説明

細菌接着およびバイオフィルム形成の阻害のための抗微生物コーティング

本発明は、コーティング表面上の微生物の成長および増殖を阻害することによって、細菌接着およびバイオフィルム形成を防ぐための、基材表面(特に医療デバイス)をコーティングするための抗微生物コーティングを提供する。この抗微生物コーティングは、ヒドロゲルおよび生物活性薬剤から構成され、この生物活性薬剤は、このコーティング中に可溶化された実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を含む。このようなコーティングを得るための抗微生物コーティング処方物およびコーティング方法もまた、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、基材表面(特に、細菌接着および細菌増殖の結果として微生物で汚染されやすいかまたは汚染されている医療デバイス)をコーティングするための抗微生物コーティング、ならびに医療デバイスの表面上の微生物の成長および増殖の阻害によってバイオフィルム形成を防止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
医療デバイスおよび保健医療製品(特に移植されたデバイス)の、表面上の細菌のコロニー形成は、患者の深刻な問題をもたらす。この問題としては、移植したデバイスを取り出し、そして/または置き換える必要性、ならびに二次感染状態を強く処置する必要性が挙げられる。従って、抗微生物薬剤の使用によってこのようなコロニー形成の防止することに向けて、かなりの努力がなされている。この抗微生物薬剤は、たとえば抗生物質であり、このような医療デバイスにおいて使用される材料の表面上に結合する。以前の試みは、デバイス表面上の微生物コロニー形成を防止するために、静細菌作用または殺細菌作用を生じさせることに焦点を当ててきた。
【0003】
抗微生物薬剤に対する防御(微生物の生存および増殖に影響を及ぼす)として、多くの表面接着微生物は、バイオフィルムと呼ばれるムコ多糖フィルムを含む防御層を形成する。医療デバイスの表面上のバイオフィルムの形成は、医療デバイスの強度に対して有害であり得、健康上の危険をもたらし得、そして医療デバイスの管腔を通る十分な流れを妨げ得る。さらに、デバイス表面上に形成されるバイオフィルムは、デバイス環境(例えば、尿もしくは血液)由来の接着していない微生物または「固着性」微生物を漸加し、そしてその蔓延を可能にする。粒子状バイオフィルムは、医療デバイスまたは保健医療製品の表面から周期的に脱離する物質であり、従って、例えば、病理学的感染性微生物の継続的な供給源であり、この微生物は、医療デバイスまたは保健医療製品が接触する生理的環境を汚染し得、患者において深刻な二次感染をもたらし得る。
【0004】
抗微生物薬剤(例えば、抗生物質または防腐剤)による医療デバイスのコーティングまたは洗浄は、デバイス表面に接着しない、浮遊する微生物すなわち「プランクトン様の」微生物を殺傷することまたはその増殖を阻害することにおいて有効であり得るが、このような抗微生物薬剤は、一般に、バイオフィルムを浸透できないために、バイオフィルム内に深く入り込んだ微生物に対してはずっと活性が低い。この抗微生物薬剤が微生物を十分に除去することができないことは、従って、バイオフィルムの保護効果に大きく起因する。この保護効果は、抗微生物剤がバイオフィルム層内で増殖する微生物を除去するための、バイオフィルム層内深くへの抗微生物剤の拡散を防止する。
【0005】
移植可能医療デバイス(例えばカテーテル、特に尿路感染のために設計されたカテーテル)に関して直面する問題に関連するバイオフィルムは、カテーテル挿入された患者が二次感染(例えば、病院環境における院内感染)を受ける重大な危険性を与える。このような感染は、入院の長期化、さらなる抗生物質の投与、および術後の病院看護の費用の増大をもたらし得る。尿路感染を媒介するバイオフィルムにおいて、細菌は、収集バッグもしくはカテーテルからの移動によるか、カテーテル材料を構成する材料に接着しそして材料上で増殖することによるか、またはカテーテルの外の尿道周囲空間を上昇することによって、カテーテル挿入された膀胱へのアクセスを得ると考えられている。抗生物質薬剤または抗微生物化合物がコーティング中に分散している、抗微生物コーティングされたカテーテルの使用は、カテーテル関連の細菌尿症の発生率を低下することが報告されているが、このようなコーティングは、より長期間について、カテーテル表面上の細菌接着およびバイオフィルム形成の防止においてあまり効果的ではなく、従って、細菌感染の発症を十分に遅延しないことが証明されている。
【0006】
医療デバイスのための抗微生物コーティングにおける銀化合物の使用は、当該分野で公知である。銀化合物の防腐活性は、局所処方物のために長年利用されている、周知の特性である。銀は、抗細菌特性を有することが知られ、殺細菌量の銀イオン(Ag+)を産生するその能力に起因して、金属塩または銀塩として局所的に使用され、この生物活性な化学種は、接触している環境に放出される。銀イオンの殺細菌効果および静真菌効果は、臨床的に広範に利用されている。例えば、水に容易に溶ける(イオン化傾向が高い)硝酸銀は、0.5〜1%の濃度で非感染特性を示し、熱傷における感染の予防または新生児結膜炎の予防のために使用される。しかし、硝酸銀は、これらの濃度で毒性の副作用を引き起こし得、皮膚の変色(銀沈着症)を起こす。
【0007】
銀イオンを抗細菌薬剤として使用する具体的な利点は、抗生物質の多くの種類とは対照的に、細菌が銀イオンに対する耐性を獲得し得ないことである。従って、抗生物質とは異なり、細菌が銀イオン耐性になる可能性は非常に低い。しかし、殺細菌レベルの銀イオンを提供し得る銀化合物は、低い光安定性を有し、光または熱の存在下で(Ag+イオンの銀金属への光還元の結果として)変色する傾向があることもまた、分かっている。その上、クリーム剤、ゲル剤または医療デバイス上のコーティングのいずれの形態であろうと、このような銀化合物を含むコーティングまたは処方物の、一般的に使用される最終殺細菌プロセス(例えば、γ線照射またはEビーム照射)は、このような材料の変色および活性の減少をもたらす。一方、水溶液への非常に低い溶解度を有する銀化合物(例えば、ヨウ化銀;Ksp約10−18および硫化銀(Ksp約10−52))は、比較的より光安定性であるが、ほとんどイオン化せず、従って、接触している環境中に殺細菌レベルの銀イオンを提供し得ない。従って、これらは、弱い抗細菌性(静細菌性)、すなわち不活性である。
【0008】
比較的低い水可溶性を有するが十分なイオン化を有する銀化合物(例えば、酸化銀(AgO)および塩化銀(AgCl)(Ksp10−8〜10−9)は、弱い抗細菌性であり、抗微生物コーティング中に使用されている。しかし、これらは、コーティング中に懸濁されている微粉化粒子として組み込まれており、このことはこのようなコーティングから放出されるAg+イオンの有効濃度を効率的に低下し、結果として、より短いコーティング効率をもたらし、そして細菌豊富な環境または細菌の成長を促進する環境が達成しないというより高い傾向をもたらす。実質的に非水溶性の化合物(Ksp約10−9)であるスルファダイアジン銀(AgSD)は、銀と複合体化した弱い抗細菌性スルファダイアジン分子の組み合わせを有する。硝酸銀とは対照的に、スルファダイアジン銀複合体の溶解度は比較的低く、従って、銀イオンおよびスルファダイアジンの両方とも、水溶液中に低い濃度でしか存在しない。局所処方物中のAgSDの抗細菌効果は、従って、局所的に処置された創傷部位を洗浄する前は、より長い期間持続し得る。従って、AgSDは、創傷の処置において(特に熱傷のために)、Silvadene(登録商標)およびFlamazine(登録商標)の商標の下で使用される。しかし、AgSDの実質的に低い水溶解度は、抗微生物コーティング(特に、医療デバイスのための薄いコーティング)における限定的な使用を有する。AgSDを抗微生物コーティング中へ取り込む試みは、ポリエチレングリコール(PEG)およびポリビニルアルコール(PVA)のような比較的親水性であるポリマー性コーティング材料中への微粉化粒子としてのAgSDの分散を包含し、このことは、コーティング強度および機械特性に妥協することなく薄いコーティング中に高濃度のAgSDを得る能力をかなり限定する。欧州特許出願第EP83305570号は、微粉化AgSDを含みEビーム照射によって架橋化されているポリビニルピロリドンヒドロゲルを開示する。このヒドロゲルは、吸収性包帯として使用されている。しかし、このようなヒドロゲル吸収材料は、AgSD粒子を多量にローディングすることを達成し得ない医療デバイスのコーティングに適さない。さらに、このようなコーティングの抗微生物効力は、コーティング中の銀イオン(Ag+)の比較的低い濃度に起因して、比較的低い。従って、このようなコーティングは、接触している環境中に殺細菌レベルの抗微生物薬剤を提供するために、さらなる水溶性抗微生物化合物(例えば、クロルヘキサジン)を必要とする。しかし、非銀薬剤のこのような溶出の増加は、コーティング効力の持続期間に悪く作用しやすい。何故なら、このコーティングは、比較的短い時間で可溶性薬剤を使い尽くすからである。従って、このような抗微生物コーティングは、長期間(数日間〜数週間)患者の中に移植されて留まる医療デバイスのために最適ではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、実質的に非水溶性である抗微生物材料が、親水性ポリマー性コーティング中に実質的に「可溶化された」形態で組み込まれ得、ここでこの非水溶性抗微生物材料は、親水性ポリマーによって実質的に均質な様式で形成される三次元ヒドロゲルネットワークゲル中に均質に分散されて、それにより、比較的薄いコーティング中への高濃度の静細菌性材料または殺細菌性材料の組込みを可能にし、より長い期間にわたるコーティング抗微生物性効力の増大をもたらすという、理解に基づく。本発明のコーティングは、従って、コーティングされた表面(例えば、医療デバイスおよび保健医療製品)上の細菌接着およびバイオフィルム形成を阻害する。
【0010】
本発明は、生物学的に活性である薬剤、すなわち「生物活性」薬剤、および実質的に「可溶化された」形態でこのコーティング中に維持される少なくとも1種の実質的に非水溶性である抗微生物金属化合物を含む、架橋されたポリマー性材料を含む、抗微生物コーティングに関し、この抗微生物化合物は、コーティング表面上の細菌接着および細菌増殖を阻害し、それによってバイオフィルムの形成を阻害する。驚いたことに、非水溶性抗微生物金属化合物のヒドロゲルコーティング中での可溶化された形態での維持は、実質的に高いコーティング抗微生物効力を与え、この効力は、微粉化した不均質な粒子として非水溶性抗微生物金属化合物が分散されているヒドロゲルコーティングと比較してより長い期間維持されることが、見出されている。
【0011】
1つの局面において、本発明は、基材表面(医療デバイスまたは保健医療製品の表面を含む)上の抗微生物コーティングに関連し、このコーティングは、ヒドロゲル層および実質的に「可溶化された」形態でこのコーティング中に維持される実質的に非水溶性である抗微生物金属化合物を含み、この抗微生物化合物は、コーティング表面上の細菌接着およびバイオフィルム形成を阻害する。特に、本発明は、親水性ポリマーを含むヒドロゲルコーティングに関連し、この親水性ポリマーは、少なくとも一部が架橋して、実質的に非水溶性の銀化合物が実質的に可溶化された形態でこのコーティング中に均質に分散されている、親水性三次元(3−D)ネットワークを形成する。
【0012】
別の局面において、本発明は、抗微生物コーティングを提供し、ここで、実質的に非水溶性のあまりイオン化しない(弱い活性の)銀化合物または銀複合体は、このコーティング中に均質に分散した可溶化された形態で維持されることにより、より長い持続期間にわたり徐放性の様式で、より活性にされる。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、コーティング処方物を提供し、この処方物は、親水性ポリマー性材料および実質的に非水溶性である金属抗微生物化合物を含み、この金属抗微生物化合物は、このコーティング処方物複合体構造中に実質的に均質な相で分散され、防腐活性の減少および銀イオンの還元に起因する暗化、または溶けにくいか不溶性である暗色に染まった銀化合物の形成に対して、銀イオンを安定に保つ。
【0014】
なお別の局面において、本発明は、カテーテル内の照明、ガイドワイヤ、創傷ドレイン、針なしコネクタまたは類似の医療デバイスもしくは医療機器に対して安定化された銀組成物の効果を導入する原則および方法を、提供する。
【0015】
本発明のさらなる局面において、本発明は、基材材料(特に医療デバイス)をコーティングするためのコーティング組成物およびコーティング方法を提供する。ならびに、抗微生物効力ならびに細菌接着およびバイオフィルム形成の阻害を含む、コーティング生物学的活性の評価を提供する。
【0016】
(発明の詳細な説明)
従って、本発明は、ヒドロゲル層および実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を少なくとも1種含む生物活性薬剤を含む抗微生物コーティングを記載し、この抗微生物金属材料は、実質的に「可溶化された」形態でこのコーティング中に均質に分散され、維持される。
【0017】
本発明の抗微生物コーティング中の実質的に非水溶性である抗微生物金属材料に言及する用語「可溶化する」は、本明細書中で使用される場合、コーティングヒドロゲル層中に均質であるかまたはまたは実質的に均質に分散している、実質的に非水溶性である抗微生物金属材料の組成物をいう。本発明の抗微生物コーティング処方物中の実質的に非水溶性である抗微生物金属材料に言及する用語「可溶化された」は、本明細書中で使用される場合、本発明のコーティング処方物またはコーティング溶液中の、均質であるかまたは実質的に均質である、実質的に非水溶性である抗微生物金属材料の分散をいい、この処方物または溶液は、本発明の抗微生物コーティングを得るために使用される親水性ポリマーを含む。本発明の抗微生物コーティングおよび抗微生物コーティング処方物中の実質的に非水溶性である抗微生物金属材料に言及する用語「可溶化」は、本明細書中で使用される場合、均質であるかまたは実質的に均質な様式での、このコーティング材料またはコーティング処方物中への実質的に非水溶性である抗微生物金属材料の溶解をいう。
【0018】
この非水溶性抗微生物金属材料を、均質に分散された可溶化された形態で維持することにより、高濃度のこの非水溶性抗微生物金属材料が、比較的薄いコーティング中に組み込まれ得る。このことは、この材料を微粉化形態で組み込んだ均質でない組成物中では、達成され得ない。従って、本発明の抗微生物コーティングは、水性の環境に接触している高濃度の抗微生物金属材料を、延長した期間にわたって提供し、コーティング表面上の細菌接着およびバイオフィルム形成を効果的に阻害する。例えば、本発明の抗微生物コーティング中に「可溶化された」AgSDは、薄いコーティングが高い(治療用)レベルのAgSDを含むことを可能にし、このレベルは、水中におけるAgSDの溶解レベルと比較して2桁まで高い強度である。薄いコーティング中のこのようなレベルは、微粉化AgSDによっては達成され得ない。このことは、小さな寸法の医療デバイス(薄いコーティング(数マイクロメートル(μM)のコーティング厚)が不可欠な必要条件である)への適用を不可能にする。このようなデバイスとしては、数ミリメートルの直径しか有さない、カテーテル、ステント、創傷ドレイン、針なしコネクタ、外傷ピンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
特許請求される本発明は、作用様式についていかなる仮説に依存するようにも解釈されないが、ヒドロゲルコーティング中の非水溶性銀化合物の「可溶化」形態(それによって化合物がコーティング中に実質的に均質に分散する)での均質な分散は、このような銀化合物の比較的薄いコーティング中への、コーティングの単位面積あたり高濃度の組込みを可能にし、このことは次に、ヒドロゲルコーティングから接触している水性環境中への殺細菌性Ag+イオンの放出をもたらす。その上、架橋されたヒドロゲルコーティングマトリックスを形成する親水性の性質のポリマー性材料と組み合わせられた比較的小さいコーティング厚は、均質に分散された可溶化された銀化合物からのAg+イオンの分散を容易にし得、それにより、コーティング抗微生物効力の持続時間の延長をもたらす。コーティングを形成する3−Dヒドロゲルマトリックス中の架橋密度は、コーティングから放出されるAg+イオンの分散速度を効率的に制御するために変化し得、それによって、コーティング抗微生物効力の持続時間にわたる制御を提供する。本発明の親水性コーティング処方物中に可溶化される実質的に非水溶性である銀化合物は、コーティング中に均質に分散されている不溶性銀化合物の高濃度が比較的薄いコーティング中に組み込まれることを可能にし、それによって、(非水溶性である銀化合物が不均質な微小粒子相(micro−particular phase)中に存在する、比較的より薄いコーティングと比較して、)制御されたAg+イオンのコーティングの単位領域あたりのより高濃度の放出を可能にする。
【0020】
本発明の抗微生物コーティング中のヒドロゲル層は、イオン性架橋、化学的架橋、クリオゲル形成または相互浸透ポリマー性ネットワークによって、親水性ポリマーにより形成される、三次元ネットワークを含む。本発明の親水性ポリマーは、多官能性水溶性ポリマーから選択され、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ乳酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリε−カプロラクトン、コポリマー類およびこれらの混合物、ポリビニルアルコール−グリシンコポリマーおよびポリビニルアルコール−リジンコポリマーのような多官能性ポリマーが挙げられる。親水性ポリマーのイオン性架橋または化学的架橋は、本発明の抗微生物コーティングに含まれる多官能性ポリマーにおいて達成され得る。例えば、基材材料を本発明の抗微生物コーティング処方物により支持体表面上でコーティングし、このコーティングを所定の範囲で乾燥させ、そしてこのコーティングを適切なイオン性架橋剤または化学的架橋剤と反応させることによって、イオン的に架橋された親水性ポリマー鎖を含むヒドロゲル層であって、ここで、本発明の処方物は、可溶化された均質な分散中にコーティング処方物および実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を含有する多官能性親水性ポリマーを含む。この架橋剤は、多官能性親水性ポリマー鎖中の官能基の間の架橋を達成するその能力に基づいて、適切に選択される。イオン性架橋剤の例としては、二価または三価のハロゲン化金属(例えば、ハロゲン化カルシウム、ハロゲン化亜鉛またはハロゲン化銅)が挙げられるが、これらに限定されない。共有的架橋剤の例としては、アルデヒド類、ジアルデヒド類、二ハロゲン化アルキル類、ジトリフレートアルキル類などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
1つの実施形態において、化学的架橋は、基材表面上の部分的にまたは完全に乾燥したコーティングにおいて、親水性ポリマーおよび可溶化された実質的に非水溶性の抗微生物金属材料を含む本発明の抗微生物コーティング処方物を用い、このコーティングを適切な時間乾燥させ、そしてこのコーティングを化学的架橋剤(親水性ポリマー鎖中の官能基と反応し得る)と反応させることによって、達成される。本発明の抗微生物コーティングを形成するヒドロゲルマトリックス中の架橋密度は、架橋反応の濃度を変えることによって、架橋プロセスの反応時間を適切に変えることによって、コーティングと架橋との間の時間および/または架橋反応の温度をを変えることによって、制御され得るか、または事前に決定され得る。
【0022】
現在好ましい実施形態において、本発明のコーティング処方物中の親水性ポリマーは、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)である。ポリ(ビニルアルコール)は、幾つかの形態で市販され、加水分解の百分率および分子量の範囲で異なる。本発明の抗微生物コーティングは、これらの特性のPVAの最適な組み合わせを、架橋密度の制御と一緒に利用して、コーティング物理的特性(張力強度、耐久性および孔径)を事前に決定する。1つの好ましい実施形態において、本発明の抗微生物コーティング処方物中のPVAは、87%〜89%の間の範囲の加水分解百分率を有する。別の好ましい実施形態において、本発明の抗微生物コーティング処方物中のPVAは、99%より高い加水分解百分率の形態を含む。本発明の抗微生物コーティング処方物中で使用されるPVAの分子量は、124,000ダルトン〜186,000ダルトンの間の範囲に及ぶ。別の実施形態において、PVAの分子量は、89,000ダルトン〜98,000ダルトンの間の範囲に及ぶ。現在好ましい実施形態において、PVAの選択としては、約87%〜89%の加水分解百分率および124,000ダルトン〜186,000ダルトンの範囲の分子量、99+%加水分解、分子量範囲124,000〜186,000;99%以上の加水分解百分率および89,000〜98,000の範囲の分子量、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の抗微生物コーティング中のPVAは、1種の加水分解形態(%加水分解の点で)および1種の分子量範囲を含むか、または2種以上のPVA型(%加水分解および分子量範囲)の混合物を含み得る。本発明の抗微生物コーティング中のPVAの濃度は、代表的に、0.1g/Lと1000g/Lとの間の範囲に及ぶ。現在好ましい実施形態において、87%〜89%加水分解および124,000〜186,000の範囲の分子量を有するPVAは、50g/Lである。
【0023】
本発明の抗微生物コーティングに基づくPVAの架橋剤は、モノアルデヒドモノマーもしくはジアルデヒドモノマーまたはジオールを含む。アルデヒド架橋剤の例としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサールまたはグルタルアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。架橋剤は、溶液の形態で親水性ポリマーに加えられ得る。1つの実施形態において、架橋溶液は、酸性pHで維持される。現在好ましい実施形態において、架橋剤は、3%ホルムアルデヒドおよび1%グリオキサールを、1%塩酸溶液中に含有する。別の実施形態において、化学的架橋は、基材表面上の部分的にまたは完全に乾燥したコーティングにおいて、PVAおよび可溶化された実質的に非水溶性の抗微生物金属材料を含む本発明の抗微生物コーティング処方物から、PVAコーティングをアルデヒド架橋剤を含む溶液に接触させることにより、このコーティングを適切な時間乾燥させ、そしてこのコーティングを化学的架橋工程において適切なアルデヒドを用いて反応させることによって、達成される。本発明の抗微生物コーティングを形成するヒドロゲルマトリックスにおける架橋密度は、架橋反応の濃度を変えることによって、架橋プロセスの反応時間を適切に変えることによって、コーティングと架橋との間の時間および/または架橋反応の反応温度を変えることによって、制御され得るか、または事前に決定され得る。現在好ましい実施形態において、この架橋剤は、3%ホルムアルデヒドおよび1%グリオキサールを1%塩酸溶液中に含む溶液を含む。
【0024】
本発明の抗微生物コーティング中の生物活性薬剤は、実質的に非水溶性である抗微生物非水溶性材料を含み、この材料としては、抗微生物である金属、金属合金、金属塩、金属もしくは金属複合体が挙げられ、これは、抗微生物コーティングのヒドロゲル層中に可溶化形態で維持され、そして必要な場合、非金属性の抗微生物または抗生物質化合物と組み合わされる。このような実質的に非水溶性である抗微生物金属材料としては、銀、銅および亜鉛の抗微生物性の金属塩および金属複合体が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、実質的に非水溶性である抗微生物銀化合物であり、ハロゲン化銀類、スルファジン銀類、スルファダイアジン銀類類、スルホンアミド銀類およびスルホン尿素銀類が挙げられるが、これらに限定されない。現在好ましい実施形態において、実質的に非水溶性である抗微生物金属性化合物は、スルファダイアジン銀(AgSD)である。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明の抗微生物コーティング処方物は、AgSDを約1mg/Lから約100g/Lの範囲で含む。現在好ましい実施形態において、AgSDの濃度は、約20g/Lである。第2の好ましい実施形態において、濃度は30g/Lである。本発明のコーティング処方物中のAgSDのこれらの濃度は、高AgSDローディングを含む比較的薄いコーティングならびに殺細菌レベルのAg+イオンおよびスルファダイアジンを接触している環境中に提供するレザバ容量の形成を可能にする。例えば、20g/Lの濃度のAgSDを有する抗微生物コーティング処方物から得られた15μm厚のコーティングは、約70μg/cmの可溶化されたAgSDを得られたコーティング中に提供し、このAgSDは、接触している環境中に殺細菌レベルのAg+イオンおよびスルファダイアジンを提供する。非常に薄いコーティング(100μM未満)について、AgSDのコーティング中での可溶化の結果、コーティングの単位面積あたり高濃度のAgSDを提供する本発明の抗微生物コーティングは、従って、微粉化AgSDを用いる従来方法に存在する主な限定要因を克服する。AgSDの水溶液中の実質的に低い溶解度(約6×10−4モル/L AgSD、約0.22グラム/L AgSDと等価)に基づき、約70μg/cmに類似のローディングを産生するために、微粉化AgSDを含むコーティングは約2.5mm厚であるべきである。他の水溶性抗細菌薬剤を含まない微粉化AgSDを含むコーティングは、従って、小さな寸法の医療デバイスのコーティングのために非実用的であるのみならず、欠陥および貧しい機械特性を有するコーティングをもたらす。可溶化されたAgSDを含む本発明のコーティングの利点、ならびに微粉化AgSDを含むステンレス鋼穿孔上の類似のコーティングの欠陥を、図1に示す。図1に示されるように、微粉化AgSDを含む親水性PVAコーティングは、比較的厚く、不透明で、かつコーティングの均一性およびコーティング強度の両方の点でかなりの欠陥を有し、一方で、可溶化されたAgSDを含む本発明のPVAコーティング(図1(b)に示す)は、非常に均質であり、薄く、透明で、かつよいコーティング強度を有する。
【0026】
本発明の抗微生物コーティングおよびコーティング処方物は、実質的に非水溶性である抗微生物金属材料をコーティングヒドロゲル層中に可溶化された形態で維持する、安定化化合物をさらに含む。安定化化合物(例えば、TiOのような酸化防止剤)の存在は、本発明の抗微生物コーティングに光への曝露の間のこのコーティングの変色に対する保護効果を与え、従って、このコーティングを光安定性にする。
【0027】
理論にとらわれることを望まないが、本発明の抗微生物コーティング中の安定化化合物(例えば、コーティング中の酸化防止剤、光安定化剤またはフリーラジカルスカベンジャー)の存在は、AgSDの還元ならびにコーティング中から分散しているイオン化AgSDから分散しているAg+イオンの粒子状銀金属(Ag)(抗微生物的に不活性である)への還元を防ぐ保護効果を与えると考えられ、それによって、接触している環境中に殺細菌量のAg+イオンを提供する抗細菌的に活性な可溶化形態で、AgSDを維持すると考えられる。
【0028】
1つの実施形態において、この抗微生物コーティング組成物は、安定化化合物(例えば、酸化防止剤、光安定化剤もしくはフリーラジカルスカベンジャー化合物またはこれらの混合物)をさらに含む。任意の適切な酸化防止剤が、使用され得る。酸化防止剤としては、ラクトン類、フェノール類、ホスフィン類、チオエステル類、ヒンダードフェノール類(例えば、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン(Cyanox(登録商標)1790))、ヒンダードアミン類(例えば、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]](Cyasorb(登録商標)UV−3346))およびヒンダードベノゾアート類(例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸,ヘキサデシルエステル(Cyasorb(登録商標)UV−2908))が挙げられるが、これらに限定されない。Cyanox(登録商標)1790、Cyasorb(登録商標)UV−3346およびCyasorb(登録商標)UV−2908は、Cytec Industries Inc.,West Paterson,NJ.によって販売されている。ビタミンE(α−トコフェロール)、TPGS(α−コハク酸トコフェロールポリエチレングリコール)、BHT(α−リポ酸,ブチルヒドロキシトルエン)およびアスコルビン酸塩(アスコルビン酸ナトリウム)もまた、特に水溶性形態で適切な酸化防止剤であり得る。光安定化化合物としては、ベンゾアート類、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート、有機ニッケルおよび有機亜鉛ならびに例えばケイ酸マグネシウムのような化合物が挙げられるが、これらに限定されない。安定剤としては、二酸化チタン(TiO)および三酸化タングステン(WO)(その多形形態のいずれかである)が挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、酸化防止剤はTiOである。
【0029】
好ましい実施形態において、抗微生物コーティング処方物中の二酸化チタン(TiO)の濃度は、0.1g/Lと10.0g/Lとの間の範囲に及ぶ。現在好ましい実施形態において、TiOの濃度は、約2g/Lである。TiOは、標準的方法(例えば、ジェットミルプロセス(jet milling process))によって好ましくは微粉化され、0.1〜20μmの間の範囲に及ぶ平均粒子サイズを有する。現在好ましい実施形態において、微粉化TiOの平均粒子サイズは、約1μmである。別の現在好ましい実施形態において、市販等級のミクロン未満粒子サイズ(45ナノメートル(nm)未満の平均直径)のTiOは、酸化防止安定化化合物として、本発明の抗微生物コーティング中で使用される。
【0030】
本発明の抗微生物コーティング中の安定化化合物の存在は、AgSDを可溶化された形態で維持し、そしてAgSDの還元およびAgSD(光還元を含む)から産生されるAg+イオンの抗微生物的に不活性である銀金属への還元を阻害し、従って、高いコーティング抗微生物効力を維持し、安定剤化合物を含まないコーティングと比較して、比較的迅速かつ長い殺傷速度を提供する。可溶化されたAgSDを含む本発明の抗微生物コーティング中の安定剤化合物としてのTiOの存在は、例えば、改善された抗微生物効力をもたらす(可溶化されたAgSDのみを含むコーティングと比較してより迅速な殺傷速度によって実証される)。
【0031】
安定剤化合物の可溶化AgSDの活性における効果は、0.5μg/mLの溶解されたAgSDを含む水溶液中の、TiO(0.3μg/mL)の添加および無添加のインビトロ抗微生物アッセイ(本発明のコーティング中の可溶化されたAgSDをシミュレートする)によって確認された。このアッセイは、約10cfu/mLのstaph.epidermidisで60分間検証された。この試験の結果(以下の表1にまとめる)は、TiOを含むAgSD溶液は、60分間で、コントロールに対してTiOを含まないAgSD溶液(40%)と比較してより迅速な殺傷速度(100%)を示す。一方、AgSD非含有TiO含有溶液は抗細菌性ではない。この結果、AgSDの可溶化形態での維持におけるTiOの安定化する影響および銀金属への還元の防止を実証する。
【0032】
(表1.PVA−可溶化AgSDコーティングの抗微生物効力における安定剤化合物(TiO)の効果(t=60分間))
【0033】
【表1】

なお別の実施形態において、本発明の抗微生物コーティング中の生物活性薬剤は、可溶化された実質的に非水溶性である金属材料に加えて、1種以上の抗細菌薬剤または抗生物質薬剤を含む。抗細菌薬剤または抗生物質薬剤としては、リファンピン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、ネオマイシン、バシトラシン、ポリミシン、合成の抗生物質(オフロキサシン、レボフロキサシンおよびシプロフロキサシンが挙げられる)、抗細菌物質(antbacterials)(クロルヘキシジンおよびその塩を含むグアナイド類が挙げられる)、ハロゲン化アルキルアンモニウム類(例えば塩化ベンザルコニウムセトリミド)、臭化ドミフェンおよびフェノール類(例えば、トリクロサン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の抗微生物コーティング処方物は、コーティング溶液を含み、このコーティング溶液は、適切な溶媒に溶解された少なくとも1種の親水性ポリマー、および実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を含む生物活性薬剤を含み、この金属材料は、このコーティング中に可溶化されて、親水性のポリマーと共に均質な相または実質的に均質な相を形成する。本発明のコーティング溶液は、多官能性基を有する1種以上の水溶性親水性ポリマーを含み、この多官能性基としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチルおよびコポリマー類ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。現在好ましい実施形態において、本発明のコーティング溶液は、ポリビニルアルコール(PVA)の水溶液を含む。実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、銀、銅および亜鉛の抗微生物金属塩類および金属複合体類から選択されるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、実質的に非水溶性である抗微生物銀化合物類であり、ハロゲン化銀類、スルファジン銀類、スルファダイアジン銀類、スルホンアミド銀類およびスルホニル尿素銀類が挙げられるが、これらに限定されない。現在好ましい実施形態において、実質的に非水溶性である抗微生物金属化合物は、スルファダイアジン銀(sufladiazine)(AgSD)である。
【0035】
別の好ましい実施形態において、本発明の抗微生物コーティング処方物は、安定化剤化合物をさらに含み、この化合物は、このコーティング処方物中に可溶化された実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を、このコーティングから得られるコーティング中で可溶化形態に維持する。このような安定化剤化合物の例としては、酸化防止剤、光安定化剤もしくはフリーラジカルスカベンジャー化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。安定化剤化合物としては、多形形態のいずれかであるTiOおよびWOが挙げられるが、これらに限定されない。光安定化化合物としては、例えば、ケイ酸マグネシウムのような化合物が挙げられる。現在好ましい実施形態において、この安定化剤化合物は、TiOである。
【0036】
実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、高温で酸性水溶液中に溶解され、この金属材料の完全な溶解を達成する。溶解された抗微生物金属材料を含むこの酸性溶液は、次いで、親水性ポリマーの水溶液と混合され、抗微生物金属材料をこの溶液混合物中に均質な水相または実質的に均質な水相において可溶化形態で維持する。ここで、この抗微生物金属材料および親水性ポリマーは、水性コーティング溶液中に均質に分散される。
【0037】
現在好ましい実施形態において、所定の量のスルファダイアジン銀が、加熱された希釈硝酸の水溶液に添加され、溶液中にAgSDの所望の濃度をもたらす。加熱されたAgSD/硝酸溶液は、撹拌され、そして約65℃〜約70℃まで加熱される。AgSDの完全な溶解後、所望の加水分解百分率および分子量を有する所定の量のPVAが、撹拌しながら加えられる。PVA/AgSD/硝酸溶液は、全ての成分が溶解するまで、撹拌されそして加熱される。PVAおよび可溶化されたAgSDを含む、得られたコーティング溶液の粘度は、約10センチポイズ(cP)から約30センチポイズまでの範囲におよび、使用したPVAの特性に依存する。特に好ましい実施形態において、このコーティング処方物の粘度は、約20cPであり、硝酸濃度は約1モル濃度であり、そして溶解温度は約70℃である。別の実施形態において、硝酸水溶液中のAgSD溶液は、PVAの添加の前に、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)とさらに混合される。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明のコーティング処方物は、コーティング溶液(この中に溶解された親水性ポリマーを含む)、このコーティング溶液中に可溶化された抗微生物金属材料を含む生物活性薬剤、および少なくとも1種の安定剤化合物(このコーティング溶液中に溶解されて均質な相を形成するか、またはこのコーティング溶液中に微粒子分散として懸濁される)を含む。現在好ましい実施形態において、安定化剤化合物は、無機酸化物酸化防止剤化合物、すなわちTiOであり、これは、このコーティング処方物中に微粒子分散として懸濁される。現在好ましい実施形態において、微粉化TiOは、乾燥PVAと混合されて乾燥粉末混合物を生じ、この粉末混合物は、酸性AgSD水溶液の撹拌溶液に高温(好ましくは75℃と80℃との間)を維持しながら添加されて、TiOが均一に分散されている、PVAおよび可溶化されたAgSDを含むコーティング処方物懸濁液を生じる。PVA、可溶化されたAgSDおよびTiO懸濁液を含む得られたコーティング溶液を、さらに1〜5時間混合した。あるいは、TiOは、PVAの水溶液に加えられて懸濁液を生じ、次いで、PVA/TiO懸濁液は、撹拌された酸性AgSD水溶液に高温(好ましくは75℃と80℃との間)を維持しながら加えられる。
【0039】
本発明のコーティング処方物は、当該分野で公知の標準的コーティング方法(浸漬、噴霧、ローリング(rolling)など)のいずれかを用いて基材表面に適用される。好ましい実施形態において、このコーティング処方物は、浸漬プロセスを用いて基材材料上に適用される。1つの実施形態において、基材は、約35℃〜約41℃の範囲の温度(好ましくは38℃)で、約1〜60秒間コーティング材料中に浸漬される。次いで、この指示層を、一様なコーティングが達成されるように、機械的にコーティング材料から取り出す。生物活性薬剤(この薬剤は可溶化された抗微生物金属材料および必要に応じて安定剤化合物を含む)を含む本発明の抗微生物コーティングは、本発明の抗微生物コーティングを基材材料上に適用し、このコーティングを部分的または完全な乾燥工程に供し、その後、形成されたコーティングを架橋工程で反応させることによって、得られる。本発明のコーティングは、未完成形態(シート、粒子、ペレットなど)または完成製品(例えば、医療デバイスまたは保健医療製品)のいずれかで、基材材料上に作製され得る。この基材が管腔を含む場合、真空または陽圧が、コーティングプロセスの間に適用され得、基材の全ての部分がコーティング処方物に接触することを確実にする。この基材材料は、浸漬プロセスを利用する場合、コーティング処方物からの基材材料の取り出しの間、得られたコーティングの垂直および放射状の一貫性を補助するために、必要に応じて回転(spin)工程に供される。1つの実施形態において、コーティングされた基材材料を取り出す間、回転速度は、0〜25rpmの間で維持される。1つの実施形態において、取り出す速度は、約0.25mm/秒〜約10mm/秒の間の範囲におよぶ(好ましくは、約5.0mm/秒)。
【0040】
別の実施形態において、本発明の抗微生物コーティング処方物は、噴霧コーティング方法によって基材材料の表面に適用されるコーティング溶液を含む。この抗微生物コーティング処方物は、標準的噴霧装置および当該分野で公知の方法を用いて、基材材料表面に噴霧される。適切な噴霧装置としては、加圧気体を用いる噴霧器および超音波噴霧ヘッドを用いる噴霧器(これらは両方とも、コーティング溶液をエアロゾル化する)が挙げられるが、これらに限定されない。PVA分子量範囲、重量%、および%加水分解は、このコーティング溶液が最もエアロゾル化するように適切に選択される。現在好ましい実施形態において、89,000〜98,000の範囲の分子量および99+%加水分解を有するPVAは、約31000〜50,000の範囲の分子量および87%〜89%加水分解を有するPVAと、2:5の比(それぞれ、100g/Lおよび250g/L)で合わせられる。
【0041】
別の実施形態において、本発明の抗微生物コーティングは、複数の個々のコーティング層、または「コート」を含み、これらは、コーティング処方物適用および同時に行われる乾燥工程、ならびに1以上の乾燥工程の後の必要に応じたさらなる架橋工程(それによって溶出速度論および抗細菌化合物/抗微生物化合物の濃度を制御し得る)を含む、一連の工程によって得られる。例えば、およそ同じ厚みの2層のコーティング層を重ねることにより、コーティングされた基材の1cmあたりで放出される有効濃度のAgSDが、効果的に2倍化される。他のバリエーションとしては、多層コーティングの内部層において架橋する工程を除外するバリエーション、および最も外側のコーティング層に架橋を限定するバリエーションが挙げられる。
【0042】
本明細書中で上述された方法のいずれかによって基材材料表面に形成されたコーティング層は、次いで、適切な乾燥プロセスによって乾燥される。この乾燥工程としては、自然乾燥、赤外線、対流もしくは放射乾燥(例えば、乾燥オーブン)、または温められた空気(warm forced air)(例えば、ヒートガン)が挙げられるが、これらに限定されない。この乾燥工程は、コーティングが架橋剤と接触する前後の両方で実施される。多層コーティングの場合、この乾燥工程は、内部層の各々の形成後に架橋剤に接触することなく実施され得、最も外側の層は架橋剤と接触した後に行われる。乾燥時間および乾燥温度は、本発明の抗微生物コーティングの溶出速度論を変化させる。所定の温度でのより長い乾燥時間はより少ない架橋を生じ、従って、比較的迅速な薬物放出プロフィールを生じる。代表的に、コーティングされた基材材料の乾燥は、「加熱アイリス(heating iris)またはプレナム(基材がこれを通って取り出される)によって達成される。この加熱アイリスまたはプレナムは、基材材料または完成製品が浸漬されるコーティング処方物の表面近く(約2インチ)に配置されるか、または、コーティングが噴霧方法で適用される場合には、完成製品のコーティングされた基材材料の表面近くに配置される。コーティングされた基材材料の加熱は、例えば、約60℃〜約70℃の温度および1分間あたり数リットルの気流をプレナムに提供する熱風送風機によって達成される。このような気流は、通常、コーティング処方物からの基材材料の取り出しおよび回転プロセスの間、周辺に向けられる。本発明の抗微生物コーティング中のヒドロゲルネットワークを得るためにコーティング層を架橋することは、乾燥工程の前後のいずれかでコーティングされた基材材料または完成製品を架橋剤を含む溶液に浸すことによって基材材料上の部分的に乾燥したかまたは完全に乾燥したコーティング層を架橋剤と接触させ、その後このコーティングが高温で所定の時間さらなる乾燥に供され、架橋が誘導されることによって、達成される。あるいはまた、架橋剤は、基材を第1にコーティング材料で噴霧コーティングし、第2に架橋剤を含む溶液で噴霧コーティングすることによって、基材に適用され得る。現在好ましい実施形態において、架橋溶液は、1%グリオキサール、3%ホルムアルデヒドおよび1%HClを含む。
【0043】
本発明のコーティング処方物は、当該分野で公知の標準的コーティング方法(浸漬、噴霧、ローリングなど)のいずれかを用いて基材表面に適用される。好ましい実施形態において、このコーティング処方物は、浸漬プロセスを用いて基材材料上に適用される。1つの実施形態において、基材は、約35℃〜約41℃の範囲の温度(好ましくは38℃)で、約1〜60秒間コーティング材料中に浸漬される。次いで、この指示層を、一様なコーティングが達成されるように、機械的にコーティング材料から取り出す。生物活性薬剤(この薬剤は可溶化された抗微生物金属材料および必要に応じて安定剤化合物を含む)を含む本発明の抗微生物コーティングは、本発明の抗微生物コーティングを基材材料上に適用し、このコーティングを部分的または完全な乾燥工程に供し、その後、形成されたコーティングを架橋工程で反応させることによって、得られる。本発明のコーティングは、未完成形態(シート、粒子、ペレットなど)または完成製品(例えば、医療デバイスまたは保健医療製品)のいずれかで、基材材料上に作製され得る。この基材が管腔を含む場合、真空または陽圧が、コーティングプロセスの間に適用され得、基材の全ての部分がコーティング処方物に接触することを確実にする。この基材材料は、浸漬プロセスを利用する場合、コーティング処方物からの基材材料の取り出しの間、得られたコーティングの垂直および放射状の一貫性を補助するために、必要に応じて回転工程に供される。1つの実施形態において、コーティングされた基材材料を取り出す間、回転速度は、0〜25rpmの間で維持される。1つの実施形態において、取り出す速度は、約0.25mm/秒〜約10mm/秒の間の範囲におよぶ(好ましくは、約5.0mm/秒)。
【0044】
別の実施形態において、本発明の抗微生物コーティング処方物は、噴霧コーティング方法によって基材材料の表面に適用されるコーティング溶液を含む。この抗微生物コーティング処方物は、標準的噴霧装置および当該分野で公知の方法を用いて、基材材料表面に噴霧される。適切な噴霧装置としては、加圧気体を用いる噴霧器および超音波噴霧ヘッドを用いる噴霧器(これらは両方とも、コーティング溶液をエアロゾル化する)が挙げられるが、これらに限定されない。PVA分子量範囲、重量%、および%加水分解は、このコーティング溶液が最もエアロゾル化するように適切に選択される。現在好ましい実施形態において、89,000〜98,000の範囲の分子量および99+%加水分解を有するPVAは、約31000〜50,000の範囲の分子量および87%〜89%加水分解を有するPVAと、2:5の比(それぞれ、100g/Lおよび250g/L)で合わせられる。
【0045】
別の実施形態において、本発明の抗微生物コーティングは、複数の個々のコーティング層、または「コート」を含み、これらは、コーティング処方物適用および同時に行われる乾燥工程、ならびに1以上の乾燥工程の後の必要に応じたさらなる架橋工程(それによって溶出速度論および抗細菌化合物/抗微生物化合物の濃度を制御し得る)を含む、一連の工程によって得られる。例えば、およそ同じ厚みの2層のコーティング層を重ねることにより、コーティングされた基材の1cmあたりで放出される有効濃度のAgSDが、効果的に2倍化される。他のバリエーションとしては、多層コーティングの内部層において架橋する工程を除外するバリエーション、および最も外側のコーティング層に架橋を限定するバリエーションが挙げられる。
【0046】
本明細書中で上述された方法のいずれかによって基材材料表面に形成されたコーティング層は、次いで、適切な乾燥プロセスによって乾燥される。この乾燥工程としては、自然乾燥、赤外線、対流もしくは放射乾燥(例えば、乾燥オーブン)、または温められた空気(例えば、ヒートガン)が挙げられるが、これらに限定されない。この乾燥工程は、コーティングが架橋剤と接触する前後の両方で実施される。多層コーティングの場合、この乾燥工程は、内部層の各々の形成後に架橋剤に接触することなく実施され得、最も外側の層は架橋剤と接触した後に行われる。乾燥時間および乾燥温度は、本発明の抗微生物コーティングの溶出速度論を変化させる。所定の温度でのより長い乾燥時間はより少ない架橋を生じ、従って、比較的迅速な薬物放出プロフィールを生じる。代表的に、コーティングされた基材材料の乾燥は、「加熱アイリス(heating iris)またはプレナム(基材がこれを通って取り出される)によって達成される。この加熱アイリスまたはプレナムは、基材材料または完成製品が浸漬されるコーティング処方物の表面近く(約2インチ)に配置されるか、または、コーティングが噴霧方法で適用される場合には、完成製品のコーティングされた基材材料の表面近くに配置される。コーティングされた基材材料の加熱は、例えば、約60℃〜約70℃の温度かつ1分間あたり数リットルの気流をプレナムに提供する熱風送風機によって達成される。このような気流は、通常、コーティング処方物からの基材材料の取り出しおよび回転プロセスの間、周辺に向けられる。本発明の抗微生物コーティング中のヒドロゲルネットワークを得るためにコーティング層を架橋することは、乾燥工程の前後のいずれかでコーティングされた基材材料または完成製品を架橋剤を含む溶液に浸すことにより、基材材料上の部分的に乾燥したかまたは完全に乾燥したコーティング層を架橋剤と接触させ、その後このコーティングが高温で所定の時間さらなる乾燥に供され、架橋が誘導されることによって、達成される。あるいはまた、架橋剤は、基材を第1にコーティング材料で噴霧コーティングし、第2に架橋剤を含む溶液で噴霧コーティングすることによって、基材に適用され得る。現在好ましい実施形態において、架橋溶液は、1%グリオキサール、3%ホルムアルデヒドおよび1%HClを含む。
【0047】
本発明のコーティング処方物は、種々の基材材料に適用され得、この基材材料としては、合成の有機ポリマーおよび無機ポリマー、ならびに天然に存在する有機ポリマーおよび無機ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル酸、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、セルロース、シリコンおよびゴム(ポリイソプレン))、プラスチック類、金属類、ガラスおよびセラミックが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のコーティング処方物は、親水性表面(例えば、金属類、ガラスおよびセルロース、または必要に応じてプライマーアンダーコートの上)で材料に直接適用され得、疎水性表面を有する材料(例えば、シリコンおよびPTFE)は、コーティングの適用の前に表面事前処理工程に供される。
【0048】
本発明のコーティング処方物によって可溶性にされない基材(特に、シリコン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのような疎水性基材)は、コーティングの前に表面事前処理される。この表面事前処理工程は、本発明の抗微生物コーティングが堆積されるプライマー層で疎水性基材をコーティングする工程、または、基材材料の表面が酸化プロセスに供され、必要に応じてその後化学的グラフティング反応に供されて、表面が親水性かつ本発明のコーティング処方物に対し適用性にされる表面修飾工程の、いずれかを包含する。1つの実施形態において、基材材料のこの表面事前処理は、減圧下でのプラズマ酸化プロセス、およびその後の脂肪族アルコールの化学的グラフティング工程を包含する。現在好ましい実施形態において、この脂肪族アルコールは、アリルアルコールである。電力設定(power setting)、ガス流量、時間および圧力は、表面酸化プロセスの間およびアルコールのグラフティング工程の間、最適に維持される。
【0049】
本発明の抗微生物コーティングのコーティング厚は、浸漬後のコーティング処方物からの基材取り出し速度、コーティング溶液粘度、コーティング溶液温度、適用したコーティングの数および基材材料回転速度の、最適な選択によって制御可能である。このコーティング厚は、浸漬工程の間のPVA/AgSDの温度、基材材料もしくは完成製品(例えば、医療デバイスもしくは保健医療製品)の浸漬の間のコーティング処方物の粘度、取り出し速度および技術(回転など)、コーティング方法(例えば、浸漬の代わりに噴霧)、浸漬/噴霧周期の回数および浸漬/噴霧時間を制御することにより、事前に決定され得る。1つの実施形態において、約10〜20μmの厚みのコーティングは、5mm/秒の速度の取り出し、20cPのコーティング粘度、および38℃のコーティング溶液温度、ならびに5rpmの基材材料回転速度を維持することによって得られる。別の好ましい実施形態において、この基材の取り出し速度は、基材の下部から上部までの長さに由来する浸漬時間の時間変動ゆえに、部分によって変化する。支持材料または完成製品のコーティングからの取り出し速度(withdrawal speed)(取り出し速度(rate of withdrawal))は、一定の値に維持されるか、または取り出しプロセスの間に変わるかのどちらかである。現在好ましい実施形態において、この取り出し速度は、最初に5mm/秒で維持され、そしてその後、基材材料または完成材料の約1/3(例えば、製品が直線構成を有する場合(例えばカテーテル)の長さ)がコーティング処方物から取り出された後に6mm/秒に変わり、そして基材材料または完成材料の2/3の取り出しの後に、さらに7mm/秒に変わる。本発明の抗微生物コーティングのコーティング厚は、接触している環境中に生物活性薬剤が放出される量および期間を効果的に制御するために使用され得る。本発明の抗微生物コーティングのコーティング厚は、5μm〜100μmの間の範囲であり、一方、乾燥コーティング中の生物活性薬剤ローディングは、コーティングされた表面面積1cmあたり10μm〜300μmの範囲である。
【0050】
生物活性薬剤(特に可溶化された抗微生物金属材料)の放出は、溶出アッセイにおいて測定される。本明細書中に記載される静的溶出アッセイ方法および動的アッセイ方法は、放出された生物活性薬剤を推定するために使用され得る。AgSDについての代表的な静的溶出プロフィールおよび動的溶出プロフィールは、本発明の抗微生物コーティング中のコーティング架橋密度の関数として、図2Aおよび図2Bにそれぞれ示される。これらは、コーティングから放出されたAgSD総量を測定する。図3において示されるように、本発明のAgSD抗微生物コーティングについての溶出プロフィールは、より高い濃度のスルファダイアジン(SD)および対応してより高いレベルのAg+イオンが、より低いコーティング架橋密度(例えば、1.5%グリオキサール)でほぼ一定速度で、そして比較的高い架橋密度(例えば、5%グリオキサール)で実質的に一定速度で、400時間の期間ににわたって接触している水性環境中に放出されることを示す。対照的に、以前に公知である疎水性コーティング微粉化AgSDは、類似の条件下で、実質的に低いレベルのSDAg+イオンを提供する(図3)。従って、本発明の親水性抗微生物コーティングは、コーティングされた表面に、コーティングされた基材材料および完成製品(例えば、医療デバイスおよび保健医療製品)の上の細菌接着およびバイオフィルム形成に対して、微粉化AgSDを含む疎水性コーティングと比較して、長い期間にわたってより高い抗微生物効力を与えるという利点を提供する。
【0051】
本発明の抗微生物コーティングは、細菌接着およびその後のバイオフィルム形成の防止において有効である。図4は、コーティングされた出口ハウジングおよびコーティングされていない出口ハウジングの、走査型電子顕微鏡写真を示す。これらは、S.epidermidis(移植された医療デバイス(例えば、カテーテル)の表面のコロニー形成(バイオフィルム形成をもたらす)の原因である細菌)への接触を維持されている医療デバイスの構成部分である。図4において示されるように、コーティングされていないハウジング(コントロール)は、構成部分表面上の細菌接着および細菌増殖からもたらされた、よく発達したバイオフィルム形成を示し(図4A)、一方、本発明の抗微生物コーティングでコーティングされたハウジング構成部分は、実質的に細菌接着もバイオフィルム形成も示さない(図4B)。
【0052】
さらに、本発明の抗微生物コーティングはまた、生理学的環境(例えば、尿、血液、血漿)において安定であり、そして医療デバイスのために一般に使用される最終安定化方法に対して安定である。本発明の抗微生物コーティングは、種々の基材材料(医療デバイスおよび保健医療製品の製造において一般に使用される材料を含む)および完成製品自体において得られ得る。細菌接着およびバイオフィルム形成を阻害する抗微生物コーティングを得るために、本発明の抗微生物コーティングおよびコーティング処方物でコーティングされた医療デバイスまたは保健医療製品の例としては、泌尿器カテーテル、中心静脈カテーテル、創傷ドレイン、整形外科移植片、歯科移植片、摂食チューブ、気管チューブおよび医療送達製品(例えば、針なしコネクタおよび/またはIV製品)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
本発明のコーティングおよびコーティング組成物を製造するための方法ならびにその分析は、以下の実施例に記載される。この実施例は、限定することを決して意図されない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
(可溶化されたスルファダイアジン銀(AgSD)を含むコーティング処方物)
AgSD(20g/L)を含むコーティング処方物を、以下のように調製した。硝酸(64mL、70%)を、800mLのHOに加えた。次いで、得られた硝酸溶液を、湯せんを用いて70℃まで加熱した。AgSD(20g)を、この硝酸溶液にオーバーヘッド撹拌機を用いて溶解撹拌シャフト(dissolving stirring shaft)で撹拌しながら加えた。AgSDを、2分間溶解した。このAgSD溶液の最終容量を、HOで1.0Lにした。
【0055】
AgSD(20g/L)コーティング処方物が完了してから、さらなるコーティング成分を加え得る。AgSDのより高い濃度(例えば、30g/L)を、類似の手順を用いて調製し得る。
【0056】
(実施例2)
(コーティング処方物調製)
AgSD(20.0g)およびPVA(50.0g、MW=124,000〜186,000、87〜89%加水分解)を含む1リットルのコーティング処方物を、以下のように調製した。
【0057】
中程度の混合に設定した適切な大きさの温度制御混合容器中で、硝酸(64mL、70%)を、精製HOに加え、そして800mLまで希釈した。オイルおよびポンプを備えた循環ヒーターを、65℃と70℃との間に設定した。溶解撹拌機が付属した速度可変オーバーヘッドミキサーを、500rpmに設定した。AgSD(20.0g)を、混合している水と酸との混合物にゆっくりと加えた。この溶液を、最低15分間混合した。ミキサーを消して、60秒間後に固体粒子が沈んでいないことを観察し、溶解を確認した。循環ヒーターの温度を80℃に設定し、そして撹拌機を再びつけた。薬物/酸混合物を入れた温度制御容器内の温度を、処理の前に少なくとも75℃にした。
【0058】
温度を75℃と80℃との間に維持しながら、50.0gのポリビニルアルコールを、酸/水AgSD溶液に、500rpmで撹拌しながら加えた。この溶液を、さらに3時間、500rpmで混合した。最終成分が加えられた約1時間後、得られたPVAコーティング処方物は、淡黄色であり、滑らかな外観を有していた。コーティングの最終容量を、精製水で1.0Lにした。
【0059】
このPVAコーティング処方物を、カバーされた/シールされた容器中で、使用まで室温で保存し得る。このPVAコーティング処方物は、調製後周囲の温度で約5日間、約38℃で約3ヶ月間、安定である。このPVAコーティング処方物は、通常、38℃で使用され得る。あるいは、このPVAコーティング処方物を、室温で保存して、使用前の約24時間その適用温度まで混合しながら加熱し、全ての成分が溶液中に存在しよく混合されていることを確認してもよい。このPVAコーティング処方物を、保存するかまたはコーティングプロセス中で使用する前に、さらに20×20ステンレス鋼スクリーンを通してもよい。
【0060】
(実施例3)
(TiOによるコーティング処方物調製)
AgSD(20.0g)、PVA(50.0g、MW=124,000〜186,000、87%〜89%加水分解)およびTiO(2.0g)を含む1リットルのコーティング処方物を以下のように調製した。
【0061】
中程度の混合に設定した適切な大きさの温度制御混合容器中で、硝酸(64mL、70%)を、精製HOに加え、そして800mLまで希釈した。オイルおよびポンプを備えた循環ヒーターを、65℃と70℃との間に設定した。溶解撹拌機が付属した速度可変オーバーヘッドミキサーを、500rpmに設定した。AgSD(20.0g)を、混合している水と酸との混合物にゆっくりと加えた。この溶液を、最低15分間混合した。ミキサーを消して、60秒間後に固体粒子が沈んでいないことを観察し、溶解を確認した。循環ヒーターの温度を80℃に設定し、そして撹拌機を再びつけた。薬物/酸混合物を入れた温度制御容器内の温度を、処理の前に少なくとも75℃にした。
【0062】
微粉化二酸化チタン(2.0g)を、50.0gの乾燥PVA粉末に加えた。2種類の粉末を、互いによく混合し、AgSD溶液に一緒に加えた。温度を75℃と80℃との間に維持しながら、このPVA二酸化チタン混合物を、酸/水AgSD溶液に、500rpmで撹拌しながら加えた。この溶液を、さらに3時間、500rpmで混合した。最終成分が加えられた約1時間後、得られたPVAコーティング処方物は、淡黄色であり、滑らかな外観を有していた。コーティングの最終容量を、精製水で1.0Lにした。
【0063】
このPVAコーティング処方物を、カバーされた/シールされた容器中で、使用まで室温で保存し得る。このPVAコーティング処方物は、製造日から室温で約5日間、約38℃で約90日間の貯蔵寿命を有し得る。このPVAコーティング処方物は、通常、38℃で使用され得る。このPVAコーティング処方物を、使用前の約24時間、その適用温度まで混合しながら加熱し、全ての成分が溶液中に存在しよく混合されていることを確認してもよい。このPVAコーティング処方物を、保存するかあるいは浸漬プロセスもしくは噴霧プロセスまたはコーティングプロセス中で使用する前に、さらに20×20ステンレス鋼スクリーンを通してもよい。
【0064】
(実施例4)
(噴霧コーティングのためのコーティング処方物)
AgSD(30.0g)、PVA(41.7g、MW=31,000〜50,000、87%〜89%加水分解)、PVA(16.7g、MW=89,000〜98,000、99+%加水分解)およびTiO(2.0g)を含む1リットルのコーティング処方物を以下のように調製した。
【0065】
中程度の混合に設定した適切な大きさの温度制御混合容器中で、硝酸(64mL、70%)を、精製HOに加え、そして800mLまで希釈した。オイルおよびポンプを備えた循環ヒーターを、65℃と70℃との間に設定した。溶解撹拌機が付属した速度可変オーバーヘッドミキサーを、500rpmに設定した。AgSD(30.0g)を、混合している水と酸との混合物にゆっくりと加えた。この溶液を、最低15分間混合した。ミキサーを消して、60秒間後に固体粒子が沈んでいないことを観察し、溶解を確認した。循環ヒーターの温度を80℃に設定し、そして撹拌機を再びつけた。薬物/酸混合物を入れた温度制御容器内の温度を、処理の前に少なくとも75℃にした。
【0066】
微粉化二酸化チタン(2.0g)を、58.4gの乾燥PVA粉末に加えた。2種類の粉末を、互いによく混合し、AgSD溶液に一緒に加えた。温度を75℃と80℃との間に維持しながら、このPVA二酸化チタン混合物を、酸/水AgSD溶液に、500rpmで撹拌しながら加えた。この溶液を、さらに3時間、500rpmで混合した。最終成分が加えられた約1時間後、得られたPVAコーティング処方物は、淡黄色であり、滑らかな外観を有していた。コーティングの最終容量を、精製水で1.0Lにした。
【0067】
このPVAコーティング処方物を、カバーされた/シールされた容器中で、使用まで室温で保存し得る。このPVAコーティング処方物は、製造日から室温で約5日間、約38℃で約90日間の貯蔵寿命を有し得る。このPVAコーティング処方物は、通常、38℃で使用され得る。このPVAコーティング処方物を、使用前の約24時間、その適用温度まで混合しながら加熱し、全ての成分が溶液中に存在しよく混合されていることを確認してもよい。このPVAコーティング処方物を、保存するかあるいは浸漬プロセスもしくは噴霧プロセスまたはコーティングプロセス中で使用する前に、さらに20×20ステンレス鋼スクリーンを通してもよい。
【0068】
(実施例5)
(架橋処方物)
1リットルの架橋溶液を、867mLの精製水を測量し、そして撹拌しながら27mLの37% HClを加えることによって調製する。この溶液を、処理前に最低3時間撹拌する。次に、25mL 40%グリオキサールおよび81mL 37%ホルムアルデヒドを順番に加え、各添加後に3分間撹拌する。架橋剤を、室温でカバーされた容器内で使用まで保存する。貯蔵寿命は、製造日から90日である。
【0069】
(実施例6)
(コーティング方法)
コーティングするカテーテルを、約38℃の温度で30秒間、コーティング材料中に浸漬した。このカテーテルを、浸漬の間2rpmで回転させた。次いで、このカテーテルを、5mm/秒から7mm/秒まで変化する速度で、ここでは5rpmで回転させながら、機械的にコーティング材料から取り出した。次いで、このカテーテルを、10分間華氏83度で乾燥させ、その後、架橋工程を行った。架橋工程は、コーティングして乾燥させたカテーテルを、架橋剤処方物を含む溶液中に5rpmで回転させながら40秒間浸す工程からなる。このカテーテルを、架橋溶液から25mm/秒および5rpmで取り出す。華氏83度でのさらなる乾燥工程により、過剰な架橋剤を除去し、一貫性のあるコーティングを確実にする。
【0070】
(実施例7)
(多層コーティング方法)
実施例4のカテーテルを、コーティング混合物内に2回浸し、そして周期の最後に架橋溶液内に1回浸した。コーティングの間、最初の浸漬は、コーティング中に30秒間置き、カテーテルの温度を、コーティングの温度と釣り合わせた。これを乾燥プレナムを通して取り出し、そして約60秒間維持した後に再び浸した。このカテーテルを、乾燥プレナムを通した取り出しの開始前に、完全に5秒間浸した。乾燥工程の後、コーティングされたカテーテルを、架橋剤を含む溶液と、上述のように合わせた。
【0071】
(実施例8)
(コーティング事前処理方法)
カテーテルを、コーティングの前に事前処理した。カテーテル表面上の汚染物質(例えばオイルおよび離型剤)を、25mTorrまで圧力をポンプダウンすることによって除去した。酸素洗浄および腐食工程を、プラズマ装置の電力を495ワットに設定し、圧力をmTorrまで上げることによって実施した。アリルアルコール官能性付与(functionalization)工程を、アルコール/mmの流量=0.25mL、8分間、キャリアガスとして3%のアルゴンを用いて、約50mTorrの圧力で実施した。また、アリルアルコール添加は、キャリアガスとしての3%アルゴンおよび5%酸素によってなされ得る。
【0072】
事前処理カテーテル上のアルコール官能基の存在を、蛍光プローブ(例えば、5−(4,6−ジクロロトラジニル)アミノフルオロセイン(DTAF))を含有する溶液中にサンプルを一晩浸し、蛍光測定器を用いてカテーテル表面上のDTAFシグナルを検出することによって検出した。あるいは、アルコール官能基の存在を、10mg/Lのメチレンブルー溶液中にカテーテルを5分間浸漬することによって、検出した。表面上のアルコール基を有するサンプルは、培地から青く発色した。一方で、アルコール基を有さないサンプルは、わずかに青くなったのみであった。
【0073】
(実施例9)
(架橋手順)
コーティングを、浸漬プロセスを用いて架橋した。この架橋プロセスは、実施例4および実施例5に記載したものと類似のタンク、混合条件、温度制御および乾燥系を用いて実施した。このカテーテルを、架橋薬剤(1%グリオキサール、3%ホルムアルデヒド、1% HCl)を含むタンク内に40秒間浸漬し、そして数リットル/mmの気流および70℃の温度で、25mm/秒で乾燥プレナムを通して取り出した。
【0074】
(実施例10)
(コーティング厚の測定およびAgSD濃度の推定)
コーティング厚を、標準的技術を用いて測定した。カテーテルを、メスを用いて切断し、約1mmの厚みの断面セグメントを形成した。コーティング厚を、標準的技術を用いて最適な顕微鏡を用いて測定した。
【0075】
ローディング計算は、ローディング速度百分率(湿=2%)および乾燥における欠失(約70%)に基づいた。従って、ローディング総量は、6.7重量%まで上昇した。カテーテルの重量を、コーティングの適用の前後で測定し、そして乾燥したコーティングの総重量に6.7重量%を掛けて、総AgSD濃度を得た。TiOについて、同様の手順を用いた。TiOを、0.2湿重量%と推定した。
【0076】
(実施例11)
(動的バイオフィルムアッセイ)
細菌接種材料レベルを、一定レベルに維持した。接種材料を、適切な生体の細菌培養の一晩のバッチを連続希釈することによって得た。次いで、これらの連続希釈したバッチ培養物を、適切な希釈剤を含むシリンジに接種するために使用した。接種材料コントロールを毎日モニタリングし、コーティングした材料断面について一様な細菌濃度を維持した。コントロールを、二連で調製し、そして時間=0時間および時間=24時間でプレート培養した。
【0077】
コーティングした材料に接種材料を接触させる前に、細菌付着を媒介する目的で、タンパク質浸漬を行った。このタンパク質浸漬は、ヒト尿またはヒト血清を用い、代表的に約5分間の時間にわたって実施した。タンパク質浸漬後、コーティングした材料をフローセルに移し、そして接種したシリンジをシリンジポンプに置いて、フローセルに取り付けた。測定の長さを、100mmの全体の表面積に対応させて計算した。アッセイの間を通じて、接種材料の流れを、一定の流量に維持した(0.007mL/分)。
【0078】
24時間の間隔で、コーティングした材料のサンプルを、そのフローセルから除去し、その後の4つのリンスステーション(リン酸緩衝化生理食塩水またはナノポア水のどちらかを含む)内にコーティングした材料を浸漬することによって各10回すすぎ、それにより、プランクトン様細胞を除去し、そしてただ接着していただけの細菌細胞を除いた。すすぎの後、コーティングした材料を、適切な中性化溶液(コーティング材料の抗感染性コーティングに特異的である)中に移した。
【0079】
次いで、コーティングした材料および中性化溶液を、無菌シャーレに無菌的に移し、ここで、コーティング材料からバイオフィルムを無菌メスを用いて除去した。この中性化溶液およびバイオフィルムを、ピペットチップに約10回通し、バイオフィルムを破壊した。次いで、バイオフィルムを含むコーティングした材料および中性化溶液を、試験管に移し、30秒間パルス超音波処理し、それによってバイオフィルムの大きな集団の残りを全て破砕した。超音波処理後、試験管をボルテックスに(30秒間)かけることによって、バイオフィルムを中性化溶液中に均等に分配した。バイオフィルム/中性化溶液を、連続希釈し、その後、希釈物のプレート滴下列挙(drop plate enumeration)を行った。
【0080】
(実施例12)
(静的バイオフィルムアッセイ)
細菌接種材料レベルを、一定レベルに維持した。接種材料を、適切な生体の細菌培養の一晩のバッチを連続希釈することによって得た。次いで、これらの連続希釈したバッチ培養物を、適切な希釈剤を含む試験管に接種するために使用した。接種材料コントロールを毎日モニタリングし、コーティングした材料断面について一様な細菌濃度を維持した。コントロールを、二連で調製し、そして時間=0時間および時間=24時間でプレート培養した。測定の長さを、100mmの全体の表面積に対応させて計算した。コーティングした材料に接種材料を接触させる前に、細菌付着を媒介する目的で、タンパク質浸漬を行った。このタンパク質浸漬は、ヒト尿またはヒト血清を用い、代表的に約5分間の時間にわたって実施した。タンパク質浸漬後、次いで、コーティングした材料を、適切な希釈剤を含む無菌容器(vile)に移した。この容器は、所望の濃度の微生物で接種されていた。
【0081】
コーティングした材料を含む試験管を、試験管立てに24時間置いた。指定の回数の24時間の接触周期の後、処理するコーティングした材料を、系から除去した。細菌接触を許容し続けていたコーティングした材料を、接着を定量するために、使用したサンプルから分離して保存した。残った各試験管を、さらに微生物で24時間間隔で接種した。
【0082】
コーティングした材料を、その後の4つのリンスステーション(リン酸緩衝化生理食塩水またはナノポア水のどちらかを含む)内にコーティングした材料を浸漬することによって各10回すすいで、プランクトン様細胞の除去を容易にし、ただ接着していただけの細菌細胞を除いた。すすぎの後、コーティングした材料を、適切な中性化溶液中に移した。
【0083】
次いで、コーティングした材料および中性化溶液を、無菌シャーレに無菌的に移し、ここで、コーティング材料からバイオフィルムを無菌メスを用いて除去した。この中性化溶液およびバイオフィルムを、ピペットチップに約10回通し、バイオフィルムを破壊した。
【0084】
次いで、バイオフィルムを含むコーティングした材料および中性化溶液を、試験管に移し、30秒間パルス超音波処理し、それによってバイオフィルムの大きな集団の残りを全て破砕した。超音波処理後、試験管をボルテックスに(30秒間)かけることによって、バイオフィルムを中性化溶液中に均等に分配した。バイオフィルム/中性化溶液を、連続希釈し、その後、希釈物のプレート滴下列挙を行った。
【0085】
(実施例13)
(噴霧コーティングプロセス)
PVAベースの噴霧コーティングを、ポリカーボネート針なしコネクタに適用した。使用したPVA材料は、上記の実施例4のように調製した材料から構成された。2つの別々の超音波噴霧器を、PVA材料および架橋溶液を霧状にするために用いた。ロータリーパートホルダー(rotary part holder)を用いて、一連の噴霧および架橋の周期を通して部分を動かした。この周期は、以下からなる:コーティング噴霧16μL、7.5ワット、噴霧5秒間;華氏80℃にて乾燥3分間;架橋噴霧16μL、4.0ワット、噴霧5秒間;乾燥3分間;コーティング噴霧16μL、7.5ワット、噴霧5秒間;華氏80℃にて乾燥3分間;架橋噴霧16μL、4.0ワット、噴霧5秒間;華氏80℃にて乾燥5分間。噴霧容量および噴霧時間は、他のパラメーターを一定に保った場合、噴霧する部分の表面積に依存して変わった。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1Aは、懸濁液中の微粉化AgSDでコーティングされた基材の画像である。図1Bは、溶液中のAgSDでコーティングされた基材の画像である。
【図2】図2Aは、静的モデル溶出のグラフである。図2Bは、動的モデル溶出のグラフである。縦軸は、1ミリリットルあたりのマイクログラム(μg/mL)で濃度を表す。横軸は、時間を時間で表す。
【図3】図3は、コーティングAgSD溶出プロフィールを、架橋密度の関数で示す。図3は、可溶化されたAgSDを含む幾つかの架橋されたコーティング組成物および微粉化AgSDを含む疎水性コーティング組成物の、AgSD溶出プロフィールを示すグラフである。縦軸は、コーティングから放出されたAgSDの百分率を表す。横軸は、時間を時間で表す。架橋密度は、架橋剤の濃度によって表される。
【図4】図4Aは、コーティングされていないポリカーボネート出口ハウジングの画像である。図4Bは、コーティングされたポリカーボネート出口ハウジングの画像である。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗微生物コーティングであって、該抗微生物コーティングは、
三次元親水性ポリマーネットワークを含むヒドロゲル層;および
該ヒドロゲル層中に可溶化される実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を少なくとも1種含む生物活性薬剤
を含む、抗微生物コーティング。
【請求項2】
前記ヒドロゲル層は三次元ポリビニルアルコールネットワークを含み、そして前記実質的に非水溶性である抗微生物金属材料はスルファダイアジン銀を含む、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項3】
前記ヒドロゲル層は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルアルコール−グリシンコポリマー、ポリビニルアルコール−リジンコポリマー、ならびにこれらの組み合わせおよびコポリマーからなる群より選択される、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項4】
前記生物活性薬剤は、合成の抗生物質、合成の抗細菌化合物もしくは天然に存在する抗生物質、天然に存在する抗細菌化合物またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項5】
前記実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、金属、金属合金、金属塩、金属複合体またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項6】
前記実質的に実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、ハロゲン化銀類、スルファジン銀類、スルファダイアジン銀類、スルホンアミド銀類、スルホニル尿素銀類およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項7】
安定化剤をさらに含む、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項8】
前記安定化剤は、酸化防止剤類、光安定化剤類、フリーラジカルスカベンジャー類およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7に記載の抗微生物コーティング。
【請求項9】
前記安定化剤は、ラクトン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、チオエステル酸化防止剤、ヒンダードアミン酸化防止剤、ヒンダードベノゾアート酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸化防止剤を含む、請求項7に記載の抗微生物コーティング。
【請求項10】
前記安定化剤は、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−チアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン;ポリ[(6−モルホリノ−s−チアジン−2,4−ジイル)[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]];3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル;α−トコフェロール;α−コハク酸トコフェロールポリエチレングリコール;α−リポ酸;ブチルヒドロキシトルエン;アスコルビン酸ナトリウム;およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸化防止剤を含む、請求項7に記載の抗微生物コーティング。
【請求項11】
前記安定化剤は、ベンゾアート、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート、有機ニッケル、有機亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される光安定化剤を含む、請求項7に記載の抗微生物コーティング。
【請求項12】
前記安定化剤は、TiO、WO、ケイ酸マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の抗微生物コーティング。
【請求項13】
前記三次元親水性ポリマーネットワークは、イオン結合もしくは共有化学結合、クリオゲルまたは相互浸透ポリマーネットワークを含む架橋されたマトリックスである、請求項1に記載の抗微生物コーティング。
【請求項14】
抗微生物コーティングを提供するためのコーティング組成物であって、該コーティング組成物は、以下:
親水性多官能性ポリマー;および
該コーティング組成物中に可溶化される実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を少なくとも1種含む生物活性薬剤
を含む、コーティング組成物。
【請求項15】
安定化剤をさらに含む、請求項14に記載のコーティング組成物。
【請求項16】
抗微生物コーティングを形成するための方法であって、該方法は、以下:
親水性多官能性ポリマーならびに生物活性薬剤を含むコーティング材料の少なくとも1つの層を基材上に堆積する工程であって、該生物活性薬剤は該生物活性薬剤中に可溶化される実質的に非水溶性である抗微生物金属化合物を少なくとも1種含む、工程;
該コーティング材料層を、少なくとも部分的に乾燥させる工程;ならびに
該親水性多官能性ポリマーを架橋して、該基材材料上に表面固定化三次元ヒドロゲルネットワークを形成する工程
を包含する方法。
【請求項17】
前記コーティング材料は、安定化剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記安定化剤は、酸化防止剤類、光安定化剤類、フリーラジカルスカベンジャー類、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記安定化剤は、TiOを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記安定化剤は、ラクトン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、チオエステル酸化防止剤、ヒンダードアミン酸化防止剤、ヒンダードベノゾアート酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸化防止剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記安定化剤は、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン;ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]];3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル;α−トコフェロール;α−コハク酸トコフェロールポリエチレングリコール;α−リポ酸;ブチルヒドロキシトルエン;アスコルビン酸ナトリウム;およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸化防止剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記安定化剤は、ベンゾアート、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート、有機ニッケル、有機亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される光安定化剤を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記安定化剤は、TiO、WO、ケイ酸マグネシウム、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記コーティング材料層を堆積する前に、前記基材材料の表面を事前処理する工程、および該基材材料上に親水性多官能性材料を化学的にグラフティングする工程を包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記基材材料の前記表面を事前処理する工程は、該基材材料の該表面をプライマー層でコーティングする工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記基材材料の前記表面を事前処理する工程は、該基材材料の該表面を表面酸化剤で処理する工程を包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記表面酸化剤は、プラズマを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記親水性多官能性化合物は、脂肪族アルコールを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項29】
前記親水性多官能性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルアルコール−グリシンコポリマー、ポリビニルアルコール−リジンコポリマー、ならびにこれらの組み合わせおよびこれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項30】
前記生物活性薬剤は、合成の抗生物質、合成の抗細菌化合物、もしくは天然に存在する抗生物質、天然に存在する抗細菌化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項31】
前記実質的に非水溶性である抗微生物金属化合物は、金属、金属合金、金属塩、金属複合体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項32】
前記実質的に非水溶性である抗微生物金属化合物は、ハロゲン化銀類、スルファジン銀類、スルファダイアジン銀類、スルホンアミド銀類、スルホニル尿素銀類、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項33】
架橋剤が、前記コーティング材料層と反応して、前記基材材料上に前記表面固定化三次元ヒドロゲルネットワークを形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項34】
微生物接着を阻害するための抗微生物コーティングを提供するためのコーティング組成物を製造する方法であって、該方法は、以下:
(i)酸性水溶液を、加熱する工程;
(ii)実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を、該加熱された酸性水溶液に添加し、該実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を完全に溶解する工程;および
(iii)親水性多官能性ポリマーを、該溶解した実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を含む該加熱された酸性水溶液に添加し、該実質的に非水溶性である抗微生物金属材料を該コーティング組成物中で可溶化された形態に維持する工程
を包含する方法。
【請求項35】
前記加熱された酸性水溶液中の、前記実質的に非水溶性である抗微生物金属材料の前記可溶化された形態は、均質であるかまたは実質的に均質な水相であり、そして該実質的に非水溶性である抗微生物金属材料および前記親水性多官能性ポリマーは、前記コーティング組成物中に均質に分散される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記親水性多官能性ポリマーは、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルアルコール−グリシンコポリマー、ポリビニルアルコール−リジンコポリマー、ならびにこれらの組み合わせおよびこれらのコポリマーからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、合成の抗生物質、合成の抗細菌化合物、もしくは天然に存在する抗生物質、天然に存在する抗細菌化合物、またはこれらの組み合わせである、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、金属、金属合金、金属塩、金属複合体、またはこれらの組み合わせを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記実質的に非水溶性である抗微生物金属材料は、ハロゲン化銀類、スルファジン銀類、スルファダイアジン銀類、スルホンアミド銀類、スルホニル尿素銀類、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
安定化剤を前記加熱された酸性水溶液に添加する工程をさらに包含する、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記安定化剤は、酸化防止剤類、光安定化剤類、フリーラジカルスカベンジャー類、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記安定化剤は、ラクトン酸化防止剤、フェノール酸化防止剤、ホスフィン酸化防止剤、チオエステル酸化防止剤、ヒンダードアミン酸化防止剤、ヒンダードベノゾアート酸化防止剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される酸化防止剤を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記安定化剤は、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン;ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]];3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルエステル;α−トコフェロール;α−コハク酸トコフェロールポリエチレングリコール;α−リポ酸;ブチルヒドロキシトルエン;アスコルビン酸ナトリウム;およびこれらの混合物からなる群より選択される酸化防止剤を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記安定化剤は、ベンゾアート、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、シアノアクリレート、有機ニッケル、有機亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される光安定化剤を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記酸性水溶液は硝酸を含み、前記非水溶性である抗微生物金属材料はスルファダイアジン銀を含み、そして前記親水性多官能性ポリマーはポリビニルアルコールを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記硝酸を含む酸性水溶液は、約65℃から約70℃までの範囲におよぶ温度まで加熱される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記硝酸を含む酸性水溶液は、約70%の濃度の硝酸を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリビニルアルコールは、約89,000ダルトンから約98,000ダルトンまでの範囲におよぶ分子量を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記コーティング組成物中に前記スルファダイアジン銀を可溶化された形態で維持するために、微粉化二酸化チタンを前記加熱された酸性溶液に添加する工程をさらに包含する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記微粉化二酸化チタンは、約1μmの粒子サイズを有する、請求項49に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−535573(P2007−535573A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511086(P2007−511086)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/015162
【国際公開番号】WO2005/107455
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506362668)バクテリン インターナショナル, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】