細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法
【課題】細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法の提供。
【解決手段】細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料は、式1の構造を有し、
・・・(1)前記式で、Rは、HまたはOCH3である。二光子染料は、Zn2+に対して高い選択性を有し、表面からより深く位置する細胞質内の自由Zn2+に対して非常に効果的であり、長期間のモニタリングを可能にする。
【解決手段】細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料は、式1の構造を有し、
・・・(1)前記式で、Rは、HまたはOCH3である。二光子染料は、Zn2+に対して高い選択性を有し、表面からより深く位置する細胞質内の自由Zn2+に対して非常に効果的であり、長期間のモニタリングを可能にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法に係り、さらに具体的には、生きている細胞をより深く長期間探知することができる細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイム映像に適した二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛は、酵素及びタンパク質の必須要素であって、脳では、細胞質内遊離亜鉛イオン(Zn2+)の数ミリモル(millimole)がシナプス小胞内に貯蔵されており、シナプス駆動によって放出されて、呼吸神経伝達を調節すると知られている。亜鉛の生物学的役割を理解するために、キノリン(TSQ、Zinquin、及びTFLZn)及び蛍光体(FluZn−3、Znpyr、ZnAFなど)から誘導された多様な蛍光探針物質が開発されて来た。
【0003】
しかし、これらの大部分はかなり短い励起波長を要求するか、pHに敏感であるという限界があった。表面組成物質(surface preparation artifact)の干渉なしに表面から一定深さ(特に>80μm)以上の生きている組職内部で生物学的活性を視覚化するためには、低い励起エネルギーを有する二光子を活用する二光子顕微鏡(TPM)が非常に効果的である。特に、励起のために2個の近赤外線光子を採用するTPMは、一光子顕微鏡に比べてさまざまな長所を提供することができるが、具体的に増加した透過深さ、局所化された励起、及び観測時間の増加などがまさにそれである。
【0004】
しかし、このような長所をいずれも有し、Zn2+を効果的にモニタリングできる二光子染料は、現在ほとんど開示されていない実情である。Zn2+に対する幾つかのpH−抵抗性を有するセンシング物質(sensor)が報告はされているが、これも細胞質に適用するためには、微少注入せねばならない問題があり、また低水溶解度に起因してエタノールのような共溶媒を相当量使わなければならない問題がある。
【0005】
したがって、亜鉛イオンに対して効果的な二光子染料として細胞を染色させるために、十分な水溶解度、亜鉛イオンに対する高い選択度、相当な二光子断面積(two photon cross section)、pH−抵抗性、及び高い光安定性などのような特性をいずれも満足する細胞質内の遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料は、現在全くない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が果そうとする一番目の技術的課題は、生体内、特に細胞質内に存在する遊離亜鉛イオンをより効果的かつ選択的にモニタリングできる二光子染料を提供することである。
【0007】
本発明が果そうとする二番目の技術的課題は、前記二光子染料の製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明が果そうとする三番目の技術的課題は、前記二光子染料を利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記一番目の技術的課題を果たすために、化学式1の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
前記式1で、Rは、水素またはOCH3である。
【0012】
前記二番目の課題を果たすために、本発明は、
(a)下記化学式2の化合物を有機溶媒に混入した後、撹拌して第1混合物を収得する段階と、
【0013】
【化2】
【0014】
(b)前記収得された第1混合物に下記化学式3の化合物を添加、反応させて前記化学式1の化合物を合成する段階と、を含む細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法を提供する。
【0015】
【化3】
【0016】
本発明による二光子染料の製造方法は、前記三番目の課題を果たすために、前記(b)段階後、前記(b)段階の結果物から前記化学式1の混合物を分離する段階をさらに含み、前記分離は、抽出工程によって遂行される。また、本発明の一実施例で、前記有機溶媒は、1,3−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを含む。
【0017】
前記三番目の課題を果たすための本発明は、前記化学式1の二光子染料を観察対象となる細胞質内に注入した後、放出される二光子励起蛍光(TPEF)映像を観察する段階を含む細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法を提供する。前記二光子励起蛍光映像は、前記観察対象の表面から80ないし150μmの深さ以内に存在する細胞質から放出される。また、前記二光子蛍光映像の観察段階は、1000秒以上進行することを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明による二光子染料は、Zn2+に対して24ないし52倍のTPEF増加効果を有し、それぞれ1.1±0.1及び0.50±0.04nMの解離定数(KdTP)を有する。また、生物学的に連関したpH範囲でpH条件に影響を受けず、従来のZn2+を検出するための二光子染料であるTSQ及びFluZin−3などに比べて4ないし24倍以上の増加した強度のTPEFを発生させる。また、本発明による二光子染料は、1000秒以上の時間範囲で細胞内の自由Zn2+を選択的な検出することができるが、これは従来の如何なる二光子染料より優れた特性である。さらに、本発明による二光子染料は、メンブレン結合二光子染料または他の金属イオンによる干渉や妨害を受けず、非常に効果的に細胞内の遊離亜鉛イオンのみを映像化して、モニタリング可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図1B】図1Bは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図1C】図1Cは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図1D】図1Dは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図2A】図2Aは、本発明の実施例2の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図2B】図2Bは、本発明の実施例2の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図2C】図2Cは、実施例1の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図2D】図2Dは、実施例1の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図3A】図3Aは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3B】図3Bは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3C】図3Cは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3D】図3Dは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3E】図3Eは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3F】図3Fは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図4A】図4Aは、それぞれAZn1及びAZn2と自由Zn2+との錯化に対するヒルグラフである。
【図4B】図4Bは、それぞれAZn1及びAZn2と自由Zn2+との錯化に対するヒルグラフである。
【図5】B3LYP/6−31G*レベルでAZn1−Zn2+及びAZn2−Zn2+の錯化合物の最適化された幾何学的構造を表わす立体図である。
【図6A】図6Aは、それぞれ実施例2の二光子染料(AZn1)及び実施例1の二光子染料(AZn2)の蛍光適正曲線を表わす。
【図6B】図6Bは、それぞれ実施例2の二光子染料(AZn1)及び実施例1の二光子染料(AZn2)の蛍光適正曲線を表わす。
【図7A】図7Aは、それぞれ30mMのMOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)とNa+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+及び1μMのZn2+を添加した場合、1μMのAZn1及びAZn2の相対的蛍光強度を表わすグラフである。
【図7B】図7Bは、それぞれ30mMのMOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)とNa+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+及び1μMのZn2+を添加した場合、1μMのAZn1及びAZn2の相対的蛍光強度を表わすグラフである。
【図8A】図8Aは、30mMのMOPS及び100mMのKCl混合溶液で自由Zn2+が0.0(白丸)及び1μM(黒四角)である時、1μMのAZn1及びAZn2のpH変化による一光子蛍光強度を表わす。
【図8B】図8Bは、30mMのMOPS及び100mMのKCl混合溶液で自由Zn2+が0.0(白丸)及び1μM(黒四角)である時、1μMのAZn1及びAZn2のpH変化による一光子蛍光強度を表わす。
【図9】1.8μM自由Zn2+の条件でAZn1(白四角)、AZn2(黒丸)、FluZin(黒三角)及びTSQ(白逆三角)に対する二光子動作スペクトルを表わす。
【図10】2μM AZn2−標識化293細胞の二光子顕微鏡(TPM)映像である。
【図11】2μM AZn1−標識化293細胞のTPM映像である。
【図12】AZn2及びLTR−標識化された(2μM)293細胞に対するTPM映像である。
【図13】AZn1及びLTR−標識化(2μM)293細胞のTPM映像である。
【図14】10mMのS−ニトロソシステイン(SNOC)を添加したAZn2−標識化293細胞のTPEFのスペクトルである。
【図15】マウス海馬状突起の微細薄片に対するTPM映像である。
【図16】10μMのAZn2で染色されたマウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門に対するTPM映像である。
【図17】マウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門に対する相対的二光子蛍光強度を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面及び実施例を参照して、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
本発明は、前記化学式1の構造を有する化合物を細胞質内遊離亜鉛モニタリング用の二光子染料として提供する。本発明による二光子染料は、前記蛍光部位(発光端)にアセチル−6−(ジメチルアミノ)ナフタレン(アセタン)、亜鉛イオンのキレート基として、N,N−ジ−(2−ピコリル)エチレンジアミン(DPEN)の誘導体が結合した構造を有する。特に、本発明は、前記構造の二光子染料を遊離亜鉛イオンの二光子染料として使う場合、細胞質内の遊離亜鉛イオンを長期間映像化することが可能であり、さらに、特に呉標的化または光ブリーチイングのような問題なしに80μm以上の深さでも、遊離亜鉛の映像化を可能にする。
【0022】
以下、本発明による細胞質内遊離亜鉛イオンの二光子染料の製造方法を説明し、前記二光子染料が有する優れた特性は、下記実験例を通じて説明する。
【0023】
<実施例1>
N−(4−(2−(ビス((ピリジン−2−イル)メチル)アミノ)エチルアミノ)−3−メトキシフェニル)−2−(N−(2−アセチルナフタレン−6−イル)−N−メチルアミノ)アセトアミドの合成
【0024】
<実施例1−1>
N−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)エチレンジアミンの合成
2−クロロ−5−ニトロアニソール(3.0g、16.0mmol)及びエチレンジアミン(7.7g、8.6mL、0.13mol)を水(180mL)に混入させた後、110℃の温度で72時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物をエチルアセテートを利用、抽出した後、MgSO4を利用、乾燥させ、真空条件で濾過、濃縮させた。以後、クロロホルム/メタノール(5:1)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記濃縮後、得られた未精製生成物を精製し、エタノールから再結晶化を通じてさらに精製した。これにより、下記化学式4の化合物を得た。
【0025】
【化4】
【0026】
収得2.0g(60%);mp183℃;IR(KBr):3440、2960、2890cm−1;1H NMR(400MHz、CDCl3):δ7.91(dd、1H、J=8.9、J=2.1Hz)、7.63(d、1H、J=2.1Hz)、6.52(d、1H、J=8.9Hz)、5.41(br s、1H)、3.94(s、3H)、3.31(t、2H、J=5.4Hz)、3.03(t、2H、J=5.4Hz);13C NMR(100MHz、CDCl3):δ171.8、145.4、144.4、120.1、106.6、104.9、56.2、43.4、39.1ppm;Anal.Calcd for C9H13N3O3:C、51.73;H、6.51;N、19.44.Found:C、51.38;H、6.20;N、19.29。
【0027】
<実施例1−2>
N−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−N’,N’−[ビス(2−ピリジルメチル)]エチレンジアミンの合成
前記実験例1−1の化合物、2−(クロロメチル)ピリジン塩酸塩(2.9g、17.5mmol)、KI(0.52g、3.0mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(20g、27mL、0.16mol)をアセトニトリル(50mL)に混入させた後、窒素条件下で16時間還流させた。還流後、得られた混合物をエチルアセテートを利用、抽出し、MgSO4を利用、乾燥させた後、真空条件で濾過、濃縮させた。以後、クロロホルム/メタノール(4:1ないし1:1)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記濃縮後、得られた未精製生成物を精製して、下記化学式5の化合物を精製した。
【0028】
【化5】
【0029】
収得2.2g(90%);IR(KBr):3428cm−1;1H NMR(400MHz、CDCl3):δ8.55(dd、2H、J=5.0、J=2.0Hz)、7.85(dd、1H、J=9.0、J=2.0Hz)、7.64(td、2H、J=7.5、2.0Hz)、7.62(d、1H、J=2.0Hz)、7.44(dd、2H、J=7.5、1.0Hz)、7.17(ddd、2H、J=7.5、5.0、1.0Hz)、6.36(d、1H、J=9.0Hz)、6.10(br s、1H)、3.99(s、3H)、3.92(s、4H)、3.29(t、2H、J=5.4Hz)、2.93(t、2H、J=5.4Hz);13C NMR(100MHz、CDCl3):δ170.5、159.0、149.2、145.5、144.5、137.0、123.7、122.6、120.1、106.7、104.9、60.1、52.9、37.6、23.3ppm;Anal.Calcd for C21H23N5O3:C、64.28;H、5.99;N、17.24.Found:C、64.11;H、5.89;N、17.80。
【0030】
<実施例1−3>
N−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)−N’,N’−[ビス(2−ピリジルメチル)]エチレンジアミンの合成
実施例1−2の混合物(1.2g、3.00mmol)及びSnCl2・H2O(7.4g、33mmol)の混合物をアセトニトリル(50mL)及び無水エタノール(40mL)で12時間還流させた後、100mLの飽和炭酸ナトリウム100mLで中和させ、ジクロロメタンで抽出した。以後、クロロホルム/メタノール(20:3)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記得られた未精製生成物を精製して、下記化学式6の化合物を得た。
【0031】
【化6】
【0032】
収得0.9g(80%);IR(KBr):3419cm−1;1H NMR(400MHz、CDCl3):δ8.50(dd、2H、J=J=5.0、J=2.0Hz)、7.63(td、2H、J=7.5、2.0Hz)、7.53(dd、2H、J=7.5、1.0Hz)、7.13(ddd、2H、J=7.5、5.0、1.0Hz)、6.39(d、1H、J=9.0Hz)、6.27(d、1H、J=2.0Hz)、6.22(dd、1H、J=9.0、J=2.0Hz)、3.86(s、4H)、3.84(s、3H)、3.15(t、2H、J=5.4Hz)、2.88(t、2H、J=5.4Hz);13C NMR(100MHz、CDCl3):δ159.6、149.1、148.4、137.6、136.7、131.2、123.2、122.3、112.0、107.9、100.1、60.5、55.7、53.4、42.3ppm;Anal.Calcd for C21H25N5O:C、69.55;H、6.89;N、18.98.Found:C、69.40;H、6.93;N、19.27。
【0033】
<実施例1−4>
遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料(AZn2)の合成
6−アシル−2−[N−メチル−N−(カルボキシメチル)アミノ]ナフタレン(0.07g、0.27mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.037g、0.27mmol)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.057g、0.28mmol)をジクロロメタンに混入させた後、30分間撹拌した。以後、前記実施例1−4で得られた化学式6の化合物を添加した後、窒素条件下で12時間撹拌し、得られた生成物をジクロロメタンで抽出し、MgSO4を利用、乾燥させた後、溶媒は真空条件で除去した。以後、クロロホルム/メタノール(20:1)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記得られた未精製生成物を精製して、下記化学式7の遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料を合成した。
【0034】
【化7】
【0035】
<実施例2>
遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料(AZn1)の合成
実施例1−3の化学式6の化合物の代わりに、下記化学式8の化合物を使ったものを除いては、実施例1−4と同じ方法で化学式9の二光子染料を合成した。
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
<実験例1>
水溶解度の測定
本発明による実施例1及び実施例2の二光子染料(AZn2及びAZn1)少量をDMSOに溶解させてストック溶液(1.0x10−3M)を準備した。以後、前記溶液を(6.0x10−3ないし6.0x10−5)Mで希釈させてマイクロ注射器を利用、3.0mLの水を含有するキュベットに添加した。あらゆる場合、水でDMSO濃度は0.2%を保持した。
【0039】
図1Aないし図1Dは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【0040】
それぞれAZn2及びAZn1に対する濃度対比蛍光強度を表わす図1B及び図1Dを説明すれば、染料濃度に対する蛍光強度のグラフは、低濃度で線形を表わすが、高濃度に行くほど下側に落ちる。この場合、染料の水溶解度は、線形パターンを表わす最高濃度で決定され、本発明による二つの染料いずれも3.0μMの水溶解度を表わした。
【0041】
したがって、本発明による二光子染料が有する3.0μM以上の水溶解度は、細胞の染色において非常に効果的であるということを表わす。
【0042】
<実験例2>
吸光スペクトルの測定
本発明による二光子染料の吸光スペクトルをHewlett−Packard8453ダイオード整列スペクトロメーター上で測定し、蛍光スペクトルを1cm標準石英セルを備えたAmico−Bowman series2発光スペクトロメーターを使って測定した。蛍光量子収率は、参考文献の従来文献に開示したことによってクマリン(Coumarin)307を使って測定した。
【0043】
図2A及び図2Bは、本発明による二光子染料であるAZn1の一光子吸収及び発光スペクトルであり、図2C及び図2Dは、本発明による二光子染料であるAZn2に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【0044】
また、下記表1は、多様な溶媒条件で本発明に実施例2及び実施例1の二光子染料(AZn1及びAZn2)が有する最大発光波長(λmax(l))、最大蛍光波長(λmaxfl)及び蛍光量子収率を表わす。
【0045】
【表1】
【0046】
*:カッコ内の数値は、溶媒極性に対する正規化された経験的パラメータである。λmaxはnm単位であり、また蛍光量子収率±15%。
【0047】
図2Aないし図2D及び前記表1を参照すれば、1,4−ジオキサン(dioxane)<DMF<EtOH<H2Oの順序で溶媒極性が増加するにつれて大きな赤色移動(bathochromic shift)が観察されるという点は、本発明による二光子染料が極性探針子として非常に有用であるということを表わす。
【0048】
<実験例3>
Zn2+濃度変化による吸光度の変化測定
本発明によるZm2+濃度変化による二光子染料(AZn2、AZn1)の一光子または二光子吸光または発光スペクトルを測定し、これを図3Aないし図3Fに示した。
【0049】
図3Aないし図3Fから分かるように、MOPSバッファ溶液中の実施例1及び実施例2の二光子染料(AZn2、AZn1)(30mM、pH7.2、I−=0.10)にZn2+を微細に増分しながら添加した時、二光子励起蛍光(発光)強度及び一光子励起蛍光強度は徐々に増加するが、吸収スペクトルには如何なる影響がなかった。これは、Zn2+との錯化(complexation)による光誘導電子−伝達(photoinduced electron−transfer、PET)過程の遮断に起因したと推測される。
【0050】
<実験例4>
常用探針との二光子スペクトルの特性比較
一光子蛍光及び二光子蛍光方法のうち、実施例1の二光子染料(AZn2)が有する蛍光増加因子(Fluorescence enhancement factor)[FEF=(F−Fmin)/Fmin]は、実施例2の二光子染料(AZn1)が有する蛍光強化因子より2.5倍以上大きいが、これは、過剰のZn2+がない場合、実施例1の二光子染料が実施例2の二光子染料よりさらに低い蛍光量子収率(Φ)を有するのに比べて、過剰のZn2+が存在する場合、実施例1の二光子染料(AZn2)が実施例2の二光子染料(AZn1)よりさらに大きな量子収率(Φ)を有するためである。
【0051】
このような分析結果は、下記表3の測定結果からより容易に理解されうる。
【0052】
【表2】
【0053】
前記測定結果は、いずれも20mM MOPS、100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2の条件下でZn2+を添加するか、添加しない場合に分けて測定した。また、λmaxはnm単位であって、一光子吸光及び発光スペクトルであり、Zn2+の解離定数(dissociation constant)は、一光子(KdOP)及び二光子方法(KdTP)によって測定し、蛍光増加因子も一光子方法(OP)及び二光子方法によって測定した。λmax(2)は、nm単位の二光子励起スペクトルを意味し、δは、光子当たりピーク二光子断面積で10−5cm4sの単位を有し、Φδは、二光子動作断面積(twophoton action cross−section)を表わす。前記測定結果のうち、二光子励起蛍光強度はあまりにも弱くて断面積を正確に測定できなかったために、これをndで表わし、TSQ+Zn2+の測定結果は、メタノールでZn2+の存在下で得られた数値である。
【0054】
<実験例5>
コンピュータ分析
N,N−ジ−2−ピコリルエチレンジアミン(DPEN、R1)、2−メトキシ−DPEN(R2)及びAZn1とAZn2とのZn錯化合物(AZn1−Zn2+、AZn2−Z2+)の幾何学的構成をガウス03プログラムで実行される密度機能理論(DFT)でB3LYP/6−31Gレベルを利用、最適化した。計算されたHOMO及びLUMOエネルギーを下記表3に表わした。
【0055】
【表3】
【0056】
表3を参照すれば、あらゆる場合、CH3O基は、HOMOエネルギーレベルを上昇させることが分かる。このような傾向性は、分子がより複雑になる場合、すなわち、R>AZn>AZn−Zn2+に行くほど弱化される。これは、R2のHOMOからAZn2への電子移動は、R1からAZn1に進行する場合よりさらに大きなエネルギー、すなわち、さらに大きな熱を発散することを意味する(発熱反応)。また、DPEN(R1)、2−メトキシ−DPEN(R2)、AZn1及びAZn2のHOMOエネルギーは、それぞれ−4.948、−4.246、−8.762及び8.733eVということが分かるが、これは、結局R2からAZn2へのPETは、熱力学的観点でさらに効果的に起き、その結果、Φを落とす。一方、AZn2−Zn2+のさらに大きなΦ(表2参照)は、さらに強い結合からその理由を捜すことができるが、強い結合は振動緩和経路を減少させるためである。
【0057】
図4A及び図4Bは、それぞれAZn1及びAZn2と自由Zn2+との錯体に対するヒルグラフ(Hill plot)である。
【0058】
前記図4A及び図4Bを参照すれば、傾きが1である直線で表われたヒルグラフは、Zn2+と本発明による二光子染料とは1:1で錯化合物を形成することを表わす。
【0059】
さらに、最適化されたAZn1−Zn2+及びAZn2−Zn2+錯体の幾何学的構造は、三角状の二重ピラミッド構造であり、ここで、Zn2+イオンは、4個の窒素原子及び一つの水分子によって配位され、これは、B3LYP/6−31G*レベルでAZn1−Zn2+及びAZn2−Zn2+の錯化合物の最適化された幾何学的構造を表わした図5を通じても分かる。
【0060】
また、AZn1−Zn2+とAZn2−Zn2+複合体の結合長と結合角とをB3LYP/6−31G**レベルで計算して、下記表4に表わした。
【0061】
【表4】
【0062】
<実施例6>
解離定数(KdOP及びKdTP)の決定
多様な量のZnSO4及び10mMのEGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)を含有するMOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸)緩衝溶液(30mM、pH7.2、0.1M KCl)を準備した。
【0063】
自由Zn2+の濃度([Zn2+]free)を下記数式1を用いてKZn−EGTAapp,[EGTA]total及び[Zn2+]totalから計算した。
【0064】
【数1】
【0065】
ここで、
【0066】
【数2】
【0067】
及び、
【0068】
【数3】
【0069】
である。
【0070】
したがって、
【0071】
【数4】
【0072】
になる。
【0073】
以後、EGTA(KZn−EGTA)のZn2+錯体の安定性定数を公知された方法によって得て、したがって、EGTA(pH7.2、0.1M KCl、25℃)に対して、pK1=9.40、pK2=8.79、pK3=2.70、logKZn−EGTA=12.6が得られる。
【0074】
0.1Mイオン強度でワークアウトされる時、すべての陽性子化定数は0.11ほど上側に補正され、[EGTA]totalは10mMで固定され、[Zn2+]totalは0ないし9.5mMの範囲である。
【0075】
各溶液に対する計算された[Zn2+]free濃度は、下記表5のようである。
【0076】
【表5】
【0077】
二光子染料に対する明確な解離定数を決定するために、前記図3B及び図3Eから下記数式5を用いて蛍光適正曲線を求めた。
【0078】
【数5】
【0079】
ここで、Fは蛍光強度、Fmaxは最高蛍光強度であり、FoはZn2+がない条件での蛍光強度、[Zn2+]freeは自由Zn2+濃度を表わす。
【0080】
図6A及び図6Bは、それぞれ実施例2の二光子染料(AZn1)及び実施例1の二光子染料(AZn2)の蛍光適正曲線を表わす。
【0081】
数式5による適正曲線(図2C)に最もよく符合されるKd数値を商用アクセルプログラムを使って計算した。また、二光子過程でのKd数値を決定するために、780nmの波長及び1180mWの出力にセッティングされ(焦点平面からおおよそ10mWに該当)、モードロックされたチタン−サファイアレーザ光源(Coherent Chameleon、90MHz、200fs)によって励起されるDM IRE2 Microscope(Leica)を使ってTPEFスペクトルを得た。TPEF適正曲線(図3A及び図3D)を得て、これを前記数式5にフィッティングさせた(図6A及び図6B)。
【0082】
図6A及び図6Dを参照すれば、一光子蛍光適正曲線及び二光子蛍光適正曲線から計算されたAZn1及びAZn2の解離定数KdOP及びKdTPは、それぞれ1.1±0.1及び0.50±0.04nMである(前記表2参照)。この際、これら二光子染料の検出限界は、nM範囲以下である。特に、ここで注目しなければならない点は、AZn2のKdTP値がさらに小さいということであるが、これは前述したように、AZn2及びZn2+間のより強い結合(前記表3及び図5参照)を意味する。
【0083】
<実施例7>
金属陽イオンに対する選択性の測定
図7A及び図7Bは、それぞれ30mMのMOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)とNa+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+及び1μMのZn2+を添加した場合、1μMのAZn1及びAZn2の相対的蛍光強度を表わすグラフである。グラフのうち、内部が満たされた棒はZn2+が添加された場合であり、内部が満たされていない棒はZn2+が添加されていない場合である。
【0084】
図7A及び図7Bを参照すれば、本発明による二光子染料は、Na+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+と比べてZn2+に対する高い選択度を示す。
【0085】
図8A及び図8Bは、30mMのMOPS及び100mMのKCl混合溶液で自由Zn2+が0.0(白丸)及び1μM(黒四角)である時、1μMのAZn1及びAZn2のpH変化による一光子蛍光強度を表わす。
【0086】
図8A及び図8Bを参照すれば、本発明による二光子染料は、生物学的に連関したpH条件で高い蛍光強度を表わし、pH条件によって影響を受けないということが分かる。
【0087】
以上の結果から本発明による二光子染料は、Zn2+で非常に高い選択性を有し、さらに生体内のpH条件に敏感ではなく、生体内亜鉛イオンに対する二光子染料として非常に有用であるということが分かる。
【0088】
<実施例8>
二光子断面積及び動作スペクトルの測定
二光子断面積(δ)をフェムト秒(fs)蛍光測定技術を使って測定した。
【0089】
AZn1、AZn2、FluZin及びTSQを30mM MOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)で5.0×10−6Mの濃度で溶解させた後、二光子染料の特性が文献上によく知られたフルオレセイン(fluorescein)を対照物質として740−940nmで二光子誘導蛍光強度を測定した。対照物質及びサンプルの二光子誘導蛍光スペクトルの強度を測定し、TPA断面積は、下記数式6によって計算した。
【0090】
【数6】
【0091】
図9は、1.8μM自由Zn2+の条件でAZn1(白四角)、AZn2(黒丸)、FluZin(黒三角)及びTSQ(白逆三角)に対する二光子動作スペクトルを表わす。
【0092】
図9を参照すれば、緩衝溶液でAZn1及びAZn2とZn2+との錯化合物に対するTP動作スペクトルは、780nmで〜90GMのΦδ値を表わし、これは、TSQ及びFluZin−3より4ないし24倍以上大きな数値である。したがって、以上の結果は、本発明による二光子染料によって染色されたサンプルは、従来の二光子染料(TSQ及びFluZin−3)に比べて顕著に明るい映像を表わすことを意味する。このような結果は、前記表2の結果値からも明確に分かる。
【0093】
<実施例9>
本発明による二光子染料を利用した細胞観察
10%FBS(WelGene)、ペニシリン(100ユニット/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したDMEM(WelGene)で293細胞を培養した。
【0094】
映像化の二日前に細胞をガラス底皿(Glass−bottomed dish、MatTek)上に移した後、プレーティングした。標識化のために成長培地を除去し、無FBS DMEMに取り替えた。細胞を処理した後、5%二酸化炭素下で30分間37℃で2μMセンサーを用いてインキュベーションし、細胞をホスフェート緩衝サリーネ(PBS;Gibco)で3回洗浄した後、無色の無血清培地で15分間さらにインキュベーションした。生後1日になったラットの大脳皮質(Sparague−Dawley;SD)から主要皮質(primary cortical)細胞培養物を取った。1U/mlのパパイン(papain、Worthington Biochemical Corporation、NJ、アメリカ)を含有するHank’s balanced solution(HBSS;Gibco BRL、Gaitherburg、MD、USA)に大脳皮質を解離させた後、ポリ−D−リシン及びラミニンコーティングガラスカバースリープ上に100ないし200cells/mm2の条件でプレーティングした後、CO2インキュベーターで2%B−27(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加した無血清培地(Neurobasal Medium、Gibco)の条件で37℃に保持した。試験管内で7ないし15日経過後、皮質細胞培養物をPBSで3回洗浄した後、37℃の温度下で30分間PBSから2μM AZn2でインキュベーションした。
【0095】
×100オイル物体、穿孔数(NA)=1.30のスペクトル共焦点及び多光子顕微鏡(spectral confocal and multiphoton microscopes)(Leica TCS SP2)を使ってAZn2に標識された細胞及び組職の二光子蛍光顕微鏡映像を得た。前記二光子蛍光顕微鏡映像は、モードロックされたチタン−サファイアレーザ光源(Coherent Chameleon、90MHz、200fs)で波長780nm、出力電力1230mW(これは、焦点面からおおよそ10mWの平均電力に対応する)で探針(二光子染料)を励起させることで得た。映像をそれぞれ360−460nm及び500−620nm領域の波長で得るために、信号を400Hzスキャン速度で8ビット未標識された512×512ピクセルで収集するために内部PMTが使われた。
【0096】
図10Aないし図10Eは、2μM AZn2−標識化293細胞のTPM映像であって、それぞれ明るい領域の映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に500ないし620nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に500ないし620nmで収集された映像である。
【0097】
また、図11Aないし図11Eは、2μM AZn1−標識化293細胞のTPM映像であって、それぞれ明るい領域の映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に500ないし620nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に500ないし620nmで収集された映像である。
図10B及び図11Bを参照すれば、本発明による二光子染料(AZn1、AZn2)に標識化された293細胞は、360ないし460nmでTPEF(二光子放出蛍光)を放出しないということが分かる。しかし、図10C及び図11Cを参照すれば、500ないし620nmでは相当なTPEFが放出されることが分かる。
【0098】
比較例として、Mg2+及びCa2+用のアセタン(acedane)−誘導TP二光子染料に標識化された細胞のTPM映像は、それぞれ360ないし460nm及び500ないし620nmでいずれもTPEFを放出し、これは、それぞれサイトゾル及びメンブレンと結合した二光子染料に起因する(H.M.Kim,B.R.Kim,J.H.Hong,J.−S.Park,K.J.Lee,B.R.Cho,Angew.Chem.2007,119,7589−7592;Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,7445−7448参照)。
【0099】
したがって、本発明によるAZn2は、主にサイトゾル分画構造に位置すると判断され、これは、低い分子量に起因すると推定される。したがって、メンブレン付着探針からの如何なる干渉なしに生体内細胞の[Zn2+]iを検出することができる。
【0100】
しかし、さらに本発明による二光子染料は、pH<4の条件で蛍光強度が少しずつ増加するために(図8A及び図8B参照)、酸性小胞体内の二光子染料がTPM映像化に寄与すると判断することができる余地がある。したがって、このような余地または可能性を排除するために、293細胞及び主要皮質培養物を同時にAZn2及び酸性小胞体用のよく知られた一光子染料LysoTracker Red(LTR)で染色し、これにより得られた映像を同様に位置させた後、図12及び図13に表わした。
【0101】
図12は、AZn2及びLTR−標識化された(2μM)293細胞に対する映像であって、(a−e)は、映像化溶液に100μM TPE(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジル)エチレンジアミン)を添加する前、(f−j)は、添加した後の映像である。より具体的に説明すれば、(a、f)は、明るい領域の映像であり、(b、g)及び(c、h)は、それぞれ360−460nm及び500−580nmで収集されたAZn2に標識化された239細胞の擬似(pseudo)色彩化された映像である。また、(d、i)は、600−650nmで収集されたLTRに標識化された293細胞のOPM映像であり、(e、j)は、得られた映像を同様に位置させた(co−localize)映像である。ここで、一光子及び二光子励起は、それぞれ543nm及び780nmであり、スケール棒は30μmであり、また表われた細胞は、重複された実験(n=5)からの代表映像である。
【0102】
また、図13は、AZn1及びLTR−標識化(2μM)293細胞の映像であって、(a−e)は、映像化溶液に100μM TPEN(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジル)エチレンジアミン)を添加する前、(f−j)は、添加した後の映像である。より具体的に説明すれば、(a、f)は、明るい領域の映像であり、(b、g)及び(c、h)は、それぞれ360−460nm及び500−580nmで収集されたAZn1に標識化された239細胞の擬似色彩化された映像である。また、(d、i)は、LTRに標識化された293細胞の600−650nmで収集されたOPM映像であり、(e、j)は、得られた映像を同様に位置させた(co−localized)映像である。ここで、一光子及び二光子励起は、それぞれ543nm及び780nmであり、スケール棒は30μmであり、また表われた細胞は、重複された実験(n=5)からの代表映像である。
【0103】
図12及び図13を参照すれば、同様に位置させた二つの映像は併合されず、さらに100μMのTPEN(これは、メンブレン透過性のZn2+キレート化剤としてZn2+を効果的に除去することができる)で処理した後のTPM映像はTPEFをほとんど放出せず、TPENに処理される前、後のOPM映像がほぼ同一であるということが分かる(図12、図13の(d)、(i)参照))。したがって、このような結果は、本発明による二光子染料が酸性小胞体と結合した探針(二光子染料)からの如何なる干渉や妨害なしにTPMによってニューロン内の[Zn2+]iのみを選択的に検出できるということを表わす。
【0104】
<実験例10>
二光子励起蛍光(TPEF)の分析
本発明の二光子染料が有する有用性を表わすために、Zn2+の放出を誘導できるように内分泌性NO供与体である10mMのS−ニトロソシステイン(SNOC)を添加したAZn2−標識化293細胞のTPEFをモニタリングした後、これを図14に表わした。
【0105】
図14を参照すれば、SNOC添加後、Zn2+の放出によって本発明による二光子染料に標識化された細胞のTPEF強度は徐々に増加することが分かる。また、反対にメンブレン透過性のZn2+キレート化剤としてZn2+を非常に効果的に除去することができるTPEN(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジル)エチレンジアミン)0.1mMを添加するによって蛍光強度が急激に落ちることが分かる。本発明によるまた他の二光子染料であるAZn1のさらに大きなKdのために反応程度が相対的に小さなものを除いては、図13と類似したパターンを表わす。
【0106】
以上の実験結果は、また本発明による二光子染料が1000秒以上の時間の間に生体細胞で[Zn2+]iを明確に検出できるということを表わす。
【0107】
<実験例12>
マウス海馬状突起の微細薄片のモニタリング
組職内細胞の映像化において、本発明の二光子染料が有する有用性を証明するために、マウス海馬状突起の微細薄片をモニタリングしたが、本実験例では、10μMのAZn2で30分間37℃でインキュベーションされたマウス海馬状突起の微細薄片に対する二光子顕微鏡映像を得た。生後14日のラットの薄片は、あまりにも大きくて一つの映像のみを表わしにくいので、〜120μmの厚さに同一平面で得られた複数のTPM映像を得て、これを結合した。
【0108】
図15は、本実験例によるTPM映像であり、これをより詳しく説明すれば、(a)は、10x倍率で〜120μmの深さで得られたTPM映像、(b、c)は、それぞれ200μMのTPENを添加する前、後のCA3領域の透明層(stratum lucidum)で100x倍率映像、(d−f)は、〜100μm厚さの歯状回(dentate gyrus)の肺門(hilus)でのTPM映像に、(d、e)は、それぞれ映像化溶液に50mMのKClを添加する前、後の映像であり、(f)は、(e)に200μMのTPENを添加した後の映像である。
【0109】
図15を参照すれば、CA3の透明層及び歯状回の肺門で強い蛍光強度を表わした((a)の黄色ボックス参照)。より高い倍率で得られた映像は、明確に[Zn2+]iがCA3領域のピラミッド神経の末端部の苔状線維軸索(mossy fiber axon)に濃縮されたことを明確に示す((b)参照)。また、[Zn2+]iを効果的に除去するTPEN添加後、事実上映像でTPEFが消えることは、前記観察結果を明確に証明する((c)参照)。
【0110】
図16は、10μMのAZn2で染色されたマウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門を表わすx20倍率の二光子顕微鏡映像であって、厚みの深さの変化による二光子顕微鏡映像を表わす。
【0111】
図16を参照すれば、80−150μmの深さで得られたTPM(二光子顕微鏡)映像は、z軸深さ(すなわち、厚さ)によって肺門近くに位置する歯状回神経の苔状線維に存在する[Zn2+]i分布を明確に示す。また、メンブレンの極性を無くすことで、Zn2+の放出を誘導するKClを50mM添加した時、TPEFの強度は増加し、TPENで処理した時は減少する。これは、図15の(d)ないし(f)の結果からも分かり、またマウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門に対する相対的二光子蛍光強度を表わす図17を通じても、TPEF添加によるTPEF減少効果を明確に分かる。
【0112】
以上の実験結果は、本発明による二光子染料が生体組職の細胞内に存在する自由Zn2+を80ないし150μmの厚さまで非常に効果的に検出できるということを表わす。
【0113】
結論的に、本発明による二光子染料は、Zn2+に対して24ないし52倍のTPEF増加効果を有し、それぞれ1.1±0.1及び0.50±0.04nMの解離定数(KdTP)を有する。また、生物学的に連関したpH条件でpHに影響を受けず、従来のZn2+を検出するための二光子染料であるTSQ及びFluZin−3に比べて4ないし24倍以上の強いTPEFを発生させる。また、本発明による二光子染料は、1000秒以上の時間範囲で細胞内の自由Zn2+を選択的な検出することができるが、これは、従来の如何なる二光子染料より優れた特性である。さらに、本発明による二光子染料は、メンブレン結合二光子染料または他の金属イオンによる干渉や妨害を受けず、非常に効果的に細胞内の遊離亜鉛イオンのみを映像化して、モニタリング可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法に関連する分野に適用されうる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法に係り、さらに具体的には、生きている細胞をより深く長期間探知することができる細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイム映像に適した二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛は、酵素及びタンパク質の必須要素であって、脳では、細胞質内遊離亜鉛イオン(Zn2+)の数ミリモル(millimole)がシナプス小胞内に貯蔵されており、シナプス駆動によって放出されて、呼吸神経伝達を調節すると知られている。亜鉛の生物学的役割を理解するために、キノリン(TSQ、Zinquin、及びTFLZn)及び蛍光体(FluZn−3、Znpyr、ZnAFなど)から誘導された多様な蛍光探針物質が開発されて来た。
【0003】
しかし、これらの大部分はかなり短い励起波長を要求するか、pHに敏感であるという限界があった。表面組成物質(surface preparation artifact)の干渉なしに表面から一定深さ(特に>80μm)以上の生きている組職内部で生物学的活性を視覚化するためには、低い励起エネルギーを有する二光子を活用する二光子顕微鏡(TPM)が非常に効果的である。特に、励起のために2個の近赤外線光子を採用するTPMは、一光子顕微鏡に比べてさまざまな長所を提供することができるが、具体的に増加した透過深さ、局所化された励起、及び観測時間の増加などがまさにそれである。
【0004】
しかし、このような長所をいずれも有し、Zn2+を効果的にモニタリングできる二光子染料は、現在ほとんど開示されていない実情である。Zn2+に対する幾つかのpH−抵抗性を有するセンシング物質(sensor)が報告はされているが、これも細胞質に適用するためには、微少注入せねばならない問題があり、また低水溶解度に起因してエタノールのような共溶媒を相当量使わなければならない問題がある。
【0005】
したがって、亜鉛イオンに対して効果的な二光子染料として細胞を染色させるために、十分な水溶解度、亜鉛イオンに対する高い選択度、相当な二光子断面積(two photon cross section)、pH−抵抗性、及び高い光安定性などのような特性をいずれも満足する細胞質内の遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料は、現在全くない実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が果そうとする一番目の技術的課題は、生体内、特に細胞質内に存在する遊離亜鉛イオンをより効果的かつ選択的にモニタリングできる二光子染料を提供することである。
【0007】
本発明が果そうとする二番目の技術的課題は、前記二光子染料の製造方法を提供することである。
【0008】
また、本発明が果そうとする三番目の技術的課題は、前記二光子染料を利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記一番目の技術的課題を果たすために、化学式1の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
前記式1で、Rは、水素またはOCH3である。
【0012】
前記二番目の課題を果たすために、本発明は、
(a)下記化学式2の化合物を有機溶媒に混入した後、撹拌して第1混合物を収得する段階と、
【0013】
【化2】
【0014】
(b)前記収得された第1混合物に下記化学式3の化合物を添加、反応させて前記化学式1の化合物を合成する段階と、を含む細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法を提供する。
【0015】
【化3】
【0016】
本発明による二光子染料の製造方法は、前記三番目の課題を果たすために、前記(b)段階後、前記(b)段階の結果物から前記化学式1の混合物を分離する段階をさらに含み、前記分離は、抽出工程によって遂行される。また、本発明の一実施例で、前記有機溶媒は、1,3−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを含む。
【0017】
前記三番目の課題を果たすための本発明は、前記化学式1の二光子染料を観察対象となる細胞質内に注入した後、放出される二光子励起蛍光(TPEF)映像を観察する段階を含む細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法を提供する。前記二光子励起蛍光映像は、前記観察対象の表面から80ないし150μmの深さ以内に存在する細胞質から放出される。また、前記二光子蛍光映像の観察段階は、1000秒以上進行することを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明による二光子染料は、Zn2+に対して24ないし52倍のTPEF増加効果を有し、それぞれ1.1±0.1及び0.50±0.04nMの解離定数(KdTP)を有する。また、生物学的に連関したpH範囲でpH条件に影響を受けず、従来のZn2+を検出するための二光子染料であるTSQ及びFluZin−3などに比べて4ないし24倍以上の増加した強度のTPEFを発生させる。また、本発明による二光子染料は、1000秒以上の時間範囲で細胞内の自由Zn2+を選択的な検出することができるが、これは従来の如何なる二光子染料より優れた特性である。さらに、本発明による二光子染料は、メンブレン結合二光子染料または他の金属イオンによる干渉や妨害を受けず、非常に効果的に細胞内の遊離亜鉛イオンのみを映像化して、モニタリング可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】図1Aは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図1B】図1Bは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図1C】図1Cは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図1D】図1Dは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【図2A】図2Aは、本発明の実施例2の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図2B】図2Bは、本発明の実施例2の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図2C】図2Cは、実施例1の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図2D】図2Dは、実施例1の二光子染料に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【図3A】図3Aは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3B】図3Bは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3C】図3Cは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3D】図3Dは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3E】図3Eは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図3F】図3Fは、発明によるMg2+濃度変化による二光子染料の一光子または二光子吸光または発光スペクトルである。
【図4A】図4Aは、それぞれAZn1及びAZn2と自由Zn2+との錯化に対するヒルグラフである。
【図4B】図4Bは、それぞれAZn1及びAZn2と自由Zn2+との錯化に対するヒルグラフである。
【図5】B3LYP/6−31G*レベルでAZn1−Zn2+及びAZn2−Zn2+の錯化合物の最適化された幾何学的構造を表わす立体図である。
【図6A】図6Aは、それぞれ実施例2の二光子染料(AZn1)及び実施例1の二光子染料(AZn2)の蛍光適正曲線を表わす。
【図6B】図6Bは、それぞれ実施例2の二光子染料(AZn1)及び実施例1の二光子染料(AZn2)の蛍光適正曲線を表わす。
【図7A】図7Aは、それぞれ30mMのMOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)とNa+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+及び1μMのZn2+を添加した場合、1μMのAZn1及びAZn2の相対的蛍光強度を表わすグラフである。
【図7B】図7Bは、それぞれ30mMのMOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)とNa+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+及び1μMのZn2+を添加した場合、1μMのAZn1及びAZn2の相対的蛍光強度を表わすグラフである。
【図8A】図8Aは、30mMのMOPS及び100mMのKCl混合溶液で自由Zn2+が0.0(白丸)及び1μM(黒四角)である時、1μMのAZn1及びAZn2のpH変化による一光子蛍光強度を表わす。
【図8B】図8Bは、30mMのMOPS及び100mMのKCl混合溶液で自由Zn2+が0.0(白丸)及び1μM(黒四角)である時、1μMのAZn1及びAZn2のpH変化による一光子蛍光強度を表わす。
【図9】1.8μM自由Zn2+の条件でAZn1(白四角)、AZn2(黒丸)、FluZin(黒三角)及びTSQ(白逆三角)に対する二光子動作スペクトルを表わす。
【図10】2μM AZn2−標識化293細胞の二光子顕微鏡(TPM)映像である。
【図11】2μM AZn1−標識化293細胞のTPM映像である。
【図12】AZn2及びLTR−標識化された(2μM)293細胞に対するTPM映像である。
【図13】AZn1及びLTR−標識化(2μM)293細胞のTPM映像である。
【図14】10mMのS−ニトロソシステイン(SNOC)を添加したAZn2−標識化293細胞のTPEFのスペクトルである。
【図15】マウス海馬状突起の微細薄片に対するTPM映像である。
【図16】10μMのAZn2で染色されたマウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門に対するTPM映像である。
【図17】マウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門に対する相対的二光子蛍光強度を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面及び実施例を参照して、本発明をより詳しく説明する。
【0021】
本発明は、前記化学式1の構造を有する化合物を細胞質内遊離亜鉛モニタリング用の二光子染料として提供する。本発明による二光子染料は、前記蛍光部位(発光端)にアセチル−6−(ジメチルアミノ)ナフタレン(アセタン)、亜鉛イオンのキレート基として、N,N−ジ−(2−ピコリル)エチレンジアミン(DPEN)の誘導体が結合した構造を有する。特に、本発明は、前記構造の二光子染料を遊離亜鉛イオンの二光子染料として使う場合、細胞質内の遊離亜鉛イオンを長期間映像化することが可能であり、さらに、特に呉標的化または光ブリーチイングのような問題なしに80μm以上の深さでも、遊離亜鉛の映像化を可能にする。
【0022】
以下、本発明による細胞質内遊離亜鉛イオンの二光子染料の製造方法を説明し、前記二光子染料が有する優れた特性は、下記実験例を通じて説明する。
【0023】
<実施例1>
N−(4−(2−(ビス((ピリジン−2−イル)メチル)アミノ)エチルアミノ)−3−メトキシフェニル)−2−(N−(2−アセチルナフタレン−6−イル)−N−メチルアミノ)アセトアミドの合成
【0024】
<実施例1−1>
N−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)エチレンジアミンの合成
2−クロロ−5−ニトロアニソール(3.0g、16.0mmol)及びエチレンジアミン(7.7g、8.6mL、0.13mol)を水(180mL)に混入させた後、110℃の温度で72時間撹拌した。撹拌後、得られた混合物をエチルアセテートを利用、抽出した後、MgSO4を利用、乾燥させ、真空条件で濾過、濃縮させた。以後、クロロホルム/メタノール(5:1)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記濃縮後、得られた未精製生成物を精製し、エタノールから再結晶化を通じてさらに精製した。これにより、下記化学式4の化合物を得た。
【0025】
【化4】
【0026】
収得2.0g(60%);mp183℃;IR(KBr):3440、2960、2890cm−1;1H NMR(400MHz、CDCl3):δ7.91(dd、1H、J=8.9、J=2.1Hz)、7.63(d、1H、J=2.1Hz)、6.52(d、1H、J=8.9Hz)、5.41(br s、1H)、3.94(s、3H)、3.31(t、2H、J=5.4Hz)、3.03(t、2H、J=5.4Hz);13C NMR(100MHz、CDCl3):δ171.8、145.4、144.4、120.1、106.6、104.9、56.2、43.4、39.1ppm;Anal.Calcd for C9H13N3O3:C、51.73;H、6.51;N、19.44.Found:C、51.38;H、6.20;N、19.29。
【0027】
<実施例1−2>
N−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−N’,N’−[ビス(2−ピリジルメチル)]エチレンジアミンの合成
前記実験例1−1の化合物、2−(クロロメチル)ピリジン塩酸塩(2.9g、17.5mmol)、KI(0.52g、3.0mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(20g、27mL、0.16mol)をアセトニトリル(50mL)に混入させた後、窒素条件下で16時間還流させた。還流後、得られた混合物をエチルアセテートを利用、抽出し、MgSO4を利用、乾燥させた後、真空条件で濾過、濃縮させた。以後、クロロホルム/メタノール(4:1ないし1:1)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記濃縮後、得られた未精製生成物を精製して、下記化学式5の化合物を精製した。
【0028】
【化5】
【0029】
収得2.2g(90%);IR(KBr):3428cm−1;1H NMR(400MHz、CDCl3):δ8.55(dd、2H、J=5.0、J=2.0Hz)、7.85(dd、1H、J=9.0、J=2.0Hz)、7.64(td、2H、J=7.5、2.0Hz)、7.62(d、1H、J=2.0Hz)、7.44(dd、2H、J=7.5、1.0Hz)、7.17(ddd、2H、J=7.5、5.0、1.0Hz)、6.36(d、1H、J=9.0Hz)、6.10(br s、1H)、3.99(s、3H)、3.92(s、4H)、3.29(t、2H、J=5.4Hz)、2.93(t、2H、J=5.4Hz);13C NMR(100MHz、CDCl3):δ170.5、159.0、149.2、145.5、144.5、137.0、123.7、122.6、120.1、106.7、104.9、60.1、52.9、37.6、23.3ppm;Anal.Calcd for C21H23N5O3:C、64.28;H、5.99;N、17.24.Found:C、64.11;H、5.89;N、17.80。
【0030】
<実施例1−3>
N−(4−アミノ−2−メトキシフェニル)−N’,N’−[ビス(2−ピリジルメチル)]エチレンジアミンの合成
実施例1−2の混合物(1.2g、3.00mmol)及びSnCl2・H2O(7.4g、33mmol)の混合物をアセトニトリル(50mL)及び無水エタノール(40mL)で12時間還流させた後、100mLの飽和炭酸ナトリウム100mLで中和させ、ジクロロメタンで抽出した。以後、クロロホルム/メタノール(20:3)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記得られた未精製生成物を精製して、下記化学式6の化合物を得た。
【0031】
【化6】
【0032】
収得0.9g(80%);IR(KBr):3419cm−1;1H NMR(400MHz、CDCl3):δ8.50(dd、2H、J=J=5.0、J=2.0Hz)、7.63(td、2H、J=7.5、2.0Hz)、7.53(dd、2H、J=7.5、1.0Hz)、7.13(ddd、2H、J=7.5、5.0、1.0Hz)、6.39(d、1H、J=9.0Hz)、6.27(d、1H、J=2.0Hz)、6.22(dd、1H、J=9.0、J=2.0Hz)、3.86(s、4H)、3.84(s、3H)、3.15(t、2H、J=5.4Hz)、2.88(t、2H、J=5.4Hz);13C NMR(100MHz、CDCl3):δ159.6、149.1、148.4、137.6、136.7、131.2、123.2、122.3、112.0、107.9、100.1、60.5、55.7、53.4、42.3ppm;Anal.Calcd for C21H25N5O:C、69.55;H、6.89;N、18.98.Found:C、69.40;H、6.93;N、19.27。
【0033】
<実施例1−4>
遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料(AZn2)の合成
6−アシル−2−[N−メチル−N−(カルボキシメチル)アミノ]ナフタレン(0.07g、0.27mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(0.037g、0.27mmol)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.057g、0.28mmol)をジクロロメタンに混入させた後、30分間撹拌した。以後、前記実施例1−4で得られた化学式6の化合物を添加した後、窒素条件下で12時間撹拌し、得られた生成物をジクロロメタンで抽出し、MgSO4を利用、乾燥させた後、溶媒は真空条件で除去した。以後、クロロホルム/メタノール(20:1)を溶離液とするフラッシュカラムクロマトグラフィーを用いて前記得られた未精製生成物を精製して、下記化学式7の遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料を合成した。
【0034】
【化7】
【0035】
<実施例2>
遊離亜鉛イオンモニタリング用の二光子染料(AZn1)の合成
実施例1−3の化学式6の化合物の代わりに、下記化学式8の化合物を使ったものを除いては、実施例1−4と同じ方法で化学式9の二光子染料を合成した。
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
<実験例1>
水溶解度の測定
本発明による実施例1及び実施例2の二光子染料(AZn2及びAZn1)少量をDMSOに溶解させてストック溶液(1.0x10−3M)を準備した。以後、前記溶液を(6.0x10−3ないし6.0x10−5)Mで希釈させてマイクロ注射器を利用、3.0mLの水を含有するキュベットに添加した。あらゆる場合、水でDMSO濃度は0.2%を保持した。
【0039】
図1Aないし図1Dは、異なる濃度の二光子染料に対する蛍光強度を表わすグラフである。
【0040】
それぞれAZn2及びAZn1に対する濃度対比蛍光強度を表わす図1B及び図1Dを説明すれば、染料濃度に対する蛍光強度のグラフは、低濃度で線形を表わすが、高濃度に行くほど下側に落ちる。この場合、染料の水溶解度は、線形パターンを表わす最高濃度で決定され、本発明による二つの染料いずれも3.0μMの水溶解度を表わした。
【0041】
したがって、本発明による二光子染料が有する3.0μM以上の水溶解度は、細胞の染色において非常に効果的であるということを表わす。
【0042】
<実験例2>
吸光スペクトルの測定
本発明による二光子染料の吸光スペクトルをHewlett−Packard8453ダイオード整列スペクトロメーター上で測定し、蛍光スペクトルを1cm標準石英セルを備えたAmico−Bowman series2発光スペクトロメーターを使って測定した。蛍光量子収率は、参考文献の従来文献に開示したことによってクマリン(Coumarin)307を使って測定した。
【0043】
図2A及び図2Bは、本発明による二光子染料であるAZn1の一光子吸収及び発光スペクトルであり、図2C及び図2Dは、本発明による二光子染料であるAZn2に対する一光子吸収及び発光スペクトルである。
【0044】
また、下記表1は、多様な溶媒条件で本発明に実施例2及び実施例1の二光子染料(AZn1及びAZn2)が有する最大発光波長(λmax(l))、最大蛍光波長(λmaxfl)及び蛍光量子収率を表わす。
【0045】
【表1】
【0046】
*:カッコ内の数値は、溶媒極性に対する正規化された経験的パラメータである。λmaxはnm単位であり、また蛍光量子収率±15%。
【0047】
図2Aないし図2D及び前記表1を参照すれば、1,4−ジオキサン(dioxane)<DMF<EtOH<H2Oの順序で溶媒極性が増加するにつれて大きな赤色移動(bathochromic shift)が観察されるという点は、本発明による二光子染料が極性探針子として非常に有用であるということを表わす。
【0048】
<実験例3>
Zn2+濃度変化による吸光度の変化測定
本発明によるZm2+濃度変化による二光子染料(AZn2、AZn1)の一光子または二光子吸光または発光スペクトルを測定し、これを図3Aないし図3Fに示した。
【0049】
図3Aないし図3Fから分かるように、MOPSバッファ溶液中の実施例1及び実施例2の二光子染料(AZn2、AZn1)(30mM、pH7.2、I−=0.10)にZn2+を微細に増分しながら添加した時、二光子励起蛍光(発光)強度及び一光子励起蛍光強度は徐々に増加するが、吸収スペクトルには如何なる影響がなかった。これは、Zn2+との錯化(complexation)による光誘導電子−伝達(photoinduced electron−transfer、PET)過程の遮断に起因したと推測される。
【0050】
<実験例4>
常用探針との二光子スペクトルの特性比較
一光子蛍光及び二光子蛍光方法のうち、実施例1の二光子染料(AZn2)が有する蛍光増加因子(Fluorescence enhancement factor)[FEF=(F−Fmin)/Fmin]は、実施例2の二光子染料(AZn1)が有する蛍光強化因子より2.5倍以上大きいが、これは、過剰のZn2+がない場合、実施例1の二光子染料が実施例2の二光子染料よりさらに低い蛍光量子収率(Φ)を有するのに比べて、過剰のZn2+が存在する場合、実施例1の二光子染料(AZn2)が実施例2の二光子染料(AZn1)よりさらに大きな量子収率(Φ)を有するためである。
【0051】
このような分析結果は、下記表3の測定結果からより容易に理解されうる。
【0052】
【表2】
【0053】
前記測定結果は、いずれも20mM MOPS、100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2の条件下でZn2+を添加するか、添加しない場合に分けて測定した。また、λmaxはnm単位であって、一光子吸光及び発光スペクトルであり、Zn2+の解離定数(dissociation constant)は、一光子(KdOP)及び二光子方法(KdTP)によって測定し、蛍光増加因子も一光子方法(OP)及び二光子方法によって測定した。λmax(2)は、nm単位の二光子励起スペクトルを意味し、δは、光子当たりピーク二光子断面積で10−5cm4sの単位を有し、Φδは、二光子動作断面積(twophoton action cross−section)を表わす。前記測定結果のうち、二光子励起蛍光強度はあまりにも弱くて断面積を正確に測定できなかったために、これをndで表わし、TSQ+Zn2+の測定結果は、メタノールでZn2+の存在下で得られた数値である。
【0054】
<実験例5>
コンピュータ分析
N,N−ジ−2−ピコリルエチレンジアミン(DPEN、R1)、2−メトキシ−DPEN(R2)及びAZn1とAZn2とのZn錯化合物(AZn1−Zn2+、AZn2−Z2+)の幾何学的構成をガウス03プログラムで実行される密度機能理論(DFT)でB3LYP/6−31Gレベルを利用、最適化した。計算されたHOMO及びLUMOエネルギーを下記表3に表わした。
【0055】
【表3】
【0056】
表3を参照すれば、あらゆる場合、CH3O基は、HOMOエネルギーレベルを上昇させることが分かる。このような傾向性は、分子がより複雑になる場合、すなわち、R>AZn>AZn−Zn2+に行くほど弱化される。これは、R2のHOMOからAZn2への電子移動は、R1からAZn1に進行する場合よりさらに大きなエネルギー、すなわち、さらに大きな熱を発散することを意味する(発熱反応)。また、DPEN(R1)、2−メトキシ−DPEN(R2)、AZn1及びAZn2のHOMOエネルギーは、それぞれ−4.948、−4.246、−8.762及び8.733eVということが分かるが、これは、結局R2からAZn2へのPETは、熱力学的観点でさらに効果的に起き、その結果、Φを落とす。一方、AZn2−Zn2+のさらに大きなΦ(表2参照)は、さらに強い結合からその理由を捜すことができるが、強い結合は振動緩和経路を減少させるためである。
【0057】
図4A及び図4Bは、それぞれAZn1及びAZn2と自由Zn2+との錯体に対するヒルグラフ(Hill plot)である。
【0058】
前記図4A及び図4Bを参照すれば、傾きが1である直線で表われたヒルグラフは、Zn2+と本発明による二光子染料とは1:1で錯化合物を形成することを表わす。
【0059】
さらに、最適化されたAZn1−Zn2+及びAZn2−Zn2+錯体の幾何学的構造は、三角状の二重ピラミッド構造であり、ここで、Zn2+イオンは、4個の窒素原子及び一つの水分子によって配位され、これは、B3LYP/6−31G*レベルでAZn1−Zn2+及びAZn2−Zn2+の錯化合物の最適化された幾何学的構造を表わした図5を通じても分かる。
【0060】
また、AZn1−Zn2+とAZn2−Zn2+複合体の結合長と結合角とをB3LYP/6−31G**レベルで計算して、下記表4に表わした。
【0061】
【表4】
【0062】
<実施例6>
解離定数(KdOP及びKdTP)の決定
多様な量のZnSO4及び10mMのEGTA(エチレングリコール−ビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸)を含有するMOPS(4−モルホリンプロパンスルホン酸)緩衝溶液(30mM、pH7.2、0.1M KCl)を準備した。
【0063】
自由Zn2+の濃度([Zn2+]free)を下記数式1を用いてKZn−EGTAapp,[EGTA]total及び[Zn2+]totalから計算した。
【0064】
【数1】
【0065】
ここで、
【0066】
【数2】
【0067】
及び、
【0068】
【数3】
【0069】
である。
【0070】
したがって、
【0071】
【数4】
【0072】
になる。
【0073】
以後、EGTA(KZn−EGTA)のZn2+錯体の安定性定数を公知された方法によって得て、したがって、EGTA(pH7.2、0.1M KCl、25℃)に対して、pK1=9.40、pK2=8.79、pK3=2.70、logKZn−EGTA=12.6が得られる。
【0074】
0.1Mイオン強度でワークアウトされる時、すべての陽性子化定数は0.11ほど上側に補正され、[EGTA]totalは10mMで固定され、[Zn2+]totalは0ないし9.5mMの範囲である。
【0075】
各溶液に対する計算された[Zn2+]free濃度は、下記表5のようである。
【0076】
【表5】
【0077】
二光子染料に対する明確な解離定数を決定するために、前記図3B及び図3Eから下記数式5を用いて蛍光適正曲線を求めた。
【0078】
【数5】
【0079】
ここで、Fは蛍光強度、Fmaxは最高蛍光強度であり、FoはZn2+がない条件での蛍光強度、[Zn2+]freeは自由Zn2+濃度を表わす。
【0080】
図6A及び図6Bは、それぞれ実施例2の二光子染料(AZn1)及び実施例1の二光子染料(AZn2)の蛍光適正曲線を表わす。
【0081】
数式5による適正曲線(図2C)に最もよく符合されるKd数値を商用アクセルプログラムを使って計算した。また、二光子過程でのKd数値を決定するために、780nmの波長及び1180mWの出力にセッティングされ(焦点平面からおおよそ10mWに該当)、モードロックされたチタン−サファイアレーザ光源(Coherent Chameleon、90MHz、200fs)によって励起されるDM IRE2 Microscope(Leica)を使ってTPEFスペクトルを得た。TPEF適正曲線(図3A及び図3D)を得て、これを前記数式5にフィッティングさせた(図6A及び図6B)。
【0082】
図6A及び図6Dを参照すれば、一光子蛍光適正曲線及び二光子蛍光適正曲線から計算されたAZn1及びAZn2の解離定数KdOP及びKdTPは、それぞれ1.1±0.1及び0.50±0.04nMである(前記表2参照)。この際、これら二光子染料の検出限界は、nM範囲以下である。特に、ここで注目しなければならない点は、AZn2のKdTP値がさらに小さいということであるが、これは前述したように、AZn2及びZn2+間のより強い結合(前記表3及び図5参照)を意味する。
【0083】
<実施例7>
金属陽イオンに対する選択性の測定
図7A及び図7Bは、それぞれ30mMのMOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)とNa+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+及び1μMのZn2+を添加した場合、1μMのAZn1及びAZn2の相対的蛍光強度を表わすグラフである。グラフのうち、内部が満たされた棒はZn2+が添加された場合であり、内部が満たされていない棒はZn2+が添加されていない場合である。
【0084】
図7A及び図7Bを参照すれば、本発明による二光子染料は、Na+、Ca2+、Mg2+;10μMのMn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Cd2+と比べてZn2+に対する高い選択度を示す。
【0085】
図8A及び図8Bは、30mMのMOPS及び100mMのKCl混合溶液で自由Zn2+が0.0(白丸)及び1μM(黒四角)である時、1μMのAZn1及びAZn2のpH変化による一光子蛍光強度を表わす。
【0086】
図8A及び図8Bを参照すれば、本発明による二光子染料は、生物学的に連関したpH条件で高い蛍光強度を表わし、pH条件によって影響を受けないということが分かる。
【0087】
以上の結果から本発明による二光子染料は、Zn2+で非常に高い選択性を有し、さらに生体内のpH条件に敏感ではなく、生体内亜鉛イオンに対する二光子染料として非常に有用であるということが分かる。
【0088】
<実施例8>
二光子断面積及び動作スペクトルの測定
二光子断面積(δ)をフェムト秒(fs)蛍光測定技術を使って測定した。
【0089】
AZn1、AZn2、FluZin及びTSQを30mM MOPS緩衝溶液(100mM KCl、10mM EGTA、pH7.2)で5.0×10−6Mの濃度で溶解させた後、二光子染料の特性が文献上によく知られたフルオレセイン(fluorescein)を対照物質として740−940nmで二光子誘導蛍光強度を測定した。対照物質及びサンプルの二光子誘導蛍光スペクトルの強度を測定し、TPA断面積は、下記数式6によって計算した。
【0090】
【数6】
【0091】
図9は、1.8μM自由Zn2+の条件でAZn1(白四角)、AZn2(黒丸)、FluZin(黒三角)及びTSQ(白逆三角)に対する二光子動作スペクトルを表わす。
【0092】
図9を参照すれば、緩衝溶液でAZn1及びAZn2とZn2+との錯化合物に対するTP動作スペクトルは、780nmで〜90GMのΦδ値を表わし、これは、TSQ及びFluZin−3より4ないし24倍以上大きな数値である。したがって、以上の結果は、本発明による二光子染料によって染色されたサンプルは、従来の二光子染料(TSQ及びFluZin−3)に比べて顕著に明るい映像を表わすことを意味する。このような結果は、前記表2の結果値からも明確に分かる。
【0093】
<実施例9>
本発明による二光子染料を利用した細胞観察
10%FBS(WelGene)、ペニシリン(100ユニット/ml)及びストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したDMEM(WelGene)で293細胞を培養した。
【0094】
映像化の二日前に細胞をガラス底皿(Glass−bottomed dish、MatTek)上に移した後、プレーティングした。標識化のために成長培地を除去し、無FBS DMEMに取り替えた。細胞を処理した後、5%二酸化炭素下で30分間37℃で2μMセンサーを用いてインキュベーションし、細胞をホスフェート緩衝サリーネ(PBS;Gibco)で3回洗浄した後、無色の無血清培地で15分間さらにインキュベーションした。生後1日になったラットの大脳皮質(Sparague−Dawley;SD)から主要皮質(primary cortical)細胞培養物を取った。1U/mlのパパイン(papain、Worthington Biochemical Corporation、NJ、アメリカ)を含有するHank’s balanced solution(HBSS;Gibco BRL、Gaitherburg、MD、USA)に大脳皮質を解離させた後、ポリ−D−リシン及びラミニンコーティングガラスカバースリープ上に100ないし200cells/mm2の条件でプレーティングした後、CO2インキュベーターで2%B−27(Gibco)及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加した無血清培地(Neurobasal Medium、Gibco)の条件で37℃に保持した。試験管内で7ないし15日経過後、皮質細胞培養物をPBSで3回洗浄した後、37℃の温度下で30分間PBSから2μM AZn2でインキュベーションした。
【0095】
×100オイル物体、穿孔数(NA)=1.30のスペクトル共焦点及び多光子顕微鏡(spectral confocal and multiphoton microscopes)(Leica TCS SP2)を使ってAZn2に標識された細胞及び組職の二光子蛍光顕微鏡映像を得た。前記二光子蛍光顕微鏡映像は、モードロックされたチタン−サファイアレーザ光源(Coherent Chameleon、90MHz、200fs)で波長780nm、出力電力1230mW(これは、焦点面からおおよそ10mWの平均電力に対応する)で探針(二光子染料)を励起させることで得た。映像をそれぞれ360−460nm及び500−620nm領域の波長で得るために、信号を400Hzスキャン速度で8ビット未標識された512×512ピクセルで収集するために内部PMTが使われた。
【0096】
図10Aないし図10Eは、2μM AZn2−標識化293細胞のTPM映像であって、それぞれ明るい領域の映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に500ないし620nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に500ないし620nmで収集された映像である。
【0097】
また、図11Aないし図11Eは、2μM AZn1−標識化293細胞のTPM映像であって、それぞれ明るい領域の映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加する前に500ないし620nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に360ないし460nmで収集された映像、映像化溶液に10mM SNOCを添加した後に500ないし620nmで収集された映像である。
図10B及び図11Bを参照すれば、本発明による二光子染料(AZn1、AZn2)に標識化された293細胞は、360ないし460nmでTPEF(二光子放出蛍光)を放出しないということが分かる。しかし、図10C及び図11Cを参照すれば、500ないし620nmでは相当なTPEFが放出されることが分かる。
【0098】
比較例として、Mg2+及びCa2+用のアセタン(acedane)−誘導TP二光子染料に標識化された細胞のTPM映像は、それぞれ360ないし460nm及び500ないし620nmでいずれもTPEFを放出し、これは、それぞれサイトゾル及びメンブレンと結合した二光子染料に起因する(H.M.Kim,B.R.Kim,J.H.Hong,J.−S.Park,K.J.Lee,B.R.Cho,Angew.Chem.2007,119,7589−7592;Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,7445−7448参照)。
【0099】
したがって、本発明によるAZn2は、主にサイトゾル分画構造に位置すると判断され、これは、低い分子量に起因すると推定される。したがって、メンブレン付着探針からの如何なる干渉なしに生体内細胞の[Zn2+]iを検出することができる。
【0100】
しかし、さらに本発明による二光子染料は、pH<4の条件で蛍光強度が少しずつ増加するために(図8A及び図8B参照)、酸性小胞体内の二光子染料がTPM映像化に寄与すると判断することができる余地がある。したがって、このような余地または可能性を排除するために、293細胞及び主要皮質培養物を同時にAZn2及び酸性小胞体用のよく知られた一光子染料LysoTracker Red(LTR)で染色し、これにより得られた映像を同様に位置させた後、図12及び図13に表わした。
【0101】
図12は、AZn2及びLTR−標識化された(2μM)293細胞に対する映像であって、(a−e)は、映像化溶液に100μM TPE(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジル)エチレンジアミン)を添加する前、(f−j)は、添加した後の映像である。より具体的に説明すれば、(a、f)は、明るい領域の映像であり、(b、g)及び(c、h)は、それぞれ360−460nm及び500−580nmで収集されたAZn2に標識化された239細胞の擬似(pseudo)色彩化された映像である。また、(d、i)は、600−650nmで収集されたLTRに標識化された293細胞のOPM映像であり、(e、j)は、得られた映像を同様に位置させた(co−localize)映像である。ここで、一光子及び二光子励起は、それぞれ543nm及び780nmであり、スケール棒は30μmであり、また表われた細胞は、重複された実験(n=5)からの代表映像である。
【0102】
また、図13は、AZn1及びLTR−標識化(2μM)293細胞の映像であって、(a−e)は、映像化溶液に100μM TPEN(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジル)エチレンジアミン)を添加する前、(f−j)は、添加した後の映像である。より具体的に説明すれば、(a、f)は、明るい領域の映像であり、(b、g)及び(c、h)は、それぞれ360−460nm及び500−580nmで収集されたAZn1に標識化された239細胞の擬似色彩化された映像である。また、(d、i)は、LTRに標識化された293細胞の600−650nmで収集されたOPM映像であり、(e、j)は、得られた映像を同様に位置させた(co−localized)映像である。ここで、一光子及び二光子励起は、それぞれ543nm及び780nmであり、スケール棒は30μmであり、また表われた細胞は、重複された実験(n=5)からの代表映像である。
【0103】
図12及び図13を参照すれば、同様に位置させた二つの映像は併合されず、さらに100μMのTPEN(これは、メンブレン透過性のZn2+キレート化剤としてZn2+を効果的に除去することができる)で処理した後のTPM映像はTPEFをほとんど放出せず、TPENに処理される前、後のOPM映像がほぼ同一であるということが分かる(図12、図13の(d)、(i)参照))。したがって、このような結果は、本発明による二光子染料が酸性小胞体と結合した探針(二光子染料)からの如何なる干渉や妨害なしにTPMによってニューロン内の[Zn2+]iのみを選択的に検出できるということを表わす。
【0104】
<実験例10>
二光子励起蛍光(TPEF)の分析
本発明の二光子染料が有する有用性を表わすために、Zn2+の放出を誘導できるように内分泌性NO供与体である10mMのS−ニトロソシステイン(SNOC)を添加したAZn2−標識化293細胞のTPEFをモニタリングした後、これを図14に表わした。
【0105】
図14を参照すれば、SNOC添加後、Zn2+の放出によって本発明による二光子染料に標識化された細胞のTPEF強度は徐々に増加することが分かる。また、反対にメンブレン透過性のZn2+キレート化剤としてZn2+を非常に効果的に除去することができるTPEN(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ピリジル)エチレンジアミン)0.1mMを添加するによって蛍光強度が急激に落ちることが分かる。本発明によるまた他の二光子染料であるAZn1のさらに大きなKdのために反応程度が相対的に小さなものを除いては、図13と類似したパターンを表わす。
【0106】
以上の実験結果は、また本発明による二光子染料が1000秒以上の時間の間に生体細胞で[Zn2+]iを明確に検出できるということを表わす。
【0107】
<実験例12>
マウス海馬状突起の微細薄片のモニタリング
組職内細胞の映像化において、本発明の二光子染料が有する有用性を証明するために、マウス海馬状突起の微細薄片をモニタリングしたが、本実験例では、10μMのAZn2で30分間37℃でインキュベーションされたマウス海馬状突起の微細薄片に対する二光子顕微鏡映像を得た。生後14日のラットの薄片は、あまりにも大きくて一つの映像のみを表わしにくいので、〜120μmの厚さに同一平面で得られた複数のTPM映像を得て、これを結合した。
【0108】
図15は、本実験例によるTPM映像であり、これをより詳しく説明すれば、(a)は、10x倍率で〜120μmの深さで得られたTPM映像、(b、c)は、それぞれ200μMのTPENを添加する前、後のCA3領域の透明層(stratum lucidum)で100x倍率映像、(d−f)は、〜100μm厚さの歯状回(dentate gyrus)の肺門(hilus)でのTPM映像に、(d、e)は、それぞれ映像化溶液に50mMのKClを添加する前、後の映像であり、(f)は、(e)に200μMのTPENを添加した後の映像である。
【0109】
図15を参照すれば、CA3の透明層及び歯状回の肺門で強い蛍光強度を表わした((a)の黄色ボックス参照)。より高い倍率で得られた映像は、明確に[Zn2+]iがCA3領域のピラミッド神経の末端部の苔状線維軸索(mossy fiber axon)に濃縮されたことを明確に示す((b)参照)。また、[Zn2+]iを効果的に除去するTPEN添加後、事実上映像でTPEFが消えることは、前記観察結果を明確に証明する((c)参照)。
【0110】
図16は、10μMのAZn2で染色されたマウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門を表わすx20倍率の二光子顕微鏡映像であって、厚みの深さの変化による二光子顕微鏡映像を表わす。
【0111】
図16を参照すれば、80−150μmの深さで得られたTPM(二光子顕微鏡)映像は、z軸深さ(すなわち、厚さ)によって肺門近くに位置する歯状回神経の苔状線維に存在する[Zn2+]i分布を明確に示す。また、メンブレンの極性を無くすことで、Zn2+の放出を誘導するKClを50mM添加した時、TPEFの強度は増加し、TPENで処理した時は減少する。これは、図15の(d)ないし(f)の結果からも分かり、またマウス海馬状突起の微細薄片の歯状回の肺門に対する相対的二光子蛍光強度を表わす図17を通じても、TPEF添加によるTPEF減少効果を明確に分かる。
【0112】
以上の実験結果は、本発明による二光子染料が生体組職の細胞内に存在する自由Zn2+を80ないし150μmの厚さまで非常に効果的に検出できるということを表わす。
【0113】
結論的に、本発明による二光子染料は、Zn2+に対して24ないし52倍のTPEF増加効果を有し、それぞれ1.1±0.1及び0.50±0.04nMの解離定数(KdTP)を有する。また、生物学的に連関したpH条件でpHに影響を受けず、従来のZn2+を検出するための二光子染料であるTSQ及びFluZin−3に比べて4ないし24倍以上の強いTPEFを発生させる。また、本発明による二光子染料は、1000秒以上の時間範囲で細胞内の自由Zn2+を選択的な検出することができるが、これは、従来の如何なる二光子染料より優れた特性である。さらに、本発明による二光子染料は、メンブレン結合二光子染料または他の金属イオンによる干渉や妨害を受けず、非常に効果的に細胞内の遊離亜鉛イオンのみを映像化して、モニタリング可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料、その製造方法及びそれを利用した細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法に関連する分野に適用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式1の構造を有することを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料:
【化1】
・・・(1)
(前記式で、Rは、HまたはOCH3である)。
【請求項2】
(a)下記式2の化合物を有機溶媒に混入した後、撹拌して第1混合物を収得する段階と、
【化2】
・・・(2)
(b)前記収得された第1混合物に下記式3の化合物を添加、反応させて式1の化合物を合成する段階と、を含むことを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法:
【化3】
・・・(3)
【化4】
・・・(1)
(前記式で、Rは、水素またはOCH3である)。
【請求項3】
前記(b)段階後、前記(b)段階の結果物から前記式1の化合物を分離する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法。
【請求項4】
前記(a)段階の前記有機溶媒は、
1,3−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを含むことを特徴とする請求項2に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法。
【請求項5】
前記分離は、
抽出工程によって遂行されることを特徴とする請求項3に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の二光子染料を観察対象となる細胞質内に注入した後、放出される二光子励起蛍光映像を観察する段階を含むことを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【請求項7】
前記二光子励起蛍光映像は、
前記観察対象の表面から80ないし150μmの深さ以内に存在する細胞質から放出されることを特徴とする請求項6に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【請求項8】
前記二光子蛍光映像の観察段階は、
1000秒以上進行することを特徴とする請求項6に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【請求項1】
下記式1の構造を有することを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料:
【化1】
・・・(1)
(前記式で、Rは、HまたはOCH3である)。
【請求項2】
(a)下記式2の化合物を有機溶媒に混入した後、撹拌して第1混合物を収得する段階と、
【化2】
・・・(2)
(b)前記収得された第1混合物に下記式3の化合物を添加、反応させて式1の化合物を合成する段階と、を含むことを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法:
【化3】
・・・(3)
【化4】
・・・(1)
(前記式で、Rは、水素またはOCH3である)。
【請求項3】
前記(b)段階後、前記(b)段階の結果物から前記式1の化合物を分離する段階をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法。
【請求項4】
前記(a)段階の前記有機溶媒は、
1,3−ヒドロキシベンゾトリアゾール及び1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドを含むことを特徴とする請求項2に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法。
【請求項5】
前記分離は、
抽出工程によって遂行されることを特徴とする請求項3に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング用の二光子染料の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の二光子染料を観察対象となる細胞質内に注入した後、放出される二光子励起蛍光映像を観察する段階を含むことを特徴とする細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【請求項7】
前記二光子励起蛍光映像は、
前記観察対象の表面から80ないし150μmの深さ以内に存在する細胞質から放出されることを特徴とする請求項6に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【請求項8】
前記二光子蛍光映像の観察段階は、
1000秒以上進行することを特徴とする請求項6に記載の細胞質内遊離亜鉛イオンのリアルタイムモニタリング方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−280811(P2009−280811A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115747(P2009−115747)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(505176556)コリア ユニバーシティ インダストリアル アンド アカデミック コラボレイション ファウンデーション (29)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(505176556)コリア ユニバーシティ インダストリアル アンド アカデミック コラボレイション ファウンデーション (29)
【Fターム(参考)】
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