細胞膜タンパク質の検定
環境もしくは細胞の状態が変化することによって量が変化する細胞の、細胞膜に存する細胞膜タンパク質の量を測定するための、方法と組成物を提供する。この方法では、細胞外表面のプロテアーゼ認識部位もしくはこの複数の部位を介してシグナル生産ペプチドと連結した細胞膜タンパク質の融合コンストラクトを持つ細胞を使用する。シグナル産生ペプチドは、細胞膜から放出されると2つ目の酵素断片と結合し活性な酵素を形成することが出来る酵素断片か、もしくは2つの結合部位を持ち、この2つの相補的な結合物質が近くにある時にシグナルが産生されるという点で、その相補的な結合物質は関連している。酵素シグナル生産ペプチドとしては、細胞にプロテアーゼと2番目の酵素の断片と基質を加えることで、細胞膜タンパク質の量と細胞環境におけるこの量の変化の影響について測定することが出来る。同様にして、2つの結合物質とその他の任意の必要な試薬を加えることによりシグナルが生産され、それによって細胞膜タンパク質の量および細胞環境の変化がそのような量に及ぼす影響を測定することが出来る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、概ね膜表面タンパク質の量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は、他の方法の中、細胞外の環境に伸びている細胞膜のタンパク質を介して周囲の環境と情報伝達している。これらの膜タンパク質は、しばしば配位子に対して106M-1の親和力で特異的に結合する空孔もしくは表面を持つ。配位子の結合する膜タンパク質は通常は受容体と言われているが、結果として細胞内へのシグナル伝達を生じる受容体の立体構造変化を引き起こす。このシグナルは、酵素活性の活性化ならびに受容体と複合体を形成しているタンパク質の放出ならびにそれに類することの原因となる、タンパク質への結合を引き起こすかもしれない。その後、通常受容体と配位子複合体のエキソサイトーシスによって配位子と受容体は分離する。しばしば配位子はリソソームで分解されるタンパク質であり、その後遊離した受容体は細胞膜に戻る。
【0003】
細胞膜タンパク質の量は、細胞環境ならびに細胞生理の数多くの変化の影響を受ける。細胞の役割ならびに存在する薬物、他に影響を与える作用物質と関連している、又は刺激もしくは不活化における事象は、しばしば細胞表面膜タンパク質量の増加もしくは減少を引き起こす。このように下向きもしくは上向き調節、別の区画への輸送などのすべてが表面のタンパク質の量の変化を引き起こす。このような量は、細胞の活性に影響を与える細胞内で生じる様々な事象に対する監視装置としての役割を果たすことが出来る。
【0004】
治療上の多くの試みには天然の配位子が結合する場所へ化合物が結合することが含まれており、この場合化合物はアゴニストもしくはアンタゴニストの一部として働くかもしれない。配位子の影響により、結合部位を満たして配位子の結合を妨げるもしくはエンドサイトーシスを引き起こし、表面の受容体の量を減少させるようにシグナルを変換するかもしれない。
【0005】
治療行為は、しばしば細胞の受容体の量もしくは有効性を減少させるもしくは増加させることを対象にしている。CD34のHIVへの結合は、感染性の疾病において有害である多くの細胞膜タンパク質の一例に過ぎない。それ故、細胞表面タンパク質の量、並びに環境の変化の影響もしくはタンパク質がそうした量である場合の細胞状態への影響に多くの関心がある。
【0006】
膜表面のタンパク質、とりわけ受容体の量を決定する方法は、ハイスループットスクリーニングに使用できるのと同様に、1回で判定出来るようにするべきである。今日、製薬会社では仕事の中で多量のスクリーニングをする必要がある。それ故、生体内(in vivo)で化合物のスクリーニングする前に測定することの数は天文学的な数に上っている。ロボット工学ならびに洗練されたソフトウエアを使用することにより、数多くの検定を実行することができ、構造や活性の情報をもたらす結果は表にされる。
【0007】
多くの測定をするので、試薬のコストは、特定のプロトコールを実行する上で考慮される。使用される方法は、膜タンパク質の量のわずかな変化に敏感であろうし、表面におけるそれぞれの分子のシグナル増幅に対して適用できるべきである。それに加えて、この検定はしっかりしていて、望ましくは実験室において普通のまた手軽な材料を使用し、必要な操作のステップが最少で手軽に自動化できるような簡単な方法であるべきである。
【0008】
従って、ハイスループットスクリーニングと同様に1回テストすることにより、数多くの目的物を検定できる方法を開発することに関心がある。
【0009】
(関連文献)
アッセイ系においてβ断片を使用することに関する文献が多数ある。以下がその実例である。非特許文献1はATP-2とlac Zの融合タンパク質について記載している。特許文献1は、プロテイナーゼを測定するためのβ−ガラクトシダーゼのα-相補性を用いた融合タンパク質について記述している。特許文献2は、融合タンパク質としてβ−ガラクトシダーゼのα-ペプチドを使用して立体構造の相補性を評価した、タンパク質の巻き戻し及び/もしくは溶解性について記載している。特許文献3は融合タンパク質の安定性へのβ−ガラクトシダーゼの酵素供与側を含む融合タンパク質の、タンパク質の巻き戻し及び溶解性を測定するための効果について記載している。非特許文献2は融合タンパク質の安定性におけるβ−ガラクトシダーゼのα断片の効果について記載している。非特許文献3は、酵母の分子シャペロンであるヒートショックタンパク質の生体内(in vivo)におけるモデル基質としての、α相補的なβ−ガラクトシダーゼについて記載している。非特許文献4は、ヒトインスリンのp鎖ペプチドを含む融合タンパク質に対する、β−ガラクトシダーゼのα-相補性についての定量的な検定について記載している。非特許文献5は変異率を測定するためのプラスミドを含むEDについて記載している。
【0010】
【特許文献1】国際特許第W092/03559号
【特許文献2】国際特許第WO01/0214号
【特許文献3】国際特許第WO01/60840号
【非特許文献1】Douglas, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1984,81 : 3983-7
【非特許文献2】Homma, et al. , Biochem. Biophys. Res. Commun. , 1995,215, 452-8
【非特許文献3】Abbas-Terki, et al. , Eur. J. Biochem. 1999,266, 517-23
【非特許文献4】Miller, etal., Gene, 1984,29, 247-50
【非特許文献5】Thomas and Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993,90, 7744-8
【発明の開示】
【0011】
(発明の要旨)
細胞膜のタンパク質、通常は受容体、の量を決定することを可能にする方法と組成物を提供する。この方法は、タンパク質分解を受けやすい配列を介してシグナル産生ポリペプチドと融合した細胞膜タンパク質を含む融合タンパク質を発現することが遺伝子的に可能である、形質転換した生細胞を利用することを備える。通常このシグナル産生ペプチドは、特定のタンパク質分解を受けやすい配列及び細胞表面にあると実質的にシグナルの生産を阻害する特定の配列を開裂するプロテアーゼを介して膜表面から遊離させた後検出する。この発現コンストラクトは、自然に生じる転写制御領域もしくは測定の目的によっては別の領域を使用できる。細胞の環境を変えた後、シグナル産生ペプチドを測定することにより膜タンパク質の量を決定できる。同様に、細胞を溶解することによりエンドサイトーシスされた細胞膜タンパク質の量を測定することも出来る。特定の興味のために、活性のある酵素を形成するための2つ目の断片が複合体となることを阻害する酵素断片、例えばβ−ガラクトシダーゼの断片、をシグナル産生ポリペプチドとして使用する。
【0012】
(発明の詳細な記載)
細胞膜でのタンパク質の量を決定する方法は、細胞膜融合タンパク質を発現する遺伝子上の能力を持つ生細胞を使用することにより提供される。この方法はシグナルの産生に関係した構成要素からの分離ステップを必要としないという意味では同質であろう。使用する細胞は遺伝子的に修飾されており、シグナル産生ペプチドと融合した細胞膜タンパク質を含む融合タンパク質を発現出来る。このシグナル産生ペプチドは細胞表面から放出されるために少なくとも一つ以上のプロテアーゼの共通配列を介して細胞膜タンパク質と連結している。細胞の表面から切り離されるシグナル産生ペプチドを測定する。通常、シグナル産生ペプチドから細胞膜までが近いと、シグナル産生ペプチドが相補的な構成物に結合することによりシグナルを産生する能力が実質的に減少する。シグナルの実質的な増加は、シグナル産生ペプチドが細胞膜タンパク質から遊離し、この遊離シグナルが産生したペプチドの相補的な構成物にうまく結合できた時に観察される。それゆえ、遊離したシグナル産生ペプチドは、シグナル産生ペプチドが表面に結合したままの状態で、細胞膜表面に存在する融合タンパク質の量の尺度として測定できる。
【0013】
発現コンストラクトは、転写制御配列及び以下でタンパク質試薬として言及した融合コンストラクトを供給することがある。融合コンストラクトは、通常転写制御配列による転写制御下に置かれるであろう。転写制御配列はしばしばTATAボックス及びCAATボックスを含むプロモーターを持つことがあり、これはよくエンハンサーを含み、構成的又は誘導可能であるかもしれない。この制御領域は内在性の制御領域であり、環境変化が転写に及ぼす影響に興味を持っている時はとりわけ天然の制御領域であって、あるいは、エンドサイトーシス及び/又は発現の上向き調節もしくは下向き調節及び/又は細胞の区画への輸送の後に、環境変化がエンドサイトーシス及び/又は膜の回復に及ぼす影響に興味を持っている時にはとりわけ外因性の制御領域であるかもしれない。多くの市販されている制御領域があり、それには強い及び弱い制御領域、ハウスキーピングタンパク質と相互作用する制御領域、ウイルスタンパク質、例えば温度感受性制御領域のような変異を持った制御領域を含む。
【0014】
5’から開始コドンまでの配列は、発現の増幅に関連した配列を含んでもよい。このような配列は、コザック配列、5’−A/GCCACCATGG−3’(配列識別番号 NO: 4)を含む。下線を付したヌクレオチドは開始コドンを明示している。
【0015】
挿入コンストラクトは、膜タンパク質をコードしている配列に挿入されているか、もしくは融合するもしくは膜タンパク質コード配列の5’もしくは3’末端の近傍及び/もしくはリンカー配列で結合するかどうかにより、多くの形態を取ることが出来る。挿入コンストラクトの主要な要素は、例えば、細胞膜へ発現産物の輸送を司るリーダー配列、細胞膜で細胞膜タンパク質の存在を検出するためのシグナルを提供するシグナル産生配列、細胞膜タンパク質からシグナル産生配列を遊離するためプロテアーゼによって開裂されるプロテアーゼ共通配列、及び細胞膜タンパク質もしくはその代わりの断片、をコードしているものを含む。その他のコードしてもよいものとして、リンカー配列、抗原配列、付加的なプロテアーゼ認識配列などの配列を含めてもよい。
【0016】
融合コンストラクトの挿入配列には、通常、細胞膜表面への転移をコードするものがあることがある。一般にこれは細胞膜に融合タンパク質を輸送するためのリーダー配列をコードしている核酸の5’末端側の配列である。様々なリーダー配列が利用可能であり、選択するリーダー配列は細胞膜タンパク質もしくは様々な内因性もしくは外因性のタンパク質のリーダー配列でもよいが、通常内因性のタンパク質である。リーダー配列は通常末端に極性を備えていて、通常これは脂肪親和性の鎖と連結している陰イオン性のアミノ酸であり、リーダー配列は約20±2個のアミノ酸であろう。それに加えて、少なくとも一つの膜貫通配列があることがある。そして、そこには複数個の膜貫通配列があり、タンパク質はその部分に一つもしくはそれ以上の細胞外に突き出たループを持っていてもよい。
【0017】
随意的に、以下ではリーダー配列がリンカー配列であることがある。リンカー配列は1から90、通常70以上、のコドンを持っていてもよい。ポリペプチドのリンカー配列は多くの働きが出来、それには核酸によりコードされた融合タンパク質の会合を補助すること、5’―3’方向に続く酵素供与配列を開裂したときに安定化を提供すること、融合コンストラクトを更に同定するためのエピトープを提供すること、及びこれに類することが含まれる。リンカー配列は、細胞膜タンパク質の最初の細胞外表面の配列の一部でもよい。そこでリンカー配列は、環境の変化への反応を妨げることなく挿入する、もしくは直接もしくは2つの膜貫通配列にアミノ酸との連結を介して連結している細胞外表面のループ内にあってもよい。加えて、リンカー配列はシグナル産生ペプチドからリンカー配列をすべてもしくは部分的に切り離すためのプロテアーゼ共通配列を備えていてもよい。リンカー配列及びプロテアーゼ共通配列の5’末端では、共通配列はシグナル産生配列に隣接している、もしくはシグナル産生ペプチドから約40アミノ酸以下でもよく、通常は30アミノ酸以下でもよい。
【0018】
シグナル産生ペプチドと細胞膜タンパク質残基の間には、プロテアーゼ共通配列があり、プロテアーゼ存在下でシグナル産生配列は細胞膜タンパク質から切り離され、培養液中に放出される。細胞膜は巨大な立体障害物であるので、細胞表面から放出されることはシグナル産生ペプチドとシグナルを産生する系の相補的なメンバーとの間の複合化を著しく促進する。
【0019】
挿入コンストラクトの必須構成要素は、細胞膜タンパク質にシグナル産生ペプチドで連結している、シグナル産生ペプチド及びプロテアーゼ共通配列である。以上に示したとおり、その他にできることとして挿入配列を形成することがあるかもしれない。挿入配列は細胞膜タンパク質のN末端でよく、もしくは培地に突き出たN-もしくはC-末端ドメインの細胞外表面ドメインもしくは膜表面タンパク質のいくつかのループに挿入してもよい。
【0020】
好ましい態様において、シグナル産生ペプチドは酵素の供与基として言及されることがある。シグナル産生ペプチドは、酵素供与体(the enzyme donor,”ED”)と酵素受容体(the enzyme acceptor”EA”)の二つの断片がそれぞれ複合体を作るとき再構成される、酵素の一対の断片の片側である。EDは酵素断片であり、もう一方の断片、EA、と相補性を持っており活性な酵素を形成出来る。ここに2つの異なる状況がある。最初の状況では、 付属的な結合がなくてもEDとEAは複合体となり活性な酵素を形成する。EDとEAはそれぞれ実質的に不活性であるが、それぞれが独力で結合したとき活性な酵素となる。もう一つの状況では、酵素の断片は独力で複合体を作る補助的なポリペプチドと結合し、補助的なポリペプチドと複合体となったとき、酵素断片は活性な酵素を形成する複合体となる。最初の状況のように酵素の断片はそれぞれ実質的に不活性であるが、最初の場合と異なり2つの酵素断片は補助的なポリペプチドがない場合に一緒にされても、活性な酵素を形成する複合体を形成しない。
【0021】
ED及びEA及びEDとEAの断片によって形成される指標酵素は多くの特性を有することが要求される。最初に断片は実質的に不活性であるべきであり、もしあったとしても、基質存在の下ただ一つの断片のバックグラウンドであるほど小さいべきである。2番目に断片はそれぞれ十分な親和性を持っており、よってタンパク質試薬で切断すると、放出されたEDはEAと結合し活性な酵素となる。タンパク質試薬のED断片はEA断片と複合体を形成し、それは酵素断片の互いに対する親和性の結果であるか、あるいは、補助的な結合物質と融合した結果であり、それぞれの酵素断片を寄せ集めて活性な酵素にする。つまり、前者の例では酵素断片は補助的な結合物質なしに複合体の形成が可能であり、断片を寄せ集めて複合体を形成する。後者の例では酵素の断片は独立して複合体を形成しないが、補助的な蛋白質が複合体を形成するとき、酵素断片は活性な酵素を形成することが出来る。
【0022】
これらの基準を満たす様々な指標酵素が知られている。また既知の技術によってその他の酵素も開発されていくかもしれない。これらの基準に適合する指標酵素は、β-ガラクトシダーゼ(米国特許第4708929号明細書参照)、リボヌクレアーゼA(米国特許第4378428号明細書参照)、これらのより小さい方の断片はアミノ末端もしくはカルボキシル末端もしくは内部から由来でもよく、β-ラクタマーゼ(国際特許第0071702号、国際特許第0194617号、Wehrman, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. 2002,99, 3469-74)もしくはアデノウイルス プロテアーゼのような小ペプチドの補因子(米国特許第5935840号明細書参照)を含む。他の指標酵素が前記載の指標酵素に代わって役目を果たすことが出来るか確認するために、酵素の遺伝子を非対称に開裂し小断片と大断片を明確にし、同じ細胞ならびに異なった細胞に発現させてもよい。基質存在の下、両方の断片を生成する細胞は、個々の断片により基質反応を触媒するのであれば、もしあったとしても弱い代謝回転であるかもしれない。他方、断片を個々に発現させて、もし反応が起こらないのならば、酵素―触媒反応が起こるかどうか確かめるため混合液を混ぜ合わせてもよい。
【0023】
当該指標酵素は、300kDa以下一般的には150kDa以下のサブユニットを持つ。独力で複合体を作る小断片は15kDa以下、さらに通常は10kDa、しばしば125アミノ酸以下で、一般的には100アミノ酸以下、好ましくは75アミノ酸以下である。酵素次第で、独力で複合体となるEDは、10アミノ酸、通常少なくとも25アミノ酸、さらに通常は少なくとも35アミノ酸である。この基準に注意すれば、スクリーニングする断片は適当な大きさの小断片を供給するために選択できる。
【0024】
融合する補助タンパク質と共に複合体となる断片を持つ酵素は、通常酵素のアミノ酸の20−80%、さらに通常は25−75%を持っていることがある。断片は、複合体の間断片間の親和性を高めるために、1−20アミノ酸、通常2−10アミノ酸を付加して修飾してもよい。活性な酵素となる低親和性の複合体を供給する酵素は、模範的にはβ−ガラクトシダーゼ、β-グルクルコニダーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、およびβ−ラクタマーゼを含む。結合タンパク質は、せいぜい8アミノ酸、さらに通常は少なくとも10アミノ酸を持ち、150kDa、通常は100kDa以下である。結合タンパク質は、ホモダイマー、ヘテロダイマー、抗原および免疫グロブリン、もしくは例えばFab、配位子、受容体などの断片を含むかもしれない。ある場合では、錯化は付加的な試薬を必要とするかもしれない。そのため、活性な酵素の形成との錯化は、付加的な試薬例えばFK1012およびラパマイシンが存在していない場合、有意の程度で起こらないかもしれない。
【0025】
どの指標酵素にも適切な基質がある。β-ガラクトシダーゼにはβ-ガラクトシルエーテルを使用するが、これはアグリコンとしてマスクされた蛍光試薬もしくは化学発光試薬を有しており、グリコシドのエーテルの加水分解によりマスクが解かれる。リボヌクレアーゼA、蛍光ラベルされたヌクレオチドであって一例としてはウリジン3’-(4- メチルウンベリフェロン-7-イル) リン酸アンモニウム(uridine 3'- (4- methylumbelliferon-7-yl) ammonium phosphate)、アデノウイルス プロテイナーゼ、- (L, I, M) -X- G-G/X-もしくは- (L, I, M) -X-G-X/G- (配列識別番号 NO: 5)であって縦線は開裂位置を示し;P3(X)位置は開裂に重要でないことが明らかとなっている。(Anderson, C. W. , Virology, 177 ; 259 (1990); Webster, et al. , J. Gen. Virol., 70 ; 3225 (1989))及びペプチド基質は検出可能なシグナル、例えば蛍光剤と開裂部位の反対側に消光剤を有することで蛍光共鳴エネルギーの移動を用いる、を供給するよう設計できる。β-グルクロニダーゼの基質は5-Br-4-CI-3インドルイル β-D-グルクロニダーゼ(5-Br-4-CI-3-indolyl β-D-glucuronidase)が典型例である。
【0026】
β-ガラクトシダーゼは本発明で使用されたペプチドの典型例であり、活性な酵素を形成するために非共有結合で結合して複合体となる時、2つのペプチドを持つという基準を実証している。また、異なった酵素が個別に考慮しなければならない場合を除いてこの酵素は今後この分類を解説するためにしばしば引用されるであろう。β-ガラクトシダーゼのEDは特許文献において幅広く記載されている。(特許文献米国特許第4,378, 428号、米国特許第4,708, 929号、米国特許第5,037, 735号、米国特許第5,106, 950号、米国特許第5,362, 625号、米国特許第5,464, 747号、米国特許第5, 604, 091号、米国特許第5,643, 734号、国際特許第96/19732号、国際特許第098/06648号)は、酵素断片の相補性を利用した検定について記載している。β-ガラクトシダーゼの EDは一般的に少なくとも約35アミノ酸であり、通常少なくとも約37アミノ酸、しばしば少なくとも約40アミノ酸、及び通常100アミノ酸は超えない、さらに通常は75アミノ酸を超えない。この上限は、EDの判定の効果と目的における、EDの大きさ並びに断片及び複合体及びそれに類するものの活性の効果によって規定されている。
【0027】
シグナル産生ペプチドとしてEDを用いる代わりに、2ヶ所の結合部位の両方が塞がっているときシグナルを産生する2つの結合部位を持ったオリゴペプチドを用いてもよい。2ヶ所の結合部位の働きは、シグナル産生ペプチドに細胞膜表面が存在することによって阻害される。そのため、細胞膜から放出されるとシグナルの実質的な増加が観察される。2つの結合部位は、ビオチン様の物質、ポリヒスチジン、ヒスチジン/システイン複合体となった結合体、配位子、抗原、もしくは約5kDaより大きく通常10kDaより小さい相補的な結合相手を持っている約5kDaより小さいオリゴペプチドの様な都合のよいペプチドの部位でよい。2つの結合部位はリンカーによって分離されるであろうから、それらの相補的な結合相手との個々の結合は可能であろうし、結合相手との間の相互作用も可能である。それゆえ、結合部位は少なくとも約5アミノ酸、通常は少なくとも約10アミノ酸、及び50アミノ酸以下、通常約30アミノ酸以下であるアミノ酸によって分離されている。
【0028】
相補的な結合メンバーは、ビオチン、ストレプトアビジン、キレートできるオリゴヌクレオチドとニッケル誘導体、配位子と受容体、抗原と免疫グロブリンと例えばFab、Fvなどの断片、の結合対でもよい。これらはそれぞれ、様々な理由で複合体を形成し、診断の判定に関連している及び関連していないものの両方であることであることが、文献において広く例証されてきている。(米国特許第5, 260,203号、米国特許第6,312, 699号、Gissel, et al. , 1995 J Pept Sci 1,212-26、Suigara, et al. , 1998 FEBS Lett 426,140-4、Honey, et al. , 2001 Nucl. Acids. Res 29, E24)を参照すること。
【0029】
類似した二つの異なった構成要素を持つシグナルを産生することによる、数多くの検定がある。これらには吸光およびエネルギー移動体およびエネルギー受容および光放射もしくは蛍光体を包含している(FRETと呼ばれる);一方の生成物がもう一方の基質であり、最終生成物は蛍光物質もしくは化学発光物質である;検出可能なシグナルを産生するために反応する準安定種の移動。例として、米国特許第4,663, 278号、米国特許第4,822, 733号、米国特許第5,811, 311号、米国特許第5,830, 769号、米国特許第6,406, 913号を参照されたい。
【0030】
蛍光体、酵素などのようなシグナル産生体は、ラテックス粒子、金コロイド、炭素などの粒子と結びつくかもしれない。かさが大きくなることでシグナル産生構成要素が細胞膜表面に結合することはさらに妨げられるであろう。この方法によって、バックグラウンドを低くできる。構成要素の両方が放出されたシグナル産生ペプチドに結合しなければならないということに関して検討材料があるであろう。しかしこれは、シグナル産生ペプチドの結合構成要素間の適切な空間で一つの粒子を用いることによりすぐに実現することが出来る。
【0031】
細胞膜タンパク質は、細胞膜タンパク質の量が科学的もしくは治療上の興味を持たれているタンパク質であるかもしれない。このような、関心の持たれているタンパク質には、受容体、チャネル、輸送体、接着タンパク質、細胞間相互作用に関するタンパク質、病原菌の結合に関するタンパク質、MHCタンパク質、漏出に関連したタンパク質などが含まれる。タンパク質は、膜貫通配列もしくは例えばミリストイル、グリセロールで置換された脂肪酸、ファルネシルなどを介して膜に結合するかもしれない。これらの翻訳後修飾プロセシングをコードする配列はよく知られており、数多くの文書や記事に記載されている。例えば、Reuther, et al. , 2000 Meth Enzymol 327,331-50 ; van't Hoff and Rich, 2000 ibid 327,317-330 ; and Hofemeister, et al. 2000 Mol Cell Biol 11,3233-46を参照されたい。
【0032】
細胞膜タンパク質もくしはそれらの切断されたもしくは修飾された類似体は、膜貫通配列もしくは細胞膜表面へのタンパク質の脂質のアンカーによる細胞膜への単一接点を持っているかもしれない。いくつかの細胞膜タンパク質では、膜貫通配列の多数のコードがあるので、タンパク質には複数回膜を貫通しているかもしれない。 ある判断によっては、細胞膜タンパク質全体、タンパク質のN-末端部分、野生型タンパク質、もしくは変異型タンパク質を有することに関心が持たれるかもしれない。
【0033】
関心が持たれている特定のタンパク質もしくはタンパク質の群には、グルコーストランスポーター、GPCRタンパク質、接着タンパク質、例えばインスリン受容体のようなホルモン結合タンパク質を含む。
【0034】
使用するプロテアーゼは任意に選択することができる。プロテアーゼは、その開裂部位が完全に選択的であるべきであり、すなわち共通配列として比較的まれな配列であり、好ましくは認識配列以外で細胞膜タンパク質を開裂せず、高い回転率を持っており、細胞膜の存在によって阻害されず、頑丈ですぐに利用可能であることである。同様に、内因性の酵素が使えるかもしれないので、細胞によってある酵素は分泌されるかもしれないし、されないかもしれない。
【0035】
当該酵素は、セリン/トレオニン加水分解酵素、システイン加水分解酵素、メタロプロテアーゼ、BACEs(例えば、α-、β-、γ-セクレターゼ)を含む。これらの分類に含まれるものは、カスパーゼ、それぞれのMMP、エラスターゼ、コラゲナーゼ、ACEs、カルボキシペプチダーゼ、血液凝固関連酵素、相補的な構成成分、カテプシン、ジペプチジルペプチダーゼ、グランザイムなどである。他の酵素の群については、A J バーネット(Barnet), N D ロウランド(Rowland), and J F ウォースナー(Woessner)編のタンパク質分解酵素ハンドブックを見ること。その他の酵素の型として、アブザイムを含む。
【0036】
特定のセリンプロテアーゼには、肺気腫に関与する好中球エラスターゼ、白血球エラスターゼ、チロシンカルボキシペプチダーゼ、リソソームカルボキシペプチダーゼC、トロンビン、プラスミン、ジぺプチジルペプチダーゼIVに関与するカルボキシペプチダーゼA,B,メタロプロテイナ−ゼ、高血圧に関与するアンジオテンシン変換酵素、例えばリウマチ様関節炎のような炎症性疾患に関与するストロメライシン、カテプシンD、HIVプロテアーゼ、リソソーマルカルボキシペプチダーゼを含むシステインプロテアーゼ、細胞増殖性疾患に関与するカテプシン B、脳卒中の間に脳の細胞破壊に関与するカテプシン G、カテプシン L、カルパイン、などを含む。
【0037】
プロテアーゼは、様々な過程が関与しているいくつかの便利な起源からもたらされ、その過程には、感染性の物質、ウイルス、バクテリア、カビ、及び原生生物などの感染ならびに複製の過程;食作用、繊維素溶解、血液凝固カスケード、補体カスケード、カスパーゼカスケード、タンパク質前駆体の活性化、例えばユビキチン化されたタンパク質のタンパク質分解、アポトーシスなど、細胞増殖、接着、シナプス過程などがある。プロテアーゼは、検定の性質によって、原核生物、真核生物、もしくはウイルスなど様々な起源に由来するものでもよい。
【0038】
すでに指摘したとおり、プロテアーゼが自然に生成している生物は多様である。ウイルスの中では、プロテアーゼはHIV-1、2、アデノウイルス、A型、B型、C型、D型、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、例えばサイトメガロウイルスのようなヘルペスウイルス、ピコルナウイルスなどに由来するものかもしれない。単核の微生物の中では、リステリア菌、クロストリジウム、エシュリキア、ミクロコッカス、クラミジア、ストレプトコッカス、シュードモナス、などである。もちろん、数多くの興味の対象である哺乳動物プロテアーゼ、特にヒトプロテアーゼがある。
【0039】
プロテアーゼとその基質について記載している多くの科学記事がある。解説記事は次の通りである。これらに関連した内容は特に本願に引用して援用する。メタロプロテアーゼの中では、L/IXXXHy; XHySXL ;HXXXHy(Hyは疎水的残基を示している)の標的配列を持つMMP−2が挙げられる(Chen, et al. , J. Biol. Chem. , 2001)。他の酵素では、RXXAr(Arは芳香族性残基を示している)の標的配列を持つミトコンドリアプロセシングペプチド(Taylor, et al. , Structure 2001,9, 615-25);カスパーゼ、VAD、DEVD、DXXD、のみならずRBタンパク質(Fattman, et al., Oncogene 2001,20, 2918-26)、HPK-1のDDVD(Chen, et al. , Oncogene 1999,18, 7370-7)、ケラチン15及び17のVEMD/A と EVQD/G(Badock, et al. , Cell Death Differ. 2001,8, 308-15)、プロインターロイキン-1βのWEHD(Rano, et al. , Chem. Biol. 1997,4,149-55);フリン、RSV融合タンパク質のKKRKRR(Zimmer, et al. , J. Biol. Chem. 2001,20, 2918-26);HIV-1プロテアーゼ、GSGIF*LETSL(Beck, etal., Virology 2000,274,391-401)が挙げられる。他の酵素では、トロンビン、LVPRGS、ファクターXaプロテアーゼ、IEGR、エンテロキナーゼ、DDDDK、3Cヒトリノウイルスプロテアーゼ、LEVLFQ/GPが挙げられる。
【0040】
他のプロテアーゼについて記載している参考文献は次のものが挙げられる。Rabay, G. ed.,"Proteinases and their Inhibitors in Cells and Tissues, 1989, Gustav Fischer Verlag, Stuttgart; Powers, et al., in"Proteases-Structures, Mechanism and Inhibitors,"1993, Birkhauser Verlag, Basel, pp. 3-17; Patick and Potts, Clin. Microbiol. Rev. 1998,11, 614-27; Dery, et al., Am. J. Physiol. 1998,274, C1429-52; Kyozuka, et al., Cell Calcium 1998,23, 123-30; Howells, et al. , Br. J. Haematol. 1998,101, 1-9; Hill and Phylip, Adv. Exp. Med. Biol. 1998, 436, 441-4; Kidd, Ann. Rev. Physiol. 1998,60, 533-73; Matsushita, et al. , Curr. Opin. Immunol. 1998,10, 29-35; Pallen and Wren, Mol.Microbiol. 1997,26,209-21 ;DeClerk, etal., Adv. Exp. Med. Biol. 1998,425, 89-97;Thornberry, Br. Med. Bull. 1997,53, 478-90。これら参考文献は特に本願明細書に援用する。
【0041】
元から認識される配列に加えて、組み合わせによって酵素の一つもしくは酵素ファミリーに対して特異性を持つ認識配列を設計することが出来る。ラベルされ、位置により配列を特定できるラベルされたオリゴヌクレオチドのアレイを有しているオリゴペプチドのライブラリーを調製することにより、所定のプロテアーゼをアレイに加え放出されたラベルを検出するだけでよい。オリゴヌクレオチドを表面に結合させそれを蛍光体でラベルしたマイクロウェルプレートを使用することにより、照射による活性化に対する内部反射により開裂を追跡することが出来る。他の多くの試みも同様に利用出来る。合成配列を用いることにより、特定のプロテアーゼに対して開列を最適化できる。タンパク質試薬を複数用いることで、特定の酵素に特有の特徴に関する概略を得られる。
【0042】
検定を実行するために様々な細胞を用いてもよい。細胞の起源は任意でよい。他の原核生物及び真核生物を使用することを見出せるかもしれないが、主として哺乳類であろう。細胞はプライマリー細胞、細胞株、不死化させた細胞、もしくはそれに類するものでもよい。細胞は転写を可能にする転写制御領域と適合化することがある。そして、コンストラクトは宿主細胞に好ましいコドンに修正してもよい。例証する細胞の出所には、霊長類、例えばヒト、チンパンジーなど、齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなどが含まれる。細胞膜タンパク質は宿主の内因性のものでも外因性のものでもよい。ほとんどの間で、内因性のタンパク質の発現に関心を持っているかもしれないし、主題の方法論は、環境変化の結果として細胞膜タンパク質の量が変化する状況に応用出来る。例えば、もし単に環境変化による転写への影響に関して興味を持っているのならば、タンパク質は転写因子の環境変化への影響を研究することにおける重要な要因ではない。むしろタンパク質は転写因子への効果を判断するための代役である。他方、もし配位子の受容体への結合に興味を持っているのならば、タンパク質受容体は通常検定に必須であろう。
【0043】
発現コンストラクトを以下のやり方で図解する。
【0044】
(a) LS-La-IS- (N) RCMP or (b) LS-La-IS- (C) RCMP。ここで N、C はそれぞれN末端、C末端を意味している。
【0045】
ここで、
【0046】
LSはリーダー配列をコードするコドンである。
【0047】
Lはリーダー配列のリーディングフレームの1から70までのコドンのリンカーである。ここで、リンカーは細胞膜タンパク質とは相互作用しないポリペプチドでもよい。細胞膜タンパク質の一部にはプロテアーゼの共通配列を含んでいてもよい。もしくは、その他何らかの機能、例えばエピトープ、を備えていてもよい。
【0048】
aは0もしくは1であり、リンカーが存在しているもしくは存在していないことを示している。
【0049】
ISは挿入配列であり、少なくともシグナル産生配列およびプロテアーゼ共通配列、すなわちSPS-RSを備えている。ここでSPSはシグナル産生配列を意味している。ここでRSはプロテアーゼ認識配列もしくは共通配列を意味しており、RSはRCMPと結合している。及び、
【0050】
RCMPは細胞膜タンパク質の残りの部分を意味しており、その部分としてはISが細胞膜タンパク質のN末端に直接結合するタンパク質全体でもよい、または細胞膜タンパク質の細胞外表面領域もしくは細胞膜タンパク質のループ部部分を挿入してもよい。ここで、リンカーは細胞膜タンパク質の一部分であろう。ある場合では、ISが細胞膜タンパク質のN末端の一部に結合させるよりはむしろISをタンパク質のC末端に結合させたほうが早いかもしれない。ここで、C末端は細胞外表面にある。その場合は、方法は方法(b)の逆であろう。
【0051】
挿入配列は標準的には少なくとも45コドンもしくはアミノ酸、通常少なくとも50コドンもしくはアミノ酸、および250コドンもしくはアミノ酸以下、さらに通常は200コドンもしくはアミノ酸である。RSは一般的に少なくとも2コドンもしくはアミノ酸、通常4コドンもしくはアミノ酸、および36以下、さらに通常は20コドンもしくはアミノ酸以下である。しかしながらエンドプロテイナーゼLys-Cではただ一つのアミノ酸のみが必要であり、ただ一つのリジンのみが必要である。
【0052】
発現コンストラクトは、様々なラボマニュアル及びベクターの製造業者によって記載されているような普通の方法によって生成するが、これは数多くの宿主で有効である。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual, "Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.(herein"Sambrook et al. , 1989")、"DNA Cloning: A Practical Approach, "Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985)、 "Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait ed. 1984)、"Nucleic Acid Hybridization"[B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1985) ] 、"Transcription And Translation" [B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. (1984) ] 、"Animal Cell Culture"、 [R.I. Freshney, ed. (1986) ]、"Immobilized Cells And Enzymes" [IRL Press, (1986) ]、B. Perbal,"A Practical Guide To Molecular Cloning" (1984)、を参照されたい。
【0053】
使用してもよいベクターには、ウイルス、プラスミド、コスミド、ファージミド、YAC、BAC、HACを含んでもよい。ベクターの他の構成要素には、一つ以上の宿主に対する複製起点、抗生物質耐性やシグナルを供給するタンパク質などを含むセレクションのための発現コンストラクト、集約(integaration)配列および集約を提供する酵素、マルチクローニングサイト、発現制御配列、興味を持っているタンパク質の発現コンストラクト、とりわけタンパク質が調製されつつもしくはタンパク質試薬による調整的もしくは異なった発現、ベクターの分離を可能にする配列、が含まれる。利用可能な商業的ベクターはこの能力の多くをもしくは全てを備えている。そしてこれを都合よく利用してもよい。
【0054】
DNAもしくはRNAベクターは、融合タンパク質を発現することが出来る宿主細胞に導入してもよい。宿主は初代培養細胞、細胞株、単細胞微生物、もしくはそれに類するものでよい。その細胞中で分泌可能な型のEAを細胞内に発現させる発現コンストラクトを安定的にもしくは一過的にタンパク質を発現もしくは過剰発現するように細胞を改変してもよいが、このタンパク質は細胞が検定の条件下では通常は発現していない。またノックアウト、転写もしくは翻訳阻害、もしくはそれにそれに類することの結果、細胞が通常発現しているタンパク質が発現しなくなる。
【0055】
融合タンパク質をコードしている遺伝子は、発現コンストラクトの一部であることがある。遺伝子は、宿主細胞内で機能を果たしている転写および翻訳制御領域の下流に位置している。多くの例で制御領域は、EC(発現コンストラクト)を形成するタンパク質をコードする元から存在している制御領域でもよい。ここで、融合タンパク質は元から存在している遺伝子と置き換えてもよい。染色体外要素内もしくは染色体内の遺伝子のサイトは転写のレベルによって変えてもよい。それ故、多くの例で転写開始領域は宿主細胞内で作用するものを選択できる。しかし、内因性の転写制御領域と著しく競合しない、もしくはEC由来の別の遺伝子と相互作用せず、その遺伝子は融合遺伝子の転写を著しく阻害しなければ、ウイルスもしくはその他起源のでもよい。
【0056】
宿主の染色体に組み込んだならば、発現コンストラクトを組み込んだ部位は、転写の効率に影響し、それゆえ融合タンパク質の発現に影響するかもしれないことを理解するべきである。高い転写効率を持った細胞を選択することにより、発現の効率を最適化してもよい。また、発現コンストラクトを増幅もしくは共増幅出来る遺伝子、たとえばメトトレキサート存在下のDHFR、と発現遺伝子を結合することにより発現コンストラクトを修正することが出来る。統合した部位の効率的な転写の提供を実現するために相同組み換えを用いてもよい。ゲノムにCre-Loxのような挿入要素を効率的な転写をしている部分に挿入することにより、同じ部位に発現コンストラクトを導入できる。どのような事象においても、所定の環境中の細胞と評価する環境中の細胞の酵素活性の比較をすることが出来る。
【0057】
ベクターにはプロモーターの転写および翻訳制御下の融合遺伝子を含むことがある。これらは、通常プロモーター/エンハンサー領域、加えて複製できる複製開始領域、選択のためのマーカーであり、制限酵素サイト、PCR開始サイト、EAを安定的にもしくは誘導できるような発現コンストラクト、またそれに類するものを含めることが出来る。以上に記載したとおり、宿主に融合タンパク質を発現するための数多くの異なったアプローチを供給する様々な利用可能なベクターがある。
【0058】
ベクターは簡便で効率的な方法、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション、細胞融合、形質転換、カルシウムで沈殿させたDNAなどにより宿主細胞に導入してもよい。ベクターを宿主に導入する方法は、宿主細胞およびベクターの性質を考慮して効率的で簡便な方法の一つであることがあり、文献にはベクターを宿主細胞に導入する方法およびベクターが導入された宿主細胞を効率的に選択する方法に関する多くの方法が示されている。例えば抗生物質による選択を可能にする発現コンストラクトを用いることにより、ベクターを含む細胞のみが生き残る選択培地で細胞を成長させてもよい。
【0059】
使用する検定方法では、生存能力のあるもしくは生存能力のないインタクトの細胞を使用する。熱、抗生物質、毒素などによって生存を不可能にすることが出来る。細胞がインタクトである間は、これらによって細胞死が誘導される。細胞は、細胞に適した適当な培養用培地で成長し、コンフレントもしくは例えば80%のサブコンフレントになるまで成長させてもよい。必要に応じて、融合タンパク質のコンストラクト及びその他のコンストラクトは、ゲノムに組み込まれて細胞内に存在していてもよい。もしくは様々な方法で細胞にDNAを導入し有効な翻訳をさせるために一時的に加えてもよい。これらの方法は、これまで記載した文献で十分に実証されている。例えば抗生物質耐性、検出可能なシグナルの発生によってコンストラクトを含んでいる細胞を選択するために、タンパク質試薬をマーカーとして使用することにより、培養液中の融合タンパク質を含む細胞は、コンストラクトが入っていない細胞から分離することが出来る。一度融合タンパク質が発現したら、細胞の環境は適切に修正してもよい。
【0060】
検定を実行する際に、候補となる化合物を細胞を含む混合物に加えてもよい。このことは培地中に変化を起こすかもしれない。他の細胞を因子の分泌のために、もしくはトランスフォームした細胞と結合させるために加えてもよいし、ウイルスもしくはこれに類するものを加えてもよい。環境の変化の効果が表れるための十分な時間の後、随意に培養液を吸引し、細胞から融合タンパク質を分離することが可能なプロテアーゼと共にインキュベートしてもよい。それから分離された断片は、EA及び酵素の基質を含む検定用カクテルと共に検定することが出来る。そして、生成物からのシグナルを読み取る。それからこのシグナルと候補の化合物がない場合に生成したシグナルを関連付けることが出来る。他方、近傍に持ってくることにより細胞表面から放出された断片の量を決定することが出来るようにするために、開裂した断片に結合する試薬を加える。この試薬は、例えば酵素もしくは準安定種のチャネリングなどに蛍光共鳴エネルギーを供給する一対の蛍光剤である。
【0061】
プロテアーゼをインキュベートしている間、プロテアーゼの活性に関連するその他の構成要素、例えば望ましいpHにするバッファーがあってもよい。そして、サンプルの混合物は都合よくコントロールされた温度、この温度には室温を含んでもよい、でインキュベートし、この時間は少なくとも1分、通常は少なくとも約5分以上で、約90分以下、通常は約60分以下であり、過度にインキュベーション時間を延ばすことに利点はない。96ウェルプレートで検定を行うときは、存在している細胞数は一般的に103−105であり、細胞培養液の量は一般的に10−100μLの範囲内であろう。
【0062】
もし既に存在するEAが5から50μlの量加えていなければ、混合物は少なくとも約5分で通常は少なくとも約10分、また約60分以下で通常は約45分以下インキュベートする。一般的にEAの量は、少なくともEDが形成されると予想される最も高い濃度以上、通常は過剰に、一般的には10倍量もしくはそれ以上、さらに通常は10倍量以下である。もしまだ存在していない場合、検出可能なシグナルを供給する基質を約5から50μL加え、基質は実質的に過剰量となり検定が開始されるであろう。例証となる基質が多く市販されており、それには、X−Gal、CPRG、4- メチルウンベリフェロニルβ-ガラクトシダーゼ(methylumbelliferonyl β-Galactosidase)などのような色素、蛍光試薬、レソルフィン β-ガラクトシダーゼ、ガラクトン スター(トロピックス、アプライド バイオシステムズ)が含まれる。手順は他の検体についての化学文献もしくは特許文献中のこれまでの手順に従う。米国特許第4708929号および5120653号の解説を参照すること。検定混合物は、特定の時間、例えば1−10分、もしくは特定の間隔で読み取ることが出来る。化学発光による読み取りでは、シグナルは0.1秒から1分の間で統合してもよい。
【0063】
もう一つのシグナル産生ポリペプチドのために、この分野において常套的であり、また引用文献に記載されている適切な試薬を加える。例えば蛍光共鳴エネルギー移動のために、ある波長で発光する粒子と結合している蛍光物質を使用できる。この発光に引き続いて別の蛍光物質がこれを吸収する。エピトープとビオチン擬似物質を組み合わせることにより、ある粒子を抗原と吸収体との両方と共に、またストレプタビジンを蛍光物質と共に使用することになる。酵素のチャネリングのために、ストレプタビジンの結合する二次酵素の基質である生成物を産生する1番目の酵素と同様に、抗体が結合している粒子に結合する2番目の酵素を使用出来る。準安定種の場合、一重項酸素を産生する酵素および発光する一重項酸素と反応する化合物を使用できる。
【0064】
簡便のためにキットは、特にコンストラクトの一時的な発現を提供するベクターとしての遺伝子のコンストラクト、例えば転写および翻訳制御領域の制御下にある融合コンストラクト、もしくはそういったコンストラクトの遺伝子を含む細胞、シグナル産生ペプチドを放出するプロテアーゼ、及び他の試薬、例えば酵素の受容体と基質もしくはシグナルを産生するペプチドを産生するシグナルと相互作用する2つの試薬、を含んで提供される。同様に書面によるもしくは電子的形態の使用書が検定を実行するために提供される。
【0065】
ヒトグルコーストランスポーター GLUT4 に関する多くの実験研究が行われる間、GLUT4は、表面膜タンパク質の量を上向き調整もしくは下向き調整できるような場合、輸送に関して測定可能で同様に実証可能な表面膜タンパク質の典型例である。同様に、エンドサイトーシスによっても表面での量が変化しうる。
【0066】
(実験法)
以下の例は実証を意図しているが、これらに限定しない。
【0067】
(GLUT4-PLコンストラクトのクローニング)
クローニングの方針は、pCMV-PL-NlでCMVプロモーターの制御下にGLUT4-ProLabel融合遺伝子を作成するようにデザインした。ここでpCMV-PL-Nlは市販の利用可能なクローニングベクター (DiscoveRx, Fremont, CA) で、この塩基配列は図1Aに示している。融合遺伝子の両側に位置している唯一の制限酵素サイトであるAgeIとKpnIは、必要に応じてORFの全体を切り取って別のベクターに移すことが出来るように組み込んだ。コザック共通配列は翻訳効率を上げるようにGlut4開始コドンの5’側に接して含まれている。ProLabel (登録商標)(ProLabel は、図1Bに示した塩基配列を持つ大腸菌β-galactosidaseの酵素供与断片の商標である。)は、GLUT4のコドン67に続いて挿入されている。この位置は、この部位への単一(HA myc)及び複数直列(7x myc)でのエピトープタグの挿入に関する文献での成功の報告により選択した(Quon, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994,91, 5587-91; Bogan, et al. , Mol CellBiol., 2001,21, 4785-806; Kanai, et al. , J Biol Chem. , 1993 5,268, 14523-6)。ProLabel の近傍にあるトロンビン開裂部位は、細胞表面に輸送されたGLUT4融合タンパク質を細胞全体からタンパク質分解によって放出するのを可能にする。ProLabel の直後に挿入した単一のリジン残基は、GLUT4の最初の細胞外表面のループのコドン50にもともと存在しているリジン残基と共に、エンドプロテイナーゼ Lys-Cを用いたProLabelのタンパク質分解による放出の2つ目の方法を提供する。
【0068】
このトロンビン-ProLabel-Lys-トロンビンのDNA(ここでトロンビンは開裂共通配列を示している)カセットへ、唯一の制限酵素サイトとしてHindIII(上流側)とEcoRI(下流側)を側面に配する。これにより、他のプロテアーゼ開裂部位の側面に位置するProLabel をコードするカセットと、実質的に簡単な交換が可能になる。開裂可能なProLabelカセットに続いて挿入したHAエピトープタグ (YPYDVPDYA) (配列識別番号 NO: 6)により、通常の免疫学的な技術による融合タンパク質の検出を可能にする。全体として、77コドン(トロンビン-ProLabel-Lys-、トロンビン-HA、合成したクローニングサイトに関連したコドンをコードする)をGLUT4のコドン67と68の間に挿入した。最後に、市販のGLUT4cDNA (NIH MGC clone IMAGE 、ID No. 5187454、Open Biosystems, Huntsville, ALより得た)に存在するGLUT4 ORFの3’領域のイントロン7配列を取り除くように設計した。
【0069】
以上に記載したプラスミドは、GLUT4 cDNAとProLabel の鋳型から作成したPCR primerを用いたPCR増幅によって得たDNA断片を用いてコンストラクトを作成した。全体として、4つのPCR増幅断片を作成しDiscoveRxベクターであるpCMV-PL-Nlにクローニングした。組み換えクローンは、制限酵素マッピング及び挿入配列全体のDNAシークエンスによって分析した。正しいクローンを確認し、pGLUT4-PL. 1プラスミドとして保存した。特徴的なプラスミドの地図及びクローニングに関連する制限酵素サイトを図1Cに示した。注釈をつけた部分と融合したGLUT4-ProLabel遺伝子の翻訳を図2に示した。
【0070】
(GLUT4-PLの発現)
pGLUT4-PL.1 機能の検討はCHO細胞への一時的な遺伝子導入により実施した。これらの検討は:1)ウエスタンブロット法によるタンパク質の検出、2)トロンビンプロテアーゼを使用したインタクト細胞EFC(酵素断片相補性、enzyme fragment complementation)検定のよる開発と特徴付け、及び3)GLUT4- PLがインスリン依存的に細胞表面へ移行することを検出するための検定への適用を含む。
【0071】
pGLUT4-PLを一時的に導入したCHO細胞中にGLUT4-PLが発現していることを確かめるために、ウエスタンブロットによる分析を実施した。予想される融合タンパク質の分子量は63.5kDaである。抗GLUT4ポリクローナル抗体は細胞溶解液全体から33kDaから62kDaを少し超えたあたりまでの範囲のポリペプチドを検出した(図3A及び図3B)。抗体の特異性はEGFPを発現させたコントロールの細胞から調製した溶解液では染まらないことにより実証した。
【0072】
(プロテアーゼ分解後のGLUT4-PLの検出)
細胞表面においてGLUT4-PLを観察するためにEFCを使用する構想の要は、中にあるProLabelのタグがタンパク質の最初の細胞外表面へのループからタンパク質分解により放出されることにある。それ故、当初の研究では、開発と特徴付けにおいてトロンビンプロテアーゼを用いたインタクト細胞EFCの方法に従った。以下に記載した全ての実験は96ウェルのプレートを用いて実施した。トロンビンを処理によってEFCのシグナルを増幅できるかどうか検証するために、pGLUT4-PLを発現させたインタクト細胞を50μlのバッファーのみもしくは濃度を増加させたトロンビンを含むバッファーにより処理した。 引き続き、EAとプロテアーゼ阻害剤AEBSF(終濃度7.5mM)を含む溶液80μlを加え、更に30μlの化学発光法の基質を加えた。トロンビン処理により、EFC活性の量依存的な増幅を生じ、60units/mlの処理により未処理の細胞に対してEFC活性は4.4倍となった(図4)。EFCシグナルの上昇がトロンビンのタンパク質分解活性それ自身によるものなのかどうか、及びトロンビン処方物の非特異的な構成成分が引き起こしたのではないことを検証するために、トロンビンを細胞に加える前にAEBSFでトロンビンを不活性化することによってコントロールの実験を行った。不活性化したトロンビンにはシグナルを増幅する活性がなかった(図4)。
【0073】
最初のインタクト細胞EFCの方法において、活性なトロンビンが例えばEAポリペプチドを非特異的に開裂することによりEAを阻害するかどうか既知でなかったので、プロテアーゼ阻害剤であるAEBSFはEAを加える段階においてトロンビンを不活性化するために用いた。AEBSFがある及びない処方であるEAを比較する実験により、活性なEA及びトロンビンの適合性について検証した。AEBSFを処方している及びしていないEA を比較する実験により、活性なEAとトロンビンの適合性を検討した(図5)。我々はAEBSFを処方していないEA が高いEFC活性を示すことを見出した。このことは、おそらくEAをインキュベートする段階中にタンパク質分解によるProLabel の放出が続いていることを反映している。この活性なトロンビンとEAが両立するという知見は、トロンビンによる開裂とEAを加えるステップを一緒に出来ることを示している。
【0074】
トロンビンがインタクト細胞の方法において細胞の完全な状態に影響を与えないことを証明するために、細胞質中に存在する受容体タンパク質のIKB-PLを発現させたHeLa細胞を検定した。溶解した時、これらの細胞は高いEFCシグナルを示した。CHO/pGLUT4-PL.1細胞及びHeLa/IKB-PL細胞を、トロンビンの濃度を増加させた一連のものと平行して検定を行った(図6)。上記載について観察した結果、CHO/pGLUT4-PL. l 細胞をトロンビン処理すると、EFC活性が量依存的に増加した。その一方で、HeLa/IKB-PL細胞では、そのような上昇は見られなかった。これはトロンビンが細胞の完全性に影響を与えないことを示している。
【0075】
トロンビンによる開裂に伴う細胞表面からのProLabelの放出を生化学的に証明するために、反応生成物を上記のインタクト細胞(上清)と残りの細胞画分(界面活性剤の溶解物として検証した)の2つのフラクションに分離した。CHO/pGLUT4-PL. I 細胞を2枚の6cmディッシュにまいた。検定の当日に培地を取り除き、細胞をPBSで一回洗浄した。1枚のディッシュにはバッファーのみ、もう一枚のディッシュには60units/mlのトロンビンを含むバッファーを加えた。37℃で1.5時間インキュベートした後、細胞上のバッファーを注意深く回収しトロンビンを失活させるためにAEBSFを混合し、低速で2回続けて延伸することにより細胞自体などの汚染物を取り除いた。 ディッシュに付着している細胞をAEBSF を含むPBSにより15分間で1回洗浄した。それからAEBSFを含むチャップス(CHAPS)を基にした溶解バッファーによって溶解した。コントロールとして、1対のプレートにまいたCHO/pEGFP細胞(ProLabel なし)を、CHO 細胞の内在性のβ-ガラクトシダーゼ活性について調べるために同時に処理した。トロンビンで処理したCHO/pGLUT4-PL.l 細胞の上清画分でEFC 活性が著しく上昇していることを我々は見出した(図7A、7B)。この結果は、ProLabel がトロンビンによって細胞表面から放出されることを証明しており、またProラベルの両側にある両方のトロンビン開裂部位が認識され開裂されることを意味している。界面活性剤の溶解物として細胞の画分を検討したところ、トロンビンで処理したCHO/pGLUT4-PL.l サンプル中に残っているEFC活性は未処理の細胞と比較してわずかに減少しているのみであることを我々は見出した(図7A及び7B)。このように減少がわずかであることは、通常の成育条件下では少量のGLUT4-PL画分のみしか細胞膜へ移行していないことを反映しているのかもしれない。
【0076】
(GLUT4-PLの局在へのインスリンの効果)
上記の実験は、通常の成育条件下でのGLUT4-PLの細胞表面での検出のための方法を開発及び特徴付けするために役立った。我々は次に外因的にインスリンを加えることにより細胞表面に存在するGLUT4-PL画分が増加するかどうかについて検討した。インスリンはGLUT4を細胞内区画から細胞表面への移行を促進することが知られている(総説としてBryant, et al. , Nature Reviews 2002,3, 267-77を参照されたい)。この実験において、CHO/pGLUT4-PL.1 細胞を0、0.1、1及び10μMのインスリンを含む培地で30分処理した。それから細胞上の液体を20units/mlのトロンビンを含むバッファーと交換しインタクト細胞のEFC検定の処理をした。1及び10μMのインスリンで処理した2組のサンプルはインスリンで刺激しなかったサンプルと比較して、それぞれ15%及び40%の上昇を示した。インスリン依存的な上昇はトロンビンで処理したサンプルのみに観察された:平行して処理したトロンビンで処理しなかった2組のサンプルはそのような上昇は示さなかった(図8Aおよび8B)。バックグラウンドとしてトロンビンとインスリン依存的なシグナルを差し引くことにより、インスリンに対する反応の増加を示している(図9A及び9B)。
【0077】
模範となる方法は、CHO細胞と96ウェルのアッセイ用プレートに対して以下のように確立した:
【0078】
1)それぞれのウェルに100μlの培養液中10000個の細胞密度でまく。一時的な遺伝子移入のために、遺伝移入後のある日に細胞上の培養液を新鮮な培養液と交換する。細胞をまいてから2日後にインタクト細胞のEFC検定を実行する。通常の成育条件下でのGLUT4-PLの細胞表面での検定を実行するには(外因性インスリンを含まない血清入り培養液)、ステップ3に進む。
【0079】
2)インスリンによる誘導のために、培養液で系の濃度の6倍に希釈したインスリンを20μl/wellで加える(例えば、6μMのインスリン20μlを100μlの細胞上の液体に加えると、系のインスリン濃度は1μMとなる)。30分間プレートをインキュベーターに戻す。血清不含培地でインスリンを希釈する2から4時間前に細胞を血清飢餓状態にすると、より大きなインスリンに対する反応性を実現するかもしれない。
【0080】
3)細胞上の培養液を吸引によって取り除く。50μl/wellでトロンビン溶液を加える(20units/mlのトロンビン;1XPBS;0.1mg/mlのBSA;それぞれ10mMのフッ化カリウムとアジ化ナトリウム。一時間プレートをインキュベーターの戻す。インキュベーションの時間を最大1.5時間に延ばすことによりシグナルが増加するかもしれない。
【0081】
4)80μl/wellでEA溶液(EA試薬(ディスカバレックス社、フレモント、カルフォルニア(DiscoveRx, Corp.. Fremont, CA))の一部分と、1X PBS;1.83 mM の硫酸マグネシウム ; それぞれ10 mMのフッ化カリウムとアジ化ナトリウムの3つを混合することによって調製する)。プレートを穏やかに叩き試薬を混合する。プレートを1時間インキュベーターに戻す。
【0082】
5)30μl/wellでCL試薬を加える。プレートを穏やかに叩き試薬を混合する。遮光して室温でインキュベートする。15分から1時間の一定間隔で化学発光用プレートリーダーを用いて読み取りを行う。
【0083】
上記結果と記述によってわかるように、主題の方法は従来からある試薬及び表面のタンパク質の量を測定するためのリーダーを使用した、単純な検定を提供する。野生型のタンパク質及び融合タンパク質の両方を同時に発現させたときには、必要であれば免疫学的検定を用いて、融合タンパク質に関して得られた値と全細胞膜タンパク質との間の相関関係を提供出来る。必要に応じて免疫学的検定も使用できる。一度この関連性が立証されれば、融合タンパク質と免疫学的検定の値から得たグラフを用いることによって細胞膜タンパク質の全量を速やかに測定することが出来る。
【0084】
目的の方法は細胞膜タンパク質の量を測定するための迅速で単純な研究方法を提供し、この方法は一回のみでの判定もしくはハイスループットスクリーニングに使用出来る。高い回転率と測定可能な蛍光もしくは化学発光生成物を有する酵素の使用により得られる増幅によって、直ちに誤差の小さい正確な結果を割り出すことが出来る。
【0085】
本文中で言及した全ての参考文献は、ここに陳述した参考文献として本願に引用として援用する。この文書を想起させる関連のある部分は、当業者にとって明白であろう。本願書とそうした参考文献の間の不一致は、本願書に陳述した見解を支持することにより解決するであろう。
【0086】
本発明は上記実施例が参考文献に記載されてきているが、改良物と変形物は当発明の考え方の範囲内に包含されていると理解されるであろう。したがって本発明は以下の請求項によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】図1AはDiscoveRxのクローニングベクターである pCMV-PL-N1 (配列識別番号: NO. 1) の塩基配列を示している。
【図1B】図1BはProLabel(配列識別番号: NO. 2)をコードする塩基配列を示している。
【図1C】図1CはpGLUT4-PL. 1のクローニングに関する特徴及び制限酵素サイトに関するプラスミドの地図である。
【図2】図2はpGLUT4- PL.1 (配列識別番号: NO. 3)のプラスミド中に融合しているGLUT4-ProLabel遺伝子の翻訳物である。
【図3A】図3AはCHO細胞中のGLUT4-PLのウエスタンブロットによる検出結果である。
【図3B】図3Bは同量のサンプル量をロードしたことのコントロールとして抗アクチン抗体をプローブとして別に調製したブロット結果である。
【図4】図4はインタクトのCHO/pGLUT4-PL.1 細胞のEFC活性(黒四角)がトロンビン処理の量に依存して増加することを示しているグラフである。AEBSFでトロンビンを不活性化するとこの効果を完全に阻害する(△)。
【図5】図5は活性なトロンビンプロテアーゼがEA及びEFCと両立することを示すグラフである。この検定の最初の段階では、インタクトの細胞はバッファーのみもしくはトロンビンの量を増加させつつ加えたバッファーによって処理した。二番目の段階では、サンプルの半分についてEAのみ(●)及びもう半分にはトロンビン(下向き黒三角)を失活させるためにAEBSFを加えたEAによって処理した。
【図6】図6はトロンビンによる処理がインタクトの細胞に対して細胞の完全性に影響を与えないことを示すグラフである。GLUT4-PL(黒四角)を発現している細胞を、細胞質に発現するレポータータンパク質であるIkB-PL(下向き黒三角)を発現している細胞をコントロールとして同時に検定した。IkB-PLを発現している細胞の溶解物は、EFC活性の著しい増加を示した(データは示していない)。
【図7A】図7Aは、上清から分離したインタクトの細胞の反応生成物について示している。
【図7B】図7Bは、細胞画分から分離したインタクトの細胞の反応生成物について示している。これは、界面活性剤を含む溶解液として調製し、その後EFC活性の測定を行った。
【図8A】図8AはGLUT4-PLがインスリン依存的に細胞表面へ移行することを示す棒グラフである。CHO/pGLUT4-PL.1細胞は、血清入り培地のみもしくはこれに表示濃度のインスリンを含む培地で30分間処理した。細胞はその後トロンビンを用いたインタクトの細胞のEFC検定を行った。
【図8B】図8Bでは、図8Aのサンプルと同時にトロンビンなしのサンプルについて検定した。トロンビンに依存しないシグナルは同様にインスリンにも依存しなかった。
【図9A】図9Aはインスリンの増加への反応により明らかになったデータからバックグラウンドを差し引いたデータの棒グラフである。
【図9B】図9Bはトロンビン及びインスリンに依存しないシグナル(図8Bのデータを平均した)をバックグラウンドとしてトロンビンで処理したサンプルより得たデータから差し引いたシグナルについて示している。はバーの上の数はインスリンを含まないコントロールに関するシグナルの増加した割合(%)について示している。
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、概ね膜表面タンパク質の量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は、他の方法の中、細胞外の環境に伸びている細胞膜のタンパク質を介して周囲の環境と情報伝達している。これらの膜タンパク質は、しばしば配位子に対して106M-1の親和力で特異的に結合する空孔もしくは表面を持つ。配位子の結合する膜タンパク質は通常は受容体と言われているが、結果として細胞内へのシグナル伝達を生じる受容体の立体構造変化を引き起こす。このシグナルは、酵素活性の活性化ならびに受容体と複合体を形成しているタンパク質の放出ならびにそれに類することの原因となる、タンパク質への結合を引き起こすかもしれない。その後、通常受容体と配位子複合体のエキソサイトーシスによって配位子と受容体は分離する。しばしば配位子はリソソームで分解されるタンパク質であり、その後遊離した受容体は細胞膜に戻る。
【0003】
細胞膜タンパク質の量は、細胞環境ならびに細胞生理の数多くの変化の影響を受ける。細胞の役割ならびに存在する薬物、他に影響を与える作用物質と関連している、又は刺激もしくは不活化における事象は、しばしば細胞表面膜タンパク質量の増加もしくは減少を引き起こす。このように下向きもしくは上向き調節、別の区画への輸送などのすべてが表面のタンパク質の量の変化を引き起こす。このような量は、細胞の活性に影響を与える細胞内で生じる様々な事象に対する監視装置としての役割を果たすことが出来る。
【0004】
治療上の多くの試みには天然の配位子が結合する場所へ化合物が結合することが含まれており、この場合化合物はアゴニストもしくはアンタゴニストの一部として働くかもしれない。配位子の影響により、結合部位を満たして配位子の結合を妨げるもしくはエンドサイトーシスを引き起こし、表面の受容体の量を減少させるようにシグナルを変換するかもしれない。
【0005】
治療行為は、しばしば細胞の受容体の量もしくは有効性を減少させるもしくは増加させることを対象にしている。CD34のHIVへの結合は、感染性の疾病において有害である多くの細胞膜タンパク質の一例に過ぎない。それ故、細胞表面タンパク質の量、並びに環境の変化の影響もしくはタンパク質がそうした量である場合の細胞状態への影響に多くの関心がある。
【0006】
膜表面のタンパク質、とりわけ受容体の量を決定する方法は、ハイスループットスクリーニングに使用できるのと同様に、1回で判定出来るようにするべきである。今日、製薬会社では仕事の中で多量のスクリーニングをする必要がある。それ故、生体内(in vivo)で化合物のスクリーニングする前に測定することの数は天文学的な数に上っている。ロボット工学ならびに洗練されたソフトウエアを使用することにより、数多くの検定を実行することができ、構造や活性の情報をもたらす結果は表にされる。
【0007】
多くの測定をするので、試薬のコストは、特定のプロトコールを実行する上で考慮される。使用される方法は、膜タンパク質の量のわずかな変化に敏感であろうし、表面におけるそれぞれの分子のシグナル増幅に対して適用できるべきである。それに加えて、この検定はしっかりしていて、望ましくは実験室において普通のまた手軽な材料を使用し、必要な操作のステップが最少で手軽に自動化できるような簡単な方法であるべきである。
【0008】
従って、ハイスループットスクリーニングと同様に1回テストすることにより、数多くの目的物を検定できる方法を開発することに関心がある。
【0009】
(関連文献)
アッセイ系においてβ断片を使用することに関する文献が多数ある。以下がその実例である。非特許文献1はATP-2とlac Zの融合タンパク質について記載している。特許文献1は、プロテイナーゼを測定するためのβ−ガラクトシダーゼのα-相補性を用いた融合タンパク質について記述している。特許文献2は、融合タンパク質としてβ−ガラクトシダーゼのα-ペプチドを使用して立体構造の相補性を評価した、タンパク質の巻き戻し及び/もしくは溶解性について記載している。特許文献3は融合タンパク質の安定性へのβ−ガラクトシダーゼの酵素供与側を含む融合タンパク質の、タンパク質の巻き戻し及び溶解性を測定するための効果について記載している。非特許文献2は融合タンパク質の安定性におけるβ−ガラクトシダーゼのα断片の効果について記載している。非特許文献3は、酵母の分子シャペロンであるヒートショックタンパク質の生体内(in vivo)におけるモデル基質としての、α相補的なβ−ガラクトシダーゼについて記載している。非特許文献4は、ヒトインスリンのp鎖ペプチドを含む融合タンパク質に対する、β−ガラクトシダーゼのα-相補性についての定量的な検定について記載している。非特許文献5は変異率を測定するためのプラスミドを含むEDについて記載している。
【0010】
【特許文献1】国際特許第W092/03559号
【特許文献2】国際特許第WO01/0214号
【特許文献3】国際特許第WO01/60840号
【非特許文献1】Douglas, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1984,81 : 3983-7
【非特許文献2】Homma, et al. , Biochem. Biophys. Res. Commun. , 1995,215, 452-8
【非特許文献3】Abbas-Terki, et al. , Eur. J. Biochem. 1999,266, 517-23
【非特許文献4】Miller, etal., Gene, 1984,29, 247-50
【非特許文献5】Thomas and Kunkel, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1993,90, 7744-8
【発明の開示】
【0011】
(発明の要旨)
細胞膜のタンパク質、通常は受容体、の量を決定することを可能にする方法と組成物を提供する。この方法は、タンパク質分解を受けやすい配列を介してシグナル産生ポリペプチドと融合した細胞膜タンパク質を含む融合タンパク質を発現することが遺伝子的に可能である、形質転換した生細胞を利用することを備える。通常このシグナル産生ペプチドは、特定のタンパク質分解を受けやすい配列及び細胞表面にあると実質的にシグナルの生産を阻害する特定の配列を開裂するプロテアーゼを介して膜表面から遊離させた後検出する。この発現コンストラクトは、自然に生じる転写制御領域もしくは測定の目的によっては別の領域を使用できる。細胞の環境を変えた後、シグナル産生ペプチドを測定することにより膜タンパク質の量を決定できる。同様に、細胞を溶解することによりエンドサイトーシスされた細胞膜タンパク質の量を測定することも出来る。特定の興味のために、活性のある酵素を形成するための2つ目の断片が複合体となることを阻害する酵素断片、例えばβ−ガラクトシダーゼの断片、をシグナル産生ポリペプチドとして使用する。
【0012】
(発明の詳細な記載)
細胞膜でのタンパク質の量を決定する方法は、細胞膜融合タンパク質を発現する遺伝子上の能力を持つ生細胞を使用することにより提供される。この方法はシグナルの産生に関係した構成要素からの分離ステップを必要としないという意味では同質であろう。使用する細胞は遺伝子的に修飾されており、シグナル産生ペプチドと融合した細胞膜タンパク質を含む融合タンパク質を発現出来る。このシグナル産生ペプチドは細胞表面から放出されるために少なくとも一つ以上のプロテアーゼの共通配列を介して細胞膜タンパク質と連結している。細胞の表面から切り離されるシグナル産生ペプチドを測定する。通常、シグナル産生ペプチドから細胞膜までが近いと、シグナル産生ペプチドが相補的な構成物に結合することによりシグナルを産生する能力が実質的に減少する。シグナルの実質的な増加は、シグナル産生ペプチドが細胞膜タンパク質から遊離し、この遊離シグナルが産生したペプチドの相補的な構成物にうまく結合できた時に観察される。それゆえ、遊離したシグナル産生ペプチドは、シグナル産生ペプチドが表面に結合したままの状態で、細胞膜表面に存在する融合タンパク質の量の尺度として測定できる。
【0013】
発現コンストラクトは、転写制御配列及び以下でタンパク質試薬として言及した融合コンストラクトを供給することがある。融合コンストラクトは、通常転写制御配列による転写制御下に置かれるであろう。転写制御配列はしばしばTATAボックス及びCAATボックスを含むプロモーターを持つことがあり、これはよくエンハンサーを含み、構成的又は誘導可能であるかもしれない。この制御領域は内在性の制御領域であり、環境変化が転写に及ぼす影響に興味を持っている時はとりわけ天然の制御領域であって、あるいは、エンドサイトーシス及び/又は発現の上向き調節もしくは下向き調節及び/又は細胞の区画への輸送の後に、環境変化がエンドサイトーシス及び/又は膜の回復に及ぼす影響に興味を持っている時にはとりわけ外因性の制御領域であるかもしれない。多くの市販されている制御領域があり、それには強い及び弱い制御領域、ハウスキーピングタンパク質と相互作用する制御領域、ウイルスタンパク質、例えば温度感受性制御領域のような変異を持った制御領域を含む。
【0014】
5’から開始コドンまでの配列は、発現の増幅に関連した配列を含んでもよい。このような配列は、コザック配列、5’−A/GCCACCATGG−3’(配列識別番号 NO: 4)を含む。下線を付したヌクレオチドは開始コドンを明示している。
【0015】
挿入コンストラクトは、膜タンパク質をコードしている配列に挿入されているか、もしくは融合するもしくは膜タンパク質コード配列の5’もしくは3’末端の近傍及び/もしくはリンカー配列で結合するかどうかにより、多くの形態を取ることが出来る。挿入コンストラクトの主要な要素は、例えば、細胞膜へ発現産物の輸送を司るリーダー配列、細胞膜で細胞膜タンパク質の存在を検出するためのシグナルを提供するシグナル産生配列、細胞膜タンパク質からシグナル産生配列を遊離するためプロテアーゼによって開裂されるプロテアーゼ共通配列、及び細胞膜タンパク質もしくはその代わりの断片、をコードしているものを含む。その他のコードしてもよいものとして、リンカー配列、抗原配列、付加的なプロテアーゼ認識配列などの配列を含めてもよい。
【0016】
融合コンストラクトの挿入配列には、通常、細胞膜表面への転移をコードするものがあることがある。一般にこれは細胞膜に融合タンパク質を輸送するためのリーダー配列をコードしている核酸の5’末端側の配列である。様々なリーダー配列が利用可能であり、選択するリーダー配列は細胞膜タンパク質もしくは様々な内因性もしくは外因性のタンパク質のリーダー配列でもよいが、通常内因性のタンパク質である。リーダー配列は通常末端に極性を備えていて、通常これは脂肪親和性の鎖と連結している陰イオン性のアミノ酸であり、リーダー配列は約20±2個のアミノ酸であろう。それに加えて、少なくとも一つの膜貫通配列があることがある。そして、そこには複数個の膜貫通配列があり、タンパク質はその部分に一つもしくはそれ以上の細胞外に突き出たループを持っていてもよい。
【0017】
随意的に、以下ではリーダー配列がリンカー配列であることがある。リンカー配列は1から90、通常70以上、のコドンを持っていてもよい。ポリペプチドのリンカー配列は多くの働きが出来、それには核酸によりコードされた融合タンパク質の会合を補助すること、5’―3’方向に続く酵素供与配列を開裂したときに安定化を提供すること、融合コンストラクトを更に同定するためのエピトープを提供すること、及びこれに類することが含まれる。リンカー配列は、細胞膜タンパク質の最初の細胞外表面の配列の一部でもよい。そこでリンカー配列は、環境の変化への反応を妨げることなく挿入する、もしくは直接もしくは2つの膜貫通配列にアミノ酸との連結を介して連結している細胞外表面のループ内にあってもよい。加えて、リンカー配列はシグナル産生ペプチドからリンカー配列をすべてもしくは部分的に切り離すためのプロテアーゼ共通配列を備えていてもよい。リンカー配列及びプロテアーゼ共通配列の5’末端では、共通配列はシグナル産生配列に隣接している、もしくはシグナル産生ペプチドから約40アミノ酸以下でもよく、通常は30アミノ酸以下でもよい。
【0018】
シグナル産生ペプチドと細胞膜タンパク質残基の間には、プロテアーゼ共通配列があり、プロテアーゼ存在下でシグナル産生配列は細胞膜タンパク質から切り離され、培養液中に放出される。細胞膜は巨大な立体障害物であるので、細胞表面から放出されることはシグナル産生ペプチドとシグナルを産生する系の相補的なメンバーとの間の複合化を著しく促進する。
【0019】
挿入コンストラクトの必須構成要素は、細胞膜タンパク質にシグナル産生ペプチドで連結している、シグナル産生ペプチド及びプロテアーゼ共通配列である。以上に示したとおり、その他にできることとして挿入配列を形成することがあるかもしれない。挿入配列は細胞膜タンパク質のN末端でよく、もしくは培地に突き出たN-もしくはC-末端ドメインの細胞外表面ドメインもしくは膜表面タンパク質のいくつかのループに挿入してもよい。
【0020】
好ましい態様において、シグナル産生ペプチドは酵素の供与基として言及されることがある。シグナル産生ペプチドは、酵素供与体(the enzyme donor,”ED”)と酵素受容体(the enzyme acceptor”EA”)の二つの断片がそれぞれ複合体を作るとき再構成される、酵素の一対の断片の片側である。EDは酵素断片であり、もう一方の断片、EA、と相補性を持っており活性な酵素を形成出来る。ここに2つの異なる状況がある。最初の状況では、 付属的な結合がなくてもEDとEAは複合体となり活性な酵素を形成する。EDとEAはそれぞれ実質的に不活性であるが、それぞれが独力で結合したとき活性な酵素となる。もう一つの状況では、酵素の断片は独力で複合体を作る補助的なポリペプチドと結合し、補助的なポリペプチドと複合体となったとき、酵素断片は活性な酵素を形成する複合体となる。最初の状況のように酵素の断片はそれぞれ実質的に不活性であるが、最初の場合と異なり2つの酵素断片は補助的なポリペプチドがない場合に一緒にされても、活性な酵素を形成する複合体を形成しない。
【0021】
ED及びEA及びEDとEAの断片によって形成される指標酵素は多くの特性を有することが要求される。最初に断片は実質的に不活性であるべきであり、もしあったとしても、基質存在の下ただ一つの断片のバックグラウンドであるほど小さいべきである。2番目に断片はそれぞれ十分な親和性を持っており、よってタンパク質試薬で切断すると、放出されたEDはEAと結合し活性な酵素となる。タンパク質試薬のED断片はEA断片と複合体を形成し、それは酵素断片の互いに対する親和性の結果であるか、あるいは、補助的な結合物質と融合した結果であり、それぞれの酵素断片を寄せ集めて活性な酵素にする。つまり、前者の例では酵素断片は補助的な結合物質なしに複合体の形成が可能であり、断片を寄せ集めて複合体を形成する。後者の例では酵素の断片は独立して複合体を形成しないが、補助的な蛋白質が複合体を形成するとき、酵素断片は活性な酵素を形成することが出来る。
【0022】
これらの基準を満たす様々な指標酵素が知られている。また既知の技術によってその他の酵素も開発されていくかもしれない。これらの基準に適合する指標酵素は、β-ガラクトシダーゼ(米国特許第4708929号明細書参照)、リボヌクレアーゼA(米国特許第4378428号明細書参照)、これらのより小さい方の断片はアミノ末端もしくはカルボキシル末端もしくは内部から由来でもよく、β-ラクタマーゼ(国際特許第0071702号、国際特許第0194617号、Wehrman, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. 2002,99, 3469-74)もしくはアデノウイルス プロテアーゼのような小ペプチドの補因子(米国特許第5935840号明細書参照)を含む。他の指標酵素が前記載の指標酵素に代わって役目を果たすことが出来るか確認するために、酵素の遺伝子を非対称に開裂し小断片と大断片を明確にし、同じ細胞ならびに異なった細胞に発現させてもよい。基質存在の下、両方の断片を生成する細胞は、個々の断片により基質反応を触媒するのであれば、もしあったとしても弱い代謝回転であるかもしれない。他方、断片を個々に発現させて、もし反応が起こらないのならば、酵素―触媒反応が起こるかどうか確かめるため混合液を混ぜ合わせてもよい。
【0023】
当該指標酵素は、300kDa以下一般的には150kDa以下のサブユニットを持つ。独力で複合体を作る小断片は15kDa以下、さらに通常は10kDa、しばしば125アミノ酸以下で、一般的には100アミノ酸以下、好ましくは75アミノ酸以下である。酵素次第で、独力で複合体となるEDは、10アミノ酸、通常少なくとも25アミノ酸、さらに通常は少なくとも35アミノ酸である。この基準に注意すれば、スクリーニングする断片は適当な大きさの小断片を供給するために選択できる。
【0024】
融合する補助タンパク質と共に複合体となる断片を持つ酵素は、通常酵素のアミノ酸の20−80%、さらに通常は25−75%を持っていることがある。断片は、複合体の間断片間の親和性を高めるために、1−20アミノ酸、通常2−10アミノ酸を付加して修飾してもよい。活性な酵素となる低親和性の複合体を供給する酵素は、模範的にはβ−ガラクトシダーゼ、β-グルクルコニダーゼ、ブドウ球菌のヌクレアーゼ、およびβ−ラクタマーゼを含む。結合タンパク質は、せいぜい8アミノ酸、さらに通常は少なくとも10アミノ酸を持ち、150kDa、通常は100kDa以下である。結合タンパク質は、ホモダイマー、ヘテロダイマー、抗原および免疫グロブリン、もしくは例えばFab、配位子、受容体などの断片を含むかもしれない。ある場合では、錯化は付加的な試薬を必要とするかもしれない。そのため、活性な酵素の形成との錯化は、付加的な試薬例えばFK1012およびラパマイシンが存在していない場合、有意の程度で起こらないかもしれない。
【0025】
どの指標酵素にも適切な基質がある。β-ガラクトシダーゼにはβ-ガラクトシルエーテルを使用するが、これはアグリコンとしてマスクされた蛍光試薬もしくは化学発光試薬を有しており、グリコシドのエーテルの加水分解によりマスクが解かれる。リボヌクレアーゼA、蛍光ラベルされたヌクレオチドであって一例としてはウリジン3’-(4- メチルウンベリフェロン-7-イル) リン酸アンモニウム(uridine 3'- (4- methylumbelliferon-7-yl) ammonium phosphate)、アデノウイルス プロテイナーゼ、- (L, I, M) -X- G-G/X-もしくは- (L, I, M) -X-G-X/G- (配列識別番号 NO: 5)であって縦線は開裂位置を示し;P3(X)位置は開裂に重要でないことが明らかとなっている。(Anderson, C. W. , Virology, 177 ; 259 (1990); Webster, et al. , J. Gen. Virol., 70 ; 3225 (1989))及びペプチド基質は検出可能なシグナル、例えば蛍光剤と開裂部位の反対側に消光剤を有することで蛍光共鳴エネルギーの移動を用いる、を供給するよう設計できる。β-グルクロニダーゼの基質は5-Br-4-CI-3インドルイル β-D-グルクロニダーゼ(5-Br-4-CI-3-indolyl β-D-glucuronidase)が典型例である。
【0026】
β-ガラクトシダーゼは本発明で使用されたペプチドの典型例であり、活性な酵素を形成するために非共有結合で結合して複合体となる時、2つのペプチドを持つという基準を実証している。また、異なった酵素が個別に考慮しなければならない場合を除いてこの酵素は今後この分類を解説するためにしばしば引用されるであろう。β-ガラクトシダーゼのEDは特許文献において幅広く記載されている。(特許文献米国特許第4,378, 428号、米国特許第4,708, 929号、米国特許第5,037, 735号、米国特許第5,106, 950号、米国特許第5,362, 625号、米国特許第5,464, 747号、米国特許第5, 604, 091号、米国特許第5,643, 734号、国際特許第96/19732号、国際特許第098/06648号)は、酵素断片の相補性を利用した検定について記載している。β-ガラクトシダーゼの EDは一般的に少なくとも約35アミノ酸であり、通常少なくとも約37アミノ酸、しばしば少なくとも約40アミノ酸、及び通常100アミノ酸は超えない、さらに通常は75アミノ酸を超えない。この上限は、EDの判定の効果と目的における、EDの大きさ並びに断片及び複合体及びそれに類するものの活性の効果によって規定されている。
【0027】
シグナル産生ペプチドとしてEDを用いる代わりに、2ヶ所の結合部位の両方が塞がっているときシグナルを産生する2つの結合部位を持ったオリゴペプチドを用いてもよい。2ヶ所の結合部位の働きは、シグナル産生ペプチドに細胞膜表面が存在することによって阻害される。そのため、細胞膜から放出されるとシグナルの実質的な増加が観察される。2つの結合部位は、ビオチン様の物質、ポリヒスチジン、ヒスチジン/システイン複合体となった結合体、配位子、抗原、もしくは約5kDaより大きく通常10kDaより小さい相補的な結合相手を持っている約5kDaより小さいオリゴペプチドの様な都合のよいペプチドの部位でよい。2つの結合部位はリンカーによって分離されるであろうから、それらの相補的な結合相手との個々の結合は可能であろうし、結合相手との間の相互作用も可能である。それゆえ、結合部位は少なくとも約5アミノ酸、通常は少なくとも約10アミノ酸、及び50アミノ酸以下、通常約30アミノ酸以下であるアミノ酸によって分離されている。
【0028】
相補的な結合メンバーは、ビオチン、ストレプトアビジン、キレートできるオリゴヌクレオチドとニッケル誘導体、配位子と受容体、抗原と免疫グロブリンと例えばFab、Fvなどの断片、の結合対でもよい。これらはそれぞれ、様々な理由で複合体を形成し、診断の判定に関連している及び関連していないものの両方であることであることが、文献において広く例証されてきている。(米国特許第5, 260,203号、米国特許第6,312, 699号、Gissel, et al. , 1995 J Pept Sci 1,212-26、Suigara, et al. , 1998 FEBS Lett 426,140-4、Honey, et al. , 2001 Nucl. Acids. Res 29, E24)を参照すること。
【0029】
類似した二つの異なった構成要素を持つシグナルを産生することによる、数多くの検定がある。これらには吸光およびエネルギー移動体およびエネルギー受容および光放射もしくは蛍光体を包含している(FRETと呼ばれる);一方の生成物がもう一方の基質であり、最終生成物は蛍光物質もしくは化学発光物質である;検出可能なシグナルを産生するために反応する準安定種の移動。例として、米国特許第4,663, 278号、米国特許第4,822, 733号、米国特許第5,811, 311号、米国特許第5,830, 769号、米国特許第6,406, 913号を参照されたい。
【0030】
蛍光体、酵素などのようなシグナル産生体は、ラテックス粒子、金コロイド、炭素などの粒子と結びつくかもしれない。かさが大きくなることでシグナル産生構成要素が細胞膜表面に結合することはさらに妨げられるであろう。この方法によって、バックグラウンドを低くできる。構成要素の両方が放出されたシグナル産生ペプチドに結合しなければならないということに関して検討材料があるであろう。しかしこれは、シグナル産生ペプチドの結合構成要素間の適切な空間で一つの粒子を用いることによりすぐに実現することが出来る。
【0031】
細胞膜タンパク質は、細胞膜タンパク質の量が科学的もしくは治療上の興味を持たれているタンパク質であるかもしれない。このような、関心の持たれているタンパク質には、受容体、チャネル、輸送体、接着タンパク質、細胞間相互作用に関するタンパク質、病原菌の結合に関するタンパク質、MHCタンパク質、漏出に関連したタンパク質などが含まれる。タンパク質は、膜貫通配列もしくは例えばミリストイル、グリセロールで置換された脂肪酸、ファルネシルなどを介して膜に結合するかもしれない。これらの翻訳後修飾プロセシングをコードする配列はよく知られており、数多くの文書や記事に記載されている。例えば、Reuther, et al. , 2000 Meth Enzymol 327,331-50 ; van't Hoff and Rich, 2000 ibid 327,317-330 ; and Hofemeister, et al. 2000 Mol Cell Biol 11,3233-46を参照されたい。
【0032】
細胞膜タンパク質もくしはそれらの切断されたもしくは修飾された類似体は、膜貫通配列もしくは細胞膜表面へのタンパク質の脂質のアンカーによる細胞膜への単一接点を持っているかもしれない。いくつかの細胞膜タンパク質では、膜貫通配列の多数のコードがあるので、タンパク質には複数回膜を貫通しているかもしれない。 ある判断によっては、細胞膜タンパク質全体、タンパク質のN-末端部分、野生型タンパク質、もしくは変異型タンパク質を有することに関心が持たれるかもしれない。
【0033】
関心が持たれている特定のタンパク質もしくはタンパク質の群には、グルコーストランスポーター、GPCRタンパク質、接着タンパク質、例えばインスリン受容体のようなホルモン結合タンパク質を含む。
【0034】
使用するプロテアーゼは任意に選択することができる。プロテアーゼは、その開裂部位が完全に選択的であるべきであり、すなわち共通配列として比較的まれな配列であり、好ましくは認識配列以外で細胞膜タンパク質を開裂せず、高い回転率を持っており、細胞膜の存在によって阻害されず、頑丈ですぐに利用可能であることである。同様に、内因性の酵素が使えるかもしれないので、細胞によってある酵素は分泌されるかもしれないし、されないかもしれない。
【0035】
当該酵素は、セリン/トレオニン加水分解酵素、システイン加水分解酵素、メタロプロテアーゼ、BACEs(例えば、α-、β-、γ-セクレターゼ)を含む。これらの分類に含まれるものは、カスパーゼ、それぞれのMMP、エラスターゼ、コラゲナーゼ、ACEs、カルボキシペプチダーゼ、血液凝固関連酵素、相補的な構成成分、カテプシン、ジペプチジルペプチダーゼ、グランザイムなどである。他の酵素の群については、A J バーネット(Barnet), N D ロウランド(Rowland), and J F ウォースナー(Woessner)編のタンパク質分解酵素ハンドブックを見ること。その他の酵素の型として、アブザイムを含む。
【0036】
特定のセリンプロテアーゼには、肺気腫に関与する好中球エラスターゼ、白血球エラスターゼ、チロシンカルボキシペプチダーゼ、リソソームカルボキシペプチダーゼC、トロンビン、プラスミン、ジぺプチジルペプチダーゼIVに関与するカルボキシペプチダーゼA,B,メタロプロテイナ−ゼ、高血圧に関与するアンジオテンシン変換酵素、例えばリウマチ様関節炎のような炎症性疾患に関与するストロメライシン、カテプシンD、HIVプロテアーゼ、リソソーマルカルボキシペプチダーゼを含むシステインプロテアーゼ、細胞増殖性疾患に関与するカテプシン B、脳卒中の間に脳の細胞破壊に関与するカテプシン G、カテプシン L、カルパイン、などを含む。
【0037】
プロテアーゼは、様々な過程が関与しているいくつかの便利な起源からもたらされ、その過程には、感染性の物質、ウイルス、バクテリア、カビ、及び原生生物などの感染ならびに複製の過程;食作用、繊維素溶解、血液凝固カスケード、補体カスケード、カスパーゼカスケード、タンパク質前駆体の活性化、例えばユビキチン化されたタンパク質のタンパク質分解、アポトーシスなど、細胞増殖、接着、シナプス過程などがある。プロテアーゼは、検定の性質によって、原核生物、真核生物、もしくはウイルスなど様々な起源に由来するものでもよい。
【0038】
すでに指摘したとおり、プロテアーゼが自然に生成している生物は多様である。ウイルスの中では、プロテアーゼはHIV-1、2、アデノウイルス、A型、B型、C型、D型、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、例えばサイトメガロウイルスのようなヘルペスウイルス、ピコルナウイルスなどに由来するものかもしれない。単核の微生物の中では、リステリア菌、クロストリジウム、エシュリキア、ミクロコッカス、クラミジア、ストレプトコッカス、シュードモナス、などである。もちろん、数多くの興味の対象である哺乳動物プロテアーゼ、特にヒトプロテアーゼがある。
【0039】
プロテアーゼとその基質について記載している多くの科学記事がある。解説記事は次の通りである。これらに関連した内容は特に本願に引用して援用する。メタロプロテアーゼの中では、L/IXXXHy; XHySXL ;HXXXHy(Hyは疎水的残基を示している)の標的配列を持つMMP−2が挙げられる(Chen, et al. , J. Biol. Chem. , 2001)。他の酵素では、RXXAr(Arは芳香族性残基を示している)の標的配列を持つミトコンドリアプロセシングペプチド(Taylor, et al. , Structure 2001,9, 615-25);カスパーゼ、VAD、DEVD、DXXD、のみならずRBタンパク質(Fattman, et al., Oncogene 2001,20, 2918-26)、HPK-1のDDVD(Chen, et al. , Oncogene 1999,18, 7370-7)、ケラチン15及び17のVEMD/A と EVQD/G(Badock, et al. , Cell Death Differ. 2001,8, 308-15)、プロインターロイキン-1βのWEHD(Rano, et al. , Chem. Biol. 1997,4,149-55);フリン、RSV融合タンパク質のKKRKRR(Zimmer, et al. , J. Biol. Chem. 2001,20, 2918-26);HIV-1プロテアーゼ、GSGIF*LETSL(Beck, etal., Virology 2000,274,391-401)が挙げられる。他の酵素では、トロンビン、LVPRGS、ファクターXaプロテアーゼ、IEGR、エンテロキナーゼ、DDDDK、3Cヒトリノウイルスプロテアーゼ、LEVLFQ/GPが挙げられる。
【0040】
他のプロテアーゼについて記載している参考文献は次のものが挙げられる。Rabay, G. ed.,"Proteinases and their Inhibitors in Cells and Tissues, 1989, Gustav Fischer Verlag, Stuttgart; Powers, et al., in"Proteases-Structures, Mechanism and Inhibitors,"1993, Birkhauser Verlag, Basel, pp. 3-17; Patick and Potts, Clin. Microbiol. Rev. 1998,11, 614-27; Dery, et al., Am. J. Physiol. 1998,274, C1429-52; Kyozuka, et al., Cell Calcium 1998,23, 123-30; Howells, et al. , Br. J. Haematol. 1998,101, 1-9; Hill and Phylip, Adv. Exp. Med. Biol. 1998, 436, 441-4; Kidd, Ann. Rev. Physiol. 1998,60, 533-73; Matsushita, et al. , Curr. Opin. Immunol. 1998,10, 29-35; Pallen and Wren, Mol.Microbiol. 1997,26,209-21 ;DeClerk, etal., Adv. Exp. Med. Biol. 1998,425, 89-97;Thornberry, Br. Med. Bull. 1997,53, 478-90。これら参考文献は特に本願明細書に援用する。
【0041】
元から認識される配列に加えて、組み合わせによって酵素の一つもしくは酵素ファミリーに対して特異性を持つ認識配列を設計することが出来る。ラベルされ、位置により配列を特定できるラベルされたオリゴヌクレオチドのアレイを有しているオリゴペプチドのライブラリーを調製することにより、所定のプロテアーゼをアレイに加え放出されたラベルを検出するだけでよい。オリゴヌクレオチドを表面に結合させそれを蛍光体でラベルしたマイクロウェルプレートを使用することにより、照射による活性化に対する内部反射により開裂を追跡することが出来る。他の多くの試みも同様に利用出来る。合成配列を用いることにより、特定のプロテアーゼに対して開列を最適化できる。タンパク質試薬を複数用いることで、特定の酵素に特有の特徴に関する概略を得られる。
【0042】
検定を実行するために様々な細胞を用いてもよい。細胞の起源は任意でよい。他の原核生物及び真核生物を使用することを見出せるかもしれないが、主として哺乳類であろう。細胞はプライマリー細胞、細胞株、不死化させた細胞、もしくはそれに類するものでもよい。細胞は転写を可能にする転写制御領域と適合化することがある。そして、コンストラクトは宿主細胞に好ましいコドンに修正してもよい。例証する細胞の出所には、霊長類、例えばヒト、チンパンジーなど、齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスター、家畜、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコなどが含まれる。細胞膜タンパク質は宿主の内因性のものでも外因性のものでもよい。ほとんどの間で、内因性のタンパク質の発現に関心を持っているかもしれないし、主題の方法論は、環境変化の結果として細胞膜タンパク質の量が変化する状況に応用出来る。例えば、もし単に環境変化による転写への影響に関して興味を持っているのならば、タンパク質は転写因子の環境変化への影響を研究することにおける重要な要因ではない。むしろタンパク質は転写因子への効果を判断するための代役である。他方、もし配位子の受容体への結合に興味を持っているのならば、タンパク質受容体は通常検定に必須であろう。
【0043】
発現コンストラクトを以下のやり方で図解する。
【0044】
(a) LS-La-IS- (N) RCMP or (b) LS-La-IS- (C) RCMP。ここで N、C はそれぞれN末端、C末端を意味している。
【0045】
ここで、
【0046】
LSはリーダー配列をコードするコドンである。
【0047】
Lはリーダー配列のリーディングフレームの1から70までのコドンのリンカーである。ここで、リンカーは細胞膜タンパク質とは相互作用しないポリペプチドでもよい。細胞膜タンパク質の一部にはプロテアーゼの共通配列を含んでいてもよい。もしくは、その他何らかの機能、例えばエピトープ、を備えていてもよい。
【0048】
aは0もしくは1であり、リンカーが存在しているもしくは存在していないことを示している。
【0049】
ISは挿入配列であり、少なくともシグナル産生配列およびプロテアーゼ共通配列、すなわちSPS-RSを備えている。ここでSPSはシグナル産生配列を意味している。ここでRSはプロテアーゼ認識配列もしくは共通配列を意味しており、RSはRCMPと結合している。及び、
【0050】
RCMPは細胞膜タンパク質の残りの部分を意味しており、その部分としてはISが細胞膜タンパク質のN末端に直接結合するタンパク質全体でもよい、または細胞膜タンパク質の細胞外表面領域もしくは細胞膜タンパク質のループ部部分を挿入してもよい。ここで、リンカーは細胞膜タンパク質の一部分であろう。ある場合では、ISが細胞膜タンパク質のN末端の一部に結合させるよりはむしろISをタンパク質のC末端に結合させたほうが早いかもしれない。ここで、C末端は細胞外表面にある。その場合は、方法は方法(b)の逆であろう。
【0051】
挿入配列は標準的には少なくとも45コドンもしくはアミノ酸、通常少なくとも50コドンもしくはアミノ酸、および250コドンもしくはアミノ酸以下、さらに通常は200コドンもしくはアミノ酸である。RSは一般的に少なくとも2コドンもしくはアミノ酸、通常4コドンもしくはアミノ酸、および36以下、さらに通常は20コドンもしくはアミノ酸以下である。しかしながらエンドプロテイナーゼLys-Cではただ一つのアミノ酸のみが必要であり、ただ一つのリジンのみが必要である。
【0052】
発現コンストラクトは、様々なラボマニュアル及びベクターの製造業者によって記載されているような普通の方法によって生成するが、これは数多くの宿主で有効である。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual, "Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.(herein"Sambrook et al. , 1989")、"DNA Cloning: A Practical Approach, "Volumes I and II (D. N. Glover ed. 1985)、 "Oligonucleotide Synthesis" (M. J. Gait ed. 1984)、"Nucleic Acid Hybridization"[B. D. Hames & S. J. Higgins eds. (1985) ] 、"Transcription And Translation" [B. D. Hames & S. J. Higgins, eds. (1984) ] 、"Animal Cell Culture"、 [R.I. Freshney, ed. (1986) ]、"Immobilized Cells And Enzymes" [IRL Press, (1986) ]、B. Perbal,"A Practical Guide To Molecular Cloning" (1984)、を参照されたい。
【0053】
使用してもよいベクターには、ウイルス、プラスミド、コスミド、ファージミド、YAC、BAC、HACを含んでもよい。ベクターの他の構成要素には、一つ以上の宿主に対する複製起点、抗生物質耐性やシグナルを供給するタンパク質などを含むセレクションのための発現コンストラクト、集約(integaration)配列および集約を提供する酵素、マルチクローニングサイト、発現制御配列、興味を持っているタンパク質の発現コンストラクト、とりわけタンパク質が調製されつつもしくはタンパク質試薬による調整的もしくは異なった発現、ベクターの分離を可能にする配列、が含まれる。利用可能な商業的ベクターはこの能力の多くをもしくは全てを備えている。そしてこれを都合よく利用してもよい。
【0054】
DNAもしくはRNAベクターは、融合タンパク質を発現することが出来る宿主細胞に導入してもよい。宿主は初代培養細胞、細胞株、単細胞微生物、もしくはそれに類するものでよい。その細胞中で分泌可能な型のEAを細胞内に発現させる発現コンストラクトを安定的にもしくは一過的にタンパク質を発現もしくは過剰発現するように細胞を改変してもよいが、このタンパク質は細胞が検定の条件下では通常は発現していない。またノックアウト、転写もしくは翻訳阻害、もしくはそれにそれに類することの結果、細胞が通常発現しているタンパク質が発現しなくなる。
【0055】
融合タンパク質をコードしている遺伝子は、発現コンストラクトの一部であることがある。遺伝子は、宿主細胞内で機能を果たしている転写および翻訳制御領域の下流に位置している。多くの例で制御領域は、EC(発現コンストラクト)を形成するタンパク質をコードする元から存在している制御領域でもよい。ここで、融合タンパク質は元から存在している遺伝子と置き換えてもよい。染色体外要素内もしくは染色体内の遺伝子のサイトは転写のレベルによって変えてもよい。それ故、多くの例で転写開始領域は宿主細胞内で作用するものを選択できる。しかし、内因性の転写制御領域と著しく競合しない、もしくはEC由来の別の遺伝子と相互作用せず、その遺伝子は融合遺伝子の転写を著しく阻害しなければ、ウイルスもしくはその他起源のでもよい。
【0056】
宿主の染色体に組み込んだならば、発現コンストラクトを組み込んだ部位は、転写の効率に影響し、それゆえ融合タンパク質の発現に影響するかもしれないことを理解するべきである。高い転写効率を持った細胞を選択することにより、発現の効率を最適化してもよい。また、発現コンストラクトを増幅もしくは共増幅出来る遺伝子、たとえばメトトレキサート存在下のDHFR、と発現遺伝子を結合することにより発現コンストラクトを修正することが出来る。統合した部位の効率的な転写の提供を実現するために相同組み換えを用いてもよい。ゲノムにCre-Loxのような挿入要素を効率的な転写をしている部分に挿入することにより、同じ部位に発現コンストラクトを導入できる。どのような事象においても、所定の環境中の細胞と評価する環境中の細胞の酵素活性の比較をすることが出来る。
【0057】
ベクターにはプロモーターの転写および翻訳制御下の融合遺伝子を含むことがある。これらは、通常プロモーター/エンハンサー領域、加えて複製できる複製開始領域、選択のためのマーカーであり、制限酵素サイト、PCR開始サイト、EAを安定的にもしくは誘導できるような発現コンストラクト、またそれに類するものを含めることが出来る。以上に記載したとおり、宿主に融合タンパク質を発現するための数多くの異なったアプローチを供給する様々な利用可能なベクターがある。
【0058】
ベクターは簡便で効率的な方法、例えばトランスフェクション、エレクトロポレーション、リポフェクション、細胞融合、形質転換、カルシウムで沈殿させたDNAなどにより宿主細胞に導入してもよい。ベクターを宿主に導入する方法は、宿主細胞およびベクターの性質を考慮して効率的で簡便な方法の一つであることがあり、文献にはベクターを宿主細胞に導入する方法およびベクターが導入された宿主細胞を効率的に選択する方法に関する多くの方法が示されている。例えば抗生物質による選択を可能にする発現コンストラクトを用いることにより、ベクターを含む細胞のみが生き残る選択培地で細胞を成長させてもよい。
【0059】
使用する検定方法では、生存能力のあるもしくは生存能力のないインタクトの細胞を使用する。熱、抗生物質、毒素などによって生存を不可能にすることが出来る。細胞がインタクトである間は、これらによって細胞死が誘導される。細胞は、細胞に適した適当な培養用培地で成長し、コンフレントもしくは例えば80%のサブコンフレントになるまで成長させてもよい。必要に応じて、融合タンパク質のコンストラクト及びその他のコンストラクトは、ゲノムに組み込まれて細胞内に存在していてもよい。もしくは様々な方法で細胞にDNAを導入し有効な翻訳をさせるために一時的に加えてもよい。これらの方法は、これまで記載した文献で十分に実証されている。例えば抗生物質耐性、検出可能なシグナルの発生によってコンストラクトを含んでいる細胞を選択するために、タンパク質試薬をマーカーとして使用することにより、培養液中の融合タンパク質を含む細胞は、コンストラクトが入っていない細胞から分離することが出来る。一度融合タンパク質が発現したら、細胞の環境は適切に修正してもよい。
【0060】
検定を実行する際に、候補となる化合物を細胞を含む混合物に加えてもよい。このことは培地中に変化を起こすかもしれない。他の細胞を因子の分泌のために、もしくはトランスフォームした細胞と結合させるために加えてもよいし、ウイルスもしくはこれに類するものを加えてもよい。環境の変化の効果が表れるための十分な時間の後、随意に培養液を吸引し、細胞から融合タンパク質を分離することが可能なプロテアーゼと共にインキュベートしてもよい。それから分離された断片は、EA及び酵素の基質を含む検定用カクテルと共に検定することが出来る。そして、生成物からのシグナルを読み取る。それからこのシグナルと候補の化合物がない場合に生成したシグナルを関連付けることが出来る。他方、近傍に持ってくることにより細胞表面から放出された断片の量を決定することが出来るようにするために、開裂した断片に結合する試薬を加える。この試薬は、例えば酵素もしくは準安定種のチャネリングなどに蛍光共鳴エネルギーを供給する一対の蛍光剤である。
【0061】
プロテアーゼをインキュベートしている間、プロテアーゼの活性に関連するその他の構成要素、例えば望ましいpHにするバッファーがあってもよい。そして、サンプルの混合物は都合よくコントロールされた温度、この温度には室温を含んでもよい、でインキュベートし、この時間は少なくとも1分、通常は少なくとも約5分以上で、約90分以下、通常は約60分以下であり、過度にインキュベーション時間を延ばすことに利点はない。96ウェルプレートで検定を行うときは、存在している細胞数は一般的に103−105であり、細胞培養液の量は一般的に10−100μLの範囲内であろう。
【0062】
もし既に存在するEAが5から50μlの量加えていなければ、混合物は少なくとも約5分で通常は少なくとも約10分、また約60分以下で通常は約45分以下インキュベートする。一般的にEAの量は、少なくともEDが形成されると予想される最も高い濃度以上、通常は過剰に、一般的には10倍量もしくはそれ以上、さらに通常は10倍量以下である。もしまだ存在していない場合、検出可能なシグナルを供給する基質を約5から50μL加え、基質は実質的に過剰量となり検定が開始されるであろう。例証となる基質が多く市販されており、それには、X−Gal、CPRG、4- メチルウンベリフェロニルβ-ガラクトシダーゼ(methylumbelliferonyl β-Galactosidase)などのような色素、蛍光試薬、レソルフィン β-ガラクトシダーゼ、ガラクトン スター(トロピックス、アプライド バイオシステムズ)が含まれる。手順は他の検体についての化学文献もしくは特許文献中のこれまでの手順に従う。米国特許第4708929号および5120653号の解説を参照すること。検定混合物は、特定の時間、例えば1−10分、もしくは特定の間隔で読み取ることが出来る。化学発光による読み取りでは、シグナルは0.1秒から1分の間で統合してもよい。
【0063】
もう一つのシグナル産生ポリペプチドのために、この分野において常套的であり、また引用文献に記載されている適切な試薬を加える。例えば蛍光共鳴エネルギー移動のために、ある波長で発光する粒子と結合している蛍光物質を使用できる。この発光に引き続いて別の蛍光物質がこれを吸収する。エピトープとビオチン擬似物質を組み合わせることにより、ある粒子を抗原と吸収体との両方と共に、またストレプタビジンを蛍光物質と共に使用することになる。酵素のチャネリングのために、ストレプタビジンの結合する二次酵素の基質である生成物を産生する1番目の酵素と同様に、抗体が結合している粒子に結合する2番目の酵素を使用出来る。準安定種の場合、一重項酸素を産生する酵素および発光する一重項酸素と反応する化合物を使用できる。
【0064】
簡便のためにキットは、特にコンストラクトの一時的な発現を提供するベクターとしての遺伝子のコンストラクト、例えば転写および翻訳制御領域の制御下にある融合コンストラクト、もしくはそういったコンストラクトの遺伝子を含む細胞、シグナル産生ペプチドを放出するプロテアーゼ、及び他の試薬、例えば酵素の受容体と基質もしくはシグナルを産生するペプチドを産生するシグナルと相互作用する2つの試薬、を含んで提供される。同様に書面によるもしくは電子的形態の使用書が検定を実行するために提供される。
【0065】
ヒトグルコーストランスポーター GLUT4 に関する多くの実験研究が行われる間、GLUT4は、表面膜タンパク質の量を上向き調整もしくは下向き調整できるような場合、輸送に関して測定可能で同様に実証可能な表面膜タンパク質の典型例である。同様に、エンドサイトーシスによっても表面での量が変化しうる。
【0066】
(実験法)
以下の例は実証を意図しているが、これらに限定しない。
【0067】
(GLUT4-PLコンストラクトのクローニング)
クローニングの方針は、pCMV-PL-NlでCMVプロモーターの制御下にGLUT4-ProLabel融合遺伝子を作成するようにデザインした。ここでpCMV-PL-Nlは市販の利用可能なクローニングベクター (DiscoveRx, Fremont, CA) で、この塩基配列は図1Aに示している。融合遺伝子の両側に位置している唯一の制限酵素サイトであるAgeIとKpnIは、必要に応じてORFの全体を切り取って別のベクターに移すことが出来るように組み込んだ。コザック共通配列は翻訳効率を上げるようにGlut4開始コドンの5’側に接して含まれている。ProLabel (登録商標)(ProLabel は、図1Bに示した塩基配列を持つ大腸菌β-galactosidaseの酵素供与断片の商標である。)は、GLUT4のコドン67に続いて挿入されている。この位置は、この部位への単一(HA myc)及び複数直列(7x myc)でのエピトープタグの挿入に関する文献での成功の報告により選択した(Quon, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1994,91, 5587-91; Bogan, et al. , Mol CellBiol., 2001,21, 4785-806; Kanai, et al. , J Biol Chem. , 1993 5,268, 14523-6)。ProLabel の近傍にあるトロンビン開裂部位は、細胞表面に輸送されたGLUT4融合タンパク質を細胞全体からタンパク質分解によって放出するのを可能にする。ProLabel の直後に挿入した単一のリジン残基は、GLUT4の最初の細胞外表面のループのコドン50にもともと存在しているリジン残基と共に、エンドプロテイナーゼ Lys-Cを用いたProLabelのタンパク質分解による放出の2つ目の方法を提供する。
【0068】
このトロンビン-ProLabel-Lys-トロンビンのDNA(ここでトロンビンは開裂共通配列を示している)カセットへ、唯一の制限酵素サイトとしてHindIII(上流側)とEcoRI(下流側)を側面に配する。これにより、他のプロテアーゼ開裂部位の側面に位置するProLabel をコードするカセットと、実質的に簡単な交換が可能になる。開裂可能なProLabelカセットに続いて挿入したHAエピトープタグ (YPYDVPDYA) (配列識別番号 NO: 6)により、通常の免疫学的な技術による融合タンパク質の検出を可能にする。全体として、77コドン(トロンビン-ProLabel-Lys-、トロンビン-HA、合成したクローニングサイトに関連したコドンをコードする)をGLUT4のコドン67と68の間に挿入した。最後に、市販のGLUT4cDNA (NIH MGC clone IMAGE 、ID No. 5187454、Open Biosystems, Huntsville, ALより得た)に存在するGLUT4 ORFの3’領域のイントロン7配列を取り除くように設計した。
【0069】
以上に記載したプラスミドは、GLUT4 cDNAとProLabel の鋳型から作成したPCR primerを用いたPCR増幅によって得たDNA断片を用いてコンストラクトを作成した。全体として、4つのPCR増幅断片を作成しDiscoveRxベクターであるpCMV-PL-Nlにクローニングした。組み換えクローンは、制限酵素マッピング及び挿入配列全体のDNAシークエンスによって分析した。正しいクローンを確認し、pGLUT4-PL. 1プラスミドとして保存した。特徴的なプラスミドの地図及びクローニングに関連する制限酵素サイトを図1Cに示した。注釈をつけた部分と融合したGLUT4-ProLabel遺伝子の翻訳を図2に示した。
【0070】
(GLUT4-PLの発現)
pGLUT4-PL.1 機能の検討はCHO細胞への一時的な遺伝子導入により実施した。これらの検討は:1)ウエスタンブロット法によるタンパク質の検出、2)トロンビンプロテアーゼを使用したインタクト細胞EFC(酵素断片相補性、enzyme fragment complementation)検定のよる開発と特徴付け、及び3)GLUT4- PLがインスリン依存的に細胞表面へ移行することを検出するための検定への適用を含む。
【0071】
pGLUT4-PLを一時的に導入したCHO細胞中にGLUT4-PLが発現していることを確かめるために、ウエスタンブロットによる分析を実施した。予想される融合タンパク質の分子量は63.5kDaである。抗GLUT4ポリクローナル抗体は細胞溶解液全体から33kDaから62kDaを少し超えたあたりまでの範囲のポリペプチドを検出した(図3A及び図3B)。抗体の特異性はEGFPを発現させたコントロールの細胞から調製した溶解液では染まらないことにより実証した。
【0072】
(プロテアーゼ分解後のGLUT4-PLの検出)
細胞表面においてGLUT4-PLを観察するためにEFCを使用する構想の要は、中にあるProLabelのタグがタンパク質の最初の細胞外表面へのループからタンパク質分解により放出されることにある。それ故、当初の研究では、開発と特徴付けにおいてトロンビンプロテアーゼを用いたインタクト細胞EFCの方法に従った。以下に記載した全ての実験は96ウェルのプレートを用いて実施した。トロンビンを処理によってEFCのシグナルを増幅できるかどうか検証するために、pGLUT4-PLを発現させたインタクト細胞を50μlのバッファーのみもしくは濃度を増加させたトロンビンを含むバッファーにより処理した。 引き続き、EAとプロテアーゼ阻害剤AEBSF(終濃度7.5mM)を含む溶液80μlを加え、更に30μlの化学発光法の基質を加えた。トロンビン処理により、EFC活性の量依存的な増幅を生じ、60units/mlの処理により未処理の細胞に対してEFC活性は4.4倍となった(図4)。EFCシグナルの上昇がトロンビンのタンパク質分解活性それ自身によるものなのかどうか、及びトロンビン処方物の非特異的な構成成分が引き起こしたのではないことを検証するために、トロンビンを細胞に加える前にAEBSFでトロンビンを不活性化することによってコントロールの実験を行った。不活性化したトロンビンにはシグナルを増幅する活性がなかった(図4)。
【0073】
最初のインタクト細胞EFCの方法において、活性なトロンビンが例えばEAポリペプチドを非特異的に開裂することによりEAを阻害するかどうか既知でなかったので、プロテアーゼ阻害剤であるAEBSFはEAを加える段階においてトロンビンを不活性化するために用いた。AEBSFがある及びない処方であるEAを比較する実験により、活性なEA及びトロンビンの適合性について検証した。AEBSFを処方している及びしていないEA を比較する実験により、活性なEAとトロンビンの適合性を検討した(図5)。我々はAEBSFを処方していないEA が高いEFC活性を示すことを見出した。このことは、おそらくEAをインキュベートする段階中にタンパク質分解によるProLabel の放出が続いていることを反映している。この活性なトロンビンとEAが両立するという知見は、トロンビンによる開裂とEAを加えるステップを一緒に出来ることを示している。
【0074】
トロンビンがインタクト細胞の方法において細胞の完全な状態に影響を与えないことを証明するために、細胞質中に存在する受容体タンパク質のIKB-PLを発現させたHeLa細胞を検定した。溶解した時、これらの細胞は高いEFCシグナルを示した。CHO/pGLUT4-PL.1細胞及びHeLa/IKB-PL細胞を、トロンビンの濃度を増加させた一連のものと平行して検定を行った(図6)。上記載について観察した結果、CHO/pGLUT4-PL. l 細胞をトロンビン処理すると、EFC活性が量依存的に増加した。その一方で、HeLa/IKB-PL細胞では、そのような上昇は見られなかった。これはトロンビンが細胞の完全性に影響を与えないことを示している。
【0075】
トロンビンによる開裂に伴う細胞表面からのProLabelの放出を生化学的に証明するために、反応生成物を上記のインタクト細胞(上清)と残りの細胞画分(界面活性剤の溶解物として検証した)の2つのフラクションに分離した。CHO/pGLUT4-PL. I 細胞を2枚の6cmディッシュにまいた。検定の当日に培地を取り除き、細胞をPBSで一回洗浄した。1枚のディッシュにはバッファーのみ、もう一枚のディッシュには60units/mlのトロンビンを含むバッファーを加えた。37℃で1.5時間インキュベートした後、細胞上のバッファーを注意深く回収しトロンビンを失活させるためにAEBSFを混合し、低速で2回続けて延伸することにより細胞自体などの汚染物を取り除いた。 ディッシュに付着している細胞をAEBSF を含むPBSにより15分間で1回洗浄した。それからAEBSFを含むチャップス(CHAPS)を基にした溶解バッファーによって溶解した。コントロールとして、1対のプレートにまいたCHO/pEGFP細胞(ProLabel なし)を、CHO 細胞の内在性のβ-ガラクトシダーゼ活性について調べるために同時に処理した。トロンビンで処理したCHO/pGLUT4-PL.l 細胞の上清画分でEFC 活性が著しく上昇していることを我々は見出した(図7A、7B)。この結果は、ProLabel がトロンビンによって細胞表面から放出されることを証明しており、またProラベルの両側にある両方のトロンビン開裂部位が認識され開裂されることを意味している。界面活性剤の溶解物として細胞の画分を検討したところ、トロンビンで処理したCHO/pGLUT4-PL.l サンプル中に残っているEFC活性は未処理の細胞と比較してわずかに減少しているのみであることを我々は見出した(図7A及び7B)。このように減少がわずかであることは、通常の成育条件下では少量のGLUT4-PL画分のみしか細胞膜へ移行していないことを反映しているのかもしれない。
【0076】
(GLUT4-PLの局在へのインスリンの効果)
上記の実験は、通常の成育条件下でのGLUT4-PLの細胞表面での検出のための方法を開発及び特徴付けするために役立った。我々は次に外因的にインスリンを加えることにより細胞表面に存在するGLUT4-PL画分が増加するかどうかについて検討した。インスリンはGLUT4を細胞内区画から細胞表面への移行を促進することが知られている(総説としてBryant, et al. , Nature Reviews 2002,3, 267-77を参照されたい)。この実験において、CHO/pGLUT4-PL.1 細胞を0、0.1、1及び10μMのインスリンを含む培地で30分処理した。それから細胞上の液体を20units/mlのトロンビンを含むバッファーと交換しインタクト細胞のEFC検定の処理をした。1及び10μMのインスリンで処理した2組のサンプルはインスリンで刺激しなかったサンプルと比較して、それぞれ15%及び40%の上昇を示した。インスリン依存的な上昇はトロンビンで処理したサンプルのみに観察された:平行して処理したトロンビンで処理しなかった2組のサンプルはそのような上昇は示さなかった(図8Aおよび8B)。バックグラウンドとしてトロンビンとインスリン依存的なシグナルを差し引くことにより、インスリンに対する反応の増加を示している(図9A及び9B)。
【0077】
模範となる方法は、CHO細胞と96ウェルのアッセイ用プレートに対して以下のように確立した:
【0078】
1)それぞれのウェルに100μlの培養液中10000個の細胞密度でまく。一時的な遺伝子移入のために、遺伝移入後のある日に細胞上の培養液を新鮮な培養液と交換する。細胞をまいてから2日後にインタクト細胞のEFC検定を実行する。通常の成育条件下でのGLUT4-PLの細胞表面での検定を実行するには(外因性インスリンを含まない血清入り培養液)、ステップ3に進む。
【0079】
2)インスリンによる誘導のために、培養液で系の濃度の6倍に希釈したインスリンを20μl/wellで加える(例えば、6μMのインスリン20μlを100μlの細胞上の液体に加えると、系のインスリン濃度は1μMとなる)。30分間プレートをインキュベーターに戻す。血清不含培地でインスリンを希釈する2から4時間前に細胞を血清飢餓状態にすると、より大きなインスリンに対する反応性を実現するかもしれない。
【0080】
3)細胞上の培養液を吸引によって取り除く。50μl/wellでトロンビン溶液を加える(20units/mlのトロンビン;1XPBS;0.1mg/mlのBSA;それぞれ10mMのフッ化カリウムとアジ化ナトリウム。一時間プレートをインキュベーターの戻す。インキュベーションの時間を最大1.5時間に延ばすことによりシグナルが増加するかもしれない。
【0081】
4)80μl/wellでEA溶液(EA試薬(ディスカバレックス社、フレモント、カルフォルニア(DiscoveRx, Corp.. Fremont, CA))の一部分と、1X PBS;1.83 mM の硫酸マグネシウム ; それぞれ10 mMのフッ化カリウムとアジ化ナトリウムの3つを混合することによって調製する)。プレートを穏やかに叩き試薬を混合する。プレートを1時間インキュベーターに戻す。
【0082】
5)30μl/wellでCL試薬を加える。プレートを穏やかに叩き試薬を混合する。遮光して室温でインキュベートする。15分から1時間の一定間隔で化学発光用プレートリーダーを用いて読み取りを行う。
【0083】
上記結果と記述によってわかるように、主題の方法は従来からある試薬及び表面のタンパク質の量を測定するためのリーダーを使用した、単純な検定を提供する。野生型のタンパク質及び融合タンパク質の両方を同時に発現させたときには、必要であれば免疫学的検定を用いて、融合タンパク質に関して得られた値と全細胞膜タンパク質との間の相関関係を提供出来る。必要に応じて免疫学的検定も使用できる。一度この関連性が立証されれば、融合タンパク質と免疫学的検定の値から得たグラフを用いることによって細胞膜タンパク質の全量を速やかに測定することが出来る。
【0084】
目的の方法は細胞膜タンパク質の量を測定するための迅速で単純な研究方法を提供し、この方法は一回のみでの判定もしくはハイスループットスクリーニングに使用出来る。高い回転率と測定可能な蛍光もしくは化学発光生成物を有する酵素の使用により得られる増幅によって、直ちに誤差の小さい正確な結果を割り出すことが出来る。
【0085】
本文中で言及した全ての参考文献は、ここに陳述した参考文献として本願に引用として援用する。この文書を想起させる関連のある部分は、当業者にとって明白であろう。本願書とそうした参考文献の間の不一致は、本願書に陳述した見解を支持することにより解決するであろう。
【0086】
本発明は上記実施例が参考文献に記載されてきているが、改良物と変形物は当発明の考え方の範囲内に包含されていると理解されるであろう。したがって本発明は以下の請求項によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1A】図1AはDiscoveRxのクローニングベクターである pCMV-PL-N1 (配列識別番号: NO. 1) の塩基配列を示している。
【図1B】図1BはProLabel(配列識別番号: NO. 2)をコードする塩基配列を示している。
【図1C】図1CはpGLUT4-PL. 1のクローニングに関する特徴及び制限酵素サイトに関するプラスミドの地図である。
【図2】図2はpGLUT4- PL.1 (配列識別番号: NO. 3)のプラスミド中に融合しているGLUT4-ProLabel遺伝子の翻訳物である。
【図3A】図3AはCHO細胞中のGLUT4-PLのウエスタンブロットによる検出結果である。
【図3B】図3Bは同量のサンプル量をロードしたことのコントロールとして抗アクチン抗体をプローブとして別に調製したブロット結果である。
【図4】図4はインタクトのCHO/pGLUT4-PL.1 細胞のEFC活性(黒四角)がトロンビン処理の量に依存して増加することを示しているグラフである。AEBSFでトロンビンを不活性化するとこの効果を完全に阻害する(△)。
【図5】図5は活性なトロンビンプロテアーゼがEA及びEFCと両立することを示すグラフである。この検定の最初の段階では、インタクトの細胞はバッファーのみもしくはトロンビンの量を増加させつつ加えたバッファーによって処理した。二番目の段階では、サンプルの半分についてEAのみ(●)及びもう半分にはトロンビン(下向き黒三角)を失活させるためにAEBSFを加えたEAによって処理した。
【図6】図6はトロンビンによる処理がインタクトの細胞に対して細胞の完全性に影響を与えないことを示すグラフである。GLUT4-PL(黒四角)を発現している細胞を、細胞質に発現するレポータータンパク質であるIkB-PL(下向き黒三角)を発現している細胞をコントロールとして同時に検定した。IkB-PLを発現している細胞の溶解物は、EFC活性の著しい増加を示した(データは示していない)。
【図7A】図7Aは、上清から分離したインタクトの細胞の反応生成物について示している。
【図7B】図7Bは、細胞画分から分離したインタクトの細胞の反応生成物について示している。これは、界面活性剤を含む溶解液として調製し、その後EFC活性の測定を行った。
【図8A】図8AはGLUT4-PLがインスリン依存的に細胞表面へ移行することを示す棒グラフである。CHO/pGLUT4-PL.1細胞は、血清入り培地のみもしくはこれに表示濃度のインスリンを含む培地で30分間処理した。細胞はその後トロンビンを用いたインタクトの細胞のEFC検定を行った。
【図8B】図8Bでは、図8Aのサンプルと同時にトロンビンなしのサンプルについて検定した。トロンビンに依存しないシグナルは同様にインスリンにも依存しなかった。
【図9A】図9Aはインスリンの増加への反応により明らかになったデータからバックグラウンドを差し引いたデータの棒グラフである。
【図9B】図9Bはトロンビン及びインスリンに依存しないシグナル(図8Bのデータを平均した)をバックグラウンドとしてトロンビンで処理したサンプルより得たデータから差し引いたシグナルについて示している。はバーの上の数はインスリンを含まないコントロールに関するシグナルの増加した割合(%)について示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞膜に結合している細胞膜タンパク質の量を決定する方法であって、該方法はプロテアーゼ認識配列を介して前記の細胞膜タンパク質の少なくとも細胞外表面部分と連結するシグナル産生ペプチドを含むタンパク質融合コンストラクトを持つ細胞を用い、前記シグナル産生ペプチドは酵素受容断片と複合体を形成し活性な酵素を形成することが出来る酵素供与断片を含み、前記シグナル産生ペプチドとの結合により一緒に集められた時に、前記細胞膜もしくは結合物質と結合するための2つの部位と結合しない場合は、前記方法は:
前記の細胞にプロテアーゼ認識部位を開裂するプロテアーゼを加え、これによりシグナル産生配列を細胞表面から放出させる工程、及び
前記の放出されたシグナル産生配列を測定する工程であって、ここで前記のシグナル産生ペプチドにより産生されたシグナルは前記の細胞膜タンパク質の量と相関する該工程、
を備える、細胞膜に結合している細胞膜タンパク質の量を決定する方法。
【請求項2】
前記細胞が哺乳動物細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの結合物質がもう一方の基質である一方の生成物と相関している一対の酵素であり、吸光物質及びエネルギー移行物質およびエネルギー受容物質及び発光物質、もしくは準安定種を産生する物質及び前記準安定種と反応して光を産生する物質と関連する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
シグナル産生ペプチドが酵素供与断片である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記の酵素供与断片がβ−ガラクトシダーゼの断片である請求項4の方法。
【請求項6】
前記のβ−ガラクトシダーゼ断片が独自に前記の酵素受容断片と複合体となる請求項5の方法。
【請求項7】
前記のタンパク質融合コンストラクトが、前記の細胞に一時的にもしくは安定的に導入した発現コンストラクトから発現する請求項1の方法。
【請求項8】
環境の変化が細胞膜に結合する細胞膜タンパク質の量に与える影響を決定する方法であって、該方法はプロテアーゼ認識配列もしくはこの複数の認識配列を介して前記の細胞膜タンパク質の少なくとも細胞外表面部分と連結したシグナル産生ペプチドを備えるタンパク質融合コンストラクトを持つ細胞を用い、前記シグナル産生ペプチドは、前記の細胞膜と結合しない時には酵素受容断片と複合体を形成して活性な酵素を形成することが出来る酵素供与断片を含み、前記方法は:
前記細胞へ環境変化の影響を与える工程、
前記細胞にプロテアーゼを加えることにより前記細胞膜から前記シグナル産生ペプチドを放出させる工程、
前記酵素受容断片と基質により前記の放出されたシグナル産生ペプチドを検出する工程であって、ここで前記基質から産生された生成物の量は前記の細胞膜タンパク質の量と相関する該工程、;及び
前記環境の変化の存在下と非存在下で産生する生成物の量を比較する工程、
を備える、環境の変化が細胞膜に結合する細胞膜タンパク質の量に与える影響を決定する方法。
【請求項9】
前記の環境変化が前記細胞に薬剤を添加することである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記のシグナル産生ペプチドがβ−ガラクトシダーゼ断片である請求項8の方法。
【請求項11】
前記のβ―ガラクトシダーゼ断片が独自に前記の酵素受容断片と複合体となる、請求項10の方法。
【請求項12】
前記細胞に一時的にもしくは安定的に導入した発現コンストラクトから前記のタンパク質融合コンストラクトが発現する請求項8の方法。
【請求項13】
プロテアーゼ認識配列を介して酵素断片と結合した細胞膜タンパク質をコードする配列及びシグナルリーダー配列を5'-3'方向に含む核酸。
【請求項14】
前記細胞膜タンパク質が、少なくとも1つ以上の膜貫通アミノ酸配列をコードする配列もしくは翻訳後修飾により膜結合のための基質となりうるアミノ酸配列を含む請求項13記載の核酸。
【請求項15】
請求項13記載の核酸によってコードされるタンパク質。
【請求項16】
請求項13記載の核酸を備える細胞。
【請求項17】
酵素受容配列、前記のプロテアーゼ認識配列を開裂するプロテアーゼ及び随意的に前記の酵素断片と前記の酵素受容体が複合体となり形成される酵素に対する化学発光基質もしくは蛍光基質を備える請求項13記載の核酸を備えるキット。
【請求項18】
前記の酵素断片及び前記の酵素受容複合体がβ−ガラクトシダーゼを形成する請求項17に記載のキット。
【請求項1】
細胞膜に結合している細胞膜タンパク質の量を決定する方法であって、該方法はプロテアーゼ認識配列を介して前記の細胞膜タンパク質の少なくとも細胞外表面部分と連結するシグナル産生ペプチドを含むタンパク質融合コンストラクトを持つ細胞を用い、前記シグナル産生ペプチドは酵素受容断片と複合体を形成し活性な酵素を形成することが出来る酵素供与断片を含み、前記シグナル産生ペプチドとの結合により一緒に集められた時に、前記細胞膜もしくは結合物質と結合するための2つの部位と結合しない場合は、前記方法は:
前記の細胞にプロテアーゼ認識部位を開裂するプロテアーゼを加え、これによりシグナル産生配列を細胞表面から放出させる工程、及び
前記の放出されたシグナル産生配列を測定する工程であって、ここで前記のシグナル産生ペプチドにより産生されたシグナルは前記の細胞膜タンパク質の量と相関する該工程、
を備える、細胞膜に結合している細胞膜タンパク質の量を決定する方法。
【請求項2】
前記細胞が哺乳動物細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記2つの結合物質がもう一方の基質である一方の生成物と相関している一対の酵素であり、吸光物質及びエネルギー移行物質およびエネルギー受容物質及び発光物質、もしくは準安定種を産生する物質及び前記準安定種と反応して光を産生する物質と関連する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
シグナル産生ペプチドが酵素供与断片である請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記の酵素供与断片がβ−ガラクトシダーゼの断片である請求項4の方法。
【請求項6】
前記のβ−ガラクトシダーゼ断片が独自に前記の酵素受容断片と複合体となる請求項5の方法。
【請求項7】
前記のタンパク質融合コンストラクトが、前記の細胞に一時的にもしくは安定的に導入した発現コンストラクトから発現する請求項1の方法。
【請求項8】
環境の変化が細胞膜に結合する細胞膜タンパク質の量に与える影響を決定する方法であって、該方法はプロテアーゼ認識配列もしくはこの複数の認識配列を介して前記の細胞膜タンパク質の少なくとも細胞外表面部分と連結したシグナル産生ペプチドを備えるタンパク質融合コンストラクトを持つ細胞を用い、前記シグナル産生ペプチドは、前記の細胞膜と結合しない時には酵素受容断片と複合体を形成して活性な酵素を形成することが出来る酵素供与断片を含み、前記方法は:
前記細胞へ環境変化の影響を与える工程、
前記細胞にプロテアーゼを加えることにより前記細胞膜から前記シグナル産生ペプチドを放出させる工程、
前記酵素受容断片と基質により前記の放出されたシグナル産生ペプチドを検出する工程であって、ここで前記基質から産生された生成物の量は前記の細胞膜タンパク質の量と相関する該工程、;及び
前記環境の変化の存在下と非存在下で産生する生成物の量を比較する工程、
を備える、環境の変化が細胞膜に結合する細胞膜タンパク質の量に与える影響を決定する方法。
【請求項9】
前記の環境変化が前記細胞に薬剤を添加することである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記のシグナル産生ペプチドがβ−ガラクトシダーゼ断片である請求項8の方法。
【請求項11】
前記のβ―ガラクトシダーゼ断片が独自に前記の酵素受容断片と複合体となる、請求項10の方法。
【請求項12】
前記細胞に一時的にもしくは安定的に導入した発現コンストラクトから前記のタンパク質融合コンストラクトが発現する請求項8の方法。
【請求項13】
プロテアーゼ認識配列を介して酵素断片と結合した細胞膜タンパク質をコードする配列及びシグナルリーダー配列を5'-3'方向に含む核酸。
【請求項14】
前記細胞膜タンパク質が、少なくとも1つ以上の膜貫通アミノ酸配列をコードする配列もしくは翻訳後修飾により膜結合のための基質となりうるアミノ酸配列を含む請求項13記載の核酸。
【請求項15】
請求項13記載の核酸によってコードされるタンパク質。
【請求項16】
請求項13記載の核酸を備える細胞。
【請求項17】
酵素受容配列、前記のプロテアーゼ認識配列を開裂するプロテアーゼ及び随意的に前記の酵素断片と前記の酵素受容体が複合体となり形成される酵素に対する化学発光基質もしくは蛍光基質を備える請求項13記載の核酸を備えるキット。
【請求項18】
前記の酵素断片及び前記の酵素受容複合体がβ−ガラクトシダーゼを形成する請求項17に記載のキット。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2007−521021(P2007−521021A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539630(P2006−539630)
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036632
【国際公開番号】WO2005/047305
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504058215)ディスカヴァーエックス インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月3日(2004.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/036632
【国際公開番号】WO2005/047305
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504058215)ディスカヴァーエックス インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
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