞側をまたがる圧力差を作り出す。次に、老廃物を除去し、密に充填された細胞集団全体に栄養分を均一に分配させるためにこの圧力差を15分ごとに逆転させる。この重要な機能は、細胞播種プロセスを強化するための3D細胞増殖マトリックスを有する第I相プロトタイプバイオリアクターに適合させ得る。圧力差を作り出すことにより、細胞はPETマトリックスに、より効率的に浸透し、より均一に分布し得る。先の試験は、動的播種法を用いることにより3Dマトリックスにおける細胞播種効率および分配について有意な改善を示した。加えて、細胞収集溶液を3Dマトリックスに浸透するように導く機能は、自動手順を用いた細胞回収の効率を大きく高め得る。細胞播種および収集の間にかかるせん断力は低く(<<1dyn/cm2)、作業期間は短い(<1時間)ことに留意されたい。実際に、3Dマトリックスに組み込まれた細胞への低流量での細胞解離緩衝液の動的適用は、酵素溶液への細胞の曝露を低減し、細胞損傷を限定すると期待される。
【0060】
本発明を用いて増殖される細胞は、全能性または多能性幹細胞(例えば成体または胚)、前駆細胞(precursor or progenitor cell)から、中枢神経系の細胞(例えばニューロンおよびグリア)のような高度に分化した細胞まで、適応性に幅がある。一部の態様では、細胞は、骨髄細胞、造血幹細胞もしくは造血前駆細胞、間葉幹細胞、または他の幹細胞もしくは前駆細胞である。細胞は、濃縮された(例えば精製もしくは単離された)形態または濃縮されていない形態で対象に投与され得る。幹細胞および前駆細胞は、様々な供給源例えば胚組織、胎児組織、成体組織、臍帯血、末梢血、骨髄、および脳から入手できる。
【0061】
一部の態様では、細胞はヒト細胞である。しかし、本発明が獣医学の目的にも適用できることは当業者に理解される。非ヒト動物の細胞は、ヒトまたは動物対象(移植レシピエント)のいずれかに適用できる。例えば、ヒト、ブタおよびラット由来のドーパミンニューロンは、それらがドーパミンを合成して、シナプスから脳内に放出するという点で類似するが、脳の神経再支配の程度、寿命、および特定ドナーまたはドナー種に関連する感染因子において免疫学的に異なる。これらの特性は、それらの特異的な強みおよび弱みについて利用できる。
【0062】
当業者に理解されるように、人体には200以上の細胞型が存在する。本発明のバイオリアクター、システムおよび方法は、これらの細胞型の任意のものを増殖させるために使用できる。例えば、細胞は、外胚葉、中胚葉または内胚葉生殖細胞層から生じる細胞を含み得る。そのような細胞は、骨髄細胞、ニューロン、グリア細胞(神経膠星状細胞および乏突起神経膠細胞)、筋細胞(例えば心臓、骨格)、軟骨細胞、線維芽細胞、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、上皮細胞、色素細胞(例えばメラノサイト、網膜色素上皮(RPE)細胞、虹彩色素上皮(IPE)細胞)、肝細胞、微小血管細胞、周皮細胞(ルージェ細胞)、血球(例えば赤血球)、免疫系の細胞(例えばBおよびTリンパ球、形質細胞、マクロファージ/単球、樹状細胞、好中球、好酸球、マスト細胞)、甲状腺細胞、副甲状腺細胞、下垂体細胞、膵細胞(例えばインスリン産生β細胞、グルカゴン産生α細胞、ソマトスタチン産生δ細胞、膵ポリペプチド産生細胞、膵管細胞)、間質細胞、脂肪細胞、細網細胞、杆状体細胞、ならびに有毛細胞を含むが、それらに限定されない。増殖できる細胞型の他の例は、Spier R. E. et al., eds., (2000) The Encyclopedia of Cell Technology, John Wiley & Sons, Inc., and Alberts B. et al., eds., (1994) Molecular Biology of the Cell, 3rd ed., Garland Publishing, Inc., e.g., pages 1188-1189によって開示されているものを含む。
【0063】
様々な細胞株がまた、様々な目的のために使用されており、本発明のバイオリアクター、システムおよび方法を用いて増殖させることができる。胎児腎細胞および羊膜細胞は、栄養因子の供給源として移植されてきた。副腎髄質細胞、交感神経節細胞、および頸動脈小体細胞は、ドーパミンの供給源として移植されてきた。線維芽細胞およびグリア細胞は、例えば組換え法を介して遺伝子を運ぶためまたは脱髄疾患のための、栄養因子の供給源として移植されてきた。角膜内皮細胞は角膜移植のために使用されてきた。筋芽細胞は、筋ジストロフィーおよび心疾患の治療のために移植されてきた。他の細胞株は、糖尿病のための膵島細胞;甲状腺疾患のための甲状腺細胞;AIDS、骨髄移植および遺伝性障害のための血球;変形性関節症、関節リウマチのためまたは骨折修復のための骨および軟骨;熱傷または美容整形手術後の皮膚移植などの、再建目的のための皮膚または脂肪細胞;脂肪による豊胸術;毛包置換;肝炎を誘発する肝障害のための肝細胞;ならびに色素性網膜炎およびパーキンソン病のための網膜色素上皮(RPE)細胞を含む。
【0064】
本発明の様々な局面において使用される細胞は、好ましくは哺乳動物細胞である。それらはヒトまたは動物起源であり得る。本発明のバイオリアクター、システムおよび方法を用いて増殖させることができる哺乳動物細胞の例は、マウスC127細胞、3T3細胞、COS細胞、ヒト骨肉腫細胞、MRC-5細胞、BHK細胞、VERO細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、HEK 293細胞、rHEK 293細胞、正常ヒト線維芽細胞、間質細胞、肝細胞、またはPER.C6細胞を含むが、それらに限定されない。本発明によるプロセスにおいて培養され得るハイブリドーマの例は、例えばDA4.4細胞、123A細胞、127A細胞、GAMMA細胞および67-9-B細胞を含む。
【0065】
幹細胞は、数多くの疾患のための治療的用途に対して極めて大きな潜在能力を有すると考えられる。幹細胞は、中でも特に、胚細胞、芽細胞、組織由来細胞、血球細胞および臍帯血細胞;器官由来前駆細胞;ならびに骨髄間質細胞を含むが、それらに限定されるわけではない、数多くのドナーソースに由来してきた。そのような幹細胞は、実質的に任意の細胞型を産生するように多くの経路で分化させることができる。これらの幹細胞は分化の前後のいずれかで移植され得る。造血幹細胞(HSC)は長年にわたって使用されており、典型的には造血癌(例えば白血病およびリンパ腫)、非造血性悪性腫瘍(他の器官における癌)の治療のために使用されてきた。他の適応には、再生不良性貧血、サラセミア鎌状赤血球貧血、および自己免疫疾患などの遺伝性または後天性骨髄機能不全を含む疾患が包含される。
【0066】
幹細胞を同定するためおよび分化した細胞型を特徴づけるために一般的に使用される方法およびマーカーは、科学論文に記載されている(例えば、Stem Cells: Scientific Progress and Future Research Directions, Appendix E1-E5, report prepared by the National Institutes of Health, June, 2001)。幹細胞を含むことが報告された成体組織のリストは増え続けており、骨髄、末梢血、臍帯血、脳、脊髄、歯髄、血管、骨格筋、皮膚および消化器系の上皮、角膜、網膜、肝臓、ならびに膵臓を含む。
【0067】
細胞および細胞由来生成物は、当技術分野において公知の方法を用いて収集できる。本発明のバイオリアクター、システムおよび方法を用いて産生される遺伝的に改変されたまたは遺伝的に改変されていない細胞によって産生される様々な生体分子は、薬物の製造および薬理学的試験などの様々な用途のために収集する(例えば生体分子を産生している細胞から単離する)ことができる。従って、本発明のバイオリアクター、システムおよび方法を用いて、細胞を、インビトロでまたは動物内にてインビボで、外因性DNAの生成物および/または細胞の天然生成物を提供する生物学的「工場」として使用できる。「生体分子」という用語は、細胞(細胞由来生成物)によって産生され得る1種類または複数種類の分子を指す。そのような生体分子は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、核酸、ヌクレオチド、ウイルス、および他の物質を含むが、それらに限定されない。生体分子のいくつかの具体的な例は、栄養因子、ホルモン、ならびに脳由来成長因子(BDNF)およびグリア由来神経栄養因子(GDNF)などの増殖因子を含む。例えば、成長ホルモンを産生するために下垂体細胞を増殖させ得る;プラスミノーゲン活性化因子を産生するために腎細胞を増殖させ得る;骨形成タンパク質(BMP)または骨癒合もしくは補綴手術に関わる他のタンパク質を産生するために骨細胞を増殖させ得る。A型肝炎抗原は肝細胞から産生できる。様々なウイルスワクチンおよび抗体を産生するために細胞を増殖させることができる。インターフェロン、インスリン、血管新生因子、フィブロネクチンおよび数多くの他の生体分子が、細胞を増殖させ、これらの生成物を収集することによって産生できる。生体分子は、例えば、細胞内、膜貫通であり得るか、または細胞によって分泌され得る。
【0068】
生体分子は、天然に分泌されるタンパク質、正常な細胞質タンパク質、正常な膜貫通タンパク質、またはヒトもしくはヒト化抗体などの、関心対象のポリペプチドであり得る。関心対象のタンパク質が天然の細胞質タンパク質または天然の膜貫通タンパク質である場合、該タンパク質は、可溶性および分泌性になるように、すなわち該タンパク質の前またはその(可溶性もしくは細胞外)フラグメントの前にシグナルペプチドを置くことによって好ましくは遺伝子操作されている。
【0069】
関心対象のポリペプチドは任意の起源であり得る。関心対象の好ましいポリペプチドはヒト起源であり、より好ましくは、関心対象のタンパク質は治療用タンパク質である。好ましくは、関心対象のタンパク質は、ホルモン、サイトカイン結合タンパク質、インターフェロン、可溶性受容体、または抗体から選択される。産生され得る治療用タンパク質は、例えば、絨毛性性腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、ルトロピン-絨毛性ゴナドトロピンホルモン、甲状腺刺激ホルモン、成長ホルモン、特にヒト成長ホルモン、インターフェロン(例えばインターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b)、インターフェロン受容体(例えばインターフェロンγ受容体)、TNF受容体p55およびp75、ならびにそれらの可溶型、TACI受容体およびそのFc融合タンパク質、インターロイキン(例えばインターロイキン2、インターロイキン11)、インターロイキン結合タンパク質(例えばインターロイキン18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経期性腺刺激ホルモン、インスリン様増殖因子(例えばソマトメジンC)、ケラチノサイト増殖因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形成タンパク質2、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エポエチン、組換えLFA-3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼ、およびそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能性誘導体、融合タンパク質を含む。一部の態様では、該ポリペプチドは、絨毛性性腺刺激ホルモン(CG)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ルトロピン-絨毛性ゴナドトロピンホルモン(LH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、ヒト成長ホルモン(hGH)、インターフェロン(例えばインターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b)、インターフェロン受容体(例えばインターフェロンγ受容体)、TNF受容体p55およびp75、インターロイキン(例えばインターロイキン2、インターロイキン11)、インターロイキン結合タンパク質(例えばインターロイキン18結合タンパク質)、抗CD11a抗体、およびそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能性誘導体、融合タンパク質からなる群より選択される。
【0070】
関心対象のさらなる好ましいポリペプチドは、例えば、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、下垂体ペプチドホルモン、閉経期性腺刺激ホルモン、インスリン様増殖因子(例えばソマトメジンC)、ケラチノサイト増殖因子、グリア細胞株由来神経栄養因子、トロンボモジュリン、塩基性線維芽細胞増殖因子、インスリン、第VIII因子、ソマトロピン、骨形成タンパク質2、血小板由来増殖因子、ヒルジン、エポエチン、組換えLFA-3/IgG1融合タンパク質、グルコセレブロシダーゼ、およびそれらの突然変異タンパク質、フラグメント、可溶性形態、機能性誘導体、融合タンパク質を含む。
【0071】
ウイルスおよびウイルスベクターは、本発明のバイオリアクター、システムおよび方法を用いて産生され得る別の種類の細胞由来生成物である。ウイルスおよびウイルスベクターは、関心対象のウイルスを増殖させるために利用される細胞型を使用して本発明によって産生することができる。ウイルスの産生のために有用な哺乳動物細胞の例は、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞、VERO細胞、または他の単層細胞型を含む。細胞を本発明のバイオリアクターにおいて増殖させ、十分な細胞数に達した後、細胞をウイルスまたはウイルスベクターに感染させ、それが培養物全体に広がり、その後、より大量のウイルスまたはベクターが収集される。収集されたウイルスおよびベクターは、例えばワクチン用におよび/または遺伝子導入ベクターとして使用できる。例えば、インフルエンザウイルスを増殖させ、収集したウイルスからインフルエンザ用のワクチンを産生することができる。ローラーボトルおよび卵ベースのワクチン産生プロセスは現在も比較的信頼できるが、効率的な細胞ベースの産生システムは、より迅速で、より安価で、より手間のかからないウイルス増殖の方法を提供するため有意な改善を提示するであろう。
【0072】
ウイルスワクチンを製造するプロセスは、本発明のバイオリアクター、システムまたは方法を用いてウイルスを複製し、ウイルスを収集するプロセスを含み、前記プロセスは、ろ過する工程、濃縮する工程、凍結する工程および安定剤の添加によって安定化する工程の中から選択される少なくとも1つの工程を含み得る。ウイルスの収集は当業者に周知の技術に従って実施できる。好ましい態様によれば、ウイルスを収集する工程は、遠心分離から得られた細胞培養上清を回収し、次にろ過し、濃縮し、凍結し、そして安定剤の添加によってウイルス製剤を安定化することを含む。例えばインフルエンザウイルスについては、Furminger, In Nicholson, Webster and Hay (Eds) Textbook of influenza, chapter 24 pp 324-332を参照のこと。
【0073】
本発明に従ってウイルスワクチンを製造するプロセスはまた、収集したウイルスを不活化する付加的な工程を含み得る。不活化は、ホルムアルデヒド、β-プロピオラクトン、エーテル、エーテルと界面活性剤(すなわちTween 80(商標)など)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)とTriton N102、デオキシコール酸ナトリウムとトリ(N-ブチル)ホスフェートでの処理によって実施できる。
【0074】
本発明のバイオリアクター、システムおよび方法はまた、それによって産生されたウイルスからウイルス抗原タンパク質を調製するためにも使用し得る。その方法は、a)任意で、バイオリアクターから収集したウイルス全体を含有する細胞培養上清をデオキシリボ核酸制限酵素、好ましくはデオキシリボヌクレアーゼおよびヌクレアーゼ(好ましくは、DNA消化酵素はベンゾナーゼ(ベンゾンヌクレアーゼ)またはデオキシリボヌクレアーゼIである)と共にインキュベートする工程;b)陽イオン界面活性剤(陽イオン界面活性剤の例は、限定されることなく、CTABなどのセチルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、DOTMAおよびTween(商標)である)の添加;c)抗原タンパク質の単離の、付加的な工程をさらに含む。この後者の工程は、遠心分離または限外ろ過によって実施し得る。
【0075】
ワクチン中のウイルスは、完全なウイルス粒子としてまたは分解したウイルス粒子として存在し得る。1つの態様によれば、ワクチンは死滅ワクチンまたは不活化ワクチンである。別の態様によれば、ワクチンは弱毒化生ワクチンである。3つ目の態様によれば、ワクチンは、本発明の方法に従って調製されたウイルスから得られるウイルス抗原タンパク質を含有する。
【0076】
ワクチンは、免疫応答を高める薬学的に許容される物質と組み合わせて、ウイルスを含有し得る。免疫応答を高める物質の非限定的な例は、不完全フロイントアジュバント、サポニン、水酸化アルミニウム塩、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、カルメット-ゲラン杆菌(BGC)およびコリネバクテリウム・パルブム(corynebacterium parvum)を含む。加えて、免疫刺激タンパク質(例えばインターロイキンIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子)を、ワクチン免疫応答を増強するために使用し得る。
【0077】
ワクチンは、任意で鼻腔内投与経路に適合された、好ましくは液体製剤、凍結調剤、脱水凍結調剤である。
【0078】
ワクチンは、ウイルスに感染したもしくは感染の危険性があるヒトの予防的および/もしくは治療的処置のため、または癌などの他の疾患の治療もしくは予防のために使用し得る。ウイルスワクチンは組換えウイルスワクチンであり得る。
【0079】
本発明のバイオリアクター、システムおよび方法が使用できる適用のいくつかの例には以下が含まれる。
・ハイブリドーマ細胞株(例えばK6H6/B5また1D12ハイブリドーマ細胞株)からのモノクローナル抗体の産生。
・治療的適用のための免疫細胞を含む患者由来の自己血液細胞の増殖。
・治療目的のために後に患者に再注入するための患者由来体細胞の増殖。患者における治療的適用のために既に利用可能である具体例は、患者特異的な軟骨細胞(cartilage cell, chondrocyte)の収集および増殖と、それに続く、損傷した関節軟骨を含む領域にそれらの細胞を戻す再注入である。
・胚幹細胞、成体幹細胞、造血幹細胞もしくは前駆細胞、臍帯血または他の供給源由来の多能性(multi-or pluripotent)細胞を含む、患者由来または一般的な(generic)多能性細胞の治療目的のための増殖。
・前記細胞適用における、および細胞が、細胞成分を発現するようにまたは受容体、変化した増殖特性もしくは遺伝的特徴などの他の有益な特性をそれらに付与するように遺伝的に改変されている、体細胞または生殖細胞の増殖と、それに続く治療効果のための患者への細胞の導入。一例は、増殖因子、凝固因子、またはそのような因子の遺伝性もしくは後天性欠損を矯正する他の生物活性物質を発現するように遺伝的に改変された患者特異的な線維芽細胞の増殖である。
・例えばワクチンの産生のための、ウイルス(インフルエンザなど)およびウイルスベクターの産生。
・増殖因子などの他の細胞由来生成物の産生。
【0080】
本明細書は、参照により本明細書に組み入れられる、本明細書の中で引用される参考文献の教示を考慮して最もよく理解される。本明細書の中の態様は、本出願における態様の例示を提供するものであり、その範囲を限定するようには解釈されない。当業者は、多くの他の態様がこの開示に包含されることを容易に認識する。引用されるすべての出版物および特許ならびに本開示の中でアクセッション番号またはデータベース参照番号によって特定される配列は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。参照によって組み入れられる資料が本明細書と相反するまたは矛盾する場合は、本明細書がいかなるそのような資料にも優先する。本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本明細書の先行技術であることの承認ではない。
【0081】
特に指定されない限り、特許請求の範囲を含む本明細書で使用される成分、細胞培養物、処理条件等の量を表すすべての数は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されたい。従って、特に逆の指定が為されない限り、数的パラメータは近似値であり、本発明によって入手しようとする所望特性に依存して変動し得る。特に指定されない限り、一連の要素に先行する「少なくとも」という用語は、その一連のものの中のあらゆる要素を指すと理解されたい。当業者は、ルーチンの実験だけを使用して、本明細書で述べる本発明の特定態様の多くの等価物を認識する、または確認することができる。そのような等価物は添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0082】
本明細書で述べる例および態様は例示だけを目的とし、それを考慮して様々な修正または変更が当業者に対して示唆され、本出願の精神および範囲ならびに付属の特許請求の範囲に包含されることが理解されたい。加えて、本明細書で開示される任意の発明またはその態様の任意の要素または限定は、任意のおよび/もしくはすべての他の要素もしくは限定(個別にもしくは任意の組合せで)または本明細書で開示される任意の他の発明もしくはその態様と組み合わせることができ、すべてのそのような組合せは、それに限定されることなく本発明の範囲で企図される。
【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図2A】

【図2B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入口と導出口を有する筐体、および平面状であるか、プリーツ状であるか、または中心コアの周囲にらせん状に巻かれている細胞増殖マトリックスを含む、灌流バイオリアクター。
【請求項2】
筐体が内表面を有する第一部分と内表面を有する第二部分とを含み、第一部分が、流体密封の様式で、かつ該部分および第二部分の内表面が細胞増殖マトリックスによって占有される空間を画定するように、第二部分と係合し、該マトリックスが第一側面と第二側面を有し、第一マトリックス側面と第一部分の内表面が第一チャンバーを画定し、かつ第二マトリックス側面と第二部分の内表面が第二チャンバーを画定する、請求項1記載の灌流バイオリアクター。
【請求項3】
第一部分が、第一チャンバーと流体連通している導入口と導出口を有し、かつ第二部分が、第二チャンバーと流体連通している導入口と導出口を有する、請求項2記載の灌流バイオリアクター。
【請求項4】
マトリックスがプリーツ状であり、かつ第一部分の内表面もしくは第二部分の内表面または両方が、マトリックスのプリーツを支持するための支持体をさらに含む、請求項2または3記載の灌流バイオリアクター。
【請求項5】
第一部分の内表面および第二部分の内表面がヘッダーをさらに含み、第一部分の内表面のヘッダーが第二部分の内表面のヘッダーと係合し、かつ各々のヘッダーが、該ヘッダーを通る培地の流れのための穴を有する、請求項4記載の灌流バイオリアクター。
【請求項6】
各々の支持体がマトリックスの各々のプリーツに適合する、請求項4または5記載の灌流バイオリアクター。
【請求項7】
各々の支持体が該支持体を通る培地の流れのための穴を有する、請求項4〜6のいずれか一項記載の灌流バイオリアクター。
【請求項8】
バイオリアクターが中心コアを含み、かつマトリックスが該中心コアの周囲に巻かれている、請求項1記載の灌流バイオリアクター。
【請求項9】
マトリックスが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、コラーゲンおよびキトサンからなる群より選択される材料を含む、上記請求項のいずれか一項記載の灌流バイオリアクター。
【請求項10】
マトリックスがPETを含む、上記請求項のいずれか一項記載の灌流バイオリアクター。
【請求項11】
細胞培養増殖を支持するためのハードウエアを組み込んだ再使用可能な計装ベース装置、および
請求項1〜10のいずれか一項記載の少なくとも1つの灌流バイオリアクターを含む、該計装ベース装置に着脱可能に取り付けられる少なくとも1つの使い捨て細胞培養容器(cell cultureware)モジュール
を含む、細胞および/または細胞由来生成物の産生のための細胞培養システム。
【請求項12】
計装装置が、細胞培養培地を少なくとも1つの培養容器モジュールを通して循環させるためのポンプを含む、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項13】
ポンプが、増殖因子または他の補助物質を細胞増殖チャンバー内へと移動させ、かつ灌流バイオリアクターから生成収集物を取り出す、請求項12記載の細胞培養システム。
【請求項14】
計装装置が、少なくとも1つの培養容器モジュールを通る培地流を制御するための複数の回転式選択弁を含む、請求項12記載の細胞培養システム。
【請求項15】
計装装置が、増殖因子または他の補助物質および生成収集物を貯蔵するための冷蔵領域を含む、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項16】
計装装置が、増殖および産生を促進するために細胞増殖チャンバーを加熱するための加熱機構を含む、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項17】
少なくとも1つの培養容器モジュールが導入口と導出口を含み、該導入口と導出口が、熱交換機構が熱せられた空気を前記機器装置から少なくとも1つの培養容器モジュール内へと送り込むように、機器装置の空気口と整合するように構築されて配置される、請求項16記載の細胞培養システム。
【請求項18】
付属チューブ類を有するポンプカセットをさらに含む細胞培養システムであって、該ポンプカセットとチューブ類がマルチチャネルポンプに挿入可能である、請求項12記載の細胞培養システム。
【請求項19】
少なくとも1つの培養容器モジュールが、細胞増殖チャンバーと連通しているガス混合機構を含む、請求項12記載の細胞培養システム。
【請求項20】
細胞培養培地のpHを制御するために少なくとも1つの培養容器モジュール内に配置されたpHセンサーをさらに含む、請求項19記載の細胞培養システム。
【請求項21】
ガス混合機構が、細胞代謝を支持するために培地に酸素を供給して二酸化炭素を添加または除去するガス交換カートリッジを含む、請求項20記載の細胞培養システム。
【請求項22】
ガス交換カートリッジが導入端と排出端を有する、請求項21記載の細胞培養システム。
【請求項23】
細胞培養培地の二酸化炭素レベルを測定するために、ガス交換カートリッジの排出端と流体連通している二酸化炭素センサーをさらに含む、請求項22記載の細胞培養システム。
【請求項24】
少なくとも1つの培養容器モジュールが滅菌済みである、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項25】
少なくとも1つの培養容器モジュールが、計装装置中の機器インターフェース装備と結合する、該モジュール内に組み込まれた複数のインターフェース装備を含む、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項26】
少なくとも1つの培養容器モジュールが、細胞培養培地の流体循環速度、温度およびpHを感知するためのセンサーを含む、請求項12記載の細胞培養システム。
【請求項27】
バイオリアクターが細胞空間および培地成分交換を提供する、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項28】
バイオリアクターが、平面状の細胞増殖マトリックス、プリーツ状の細胞増殖マトリックス、中心コアの周囲にらせん状に巻かれた細胞増殖マトリックス、または前記の2つ以上の組み合わせを含む、請求項27記載の細胞培養システム。
【請求項29】
少なくとも1つの培養容器モジュールが、バイオリアクター内で流体容量を循環および維持するようにモジュール内に配置された流体循環ユニットを含む、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項30】
流体循環ユニットが、非剛性リザーバー、および第一リザーバー内に高圧を生じさせるために第一リザーバーと流体連通している第二可撓性リザーバーを含む、請求項29記載の細胞培養システム。
【請求項31】
少なくとも1つの培養容器モジュールに着脱可能に接続された、収集物回収とフラッシングのための複数の使い捨て容器をさらに含む、請求項11記載の細胞培養システム。
【請求項32】
請求項1〜10のいずれか一項記載の少なくとも1つの灌流バイオリアクターを含む、少なくとも1つの使い捨て培養容器モジュールを提供する工程、
細胞培養培地を前記バイオリアクターを通して循環させるためのマイクロプロセッサー制御装置およびポンプを含む、細胞培養増殖を支持するハードウエアを組み込んだ再使用可能な計装ベース装置を提供する工程、
前記少なくとも1つの培養容器モジュールを計装ベース装置に着脱可能に取り付ける工程、
細胞を前記バイオリアクターに導入する工程、
細胞培養培地の供給源を前記少なくとも1つの培養容器モジュールに液体が流れるように(fluidly)取り付ける工程、
マイクロプロセッサー制御装置に操作パラメータをプログラムする工程、
細胞または細胞由来生成物を前記バイオリアクター内で増殖させるために細胞培養培地を前記バイオリアクターを通して循環させるようにポンプを操作する工程、ならびに
任意で、
増殖した細胞または細胞由来生成物を前記バイオリアクターから収集すること、および
前記少なくとも1つの培養容器モジュールを廃棄すること
の一方または両方を実施する工程
を含む、細胞および/または細胞由来生成物の産生のための方法。
【請求項33】
少なくとも1つの培養容器モジュールがガス交換ユニットを含み、かつ方法が、細胞代謝を支持するために細胞培養培地に酸素を供給し、二酸化炭素を添加または除去する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの培養容器モジュールがその中に配置されたpHセンサーを含み、かつ方法が、細胞培養培地のpHを制御する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項35】
細胞培養培地の培地供給速度制御を調節する工程をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
細胞培養培地の供給速度制御を調節する工程が、細胞培養培地の乳酸濃度を算出するために細胞増殖チャンバー内の二酸化炭素レベルをモニターすることを含む、請求項35記載の方法。
【請求項37】
調節する工程が、細胞培養培地の初期重炭酸レベルを算出すること、ならびに乳酸濃度を算出するために細胞培養培地の測定されたpHおよび二酸化炭素レベルを利用することを含む、請求項36記載の方法。
【請求項38】
細胞増殖を促進するために少なくとも1つの培養容器モジュールを加熱する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項39】
高分子量因子をバイオリアクター内にポンプで注入する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項40】
計装ベース装置が冷蔵領域を含み、かつ方法が、高分子量因子および生成収集物を該冷蔵領域に貯蔵する工程をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
培養容器モジュールが識別バーコードを有し、かつ方法が、識別バーコード情報をマイクロプロセッサー制御装置に取り込む工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの培養容器モジュールを予め滅菌する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項43】
少なくとも1つの培養容器モジュールが、モジュールに組み込まれた複数のインターフェース装備を含み、かつ前記少なくとも1つの培養容器モジュールを計装ベース装置に取り付ける工程が、モジュールのインターフェース装備を計装ベース装置上のインターフェース装備と結合させることを含む、請求項32記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1つの培養容器モジュールが複数のセンサーを含み、かつ方法が、細胞培養培地の流体循環速度、温度およびpHを感知する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項45】
少なくとも1つの培養容器モジュールがその中に配置された流体循環ユニットを含み、かつ方法が、バイオリアクター内で細胞培養培地の流体を循環させ、混合する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項46】
少なくとも1つの培養容器モジュールを廃棄する工程の後に、別の使い捨て培養容器モジュールを取り付ける工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項47】
マイクロプロセッサー制御装置による細胞培養プロセスの連続的な実施の間オペレーターを誘導する工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項48】
請求項1〜10のいずれか一項記載の少なくとも1つの灌流バイオリアクターを提供する工程、
細胞を前記バイオリアクターに導入する工程、および
前記バイオリアクター内で細胞を培養する工程
を含む、細胞および/または細胞由来生成物の産生のための方法。
【請求項49】
細胞、細胞由来生成物またはその両方をバイオリアクターから収集する工程をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項50】
細胞由来生成物がウイルスまたはウイルスベクターである、請求項48または49記載の方法。
【請求項51】
ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項50記載の方法。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−506257(P2012−506257A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533338(P2011−533338)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/061700
【国際公開番号】WO2010/048417
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(511086984)バイオベスト インターナショナル インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】