説明

組付け部品の検査方法および検査装置

【課題】部分形状や材質が異なる類似の組付け部品を単品でも組付け後でも容易にかつ確実に判別でき、しかも、組付けコストを低減できる組付け部品の検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】複数種のバルブシート12のそれぞれに、シリンダヘッド本体11に組み付けられたときに外部に露出する露出面12aを設けるとともに、その露出面12aからの離間距離dが複数種の種類ごとに異なる種類判別用の種別壁面12fを、そのバルブシート12がシリンダヘッド本体11に組み付けられたときにシリンダヘッド本体11中に没入する範囲内に形成しておき、露出面12aからの種別壁面12fの離間距離dを超音波計測して予め指定された種類のバルブシート12であるか否かを判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付け部品の検査方法および検査装置、特に部分形状もしくは材質が相違する組付け部品やその組付け品を判別するのに好適な組付け部品の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用の内燃機関においては、シリンダブロックやシリンダヘッドにアルミニウム合金等を使用することでエンジン本体の軽量化が図られており、その内部の摺動部等の高機能部には耐熱性や耐摩耗性、高温強度等に優れた別部品を組み付けることで、所要の機能が確保されるようになっている。例えば、シリンダヘッドには、予め圧入穴が形成され、その圧入穴に熱伝導率が高く高温強度に優れた耐摩耗性の吸・排気バルブのバルブシートが圧入されている。
【0003】
このバルブシートのような圧入部品の組付け後の確認を行う検査装置として、例えば光ファイバセンサからの微細な光をバルブガイドまたはバルブシートの上端面に投射し、その反射光をほぼ全て検知した場合(反射角180度のとき)にバルブガイドまたはバルブシートが正常に組み付けられていると判定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−135633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来の組付け部品の検査方法および検査装置にあっては、光ファイバセンサによってバルブシートが正しい姿勢で組み付けられたか否かを判別することはできるが、圧入後のバルブシートの露出部分の形状が略同一となる異種のバルブシートが組み付けられる場合、指定されたバルブシートが装着されているのか否かの判別ができないという問題があった。
【0006】
そのため、圧入後のバルブシートの露出面形状が略同一となる異種のバルブシートに対して、それぞれの要求仕様に応じたシール面(ポペットバルブ側のバルブフェースに圧接する面の意;以下、同様)の機械加工を自動化することに難点があった。
【0007】
これに対し、例えばバルブシートのシリンダヘッドへの圧入後に機械加工されるシール面の近傍に、その機械加工代以上に肉盛りして、バルブシートの種類ごとにそのバルブ軸方向位置が相違する種類判別用の環状突起を設けておき、この環状突起の位置を検知することで種類判別を実行するようにして、シール面の近傍の自動的な機械加工を可能にすることが考えられる。しかし、その場合、材料に無駄が出るばかりか、機械加工後にはやはりバルブシートの種別を判別することができないという問題が残る。
【0008】
さらに、バルブシートのような圧入部品の場合、エンジンの仕様や使用燃料により形状や材質がわずかに異なるが、外径が同一で組付け後の外観も酷似するものが多いため、仕様がわずかに異なる部品が誤って組み付けられるようなことがないように、自動組付け工程に投入される際に特に厳格な部品管理が要求されることになり、部品の組付けコストが高くなる要因となっていた。
【0009】
そこで、本発明は、部分形状や材質が異なる類似の組付け部品を単品でも組付け後でも容易にかつ確実に判別することができ、しかも、組付けコストを低減させることのできる組付け部品の検査方法および検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る組付け部品の検査方法は、上記目的達成のため、(1)他の部材に組み付けられる組付け部品が類似する複数種の組付け部品のうち予め指定された種類の組付け部品であるか否かを判別する組付け部品の検査方法であって、前記複数種の組付け部品のそれぞれに、該組付け部品が前記他の部品に組み付けられたときに外部に露出する露出面を設けるとともに、該露出面からの離間距離が複数種の種類ごとに異なる種類判別用の種別壁面を、該組付け部品が前記他の部品に組み付けられたときに前記他の部品中に没入する範囲内に形成しておき、前記組付け部品が前記他の部品に組み付けられるとき、前記露出面からの前記種別壁面の離間距離を計測して前記予め指定された種類の組付け部品であるか否かを判別するものである。
【0011】
この構成により、組付け部品が前記他の部品に組み付けられるとき、種類判別用の種別壁面が他の部品中に没入するが、露出面からの種別壁面の離間距離が計測されると、種類ごとに異なるその離間距離の値から予め指定された種類の組付け部品であるか否かの判別が可能となる。なお、種類判別用の種別壁面が他の部品中に没入すると、その種別壁面に隣接する空隙層が形成されるので、種別壁面とこの空隙の境界位置を公知の非接触の探傷検査と同様な非接触の測定手法で容易に特定することができる。また、ここにいう種別壁面は、組付け部品の外周部あるいは組付け部品の没入側の端面部に凹部を形成することで、その側壁面あるいは内底壁面として形成され得る。
【0012】
上記(1)記載の組付け部品の検査方法においては、(2)前記露出面側から前記露出面に向かって超音波信号を送信するとともに、該超音波信号が前記種別壁面で反射した反射波を受信し、該反射波の受信信号に基づいて前記露出面からの前記種別壁面の離間距離を計測することが好ましい。
【0013】
この構成により、種別壁面が超音波探傷検査と同様な手法で容易に特定可能となる。
【0014】
なお、種別壁面を超音波により探索するのでなく、X線等の放射線を透過させ、その放射線の透過量もしくは吸収量に基づいて、前記露出面からの前記種別壁面の離間距離に相当するバルブシートの部分的な厚さを検出することも可能である。
【0015】
上記(2)記載の組付け部品の検査方法においては、(3)前記露出面に向かって超音波信号を送信する時点から、該超音波信号が前記種別壁面で反射した反射信号を受信するまでの時間に基づいて、前記露出面からの前記種別壁面の離間距離を算出することが好ましい。
【0016】
この構成により、種別壁面の位置が超音波探傷検査と同様な手法で容易に特定可能となる。
【0017】
上記(1)〜(3)の構成を有する組付け部品の検査方法においては、(4)前記組付け部品が前記他の部品に圧入により組み付けられる環状の部品であり、前記種別壁面が、前記環状の部品の外周面側で半径方向外側に向かって開く凹部の側壁面の一部を形成しているのがよい。
【0018】
この構成により、種別壁面を容易に形成できるとともに、組付け部品の材料に無駄が生じない。
【0019】
上記(4)の構成を有する組付け部品の検査方法においては、(5)前記環状の部品が、内燃機関のシリンダヘッドに圧入されるバルブシートであることが好ましい。
【0020】
この構成により、形状の類似するバルブシートを確実に判別する検査を実行することができ、自動組付け工程等における誤投入を確実に防止できる検査を実行しながらも、バルブシートの組付けコストの低減が可能になる。
【0021】
また、上記(4)、(5)の構成を有する組付け部品の検査方法においては、(6)前記種別壁面が、前記環状の部品の外周面側で半径方向外側に向かって開く外周溝の側壁面の片方を形成しているのが好ましい。
【0022】
この構成により、種別壁面を容易に形成できるとともに、周方向の任意の位置で組付け部品の検査が実行可能となる。
【0023】
本発明に係る組付け部品の検査装置は、上記目的達成のため、(7)上記いずれかの組付け部品の検査方法を実施する検査装置であって、前記組付け部品の前記露出面に対向し、前記露出面に向かって超音波信号を送信するとともに、該超音波信号が前記種別壁面で反射した反射波を受信する超音波探触子と、該超音波探触子に前記超音波信号に対応する電圧を印加する電圧発生器と、前記超音波探触子から前記反射波に相当する信号を取り込む受信器と、を備えたものである。
【0024】
この構成により、組付け部品の種類判別が可能な検査を小型で簡素な超音波探触子を用いて確実に実行できる低コストの検査装置を提供できることになる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、組付け部品が他の部品に組み付けられるとき、種類判別用の種別壁面が他の部品中に没入しても、種類ごとに異なる露出面からの種別壁面までの離間距離を計測することで、予め指定された種類の組付け部品であるか否かの判別ができるようにしているので、部分形状や材質が異なる類似の組付け部品を単品でも組付け後でも容易にかつ確実に判別することができるとともに、組付けコストを低減させることのできる組付け部品の検査方法を実現することができ、しかも、その検査方法を実行する低コストの検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る検査装置の概略ブロック構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る組付け部品の検査方法における種別壁面位置の超音波測定の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る組付け部品の検査方法の概略手順を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
(一実施形態)
図1に本発明の一実施形態の検査装置を示し、図2にその検査装置で実施される一実施形態の検査の原理を示している。また、図3の工程説明図は一実施形態の検査方法を実施するための概略の作業工程を示している。
【0029】
まず、構成について説明する。
【0030】
図1および図3に示すように、本実施形態の検査装置は、シリンダヘッド本体11にバルブシート12(同図中には半断面で示す)を組み付けたシリンダヘッド組立体10について、あるいはその組付け直前のバルブシート12について、そのバルブシート12が指定された種類のものであるか否かを判別する検査を実行するものであり、この検査装置は、超音波探触子20、電圧発生器30および受信器40を備えている。
【0031】
シリンダヘッド本体11は、図示しない内燃機関の一部を構成するよう例えばアルミニウム合金によりダイカスト成形された成型品である。
【0032】
バルブシート12は、このシリンダヘッド本体11に圧入される環状の部品であり、図示しない吸気バルブまたは排気バルブ(以下、吸・排気バルブという)の弁座として機能する部品である。
【0033】
このバルブシート12は、車種ごとに選択される内燃機関の種類に応じて、少なくとも図3に示すような複数種のバルブシート12M、12Nを含む多数種のバルブシートのいずれか1つで構成される。バルブシート12M、12Nは、例えば同一形状で材質が異なる弁座用の圧入部品であり、出力が同等で使用燃料が異なる内燃機関に使用される。具体的には、バルブシート12M、12Nは、それぞれ特殊合金粉末に硬質粒子を分散させ焼結した成型品であり、それぞれの合金材料や硬質粒子の種類や含有比率が異なるものである。あるいは、バルブシート12M、12Nは、目視では識別できない程度のわずかな形状誤差がある程度の類似部品である。なお、図示しない他の種類のバルブシートは、圧入後に目視等で識別可能な形状の相違や露出面12aの性状の相違があるものとする。
【0034】
これら複数種のバルブシート12M、12N等のそれぞれには、各バルブシート12がシリンダヘッド本体11に組み付けられたときに外部に露出する面となる露出面12aが設けられている。また、図1に示すように、その露出面12aからの離間距離dが複数種の種類ごとに異なる種類判別用の種別壁面12fが、そのバルブシート12がシリンダヘッド本体11に圧入により組み付けられたときにシリンダヘッド本体11の中に没入する範囲(圧入深さの範囲)内に形成されている。
【0035】
バルブシート12の種別壁面12fは、環状の部品であるバルブシート12の外周面12e側で、半径方向外側に向かって開く外周溝12gの側壁面12s1、12s2(図2参照)の片方で形成されている。
【0036】
超音波探触子20は、バルブシート12が指定された種類のものであるか否かを判別する検査時に、バルブシート12のシリンダヘッド本体11への組付け後の露出面12aに対向して配置され、その露出面12aに向かって超音波信号を送信するとともに、その超音波信号がバルブシート12の種別壁面12f(後述する)で反射した反射波信号を受信するようになっている。
【0037】
具体的には、超音波探触子20は、例えば両面側に電極21a、21bを有する少なくとも1つの振動子21と、この振動子21の一面側に貼り付けられた保護板22と、振動子21の他面側に貼り付けられた吸音材23と、これら振動子21、保護板22および吸音材23を収納するケース24と、によって構成されている。ここで、振動子21(複数のうち送信用の振動子21でもよい)は、電極21a、21bの間にインパルス電圧等が印加されると伸縮・膨張して振動する圧電素子21cを有しており、この圧電素子21cによって超音波を発生することができる。さらに、振動子21(複数のうち受信用の振動子21でもよい)は、超音波が当たるとその超音波に対応する電圧を発生することができ、バルブシート12からの反射波を受けるときその反射波に応じた電圧信号を発生するようになっている。
【0038】
電圧発生器30は、超音波探触子20の振動子21の電極21a、21bに配線接続されており、超音波探触子20から送信すべき超音波信号に対応する高電圧を発生して、その高電圧を超音波探触子20の振動子21に印加するようになっている。
【0039】
受信器40は、超音波探触子20の振動子21の電極21a、21bに配線接続されており、超音波探触子20から送信された超音波信号がバルブシート12の露出面12aから離れた少なくとも1つの境界面で反射するとき、その反射波が当たる振動子21の発生電圧を受信波に対応する電圧信号(受信波信号)として受信するようになっている。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係る検査方法について説明する。
【0041】
本実施形態における組付け部品の検査方法は、シリンダヘッド本体11(他の部材)に組み付けられるバルブシート12(組付け部品)が類似する複数種のバルブシート12M、12N(M、Nは種類を表す;図3参照)のうち予め指定された種類のバルブシート12、例えば図3に示すバルブシート12Mであるか否かを判別するものである。
【0042】
図3に示すように、この検査に先立つバルブシート12の部品加工(焼結)工程においては、複数種のバルブシート12M、12Nのそれぞれには、各バルブシート12がシリンダヘッド本体11に組み付けられたときに外部に露出する面となる露出面12aを設けるとともに、その露出面12aからの離間距離dが複数種の種類ごとに異なる種類判別用の種別壁面12fを外周溝12gと共に形成する。このとき、種別壁面12fおよび外周溝12gは、バルブシート12がシリンダヘッド本体11に圧入により組み付けられる際にシリンダヘッド本体11の中に没入する範囲内に形成しておく。
【0043】
次いで、バルブシート12をシリンダヘッド本体11に組み付ける自動圧入工程において、そのバルブシート12の圧入作業の直前に、そのバルブシート12の露出面12aからの種別壁面12fまでの離間距離dを公知の超音波探傷法と同様な原理で計測し、予め指定された種類のバルブシート12であるか否かを判別する。
【0044】
具体的には、シリンダヘッド本体11の近傍にまで搬送される途中の1個のバルブシート12の露出面12aに油を膜状に塗布して油膜13(液体相)を形成し、図2に示すように、超音波探触子20を、その油膜13に接触させながらバルブシート12の露出面12aに対向させる。
【0045】
このときの油膜13は、空気より音響インピーダンスが十分に高い油の膜であって、露出面12a上に空気層(気体相)が存在することにより超音波の反射率が高くなることを防止して、超音波探触子20から送信する超音波をバルブシート12の内部に効率よく入射させるものである。
【0046】
なお、一般に、音波は、音響インピーダンスZの異なる媒質の境界面で反射する性質を有し、媒質Iの音響インピーダンスをZ1、媒質IIの音響インピーダンスをZ2とすると、その音の反射率Rは、R=(Z2−Z1)/(Z1+Z2)、音圧の透過率Tは、T=1−R=2・Z1/(Z1+Z2)で表される。
【0047】
次いで、電圧発生器30により超音波探触子20からの送信信号に対応する高電圧を発生させ、露出面12a側の超音波探触子20からバルブシート12の露出面12aに向かって超音波信号を送信する。
【0048】
このとき、図2に示すように、送信された超音波信号の一部は露出面12aで反射されるが、バルブシート12に入射された超音波信号はバルブシート12の軸方向に進行し、種別壁面12fで反射した反射波は、逆方向に進行して振動子21に当たって振動子21に反射波に対応する電圧信号を発生させる。
【0049】
次いで、この反射波に対応する振動子21からの電圧信号を受信器40により受信し、その受信信号に基づいて、露出面12aからの種別壁面12fまでの離間距離dを計測する。例えば、露出面12aに向かって超音波信号を送信する時点から、その超音波信号が種別壁面12fで反射した反射信号を受信するまでの時間に基づいて、露出面12aからの種別壁面12fの離間距離d(図3参照)を算出する。そして、その計測値が、その自動圧入工程で予め指定された種類のバルブシート12についての離間距離dの範囲内であるか否かによって、指定された種類であるか否かを判別する。
【0050】
次いで、その自動圧入工程で指定される種類であると判別されたバルブシート12がシリンダヘッド本体11に圧入され、シリンダヘッド組立体10となる。
【0051】
上述の各ステップは、次のシリンダヘッド本体11とそれに対応するバルブシート12が搬入される度に、繰り返される。
【0052】
一方、自動圧入工程におけるバルブシート12の圧入が済んだシリンダヘッド組立体10は、他の圧入部品を圧入された後、高形状精度が要求される部分に機械加工による後加工が施され、この圧加工工程において、バルブシート12の露出面12aの近傍も、吸・排気バルブ(ポペットバルブ)側のバルブフェースに圧接または近接することになるシール面について、要求される形状精度に機械加工される。
【0053】
次いで、シリンダヘッド組立体10、すなわちバルブシート12の組付け品が、指定されたバルブシート12を圧入したものであるか否かの確認検査が行われる。あるいは、後加工が済んだシリンダヘッド組立体10が内燃機関の組立工程に投入されとき、その投入に先立って、バルブシート12の組付け品が、指定されたバルブシート12を圧入したものであるか否かの確認検査が行われる。
【0054】
具体的には、要求される高形状精度に機械加工されたバルブシート12の露出面12aを油(液体)により洗浄して膜状の油膜13(液相)を形成し、図2に示すように、超音波探触子20を、その油膜13に接触させながらバルブシート12の露出面12aに対向させる。
【0055】
次いで、電圧発生器30により超音波探触子20からの送信信号に対応する高電圧を発生させ、露出面12a側の超音波探触子20からバルブシート12の露出面12aに向かって超音波信号を送信する。
【0056】
このとき、バルブシート12に入射され、種別壁面12fで反射した反射波が、逆方向に進行し振動子21に当たって振動子21に反射波に対応する電圧信号を発生させる。
【0057】
次いで、この反射波に対応する振動子21からの電圧信号を受信器40により受信し、露出面12aに向かって超音波信号を送信する時点から反射信号を受信するまでの時間に基づいて、露出面12aからの種別壁面12fの離間距離d(図3参照)を算出する。そして、その計測値が、予め指定された種類のバルブシート12についての離間距離dの範囲内であれば、バルブシート12の組付けと後加工が正常に完了したシリンダヘッド組立体10であることが確認できたことになる。
【0058】
次に、作用について説明する。
【0059】
本実施形態の検査方法においては、バルブシート12がシリンダヘッド本体11に圧入により組み付けられ、種類判別用の種別壁面12fがシリンダヘッド本体11中に没入した状態であっても、超音波探触子20を用いて露出面からの種別壁面12fの離間距離dを計測することで、種類ごとに異なるその離間距離dの値から、シリンダヘッド本体11に組み付けられたバルブシート12が予め指定された種類のものであるか否かを判別することができる。しかも、種別壁面12fが超音波探傷検査と同様な非接触の測定手法で容易に特定可能となる。
【0060】
また、バルブシート12がシリンダヘッド本体11に圧入により組み付けられる環状の部品であり、その外周面12e側で半径方向外側に向かって開く外周溝12gの側壁面の一部を種別壁面12fとしているので、種別壁面12fを容易に形成できるとともに、周方向の任意の位置でバルブシート12の検査が実行可能となる。
【0061】
さらに、外周溝12gは、バルブシート12の焼結時に成型することができるので、バルブシート12の材料に無駄が生じないで済む。
【0062】
加えて、バルブシート12のシリンダヘッド本体11への組付け前であっても組付け後であっても、小型の超音波探触子20を用いて、バルブシート12がその組付け工程で指定される種類であるか否かを判別する検査を容易かつ確実に、しかも低コストに実行することができる。
【0063】
また、バルブシート12の種類判別が可能な検査を小型で簡素な超音波探触子20を用いて確実に実行できるので、低コストの検査装置を提供することができる。
【0064】
このように、本実施形態においては、組付け部品であるバルブシート12がシリンダヘッド本体11に組み付けられるとき、種類判別用の種別壁面12fがシリンダヘッド本体11中に没入するが、種類ごとに異なる露出面12aからの種別壁面12fまでの離間距離dを計測することで、予め指定された種類のバルブシート12であるか否かの判別ができるようにしているので、部分形状や材質が異なる類似のバルブシート12を単品でも組付け後でも容易にかつ確実に判別することができるとともに、組付けコストを低減させることのできる組付け部品の検査方法を実現することができ、しかも、その検査方法を実行する低コストの検査装置を提供することができる。
【0065】
なお、前述の一実施形態におけるバルブシート12の種別壁面12fは、図1に示すようにバルブシート12の外周溝12g(外周部の凹部)の側壁面12s1、12s2の片方によって形成されるものであったが、これに限定されるものではなく、例えばバルブシート12の没入側の端面部12jに圧入方向に開いた凹部を形成することで、その内奥側の壁面12f´(内底壁面;図1参照)として形成されるものであってもよい。
【0066】
また、種別壁面12fを超音波により探索するのでなく、X線等の放射線を透過させ、そのX線透過量もしくは吸収量に基づいて、前記露出面からの前記種別壁面12fの離間距離dに相当するバルブシートの部分的な厚さを検出することも考えられる。
【0067】
さらに、前述の一実施形態では、組付け部品をバルブシート12としたが、シリンダヘッド本体11に組み付けられる他の圧入部品、例えば吸・排気バルブのバルブステム部をガイドするバルブガイドであってもよい。勿論、圧入以外の固定方法で他の部品に組み付けられる組付け部品の種別を判別することができることはいうまでもない。
【0068】
以上説明したように、本発明に係る検査装置は、種類ごとに異なる露出面からの種別壁面までの離間距離を計測することで、予め指定された種類の組付け部品であるか否かの判別ができるようにして、部分形状や材質が異なる類似の組付け部品を単品でも組付け後でも容易にかつ確実に判別することができるとともに、組付けコストを低減させることのできる組付け部品の検査方法を実現することができ、しかも、その検査方法を実行する低コストの検査装置を提供することができるという効果を奏するものであり、全体形状が類似し部分形状もしくは材質が相違する組付け部品やその組付け品を判別するのに好適な組付け部品の検査方法および検査装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0069】
10 シリンダヘッド組立体
11 シリンダヘッド本体
12、12M、12N バルブシート(組付け部品)
12a 露出面
12e 外周面
12f 種別壁面(側壁面の片方)
12f´ 内奥側の壁面(内底壁面)
12g 外周溝
12j 端面部
12s1、12s2 側壁面
13 油膜
20 超音波探触子
21 振動子
21a、21b 電極
21c 圧電素子
22 保護板
23 吸音材
24 ケース
30 電圧発生器
40 受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部材に組み付けられる組付け部品が類似する複数種の組付け部品のうち予め指定された種類の組付け部品であるか否かを判別する組付け部品の検査方法であって、
前記複数種の組付け部品のそれぞれに、該組付け部品が前記他の部品に組み付けられたときに外部に露出する露出面を設けるとともに、該露出面からの離間距離が複数種の種類ごとに異なる種類判別用の種別壁面を、該組付け部品が前記他の部品に組み付けられたときに前記他の部品中に没入する範囲内に形成しておき、
前記露出面からの前記種別壁面の離間距離を計測して前記予め指定された種類の組付け部品であるか否かを判別することを特徴とする組付け部品の検査方法。
【請求項2】
前記露出面側から前記露出面に向かって超音波信号を送信するとともに、該超音波信号が前記種別壁面で反射した反射波を受信し、該反射波の受信信号に基づいて前記露出面からの前記種別壁面の離間距離を計測することを特徴とする請求項1に記載の組付け部品の検査方法。
【請求項3】
前記露出面に向かって超音波信号を送信する時点から、該超音波信号が前記種別壁面で反射した反射信号を受信するまでの時間に基づいて、前記露出面からの前記種別壁面の離間距離を算出することを特徴とする請求項2に記載の組付け部品の検査方法。
【請求項4】
前記組付け部品が前記他の部品に圧入により組み付けられる環状の部品であり、
前記種別壁面が、前記環状の部品の外周面側で半径方向外側に向かって開く凹部の側壁面の一部を形成していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1の請求項に記載の組付け部品の検査方法。
【請求項5】
前記環状の部品が、内燃機関のシリンダヘッドに圧入されるバルブシートであることを特徴とする請求項4に記載の組付け部品の検査方法。
【請求項6】
前記種別壁面が、前記環状の部品の外周面側で半径方向外側に向かって開く外周溝の側壁面の片方を形成していることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の組付け部品の検査方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちいずれか1の請求項に記載の組付け部品の検査方法を実施する検査装置であって、
前記組付け部品の前記露出面に対向し、前記露出面に向かって超音波信号を送信するとともに、該超音波信号が前記種別壁面で反射した反射波を受信する超音波探触子と、該超音波探触子に前記超音波信号に対応する電圧を印加する電圧発生器と、前記超音波探触子から前記反射波に相当する信号を取り込む受信器と、を備えた検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−156643(P2011−156643A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22400(P2010−22400)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】