説明

組み換えヒト顆粒球コロニー刺激因子の精製のための方法

本発明は、タンパク質が封入体として発現される、微生物細胞からの治療等級の組み換えヒトGCSFの大規模精製のための新規な方法を記載する。封入体は、酸化還元条件下で可溶化され、かつ再折り畳みされる。酸化還元条件は、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸および還元グルタチオンを用いることによって提供される。この方法は、変性剤の除去後に再折り畳みされたGCSFを精製するための水性二相抽出工程の新規の使用を含む。この工程の後、GCSFをさらに、関連する不純物を除去するためにクロマトグラフィー技術を用いて精製する。得られたGCSFは、製造規模の方法にとって必須である、良好な純度および収率を有する。タンパク質、DNAおよび内毒素のような、宿主細胞に関連する混入物が、本発明の精製方法を用いて減少する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性二相抽出方法の少なくとも1つの工程を用いるコロニー刺激因子の精製のための方法に関する。特に、本発明は、水性二相抽出方法を用いる組み換えヒトGCSFの精製のための方法に関する。本発明はまた、酸化型、内毒素(エンドトキシン)および宿主細胞タンパク質がより少ない、本発明の方法によって産生される精製組み換えヒトGCSFに関する。
【背景技術】
【0002】
コロニー刺激因子類(CSF類)は、造血幹細胞の表面上のレセプタータンパク質に結合し、それによって、細胞を増殖させ、かつ特定の種類の血球に分化させ得る細胞内のシグナル伝達経路を活性化する、分泌型の糖タンパク質である。ヒト顆粒球−コロニー刺激因子(h−GCSF)およびヒトマクロファージ顆粒球−コロニー刺激因子(h−GM−CSF)は、造血前駆細胞の分化および増殖、ならびに成熟好中球の活性化を刺激するのに重要な役割を果たす、一群のコロニー刺激因子に属する。GCSFは、インビトロおよびインビボで好中球増殖を支持し得る。GCSFタンパク質は、トレオニン133にO−グリコシル化部位をわずかに1つしか有さず;この残基でのグリコシル化がないことが、このタンパク質の安定性に影響するとは見出されなかった。タンパク質のグリコシル化が安定性に影響することが公知である多くのタンパク質治療剤に関しては、適切な発現ベクターを用いて、酵母または哺乳動物細胞におけるクローニングおよび発現に取り組むことが必須である。GCSFの場合、E.coliにおいて発現される組み換えタンパク質は、天然のタンパク質と同じ比活性を有することが見出された(Oh−edaら、1990 J.Biol.Chem.256,11432〜11435,Hillら、1993 Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90.5167−5171、およびArakawaら、1993 J.Protein Chem.12,525〜531)。ヒトGCSFは、その天然に存在する形態で約20,000ダルトンの分子量および5つのシステイン残基を有する糖タンパク質である。これらの残基のうち4つが、このタンパク質の活性にとって本質的に重要である2つの分子内ジスルフィド架橋を形成する。GCSFは、その天然の供給源から少量しか利用できないので、主に、組み換え型のGCSFが医薬品を製造するために用いられる。組み換え型のGCSFは、例えば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞のような哺乳動物細胞、またはE.coliのような原核生物細胞における発現によって入手可能である。哺乳動物細胞で発現させた組み換えタンパク質は、異なるグリコシル化パターンを有するという点で、天然に存在するGCSFとは異なるのであるが、細菌での発現の結果として追加のN末端メチオニン残基を有し得るE.coli中で発現されるタンパク質では、グリコシル化は全く存在しない。ヒトGCSFをコードするcDNAのクローニングおよび発現は、2つのグループによって記載された(Nagata,Sら、Nature 319,415〜418(1986);Souza,L.M.ら、Science 232,61〜65(1986))。
【0003】
GCSFの組み換え産生は、1987年に、WO87/01132(A1)で初めて特許文献に記載された。最初の市販のGCSFは、Amgen(アムジェン)から、Neupogen(登録商標)という商品名で製造および販売されている。原核生物細胞におけるGCSFの産生は、哺乳動物細胞中の産生と比較して好ましい。より簡易な発現系および培養条件の使用が可能だからである。しかし、原核生物細胞における組み換えタンパク質の産生において、高頻度に生じる問題とは、封入体と呼ばれる、発現されたタンパク質の変性型の難溶性細胞内凝集体を形成することであり、この細胞内凝集体は、部分的に二次構造を有し、かつ細菌細胞の細胞質に見出され得る。このような封入体の形成の結果、タンパク質の活性な構造を維持するための適切な手段の補助を伴った、緩やかな速度での遠心分離による封入体の単離に続いて、タンパク質の可溶化および再生が必要となる。ここで、変性したタンパク質の正しい折り畳みの中間体への移行と、いくつかのタンパク質分子の凝集との間の競合的な反応は、再生されたタンパク質の収量を制限する本質的な要因である。
【0004】
多くの初期の特許では、細菌の細胞から酵母および哺乳動物の細胞にまでおよぶ種々の発現系からのGCSFタンパク質の組み換え発現および精製の様々な態様が記載されている。記載される方法のうちいくつかは、精製方法の終わりでの収率の損失が著しくなり得る多段階の方法である。以下の米国特許第4,810,643号;同第4,999,291号;同第5,582,823号;同第5,580,755号;および同第5,830,705号およびPCT公開WO87/03689、WO87/02060、WO86/04605およびWO86/04506は、細菌の細胞から酵母および哺乳動物の細胞にまでおよぶ種々の発現系からのh−GCSFタンパク質の組み換え発現および精製の様々な態様を記載している。
【0005】
E.coli、酵母またはCHO細胞で発現されるGCSFの精製に関しては様々な他の方法が科学文献中で報告された。GCSFを構成的に産生することが知られている、CHU−2(ヒト口腔癌細胞株)馴化培地からのGCSFの精製の方法は、Nomuraら(EMBO J.vol 5,871,1986)によって開発された。この方法は、馴化培地の濃縮および限外濾過後の3段階のクロマトグラフィー手順の使用を記載している。WO87/01132(A1)は、GCSFの陽イオン交換クロマトグラフィー精製について記載している。
【0006】
細菌系におけるGCSFの精製は、米国特許第4,810,643号および同第4,999,291号に開示されている。GCSFのいくつかのクロマトグラフィーに基づく精製は、PCT公開番号WO03/051922(A1)、WO01/04154(A1)などの先行技術において記載されている。
【0007】
米国特許第5,055,555号は、真核生物細胞から発現される組み換えhGCSFの精製についての簡略化された方法を記載している。イオン交換クロマトグラフィーの後、タンパク質は、塩化ナトリウムを用いる塩析によって沈殿される。しかし、細菌で発現される封入体からのGCSFの回収に関して、塩化ナトリウム塩によるタンパク質の沈殿は、凝集状態を増大させ、これが収率および活性の損失を生じさせる。
【0008】
上記の特許で考察される種々の精製プロトコールは、GCSFの精製のための複数のクロマトグラフィーおよび他の工程に言及している。上述の文献のうち、産業的な規模での医薬等級のGCSFの産生のための簡易かつ利用可能な処理方法を開示したものはない。
【0009】
水性二相抽出として公知の精製技術は、細胞粒子およびタンパク質の両方について、出願によって1956〜1958年に紹介された。それ以来、この技術は、植物および動物の細胞、微生物、ウイルス、葉緑体、ミトコンドリア、膜小胞、タンパク質および核酸などの異なる構成要素の宿主に対して適用されている。二相系による抽出のための基礎は、相間の物質の選択的分配である。可溶性物質に関して、分配は、主に2つのバルク相の間で生じ、この抽出は、分配係数(上部の相の中の分配物質の濃度を下部の相の中の分配物質の濃度で割ったものと規定する)によって特徴付けられる。理想的には、分配係数は、相の全体の濃度および容量の比とは独立している。これは主に二相の特性、分配物質および温度の関数である。二相系は、二相の非相溶性のポリマー溶液を混合することによって、ポリマー溶液と塩溶液とを混合することによって、または塩溶液とわずかに無極性の溶媒とを混合することによって産生され得る。これらの種類の系は、タンパク質および核酸、細胞粒子並びにインタクトな細胞などの高分子を分離するための水性二相抽出方法とともに、文献中に、例えば、Albertsson,Partition of Cell Particles and Macromolecules,第3版(John Wiley&Sons:New York,1986);Walterら、Partitioning in Aqueous Two−Phase Systems:Theory Methods,Uses,and Applications to Biotechnology,(Academic Press:London,1985)に記載されている。
【0010】
タンパク質分離を大規模で取り扱うことが可能な、いくつかの低コスト二相系が公知である。これらの系は、上部相形成性のポリマーとしてポリエチレングリコール(PEG)を、および下部相形成性のポリマーとして粗デキストラン(例えば、Kronerら、Biotechnology Bioengineering,24:1015〜1045[1982])、濃縮塩溶液(例えば、Kulaら、Adv.Biochem.Bioeng.,24:73〜118[1982])、またはヒドロキシプロピルデンプン(Tjerneldら、Biotechnology Bioengineering,3.0:809〜816[1987])を用いる。
【0011】
二相の水性ポリマー系は文献中で広く考察されている。例えば、Baskirら、Macromolecules,20:1300〜1311(1987);Birkenmeierら、J.Chromatogr.,360:193〜201(1986);BirkenmeierおよびKopperschlaeger,J.Biotechnol.,21:93〜108(1991);BlomquistおよびAlbertsson,J.Chromatogr.,73:125〜133(1972);Blomquistら、Acta Chem.Scand.,29:838〜842(1975);Erlanson−Albertsson,Biochim.Biophys.Acta,617:317〜382(1980);FosterおよびHerr,Biol.Reprod.,46:981〜990(1992);GlossmannおよびGips,Naunyn.Schmiedebergers Arch.Pharmacol.,282:439〜444(1974);ハットリ、およびイワサキ,J.Biochem.(東京),88:726〜736(1980);Haynesら、AICHE Journal−American Institute of Chemical Engineers,37:1401〜1409(1991);Johanssonら、J.Chromatogr.,331:11〜21(1985);KesselおよびMcElhinney,Mol.Pharmacol.,14:1121〜1129(1978);KowalczykおよびBandurski,Biochemical Journal,279:509〜514(1991);Kuら、Biotechnol.Bioeng.,33:1081〜1088(1989);クボイら、化学工学論文集,16:1053〜1059(1990);クボイら、化学工学論文集,16:755〜762(1990);クボイら、化学工学論文集,17:67〜74(1991);クボイら、化学工学論文集,16:772〜779(1990);LillehojおよびMalik,Adv.Biochem.Eng.Biotechnol.,40:19〜71(1989);MattiassonおよびKaul,"Use of aqueous two−phase systems for recovery and purification in biotechnology"(会議論文),314,Separ.Recovery Purif.:Math.Model.,78〜92(1986);Ohlssonら、Nucl.Acids Res.,5:583〜590(1978);Wangら、J.Chem.Engineering of Japan,25:134〜139(1992);Zaslavskiiら、J.Chrom.,439:267〜281(1988);Zaslavskiiら、J.Chem.Soc.,Faraday Trans.,87:141〜145(1991);米国特許第4,879,234号(1989年11月7日発行)(欧州特許第210,532号に対応);独国(旧東ドイツ)特許第298,424号(1992年2月20日公開);WO92/07868(1992年5月14日公開);ならびに米国特許第5,093,254号を参照のこと。また、Hejnaesら、Protein Engineering,5:797〜806(1992)も参照のこと。
【0012】
水性二相抽出/単離の系は、独国特許第288,837号に記載されている。組み換えタンパク質の選択的な富化のためのこの方法では、タンパク質含有ホモジネートが、相非相溶性のポリマーとしてPEGおよびポリビニルアルコールから構成される、水性二相系中に懸濁される。インターフェロンの精製は、独国特許第2,943,016号に開示されるような種々のPEG誘導体を用いる、水性のPEGデキストラン系またはPEG−塩の系中の粗インターフェロン溶液の選択的分配によって達成された。
【0013】
米国特許第5,695,958号は、水性の発酵ブロスのような非天然構造の外因性ポリペプチドを、細胞から単離するための方法を提供し、該ポリペプチドは、このポリペプチドとカオロトピック剤、好ましくは還元剤と、および相形成性の種とを接触させて複数の水相を形成する工程を含む方法で調製され、ここでこの相のうちの1つは、細胞由来のバイオマス固体や核酸が僅かに含まれるポリペプチドが富化されている。
【0014】
米国特許第6,437,101号は、生物学的供給源から、ヒト成長ホルモン、成長ホルモンアンタゴニストまたはいずれかの相同体を単離するための方法を記載している。米国特許第6,437,101号に記載される方法は、多相抽出方法を用いる。
【0015】
米国特許第7,060,669号は、水性二相抽出における目的のタンパク質の抽出のための方法であって、このようなタンパク質をこの相の1つの中に運ぶ能力を有する標的タンパク質に対して、このようなタンパク質を融合することによる方法を提供する。
【0016】
この抽出技術の主な利点は、この方法が効率的であり、大規模化が容易であり、連続遠心分離機を用いる場合、迅速であり、比較的低コストであり、生体適合性を最大化するべく、水含量が高いということである。現在、タンパク質を精製するための水性二相系の産業上の適用は、比較的少ない。
【0017】
GCSFタンパク質を水性の二相抽出を用いてその天然型で、かつ変性剤の非存在下で精製することは、いままでのところ、記載されていない。
【発明の概要】
【0018】
一態様では、本発明は、微生物細胞由来の封入体の形態で得られる組み換えヒトGCSFの精製のための方法であって、少なくとも1つの水性二相抽出工程を含む方法に関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、微生物細胞から封入体の形態で得られる組み換えヒトGCSFの精製のための方法に関し、この方法は以下の工程:
a)GCSFの封入体を可溶化する工程と;
b)該可溶化されたGCSFタンパク質を再折り畳みする工程と;
c)水性二相抽出を用いることにより再折り畳みされたGCSFを精製する工程と;
d)必要に応じて、工程cで得られる天然のGCSFをさらに精製する工程と;
e)純粋なGCSFを単離する工程と;
を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、天然型のGCSFを単離するための水性二相抽出方法に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、水性二相抽出方法の少なくとも1つの工程を含む、本発明の方法によって得られる精製されたGCSFである。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、下側の相における再折り畳みされたタンパク質GCSFから95%を超える宿主細胞タンパク質、内毒素およびDNAを分離するための水性二相抽出方法に関し、ここでこの再折り畳みされたタンパク質は、原生動物細胞において封入体の形態で発現される哺乳動物ポリペプチド(哺乳動物生物体にもともと由来したポリペプチド)である。この方法はまた、組織および血液サンプルなどの天然の供給源からのGCSF精製に適用されてもよい。
【0023】
別の態様では、本発明はまた、水性二相抽出方法の少なくとも1工程を含む、本発明の方法によって得られる生物学的に活性なGCSFの治療上有効な量を含む医薬組成物に関する。
【0024】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、下の詳細な説明に示す。本発明の特徴、目的および利点は、詳細な説明および特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】GCSFの精製のための水性二相抽出方法の模式的な説明。
【図2】精製のSDS−PAGEプロファイル
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書において用いる場合、「還元剤」とは、分子内または分子間のジスルフィド結合が化学的に破壊されるように、水溶液中で適切な濃度で、スルフヒドリル基を維持する化合物を指す。適切な還元剤の代表的な例としては、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリトリトール(DTE)、βメルカプトエタノール(BME)、システイン、システアミン、チオグリコレート、グルタチオンおよび水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0027】
本明細書において用いる場合、「カオトロピック剤」とは、水溶液中で適切な濃度で、ポリペプチドの表面での変化を通じてそのポリペプチドの空間的な立体配置または構造を変化させ、それによってこの水性媒体中でこのポリペプチドを可溶性にさせる化合物を指す。この変化は、例えば、水和の状態、溶媒環境または溶媒−表面の相互作用を変化させることによって生じ得る。カオトロピック剤の濃度は、その強度および有効性に直接影響する。強力に変性させるカオトロピック溶液は、カオトロピック剤を高濃度で含み、溶液中に存在するポリペプチドを効率的に溶液中で解く。この解きは比較的広範であるが可逆的である。穏やかに変性させるカオトロピック溶液は、カオトロピック剤を含み、これは溶液中で十分な濃度で、溶液中の可溶性中間体を介すると考えられている、ポリペプチドの持つどんな捩れ構造も、内因性または相同な生理的条件下、その活性型で取り扱う場合にペプチド自身が見出す空間的な構造への、ポリペプチドの部分的な折り畳みを可能にする。カオトロピック剤の例としては、塩酸グアニジン、尿素、および水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような水酸化物が挙げられる。カオトロピック剤としては、これらの試薬の組み合わせ、例えば、塩基と尿素または塩酸グアニジンとの混合物が挙げられる。
【0028】
本明細書において用いる場合、「封入体」という用語は、凝集した目的のポリペプチドの高密度の細胞内塊を指し、これは全細胞成分を含めた、総細胞タンパク質のかなりの部分を構成する。これらの凝集したポリペプチドは、不正確に折り畳まれるタンパク質である場合もあるし、または部分的に正確に折り畳まれるタンパク質である場合もある。全ての場合ではないが、いくつかの場合には、ポリペプチドのこれらの凝集体は、位相差顕微鏡下で1000倍未満の倍率で、細胞内容物内で可視の明るいスポットとして認識され得る。
【0029】
本明細書において用いる「治療上有効な量」という用語は、生物学的に活性なG−CSFの治療効果を有する、生物学的に活性なG−CSFの量を指す。
【0030】
本明細書において用いる「生物学的に活性なG−CSF」という用語は、造血系前駆体細胞の分化および増殖、ならびに造血系の成熟細胞の活性化を促進し得るG−CSFを指す。
【0031】
ある実施形態では、本発明は、微生物細胞から得られる天然型の組み換えGCSFの大規模精製のための方法を提供する。
【0032】
本発明による方法は以下の工程:
a)GCSFの封入体を可溶化する工程と;
b)該可溶化されたGCSFタンパク質を再折り畳みする工程と;
c)水性二相抽出を用いることによりこの再折り畳みされたGCSFを精製する工程と;
d)必要に応じて、工程cで得られる天然のGCSFをさらに精製する工程と;
e)純粋なGCSFを単離する工程と;
を含む。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、この封入体は、適切な可溶化緩衝液および適切なカオトロピック剤中に、7〜12の範囲のpHで溶解される。適切な緩衝液としては限定するものではないが、Tris(塩化物/マレイン酸塩)緩衝液、リン酸塩(ナトリウムおよびカリウム)緩衝液、グリシン水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−ホウ砂緩衝液、ホウ砂−水酸化ナトリウム緩衝液、炭酸−重炭酸緩衝液などが挙げられる。
【0034】
適切なカオトロピック剤としては、尿素およびグアニジンまたはチオシアン酸の塩、好ましくは尿素、塩酸グアニジンまたはチオシアン酸ナトリウムが挙げられる。緩衝液中に存在することが必要なカオトロピック剤の量は、例えば、存在するカオトロピック剤およびポリペプチドの種類に依存する。必要なカオトロピック剤の量は、溶液に存在するポリペプチドを解くのに十分でなければならない。溶液のpHは、カオトロピック剤に依存し、尿素については、溶液のpHは、9〜12の範囲で維持され、塩酸グアニジンについては、このpHは7〜9の範囲である。溶液のODは、約2〜約12の範囲である。
【0035】
微生物の封入体を可溶化するために用いられ得る界面活性剤および他の試薬としては、SDS、CTAB、CHAPS、Tween 20、Triton X100、Sarcosyl、オクチル・ベータグルコシド(Octyl betaglucoside)、Nonidet P−40、ドデシル・マルトシド、NDSBが挙げられる。(以下の引用文献による:Process Scale Bioseparations for the biopharmaceutical industry,編集Abhinav A Shukla、Mark R EtzelおよびShishir Gadam,Taylor and Francis,2007 第129頁、(これはその全体が参照によって本明細書に援用される)。
【0036】
可溶化された封入体を含む溶液は、10〜30℃の範囲の温度で還元剤によって処理される。還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、βメルカプトエタノール(BME);システイン、チオグリコレートおよび水酸化ホウ素ナトリウムから1つ以上が挙げられる。緩衝液中に存在すべき還元剤の量は主に、還元剤およびカオトロピック剤の種類、使用される緩衝液の種類およびpH、ならびに緩衝液中のポリペプチドの種類および濃度に依存する。還元剤の有効量とは、細胞内ジスルフィド媒介性凝集を排除するために十分な量である。好ましい還元剤はDTTである。
【0037】
本発明のある実施形態では、タンパク質GCSFは、再折り畳み緩衝液中で可溶化されたGCSFを再折り畳みすることによって天然型で得られる。典型的には、再折り畳み緩衝液は、適切な緩衝液、アルギニンまたはプロリンのようなアミノ酸、スクロース、EDTA、アスコルビン酸ナトリウム、尿素を含んでもよい。アスコルビン酸ナトリウムが再折り畳み緩衝液中で用いられる場合、再折り畳みの間の酸化還元条件を得るべく、デヒドロアスコルビン酸および還元グルタチオンも、再折り畳み緩衝液に添加される。あるいは、システイン/シスチンのような、オキシドシャッフリング(oxido−shuffling)剤、または酸化および還元されたグルタチオンもまた用いられてもよい。
【0038】
再折り畳みは、5〜20℃の範囲の温度、好ましくは6〜10℃の温度で行われる。再折り畳みのために必要な時間は、約6〜24時間、好ましくは15〜20時間かかってもよい。
【0039】
タンパク質の再折り畳みが終了した後、ダイアフィルトレーションを行ってもよい。変性剤の除去のために、緩衝液の交換は、スクロースまたはソルビトールを有するTris緩衝液を用いることによって行われてもよい。
【0040】
本発明のある実施形態では、タンパク質GCSFは、水性二相抽出を用いることによってさらに単離され、かつ精製される。再折り畳みされたGCSFタンパク質を含むダイアフィルトレーションされた溶液に、相形成性のポリマー−塩の組み合わせを添加する。相形成性剤、相形成性剤の組み合わせおよび適切な相形成性剤を選択するのに考慮するパラメーターの例は、Diamondら、1992(前出)、およびAbbottら、1990,Bioseparation 1:191〜225(その両方ともその全体が参照によって本明細書に援用される)に考察される。ポリマーおよび塩は、二相系が形成されるような条件下および濃度で用いられる。
【0041】
適切なポリマーの例としては限定するものではないが、例えば、PEG2000、PEG4000、PEG6000およびPEG8000のような、約2000〜8000の分子量を有する、ポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体類が挙げられる。
【0042】
相形成性の塩としては、無機または有機の塩が挙げられ、これらは、好ましくは、ポリペプチドを沈殿させるようには作用しない。陰イオンは、水性多相系を形成する能力を有する陰イオンが選択される。例としては、硫酸アンモニウム、リン酸二ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、クエン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、硫酸マンガン、リン酸マンガンなどが挙げられる。二相性の水系を形成するのに有用な塩の種類は、その全体が参照によって本明細書に援用されるZaslavskiiら、J.Chrom.,439:267−281(1988)でさらに詳細に評価されている。相形成のために好ましい塩は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよび硫酸アンモニウムである。
【0043】
本発明のある実施形態では、相形成性剤の濃度は多様であってもよい。重量/容量で表される相形成性のポリマーの濃度は、約4%〜約18%の範囲、好ましくは約8%〜約12%である。さらに別の実施形態では、重量/容量で表される相形成性の塩の濃度は、約4%〜約18%、好ましくは約6%〜約12%の範囲にある。
【0044】
得られた抽出混合物は、別個の相を形成するために処理され、その1つは、天然型のタンパク質GCSFを豊富に含む。このような処理は、例えば、抽出混合物を遠心分離することによって、または数時間の間その混合物を静置させる(1×Gで沈降または合体させる)ことによって成され得る。さらなる態様では、一旦別個の相が形成されれば、タンパク質GCSFを豊富に含む相、すなわち通常、上部の軽い相が除去されうる。
【0045】
必要に応じて、タンパク質GCSFを含む相の除去後、タンパク質GCSFを含まない相を再抽出してもよい(「二段階抽出」)。再抽出は、第二の軽い相を形成し得る相形成性剤を含有する溶液を添加することによって成されてもよく、その結果、これによって、再抽出においてタンパク質GCSFが富化されている相が形成される。別の態様では、二段階抽出の間、相形成性剤を溶解し、この系を徹底的に混合するべく、抽出混合物が攪拌される。得られた再抽出混合物は、別個の相を形成し、そのうちの1つは、タンパク質GCSFが富化されているように、処理される。
【0046】
抽出精製後、タンパク質GCSFは、抽出系から取り出された相中で検出され得る。例えば、このタンパク質は、種々の方法、限定するものではないが、バイオアッセイ、HPLC、アミノ酸決定または免疫学的アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ、ELISA、抗体結合を用いるウエスタンブロット、SDS−PAGEを含めて様々な方法によって検出され得る。このような抗体としては限定するものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化抗体またはキメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されるフラグメント、および上記のいずれかのエピトープ結合フラグメントが挙げられる。精製されたタンパク質の量およびそれらの純度のレベルは、当該分野で周知の方法によって決定され得る。
【0047】
本発明の方法を用いて得られるタンパク質は、例えば、高純度のタンパク質またはポリペプチドを得るためにさらに処理されてもよい。関連の不純物を除去するために、さらなる精製が必須である場合がある。不純物としては、酸化型、脱アミノ型、凝集されたGCSF、およびまた分解型、例えば、生物学的に不活性なモノマー型、不正確に折り畳まれたG−CSF分子、G−CSFの変性型、宿主細胞タンパク質、宿主細胞物質、例えば、DNA、(リポ)ポリサッカライドなどおよびG−CSFの調製および処理に用いられた添加物を挙げることができる。このようなより高い純度が、そのタンパク質またはポリペプチドが意図する用途次第で必要である場合がある。例えば、タンパク質の治療的な使用は通常、本発明の抽出方法後のさらなる精製を要する。当業者に公知の全てのタンパク質精製方法が、さらなる精製のために用いられ得る。このような技術は、BergerおよびKimmel,Guide to Molecular Cloning Techniques,Methods in Enzymology,第152巻,Academic Press,San Diego,Calif.(1987);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,およびManiatis,T.(1989);Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,all Viols.,1989,ならびにその定期更新);New Protein Techniques:Methods in Molecular Biology,Walker,J.M.編集,Humana Press,Clifton,N.J.,1988;ならびにProtein Purification:Principles and Practice,第3版,Scopes,R.K.,Springer− Verlag,New York,N.Y.,1987に詳細に記載されており、これらは、その全体が参照によって本明細書に援用される。一般には、限定するものではないが、硫酸アンモニウム沈殿、遠心分離、イオン交換、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーを含む技術がタンパク質の更なる精製に用いられて良い。
【0048】
好ましい実施形態では、GCSFタンパク質を含む上部相を希釈して、3〜6mS/cmの範囲に、好ましくは4〜5mS/cmの範囲に伝導率を調整する。pHはまた、3〜5.5の範囲で、好ましくは4〜5の範囲で調整する。関連の不純物とともにGCSFを含んでいる得られた溶液を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いることによって、さらに精製して、関連の不純物を除去してもよい。別の選択肢では、上部の相をまた、適切な塩の添加により疎水性相互作用クロマトグラフィーに供してもよい。
【0049】
本発明の方法によって得られる純粋タンパク質GCSFの収率は、40〜50%の範囲にある。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、水性二相抽出は、95%より多くの宿主タンパク質、内毒素およびDNAを再折り畳みされたタンパク質GCSFから分離するために有用である。本発明の方法によって得られたタンパク質GCSFは、99%以上の純度を有する。本発明の方法によって得られるGCSFが含む酸化不純物は極めて低い。本発明の方法によって得られる純粋なGCSFに存在する内毒素は2IU/ml未満である。純粋GCSF中の宿主細胞タンパク質の含量は20ppm未満である。
【0051】
本発明による水性二相抽出方法の少なくとも1つの工程を含む、天然型のGCSFの精製は、哺乳動物の組織および血液のような任意の天然の供給源から得られる天然のGCSFに用いてもよい。記載される方法はGCSFの工業的製造のために特に適している。
【0052】
本明細書に記載されるような純粋なGCSFを得る方法はさらに、純粋なGCSFを臨床用途のための完成した剤形に形成する工程を含む。
【0053】
本発明の精製および/または単離のための全方法によって得られる生物学的に活性なG−CSFは、治療上有効な量の生物学的に活性なG−CSFおよび1つ以上の医薬賦形剤を含む、医薬組成物の調製に適し、かつ臨床の用途に適している。短時間の精製および単離の方法において活性型のG−CSFを維持する能力は、収率の改善に寄与するだけでなく、生物学的に活性なG−CSFおよびそれを含有する医薬組成物の純度および有効性の改善にも寄与する。
【0054】
適切な医薬上許容される賦形剤としては、限定するものではないが、G−CSF療法において有用な、適切な希釈剤、アジュバントおよび/または担体が挙げられる。
【0055】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明によって得られるGCSFを含む医薬組成物に関する。得られたGCSFは、凍結乾燥型または液体型のいずれで貯蔵されてもよい。これは、皮下または静脈内のいずれかに投与される。組み換え発現されるGCSFの処方物中の適切なアジュバントは、例えば、糖および糖アルコールのような安定化剤、アミノ酸およびポリソルベート20/80のような界面活性剤ならびに適切な緩衝物質である。処方物の例は、欧州特許第0674525号、欧州特許第0373679号および欧州特許第0306824号に記載されており、その両方ともが全体として参照によって本明細書に援用される。
【0056】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するために示しているが、決して本発明の範囲を限定するために示すものではない。
【0057】
実施例1:純粋なGCSFを得るための一般的方法
工程A:GCSFの封入体を、100mMのTris 6M GuHCl pH8.0を含有する緩衝液に可溶化する。可溶化には約45分かかる。可溶化された封入体のODを、可溶化緩衝液を用いて8.0に調整する(通常は1gの封入体あたり、45mlの可溶化緩衝液を用いる)。この溶液を0.45μmのフィルターを通して濾過する。DTTを、最大5mMまで添加して、タンパク質を還元する。還元は、室温(25℃)で30分間行う。
【0058】
工程B:可溶化されたGCSFを、30〜45分の期間中、撹拌しながら、再折り畳み緩衝液に添加する。再折り畳み緩衝液は、75mMのTris(pH8.8)、0.1MのL−アルギニン、10%のスクロース、2mMのEDTA、10mMのアスコルビン酸ナトリウム、2Mの尿素を含む。1gの封入体に対しては、1リットルの再折り畳み緩衝液を用いる。緩衝液の温度は、約8.0℃で維持される。再折り畳みは、15〜20時間行われる。アスコルビン酸ナトリウムを、再折り畳み緩衝液中で用いる場合、再折り畳みの間、酸化還元条件を与えるべく、デヒドロアスコルビン酸および還元グルタチオンも再折り畳み緩衝液に添加する。あるいは、システイン/シスチンのようなオキシド−シャッフリング(oxido−shuffling)剤、または酸化および還元されたグルタチオンもまた用いてもよい。
【0059】
再折り畳みの終了後、再折り畳みされたタンパク質の緩衝液交換を、20mMのTris(pH8.0)、5%スクロースまたは5%D+ソルビトール中で行い、変性剤を除去する。
【0060】
工程C:タンパク質を含有するダイアフィルトレーションした溶液に、最終溶液中のPEG4000濃度が10%(w/w)になるように、PEG4000を添加する。PEGを溶解した後、塩(硫酸ナトリウム)を、最終溶液中でのその濃度が8%(w/w)になるように添加する。塩が溶解した後、相の形成が生じるように、その溶液を撹拌することなく静置する。二相が形成され、すなわち、塩の相およびPEG相が形成される。GCSFは、上部の相(PEG相)に入る。下部の相を廃棄し、ここで不純物を除去する。上部の相を純度についてチェックする。GCSFタンパク質を含む上部相のpHを4.5に調整し、次いで、ダイアフィルトレーションまたは希釈して、伝導率を約4〜6mS/cmにする。
【0061】
工程D:次いで、この溶液を、pH4.5で陽イオン交換体(SP FFセファロース)にロードする。カラムは、20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)で事前に平衡化している。ロードが終わった後、カラムを20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)緩衝液で洗浄する。洗浄が終わった後、結合したタンパク質を、20mMの酢酸ナトリウム(pH5.5)緩衝液中NaClの直線濃度勾配で溶出する。
【0062】
工程E:次いで、精製されたGCSFを製剤緩衝液(10mMの酢酸ナトリウム(pH4.0)、5%ソルビトール、0.004%のTween80)へ緩衝液交換した。
【0063】
精製されたGCSFタンパク質は、市販のGCSF製品と同様のインビトロの生物活性である。
【0064】
実施例2:
2gの封入体を、100mMのTris(pH8.0)、6Mの塩酸グアニジン緩衝液中に可溶化した。可溶化は、25℃で45分間行った。可溶化された封入体溶液を0.45ミクロンのポリエーテルスルホンフィルターを通して濾過した。濾過された溶液の280nmでのODをチェックして、必要量の可溶化緩衝液を添加することによって8.0に調整した。90mlの可溶化された封入体溶液に、DTTを、最終濃度が5mMになるように添加した。還元は、30分間行った。還元後、封入体溶液を、以下の組成に従う2000mlの再折り畳み緩衝液に緩徐に添加した:75mMのTris−Cl(pH8.8)、10%スクロース、2M尿素、0.1M L−アルギニン、2mMのEDTA。温度は8〜10℃で維持した。封入体溶液を添加した後、シスチンおよびシステインを、それぞれの最終濃度が1mMおよび4mMになるように添加する。再折り畳みは、10℃で15時間行った。
【0065】
再折り畳みが終了した後、この再折り畳みされたタンパク質を、1リットルに濃縮し、タンジェント流濾過(TFF)を用いて20mMのTris(pH8.0)、5%ソルビトールの3ダイアフィルトレーション容量に対してダイアフィルトレーションした。このダイアフィルトレーションされた溶液に122gのPEG4000を添加した。PEGを溶解した後、97.6gの硫酸ナトリウムを添加した。次いで、この溶液を重力沈降のために静置した。次いで上部相を回収して、20mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)、5%ソルビトールで希釈して、pHを4.5に、そして伝導率を5.5mS/cmに調整した。次いで、この希釈溶液を、20mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)、5%ソルビトールで平衡にしたSPセファロースカラム上にロードした。ロードおよび20mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)5%ソルビトール緩衝液での洗浄後、さらに20mM酢酸ナトリウム(pH5.5)5%ソルビトール緩衝液での洗浄を行う。次いで結合したタンパク質を、直線濃度勾配の20mMの酢酸ナトリウム(pH4.5)5%ソルビトール、1MのNaClを用いて、70CVで溶出した。RP−HPLCにより99%を超える純度の溶出画分をプールした。次いで、このプールした画分を10mMの酢酸ナトリウム(pH4.0)、5%ソルビトール、0.004%のTween80に対して、Sephadex G−25媒体ゲル濾過カラム(medium gel filtration column)を用いて緩衝液交換した。200mgの治療等級の純粋なGCSFを、上記の方法から得た。図2は、精製のSDS−PAGEプロファイルを示す。上部相は、SDS−PAGEにより99%を超える純度を示す。イオン交換後の最終精製されたタンパク質は、SDS−PAGEにより99%を超え、そしてRP−HPLCにより98.5%を超える純度を示す。得られた収率は45%であった。
【0066】
本発明はその特定の実施形態に関して記載してきたが、特定の改変および等価物は、当業者に明白であり、かつ本発明の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物細胞から得られる純粋な組み換えヒトG−CSFの調製のための方法であって:
a)GCSFの封入体を可溶化する工程と;
b)該可溶化されたGCSFタンパク質を再折り畳みする工程と;
c)水性二相抽出を用いることにより該再折り畳みされたGCSFを精製する工程と;
d)必要に応じて、工程cで得られる天然のGCSFをさらに精製する工程と;
e)純粋なGCSFを単離する工程と;
を含む方法。
【請求項2】
前記水性二相抽出系が、ポリエチレングリコール(PEG)および塩の相を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PEGが約2000〜約8000という分子量を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩の相が、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムおよび硫酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウムおよびリン酸カリウムのうちの1つ以上を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記相形成性ポリマーの濃度が約4%〜約18%(w/w)の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記相形成性の塩の濃度が約4%〜約18%(w/v)の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、工程(c)で得られる天然のG−CSFが、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上を含んでいる追加のクロマトグラフィー精製工程によってさらに精製される、方法。
【請求項8】
純粋なGCSFを完成した剤形に形成する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
2IU/ml未満の内毒素および20ppm未満の宿主細胞タンパク質を有する、99%以上の純度を有する純粋G−CSF。
【請求項10】
水性二相抽出の少なくとも1つの工程を含む方法によって調製される、純粋GCSF.
【請求項11】
水性二相抽出の少なくとも1つの工程を含む方法によって得られる生物学的に活性なGCSFの治療上有効な量、および1つ以上の医薬上に許容される賦形剤を含む医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−530131(P2012−530131A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515630(P2012−515630)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/IN2010/000377
【国際公開番号】WO2010/146599
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(502425916)ルピン・リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】LUPIN LIMITED
【Fターム(参考)】