細胞標本を制御可能に走査する方法およびシステム
スライドによって運ばれる細胞標本を走査するシステムにおいて、第1の走査線に沿った電動ステージの移動、例えば制御速度、位置、および/またはタイミングを使用者が制御するように、自動スクリーニングシステムの電動ステージの移動または配置が使用者によって手動で制御され、走査線に沿って標本の第1の部分を制御可能に走査できる。使用者は次いで、第1の走査線から次の走査線に電動ステージを割送りして、第2の走査線に沿ってステージの移動を手動制御し、標本の他の部分を制御可能に走査することができる。ステージの割送りはさらに、使用者が割送りを制御または開始しないように、自動でされるようにしてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動顕微鏡の制御に関し、より具体的には、自動顕微鏡を利用する細胞標本の制御可能な走査に関する。
【背景技術】
【0002】
医療産業では、例えば、細胞学者または他の使用者といった検査技師が、特定の細胞タイプが存在する細胞標本を観察する必要性がしばしばある。一般的な細胞学的手法は「パップスメア(Pap smear)」検査であり、異常細胞、子宮頸癌の始まりとなる前駆体の存在を検知するために、女性の子宮頸から細胞を掻爬し、その細胞を分析することを含む。細胞学的手法は、人間の身体の他の部位における異常細胞および病気を検知するためにも用いられる。
【0003】
得られた細胞試料はしばしば溶液の中に配置され、次いで回収され、拡大して見るためにガラススライドに移される。検査を容易にすると共に、長期保管を目的として標本を保護するために、通常は固定液および染色溶液がガラススライド上で細胞に投与され、しばしば細胞スメアと呼ばれる。準備が整った標本は、図1Aおよび図1Bに全体が図示される顕微鏡100のような顕微鏡を用いて検査され、この顕微鏡は(例えば、図2に示されるような)生物標本202を有する標本スライド200を支持する表面112付のステージ110を具える。
【0004】
使用者がステージ110を動かせるように、1以上の制御ノブが設けられている。図1Aおよび図1Bに示されるように、顕微鏡100は、一方向(例えば、x方向)にステージ110を移動させる第1のノブ121と、異なる方向(例えば、y方向)にステージ110を移動させる第1のノブ121と同軸上の第2のノブ122とを具える同軸制御ノブ120を具えてもよい。タングステン−ハロゲン光源のような光源130がステージ110より下に配置され、標本202を照光する。対物レンズ140は標本202の拡大画像を形成し、細胞学者は接眼レンズ150を通して拡大画像を観察することができる。焦点の調整は、同軸焦点ノブ161、162(例えば、粗調整用および微調整用)を具える焦点制御160を用いて行われ、ステージ110を垂直(例えば、z方向)に移動させることがきる。顕微鏡構成部品のさらなる態様は、米国特許出願公開第2007/0139638(A1)号に記載されている。
【0005】
マシンビジョン装置および自動システムはさらに、生物標本の画像を取得して分析するために用いられる。図3に示された、ある既知の自動システム300は、自動画像顕微鏡またはステーション310と、処理サーバ320と、自動観察ステーション330とを具える。
【0006】
画像ステーション310は、画像顕微鏡316を通して観察される標本202の画像を取得するカメラ312を具える。さらに図4を参照すると、電動ステージ314は、1以上のモータ402と、プロセッサ404およびメモリ406のような付属の電子部品とを具えるステージの制御構成部品またはモジュール400を具えるか、あるいは操作可能に連結され、モータ402とステージ314およびその上のスライド200の位置とを制御するのに用いられる。再び図3を参照すると、カメラ312が生成した画像データ318は、1以上のプロセッサ321乃至323(通常、プロセッサ321と称される)と、メモリ324とを具えるサーバ320に提供されて、画像データ318は処理され、観察ステーション330に提供される結果が記録される。
【0007】
いくつかの自動スクリーニングシステムでは、プロセッサ321は、各標本202内の正常および異常な(または疑わしい)生物材料の間を線引きする。つまり、プロセッサ321は、診断情報を用いてスライド200上の最適な生物対象とその位置(例えば、x−y座標)とを決定する。あるシステムでは、サーバ320は画像データ318を処理して、画像データ318内の「関心対象」(OOI)を認識する。OOIは標本202の各細胞および細胞クラスタを形成してもよい。1以上のOOIは規定された境界または関心視野(FOI)の視野領域内にまとめられ、これは様々な形状に規定され、異なる数のOOIを含むことができる。FOIは、(x、y)座標に基づいて認識される。ある既知の自動システムは、22のFOI、または22組の(x、y)座標を認識する。OOIおよびFOIのさらなる態様は、米国特許第7,083,106号および米国特許出願公開第2004/0254738(A1)号に記載されている。
【0008】
プロセッサ321は、例えば、何れの特定の細胞または対象に悪性腫瘍または前悪性腫瘍といった異常な状態を有する危険があるかの程度に基づいて、認識されたOOIを分類するように構成されてもよい。例えば、プロセッサ321は細胞核の総合的または平均の光学密度についてOOIを測定し、光学密度値によってOOIを分類してもよい。OOIおよびFOIの座標情報は、観察ステーション330を利用するその後の処理、観察または分析のために記録されうる。
【0009】
細胞学者が、観察顕微鏡336と電動ステージ334とを用いてスライド200を観察する時、OOI/FOIの位置情報が観察顕微鏡336に提供され、先に認識されたFOIを通して自動的に実行を進め、OOIを細胞学者に示す。ある自動システムでは、観察ステーション330はマウスのようなジョイスティックを具えており、スライド200を移動させるのに用いられる。例えば、あるシステムは、「次」および「前」ボタンを具えており、次のFOIおよび前のFOIに移動させるのに用いられる。
【0010】
標本の観察中、細胞学者が疑わしい細胞を認識しない場合、このスライドは正常だと考えられる。この場合、細胞領域202全体を走査する必要はない。しかしながら、細胞学者がFOI内に疑わしい細胞またはOOIを認識した場合、細胞学者は「マーク」ボタンを押すことによって、これらのOOIを電子的に記録することができ、スライドの観察が完了する前に標本または細胞領域202全体を走査しなければならない。
【0011】
図5は、つづら折りの走査パターンを利用して細胞領域202全体を走査する一方法を示す。図示された実施例では、第1の走査線またはコード500a(通常、「走査線500」と称する)の開始点502a(通常、開始点502と称する)から走査が始まり、第1の走査線500a上のある位置510(点で示す)における細胞領域202の第1の部分全体にわたって横切り(例えば、図示された例では左から右に移動する)、細胞領域202の境界204を超えて(細胞領域202の長さまたは幅全体を確実に走査するため)、第1の走査線500aの終点503a(通常、終点503と称する)まで移動する。自動システムは、520aを下方の第2または次の走査線500bに割送ることにより、走査線500bの開始点502bから終点503bまで(例えば、右から左へ)細胞領域202の第2の部分が走査され、終点503bの地点で520bを再度次の走査線500cの開始点502cに割送り、これが繰り返されて、細胞領域202を100%走査する。
【0012】
走査を目的として、既知の自動システムは、細胞学者によって走査かつ観察される細胞領域202を配置する電動ステージ334を具える。第1の走査モードでは、電動ステージ334およびスライド200は、スローな動画と似た方法で、(例えば、図5に示されるように)あらかじめ指定された走査線500に沿って連続的に移動する。第2の走査モードでは、電動ステージ334は、走査線500上の位置510にスライド200を移動させるために制御され、次の位置510に移動する前に予め指定された時間それぞれの位置520で中断し、再度中断し、再度移動し、各走査線500上の各位置510で繰り返す。第3の走査モードでは、ステージ334およびスライド200は走査線500上の固定位置510に移動し、使用者がボタン(例えば、観察を制御するのに用いられる「次」ボタン)を押すまでその位置510に留まり、走査線500上の次の位置510に移動する。
【0013】
自動の走査モードは効果的に利用されてきたが、多くの制限や制約があり、改善されうる。走査のパラメータに関する使用者の制御または入力は、例えあったとしても著しく、非常に制限される。例えば、上記の第1のモードでは、ステージおよびスライドは連続的に移動し、ステージおよびスライドが移動する速度のみジョイスティックを使って調整されうる。上記の第2の走査モードでは、使用者の希望または入力に拘わらず走査は進行し、第3の走査モードでは、使用者による制御が次の位置に進めるボタンを押すことに制限される。
【0014】
従って、既知の自動スクリーニングシステムの一部の走査モードでは、使用者は走査の停止または中断、走査方向を変更する時を選択することができない、および/または現行の走査経路上にない標本の異なる部分を観察するために走査位置を移動させることができない。さらに、ある既知のシステムでは、使用者は所望の時間、特定の位置で停止または中断することができない代わりに、十分な時間が経過すると次の位置に移動する。さらに、ある既知のシステムは、進行中に行うことができる制御調整を設けていない。加えて、既知の特定のシステムでは、走査が進むように、正確な順番かつ前述の方法で走査が進行する。このように、既知のシステムは一方向性であり、使用者は前に戻って、前に観た部分を観察することができない。従って、既知の自動走査システムは、制御と自由度とを制限する。
【0015】
これらの走査制御の制限事項は制約があって不便であり、標本の選択部分を観察するために、使用者は別個の従来の手動顕微鏡を利用する必要がある。
【発明の概要】
【0016】
一実施形態は細胞標本を走査する方法に関し、当該方法は、第1の走査線に沿って細胞標本を具えるスライドを支持する電動ステージの移動を手動制御して、第1の走査線に沿って細胞標本の第1の部位を制御可能に走査するステップと、第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを手動割送りするステップと、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して、第2の走査線に沿って細胞標本の第2の部分を制御可能に走査するステップとを具える。
【0017】
他の実施形態は細胞標本を走査する方法に関し、当該方法は、第1の走査線に沿って細胞標本を具えるスライドを支持する電動ステージの移動を手動制御して、第1の走査線に沿って細胞標本の第1の部分を制御可能に走査するステップと、第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを自動割送りするステップと、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して、第2の走査線に沿って細胞標本の第2の部分を制御可能に走査するステップとを具える。
【0018】
他の実施形態によると、細胞標本を走査するためのシステムは、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとを具える。電動ステージは細胞標本スライドを支持するように構成されており、プロセッサは電動ステージに操作可能に連結され、走査コントローラはプロセッサに操作可能に連結される。走査コントローラを制御することにより、第1の走査線に沿って電動ステージの移動を手動動御して第1の走査線に沿って細胞標本スライドの第1の部分を制御可能に走査し、第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを手動割送りし、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して第2の走査線に沿って細胞標本スライドの第2の部分を制御可能に走査するように、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとが構成される。
【0019】
さらに代替の実施形態は細胞標本を走査するためのシステムに関し、当該システムは、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとを具える。電動ステージは細胞標本スライドを支持するように構成されており、プロセッサは電動ステージに操作可能に連結され、走査コントローラはプロセッサに操作可能に連結される。走査コントローラを操作することにより、第1の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して第1の走査線に沿って細胞標本の第1の部分を制御可能に走査し、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して第2の走査線に沿って細胞標本の第2の部分を制御可能に走査するように、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとが構成されており、電動ステージが第1の走査線から第2の走査線へ自動的に割送られるように、プロセッサと走査コントローラとが更に構成されている。
【0020】
1以上の実施形態では、電動ステージが移動する方向を手動制御することにより、第1および第2の走査線それぞれに沿って電動ステージの移動が手動制御される。例えば、第1の走査線に沿って電動ステージの移動が第1の方向に手動制御され、他の走査線に沿って第2の、反対方向に手動制御されてもよい。1以上の実施形態では、電動ステージは非連続的に移動するように制御され、複数の走査線のうちの1走査線上の選択された位置において一時的に中断してもよい。さらに、電動ステージの移動速度は手動制御されてもよい。
【0021】
1以上の実施形態では、第1の走査線の終点から第2の走査線の開始点に電動ステージが手動割送りされる。例えば、1以上の実施形態では、同軸コントローラを操作することによりステージの移動を手動制御することができ、これは第1の回転制御要素と、第1の回転制御要素に同軸の第2の回転制御要素とを具えてもよい。第1の回転制御要素を回転させて第1および第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御することができ、第2の回転制御要素を回転させて他の走査線に電動ステージを手動割送りすることができる。この目的のため、回転制御要素の1つを操作また作業中、他の回転制御要素は使用不能としてもよい。同軸コントローラを利用して第1の走査線の終点から第2の走査線の開始点に電動ステージがさらに手動割送りされてもよい。
【0022】
第1の回転制御要素でステージの移動を手動制御中、第2の回転制御要素は使用不能としてもよい。電動ステージが第1の走査線の終点に手動で配置されるのを検出次第または検出後、前は使用不能であった第2の回転制御要素が使用可能になり、これにより第2の回転制御要素を回転させることにより電動ステージが第1の走査線から第2の走査線へ割送ることができ、この間第1の回転制御要素は使用不能としてもよい。電動ステージが次または第2の走査線に割送りされたことを検出した後、第2の回転制御要素は使用不能としてもよい。
【0023】
さらに、1以上の実施形態では、使用者または操作者によって観察制御が作動され、細胞標本の走査を一時停止して、後で利用するためにメモリに記憶することができる現在の位置から、他の位置へ電動ステージが手動で移動可能となることにより、操作者は標本の異なる部分をローミングできるようになり、観察制御を用いて関心対象といった細胞標本の選択部分を観察することができる。ローミングが完了した後、例えばプロセッサによって走査が再始動され、走査が一時停止したと記録された位置に電動ステージが再配置され、これにより走査線に沿って走査するためにステージの移動の手動制御が再開されてもよい。観察制御はさらに、電動ステージを他の走査線に手動割送りするために利用されるか、あるいは割送りは自動でもよい。
【0024】
自動割送りを含む1以上の実施形態では、第1の走査線の終点から第2の走査線の開始点に電動ステージが自動割送りされ、ステージの方向および速度は手動制御されうる。ステージはさらに、選択した位置で一時停止することができる。このように、電動ステージは非連続的に移動することができる。
【0025】
1以上の実施形態では、回転制御要素の1つが使用中は、プロセッサは、回転コントローラの他の回転制御要素が使用不能になるように構成される。例えば、プロセッサは、第1の走査線の終点に電動ステージが手動で配置されているのを検出し、第2の回転制御要素が第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを割送りするよう回転可能となるように、前は使用不能だった第2の回転制御要素が使用可能となるように構成されてもよい。
【0026】
1以上の実施形態では、観察コントローラはプロセッサに操作可能に連結され、走査コントローラは、電動ステージを手動で割送りするか、あるいは現在の電動ステージ位置における細胞標本の走査を一時停止するために押される少なくとも1のボタンを具える観察コントローラであり、他の電動ステージ位置における細胞標本の選択した部分を手動で観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面を参照し、対応部分には同じ符号を付している。
【図1A】図1Aは、既知の顕微鏡の正面図である。
【図1B】図1Bは、既知の顕微鏡の側面図である。
【図2】図2は、生物標本スライドの斜視図である。
【図3】図3は、既知の生物標本の画像および観察システムの概略図である。
【図4】図4は、電動ステージの構成部品の概略図である。
【図5】図5は、細胞領域を走査するための、既知のつづら折りのパターンを示す。
【図6】図6は、標本走査の手動制御を提供する一実施形態により構成されたシステムの概略図である。
【図7】図7は、一実施形態による、走査線に沿って標本の走査を手動制御し、走査線間を手動割送りする方法のフローチャートである。
【図8】図8は、標本の走査を手動制御するための同軸コントローラを具える一実施形態により構築されたシステムを示す。
【図9】図9は、走査のタイミングまたは走査の中断時および走査の再開時を使用者が選択する実施形態を示す。
【図10】図10は、走査速度を使用者が選択する実施形態を示す。
【図11】図11は、複数の方向において単一の走査線に沿った走査を使用者が選択する実施形態を示す。
【図12】図12は、走査の制御要素を選択的に使用可能および使用不能にすることにより、標本の走査を手動制御する方法のフローチャートを示す。
【図13】図13は、一実施形態による手動割送りを示す。
【図14】図14は、一実施形態による手動割送りおよび手動逆割送りを示す。
【図15】図15は、他の実施形態による、標本を走査およびローミングする方法のフローチャートを示す。
【図16】図16は、標本全体にわたるローミングの一例を示す。
【図17】図17は、さらに他の実施形態による、標本の走査を手動制御し、他の走査線に自動割送りする方法のフローチャートを示す。
【図18】図18は、走査の制御と割送りするための実施形態が実装されうるシステムおよび方法における顕微鏡システムを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
複数の実施形態は、より効果的に、使いやすく、便利かつ効率的な方法で使用者が自動スクリーニングシステムの細胞標本を制御可能に走査できると同時に、100%の細胞領域の適用範囲を達成可能にするための方法およびシステムに関する。
【0029】
図6を参照し、さらに図7を参照すると、一実施形態により構築された走査制御システム600は、走査の制御要素または要素610(通常、走査コントローラ610と称される)を具えており、これは例えば、図3に示されるような観察ステーション330の電動ステージといった自動スクリーニングシステムの電動ステージ334に接続または操作可能に連結される。走査コントローラ610は、適切な制御インターフェイス400、または例えば1以上のモータ402、プロセッサ404、メモリ406(図4に全体が示されるが、説明を簡単にするため図6には図示せず)といった他の適切な構成要素を経由して、電動ステージ334に接続されてもよい。図6は制御インターフェイス400の全体を示すが、モータ402、プロセッサ404、メモリ406および他の構成要素は、他のシステムの構成要素の一部とすることができ、制御インターフェイス400は説明を簡単にするため全体が示されていると理解するべきである。
【0030】
使用時、使用者は走査コントローラ610を操作して、ステージ334の移動と、走査進行中のスライド200およびその上の標本または細胞領域202の位置とを制御する。システム600および方法700の実施形態は、使用者がステップ705において第1の走査線500またはコード(通常、走査線500と称される)に沿って標本または細胞領域202の第1の部分の走査を手動制御し、ステップ710において現在の走査線500から他の走査線500、例えば次または近接する走査線500に電動ステージ334を手動制御または割送り520し、次いでステップ715において、電動ステージ334の移動の手動制御を続けて、第2の走査線500に沿って細胞領域202の第2の部分を制御可能に走査するように構成される。図7は、2つの走査線に沿った走査を含むステップを示すが、図7に示されるように、さらなる手動割送りおよび手動走査ステップが必要に応じて実施され、細胞領域202全体が観察されるまで細胞領域202のさらなる部分を制御可能に走査できる。走査線510に沿った細胞領域202の走査および割送り520を手動制御する機能は使用者による制御が殆どなく、使用者が走査線間の割送りを制御できない既知の自動走査システムと異なる。
【0031】
図8は、第1および第2の回転制御要素811、812を具える同軸回転コントローラを形成する走査コントローラ610を有する一実施形態により構築されたシステム800を図示しており、この回転制御要素は、図1Aおよび図1Bに図示されたステージ制御ホイールまたはノブ121、122および焦点制御ホイールまたはノブ161、162と同様または同一である。回転制御要素811、812の一方または両方を回転させて、電動ステージ334の移動と、標本スライド200の位置と、他の走査線500へのステージ334の割送り520とを制御することができる。
【0032】
例えば、図9を参照すると、一実施形態では、例えば外部または大型の回転制御要素811といった回転制御要素が使用者により回転させられて、使用者が指定および制御した速度で走査線500上の異なる走査位置510に沿って移動してもよい。図示された実施形態では、使用者は回転制御要素811を回転させて、位置510(1)から位置510(2)に移動させて、位置510(2)で中断し、次いで回転制御要素811を回転させて、位置510(2)から、例えば位置510(3)を通って、位置510(4)に移動させることができ、使用者は所望によりこの位置で再度中断することができる。使用者は、回転制御要素811を回転させ続けて、位置510(4)から、例えば位置510(5)を通って、位置510(6)に移動させて、使用者が選択したタイミングおよび速度で、これを繰り返すことができる。一実施形態では、回転時に回転制御要素811の回転速度にかかわらず一定速度で走査が実行されるように回転制御要素811が構成されてもよいが、回転は必要に応じて中断かつ再開することができ、使用者はその裁量において、走査を停止、開始、および再開することができる。
【0033】
図10を参照すると、代替の実施形態では、使用者はさらに、細胞領域202の異なる部分を走査する速度を制御することができる。一実施形態によると、回転制御要素811が回転する速度は、特定の走査線500に沿って細胞領域202を走査する速度に関連する。図示された実施形態では、回転制御要素811は第1の回転速度で回転して、第1の速度(1)で走査線500に沿って細胞領域202の第1の部分を走査することができ、次いで使用者は回転制御要素811をさらに速く回転させて、さらに速い第2の速度(2)で細胞領域202の第2の部分を走査することができる。回転制御要素811はさらに、より遅く回転して、遅い第2の回転速度で第2の部分を走査してもよい。
【0034】
他の実施形態では、実施形態のシステムおよび方法は、図9および図10に示された組み合わせを含む。従って、この実施形態では、使用者は必要に応じて走査を開始かつ停止させて(図9に示される)、異なる速度で走査線500上の異なる位置510を通って移動させてもよい(図10に示される)。
【0035】
図11を参照すると、他の実施形態では、使用者が回転制御要素811を制御可能に回転させることにより、多方向の走査を行うことができる。図示された実施形態では、使用者は、一方向(例えば、反時計回り)に回転制御要素811を回転させて第1の方向(1)に走査を進め、次いで別の方向(例えば、時計回り)に同じ制御要素811を回転させて走査方向(2)を逆行させることができる。異なる方向に回転制御要素811を回転させることにより、使用者は所望により走査方向を変更することができ、これにより走査は所望により前進(3、5)、および逆進(4)できる。この方法では、走査すべき特定の位置510と、いつ、どの方向に走査が進むべきかを、使用者が制御し選択する。これらの機能を用いて、実施形態では、使用者は前に観た標本の一部を操作可能に観察して、この部分と現在観察している部分とを比較することが都合良く可能になり、これは既知の自動スクリーニングシステムでは不可能である。この実施形態はまた、使用者が細胞領域202を走査する方向、位置および/または速度を制御できるように、図8乃至図10に示された1以上または総ての実施形態と組み合わされてもよい。
【0036】
図12および図13を参照すると、他の実施形態による、細胞領域202を走査する方法1200は、回転制御要素811、812の両方の操作を含み、走査線500に沿って走査を手動制御し、他の走査線500に手動割送り520をする。一実施形態では、ステップ1205において、例えば走査線500の開始点502に配置された時、第1の回転制御要素811のような1つの回転制御要素が作動あるいは使用可能になる。回転制御要素811は使用者によって回転させられて、(図6乃至図11を参照して上述されたように)電動ステージ334の移動と細胞領域202の走査とを手動制御する。他の回転制御要素812をこの目的のために用いてもよいが、説明を簡単にするため、第1の回転制御要素811について述べる。
【0037】
ステップ1210の間、本実施例では、他の回転制御要素は第2の回転制御要素812であり、停止または使用不能になる。従って、第1の回転要素811を利用し、走査線500の終点503に達しない間は、他の走査線500に割送るために第2の回転制御要素812を使用することはできない。従って、一実施形態では、回転制御要素811、812の一方のみが、所定の時間において作動または使用可能になる。この方法では、実施形態によって、特定の走査線500が完全に走査される前に不注意または早まって割送り520をすることがなくなり、各走査線500全体が確実に走査され、さらに適切な割送り520が行われるように、走査位置が走査線500の終点503に確実に保持される。
【0038】
ステップ1215において、第1の走査線500の走査が完了したか否かの判断がされる。もし完了していない場合、走査が第1の走査線500の終点503に進むまでステップ1205が繰り返される。さらに図13を参照すると、第1の走査線500が終点503(1)まで完全に走査された場合、ステップ1220において、前は停止していた第2の回転制御要素812または割送り要素が作動または使用可能になり、かつ第1の回転制御要素811は停止または使用不能になる。使用可能および使用不能な状態は、同時または異なる時に起こりうる(例えば、図12に示される)。説明を容易にするため、使用可能および使用不能な状態は、単一のステップ1220に示す。
【0039】
図13をさらに参照すると、ステップ1225において、第2の回転制御要素812が使用者によって回転させられて、第1の走査線500aの終点503aから第2または次の走査線500bの開始点502bに電動ステージ834を手動割送り520(2)する。
【0040】
ステップ1230において、第2の回転コントローラ812は停止して、第1の回転コントローラ811は再び作動または使用可能になる。上述のように、これは同時または異なる時に起こりうる。図13に示されるように、ステップ1235において、使用者によって第1の回転コントローラ811が回転させられて、次の走査線500b(3)に沿って走査を制御する。さらに走査線500がある場合、図12のステップが必要に応じて繰り返され、細胞領域202全体が観察されるまでさらなる走査線を制御可能に走査することができる。
【0041】
図12および図13は、前述の方法、あるいは前述の割送りで走査を進めるために、割送り520を実行する実施形態を図示する。図14を参照すると、他の実施形態では、使用者は、第2の回転制御要素812を制御して、後のまたは「次の」走査線500から前の走査線500に逆割送り1420をすることができる。これは、図12に示された特定のステップを逆の順序で行うことにより実行される。
【0042】
例えば、図14に示された実施形態では、図12に示された方法1200を利用して、様々な位置510(1)に沿って走査線500の終点503へ走査を進め、次の走査線500の開始点502に下方へ割送り520(2)、図12および図13を参照して上述したように、次いで様々な位置510(3)に沿って走査を進めることができる。しかしながらこの時点において、使用者は、細胞領域202の前に観た部分を観察して、例えば当該部分と現在の標本部分とを比較することを希望することがありうる。実施形態によって、第1の回転制御要素811を反対または逆方向(4)に回転させ、走査線500の開始点503に走査を配置し直して、第1の回転制御要素811を使用不能とし、かつ第2の回転制御要素812を使用可能とし、次いで第2の回転制御要素812を反対または逆方向に回転させて、前または上側の走査線500に「逆」割送り1420(5)してもよい。第2の回転制御要素812が次いで使用不能になると、第1の回転制御要素811は使用可能になり、反対または逆方向に回転して、所望の走査位置(6)に後退することができる。
【0043】
図15および図16を参照すると、標本の細胞領域202を走査する他の実施形態による方法1500は、使用者が細胞領域202の選択部分を自由にローミングまたは観察できるようにしつつ、走査が中断または一時停止した位置510に戻る時を制御する。図示された実施形態では、ステップ1505において、(例えば、上述のように)第1および/または第2の回転制御要素811、812が使用者によって操作されて、第1または現在の走査線500に沿って電動ステージ334の移動を手動制御する。ステップ1510において、使用者は観察制御を作動させて走査を中断することができ、かつ電動ステージ334の現在の位置510はステップ1515においてメモリに記録される。一実施形態によると、システムは、「次」ボタンを押すことによって観察制御の作動が実行されるように構成される。ステップ1520において、制限なく、かつ現在の位置510または現在の走査線500に束縛されることなく、使用者は自由に電動ステージ334を移動させて、細胞領域202全体にわたってローミングできる。
【0044】
例えば、図16は、走査線500(1)全体にわたる、走査線500の終点503に達する前の最初の走査を図示しており、この時、例えば「次」ボタンを押して、使用者は観察制御要素を作動させることができる。使用者はその後、第1および第2の回転制御要素811、812を操作し、例えばこの実施例では、現在の走査線500上にはない、選択した経路(2乃至6)に沿って、細胞領域202全体にわたって自由にローミングすることができる。
【0045】
図15を再び参照すると、使用者がローミングを完了した後、ステップ1525において、観察制御が(例えば、「次」ボタンを再度押すことにより)停止または使用不能になり、走査を再開できる。図示された実施例では、ローミングの終点における走査位置510は位置510(6)であり、現在の走査線500上にはない。ステップ1530において、ステージ343は、前に記録された位置510に自動的に移動して戻り、観察制御が作動する前と同じ位置510から走査を再開する。ステップ1535において、電動ステージ334は手動制御され、走査線500に沿って走査を完了し、次の走査線500に割送り520をして、次の走査線500を走査し、上述のようにこれを繰り返す。必要な場合は、所望に応じてローミングを再度実行することができる。図15および図16に示された実施形態はさらに、図9乃至図14を参照して記載された1以上の実施形態に利用されてもよい。
【0046】
上述の実施形態は、走査線500に沿った走査の手動制御と、他の走査線500への手動割送り520とを含む。図17を参照すると、他の実施形態は、(図6乃至図16を参照して記載されたような)手動の走査制御および自動割送り520(手動割送り520ではない)を含む、細胞領域202を走査する方法1700に関する。より具体的には、ステップ1705において、走査線500に沿った細胞領域202の走査は上述のように手動制御されており、ステップ1710において、第1の走査線500の走査が完了し、走査線500の終点503に達したか否かを判断する。一実施形態によると、ステップ1710は、ステージ334の位置をモニタリングするプロセッサ、センサまたは他の適切な構成部品により実行され、走査線500の終点503に達したか否かを判断してもよい。否の場合、走査が第1の走査線500の終点503に進むまでステップ1705および1710が繰り返される。ステップ1715において、走査線500の終点503に達すると、使用者の入力がなくとも、走査線500の終点から次の走査線500の開始点502に電動ステージ334が自動割送りされる。ステップ1720において、第1の回転制御要素811を再度回転させて、自動割送りの後に、次または第2の走査線500に沿った走査を制御してもよい。自動割送りおよび手動走査のステップは、細胞領域202全体が観察されるまで必要に応じて繰り返されてもよい。
【0047】
従って、図17に示された実施形態は、手動制御と自動制御との組み合わせを利用しており、ステージ334を次の走査線に手動割送りする必要なく、(例えば、以上の図6乃至16を参照して記載されたように)走査を手動制御する機能を使用者に提供する。
【0048】
特定の実施形態が図示および記載されたが、以上の記述は、これらの実施形態の範囲に限定することを意図しないと理解すべきである。様々な変更および改良が特許請求の範囲を超えることなく実施されうる。
【0049】
例えば、実施形態が、回転できるホイールまたはノブを具える同軸コントローラを参照して記載されたが、標本部分を制御可能に走査するのに用いられる制御要素は他の制御部品でもよく、あるいは他の構成を有していてもよい。他の実施形態では、走査コントローラは、標本の観察を制御するのに通常用いられる構成部品でもよい。一実施形態では、同軸コントローラを用いる代わりに、走査コントローラは「次」ボタンまたは他の適切な観察制御とすることができ、通常、一連のOOI中の次のOOIに進めるために利用される。この実施形態では、次ボタンは使用者に押されて、ある走査線から他の走査線へ手動割送りすることができる。従って、一実施形態では、手動制御は、例えば同軸制御要素またはその構成部品といった、ノブまたはホイール型のデバイスと、OOIを観察するのに通常利用される構成部品の両方を利用して実行されてもよい。
【0050】
さらに、実施形態は電動ステージおよび同軸制御要素の使用の実施例を参照して記載されたが、実施形態は、走査するのに用いられる様々な種類の観察システムおよびデバイスにおいて使用されてもよい。例えば、図18を参照すると、実施形態は様々な種類の画像および観察システムに実装することができ、一体型の画像/観察顕微鏡システム1800の一例は、標本の画像化を行い、使用者が標本の画像化の結果、認識されたOOIを観察できるように構成されている。図18に示されたシステム1800を用いて、コンピュータ1810、モニタまたはディスプレイ1820および付属の制御部品1830を同時に利用して、スライド200の別個の生物標本を画像化および観察するために同じ顕微鏡を使用することができる。
【0051】
さらに、実施形態は、標本の細胞領域の水平の走査を参照して記載されたが、実施形態は、垂直の走査または異なる角度における走査で利用されてもよい。
【0052】
さらに、実施形態は、同軸コントローラを用いる手動制御の走査を参照して記載されたが、他の実施形態は、他の種類のコントローラを利用してもよい。例えば、観察制御要素上のスクロールホイールといったスクロールホイールが、他の実施形態により用いられてもよい。
【0053】
実施形態は、上述の実施例と異なる様々な他の方法で実装されてもよい。従って、実施形態は、特許請求の範囲内に収まる代替例、改良例、および均等物を包含することを意図する。
【技術分野】
【0001】
本発明は自動顕微鏡の制御に関し、より具体的には、自動顕微鏡を利用する細胞標本の制御可能な走査に関する。
【背景技術】
【0002】
医療産業では、例えば、細胞学者または他の使用者といった検査技師が、特定の細胞タイプが存在する細胞標本を観察する必要性がしばしばある。一般的な細胞学的手法は「パップスメア(Pap smear)」検査であり、異常細胞、子宮頸癌の始まりとなる前駆体の存在を検知するために、女性の子宮頸から細胞を掻爬し、その細胞を分析することを含む。細胞学的手法は、人間の身体の他の部位における異常細胞および病気を検知するためにも用いられる。
【0003】
得られた細胞試料はしばしば溶液の中に配置され、次いで回収され、拡大して見るためにガラススライドに移される。検査を容易にすると共に、長期保管を目的として標本を保護するために、通常は固定液および染色溶液がガラススライド上で細胞に投与され、しばしば細胞スメアと呼ばれる。準備が整った標本は、図1Aおよび図1Bに全体が図示される顕微鏡100のような顕微鏡を用いて検査され、この顕微鏡は(例えば、図2に示されるような)生物標本202を有する標本スライド200を支持する表面112付のステージ110を具える。
【0004】
使用者がステージ110を動かせるように、1以上の制御ノブが設けられている。図1Aおよび図1Bに示されるように、顕微鏡100は、一方向(例えば、x方向)にステージ110を移動させる第1のノブ121と、異なる方向(例えば、y方向)にステージ110を移動させる第1のノブ121と同軸上の第2のノブ122とを具える同軸制御ノブ120を具えてもよい。タングステン−ハロゲン光源のような光源130がステージ110より下に配置され、標本202を照光する。対物レンズ140は標本202の拡大画像を形成し、細胞学者は接眼レンズ150を通して拡大画像を観察することができる。焦点の調整は、同軸焦点ノブ161、162(例えば、粗調整用および微調整用)を具える焦点制御160を用いて行われ、ステージ110を垂直(例えば、z方向)に移動させることがきる。顕微鏡構成部品のさらなる態様は、米国特許出願公開第2007/0139638(A1)号に記載されている。
【0005】
マシンビジョン装置および自動システムはさらに、生物標本の画像を取得して分析するために用いられる。図3に示された、ある既知の自動システム300は、自動画像顕微鏡またはステーション310と、処理サーバ320と、自動観察ステーション330とを具える。
【0006】
画像ステーション310は、画像顕微鏡316を通して観察される標本202の画像を取得するカメラ312を具える。さらに図4を参照すると、電動ステージ314は、1以上のモータ402と、プロセッサ404およびメモリ406のような付属の電子部品とを具えるステージの制御構成部品またはモジュール400を具えるか、あるいは操作可能に連結され、モータ402とステージ314およびその上のスライド200の位置とを制御するのに用いられる。再び図3を参照すると、カメラ312が生成した画像データ318は、1以上のプロセッサ321乃至323(通常、プロセッサ321と称される)と、メモリ324とを具えるサーバ320に提供されて、画像データ318は処理され、観察ステーション330に提供される結果が記録される。
【0007】
いくつかの自動スクリーニングシステムでは、プロセッサ321は、各標本202内の正常および異常な(または疑わしい)生物材料の間を線引きする。つまり、プロセッサ321は、診断情報を用いてスライド200上の最適な生物対象とその位置(例えば、x−y座標)とを決定する。あるシステムでは、サーバ320は画像データ318を処理して、画像データ318内の「関心対象」(OOI)を認識する。OOIは標本202の各細胞および細胞クラスタを形成してもよい。1以上のOOIは規定された境界または関心視野(FOI)の視野領域内にまとめられ、これは様々な形状に規定され、異なる数のOOIを含むことができる。FOIは、(x、y)座標に基づいて認識される。ある既知の自動システムは、22のFOI、または22組の(x、y)座標を認識する。OOIおよびFOIのさらなる態様は、米国特許第7,083,106号および米国特許出願公開第2004/0254738(A1)号に記載されている。
【0008】
プロセッサ321は、例えば、何れの特定の細胞または対象に悪性腫瘍または前悪性腫瘍といった異常な状態を有する危険があるかの程度に基づいて、認識されたOOIを分類するように構成されてもよい。例えば、プロセッサ321は細胞核の総合的または平均の光学密度についてOOIを測定し、光学密度値によってOOIを分類してもよい。OOIおよびFOIの座標情報は、観察ステーション330を利用するその後の処理、観察または分析のために記録されうる。
【0009】
細胞学者が、観察顕微鏡336と電動ステージ334とを用いてスライド200を観察する時、OOI/FOIの位置情報が観察顕微鏡336に提供され、先に認識されたFOIを通して自動的に実行を進め、OOIを細胞学者に示す。ある自動システムでは、観察ステーション330はマウスのようなジョイスティックを具えており、スライド200を移動させるのに用いられる。例えば、あるシステムは、「次」および「前」ボタンを具えており、次のFOIおよび前のFOIに移動させるのに用いられる。
【0010】
標本の観察中、細胞学者が疑わしい細胞を認識しない場合、このスライドは正常だと考えられる。この場合、細胞領域202全体を走査する必要はない。しかしながら、細胞学者がFOI内に疑わしい細胞またはOOIを認識した場合、細胞学者は「マーク」ボタンを押すことによって、これらのOOIを電子的に記録することができ、スライドの観察が完了する前に標本または細胞領域202全体を走査しなければならない。
【0011】
図5は、つづら折りの走査パターンを利用して細胞領域202全体を走査する一方法を示す。図示された実施例では、第1の走査線またはコード500a(通常、「走査線500」と称する)の開始点502a(通常、開始点502と称する)から走査が始まり、第1の走査線500a上のある位置510(点で示す)における細胞領域202の第1の部分全体にわたって横切り(例えば、図示された例では左から右に移動する)、細胞領域202の境界204を超えて(細胞領域202の長さまたは幅全体を確実に走査するため)、第1の走査線500aの終点503a(通常、終点503と称する)まで移動する。自動システムは、520aを下方の第2または次の走査線500bに割送ることにより、走査線500bの開始点502bから終点503bまで(例えば、右から左へ)細胞領域202の第2の部分が走査され、終点503bの地点で520bを再度次の走査線500cの開始点502cに割送り、これが繰り返されて、細胞領域202を100%走査する。
【0012】
走査を目的として、既知の自動システムは、細胞学者によって走査かつ観察される細胞領域202を配置する電動ステージ334を具える。第1の走査モードでは、電動ステージ334およびスライド200は、スローな動画と似た方法で、(例えば、図5に示されるように)あらかじめ指定された走査線500に沿って連続的に移動する。第2の走査モードでは、電動ステージ334は、走査線500上の位置510にスライド200を移動させるために制御され、次の位置510に移動する前に予め指定された時間それぞれの位置520で中断し、再度中断し、再度移動し、各走査線500上の各位置510で繰り返す。第3の走査モードでは、ステージ334およびスライド200は走査線500上の固定位置510に移動し、使用者がボタン(例えば、観察を制御するのに用いられる「次」ボタン)を押すまでその位置510に留まり、走査線500上の次の位置510に移動する。
【0013】
自動の走査モードは効果的に利用されてきたが、多くの制限や制約があり、改善されうる。走査のパラメータに関する使用者の制御または入力は、例えあったとしても著しく、非常に制限される。例えば、上記の第1のモードでは、ステージおよびスライドは連続的に移動し、ステージおよびスライドが移動する速度のみジョイスティックを使って調整されうる。上記の第2の走査モードでは、使用者の希望または入力に拘わらず走査は進行し、第3の走査モードでは、使用者による制御が次の位置に進めるボタンを押すことに制限される。
【0014】
従って、既知の自動スクリーニングシステムの一部の走査モードでは、使用者は走査の停止または中断、走査方向を変更する時を選択することができない、および/または現行の走査経路上にない標本の異なる部分を観察するために走査位置を移動させることができない。さらに、ある既知のシステムでは、使用者は所望の時間、特定の位置で停止または中断することができない代わりに、十分な時間が経過すると次の位置に移動する。さらに、ある既知のシステムは、進行中に行うことができる制御調整を設けていない。加えて、既知の特定のシステムでは、走査が進むように、正確な順番かつ前述の方法で走査が進行する。このように、既知のシステムは一方向性であり、使用者は前に戻って、前に観た部分を観察することができない。従って、既知の自動走査システムは、制御と自由度とを制限する。
【0015】
これらの走査制御の制限事項は制約があって不便であり、標本の選択部分を観察するために、使用者は別個の従来の手動顕微鏡を利用する必要がある。
【発明の概要】
【0016】
一実施形態は細胞標本を走査する方法に関し、当該方法は、第1の走査線に沿って細胞標本を具えるスライドを支持する電動ステージの移動を手動制御して、第1の走査線に沿って細胞標本の第1の部位を制御可能に走査するステップと、第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを手動割送りするステップと、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して、第2の走査線に沿って細胞標本の第2の部分を制御可能に走査するステップとを具える。
【0017】
他の実施形態は細胞標本を走査する方法に関し、当該方法は、第1の走査線に沿って細胞標本を具えるスライドを支持する電動ステージの移動を手動制御して、第1の走査線に沿って細胞標本の第1の部分を制御可能に走査するステップと、第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを自動割送りするステップと、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して、第2の走査線に沿って細胞標本の第2の部分を制御可能に走査するステップとを具える。
【0018】
他の実施形態によると、細胞標本を走査するためのシステムは、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとを具える。電動ステージは細胞標本スライドを支持するように構成されており、プロセッサは電動ステージに操作可能に連結され、走査コントローラはプロセッサに操作可能に連結される。走査コントローラを制御することにより、第1の走査線に沿って電動ステージの移動を手動動御して第1の走査線に沿って細胞標本スライドの第1の部分を制御可能に走査し、第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを手動割送りし、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して第2の走査線に沿って細胞標本スライドの第2の部分を制御可能に走査するように、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとが構成される。
【0019】
さらに代替の実施形態は細胞標本を走査するためのシステムに関し、当該システムは、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとを具える。電動ステージは細胞標本スライドを支持するように構成されており、プロセッサは電動ステージに操作可能に連結され、走査コントローラはプロセッサに操作可能に連結される。走査コントローラを操作することにより、第1の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して第1の走査線に沿って細胞標本の第1の部分を制御可能に走査し、第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御して第2の走査線に沿って細胞標本の第2の部分を制御可能に走査するように、電動ステージと、プロセッサと、走査コントローラとが構成されており、電動ステージが第1の走査線から第2の走査線へ自動的に割送られるように、プロセッサと走査コントローラとが更に構成されている。
【0020】
1以上の実施形態では、電動ステージが移動する方向を手動制御することにより、第1および第2の走査線それぞれに沿って電動ステージの移動が手動制御される。例えば、第1の走査線に沿って電動ステージの移動が第1の方向に手動制御され、他の走査線に沿って第2の、反対方向に手動制御されてもよい。1以上の実施形態では、電動ステージは非連続的に移動するように制御され、複数の走査線のうちの1走査線上の選択された位置において一時的に中断してもよい。さらに、電動ステージの移動速度は手動制御されてもよい。
【0021】
1以上の実施形態では、第1の走査線の終点から第2の走査線の開始点に電動ステージが手動割送りされる。例えば、1以上の実施形態では、同軸コントローラを操作することによりステージの移動を手動制御することができ、これは第1の回転制御要素と、第1の回転制御要素に同軸の第2の回転制御要素とを具えてもよい。第1の回転制御要素を回転させて第1および第2の走査線に沿って電動ステージの移動を手動制御することができ、第2の回転制御要素を回転させて他の走査線に電動ステージを手動割送りすることができる。この目的のため、回転制御要素の1つを操作また作業中、他の回転制御要素は使用不能としてもよい。同軸コントローラを利用して第1の走査線の終点から第2の走査線の開始点に電動ステージがさらに手動割送りされてもよい。
【0022】
第1の回転制御要素でステージの移動を手動制御中、第2の回転制御要素は使用不能としてもよい。電動ステージが第1の走査線の終点に手動で配置されるのを検出次第または検出後、前は使用不能であった第2の回転制御要素が使用可能になり、これにより第2の回転制御要素を回転させることにより電動ステージが第1の走査線から第2の走査線へ割送ることができ、この間第1の回転制御要素は使用不能としてもよい。電動ステージが次または第2の走査線に割送りされたことを検出した後、第2の回転制御要素は使用不能としてもよい。
【0023】
さらに、1以上の実施形態では、使用者または操作者によって観察制御が作動され、細胞標本の走査を一時停止して、後で利用するためにメモリに記憶することができる現在の位置から、他の位置へ電動ステージが手動で移動可能となることにより、操作者は標本の異なる部分をローミングできるようになり、観察制御を用いて関心対象といった細胞標本の選択部分を観察することができる。ローミングが完了した後、例えばプロセッサによって走査が再始動され、走査が一時停止したと記録された位置に電動ステージが再配置され、これにより走査線に沿って走査するためにステージの移動の手動制御が再開されてもよい。観察制御はさらに、電動ステージを他の走査線に手動割送りするために利用されるか、あるいは割送りは自動でもよい。
【0024】
自動割送りを含む1以上の実施形態では、第1の走査線の終点から第2の走査線の開始点に電動ステージが自動割送りされ、ステージの方向および速度は手動制御されうる。ステージはさらに、選択した位置で一時停止することができる。このように、電動ステージは非連続的に移動することができる。
【0025】
1以上の実施形態では、回転制御要素の1つが使用中は、プロセッサは、回転コントローラの他の回転制御要素が使用不能になるように構成される。例えば、プロセッサは、第1の走査線の終点に電動ステージが手動で配置されているのを検出し、第2の回転制御要素が第1の走査線から第2の走査線に電動ステージを割送りするよう回転可能となるように、前は使用不能だった第2の回転制御要素が使用可能となるように構成されてもよい。
【0026】
1以上の実施形態では、観察コントローラはプロセッサに操作可能に連結され、走査コントローラは、電動ステージを手動で割送りするか、あるいは現在の電動ステージ位置における細胞標本の走査を一時停止するために押される少なくとも1のボタンを具える観察コントローラであり、他の電動ステージ位置における細胞標本の選択した部分を手動で観察することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面を参照し、対応部分には同じ符号を付している。
【図1A】図1Aは、既知の顕微鏡の正面図である。
【図1B】図1Bは、既知の顕微鏡の側面図である。
【図2】図2は、生物標本スライドの斜視図である。
【図3】図3は、既知の生物標本の画像および観察システムの概略図である。
【図4】図4は、電動ステージの構成部品の概略図である。
【図5】図5は、細胞領域を走査するための、既知のつづら折りのパターンを示す。
【図6】図6は、標本走査の手動制御を提供する一実施形態により構成されたシステムの概略図である。
【図7】図7は、一実施形態による、走査線に沿って標本の走査を手動制御し、走査線間を手動割送りする方法のフローチャートである。
【図8】図8は、標本の走査を手動制御するための同軸コントローラを具える一実施形態により構築されたシステムを示す。
【図9】図9は、走査のタイミングまたは走査の中断時および走査の再開時を使用者が選択する実施形態を示す。
【図10】図10は、走査速度を使用者が選択する実施形態を示す。
【図11】図11は、複数の方向において単一の走査線に沿った走査を使用者が選択する実施形態を示す。
【図12】図12は、走査の制御要素を選択的に使用可能および使用不能にすることにより、標本の走査を手動制御する方法のフローチャートを示す。
【図13】図13は、一実施形態による手動割送りを示す。
【図14】図14は、一実施形態による手動割送りおよび手動逆割送りを示す。
【図15】図15は、他の実施形態による、標本を走査およびローミングする方法のフローチャートを示す。
【図16】図16は、標本全体にわたるローミングの一例を示す。
【図17】図17は、さらに他の実施形態による、標本の走査を手動制御し、他の走査線に自動割送りする方法のフローチャートを示す。
【図18】図18は、走査の制御と割送りするための実施形態が実装されうるシステムおよび方法における顕微鏡システムを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
複数の実施形態は、より効果的に、使いやすく、便利かつ効率的な方法で使用者が自動スクリーニングシステムの細胞標本を制御可能に走査できると同時に、100%の細胞領域の適用範囲を達成可能にするための方法およびシステムに関する。
【0029】
図6を参照し、さらに図7を参照すると、一実施形態により構築された走査制御システム600は、走査の制御要素または要素610(通常、走査コントローラ610と称される)を具えており、これは例えば、図3に示されるような観察ステーション330の電動ステージといった自動スクリーニングシステムの電動ステージ334に接続または操作可能に連結される。走査コントローラ610は、適切な制御インターフェイス400、または例えば1以上のモータ402、プロセッサ404、メモリ406(図4に全体が示されるが、説明を簡単にするため図6には図示せず)といった他の適切な構成要素を経由して、電動ステージ334に接続されてもよい。図6は制御インターフェイス400の全体を示すが、モータ402、プロセッサ404、メモリ406および他の構成要素は、他のシステムの構成要素の一部とすることができ、制御インターフェイス400は説明を簡単にするため全体が示されていると理解するべきである。
【0030】
使用時、使用者は走査コントローラ610を操作して、ステージ334の移動と、走査進行中のスライド200およびその上の標本または細胞領域202の位置とを制御する。システム600および方法700の実施形態は、使用者がステップ705において第1の走査線500またはコード(通常、走査線500と称される)に沿って標本または細胞領域202の第1の部分の走査を手動制御し、ステップ710において現在の走査線500から他の走査線500、例えば次または近接する走査線500に電動ステージ334を手動制御または割送り520し、次いでステップ715において、電動ステージ334の移動の手動制御を続けて、第2の走査線500に沿って細胞領域202の第2の部分を制御可能に走査するように構成される。図7は、2つの走査線に沿った走査を含むステップを示すが、図7に示されるように、さらなる手動割送りおよび手動走査ステップが必要に応じて実施され、細胞領域202全体が観察されるまで細胞領域202のさらなる部分を制御可能に走査できる。走査線510に沿った細胞領域202の走査および割送り520を手動制御する機能は使用者による制御が殆どなく、使用者が走査線間の割送りを制御できない既知の自動走査システムと異なる。
【0031】
図8は、第1および第2の回転制御要素811、812を具える同軸回転コントローラを形成する走査コントローラ610を有する一実施形態により構築されたシステム800を図示しており、この回転制御要素は、図1Aおよび図1Bに図示されたステージ制御ホイールまたはノブ121、122および焦点制御ホイールまたはノブ161、162と同様または同一である。回転制御要素811、812の一方または両方を回転させて、電動ステージ334の移動と、標本スライド200の位置と、他の走査線500へのステージ334の割送り520とを制御することができる。
【0032】
例えば、図9を参照すると、一実施形態では、例えば外部または大型の回転制御要素811といった回転制御要素が使用者により回転させられて、使用者が指定および制御した速度で走査線500上の異なる走査位置510に沿って移動してもよい。図示された実施形態では、使用者は回転制御要素811を回転させて、位置510(1)から位置510(2)に移動させて、位置510(2)で中断し、次いで回転制御要素811を回転させて、位置510(2)から、例えば位置510(3)を通って、位置510(4)に移動させることができ、使用者は所望によりこの位置で再度中断することができる。使用者は、回転制御要素811を回転させ続けて、位置510(4)から、例えば位置510(5)を通って、位置510(6)に移動させて、使用者が選択したタイミングおよび速度で、これを繰り返すことができる。一実施形態では、回転時に回転制御要素811の回転速度にかかわらず一定速度で走査が実行されるように回転制御要素811が構成されてもよいが、回転は必要に応じて中断かつ再開することができ、使用者はその裁量において、走査を停止、開始、および再開することができる。
【0033】
図10を参照すると、代替の実施形態では、使用者はさらに、細胞領域202の異なる部分を走査する速度を制御することができる。一実施形態によると、回転制御要素811が回転する速度は、特定の走査線500に沿って細胞領域202を走査する速度に関連する。図示された実施形態では、回転制御要素811は第1の回転速度で回転して、第1の速度(1)で走査線500に沿って細胞領域202の第1の部分を走査することができ、次いで使用者は回転制御要素811をさらに速く回転させて、さらに速い第2の速度(2)で細胞領域202の第2の部分を走査することができる。回転制御要素811はさらに、より遅く回転して、遅い第2の回転速度で第2の部分を走査してもよい。
【0034】
他の実施形態では、実施形態のシステムおよび方法は、図9および図10に示された組み合わせを含む。従って、この実施形態では、使用者は必要に応じて走査を開始かつ停止させて(図9に示される)、異なる速度で走査線500上の異なる位置510を通って移動させてもよい(図10に示される)。
【0035】
図11を参照すると、他の実施形態では、使用者が回転制御要素811を制御可能に回転させることにより、多方向の走査を行うことができる。図示された実施形態では、使用者は、一方向(例えば、反時計回り)に回転制御要素811を回転させて第1の方向(1)に走査を進め、次いで別の方向(例えば、時計回り)に同じ制御要素811を回転させて走査方向(2)を逆行させることができる。異なる方向に回転制御要素811を回転させることにより、使用者は所望により走査方向を変更することができ、これにより走査は所望により前進(3、5)、および逆進(4)できる。この方法では、走査すべき特定の位置510と、いつ、どの方向に走査が進むべきかを、使用者が制御し選択する。これらの機能を用いて、実施形態では、使用者は前に観た標本の一部を操作可能に観察して、この部分と現在観察している部分とを比較することが都合良く可能になり、これは既知の自動スクリーニングシステムでは不可能である。この実施形態はまた、使用者が細胞領域202を走査する方向、位置および/または速度を制御できるように、図8乃至図10に示された1以上または総ての実施形態と組み合わされてもよい。
【0036】
図12および図13を参照すると、他の実施形態による、細胞領域202を走査する方法1200は、回転制御要素811、812の両方の操作を含み、走査線500に沿って走査を手動制御し、他の走査線500に手動割送り520をする。一実施形態では、ステップ1205において、例えば走査線500の開始点502に配置された時、第1の回転制御要素811のような1つの回転制御要素が作動あるいは使用可能になる。回転制御要素811は使用者によって回転させられて、(図6乃至図11を参照して上述されたように)電動ステージ334の移動と細胞領域202の走査とを手動制御する。他の回転制御要素812をこの目的のために用いてもよいが、説明を簡単にするため、第1の回転制御要素811について述べる。
【0037】
ステップ1210の間、本実施例では、他の回転制御要素は第2の回転制御要素812であり、停止または使用不能になる。従って、第1の回転要素811を利用し、走査線500の終点503に達しない間は、他の走査線500に割送るために第2の回転制御要素812を使用することはできない。従って、一実施形態では、回転制御要素811、812の一方のみが、所定の時間において作動または使用可能になる。この方法では、実施形態によって、特定の走査線500が完全に走査される前に不注意または早まって割送り520をすることがなくなり、各走査線500全体が確実に走査され、さらに適切な割送り520が行われるように、走査位置が走査線500の終点503に確実に保持される。
【0038】
ステップ1215において、第1の走査線500の走査が完了したか否かの判断がされる。もし完了していない場合、走査が第1の走査線500の終点503に進むまでステップ1205が繰り返される。さらに図13を参照すると、第1の走査線500が終点503(1)まで完全に走査された場合、ステップ1220において、前は停止していた第2の回転制御要素812または割送り要素が作動または使用可能になり、かつ第1の回転制御要素811は停止または使用不能になる。使用可能および使用不能な状態は、同時または異なる時に起こりうる(例えば、図12に示される)。説明を容易にするため、使用可能および使用不能な状態は、単一のステップ1220に示す。
【0039】
図13をさらに参照すると、ステップ1225において、第2の回転制御要素812が使用者によって回転させられて、第1の走査線500aの終点503aから第2または次の走査線500bの開始点502bに電動ステージ834を手動割送り520(2)する。
【0040】
ステップ1230において、第2の回転コントローラ812は停止して、第1の回転コントローラ811は再び作動または使用可能になる。上述のように、これは同時または異なる時に起こりうる。図13に示されるように、ステップ1235において、使用者によって第1の回転コントローラ811が回転させられて、次の走査線500b(3)に沿って走査を制御する。さらに走査線500がある場合、図12のステップが必要に応じて繰り返され、細胞領域202全体が観察されるまでさらなる走査線を制御可能に走査することができる。
【0041】
図12および図13は、前述の方法、あるいは前述の割送りで走査を進めるために、割送り520を実行する実施形態を図示する。図14を参照すると、他の実施形態では、使用者は、第2の回転制御要素812を制御して、後のまたは「次の」走査線500から前の走査線500に逆割送り1420をすることができる。これは、図12に示された特定のステップを逆の順序で行うことにより実行される。
【0042】
例えば、図14に示された実施形態では、図12に示された方法1200を利用して、様々な位置510(1)に沿って走査線500の終点503へ走査を進め、次の走査線500の開始点502に下方へ割送り520(2)、図12および図13を参照して上述したように、次いで様々な位置510(3)に沿って走査を進めることができる。しかしながらこの時点において、使用者は、細胞領域202の前に観た部分を観察して、例えば当該部分と現在の標本部分とを比較することを希望することがありうる。実施形態によって、第1の回転制御要素811を反対または逆方向(4)に回転させ、走査線500の開始点503に走査を配置し直して、第1の回転制御要素811を使用不能とし、かつ第2の回転制御要素812を使用可能とし、次いで第2の回転制御要素812を反対または逆方向に回転させて、前または上側の走査線500に「逆」割送り1420(5)してもよい。第2の回転制御要素812が次いで使用不能になると、第1の回転制御要素811は使用可能になり、反対または逆方向に回転して、所望の走査位置(6)に後退することができる。
【0043】
図15および図16を参照すると、標本の細胞領域202を走査する他の実施形態による方法1500は、使用者が細胞領域202の選択部分を自由にローミングまたは観察できるようにしつつ、走査が中断または一時停止した位置510に戻る時を制御する。図示された実施形態では、ステップ1505において、(例えば、上述のように)第1および/または第2の回転制御要素811、812が使用者によって操作されて、第1または現在の走査線500に沿って電動ステージ334の移動を手動制御する。ステップ1510において、使用者は観察制御を作動させて走査を中断することができ、かつ電動ステージ334の現在の位置510はステップ1515においてメモリに記録される。一実施形態によると、システムは、「次」ボタンを押すことによって観察制御の作動が実行されるように構成される。ステップ1520において、制限なく、かつ現在の位置510または現在の走査線500に束縛されることなく、使用者は自由に電動ステージ334を移動させて、細胞領域202全体にわたってローミングできる。
【0044】
例えば、図16は、走査線500(1)全体にわたる、走査線500の終点503に達する前の最初の走査を図示しており、この時、例えば「次」ボタンを押して、使用者は観察制御要素を作動させることができる。使用者はその後、第1および第2の回転制御要素811、812を操作し、例えばこの実施例では、現在の走査線500上にはない、選択した経路(2乃至6)に沿って、細胞領域202全体にわたって自由にローミングすることができる。
【0045】
図15を再び参照すると、使用者がローミングを完了した後、ステップ1525において、観察制御が(例えば、「次」ボタンを再度押すことにより)停止または使用不能になり、走査を再開できる。図示された実施例では、ローミングの終点における走査位置510は位置510(6)であり、現在の走査線500上にはない。ステップ1530において、ステージ343は、前に記録された位置510に自動的に移動して戻り、観察制御が作動する前と同じ位置510から走査を再開する。ステップ1535において、電動ステージ334は手動制御され、走査線500に沿って走査を完了し、次の走査線500に割送り520をして、次の走査線500を走査し、上述のようにこれを繰り返す。必要な場合は、所望に応じてローミングを再度実行することができる。図15および図16に示された実施形態はさらに、図9乃至図14を参照して記載された1以上の実施形態に利用されてもよい。
【0046】
上述の実施形態は、走査線500に沿った走査の手動制御と、他の走査線500への手動割送り520とを含む。図17を参照すると、他の実施形態は、(図6乃至図16を参照して記載されたような)手動の走査制御および自動割送り520(手動割送り520ではない)を含む、細胞領域202を走査する方法1700に関する。より具体的には、ステップ1705において、走査線500に沿った細胞領域202の走査は上述のように手動制御されており、ステップ1710において、第1の走査線500の走査が完了し、走査線500の終点503に達したか否かを判断する。一実施形態によると、ステップ1710は、ステージ334の位置をモニタリングするプロセッサ、センサまたは他の適切な構成部品により実行され、走査線500の終点503に達したか否かを判断してもよい。否の場合、走査が第1の走査線500の終点503に進むまでステップ1705および1710が繰り返される。ステップ1715において、走査線500の終点503に達すると、使用者の入力がなくとも、走査線500の終点から次の走査線500の開始点502に電動ステージ334が自動割送りされる。ステップ1720において、第1の回転制御要素811を再度回転させて、自動割送りの後に、次または第2の走査線500に沿った走査を制御してもよい。自動割送りおよび手動走査のステップは、細胞領域202全体が観察されるまで必要に応じて繰り返されてもよい。
【0047】
従って、図17に示された実施形態は、手動制御と自動制御との組み合わせを利用しており、ステージ334を次の走査線に手動割送りする必要なく、(例えば、以上の図6乃至16を参照して記載されたように)走査を手動制御する機能を使用者に提供する。
【0048】
特定の実施形態が図示および記載されたが、以上の記述は、これらの実施形態の範囲に限定することを意図しないと理解すべきである。様々な変更および改良が特許請求の範囲を超えることなく実施されうる。
【0049】
例えば、実施形態が、回転できるホイールまたはノブを具える同軸コントローラを参照して記載されたが、標本部分を制御可能に走査するのに用いられる制御要素は他の制御部品でもよく、あるいは他の構成を有していてもよい。他の実施形態では、走査コントローラは、標本の観察を制御するのに通常用いられる構成部品でもよい。一実施形態では、同軸コントローラを用いる代わりに、走査コントローラは「次」ボタンまたは他の適切な観察制御とすることができ、通常、一連のOOI中の次のOOIに進めるために利用される。この実施形態では、次ボタンは使用者に押されて、ある走査線から他の走査線へ手動割送りすることができる。従って、一実施形態では、手動制御は、例えば同軸制御要素またはその構成部品といった、ノブまたはホイール型のデバイスと、OOIを観察するのに通常利用される構成部品の両方を利用して実行されてもよい。
【0050】
さらに、実施形態は電動ステージおよび同軸制御要素の使用の実施例を参照して記載されたが、実施形態は、走査するのに用いられる様々な種類の観察システムおよびデバイスにおいて使用されてもよい。例えば、図18を参照すると、実施形態は様々な種類の画像および観察システムに実装することができ、一体型の画像/観察顕微鏡システム1800の一例は、標本の画像化を行い、使用者が標本の画像化の結果、認識されたOOIを観察できるように構成されている。図18に示されたシステム1800を用いて、コンピュータ1810、モニタまたはディスプレイ1820および付属の制御部品1830を同時に利用して、スライド200の別個の生物標本を画像化および観察するために同じ顕微鏡を使用することができる。
【0051】
さらに、実施形態は、標本の細胞領域の水平の走査を参照して記載されたが、実施形態は、垂直の走査または異なる角度における走査で利用されてもよい。
【0052】
さらに、実施形態は、同軸コントローラを用いる手動制御の走査を参照して記載されたが、他の実施形態は、他の種類のコントローラを利用してもよい。例えば、観察制御要素上のスクロールホイールといったスクロールホイールが、他の実施形態により用いられてもよい。
【0053】
実施形態は、上述の実施例と異なる様々な他の方法で実装されてもよい。従って、実施形態は、特許請求の範囲内に収まる代替例、改良例、および均等物を包含することを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞標本を走査するシステムにおいて:
細胞標本スライドを支持するように構成された電動ステージと;
前記電動ステージに操作可能に連結されたプロセッサと;
前記プロセッサに操作可能に連結された走査コントローラと;を具え、
前記走査コントローラの操作が、
第1の走査線に沿って前記細胞標本スライドの第1の部分を制御可能に走査するための、前記第1の走査線に沿った前記電動ステージの移動の手動制御と、
第2の走査線に沿って前記細胞標本スライドの第2の部分を制御可能に走査するための、前記第2の走査線に沿った前記電動ステージの移動の手動制御と、
を提供するように、前記電動ステージと、前記プロセッサと、前記走査コントローラとが構成されており、
前記システムがさらに、前記第1の走査線から前記第2の走査線に前記電動ステージが手動または自動で割送り(index)されうるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記走査コントローラは、
前記第1および第2の走査線に沿って前記電動ステージの移動を手動制御するために回転可能である第1の回転制御要素と、
前記第1の回転制御要素と同軸であり、前記電動ステージを手動割送りするために回転可能である第2の回転制御要素と、
を具える同軸コントローラであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記プロセッサが、前記電動ステージの移動を手動制御している時は前記第2の回転制御要素を使用不能とするように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記プロセッサが、前記電動ステージが前記第1の走査線の終点に手動で配置されるのを検出し、前は使用不能であった前記第2の回転制御要素が使用可能となるように構成されており、前記第1の走査線から前記第2の走査線に前記電動ステージを割送りするために前記第2の回転制御要素が回転可能となることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記プロセッサに操作可能に連結された観察コントローラをさらに具えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至4に記載のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記走査コントローラが前記プロセッサに操作可能に連結された観察コントローラを具えており、当該観察コントローラは前記電動ステージを手動で割送りするために押すことができる少なくとも1つのボタンを具えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記プロセッサに操作可能に連結された観察コントローラをさらに具えており、前記観察コントローラが、(1)現在の電動ステージの位置において前記細胞標本の走査を一時停止し、(2)他の電動ステージ位置において前記細胞標本の選択部分を手動で観察するように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項1】
細胞標本を走査するシステムにおいて:
細胞標本スライドを支持するように構成された電動ステージと;
前記電動ステージに操作可能に連結されたプロセッサと;
前記プロセッサに操作可能に連結された走査コントローラと;を具え、
前記走査コントローラの操作が、
第1の走査線に沿って前記細胞標本スライドの第1の部分を制御可能に走査するための、前記第1の走査線に沿った前記電動ステージの移動の手動制御と、
第2の走査線に沿って前記細胞標本スライドの第2の部分を制御可能に走査するための、前記第2の走査線に沿った前記電動ステージの移動の手動制御と、
を提供するように、前記電動ステージと、前記プロセッサと、前記走査コントローラとが構成されており、
前記システムがさらに、前記第1の走査線から前記第2の走査線に前記電動ステージが手動または自動で割送り(index)されうるように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記走査コントローラは、
前記第1および第2の走査線に沿って前記電動ステージの移動を手動制御するために回転可能である第1の回転制御要素と、
前記第1の回転制御要素と同軸であり、前記電動ステージを手動割送りするために回転可能である第2の回転制御要素と、
を具える同軸コントローラであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記プロセッサが、前記電動ステージの移動を手動制御している時は前記第2の回転制御要素を使用不能とするように構成されることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記プロセッサが、前記電動ステージが前記第1の走査線の終点に手動で配置されるのを検出し、前は使用不能であった前記第2の回転制御要素が使用可能となるように構成されており、前記第1の走査線から前記第2の走査線に前記電動ステージを割送りするために前記第2の回転制御要素が回転可能となることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記プロセッサに操作可能に連結された観察コントローラをさらに具えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至4に記載のいずれか一項に記載のシステムにおいて、前記走査コントローラが前記プロセッサに操作可能に連結された観察コントローラを具えており、当該観察コントローラは前記電動ステージを手動で割送りするために押すことができる少なくとも1つのボタンを具えることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記プロセッサに操作可能に連結された観察コントローラをさらに具えており、前記観察コントローラが、(1)現在の電動ステージの位置において前記細胞標本の走査を一時停止し、(2)他の電動ステージ位置において前記細胞標本の選択部分を手動で観察するように構成されることを特徴とするシステム。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2011−508238(P2011−508238A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540773(P2010−540773)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086861
【国際公開番号】WO2009/085702
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/086861
【国際公開番号】WO2009/085702
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(507130015)サイテック コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】
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